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特許7443983発泡断熱紙原紙、積層体、発泡断熱紙製容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】発泡断熱紙原紙、積層体、発泡断熱紙製容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/00 20060101AFI20240228BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240228BHJP
   D21H 19/24 20060101ALI20240228BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B32B29/00
D21H27/30 A
D21H19/24 C
B65D81/38 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020138554
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034718
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中鉢 洪太
(72)【発明者】
【氏名】平野 大信
(72)【発明者】
【氏名】仲山 伸二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 香帆
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-238225(JP,A)
【文献】特開平01-239190(JP,A)
【文献】特開2020-104309(JP,A)
【文献】特開2004-306986(JP,A)
【文献】特開2019-108627(JP,A)
【文献】特開2019-006418(JP,A)
【文献】特開2004-181752(JP,A)
【文献】特開平10-167248(JP,A)
【文献】特表2012-517360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0003431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D
D21H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材を備える発泡断熱紙原紙であって、紙基材上の、発泡層を設ける側に最表層を備え、該最表層がポリアルキレンイミンを含有し、
前記紙基材は、縦方向の引張強さが10kN/m以上28kN/m以下であり、横方向の引張強さが5kN/m以上18kN/m以下であり、縦方向および横方向の引張強さの平均値が10kN/m以上28kN/m以下であり、内部結合強さが100J/m 以上472J/m 以下である、発泡断熱紙原紙。
【請求項2】
ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、請求項1に記載の発泡断熱紙原紙。
【請求項3】
前記最表層における前記ポリアルキレンイミンの片面あたりの塗工量が、0.005g/m以上0.20g/m以下である、請求項1または2に記載の発泡断熱紙原紙。
【請求項4】
前記最表層が、さらに水溶性バインダーを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡断熱紙原紙。
【請求項5】
紙基材の表層または/および裏層上にサイズプレス剤を有し、該サイズプレス剤の塗工量が、片面あたり、0.10g/m 以上1.5g/m 以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡断熱紙原紙。
【請求項6】
紙基材の裏層の坪量が、30g/m 以上80g/m 以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡断熱紙原紙。
【請求項7】
発泡断熱紙製容器用原紙である、請求項1~のいずれか1項に記載の発泡断熱紙原紙。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の発泡断熱紙原紙の少なくとも最表層上に熱可塑性樹脂層を備える、積層体。
【請求項9】
請求項に記載の積層体を成形し、かつ、最表層上の前記熱可塑性樹脂層を発泡させてなる、発泡断熱紙製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡断熱紙原紙ならびに積層体およびこれを用いてなる発泡断熱紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材に断熱性を付与するために、紙基材に積層された熱可塑性樹脂層を発泡させた発泡断熱紙が使用されている。たとえば、特許文献1には、紙基材の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層した発泡断熱紙製容器用シートの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-214038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発泡断熱紙では、紙基材と熱可塑性樹脂層との接着性に改善の余地があった。そのため、従来の発泡断熱紙では、熱可塑性樹脂を発泡させるための熱の伝わり方にバラつきがある傾向にあり、その結果として、熱可塑性樹脂の発泡が不均一になり、発泡断熱紙表面(発泡層表面)の美麗性に課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題の存在に鑑みてなされたものであり、表面の美麗性に優れる発泡断熱紙が得られる発泡断熱紙原紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の構成を採用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<8>に関する。
<1> 紙基材を備える発泡断熱紙原紙であって、紙基材上の、発泡層を設ける側に最表層を備え、該最表層がポリアルキレンイミンを含有する、発泡断熱紙原紙。
<2> ポリアルキレンイミンがポリエチレンイミンである、<1>に記載の発泡断熱紙原紙。
<3> 前記最表層における前記ポリアルキレンイミンの片面あたりの塗工量が、0.005g/m以上0.20g/m以下である、<1>または<2>に記載の発泡断熱紙原紙。
<4> 前記最表層が、さらに水溶性バインダーを含有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の発泡断熱紙原紙。
<5> 前記紙基材は、縦方向の引張強さが35kN/m以下であり、横方向の引張強さが22kN/m以下であり、縦方向および横方向の引張強さの平均値が28kN/m以下であり、内部結合強さが100J/m以上1000J/m以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の発泡断熱紙原紙。
<6> 発泡断熱紙製容器用原紙である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の発泡断熱紙原紙。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の発泡断熱紙原紙の少なくとも最表層上に熱可塑性樹脂層を備える、積層体。
<8> <7>に記載の積層体を成形し、かつ、最表層上の前記熱可塑性樹脂層を発泡させてなる、発泡断熱紙製容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面の美麗性に優れる発泡断熱紙が得られる発泡断熱紙原紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[発泡断熱紙原紙]
本発明の発泡断熱紙原紙(以下、単に「発泡断熱紙原紙」ともいう)は、紙基材を備える発泡断熱紙原紙であって、紙基材上の、発泡層を設ける側に最表層を備え、該最表層がポリアルキレンイミンを含有する。すなわち、本発明の発泡断熱紙原紙は、少なくとも紙基材と、ポリアルキレンイミンを含有する最表層とを有する。
本発明の発泡断熱紙原紙は、最表層上に熱可塑性樹脂層を設けて積層体を形成し、該熱可塑性樹脂層を発泡させることにより発泡断熱紙(例えば、発泡断熱紙製容器)を製造するために使用される。
【0009】
本発明の発泡断熱紙原紙は、紙基材上の発泡層を設ける側に備えられる最表層が、ポリアルキレンイミンを含有することにより、最表層上に熱可塑性樹脂層を設け、該熱可塑性樹脂層を発泡させて得られる発泡層表面の美麗性に優れる。なお、以下の説明において「発泡後の表面の美麗性に優れる」とは、発泡後の積層体において、発泡層の発泡セルが小さく均質であり、表面の凹凸が小さいことを意味する。
最表層がポリアルキレンイミンを含有することにより発泡後の表面の美麗性に優れる理由は定かではないが、以下のように推定される。填料等の添加により低下する傾向にある、紙基材と発泡層としての熱可塑性樹脂層との接着性を、ポリアルキレンイミンの存在により向上させることができ、その結果として、水蒸気、熱風等の加熱媒体により熱可塑性樹脂層を発泡させる際に、熱の伝わり方のバラツキが抑制されて、発泡セルが小さく均質となり、発泡後の表面の美麗性に優れると考えられる。
【0010】
<紙基材>
紙基材は、表層と、裏層と、表層および裏層の間に配置される1層以上の中層とを備えることが好ましい。なお、紙基材の「表層」とは、発泡層を設ける側をいう。また、紙基材の「加工性」とは、折り曲げ加工に対する適性を有していることを意味する。
【0011】
(原料パルプ)
紙基材を構成する原料パルプとしては、たとえば、木材パルプ、非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、晒しクラフトパルプ(BKP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、コットンリンター、コットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、竹、バガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、特に限定されないが、たとえば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙等を原料とする脱墨パルプが挙げられる。原料パルプは、上記の1種を単独でも2種以上混合して用いてもよい。なお、原料パルプに、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機合成繊維、ポリノジック繊維等の再生繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機繊維を混用してもよい。
【0012】
紙基材の原料パルプは、特に限定されないが、強度の観点から、化学パルプを含有することが好ましく、広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上を含有することがより好ましく、広葉樹晒クラフトパルプおよび針葉樹晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上を含有することがさらに好ましい。広葉樹クラフトパルプの原料としては、アカシア、ユーカリ等が挙げられる。針葉樹クラフトパルプの原料としては、ラジアータパイン等が挙げられる。
原料パルプが広葉樹クラフトパルプを含有する場合、原料パルプ中の広葉樹クラフトパルプの配合率は、強度、地合、および平滑性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
原料パルプが広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上を含有する場合、広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプ以外の他のパルプは、原料パルプ中、好ましくは3質量%未満、より好ましくは2質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満である。
【0013】
離解した紙基材を構成するパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は、強度および発泡断熱紙原紙の使用用途の観点から、好ましくは300mL以上、より好ましくは350mL以上であり、そして、好ましくは650mL以下、より好ましくは600mL以下である。
離解した紙基材を構成するパルプのCSFは、JIS P 8220:2012に準拠し、離解して得られたパルプスラリーについて、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0014】
紙基材を抄紙する前のパルプスラリーにおける原料パルプのCSFは、離解した紙基材を構成するパルプのCSFを上述した範囲に調整する観点から、好ましくは360mL以上、より好ましくは370mL以上、さらに好ましくは380mL以上であり、そして、好ましくは550mL以下、より好ましくは540mL以下、さらに好ましくは530mL以下である。
紙基材を抄紙する前のパルプスラリーにおける原料パルプのCSFは、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0015】
(填料)
原料パルプには、強度および加工性の観点から、填料を添加することが好ましい。填料としては、クレー、焼成カオリン、デラミネートカオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム-シリカ複合体、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機填料;尿素-ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料が挙げられる。填料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
填料は、強度および加工性の観点から、紙基材中の灰分が好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは15質量%以下となるように添加することが好ましい。
紙基材中の灰分は、JIS P 8251:2003に準拠して測定される。
【0016】
(層間接着剤)
紙基材の各層間を、澱粉、ポリアクリルアミド等の層間接着剤を用いて接着してもよい。層間接着剤の塗工量(固形分換算)は、発泡断熱紙原紙の用途に応じて適宜変更されるが、たとえば、澱粉を用いる場合には0.1~5.0g/m程度であることが好ましく、また、ポリアクリルアミドを用いる場合には0.01~0.3g/m程度であることが好ましい。
【0017】
(サイズプレス剤)
紙基材の表層または裏層上にサイズプレス剤を有していてもよい。サイズプレス剤としては、酸化澱粉、カチオン化澱粉等の変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、澱粉等が挙げられる。なお、澱粉を用いる場合は、酵素変性、熱化学変性等の自家変性を行ってもよい。サイズプレス剤の塗工量(固形分換算)は、強度および加工性の観点から、片面あたり、好ましくは0.10g/m以上、より好ましくは0.20g/m以上であり、そして、好ましくは1.5g/m以下、より好ましくは1.2g/m以下である。
【0018】
(任意成分)
原料パルプには、必要に応じて、たとえば、内添サイズ剤、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、嵩高剤等の内添助剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料、顔料、蛍光増白剤、pH調整剤等の任意成分を添加してもよい。
【0019】
内添サイズ剤としては、ロジン、アルキルケテンダイマー等が挙げられる。本発明の発泡断熱紙原紙が発泡断熱紙製容器用原紙であり、かつ、容器の内容物の酸性度が高い場合、容器の劣化を防ぐ観点から、内添サイズ剤としてアルキルケテンダイマーを用いることが好ましい。紙基材の各層中のアルキルケテンダイマーの配合量は、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、0質量部でもよく、アルキルケテンダイマーを使用する場合には、好ましくは0.08質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下である。
【0020】
歩留向上剤としては、硫酸バンド等が挙げられる。紙基材の各層中の歩留向上剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下であり、さらに好ましくは1.0質量部以下であり、その下限は0質量部である。
【0021】
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。紙基材中の各層中の乾燥紙力増強剤の配合量は特に限定されないが、乾燥紙力増強剤としてPAMを使用する場合、加工性の観点から、PAMの配合量は、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、0.02質量部以上1.2質量部未満であることが好ましい。乾燥紙力増強剤としてカチオン化澱粉を使用する場合、加工性の観点から、カチオン化澱粉の配合量は、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.02質量部以上であり、そして、好ましくは2.0質量部未満、より好ましくは1.6質量部未満である。
また、乾燥紙力増強剤として、2種以上を併用してもよく、たとえば、PAMとカチオン化澱粉とを併用する態様が例示される。2種以上を併用する場合、乾燥紙力増強剤の合計の配合量は、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは2.0質量部未満、より好ましくは1.6質量部未満である。
【0022】
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。紙基材の各層中の湿潤紙力増強剤の配合量は、特に限定されないが、原料パルプ100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下であり、その下限は0質量部である。
【0023】
<最表層>
(ポリアルキレンイミン)
本発明の発泡断熱紙原紙は、紙基材上の発泡層を設ける側に備えられる最表層が、ポリアルキレンイミンを含有する。ポリアルキレンイミンとしては、好ましくはアルキレン基の炭素数が1以上5以下のポリアルキレンイミンであり、より好ましくはポリエチレンイミンまたはポリプロピレンイミン、さらに好ましくはポリエチレンイミンである。これらのポリアルキレンイミンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
紙基材上の発泡層を設ける側に備えられる最表層に、ポリアルキレンイミンを含有させる方法は、特に限定されないが、紙基材上の発泡層を設ける側に、ポリアルキレンイミンを含有する塗工液を塗工する方法;紙基材の発泡層を設ける側を、ポリアルキレンイミンを含有する含浸液に浸漬して含浸する方法等が例示される。
ポリアルキレンイミンを含有する塗工液を塗工して最表層にポリアルキレンイミンを含有させる場合、最表層におけるポリアルキレンイミンの片面あたりの塗工量(固形分換算)は、好ましくは0.005g/m以上、より好ましくは0.007g/m以上、さらに好ましくは0.01g/m以上であり、そして、好ましくは0.20g/m以下、より好ましくは0.18g/m以下である。なお、ポリアルキレンイミンを含有する含浸液に浸漬させて最表層にポリアルキレンイミンを含有させる場合も、最表層におけるポリアルキレンイミンの片面あたりの量が上記範囲の量であることが好ましい。
【0024】
(水溶性バインダー)
最表層は、さらに水溶性バインダーを含有することが好ましい。水溶性バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体やデキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、澱粉類(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる変性澱粉)等の天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、およびポリビニルアルコール等の合成水溶性高分子が例示される。これらの中でも、水溶性バインダーは、天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体ならびに合成水溶性高分子よりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、澱粉類およびそのオリゴマーさらにはその変性体ならびにポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、変性澱粉およびポリビニルアルコールよりなる群から選ばれる1種以上であることがよりさらに好ましい。これらの水溶性バインダーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記の水溶性バインダーは、上記のポリアルキレンイミンと混合し、紙基材上の発泡層を設ける側に塗工、含浸等することにより、紙基材上の発泡層を設ける側に備えられる最表層に含有させることができる。
最表層における水溶性バインダーの片面あたりの塗工量(固形分換算)は、好ましくは0.02g/m以上、より好ましくは0.04g/m以上、さらに好ましくは0.05g/m以上、そして、好ましくは0.30g/m以下、より好ましくは0.25g/m以下、さらに好ましくは0.20g/m以下である。なお、ポリアルキレンイミンおよび水溶性バインダーを含有する含浸液に浸漬させて最表層に水溶性バインダーを含有させる場合の好適範囲も上記と同様である。
【0025】
(顔料)
最表層は、顔料を含んでいてもよい。顔料としては、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、(重質または軽質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン等の無機顔料;プラスチックピグメント等の有機顔料が挙げられる。これらの顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。顔料は、たとえば、ポリアルキレンイミンを含有する塗工液または含浸液に分散させて用いることができる。
最表層における顔料の配合量は、ポリアルキレンイミン100質量部(固形分換算)に対して、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは800質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下、よりさらに好ましくは100質量部以下、よりさらに好ましくは50質量部以下、よりさらに好ましくは10質量部以下であり、その下限は0質量部である。
【0026】
最表層とは反対側、すなわち、紙基材の裏層上に備えられる層が、最表層に含有されるポリアルキレンイミン、水溶性バインダー等を含有してもよい。紙基材の裏層上に備えられる層が、最表層に含有されるポリアルキレンイミン、水溶性バインダー等を含有することにより、発泡断熱紙原紙の両面上に、後述する熱可塑性樹脂層を備える場合、紙基材の裏層上に備えられる熱可塑性樹脂層との密着性を高め、好適に、紙基材に防水性を付与する防水層とすることができる。
【0027】
<紙基材の特性>
紙基材は、縦方向の引張強さが35kN/m以下であり、横方向の引張強さが22kN/m以下であり、縦方向および横方向の引張強さの平均値が28kN/m以下であり、内部結合強さが100J/m以上1000J/m以下であることが好ましい。本明細書中、紙基材の縦方向とは、抄紙機の進行方向(MD方向)を意味する。また、紙基材の横方向とは、抄紙機の進行方向と直角な方向(CD方向)を意味する。
【0028】
(引張強さ)
紙基材の縦方向の引張強さは、加工性の観点から、好ましくは35kN/m以下、より好ましくは32kN/m以下、さらに好ましくは30kN/m以下、よりさらに好ましくは28kN/m以下である。紙基材の縦方向の引張強さは、強度の観点から、好ましくは10kN/m以上、より好ましくは15kN/m以上、よりさらに好ましくは20kN/m以上である。
紙基材の横方向の引張強さは、加工性の観点から、好ましくは22kN/m以下、より好ましくは20kN/m以下、さらに好ましくは18kN/m以下である。紙基材の横方向の引張強さは、強度の観点から、好ましくは5kN/m以上、より好ましくは10kN/m以上、さらに好ましくは13kN/m以上である。
紙基材の縦方向および横方向の引張強さの平均値は、好ましくは28kN/m以下、より好ましくは26kN/m以下、さらに好ましくは24kN/m以下である。紙基材の縦方向および横方向の引張強さの平均値が上記範囲であることにより、紙基材を備える発泡断熱紙原紙は、どの方向においても折り曲げやすいため、加工性に優れる。また、紙基材の縦方向および横方向の引張強さの平均値は、強度の観点から、好ましくは10kN/m以上、より好ましくは15kN/m以上、さらに好ましくは18kN/m以上である。
紙基材の縦方向および横方向の引張強さは、JIS P 8113:2006に準拠して測定される。それらの測定値から紙基材の縦方向および横方向の引張強さの平均値が求められる。
【0029】
(内部結合強さ)
紙基材の内部結合強さは、紙層間の剥離を抑制する観点から、好ましくは100J/m以上、より好ましくは250J/m以上、さらに好ましくは350J/m以上、よりさらに好ましくは400J/m以上である。紙基材の内部結合強さの上限は、特に限定されないが、例えば1000J/m以下である。
内部結合強さは、JAPAN TAPPI 18-2に準拠して測定される。
【0030】
(坪量)
紙基材の全層の坪量は、強度および加工性の観点から、好ましくは100g/m以上、より好ましくは150g/m以上、さらに好ましくは180g/m以上、よりさらに好ましくは200g/m以上であり、そして、好ましくは450g/m以下、より好ましくは400g/m以下、さらに好ましくは350g/m以下である。
紙基材の表層の坪量は、好ましくは50g/m以上、より好ましくは60g/m以上であり、そして、好ましくは100g/m以下、より好ましくは90g/m以下である。
紙基材の中層の坪量は、1層あたり、好ましくは20g/m以上、より好ましくは30g/m以上であり、そして、好ましくは80g/m以下、より好ましくは70g/m以下である。紙基材の中層の合計坪量は、好ましくは60g/m以上、より好ましくは90g/m以上であり、そして、好ましくは240g/m以下、より好ましくは210g/m以下である。
紙基材の裏層の坪量は、好ましくは30g/m以上、より好ましくは40g/m以上であり、そして、好ましくは90g/m以下、より好ましくは80g/m以下である。
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0031】
(厚さ)
紙基材の厚さは、発泡断熱紙原紙の使用用途により適宜変更されるが、加工性の観点から、100μm以上500μm以下であることが好ましい。
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0032】
(密度)
紙基材の密度は、発泡断熱紙原紙の使用用途により適宜変更されるが、加工性の観点から、0.70g/cm以上1.00g/cm以下であることが好ましい。
紙基材の密度は、JIS P 8124:2011に準拠して測定された紙基材の坪量およびJIS P 8118:2014に準拠して測定された紙基材の厚さから算出される。
【0033】
<発泡断熱紙原紙の製造方法>
本発明の発泡断熱紙原紙は、原料パルプを含有するパルプスラリーを抄紙する抄紙工程と、抄紙された湿紙を乾燥する乾燥工程とを含む方法により紙基材を製造する工程を含む。抄紙方法は、特に限定されず、たとえば、pHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法、酸性抄紙後の表面にアルカリ性薬剤を塗布する方法等が挙げられる。抄紙機についても、特に限定されず、たとえば、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。また、乾燥方法についても、特に限定されず、公知の乾燥装置を用いることができる。
【0034】
本発明の発泡断熱紙原紙の製造方法は、上記方法により得られた紙基材の少なくとも一方の層上に、サイズプレス剤を塗工するサイズプレス剤塗工工程を含んでいてもよい。塗工機としては、サイズプレス機等を用いることができる。
【0035】
本発明の発泡断熱紙原紙の製造方法は、平滑性を向上させて美麗性を向上させるために、サイズプレス剤塗工工程後、カレンダー処理を施す工程を有していてもよい。この場合、通常のカレンダー処理よりもソフトカレンダー処理を施すことが好ましい。
【0036】
本発明の発泡断熱紙原紙の製造方法は、上記方法により得られた紙基材の少なくとも発泡層を設ける側に、ポリアルキレンイミンを含有する最表層を設ける工程を含む。ポリアルキレンイミンを含有する最表層を形成する方法は、特に限定されず、たとえば、紙基材の少なくとも発泡層を設ける側に、公知の塗工方式で、ポリアルキレンイミンを含有する塗工液を塗工した後、乾燥する方法;紙基材の少なくとも発泡層を設ける側を、ポリアルキレンイミンを含有する含浸液に浸漬して含浸させ、乾燥する方法等が挙げられる。塗工機についても、特に限定されず、公知の塗工機を用いることができる。乾燥方法についても、特に限定されず、公知の乾燥装置を用いることができる。なお、塗工液は、二度以上塗工してもよい。また、含浸方法についても、特に限定されない。
【0037】
本発明の発泡断熱紙原紙は、発泡後の表面の美麗性および加工性に優れるので、発泡断熱紙製容器用原紙として好適に用いられる。
【0038】
[積層体]
本発明の積層体は、上述した発泡断熱紙原紙の少なくとも最表層上に、熱可塑性樹脂層を備える。積層体を加熱することで、該熱可塑性樹脂層が発泡し、発泡層が形成される。
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸等の生分解性樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。熱可塑性樹脂層は、単一の樹脂から構成された単層または複数層であってもよいし、複数の樹脂から構成された単層または複数層であってもよい。
これらの中でも、本発明の積層体において、発泡断熱紙原紙の最表層上に備えられる熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は、発泡性の観点から、好ましくはポリエチレンであり、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である。
熱可塑性樹脂層は、公知のラミネート法を用いて形成しもよいし、公知の塗布法を用いて形成してもよい。
【0039】
本発明の積層体が、発泡断熱紙原紙の両面に熱可塑性樹脂層を備える場合、最表層とは反対側、すなわち、紙基材の裏層上に備えられる熱可塑性樹脂層を、紙基材に防水性を付与する防水層とすることができる。この場合、最表層上に備えられる熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の融点は、裏層上の防水層としての熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の融点よりも、3℃以上低くすることが好ましく、10℃以上低くすることがより好ましく、15℃以上低くすることがさらに好ましい。
最表層上の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂と裏層上の熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂とが、上記の融点差を有することにより、積層体を加熱したときに、最表層上の熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂が軟化し、発泡をし始める温度に達しても、裏層上の熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂層は、軟化せず水蒸気の蒸散を抑制する。水蒸気の蒸散が抑制されることにより、最表層上の熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂の発泡性が向上し、断熱性の高い発泡断熱紙が得られる。
紙基材の裏層上に備えられる熱可塑性樹脂層を構成する樹脂としては、特に限定されず、上述したものが挙げられるが、発泡性の観点から、好ましくはポリエチレンであり、より好ましくは中密度ポリエチレン(MDPE)である。
【0040】
熱可塑性樹脂層の厚さは、発泡断熱紙原紙の使用用途により適宜変更されるが、加工性の観点から、好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0041】
本発明の積層体は、上述した発泡断熱紙原紙と熱可塑性樹脂層とがこの順で直接的に積層されていればよく、顔料およびバインダーを含有する顔料塗工層、印刷層、バリア層等をさらに有していてもよい。バリア層としては、特に限定されないが、金属箔(たとえばアルミ箔)等が挙げられる。積層方法は特に限定されず、公知の積層方法および公知の塗布方法を採用できる。なお、裏層上に、防水性を付与するために、金属箔等のバリア層を形成した場合も、上記と同様の効果が得られる。
【0042】
[発泡断熱紙製容器]
本発明の発泡断熱紙製容器は、上述した積層体を成形し、かつ、最表層上の熱可塑性樹脂層を発泡させてなる。積層体の成形方法は特に限定されず、公知の方法により成形することができる。また、最表層上の熱可塑性樹脂層を発泡させる方法も特に限定されず、公知の方法により発泡させることができる。
【実施例
【0043】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0044】
実施例および比較例で用いた原材料は、以下のとおりである。
(1)原料パルプ
・LBKP:広葉樹晒クラフトパルプ(アカシア材30%、ユーカリ材70%)
(2)製紙用薬品
・乾燥紙力増強剤:カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM、荒川化学工業株式会社製の「PS-OC-1」)
・填料:軽質炭酸カルシウム
・サイズプレス剤:澱粉
(3)塗工材料
・水溶性バインダー:ポリビニルアルコール(PVA、日本酢ビ・ポバール株式会社製の「JM-17」)
・ポリアルキレンイミン:ポリエチレンイミン(PEI、株式会社日本触媒製の「エポミンP-1000」)
(4)熱可塑性樹脂
・低密度ポリエチレン(LDPE、密度918kg/m、融点103℃)
・中密度ポリエチレン(MDPE、密度940kg/m、融点133℃)
【0045】
[発泡断熱紙原紙の作製]
(実施例1)
LBKP100%(CSF:400mL)を使用し、原料パルプ100部(固形分換算)に対し、乾燥紙力剤としてカチオン化澱粉0.5部およびPAM0.5部、填料として軽質炭酸カルシウム10部を添加し、パルプスラリーを調製した。前記パルプスラリーを用いて、表層(1層目)の坪量が85g/m、中層(2~4層目)の1層あたりの坪量が50g/m、および裏層(5層目)の坪量が50g/mとなるように、澱粉を層間接着剤として用いてツインワイヤー式抄紙機で5層抄きで抄紙し、乾燥して厚さ320μm、密度0.89g/cmの紙基材を得た。
得られた紙基材の表層および裏層上に、ゲートロールサイズプレスコーターを用いて、サイズプレス剤として澱粉の塗工量(固形分換算)が片面あたり0.50g/m(両面で1.00g/m)となるように塗工し、乾燥した。次いで、PVAとPEIとを混合して混合液を調製し、ロッドコーターを用いて、PVAの塗工量(固形分換算)が片面あたり0.15g/m(両面で0.30g/m)、PEIの塗工量(固形分換算)が片面あたり0.02g/m(両面で0.04g/m)となるように塗工し、乾燥後、厚さ310μmになるようにソフトカレンダー処理を行い、発泡断熱紙原紙を得た。
[積層体の作製]
得られた発泡断熱紙原紙の裏層上に、厚さ40μmとなるようにMDPEを溶融温度360℃、積層速度50m/分で押出した。その後、クーリングロールおよびニップロール(タイプAデュロメータ硬さ70)を用いて、線圧2kgf/cmで押圧および圧着し、裏層上に熱可塑性樹脂層を形成した。
次いで、発泡断熱紙原紙の表層上に、厚さ50μmとなるようにLDPEを溶融温度360℃、積層速度50m/分で押出した。クーリングロールおよびニップロール(タイプAデュロメータ硬さ70)を用いて、線圧2kgf/cmで押圧および圧着し、熱可塑性樹脂層を形成し、厚さ400μmの積層体を得た。
[発泡断熱紙製容器の作製]
得られた積層体から、発泡断熱紙製容器の胴部となるブランクの印刷および打ち抜きを行い、打ち抜いたブランクを、紙基材の縦方向が軸方向となるように丸めて端部同士をヒートシールすることで、上端開口部の直径が90mm、下端開口部の直径が65mmの円錐台状の筒を作製した。筒の下端に底紙をヒートシールにより取付け、筒の上端に直径3mmの曲線形状を有するトップカール部を形成することで、高さ110mmの成形体を得た。得られた成形体を120℃で6分間加熱し、発泡断熱紙製容器を得た。
【0046】
(実施例2)
PEIの塗工量(固形分換算)を、片面あたり0.12g/m(両面で0.24g/m)とした以外は、実施例1と同様に、発泡断熱紙原紙、積層体および発泡断熱紙製容器を得た。
【0047】
(比較例1)
PVAの塗工量(固形分換算)を、片面あたり0.05g/m(両面で0.10g/m)とし、PEIを塗工しなかった以外は、実施例1と同様に、発泡断熱紙原紙、積層体および発泡断熱紙製容器を得た。
【0048】
(比較例2)
PEIを塗工しなかった以外は、実施例1と同様に、発泡断熱紙原紙、積層体および発泡断熱紙製容器を得た。
【0049】
[分析および評価]
実施例および比較例の発泡断熱紙原紙が備える紙基材、積層体および発泡断熱紙製容器について、以下の分析および評価を行った。
【0050】
(坪量)
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
【0051】
(密度)
紙基材の密度は、JIS P 8118:2014に準拠し、JIS P 8124:2011に準拠して測定された紙基材の坪量およびJIS P 8118:2014に準拠して測定された厚さから算出した。
【0052】
(引張強さ)
紙基材の縦方向および横方向の引張強さは、JIS P 8113:2006に準拠し、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて調湿後の紙基材について測定した。測定機として、横型引張試験機(L&W社製、CODE SE-064)を用いた。
【0053】
(内部結合強さ)
紙基材の内部結合強さは、JAPAN TAPPI 18-2に準拠し、紙基材の縦方向および横方向について測定し、その相乗平均値を紙基材の内部結合強さとした。なお、両面テープは3M社製400を使用した。
【0054】
(発泡後の積層体の美麗性)
得られた積層体から、1辺100mmの正方形の試験片を切り出した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、熱可塑性樹脂層を発泡させて、発泡断熱紙を得た。発泡断熱紙(発泡後の積層体)の熱可塑性樹脂層(発泡層)の表面を目視で観察し、下記基準で美麗性の評価を行った。
A:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく均質であり、表面は概ね平坦である。
B:形成された発泡セルがやや大きく、大きさにばらつきも見られるが、表面の凹凸は小さく過発泡は見られない。
C:過発泡が発生しているなど、表面に大きな凹凸がある。
【0055】
(発泡断熱紙製容器の美麗性)
得られた発泡断熱紙製容器について、表面を目視で観察し、下記基準で美麗性の評価を行った。
A:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく均質であり、表面は概ね平坦である。
B:形成された発泡セルがやや大きく、大きさにばらつきも見られるが、表面の凹凸は小さく過発泡は見られない。
C:過発泡が発生しているなど、表面に大きな凹凸がある。
【0056】
(成形性)
得られた発泡断熱紙製容器について、端部同士をヒートシールした接着面の剥離状態、トップカール部における紙層内の剥離状態を目視で観察し、下記基準で成型性の評価を行った。
A:接着面の剥離およびトップカール部における紙層内の剥離が見られない。
B:接着面の剥離またはトップカール部における紙層内の剥離のいずれかが見られる。
C:接着面の剥離およびトップカール部における紙層内の剥離のいずれも見られる。
【0057】
【表1】
【0058】
表1からわかるように、実施例1および2の発泡断熱紙原紙から形成された積層体は、発泡後の発泡層の美麗性に優れ、また、実施例1および2の発泡断熱紙原紙から形成された発泡断熱紙製容器は、発泡層の美麗性および成形性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の発泡断熱紙原紙は、発泡後の表面の美麗性および加工性に優れるので、発泡断熱紙製容器用原紙として好適に用いられる。また、本発明の積層体は、発泡後の表面の美麗性および加工性に優れるので、発泡断熱紙製容器として好適に用いられる。