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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】モータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/16 20160101AFI20240228BHJP
【FI】
H02P21/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020152379
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046367
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 和希
(72)【発明者】
【氏名】井手 徹
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
(72)【発明者】
【氏名】水野 峻史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将史
(72)【発明者】
【氏名】淺野 吉彦
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/097733(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090109(WO,A1)
【文献】特開2016-226089(JP,A)
【文献】特開2011-143850(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転数と誘起電圧定数とに基づいて前記モータの駆動を制御する制御部と、
前記モータの駆動制御を停止させることで前記モータの各相に流れる電流を遮断しているときに前記モータの各相にかかる電圧をd軸電圧及びq軸電圧に変換し、前記q軸電圧及び前記回転数により前記誘起電圧定数を算出する誘起電圧定数算出部と、
を備え
前記誘起電圧定数算出部は、前記モータの駆動制御を停止させたときに前記回転数が安定していない場合には、前記モータの駆動制御を再開させ、
前記モータの駆動制御を再開させることにより前記回転数が安定した場合には、前記モータの駆動制御を再度停止させ、
前記モータの駆動制御を再度停止したときに前記回転数が安定している場合には、前記誘起電圧定数を算出す
モータの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータの制御装置であって、
前記誘起電圧定数算出部は、前記モータの駆動制御を停止させる前において弱め界磁制御により前記モータの駆動が制御されていた場合で、かつ、前記モータの駆動制御を停止させたときに前記モータのロータの位置が誘起電圧取得不可領域外にある場合、前記誘起電圧定数を算出する
ことを特徴とするモータの制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータの制御装置であって、
前記誘起電圧定数算出部は、前記d軸電圧、前記q軸電圧、及び前記回転数により前記誘起電圧定数を算出する
ことを特徴とするモータの制御装置。
【請求項4】
請求項1~の何れか1項に記載のモータの制御装置であって、
前記制御部は、前記誘起電圧定数により前記モータの温度を推定する温度推定部を備える
ことを特徴とするモータの制御装置。
【請求項5】
請求項1~の何れか1項に記載のモータの制御装置であって、
前記モータの回転数により求められる電圧指令値と搬送波の電圧値との比較結果に応じた駆動信号を出力するドライブ回路と、
前記駆動信号によりスイッチング素子がオン、オフすることにより、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータを駆動させるインバータ回路と、
を備え、
前記制御部は、前記モータに流れる電流と前記電圧指令値と前記誘起電圧定数とにより前記回転数を推定する回転数推定部を備える
ことを特徴とするモータの制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載のモータの制御装置であって、
前記誘起電圧定数算出部は、
前記回転数の変動の大きさが第1閾値以上である場合、前記モータのトルク指令値の変動の大きさが第2閾値以上である場合、または、前記モータの任意の相の電圧の変動の大きさが第3閾値以上である場合、前記回転数が安定していないと判断し、
前記回転数の変動の大きさが前記第1閾値より小さい場合、前記トルク指令値の変動の大きさが前記第2閾値より小さい場合、または、前記任意の相の電圧の変動の大きさが前記第3閾値より小さい場合、前記回転数が安定していると判断する
ことを特徴とするモータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの制御装置として、制御タイミングになると、モータの駆動制御を一時停止させてモータにかかる誘起電圧のピーク値を誘起電圧定数として取得し、その取得した誘起電圧定数によりモータの温度を推定し、その推定した温度に応じてモータのトルク指令値を調整することでモータの駆動を制御するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、上記制御装置では、制御タイミングから誘起電圧がピーク値になるまでモータの駆動制御が停止するため、その停止期間が比較的長いと、モータの駆動制御の再開時にモータの制御量が大きくなりモータの制御性が低下する懸念がある。例えば、モータの駆動制御の再開時にモータの制御量が大きくなることで、モータに過電流が流れモータの駆動が強制的に停止したり、モータの制御系全体が脈動したりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-108568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面に係る目的は、モータの制御装置において、モータの誘起電圧定数を算出する際にモータの制御性が低下することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一つの形態であるモータの制御装置は、モータの回転数と誘起電圧定数とに基づいて前記モータの駆動を制御する制御部と、前記モータの駆動制御を停止させることで前記モータの各相に流れる電流を遮断しているときに前記モータの各相にかかる電圧をd軸電圧及びq軸電圧に変換し、前記q軸電圧及び前記回転数により前記誘起電圧定数を算出する誘起電圧定数算出部とを備える。
【0007】
これにより、モータの誘起電圧がピーク値になるまで待つことなく誘起電圧定数を算出することができるため、モータの駆動制御の再開時にモータの制御量が大きくなることを抑えることができ、モータの制御性が低下することを抑制することができる。
【0008】
また、前記誘起電圧定数算出部は、前記モータの駆動制御を停止させたときに前記回転数が安定していない場合には、前記モータの駆動制御を再開させ、前記モータの駆動制御を再開させることにより前記回転数が安定した場合には、前記モータの駆動制御を再度停止させ、前記モータの駆動制御を再度停止したときに前記回転数が安定している場合には、前記誘起電圧定数を算出するように構成してもよい。
【0009】
これにより、誘起電圧定数の算出精度を上げることができるため、その誘起電圧定数によりモータの駆動を制御することで、モータの制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0010】
また、前記誘起電圧定数算出部は、前記モータの駆動制御を停止させる前において弱め界磁制御により前記モータの駆動が制御されていた場合で、かつ、前記モータの駆動制御を停止させたときに前記モータのロータの位置が誘起電圧取得不可領域外にある場合、前記誘起電圧定数を算出するように構成してもよい。
【0011】
これにより、誘起電圧定数の算出精度を上げることができるため、その誘起電圧定数によりモータの駆動を制御することで、モータの制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0012】
また、前記誘起電圧定数算出部は、前記d軸電圧、前記q軸電圧、及び前記回転数により前記誘起電圧定数を算出するように構成してもよい。
【0013】
これにより、誘起電圧定数の算出精度を上げることができるため、その誘起電圧定数によりモータの駆動を制御することで、モータの制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記誘起電圧定数により前記モータの温度を推定する温度推定部を備えるように構成してもよい。
【0015】
これにより、モータの温度に対応する適正なトルク指令値を求めることができるため、そのトルク指令値によりモータの駆動を制御することで、モータの制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る一つの形態であるモータの制御装置は、前記モータの回転数により求められる電圧指令値と搬送波の電圧値との比較結果に応じた駆動信号を出力するドライブ回路と、前記駆動信号によりスイッチング素子がオン、オフすることにより、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータを駆動させるインバータ回路とを備え、前記制御部は、前記モータに流れる電流と前記電圧指令値と前記誘起電圧定数とにより前記回転数を推定する回転数推定部を備えるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モータの制御装置において、モータの誘起電圧定数を算出する際にモータの制御性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態のモータの制御装置の一例を示す図である。
図2】第1実施例における誘起電圧定数算出部の動作を示すフローチャートである。
図3】第2実施例における誘起電圧定数算出部の動作を示すフローチャートである。
図4】第3実施例における誘起電圧定数算出部の動作を示すフローチャートである。
図5】誘起電圧の一例を示す図である。
図6】第4実施例における誘起電圧定数算出部の動作を示すフローチャートである。
図7】誘起電圧の一例を示す図である。
図8】実施形態のモータの制御装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0020】
図1は、実施形態のモータの制御装置の一例を示す図である。
【0021】
図1に示す制御装置1は、例えば、車両(電動フォークリフトやプラグインハイブリッド車など)に搭載されるモータM(永久磁石同期モータなど)を駆動するための制御装置であって、インバータ回路2と、制御回路3とを備える。なお、モータMは、ロータ(回転子)の位置θ(ロータの基準位置から現在の位置までの位相)を検出し、その検出した位置θを制御回路3に出力する電気角検出部Sp(レゾルバなど)を備えている。また、互いに直列接続される分圧抵抗R1、R2がモータMのU相の入力端子とグランド(電源Pの負極端子)との間に接続されている。また、互いに直列接続される分圧抵抗R3、R4がモータMのV相の入力端子とグランドとの間に接続されている。また、互いに直列接続される分圧抵抗R5、R6がモータMのW相の入力端子とグランドとの間に接続されている。
【0022】
インバータ回路2は、電源Pから供給される直流電力を交流電力に変換してモータMを駆動するものであって、コンデンサCと、スイッチング素子SW1~SW6(IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など)と、電流センサSi1、Si2とを備える。すなわち、コンデンサCの一方端が電源Pの正極端子及びスイッチング素子SW1、SW3、SW5の各コレクタ端子に接続され、コンデンサCの他方端が電源Pの負極端子及びスイッチング素子SW2、SW4、SW6の各エミッタ端子に接続されている。スイッチング素子SW1のエミッタ端子とスイッチング素子SW2のコレクタ端子との接続点は電流センサSi1を介してモータMのU相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW3のエミッタ端子とスイッチング素子SW4のコレクタ端子との接続点は電流センサSi2を介してモータMのV相の入力端子に接続されている。スイッチング素子SW5のエミッタ端子とスイッチング素子SW6のコレクタ端子との接続点はモータMのW相の入力端子に接続されている。
【0023】
コンデンサCは、電源Pからインバータ回路2に出力される電圧を平滑する。
【0024】
スイッチング素子SW1は、制御回路3から出力される駆動信号S1がハイレベルであるときオンし、駆動信号S1がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW2は、制御回路3から出力される駆動信号S2がハイレベルであるときオンし、駆動信号S2がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW3は、制御回路3から出力される駆動信号S3がハイレベルであるときオンし、駆動信号S3がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW4は、制御回路3から出力される駆動信号S4がハイレベルであるときオンし、駆動信号S4がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW5は、制御回路3から出力される駆動信号S5がハイレベルであるときオンし、駆動信号S5がローレベルであるときオフする。スイッチング素子SW6は、制御回路3から出力される駆動信号S6がハイレベルであるときオンし、駆動信号S6がローレベルであるときオフする。
【0025】
スイッチング素子SW1~SW6がそれぞれオン、オフを繰り返すことで、電源Pから出力される直流の電圧が、互いに位相が120度ずつ異なる交流の電圧Vu、Vv、Vwに変換される。そして、交流の電圧VuがモータMのU相の入力端子に印加され、交流の電圧VvがモータMのV相の入力端子に印加され、交流の電圧VwがモータMのW相の入力端子に印加されることで、モータMに互いに位相が120度ずつ異なる交流電流Iu、Iv、Iwが流れ、モータMのロータが回転する。
【0026】
電流センサSi1は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、モータMのU相に流れる交流電流Iuを検出して制御回路3に出力する。また、電流センサSi2は、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、モータMのV相に流れる交流電流Ivを検出して制御回路3に出力する。
【0027】
制御回路3は、記憶部4と、ドライブ回路5と、演算部6とを備える。
【0028】
記憶部4は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成される。
【0029】
ドライブ回路5は、IC(Integrated Circuit)などにより構成され、演算部6から出力されるU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*と搬送波の電圧値とを比較し、その比較結果に応じた駆動信号S1~S6をスイッチング素子SW1~SW6のそれぞれのゲート端子に出力する。なお、搬送波は、三角波、ノコギリ波(鋸歯状波)、逆ノコギリ波などとする。
【0030】
例えば、ドライブ回路5は、U相電圧指令値Vu*が搬送波の電圧値以上である場合、ハイレベルの駆動信号S1を出力するとともにローレベルの駆動信号S2を出力し、U相電圧指令値Vu*が搬送波の電圧値より小さい場合、ローレベルの駆動信号S1を出力するとともにハイレベルの駆動信号S2を出力する。また、ドライブ回路5は、V相電圧指令値Vv*が搬送波の電圧値以上である場合、ハイレベルの駆動信号S3を出力するとともにローレベルの駆動信号S4を出力し、V相電圧指令値Vv*が搬送波の電圧値より小さい場合、ローレベルの駆動信号S3を出力するとともにハイレベルの駆動信号S4を出力する。また、ドライブ回路5は、W相電圧指令値Vw*が搬送波の電圧値以上である場合、ハイレベルの駆動信号S5を出力するとともにローレベルの駆動信号S6を出力し、W相電圧指令値Vw*が搬送波の電圧値より小さい場合、ローレベルの駆動信号S5を出力するとともにハイレベルの駆動信号S6を出力する。
【0031】
演算部6は、マイクロコンピュータなどにより構成され、回転数算出部7と、減算部8と、温度推定部9と、トルク制御部10と、トルク/電流指令値変換部11と、座標変換部12と、減算部13と、減算部14と、電流制御部15と、座標変換部16と、誘起電圧定数算出部17とを備える。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、回転数算出部7、減算部8、温度推定部9、トルク制御部10、トルク/電流指令値変換部11、座標変換部12、減算部13、減算部14、電流制御部15、座標変換部16、及び誘起電圧定数算出部17が構成される。
【0032】
回転数算出部7は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いてモータMの回転数ωを算出する。例えば、回転数算出部7は、位置θを所定時間(演算部6のクロック周期など)で除算することにより回転数ωを求める。
【0033】
減算部8は、外部から入力される回転数指令値ω*と回転数算出部7から出力される回転数ωとの回転数差Δωを算出する。
【0034】
温度推定部9は、誘起電圧定数算出部17から出力される誘起電圧定数Ψaに基づいてモータMの温度Tを推定する。例えば、温度推定部9は、記憶部4に記憶されている、モータMの誘起電圧定数とモータMの温度とが互いに対応付けられている情報を参照して、誘起電圧定数算出部17から出力される誘起電圧定数Ψaに相当する誘起電圧定数に対応する温度を温度Tとして出力する。なお、誘起電圧定数Ψaは、モータMの任意の相に流れていた電流を遮断した後にモータMの任意の相にかかる誘起電圧のピーク値に相当する値とする。
【0035】
トルク制御部10は、減算部8から出力される回転数差Δω及び温度推定部9から出力される温度Tを用いてトルク指令値T*を出力する。例えば、トルク制御部10は、記憶部4に記憶されている、モータMの回転数とモータMのトルクとが互いに対応付けられている情報を参照して、回転数差Δωに相当する回転数に対応するトルクをトルク指令値T*とする。また、トルク制御部10は、温度推定部9から出力される温度Tが温度閾値Tth以上である場合、トルク指令値T*を所定値分小さくして出力し、温度Tが温度閾値Tthより小さい場合、トルク指令値T*をそのまま出力する。なお、温度閾値Tthは、モータMのロータに設けられている永久磁石が減磁しない状態における温度Tの最大値とする。
【0036】
トルク/電流指令値変換部11は、トルク制御部10から出力されるトルク指令値T*を、d軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*に変換する。例えば、トルク/電流指令値変換部11は、記憶部4に記憶されている、モータMのトルクとd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*とが互いに対応付けられている情報を参照して、トルク指令値T*に相当するトルクに対応するd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を出力する。
【0037】
座標変換部12は、電流センサSi1により検出される交流電流Iu及び電流センサSi2により検出される交流電流Ivを用いて、モータMのW相に流れる交流電流Iwを求める。なお、電流センサSi1、Si2により検出される電流は、交流電流Iu、Ivの組み合わせに限定されず、交流電流Iv、Iwの組み合わせ、または、交流電流Iu、Iwの組み合わせでもよい。電流センサSi1、Si2により交流電流Iv、Iwが検出される場合、座標変換部12は、交流電流Iv、Iwを用いて、交流電流Iuを求める。また、電流センサSi1、Si2により交流電流Iu、Iwが検出される場合、座標変換部12は、交流電流Iu、Iwを用いて、交流電流Ivを求める。
【0038】
また、座標変換部12は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、交流電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id(逆起電力を制御するための電流成分)及びq軸電流Iq(トルクを制御するための電流成分)に変換する。例えば、座標変換部12は、下記式1に示す変換行列C1を用いて、交流電流Iu、Iv、Iwを、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。なお、モータMの駆動制御が一時停止した後、駆動制御が再開する際、電気角検出部Spにより検出される位置θに含まれるノイズ、及び、アナログ値からデジタル値に変換する際に交流電流Iu、Ivに含まれる量子化誤差によりモータMの制御量(回転数差Δωなど)が増大することでモータMの制御性が低下するおそれがある。
【0039】
【数1】
【0040】
また、インバータ回路2において、電流センサSi1、Si2の他に、モータMのW相に流れる交流電流Iwを検出する電流センサSi3をさらに備える場合、座標変換部12は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、電流センサSi1~Si3により検出される交流電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換するように構成してもよい。
【0041】
減算部13は、トルク/電流指令値変換部11から出力されるd軸電流指令値Id*と、座標変換部12から出力されるd軸電流Idとの電流差ΔIdを算出する。
【0042】
減算部14は、トルク/電流指令値変換部11から出力されるq軸電流指令値Iq*と、座標変換部12から出力されるq軸電流Iqとの電流差ΔIqを算出する。
【0043】
電流制御部15は、減算部13から出力される電流差ΔId及び減算部14から出力される電流差ΔIqを用いたPI(Proportional Integral)制御によりd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。例えば、電流制御部15は、下記式2を用いてd軸電圧指令値Vd*を算出するとともに、下記式3を用いてq軸電圧指令値Vq*を算出する。なお、KpはPI制御の比例項の定数とし、KiはPI制御の積分項の定数とし、LqはモータMを構成するコイルのq軸インダクタンスとし、LdはモータMを構成するコイルのd軸インダクタンスとし、ωは回転数算出部7から出力される回転数とし、Ψaは誘起電圧定数算出部17から出力される誘起電圧定数とする。
【0044】
d軸電圧指令値Vd*=Kp×電流差ΔId+Ki×∫(電流差ΔId)-ωLqIq・・・式2
q軸電圧指令値Vq*=Kp×電流差ΔIq+Ki×∫(電流差ΔIq)+ωLdId+ωΨa・・・式3
【0045】
すなわち、電流制御部15は、d軸電流Idとd軸電流指令値Id*との電流差ΔIdが小さくなるようにd軸電圧指令値Vd*を算出するとともにq軸電流Iqとq軸電流指令値Iq*との電流差ΔIqが小さくなるようにq軸電圧指令値Vq*を算出する。
【0046】
座標変換部16は、電気角検出部Spにより検出される位置θを用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。例えば、座標変換部16は、下記式4に示す変換行列C2を用いて、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*に変換する。
【0047】
【数2】
【0048】
なお、回転数算出部7、減算部8、温度推定部9、トルク制御部10、トルク/電流指令値変換部11、座標変換部12、減算部13、減算部14、電流制御部15、及び座標変換部16により制御部が構成されるものとする。すなわち、制御部は、モータMの回転数ωと誘起電圧定数Ψaとに基づいてモータMの駆動を制御する。
【0049】
誘起電圧定数算出部17は、モータMの駆動制御を停止させることでモータMの各相に流れる交流電流Iu、Iv、Iwを遮断しているときにモータMの各相にかかる誘起電圧としての電圧Vu、Vv、Vwをd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換し、少なくともq軸電圧Vqと、回転数ωとにより誘起電圧定数Ψaを算出する。なお、交流電流Iu,Iv,Iwを遮断するとはモータMの駆動制御を停止させた後に、交流電流Iu,Iv,Iwが減少した状態を意味する。例えば、交流電流Iu,Iv,Iwの値がほぼゼロまで減少した状態である。
【0050】
<第1実施例>
図2は、第1実施例における誘起電圧定数算出部17の動作の一例を示す図である。
【0051】
まず、誘起電圧定数算出部17は、誘起電圧定数算出タイミングになると、モータMの駆動制御を停止させた後(ステップS11)、電圧Vu、Vv、Vwを取得する(ステップS12)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、誘起電圧定数算出タイミングになると、モータMの駆動制御を停止させる旨の指示を電流制御部15または座標変換部16に送る。電流制御部15は、モータMの駆動制御を停止させる旨の指示を受け取ると、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*をそれぞれ強制的にゼロにする。または、座標変換部16は、モータMの駆動制御を停止させる旨の指示を受け取ると、U相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*をそれぞれ強制的にゼロにする。すると、駆動信号S1~S6がそれぞれローレベルになり、スイッチング素子SW1~SW6がそれぞれ常時オフし、モータMの各相に流れていた電流を遮断する。そして、誘起電圧定数算出部17は、分圧抵抗R1、R2の接続点にかかる電圧と分圧抵抗R1、R2の抵抗値とによりモータMのU相にかかる電圧Vuを求める。また、誘起電圧定数算出部17は、分圧抵抗R3、R4の接続点にかかる電圧と分圧抵抗R3、R4の抵抗値とによりモータMのV相にかかる電圧Vvを求める。また、誘起電圧定数算出部17は、分圧抵抗R5、R6の接続点にかかる電圧と分圧抵抗R5、R6の抵抗値とにより電圧Vwを求める。なお、分圧抵抗R1~R6の代わりにモータMの各相にそれぞれ電圧センサを設けてもよい。このように構成する場合、誘起電圧定数算出部17は、モータMのU相に設けられる電圧センサにより電圧Vuを取得し、モータMのV相に設けられる電圧センサにより電圧Vvを取得し、モータMのW相に設けられる電圧センサにより電圧Vwを取得する。
【0052】
次に、誘起電圧定数算出部17は、電圧Vu、Vv、Vwをd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換する(ステップS13)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、上記式1に示す変換行列C1を用いて、電圧Vu、Vv、Vwを、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換する。
【0053】
次に、誘起電圧定数算出部17は、q軸電圧Vq及び回転数ωにより誘起電圧定数Ψaを算出する(ステップS14)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、誘起電圧定数Ψa=q軸電圧Vq/回転数ωを計算することにより、誘起電圧定数Ψaを求める。なお、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqは下記式5により求められるものとし、RはモータMを構成するコイルの抵抗成分とし、pは微分演算子とする。これにより、下記式5のd軸電流Id及びq軸電流Iqにゼロを代入することで、誘起電圧定数Ψa=q軸電圧Vq/回転数ωを得ることができる。
【0054】
【数3】
【0055】
そして、誘起電圧定数算出部17は、モータMの駆動制御を再開させて、誘起電圧定数Ψaの算出処理を終了する(ステップS15)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、モータMの駆動制御を再開させる旨の指示を電流制御部15または座標変換部16に送る。電流制御部15は、モータMの駆動制御を再開させる旨の指示を受け取ると、電流差ΔId及び電流差ΔIqを用いたPI制御により求めたd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力する。または、座標変換部16は、モータMの駆動制御を再開させる旨の指示を受け取ると、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*から変換したU相電圧指令値Vu*、V相電圧指令値Vv*、及びW相電圧指令値Vw*を出力する。
【0056】
なお、誘起電圧定数算出部17は、複数の誘起電圧定数を算出し、それら誘起電圧定数の平均値を、誘起電圧定数Ψaとして出力するように構成してもよい。これにより、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができる。
【0057】
第1実施例によれば、モータMの誘起電圧がピーク値になるまで待つことなく、任意の誘起電圧定数算出タイミングで誘起電圧定数Ψaを算出することができるため、モータMの駆動制御の再開時にモータMの制御量が大きくなることを抑えることができ、モータMの制御性が低下することを抑制することができる。
【0058】
<第2実施例>
図3は、第2実施例における誘起電圧定数算出部17の動作の一例を示す図である。なお、図3に示すステップS11~S13、S15は、図2に示すステップS11~S13、S15と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
誘起電圧定数算出部17は、電圧Vu、Vv、Vwをd軸電圧Vd及びq軸電圧Vqに変換した後(ステップS13)、d軸電圧Vd、q軸電圧Vq、及び回転数ωにより誘起電圧定数Ψaを算出する(ステップS14´)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、下記式6を計算することにより、誘起電圧定数Ψaを求める。なお、|Vdq|はモータMの任意の相に電流が流れなくなった後にモータMの任意の相にかかる誘起電圧のピーク値と(3/2)1/2との乗算値に相当する値とし、下記式7により求められるものとする。また、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqは下記式8により求められるものとし、Δθは電気角検出部Spのオフセット誤差や位置θをアナログ値からデジタル値に変換する際の量子化誤差により位置θに含まれる誤差とする。すなわち、誘起電圧定数算出部17は、d軸電圧Vdの2乗とq軸電圧Vqの2乗との和のルートの値を回転数ωで除算することにより誘起電圧定数Ψaを求める。
【0060】
【数4】
【0061】
【数5】
【0062】
【数6】
【0063】
なお、誘起電圧定数算出部17は、複数の誘起電圧定数を算出し、それら誘起電圧定数の平均値を、誘起電圧定数Ψaとして出力するように構成してもよい。これにより、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができる。
【0064】
第2実施例によれば、第1実施例と同様に、モータMの誘起電圧がピーク値になるまで待つことなく誘起電圧定数Ψaを算出することができるため、モータMの駆動制御の再開時にモータMの制御量が大きくなることを抑えることができ、モータMの制御性が低下することを抑制することができる。
【0065】
また、第2実施例によれば、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができるため、その誘起電圧定数ΨaによりモータMの駆動を制御することで、モータMの駆動の制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0066】
<第3実施例>
図4は、第3実施例における誘起電圧定数算出部17の動作の一例を示す図である。なお、図4に示すステップS11~S15は、図2に示すステップS11~S15と同様であるため、その説明を省略する。
【0067】
誘起電圧定数算出部17は、誘起電圧定数算出タイミングになり、モータMの駆動制御を停止させた後(ステップS11)、回転数ωが安定しているか否かを判断する(S16)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、回転数ωの変動の大きさが閾値th1以上である場合、回転数ωが安定していないと判断し、回転数ωの変動の大きさが閾値th1より小さい場合、回転数ωが安定していると判断する。または、誘起電圧定数算出部17は、トルク制御部10から出力されるトルク指令値T*の変動の大きさが閾値th2以上である場合、回転数ωが安定していないと判断し、トルク指令値T*の変動の大きさが閾値th2より小さい場合、回転数ωが安定していると判断する。または、誘起電圧定数算出部17は、モータMの任意の相の電圧の変動の大きさが閾値th3以上である場合、回転数ωが安定していないと判断し、モータMの任意の相の電圧の変動の大きさが閾値th3より小さい場合、回転数ωが安定していると判断する。
【0068】
次に、誘起電圧定数算出部17は、回転数ωが安定していないと判断すると(ステップS16:No)、モータMの駆動制御を再開させた後(ステップS17)、回転数ωが安定するまで回転数ωが安定しているか否かを繰り返し判断し(ステップS18:No)、回転数ωが安定していると判断すると(ステップS18:Yes)、ステップS11に戻り、再度、モータMの駆動制御を停止させる。
【0069】
そして、誘起電圧定数算出部17は、回転数ωが安定していると判断すると(ステップS16:Yes)、ステップS12~S15の処理を行う。
【0070】
すなわち、モータMの負荷(トルク)が変動することで回転数ωが安定しなくなると、図5(a)に示すように、モータMの駆動制御を停止させたとき(位置θ1)、モータMの任意の相にかかる誘起電圧の振幅値が変動するため、誘起電圧定数Ψaの算出精度が低下してしまう。そこで、第3実施例では、回転数ωが変動している場合、図5(b)に示すように、位置θ2においてモータMの駆動制御を一時再開させることで回転数ωを回転数指令値ω*に近づけて回転数ωを安定させることにより、誘起電圧の振幅値を安定させる。これにより、第3実施例では、モータMの駆動制御を再度停止させたとき(位置θ3)、誘起電圧の振幅値を安定させて誘起電圧定数Ψaを算出することができるため、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができる。すなわち、誘起電圧定数算出部17は、モータMの駆動制御を停止させたときに回転数ωが安定していない場合には、モータMの駆動制御を再開させ、モータMの駆動制御を再開させることにより回転数ωが安定した場合には、モータMの駆動制御を再度停止させ、モータMの駆動制御を再度停止したときに回転数ωが安定している場合には、誘起電圧定数Ψaを算出する。
【0071】
なお、誘起電圧定数算出部17は、複数の誘起電圧定数を算出し、それら誘起電圧定数の平均値を、誘起電圧定数Ψaとして出力するように構成してもよい。これにより、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができる。
【0072】
また、図4に示すステップS14を、図3に示すステップS14´に置き換えてもよい。
【0073】
第3実施例によれば、第1実施例と同様に、モータMの誘起電圧がピーク値になるまで待つことなく誘起電圧定数Ψaを算出することができるため、モータMの駆動制御の再開時にモータMの制御量が大きくなることを抑えることができ、モータMの制御性が低下することを抑制することができる。
【0074】
また、第3実施例によれば、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができるため、その誘起電圧定数ΨaによりモータMの駆動を制御することで、モータMの駆動の制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0075】
<第4実施例>
図6は、第4実施例における誘起電圧定数算出部17の動作の一例を示す図である。なお、図6に示すステップS11~S15は、図2に示すステップS11~S15と同様であるため、その説明を省略する。
【0076】
誘起電圧定数算出部17は、誘起電圧定数算出タイミングになり、モータMの駆動制御を停止させた後(ステップS11)、モータMの駆動制御を停止させる前において、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていたか否かを判断する(S19)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、モータMの駆動制御を停止させる前において、トルク/電流指令値変換部11から出力されるd軸電流指令値Id*がマイナスの値である場合、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていたと判断し、d軸電流指令値Id*がゼロである場合、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていなかったと判断する。
【0077】
次に、誘起電圧定数算出部17は、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていなかったと判断した場合(ステップS19:No)、ステップS12~S15の処理を行う。
【0078】
一方、誘起電圧定数算出部17は、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていたと判断した場合(ステップS19:Yes)、モータMのロータの位置θを取得する(ステップS20)。
【0079】
また、誘起電圧定数算出部17は、ロータが1回転する際の全ての位置θのうち、電圧Vu、Vv、Vwが電源Pの電圧に固定されて誘起電圧を正しく取得することができない領域(以下、誘起電圧取得不可領域という)を求める(ステップS21)。例えば、誘起電圧定数算出部17は、トルク/電流指令値変換部11から出力されるd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*により誘起電圧取得不可領域を求める。なお、ステップS20、S21の順番を互いに入れ替えてもよい。
【0080】
そして、誘起電圧定数算出部17は、位置θが誘起電圧取得不可領域外にあると判断すると、すなわち、誘起電圧を正しく取得することが可能な領域内に位置θがあると判断すると(ステップS22:Yes)、ステップS12~S15の処理を行う。例えば、誘起電圧定数算出部17は、ステップS12において、電圧Vu=誘起電圧のピーク値×sin(θ-π/2)、電圧Vv=誘起電圧のピーク値×sin(θ-π/2-2π/3)、及び電圧Vw=誘起電圧のピーク値×sin(θ-π/2-4π/3)を計算することにより、電圧Vu、Vv、Vwを求める。
【0081】
すなわち、モータMの駆動制御を停止させる前において、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていなかった場合、図7(a)に示すように、モータMの任意の相にかかる誘起電圧のピーク値が電源Pの正極端子の電圧Vp及び負極端子の電圧Vnを超えないため、誘起電圧定数算出部17は、任意の位置θにおいて誘起電圧を正しく取得することができる。一方、モータMの駆動制御を停止させる前において、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていた場合、図7(b)に示すように、モータMの任意の相にかかる誘起電圧のピーク値付近が電圧Vp及び電圧Vnに固定されてしまうため、誘起電圧定数算出部17は、ピーク値付近の誘起電圧(誘起電圧取得不可領域内の誘起電圧)を正しく取得することができない。そこで、第4実施例では、モータMの駆動制御を停止させる前において、弱め界磁制御によりモータMの駆動が制御されていた場合、位置θが誘起電圧取得不可領域外であるときのみ、すなわち、誘起電圧を正しく取得することができるときのみ、誘起電圧定数Ψaを算出する。これにより、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができる。
【0082】
なお、誘起電圧定数算出部17は、複数の誘起電圧定数を算出し、それら誘起電圧定数の平均値を、誘起電圧定数Ψaとして出力するように構成してもよい。これにより、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができる。
【0083】
また、図6に示すステップS14を、図3に示すステップS14´に置き換えてもよい。
【0084】
第4実施例によれば、第1実施例と同様に、モータMの誘起電圧がピーク値になるまで待つことなく誘起電圧定数Ψaを算出することができるため、モータMの駆動制御の再開時にモータMの制御量が大きくなることを抑えることができ、モータMの制御性が低下することを抑制することができる。
【0085】
また、第4実施例によれば、誘起電圧定数Ψaの算出精度を上げることができるため、その誘起電圧定数ΨaによりモータMの駆動を制御することで、モータMの駆動の制御性が低下することをさらに抑制することができる。
【0086】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0087】
<変形例>
図8は、実施形態のモータMの制御装置1の変形例を示す図である。なお、図8において、図1に示す構成と同じ構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図8に示す制御装置1において、図1に示す制御装置1と異なる点は、電気角検出部Spが省略されている点と、演算部6において回転数算出部7の替わりに回転数推定部18を備えている点である。例えば、マイクロコンピュータが記憶部4に記憶されているプログラムを実行することにより、回転数推定部18が構成される。
【0089】
回転数推定部18は、座標変換部12から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iq、並びに、電流制御部15から出力されるd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を用いて、回転数ω及び位置θを推定する。例えば、回転数推定部18は上記式5に示す電圧方程式を用いて回転数ωを求め、その求めた回転数ωに所定時間(演算部6のクロック周期など)を乗算することにより位置θを求める。なお、Ψaは、誘起電圧定数算出部17から出力される誘起電圧定数とする。
【0090】
誘起電圧定数算出部17は、上記第1~第4実施例により、誘起電圧定数Ψaを算出する。なお、誘起電圧定数算出部17は、誘起電圧定数Ψaを算出する際、回転数推定部18から出力される回転数ωを用いるものとする。また、回転数算出部18、減算部8、温度推定部9、トルク制御部10、トルク/電流指令値変換部11、座標変換部12、減算部13、減算部14、電流制御部15、及び座標変換部16により制御部が構成されるものとする。
【0091】
このように構成しても、モータMの誘起電圧がピーク値になるまで待つことなく誘起電圧定数Ψaを算出することができるため、モータMの駆動制御の再開時にモータMの制御量が大きくなることを抑えることができ、モータMの制御性が低下することを抑制することができる。
【0092】
また、実施形態の制御装置1は、誘起電圧定数Ψaを算出する際にモータMの駆動制御を停止させる期間を比較的短くすることができるため、図8に示す制御装置1のように、回転数ωの推定時に回転数ωに含まれる誤差が比較的大きく、モータMの駆動制御が一時停止してから再開する際にモータMの制御量(回転数差Δωなど)が大きくなり易い構成に対して特に有効である。
【符号の説明】
【0093】
1 制御装置
2 インバータ回路
3 制御回路
4 記憶部
5 ドライブ回路
6 演算部
7 回転数算出部
8 減算部
9 温度推定部
10 トルク制御部
11 トルク/電流指令値変換部
12 座標変換部
13 減算部
14 減算部
15 電流制御部
16 座標変換部
17 誘起電圧定数算出部
18 回転数推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8