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特許7443968光ファイバ融着接続方法および光ファイバ線路
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  • 特許-光ファイバ融着接続方法および光ファイバ線路 図1
  • 特許-光ファイバ融着接続方法および光ファイバ線路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】光ファイバ融着接続方法および光ファイバ線路
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240228BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20240228BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G02B6/44 301B
G02B6/255
G02B6/02 411
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020121916
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018658
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】長能 重博
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-075677(JP,A)
【文献】特開平05-264848(JP,A)
【文献】特開2002-372636(JP,A)
【文献】特開2001-228353(JP,A)
【文献】特開2001-108858(JP,A)
【文献】特開2004-126000(JP,A)
【文献】特開2009-031459(JP,A)
【文献】米国特許第06278816(US,B1)
【文献】国際公開第2013/153734(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00 - 6/10
G02B 6/24 - 6/27
G02B 6/30 - 6/34
G02B 6/36 - 6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一光ファイバと第二光ファイバとを融着接続する光ファイバ融着接続方法であって、
第一ガラスファイバと前記第一ガラスファイバを覆う第一被覆とを含むとともに第一MFDを有する前記第一光ファイバと、第二ガラスファイバと前記第二ガラスファイバを覆う第二被覆とを含むとともに前記第一MFDよりも大きな第二MFDを有する第二光ファイバと、を用意し、
前記第一被覆の一部を除去して、前記第一光ファイバのうち端面を含む前記第一ガラスファイバの一方の端部を露出させ、
MFD拡大領域となるべき所定長の領域を加熱して、前記第一MFDよりも拡大されたMFDを有する前記MFD拡大領域を前記第一ガラスファイバの露出領域内に設け、
前記第一被覆の残っている部分にオーバーラップした状態で、前記第一ガラスファイバの前記露出領域に第一リコート層となる樹脂を塗布し、
前記MFD拡大領域を分割するように前記第一光ファイバを切断して、前記端面を含む前記第一ガラスファイバの一部を除去し、
前記第二被覆の一部を除去して、前記第二光ファイバのうち端面を含む前記第二ガラスファイバの一方の端部を露出させ、
前記第一ガラスファイバの切断面と前記第二ガラスファイバの前記端面とを融着接続し、
前記第二被覆の残っている部分にオーバーラップした状態で、前記第一リコート層、前記切断面から前記第一リコート層までの前記第一ガラスファイバの先端、および、前記第二ガラスファイバの露出領域に、第二リコート層となる樹脂を塗布
前記第一リコート層は、前記MFD拡大領域の一部まで設けられており、かつ、前記第二リコート層は、前記MFD拡大領域を挟んで前記第二ガラスファイバの前記露出領域から前記第一ガラスファイバの前記露出領域のうち前記第一MFDを有する部分まで設けられている、
光ファイバ融着接続方法。
【請求項2】
前記第一リコート層となる樹脂の塗布では、前記第一光ファイバの切断位置よりも残っている前記第一被覆側の一点まで前記第一リコート層となる樹脂が塗布される、
請求項1に記載の光ファイバ融着接続方法。
【請求項3】
前記第一リコート層となる樹脂の塗布では、前記第一光ファイバの切断位置よりも前記第一光ファイバの端面側の一点まで前記第一リコート層となる樹脂を塗布し、前記第一光ファイバが切断される前に、前記切断面から前記切断面よりも前記第一被覆側の一点までの部分を除去することにより前記第一リコート層が設けられている、
請求項1に記載の光ファイバ融着接続方法。
【請求項4】
切断後の前記第一光ファイバにおいて、前記MFD拡大領域の長さは、5mm以上50mm以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバ融着接続方法。
【請求項5】
前記第二光ファイバは、周期的な屈折率変調領域であるグレーティング領域を有するファイバグレーティングであり、前記グレーティング領域は、12μm以上24μm以下のMFDを有する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバ融着接続方法。
【請求項6】
第一ガラスファイバと前記第一ガラスファイバを覆う第一被覆とを含むとともに第一MFDを有する第一光ファイバと、
第二ガラスファイバと前記第二ガラスファイバを覆う第二被覆とを含むとともに前記第一MFDよりも大きな第二MFDを有し、前記第一光ファイバと融着接続された第二光ファイバと、
前記第一被覆の一部が除去された前記第一ガラスファイバの露出領域上に設けられ、前記第一被覆とは異なる屈折率または厚さを有する第一リコート層と、
前記第二被覆の一部が除去された前記第二ガラスファイバの露出領域と前記第一ガラスファイバの前記露出領域に跨って設けられ、前記第二被覆とは異なる屈折率または厚さを有する第二リコート層と、
を備えた光ファイバ線路であって、
前記光ファイバ線路は、前記第一光ファイバ側から前記第二光ファイバ側へ向かって順に設けられた、前記第一ガラスファイバのうち前記第一MFDを有するとともに前記第一被覆に覆われた区間により定義される第一定常区間、前記第一ガラスファイバのうち前記第一MFDを有するとともに前記第一リコート層に覆われた区間により定義される第二定常区間、前記第一ガラスファイバのうち前記第一MFDよりも大きなMFDを有するとともに前記第二リコート層に覆われた区間により定義される遷移区間、前記第二ガラスファイバのうち前記第二MFDを有するとともに前記第二リコート層に覆われた区間により定義される第三定常区間、および、前記第二ガラスファイバのうち前記第二MFDを有するとともに前記第二被覆に覆われた区間により定義される第四定常区間、により構成され、
記第一リコート層は、前記第一被覆の一部を覆った状態で、前記遷移区間の一部まで設けられており、
記第二リコート層は、前記第二被覆の一部を覆った状態で、前記第二定常区間の一部まで設けられている、
光ファイバ線路。
【請求項7】
前記遷移区間の長さは、5mm以上50mm以下である、
請求項6に記載の光ファイバ線路。
【請求項8】
前記第二光ファイバは、周期的な屈折率変調領域であるグレーティング領域を有するファイバグレーティングであり、前記グレーティング領域は、12μm以上24μm以下のMFDを有する、
請求項6または請求項7に記載の光ファイバ線路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ融着接続方法および光ファイバ線路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ線路は、信号伝送媒体だけでなく特定の機能を実現する光学デバイスとしても利用されており、一連長の光ファイバのみならず融着接続された複数の光ファイバにより構成される。これは、光ファイバ線路の構成要素として、光学特性、断面構造、ファイバ長等において異なる種々の光ファイバの組み合わせが可能なためである。一例として、光ファイバ線路を構成する光ファイバのいずれかに、グレーティングが形成された光ファイバが適用された場合、該グレーティングが形成された光ファイバ(ファイバグレーティング)は利得等化フィルタ(Gain-FlatteningFilter:GFF)として機能し、光ファイバ線路全体が利得等化器(光学デバイス)となり得る。
【0003】
具体的に、特許文献1および特許文献2には、上記GFFとしてスラント型ファイバグレーティング(Slanted Fiber Grating:SFG)の製造例が記載されている。また、特許文献3には、15μm以上のモードフィールド径(Mode Field Diameter:MFD)を有する感光性光ファイバへのグレーティングの形成が記載されている。なお、本明細書において「MFD」は、特に明記しない限り、波長1550μmにおける「MFD」である。
【0004】
また、近年、SFGの高性能化を目的とした感光性光ファイバのMFD拡大により、感光性光ファイバのMFDとピッグテイルとして使われる汎用のシングルモード光ファイバ(以下、「汎用SMF」と記す)のMFD(例えば10.5μm)との差が大きくなってきている。このような感光性光ファイバと汎用SMFとの融着接続のように、MFDの異なる光ファイバ間での融着接続は、融着ロスが増大する主因となっている。一方、融着ロスの増大を抑制するため、例えば特許文献4には、バーナーTEC(Thermally-diffusedExpanded Core fiber)加工により光ファイバ間におけるMFDの差を解消し、融着ロスを0.10dBにまで低減させる技術が記載されている。なお、特許文献4によれば、熱歪みを解消するためのアニール工程を導入することにより、引張強度が高められることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-004926号公報
【文献】WO2003/093887号公報
【文献】特開2003-75647号公報
【文献】特開2003-75677号公報
【文献】特開2010-134038号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日本機械学会論文集(A編)78巻791号(2012-7)(1056-1064)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者は、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、バーナーTEC加工にアニール工程を導入しても熱歪みを完全に解放することは難しく、バーナーTEC加工が施される長めの領域に対する被覆除去および洗浄に起因した「ガラスの強度低下」が避けられないという課題があった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解消するためにされたものであり、光ファイバ間での高強度融着を可能にするための構造を有する光ファイバ融着接続方法、および、高強度融着された光ファイバを含む光ファイバ線路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の光ファイバ融着接続方法は、第一光ファイバと第二光ファイバとを融着接続する方法であって、上述の課題を解決するため、第一光ファイバと第二光ファイバの用意、第一被覆の部分的除去、第一ガラスファイバへのMFD拡大領域の形成、第一リコート層となる樹脂の塗布、第一光ファイバの切断、第二被覆の部分的除去、第一ガラスファイバと第二ガラスファイバの融着接続、および、第二リコート層となる樹脂の塗布、を行う。具体的に、用意される第一光ファイバは、第一ガラスファイバと該第一ガラスファイバを覆う第一被覆とを含むとともに第一MFDを有する。第二光ファイバは、第二ガラスファイバと該第二ガラスファイバを覆う第二被覆とを含むとともに第一MFDよりも大きな第二MFDを有する。上記第一被覆の部分的除去では、第一被覆の一部を除去して、第一光ファイバのうち端面を含む第一ガラスファイバの一方の端部を露出させる。上記第一ガラスファイバへのMFD拡大領域の形成では、MFD拡大領域となるべき所定長の領域を加熱して、第一MFDよりも拡大されたMFDを有するMFD拡大領域を第一ガラスファイバの露出領域内に設ける。上記第一リコート層となる樹脂の塗布では、第一被覆の残っている部分にオーバーラップした状態で、第一ガラスファイバの露出領域に第一リコート層となる樹脂が塗布される。上記第一光ファイバの切断では、MFD拡大領域を分割するように第一光ファイバが切断して、端面を含む第一ガラスファイバの一部を除去する。上記第二被覆の部分的除去では、第二被覆の一部を除去して、第二光ファイバのうち端面を含む第二ガラスファイバの一方の端部を露出させる。上記第一ガラスファイバと第二ガラスファイバの融着接続では、第一ガラスファイバの切断面と第二ガラスファイバの端面とが融着接続される。上記第二リコート層となる樹脂の塗布では、第二被覆の残っている部分にオーバーラップした状態で、第一リコート層、切断面から第一リコート層までの第一ガラスファイバの先端、および、第二ガラスファイバの露出領域に、第二リコート層となる樹脂が塗布される。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光ファイバ線路を構成する光ファイバ間での高強度融着が可能になるとともに、高強度融着された光ファイバを含む光ファイバ線路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一般的な光ファイバ融着接続方法の各工程(一般的な光ファイバ線路の製造工程)を説明するための図である。
図2】本開示の光ファイバ融着接続方法の各工程(本開示の光ファイバ線路の製造工程)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
【0013】
本開示の光ファイバ融着接続方法は、光ファイバ間での高強度融着を可能にする方法であり、これにより高強度融着された光ファイバを含む光ファイバ線路(本開示の光ファイバ線路)が得られる。
【0014】
(1) 本開示の光ファイバ融着接続方法は、第一光ファイバと第二光ファイバとを融着接続する方法であって、第一光ファイバと第二光ファイバの用意、第一被覆の部分的除去、第一ガラスファイバへのMFD拡大領域の形成、第一リコート層となる樹脂の塗布、第一光ファイバの切断、第二被覆の部分的除去、第一ガラスファイバと第二ガラスファイバの融着接続、および、第二リコート層となる樹脂の塗布、を行う。
【0015】
用意される第一光ファイバは、第一ガラスファイバと該第一ガラスファイバを覆う第一被覆とを含むとともに第一MFD(平均値)を有する。また、第二光ファイバは、第二ガラスファイバと該第二ガラスファイバを覆う第二被覆とを含むとともに第一MFDよりも大きな第二MFD(平均値)を有する。
【0016】
上記第一被覆の部分的除去では、第一被覆の一部が除去して、第一光ファイバのうち端面を含む第一ガラスファイバの一方の端部を露出させる。上記第一ガラスファイバへのMFD拡大領域の形成では、MFD拡大領域となるべき所定長の領域を加熱して、第一MFDよりも拡大されたMFDを有するMFD拡大領域を第一ガラスファイバの露出領域内に設ける。上記第一リコート層となる樹脂の塗布では、第一被覆の残っている部分にオーバーラップした状態で、第一ガラスファイバの露出領域に第一リコート層となる樹脂が塗布される。上記第一光ファイバの切断では、MFD拡大領域を分割するように第一光ファイバを切断して、端面を含む第一ガラスファイバの一部を除去する。上記第二被覆の部分的除去では、第二被覆の一部を除去して、第二光ファイバのうち端面を含む第二ガラスファイバの一方の端部を露出させる。上記第一ガラスファイバと第二ガラスファイバの融着接続では、第一ガラスファイバの切断面と第二ガラスファイバの端面とが融着接続される。上記第二リコート層となる樹脂の塗布では、第二被覆の残っている部分にオーバーラップした状態で、第一リコート層、切断面から第一リコート層までの第一ガラスファイバの先端、および、第二ガラスファイバの露出領域に、第二リコート層となる樹脂が塗布される。
【0017】
以上のように、第一光ファイバと第二光ファイバの融着接続の前後で、異なる製造工程でリコート層(第一リコート層、第二リコート層)を利用することにより、MFD拡大領域のエッジ部(第一ガラスファイバのうち第一MFDを有する部分とMFD拡大領域との境界付近の低強度部位)など任意部位の保護が可能になるため、高強度融着された光ファイバを含む光線路が得られる。
【0018】
(2) なお、本開示の一態様として、第一リコート層となる樹脂の塗布では、第一光ファイバの切断位置よりも残っている前記第一被覆側の一点まで前記第一リコート層となる樹脂が塗布されるのが好ましい。また、本開示の一態様として、第一リコート層となる樹脂の塗布では、第一光ファイバの切断位置よりも第一光ファイバの端面側の一点まで第一リコート層となる樹脂を塗布し、第一光ファイバが切断される前に、切断面から該切断面よりも第一被覆側の一点までの部分を除去することにより第一リコート層を得てもよい。
【0019】
(3) 本開示の一態様として、切断後の第一光ファイバにおいて、MFD拡大領域の長さは、5mm以上50mm以下であるのが好ましい。なお、MFD拡大領域は、第一MFDよりも0.3μm以上拡大されたMFDを有する領域として定義される。予め切断前の加熱領域を長く設定しておくことによりMFDのファイバ長に対する変化量を小さく維持できる。この場合、所望のMFDを得るための切断位置のトレランスは増大することになり、製造面においても有利となる。
【0020】
(4) 本開示の一態様として、第一リコート層は、MFD拡大領域の一部まで設けられており、かつ、第二リコート層は、MFD拡大領域を挟んで、第二ガラスファイバの露出領域から第一ガラスファイバの露出領域のうち第一MFDを有する部分まで設けられるのが好ましい。この場合、第一リコート層および第二リコート層の双方により、MFD拡大領域におけるエッジ部のより安定した保護が可能になる。
【0021】
(5) 本開示の光ファイバ線路は、第一光ファイバと、該第一光ファイバに融着接続された第二光ファイバと、第一リコート層と、第二リコート層と、を備える。第一光ファイバは、第一ガラスファイバと該第一ガラスファイバを覆う第一被覆とを含むとともに第一MFDを有する。第二光ファイバは、第二ガラスファイバと第二ガラスファイバを覆う第二被覆とを含むとともに第一MFDよりも大きな第二MFDを有する。第一リコート層は、第一被覆の一部が除去された第一ガラスファイバの露出領域上に設けられた樹脂層であって、該第一被覆とは異なる屈折率または厚さを有する。第二リコート層は、第二被覆の一部が除去された第二ガラスファイバの露出領域と第一ガラスファイバの露出領域に跨って設けられた樹脂層であって、該第二被覆とは異なる屈折率または厚さを有する。なお、第一光ファイバおよび第二光ファイバの少なくともいずれかは、上述のようにファイバグレーティングを含んでもよい。
【0022】
特に、当該光ファイバ線路は、第一光ファイバ側から第二光ファイバ側へ向かって順に設けられた、第一定常区間、第二定常区間、遷移区間、第三定常区間、および、第四定常区間、により構成されている。第一定常区間は、第一ガラスファイバのうち、第一MFDを有するとともに第一被覆に覆われた区間により定義される。第二定常区間は、第一ガラスファイバのうち、第一MFDを有するとともに第一リコート層に覆われた区間により定義される。遷移区間は、第一ガラスファイバのうち、第一MFDよりも大きなMFDを有するとともに第二リコート層に覆われた区間により定義される。第三定常区間は、第二ガラスファイバのうち、第二MFDを有するとともに第二リコート層に覆われた区間により定義される。第四定常区間は、第二ガラスファイバのうち、第二MFDを有するとともに第二被覆に覆われた区間により定義される。
【0023】
更に、当該光ファイバ線路において、第一定常区間と第二定常区間の境界では、第一リコート層の一部が第一被覆の一部を覆っている。第三定常区間と第四定常区間の境界では、第二リコート層の一部が第二被覆の一部を覆っている。また、第二リコート層は、第一リコート層の一部を覆っている。このように形成タイミングの異なる複数のリコート層(塗布される製造工程が異なっている第一リコート層、第二リコート層)を利用してMFD拡大領域のエッジ部を保護することで、高強度融着された光ファイバを含む光線路が得られる。また、第一被覆および第二被覆の各一部もリコート層で覆うことで、光ファイバ線路の製造工程における破断リスクが低減される。
【0024】
(6) 本開示の一態様として、遷移区間(切断後のMFD拡大領域に相当)の長さは、5mm以上50mm以下であるのが好ましい。この場合、所望のMFDを得るための切断位置のトレランスは増大することになり、製造面においても有利となる。
【0025】
(7) 本実施形態の一態様として、遷移区間の何れかの位置において、第二リコート層が第一リコート層の一部を覆っている。この場合、第一リコート層および第二リコート層の双方により、MFD拡大領域のエッジ部のより安定した保護が可能になる。
【0026】
以上、この[本開示の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
【0027】
なお、本開示の光ファイバ融着接続方法および光ファイバ線路に適用される光ファイバのうち少なくともいずれかは、上記特許文献1から上記特許文献3のいずれかに開示されたファイバグレーティングを含んでもよく、これら特許文献1から特許文献3を参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。具体的な構成として、光ファイバ線路の少なくとも一部を構成する光ファイバがファイバグレーティングである場合、高精度の利得等化器が実現され得る。すなわち、本開示の光ファイバ融着接続方法は、利得等化器における感光性光ファイバとピッグテイルとなる汎用SMFとの高強度融着に好適である。
【0028】
一例として、高性能の利得等化フィルタを実現する感光性光ファイバは、シリカ系ガラスであって、コアと、該コアを取り囲むとともに該コア中心の屈折率ncoreより低い屈折率nclad1を有する第1クラッドと、該第1クラッドを取り囲むとともに該コアの屈折率より低くかつ該第1クラッドの屈折率より高い屈折率nclad2を有する第2クラッドと、を備える。第1クラッドの少なくとも一部は、特定波長の光の照射により照射領域の屈折率を上昇させる感光性材料を含む。以下、本明細書において、高性能な利得等化フィルタを実現する感光性光ファイバを「大口径感光性光ファイバ」と記す。
【0029】
感光性材料を含んだ領域には、回折格子等を利用したUV照射により周期的な屈折率変調領域(グレーティング領域)の形成が可能である。グレーティング領域のファイバ配置は真っ直ぐであり、該グレーティング領域のMFDは、第1クラッド領域(感光性材料への特定波長の光照射(UV照射)により屈折率が上昇した領域)の屈折率nclad1+uvに依存した12μm以上24μm以下である。また、グレーティング領域を除く取り回し領域のMFDは、非UV照射下での屈折率nclad1に依存した11.0μm以上14.0μm以下である。屈折率nclad1の領域と屈折率nclad1+uvの領域とで挟まれた領域の屈折率は、屈折率nclad1から徐々に屈折率nclad1+uvまで増大していくMFD変換構造を有する。
【0030】
ここで、コアと第1クラッドとの境界は、該コアと該第1クラッドとの間の屈折率の勾配が最大になる位置で定義される。第1クラッドと第2クラッドの境界は、該第1クラッドと該第2クラッドの間の屈折率の勾配が最大となる位置で定義される。第1クラッド内の屈折率プロファイルの近似直線は、コアと第1クラッドとの境界からコア中心を基準に外側に1μm離れた屈折率と、第2クラッドと第1クラッドの境界からコア中心に向かって1μm離れた屈折率の2点を結んだ直線で定義されるものとする。屈折率nclad1は、第1クラッド内の屈折率プロファイルの近似直線がコアと第1クラッドの境界においてとる値である。近似直線の傾斜(屈折率差/第1クラッドの幅)は、-0.013(%/μm)である。
【0031】
汎用SMFのMFDは、波長1.55μm帯において9.9μm以上10.9μm以下である。このような汎用SMFファイバと大口径感光性光ファイバを融着接続する場合、汎用SMFのMFDは、バーナーTEC加工によって大口径感光性光ファイバとの融着点でのMFDとの差が1μm以下になるまで拡大される。このとき、汎用SMFファイバと大口径感光性光ファイバの融着点において、0.10dBを下回る融着ロスが実現される。バーナーTEC加工が施された領域(MFD拡大領域)のエッジ部を上記融着点に対して遠方に配置することで、該エッジ部の近傍領域をリコートで保護することができる(高強度融着の実現)。なお、例えば特許文献5は、リコート材の粘性を開示し、泡の混入を防止しつつ偏肉が無い塗布方法が提案しており、適宜、上記特許文献5を参照することにより、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、これら例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図されている。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
まず、融着接続されるべき光ファイバの一方がファイバグレーティングである場合の構成(利得等化器)について説明する。
【0034】
利得等化器の高性能化のためには、グレーティングの最大損失量が大きいこと、および、目標波形に合わせ込める能力を維持しつつSFGの基本波形の半値全幅を小さくすること(基本波形の狭帯域化)、が望まれる。そのため、感光性光ファイバのMFDを11.5μm程度に(汎用SMFに対して大口径に)する必要がある。ただし、光ファイバ増幅器の低消費電力化にはMFDが10.5μm程度である汎用SMFとの融着ロスの抑制が求められている。したがって、高性能化SFGを目的としたMFDの大口径化と、融着ロス低減はトレードオフの関係にある。
【0035】
以上の考察に基づき、高性能化SFGの特性を維持しつつ融着ロスを低減するためには、汎用SMFのコアをファイバ長手方向に沿って、バーナーTEC加工によりテーパー状に拡大させる必要がある(融着点における大口径感光性光ファイバのMFDと汎用SMFのMFDとの差を小さくすることが必要である)。しかしながら、通常の放電融着とは異なり、バーナーTEC加工の導入はファイバ強度の低下を招く。解決策として、例えば、アニール工程を導入する方法が提案されており、以下、一般的な光ファイバ融着接続方法(光ファイバ線路の製造方法)について説明する。
【0036】
図1は、一般的な光ファイバ融着接続方法の各工程(一般的な光ファイバ線路の製造工程)を説明するための図である。なお、図1は、2本の光ファイバを融着接続することにより光ファイバ線路を構成する例を示すが、2本の光ファイバのいずれかをファイバグレーティングに置き換えることにより利得等化器が得られる。また、以下の説明において、ガラスファイバ表面に塗布される「樹脂」は、一例として、UV硬化樹脂(UV-curable resin)であり、「リコート層」はUV照射により硬化した樹脂層(UV-curedresin layer)である。
【0037】
一般的な光ファイバ融着接続方法では、図1に示されたように、ステップST1からステップST5を経て光ファイバ線路900Aが得られる。
【0038】
まず、ステップST1では、第一光ファイバ100と第二光ファイバ200が用意されるとともに、被覆の部分的除去が行われる。第一光ファイバ100は、端面100aを有する第一ガラスファイバ110と、該第一ガラスファイバ110を覆う第一被覆120と、を備える。第一ガラスファイバ110は、ファイバ軸に沿って延びたコア101と、該コア101を覆うクラッド102と、を備える。
【0039】
また、第一光ファイバ100のうち端面100aを含む第一ガラスファイバ110の一方の端部を露出させるため、第一被覆120の一部が除去される。第一ガラスファイバ110の露出領域は、アルコールまたはアセトンで超音波洗浄される。
【0040】
一方、第二光ファイバ200は、端面200aを有する第二ガラスファイバ210と、該第二ガラスファイバ210を覆う第二被覆220と、を備える。第二ガラスファイバ210は、ファイバ軸に沿って延びたコア201と、該コア201を覆うクラッド202と、を備える。なお、第二光ファイバ200を利得等化フィルタとして利用する場合、該第二光ファイバ200には予めグレーティングが形成される。具体的には、クラッド202は、感光性材料を含む内側領域と、感光性材料を含まない外側領域で構成される。回折格子等を利用して内側領域にUV光を照射することにより、該内側領域に周期的な屈折率変調領域(グレーティング領域)が形成される。また、図1の例では、第二光ファイバ200の第二被覆220は、部分的に除去されているが、この第二被覆220の除去は、第一光ファイバ100と第二光ファイバの融着接続の前であれば、どのタイミングで行われてもよい。具体的に第二被覆220の部分的除去では、端面200aを含む第二ガラスファイバ210の一方の端部を露出させるため、第二被覆220の一部が除去される。また、第二ガラスファイバ210の露出領域も、アルコールまたはアセトンで超音波洗浄される。
【0041】
ステップST2では、第一ガラスファイバ110(露出領域)へのMFD拡大領域130の形成が行われる。第一光ファイバ100が載置される第一作業台300aと第二作業台300bの間にはバーナー400が配置されている。第一光ファイバ100は、第一ガラスファイバ110の露出領域とバーナー400が対面するように、第一作業台300aと第二作業台300bに載置される。
【0042】
バーナー400は、矢印Sで示された方向(ファイバ軸を中心とした円周方向)に沿って第一光ファイバ100を回転させながら、第一ガラスファイバ110の露出領域内の所定長の領域(切断前のMFD拡大領域130)を加熱する(バーナーTEC加工)。あるいは、第一光ファイバ100を回転させずに第一ガラスファイバ110の露出領域内の所定長の領域を加熱してもよい。なお、バーナー400は、第一光ファイバ100の長手方向に沿って加熱すべき領域を往復移動可能な構造を有してもよい。また、MFD拡大領域130の形成後に、必要に応じてアニールが行われてもよい。MFD拡大領域130およびその周辺は、アルコールまたはアセトンによる超音波洗浄が行われる。
【0043】
ステップST3では、第一作業台300aおよび第二作業台300bに載置されている第一光ファイバ100がファイバカッター500により切断される(第一光ファイバ100の切断)。具体的には、矢印Aで示された位置で、切断前のMFD拡大領域130がMFD拡大領域130aとMFD拡大領域130bに分割されるように、第一光ファイバ100のうち第一ガラスファイバ110の露出領域がファイバカッター500により切断される。切断後の第一光ファイバ100(残った第一光ファイバ)は、MFD拡大領域130aを含む第一ガラスファイバ110を備え、MFD拡大領域130bを含む第一ガラスファイバ110の一部は除去される。
【0044】
ステップST4では、第一ガラスファイバ110と第二ガラスファイバ210の融着接続が行われる。具体的には、第一光ファイバ100(切断面100Aを含む第一ガラスファイバ110の一部が露出した状態)は第一作業台300aに載置される一方、第二光ファイバ200(端面200aを含む第二ガラスファイバ210の一部が露出した状態)は第二作業台300bに載置される。このとき、第一ガラスファイバ110の切断面100Aと第二ガラスファイバ210の端面200aは、融着接続器の放電電極550の間において突合された状態で、融着接続される。なお、領域Bは、第一ガラスファイバ110の切断面100Aと第二ガラスファイバ210の端面200aの融着点近傍を示す。
【0045】
ステップST5では、リコート層600となる樹脂の塗布が行われ、光ファイバ線路900Aが得られる。まず、リコート層600の形成前に、ステップST4により融着接続された、第一ガラスファイバ110の露出領域(MFD拡大領域130aを含む)と第二ガラスファイバ210の露出領域の清掃が行われ、その後、これら露出領域を一体的に覆うように樹脂が塗布される。その結果、MFD拡大領域130aを含む第一ガラスファイバ110の露出領域全体と、第二ガラスファイバ210の露出領域全体と、残っている第一被覆120の一部と、残っている第二被覆220の一部と、がリコート層600により覆れた光ファイバ線路900Aが得られる。
【0046】
上述の図1の例では、ステップST3において、第一ガラスファイバ110を覆う第一被覆120の一部が除去された状態で、第一光ファイバ100が切断される。そのため、飛散したガラス屑などが第一光ファイバ100(具体的には第一ガラスファイバ110の露出領域)に付着することなどにより、当該第一光ファイバ100の低強度化が引き起こされる。また、バーナーTEC加工では、比較的低い温度である程度の時間の熱を第一ガラスファイバ110に印加することにより、MFD拡大領域と残りの非MFD拡大領域とでガラスの環状構造が変化してしまう(MFD拡大領域130aのエッジ部の低強度化により当該第一光ファイバ100自体が破断し易くなる)。この点は、非特許文献1に指摘されている。特許文献4では、切断後のMFD拡大領域130aのエッジ部分低強度化を抑制する方法として、アニール工程が導入される。ただし、ステップST4における融着接続後の清掃は、第一ガラスファイバ110および第二ガラスファイバ210の露出領域の両端に第一被覆120および第二被覆220が残っているため、ステップST1やステップST2のように一方端部のみをアルコールまたはアセトンに浸漬させる超音波洗浄ができない。その結果、図1に示された製造方法(融着接続方法)では、ステップST5のリコート層形成前の清掃時にアルコールを浸した清掃道具でMFD拡大領域130aのエッジ部分を物理的に接触させて拭くことになる。この場合、該MFD拡大領域130aにおける低強度化は避けられなかった。あるいは、第一被覆120の一部および第二被覆220の一部がそれぞれ除去された第一ガラスファイバ110および第二ガラスファイバ210を融着することで得られる光ファイバ線路900Aは、MFD拡大領域130aを含む第一ガラスファイバ110の露出領域および端面200aを含む第二ガラスファイバ210の露出領域を曲げた状態でアルコールやアセトンが入っているバスに浸漬させて超音波洗浄する方法がある。しかしながら、残っている第一被覆120および第二被覆220がアルコールやアセトンに浸漬することによる汚れを回避するためは、被覆除去された第一ガラスファイバ110および第二ガラスファイバ210の露出領域の合計長を例えば500mm以上の長尺に設計し、これら露出領域を緩く曲げて上記バスに浸漬する必要がある。その結果、リコート長が長尺となり生産性が大幅に低下する。
【0047】
(実施形態)
図2は、本開示の光ファイバ融着接続方法の各工程(本開示の光ファイバ線路の製造工程)を説明するための図であり、図1に示された光ファイバ融着接続方法に起因した、光ファイバ線路の低強度化の回避および生産性向上の両立を可能にする。なお、図2も、2本の光ファイバを融着接続することにより光ファイバ線路を構成する例を示すが、2本の光ファイバのいずれかをファイバグレーティングに置き換えることにより利得等化器が得られる。また、以下の説明においても、ガラスファイバ表面に塗布される「樹脂」(第一リコート層および第二リコート層を構成する樹脂)は、一例として、UV硬化樹脂(UV-curable resin)であり、第一リコート層および第二リコート層は、いずれもUV照射により硬化した樹脂層(UV-cured resin layer)である。第一リコート層および第二リコート層は、同種の樹脂により構成されてもよい。
【0048】
本開示の一実施形態に係る光ファイバ融着接続方法によれば、図2に示されたように、ステップST1からステップST6を経て光ファイバ線路900B(本開示の一実施形態に係る光ファイバ線路)が得られる。なお、各工程での作業は、特に言及しない限り、図1の例に示された各工程での作業と同様である。
【0049】
すなわち、ステップST1では、第一光ファイバ100と第二光ファイバ200が用意されるとともに、被覆の部分的除去が行われる。用意される第一光ファイバ100および第二光ファイバ200の構造は、図1の例と同様である。
【0050】
ステップST2では、第一ガラスファイバ110へのMFD拡大領域130の形成が行われる。このステップST2の作業も、図1の例と同様に行われる。なお、バーナーTEC加工により形成されたMFD拡大領域130の長さはLTECであり、当該MFD拡大領域130の長さは、バーナーTEC加工が施される前の第一ガラスファイバ110の第一MFD(平均値)に対して0.3μm以上大きいMFDを有する領域の長さ(第一光ファイバ100の長手方向に沿った長さ)として定義される。
【0051】
ステップST3では、第一リコート層700となる樹脂の塗布が行われる。具体的に、第一リコート層700は、残っている第一被覆120の一部とオーバーラップした状態で、切断前のMFD拡大領域130のうち切断位置Aよりも第一被覆120側の一点までを覆うように第一ガラスファイバ110の露出領域上に設けられる。このように、第一光ファイバ100の切断前に第一リコート層700を設けることで、後述するステップST4(ファイバ切断)において、飛散したガラス屑のファイバガラス表面への付着は低減できる。なお、MFD拡大領域130のエッジ部から第一リコート層700の際までの長さはLTEC2である。また、第一リコート層700となる樹脂の塗布では、第一被覆120の残っている部分にオーバーラップした状態で、第一ガラスファイバ110の露出領域(MFD拡大領域130を含む)に第一リコート層700となる樹脂が塗布される。
【0052】
次に、ステップST4では、切断前のMFD拡大領域130が、矢印Aで示された位置でMFD拡大領域130aとMFD拡大領域130bに分割するように、第一光ファイバ100のうち第一ガラスファイバ110の露出領域がファイバカッター500により切断される。矢印Aで示された位置(切断位置)から切断前のMFD拡大領域130のエッチ部までの距離は、LTEC1である。
【0053】
なお、ステップST3において、第一リコート層700は、一旦切断位置Aよりも端面100a側の一点まで樹脂をリコートし、切断前に、切断面100Aから切断位置Aよりも第一被覆120側の一点までの該樹脂の不要部分を除去することにより設けられてもよい。このように第一リコート層700が設けられることで、リコート作業で使用する治具と製品として残る部分との接触が避けられる。この場合、ステップST4では、第一リコート層700の部分的除去が行われる。第一リコート層700の部分的除去では、切断後の第一光ファイバ100において、MFD拡大領域130aのエッジ部から切断位置Aに向かって距離LTEC2となる位置までの第一リコート層700が残される一方、第一ガラスファイバ110の切断位置Aを含む先端側に位置する第一リコート層700が除去される。
【0054】
ステップST5では、第一リコート層700に触れないように第一ガラスファイバ110の露出表面がアルコールやアセトンで洗浄され、その後、第一ガラスファイバ110と第二ガラスファイバ210の融着接続が行われる。第二被覆220の部分的除去は、このステップST5の前に実施されていればよい。
【0055】
なお、長さLTECは、20mm以上60mm以下が好適である。長さLTEC1は、5mm以上50mm以下が好適である。切断前のMFD拡大領域130の長さLTECを長くすることで、MFDのファイバ長さに対する変化量は小さくなる。そのため、所望のMFDを得るための切断位置のトレランスは増大することになり、製造面においても有利である。
【0056】
更に、ステップST5における融着接続では、第一光ファイバ100(切断面100Aを含む第一ガラスファイバ110の一部が露出した状態)は第一作業台300aに載置される一方、第二光ファイバ200(端面200aを含む第二ガラスファイバ210の一部が露出した状態)は第二作業台300bに載置される。このとき、第一ガラスファイバ110の切断面100Aと第二ガラスファイバ210の端面200aは、融着接続器の放電電極550の間において突合された状態で、融着接続される。
【0057】
ステップST6では、第二リコート層800となる樹脂の塗布が行われ、光ファイバ線路900Bが得られる。第二リコート層800は、第一リコート層700のうち長さLの領域と、切断面から第一リコート層700までの第一ガラスファイバ110の露出領域(MFD拡大領域130aの少なくとも一部を含む)と、第二ガラスファイバ210の露出領域全体と、残っている第二被覆220の一部を覆っている。そのため、第二リコート層800となる樹脂の塗布では、第二被覆220の残っている部分にオーバーラップした状態で、第一リコート層700、切断面から第一リコート層700までの第一ガラスファイバ110の先端、および、第二ガラスファイバ210の露出領域に、第二リコート層800となる樹脂が塗布される。なお、第二リコート層800に覆われる第一リコート層700の長さLは、2mm以上である。
【0058】
以上の工程を経て得られた当該光ファイバ線路900Bは、第一光ファイバ100側から第二光ファイバ200側へ向かって順に設けられた、第一定常区間S1、第二定常区間S2、遷移区間S3、第三定常区間S4、および、第四定常区間S5、により構成されている。第一定常区間S1は、第一ガラスファイバ110のうち、第一MFDを有するとともに第一被覆120に覆われた区間により定義される。第二定常区間S2は、第一ガラスファイバ110のうち、第一MFDを有するとともに第一リコート層700に覆われた区間により定義される。遷移区間S3は、切断後のMFD拡大領域130aに相当する区間であり、第一ガラスファイバ110のうち、第一MFDよりも大きなMFD(バーナーTEC加工により0.3μm以上拡大されている)を有するとともに第二リコート層800に覆われた区間により定義される。なお、遷移区間S3の長さは、5mm以上50mm以下であるのが好ましい。第三定常区間S4は、第二ガラスファイバ210のうち、第二MFDを有するとともに第二リコート層800に覆われた区間により定義される。第四定常区間S5は、第二ガラスファイバ210のうち、第二MFDを有するとともに第二被覆220に覆われた区間により定義される。
【0059】
更に、当該光ファイバ線路900Bにおいて、第一定常区間S1と第二定常区間S2の境界では、第一リコート層700の一部が第一被覆120の一部を覆っている。第三定常区間S4と第四定常区間S5の境界では、第二リコート層800の一部が第二被覆220の一部を覆っている。
【符号の説明】
【0060】
900B…光ファイバ線路、100…第一光ファイバ、110…第一ガラスファイバ、100a…端面、100A…切断面、120…第二被覆、130…切断前のMFD拡大領域、130a…MFD拡大領域、130b…MFD拡大領域、200…第二光ファイバ、200a…端面、210…第二ガラスファイバ、220…第二、200…第二光ファイバ、300a…作業台、300b…作業台、400…バーナー、500…ファイバカッター、550…放電電極(融着接続器)、700…第一リコート層、800…第二地コート層、900B…光ファイバ線路、S…回転方向、S1…第一定常区間、S2…第二定常区間、S3…遷移区間、S4…第三定常区間、S5…第四定常区間、A…切断位置。
図1
図2