(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/44 20060101AFI20240228BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240228BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240228BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240228BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20240228BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20240228BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/48 P
H01M50/10
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2020169954
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟士
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-095400(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029497(WO,A1)
【文献】特開2018-028983(JP,A)
【文献】特開2018-085283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 50/20
H01M 10/0566
H01M 10/052
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリチウムイオン蓄電セルを積層したセルスタックと、
前記リチウムイオン蓄電セルが過放電か否かを判定するように構成された判定部と、
前記リチウムイオン蓄電セルのいずれか1つが過放電であると前記判定部が判定した場合に前記セルスタックの放電を禁止するように構成された過放電制御部と、を備えた蓄電モジュールであって、
前記リチウムイオン蓄電セルはそれぞれ、正極と、負極と、電解液と、前記電解液を前記正極と前記負極の間に封止する封止材と、を備え、
前記負極は、銅製の負極集電体と、前記負極集電体に設けられる負極活物質層と、を備え、
前記リチウムイオン蓄電セルは、前記セルスタックの最外層に位置する前記負極集電体を備える第1蓄電セルと、前記第1蓄電セル以外の第2蓄電セルと、を含み、
前記蓄電モジュールは、
前記第2蓄電セルを放電させる放電回路と、
前記放電回路に少なくとも1つの前記第2蓄電セルの放電を行わせることで、当該第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧よりも低くするように構成された電圧制御部と、を備える蓄電モジュール。
【請求項2】
前記電圧制御部は、前記リチウムイオン蓄電セルが過放電でないと前記判定部が判定している場合に前記第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧より低くする請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記判定部は、前記リチウムイオン蓄電セルの電圧が所定の過放電閾値以下の場合に前記リチウムイオン蓄電セルが過放電であると判定し、
前記電圧制御部は、いずれかの前記リチウムイオン蓄電セルの電圧が前記過放電閾値より大きく、かつ、前記過放電閾値よりも大きい所定の閾値より小さい場合に前記第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧より低くする請求項1又は請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記セルスタックの放電が制限される制限閾値である請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記電圧制御部は、前記セルスタックの電力が機器に供給されていない場合において、前記第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧より低くする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記蓄電モジュールは、前記第1蓄電セルに設けられる充電回路を備え、
前記充電回路は、前記第2蓄電セルから放電される電力によって前記第1蓄電セルを充電する請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記充電回路は、前記第1蓄電セルにのみ設けられる請求項6に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記放電回路は、前記リチウムイオン蓄電セルのセルバランスを行うセルバランス回路である請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項9】
前記電圧制御部は、前記リチウムイオン蓄電セルに目標電圧を設定し、前記リチウムイオン蓄電セルが前記目標電圧になるように前記リチウムイオン蓄電セルのセルバランスを行い、
前記第2蓄電セルに設定される前記目標電圧は、前記第1蓄電セルに設定される前記目標電圧よりも所定値低い請求項8に記載の蓄電モジュール。
【請求項10】
前記リチウムイオン蓄電セル同士の間を封止するセル間封止材を備える請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電モジュールとしては、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の蓄電モジュールは、複数の蓄電セルが積層されてなるセルスタックと、セルスタックに隣接する通電板と、を備える。蓄電セルはそれぞれ、正極と、負極と、電解液と、電解液を正極と負極の間に封止する封止材と、を備える。負極は、負極集電体と、負極集電体に設けられた負極活物質層と、を備える。複数の蓄電セルは、セルスタックの最外層に位置する負極集電体を備える第1蓄電セルと、第1蓄電セル以外の第2蓄電セルと、を含む。最外層に位置する負極集電体は、積層方向においてセルスタックの一端に配置されるとともに、通電板と接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電セルとしてリチウムイオン電池からなるリチウムイオン蓄電セルを用いた場合、リチウムイオン蓄電セルは、負極活物質層に蓄えられた電荷キャリアを放出することで、電池として機能する。特に銅製の負極集電体が用いられる場合、負極活物質層の電荷キャリアが欠乏している状態、すなわち、過放電状態でリチウムイオン蓄電セルが放電すると、負極集電体の銅がイオン化して電解液中に溶出する。セルスタックの最外層に位置する負極集電体が溶出した場合、蓄電モジュールの外部へセルスタックから電解液の液漏れが生じる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する蓄電モジュールは、複数のリチウムイオン蓄電セルを積層したセルスタックと、前記リチウムイオン蓄電セルが過放電か否かを判定するように構成された判定部と、前記リチウムイオン蓄電セルのいずれか1つが過放電であると前記判定部が判定した場合に前記セルスタックの放電を禁止するように構成された過放電制御部と、を備えた蓄電モジュールであって、前記リチウムイオン蓄電セルはそれぞれ、正極と、負極と、電解液と、前記電解液を前記正極と前記負極の間に封止する封止材と、を備え、前記負極は、銅製の負極集電体と、前記負極集電体に設けられる負極活物質層と、を備え、前記リチウムイオン蓄電セルは、前記セルスタックの最外層に位置する前記負極集電体を備える第1蓄電セルと、前記第1蓄電セル以外の第2蓄電セルと、を含み、前記蓄電モジュールは、前記第2蓄電セルを放電させる放電回路と、前記放電回路に少なくとも1つの前記第2蓄電セルの放電を行わせることで、当該第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧よりも低くするように構成された電圧制御部と、を備える。
【0006】
電圧制御部は、第2蓄電セルの電圧が第1蓄電セルの電圧より低くなるように放電回路によって第2蓄電セルを放電する。判定部は、第1蓄電セルが過放電となる前に第2蓄電セルが過放電であると判定しやすくなる。第2蓄電セルが過放電と判定されると、過放電制御部は、セルスタックの放電を禁止する。セルスタックの放電が禁止されることで、過放電となる前に第1蓄電セルの放電が抑制される。そのため、セルスタックの最外層に位置する負極集電体の溶出が抑制される。したがって、電解液の液漏れを抑制することができる。
【0007】
上記蓄電モジュールについて、前記電圧制御部は、前記リチウムイオン蓄電セルが過放電でないと前記判定部が判定している場合に前記第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧より低くしてもよい。
【0008】
上記蓄電モジュールについて、前記判定部は、前記リチウムイオン蓄電セルの電圧が所定の過放電閾値以下の場合に前記リチウムイオン蓄電セルが過放電であると判定し、前記電圧制御部は、いずれかの前記リチウムイオン蓄電セルの電圧が前記過放電閾値より大きく、かつ、前記過放電閾値よりも大きい所定の閾値より小さい場合に前記第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧より低くしてもよい。
【0009】
上記蓄電モジュールについて、前記所定の閾値は、前記セルスタックの放電が制限される制限閾値であってもよい。
上記蓄電モジュールについて、前記電圧制御部は、前記セルスタックの電力が機器に供給されていない場合において、前記第2蓄電セルの電圧を前記第1蓄電セルの電圧より低くしてもよい。
【0010】
前記蓄電モジュールは、前記第1蓄電セルに設けられる充電回路を備え、前記充電回路は、前記第2蓄電セルから放電される電力によって前記第1蓄電セルを充電するようにしてもよい。
【0011】
上記蓄電モジュールについて、前記充電回路は、前記第1蓄電セルにのみ設けられていてもよい。
上記蓄電モジュールについて、前記放電回路は、前記リチウムイオン蓄電セルのセルバランスを行うセルバランス回路であってもよい。
【0012】
上記蓄電モジュールについて、前記電圧制御部は、前記リチウムイオン蓄電セルに目標電圧を設定し、前記リチウムイオン蓄電セルが前記目標電圧になるように前記リチウムイオン蓄電セルのセルバランスを行い、前記第2蓄電セルに設定される前記目標電圧は、前記第1蓄電セルに設定される前記目標電圧よりも所定値低くしてもよい。
【0013】
上記蓄電モジュールについて、前記リチウムイオン蓄電セル同士の間を封止するセル間封止材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電解液の液漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における蓄電モジュールの概略構成図。
【
図4】制御装置が行う放電制御を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態における蓄電モジュールの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、蓄電モジュールの第1実施形態について説明する。本実施形態の蓄電モジュールは、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車のような車両に用いられる。
【0017】
図1に示すように、車両Veは、蓄電モジュール10と、インバータ100と、モータ110と、車両ECU120と、を備える。車両Veは、フォークリフトやトーイングトラクタ等の産業車両であってもよいし、乗用車であってもよい。
【0018】
蓄電モジュール10は、例えば、モータ110に電力を供給するための電力源である。インバータ100は、スイッチング素子101を備える。インバータ100は、スイッチング素子101を所定のデューティ比でスイッチング動作させることで、蓄電モジュール10からの直流電力を交流電力に変換する。モータ110は、インバータ100が出力する電力を用いて車両Veを駆動する。モータ110は、蓄電モジュール10から供給される電力で駆動する機器である。車両ECU120は、蓄電モジュール10の放電に関する制御等を行うものである。車両ECU120は、インバータ100のデューティ比を制御することにより、インバータ100への入力電力、すなわち、蓄電モジュール10の放電を制御する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、蓄電モジュール10は、組電池20と、正極通電板40と、負極通電板50と、リレースイッチ70と、セルバランス回路80と、電圧センサ85と、制御装置90と、を備える。
【0020】
図2に示すように、組電池20は、セルスタック30と、セル間封止材37と、を備える。
セルスタック30は、複数のリチウムイオン蓄電セル31を備える。セルスタック30は、複数のリチウムイオン蓄電セル31を積層した積層体である。以下の説明では、リチウムイオン蓄電セル31を蓄電セル31、リチウムイオン蓄電セル31が積層された方向を積層方向と称することがある。以下の説明では、積層方向からセルスタック30を見る平面視を、単に平面視と称することがある。
【0021】
各蓄電セル31は、正極32と、負極33と、セパレータ34と、封止材35と、電解液36と、を備える。
正極32は、正極集電体32aと、正極活物質層32bと、を備える。正極集電体32aは、化学的に不活性な電気伝導帯である。正極集電体32aは、例えばアルミニウム箔である。正極集電体32aは、積層方向に垂直な第1面32cと、積層方向において第1面32cの反対側に位置する第2面32dと、を有する。正極活物質層32bは、正極集電体32aの第1面32cに設けられている。
【0022】
積層方向からセルスタック30を見た平面視において、正極活物質層32bは、正極集電体32aの第1面32cの中央部に形成されている。平面視における正極集電体32aの第1面32cの周縁部は、正極活物質層32bが設けられていない正極未塗工部32eとなっている。正極未塗工部32eは、平面視において正極活物質層32bの周囲を囲むように配置されている。
【0023】
正極活物質層32bは、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、及びポリアニオン系化合物等、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。
【0024】
負極33は、銅製の負極集電体33aと、負極活物質層33bと、を備える。負極集電体33aは、銅箔である。負極集電体33aは、積層方向に垂直な第1面33cと、積層方向において第1面33cの反対側に位置する第2面33dと、を有する。負極活物質層33bは、負極集電体33aの第1面33cに設けられている。
【0025】
負極活物質層33bは、平面視において、負極集電体33aの第1面33cの中央部に形成されている。平面視における負極集電体33aの第1面33cの周縁部は、負極活物質層33bが設けられていない負極未塗工部33eとなっている。負極未塗工部33eは、平面視において負極活物質層33bの周囲を囲むように配置されている。
【0026】
負極活物質層33bは、負極活物質を含む。負極活物質には、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金、又は化合物であれば、特に限定はない。例えば、負極活物質としては、リチウム、炭素、金属化合物、及びリチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン(難黒鉛化性炭素)、及びソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0027】
負極33の第1面33cは、積層方向において正極32の第1面32cと向かい合うように配置されている。したがって、負極活物質層33bは正極活物質層32bと向かい合うように配置されている。平面視において、正極活物質層32bの形成領域の全体が負極活物質層33bの形成領域内に位置している。
【0028】
セパレータ34は、リチウムイオンを通過させる部材である。セパレータ34は、正極活物質層32bと負極活物質層33bとの間に配置されている。これにより、セパレータ34は、正極32及び負極33の接触による短絡を防止する。セパレータ34は、例えば、液体電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ34を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータ34は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。
【0029】
封止材35は、正極集電体32aと負極集電体33aとの間の距離を保持し、正極集電体32aと負極集電体33aとの短絡を防止している。封止材35は、平面視において、正極集電体32a及び負極集電体33aの周縁部に沿って設けられるとともに、正極活物質層32b及び負極活物質層33bの周囲を取り囲む枠状に形成されている。封止材35は、正極集電体32aの第1面32cの正極未塗工部32eと、負極集電体33aの第1面33cの負極未塗工部33eとの間に配置されている。
【0030】
正極32と負極33との間には、枠状の封止材35、正極32及び負極33によって囲まれた密閉空間Sが形成されている。
密閉空間Sには、セパレータ34及び電解液36が収容されている。したがって、封止材35は、正極32と負極33との間に電解液36を封止するものと言える。電解液36には、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質が挙げられる。なお、セパレータ34の周縁部分は、封止材35に埋まった状態とされている。
【0031】
封止材35は、正極32及び負極33との間の密閉空間Sを封止することにより、密閉空間Sに収容された電解液36の外部への漏出を抑制し得る。また、封止材35は、セルスタック30の外部から密閉空間S内への水分の侵入を抑制し得る。さらに、封止材35は、例えば、充放電反応等により正極32又は負極33から発生したガスが密閉空間Sの外部に漏れることを抑制し得る。
【0032】
セルスタック30は、複数の蓄電セル31が、隣り合う一方の蓄電セル31の正極集電体32aの第2面32dと、隣り合う他方の蓄電セル31の負極集電体33aの第2面33dとが接触するように重ね合わされた構造を有する。これにより、セルスタック30を構成する複数の蓄電セル31が直列に接続されている。
【0033】
セルスタック30は、バイポーラ電極38を備えている。ここで、セルスタック30においては、積層方向に隣り合う二つの蓄電セル31を積層することにより、互いに接する正極集電体32a及び負極集電体33aを一つの集電体とみなした疑似的なバイポーラ電極38が形成される。疑似的なバイポーラ電極38は、正極集電体32a及び負極集電体33aが重ね合わされた構造の集電体と、その集電体の一方側の面に形成された正極活物質層32bと、他方側の面に形成された負極活物質層33bとを含む。なお、バイポーラ電極38は、正極集電体32a及び負極集電体33aが互いに一体化または接合された構造の集電体を用いて形成されていてもよい。
【0034】
セル間封止材37は、積層方向と垂直な方向からセルスタック30の全周を囲むように設けられている。これにより、セル間封止材37が、集電体の外周縁を覆う。セル間封止材37が集電体の外周縁を覆うことにより、隣り合う一方の蓄電セル31の正極集電体32aの第2面32dと、隣り合う他方の蓄電セル31の負極集電体33aの第2面33dとの間がセル間封止材37により封止されている。従って、セル間封止材37は、複数の蓄電セル31同士の間を封止している。
【0035】
このように積層されたセルスタック30では、積層方向におけるセルスタック30の第1端に正極集電体32aが配置されている。当該正極集電体32aは、積層方向においてセルスタック30の最外層に位置する。また、積層方向におけるセルスタック30の第2端に負極集電体33aが配置されている。当該負極集電体33aもまた、セルスタック30の最外層に位置する。
【0036】
正極通電板40は、セルスタック30の最外層に位置する正極集電体32aの第2面32dに接触している。正極通電板40は金属製の導体で構成されており、例えば、正極集電体32aと同材料の金属で構成される。正極通電板40は、平面視において正極集電体32aよりも小さく形成される。正極通電板40は、蓄電モジュール10の外部へセルスタック30の電力を取り出すために用いられる。したがって、セルスタック30の最外層に位置する正極集電体32aの第2面32dは、セルスタック30の外部への電力取り出し面である。
【0037】
負極通電板50は、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの第2面33dに接触している。負極通電板50は金属製の導体で構成されており、例えば、負極集電体33aと同材料の金属で構成される。負極通電板50は、平面視において負極集電体33aよりも小さく形成される。負極通電板50は、蓄電モジュール10の外部へセルスタック30の電力を取り出すために用いられる。したがって、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの第2面33dは、セルスタック30の外部への電力取り出し面である。
【0038】
複数の蓄電セル31は、第1蓄電セル31aと、第2蓄電セル31bと、を含む。第1蓄電セル31aは、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aを備える。第2蓄電セル31bは、セルスタック30を構成する蓄電セル31のうち、第1蓄電セル31a以外のものである。
【0039】
したがって、複数の蓄電セル31は、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aを備える第1蓄電セル31aと、第1蓄電セル31a以外の第2蓄電セル31bと、を含む。
【0040】
本実施形態では、封止材35が各蓄電セル31の正極32と負極33との間に電解液36を封止しており、電解液36を封止するための筐体をセルスタック30の外部に別途設けていないため、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの溶出が、蓄電モジュール10の外部への電解液36の液漏れを引き起こすおそれがある。
【0041】
一方、第2蓄電セル31bの負極集電体33aは、隣接する他の蓄電セル31に積層されている。これにより、第2蓄電セル31bの負極集電体33aは、隣接する他の蓄電セル31の正極集電体32aによって覆われている。したがって、第2蓄電セル31bの負極集電体33aが溶出した場合であっても、蓄電モジュール10の外部への電解液36の液漏れが発生しにくい。
【0042】
なお、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aは負極通電板50に接触し、かつ、負極通電板50に覆われているが、最外層に位置する負極集電体33aが溶出した場合、負極通電板50を伝って蓄電モジュール10の外部へ電解液36の液漏れが発生しやすい。特に、負極通電板50が負極集電体33aと同じく銅製である場合は、最外層に位置する負極集電体33aが溶出したとき、負極通電板50も溶出するおそれがあり、蓄電モジュール10の外部へ電解液36の液漏れがより発生しやすい。さらに、平面視において負極通電板50が負極集電体33aよりも小さく形成される場合は、最外層に位置する負極集電体33aが負極通電板50によって覆われない位置が生じるため、蓄電モジュール10の外部へ電解液36の液漏れがより発生しやすい。
【0043】
図1に示すように、リレースイッチ70は、蓄電モジュール10の充電又は放電を禁止するためのスイッチである。リレースイッチ70は、組電池20に直列に接続されている。
【0044】
電圧センサ85は、蓄電セル31に並列接続されている。電圧センサ85は、蓄電セル31の電圧を検出する。電圧センサ85は、蓄電セル31毎に個別に設けられている。
セルバランス回路80は、パッシブ方式のセルバランス回路である。セルバランス回路80は、複数の抵抗素子81と、複数のスイッチ82と、を備える。抵抗素子81の数、及びスイッチ82の数は、例えば、蓄電セル31の数と同数である。1つの抵抗素子81と1つのスイッチ82とを直列接続したユニットを直列接続体とする。各蓄電セル31のそれぞれには、直列接続体が1つずつ並列接続されている。スイッチ82のオンとオフとを切り替えることで、蓄電セル31毎に個別に抵抗素子81への接続と非接続とを切り替えることができる。
【0045】
制御装置90は、ハードウェアとしてプロセッサ91と、記憶部92と、を備える。プロセッサ91としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部92は、RAM(Random access memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部92は、処理をプロセッサ91に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部92、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置90は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置90は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0046】
制御装置90は、プロセッサ91が記憶部92に記憶されたプログラムを実行することで機能する機能要素として取得部93と、セルバランス制御部94と、判定部95と、過放電制御部96と、電圧制御部97と、を備える。
【0047】
制御装置90は、所定の時間間隔で電圧センサ85の検出結果を取得する。これにより、制御装置90は、各蓄電セル31の電圧を示す情報を取得することができる。制御装置90は、電圧センサ85の検出結果を取得する取得部93を備えているといえる。
【0048】
制御装置90は、スイッチ82を制御することでセルバランスを行う。セルバランスは、全ての蓄電セル31の電圧を均一にするために行われる。なお、ここでいう均一とは、誤差を許容するものである。セルバランスは、例えば、蓄電セル31の充放電が行われていない時間が所定時間経過した際に行われる。所定時間としては、例えば、充放電により蓄電セル31に生じる分極を解消できると想定される時間である。
【0049】
制御装置90は、各蓄電セル31の電圧が目標電圧になるようにセルバランスを行う。セルバランスで設定される目標電圧は、全ての蓄電セル31で同一である。目標電圧としては、例えば、各蓄電セル31の電圧のうちセルバランスを開始する前の時点で、最も電圧の低い蓄電セル31の電圧が用いられる。制御装置90は、スイッチ82を制御することで、目標電圧よりも電圧の高い蓄電セル31と抵抗素子81とを接続し、目標電圧よりも電圧の高い蓄電セル31に放電を行わせる。制御装置90は、全ての蓄電セル31の電圧が目標電圧になると、セルバランスを終える。なお、「蓄電セル31の電圧が目標電圧になる」とは、蓄電セル31の電圧と目標電圧とが一致している態様のみでなく、蓄電セル31の電圧と目標電圧に誤差が生じている態様を含む。このように、セルバランスが行われるようにスイッチ82を制御することで、制御装置90は、蓄電セル31のセルバランスを行うセルバランス制御部94を備えているといえる。
【0050】
制御装置90は、以下の制御を所定の制御周期で繰り返し行う。以下の制御は、セルスタック30が充放電されているか否かに関わらず行われる。
図3に示すように、ステップS1において、制御装置90は、蓄電セル31の電圧が所定の過放電閾値より大きいか否かを判定する。本実施形態において、制御装置90は、複数の蓄電セル31のうち最も電圧の低い蓄電セル31の電圧が過放電閾値よりも大きいか否かを判定する。蓄電セル31の残容量と蓄電セル31の電圧には相関があり、蓄電セル31の残容量が多いほど蓄電セル31の電圧は高くなる。従って、蓄電セル31の電圧から蓄電セル31が過放電か否かを判定することができる。過放電閾値とは、蓄電セル31が過放電か否かを判定するための閾値である。過放電閾値は予め設定された固定値である。過放電閾値としては、蓄電セル31が過放電の際の電圧であってもよいし、蓄電セル31が過放電の際の電圧にマージンを加えた値であってもよい。蓄電セル31の電圧が過放電閾値以下の場合、蓄電セル31は過放電であると判定される。蓄電セル31の電圧が過放電閾値より大きい場合、蓄電セル31は過放電ではないと判定される。ステップS1の判定結果が否定の場合、制御装置90はステップS2の処理を行う。ステップS1の判定結果が肯定の場合、制御装置90はステップS3の処理を行う。ステップS1の処理を行うことで、制御装置90は、判定部95を備えているといえる。
【0051】
ステップS2において、制御装置90は、セルスタック30の放電を禁止する。制御装置90は、リレースイッチ70をオフすることで、セルスタック30とモータ110との接続を遮断する。本実施形態のように、車両Veに搭載される蓄電モジュール10であれば、制御装置90は、車両Veを走行不能な状態にするといえる。ステップS2の処理を行うことで、制御装置90は、過放電制御部96を備えているといえる。ステップS1及びステップS2の処理を行うことで、複数の蓄電セル31のうち少なくとも1つが過放電となると、セルスタック30の放電が禁止される。
【0052】
制御装置90は、セルスタック30の放電を禁止した場合、その旨の通報をユーザに対して行ってもよい。ユーザへの通報は任意の方法で行うことができる。車両Veに搭乗したユーザに通報を行うことを想定する場合、ユーザの視認可能な位置に設けられた表示部に表示を行ったり、ユーザの視認可能な位置に設けられたランプの点灯や点滅を行うことで通報を行ってもよい。ブザー音や音声による通報など、音を用いて通報を行ってもよい。また、ユーザが車両Veに搭乗していない場合であってもユーザに対して通報を行うことを想定する場合、制御装置90は、通信装置によって無線通信を行うことで、車両Veに登録された携帯通信端末に通報を行ってもよい。例えば、制御装置90は、テレマティクスに関する制御を行う装置に対して指令を送ることで、無線通信を行わせる。
【0053】
ステップS3において、制御装置90は、蓄電セル31の電圧が制限閾値より小さいか否かを判定する。本実施形態において、制御装置90は、最も電圧の低い蓄電セル31の電圧が制限閾値より小さいか否かを判定する。制限閾値とは、セルスタック30の放電を制限するための閾値である。蓄電モジュール10では、蓄電セル31の放電時に蓄電セル31が過放電とらないように、蓄電セル31の電圧が制限閾値未満になるとセルスタック30の放電が制限される。制限閾値は、過放電閾値よりも大きい所定の閾値である。ステップS3の判定結果が肯定の場合、制御装置90はステップS4の処理を行う。ステップS3の判定結果が否定の場合、制御装置90は制御を終了する。
【0054】
ステップS4において、制御装置90は、放電の制限を行う。放電の制限は、放電時の電圧降下により蓄電セル31の電圧が過放電とならないように行われる。制御装置90は、蓄電セル31の残容量に応じて出力電力指令値を現在の値より小さい値であって0より大きい範囲において制限する。出力電力指令値とは、車両ECU120に対して送られる指令である。車両ECU120は、出力電力指令値に従って蓄電セル31の放電が行われるようにインバータ100のデューティ比を設定する。従って、制御装置90が出力電力指令値を現在の値よりも小さい値にすることで、蓄電セル31からインバータ100に供給される電力が制限される。これにより、蓄電セル31が過放電状態になることを抑制している。
【0055】
制御装置90は、以下の放電制御を所定の制御周期で繰り返し行う。以下、放電制御について詳細に説明する。
図4に示すように、ステップS11において、制御装置90は、セルスタック30の電力が機器としてのモータ110に供給されているか否かを判定する。本実施形態のように、車両Veに搭載される蓄電モジュール10であれば、ステップS11では、車両Veがキーオフ状態かキーオン状態かを判定すればよい。キーオフ状態とは、車両Veが走行不可能な状態であり、キーオン状態とは車両Veが走行可能な状態である。車両Veがキーオフ状態の場合、セルスタック30の電力はモータ110に供給されない状態といえる。車両Veがキーオン状態の場合、セルスタック30の電力がモータ110に供給されるといえる。キーオフ状態とキーオン状態は、車両Veの搭乗者による操作によって切り替えることができる。ステップS11の判定結果が肯定の場合、制御装置90は、放電制御を終了する。ステップS11の判定結果が否定の場合、制御装置90はステップS12の処理を行う。
【0056】
ステップS12において、制御装置90は、蓄電セル31の電圧が所定の過放電閾値より大きいか否かを判定する。即ち、蓄電セル31が過放電でないか否かを判定する。ステップS12の判定は、ステップS1の判定と同様の処理である。ステップS12の判定結果が肯定の場合、制御装置90はステップS13の処理を行う。ステップS12の判定結果が否定の場合、制御装置90は放電制御を終了する。
【0057】
ステップS13において、制御装置90は、蓄電セル31の電圧が制限閾値より小さいか否かを判定する。ステップS13の判定は、ステップS3の判定と同様の処理である。ステップS13の判定結果が肯定の場合、制御装置90はステップS14の処理を行う。ステップS13の判定結果が否定の場合、制御装置90は放電制御を終了する。
【0058】
ステップS14において、制御装置90は、最も電圧の低い蓄電セル31が第1蓄電セル31aか否かを判定する。ステップS14の判定結果が否定の場合、制御装置90はステップS15の処理を行う。ステップS14の判定結果が肯定の場合、制御装置90はステップS16の処理を行う。
【0059】
ステップS15において、制御装置90は、第1蓄電セル31aと最も電圧の低い第2蓄電セル31bとの電圧差が所定値以上か否かを判定する。ステップS15の判定は、最も電圧の低い蓄電セル31が第2蓄電セル31bの場合に行われるため、ステップS15では最も電圧の低い第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧より所定値以上低いか否かを判定しているといえる。ステップS15の判定結果が肯定の場合、制御装置90は放電制御を終了する。ステップS15の判定結果が否定の場合、制御装置90はステップS16の処理を行う。
【0060】
ステップS16において、制御装置90は、第2蓄電セル31bの放電を行うことで、放電が行われる第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aよりも所定値低くする。本実施形態では、複数の第2蓄電セル31bのうち最も電圧が低い第2蓄電セル31bの放電を行う。
【0061】
制御装置90は、スイッチ82を制御することで、放電を行う対象となる第2蓄電セル31bと抵抗素子81とを接続して放電を行わせる。制御装置90は、放電を行う対象となる第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも所定値低くなるように放電を行う。これにより、第2蓄電セル31bの1つが第1蓄電セル31aの電圧よりも所定値低くなる。所定値としては、例えば、ステップS16の処理を行った後から、自然放電により蓄電セル31の電圧が降下した際に、放電を行った第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも先に過放電閾値に到達するような値に設定される。所定値としては、例えば、0.1[V]を挙げることができる。なお、この所定値と、ステップS15の判定に用いられる所定値とは同一の値である。ステップS16の処理を行うことで、制御装置90は電圧制御部97を備えているといえる。ステップS11~ステップS13の判定を行うことで、セルスタック30の電力がモータ110に供給されていない場合であって、いずれかの蓄電セル31の電圧が過放電閾値より大きく、かつ、制限閾値より小さい場合に第2蓄電セル31bの放電が行われる。
【0062】
第1実施形態の作用について説明する。
セルスタック30を充放電しない状態に維持すると、各蓄電セル31の電圧は徐々に低下していく。車両Veに搭載されるセルスタック30であれば、車両Veがキーオフ状態又は充電されない状態に維持されると、各蓄電セル31の電圧は徐々に低下していく。蓄電モジュール10では、第2蓄電セル31bを放電することで第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも低くすることができる。
【0063】
本実施形態では、蓄電セル31のうちいずれかの蓄電セル31の電圧が制限閾値を下回ると、第2蓄電セル31bの放電を行うか否かの判定が行われる。第1蓄電セル31aの電圧よりも所定値以上電圧の低い第2蓄電セル31bが存在すれば第2蓄電セル31bの放電は行われない。第1蓄電セル31aの電圧よりも所定値以上電圧の低い第2蓄電セル31bが存在しなければ、第2蓄電セル31bの放電を行うことで、当該第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧より所定値低くする。蓄電セル31のうちいずれかの蓄電セル31の電圧が制限閾値を下回ると、制限閾値を下回った蓄電セル31が第1蓄電セル31aか第2蓄電セル31bかに関わらず、第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧より所定値以上低い状態にされる。この状態で、各蓄電セル31の電圧が更に低下していくことで、いずれかの蓄電セル31の電圧が過放電閾値以下になり、セルスタック30の放電が禁止される。また、セルスタック30の放電を禁止した際に、ユーザに通報を行うこともできる。第2蓄電セル31bを放電させて第1蓄電セル31aの電圧よりも低くすることで、各蓄電セル31で同様に電圧が低下していくとすると、放電を行った第2蓄電セル31bの方が第1蓄電セル31aよりも先に過放電閾値に達する。
【0064】
第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)制御装置90は、セルバランス回路80を制御することで第2蓄電セル31bの放電を行うことができる。制御装置90は、第2蓄電セル31bの放電を行うことで、第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも低くする。第1蓄電セル31aの電圧と第2蓄電セル31bの電圧とが同様に低下していけば、第2蓄電セル31bの電圧は第1蓄電セル31aの電圧よりも先に過放電閾値に達する。このため、第1蓄電セル31aが過放電となる前に第2蓄電セル31bが過放電であると判定されやすく、第1蓄電セル31aが過放電となる前にセルスタック30の放電を禁止することができる。第1蓄電セル31aが過放電になりにくいため、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの溶出が抑制される。第2蓄電セル31bの備える負極集電体33aは、隣り合う蓄電セル31の正極集電体32aに重ねて設けられているため、第2蓄電セル31bの備える負極集電体33aが溶出しても、電解液36が漏れにくい。これに対し、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aには正極集電体32aが重ねられていないため、第2蓄電セル31bの負極集電体33aに比べて、負極集電体33aが溶出した際に蓄電モジュール10の外部に電解液36が漏れやすい。従って、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの溶出を抑制することで、電解液36の液漏れを抑制できる。
【0065】
特に、本実施形態の蓄電モジュール10のように、蓄電モジュール10が電解液36を収容するための筐体を備えていない場合、電解液36の液漏れが生じると、電解液36が蓄電モジュール10の外部に至りやすい。従って、蓄電モジュール10が電解液36を収容するための筐体を備えていない場合、蓄電モジュール10が電解液36を収容するための筐体を備えている場合に比べて、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの溶出を抑制することが求められる。本実施形態のように、セルスタック30の最外層に位置する負極集電体33aの溶出を抑制して電解液36の液漏れを抑制することで、電解液36を収容する筐体を備えない蓄電モジュール10であっても、蓄電モジュール10の外部に電解液36が至ることを抑制できる。
【0066】
また、セルスタック30の放電を禁止した際にユーザに通報を行うことで、蓄電モジュール10の交換等の対応をユーザに促すことができる。自然放電により第1蓄電セル31aが過放電になる前にユーザに通報を行うことで、電解液36の液漏れが生じる前にユーザに対応を促すことができる。
【0067】
(1-2)制御装置90は、蓄電セル31の電圧が制限閾値よりも小さい場合に、第1蓄電セル31aの電圧よりも第2蓄電セル31bの電圧のほうが低くなるように第2蓄電セル31bの放電を行う。第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも低くすると、蓄電セル31間の電圧にアンバランスが生じる。蓄電セル31の電圧が制限閾値よりも小さい場合に第2蓄電セル31bの放電を行うことで、第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧より低くなるように放電を行う頻度を低下させることができる。例えば、蓄電セル31のセルバランスを行う度に、第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも低くなるように放電を行うとする。蓄電セル31の電圧が制限閾値より低くなる頻度は、セルバランスを行う頻度よりも低い傾向にある。このため、セルバランスを行う度に第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも低くなるように放電を行うと、蓄電セル31間の電圧にアンバランスが生じる頻度が高くなる。蓄電セル31の電圧が制限閾値よりも小さい場合に第2蓄電セル31bの放電を行うことで、セルバランスを行う度に第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも低くなるように放電を行う場合に比べて、蓄電セル31間の電圧にアンバランスが生じる頻度を低くすることができる。また、制限閾値は、過放電閾値よりも高い値であるため、いずれかの蓄電セル31が過放電に至る前に、第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも低くすることができる。従って、蓄電セル31がアンバランスになることを抑制しつつ、第1蓄電セル31aの過放電を抑制することができる。
【0068】
(1-3)セル間封止材37によって蓄電セル31間を封止している。このため、第2蓄電セル31bの備える負極集電体33aが溶出した際に電解液36が漏れることが更に抑制されている。セル間封止材37によって第2蓄電セル31bの備える負極集電体33aが溶出した際に電解液36が漏れることを抑制しつつ、第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧より低くすることで最外層の負極集電体33aが溶出することを抑制することができる。これにより、いずれの蓄電セル31が過放電になっても電解液36が漏れにくい。
【0069】
(1-4)第2蓄電セル31bの放電を行うための放電回路として、セルバランス回路80を用いている。各蓄電セル31のセルバランスを行うためのセルバランス回路80を放電回路としても兼用できるため、セルバランス回路80と放電回路とを個別に設ける場合に比べて部品点数の削減が図られる。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態の蓄電モジュールについて説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の部材については説明を省略する。
【0071】
図5に示すように、第2実施形態の蓄電モジュール10は、充電回路60を備える。本実施形態では、充電回路60が放電回路である。
充電回路60は、第2蓄電セル31bから放電される電力によって第1蓄電セル31aを充電するものである。本実施形態の充電回路60は、チョッパ方式のDC/DCコンバータである。充電回路60は、トランス61と、スイッチング素子64と、整流素子65と、を備える。トランス61は、1次側巻線62と、2次側巻線63と、を備える。
【0072】
1次側巻線62は、セルスタック30に並列接続されている。詳細にいえば、1次側巻線62の一端は最外層の正極集電体32aを備える蓄電セル31の正極、1次側巻線62の他端は第1蓄電セル31aの負極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0073】
2次側巻線63は、第1蓄電セル31aに並列接続されている。詳細にいえば、2次側巻線63の一端は第1蓄電セル31aの正極、2次側巻線63の他端は第1蓄電セル31aの負極にそれぞれ電気的に接続されている。
【0074】
スイッチング素子64は、1次側巻線62に直列接続されている。スイッチング素子64は、制御装置90によりチョッパ制御される。スイッチング素子64としては、例えば、トランジスタを用いることができる。
【0075】
整流素子65としては、ダイオードを用いることができる。ダイオードのアノードは2次側巻線63、ダイオードのカソードは第1蓄電セル31aの正極にそれぞれ接続されている。
【0076】
スイッチング素子64がチョッパ制御されることで、1次側巻線62から2次側巻線63に電力が伝送される。2次側巻線63に伝送された電力は、整流素子65によって整流される。なお、充電回路60は、2次側巻線63の両端に接続される平滑コンデンサを備えていてもよい。
【0077】
2次側巻線63の両端に生じる電圧は第1蓄電セル31aに印加される。これにより、第2蓄電セル31bは放電され、第1蓄電セル31aは第2蓄電セル31bから放電された電力によって充電される。充電回路60は、第1蓄電セル31aのみを充電可能なため、充電回路60は第1蓄電セル31aのみに設けられていると捉えることができる。
【0078】
第2実施形態では、ステップS16で第2蓄電セル31bの放電を行う際に、充電回路60を用いて放電を行う。制御装置90は、いずれかの第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも所定値低くなるように、充電回路60の制御を行う。
【0079】
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(2-1)充電回路60により第2蓄電セル31bを放電できるようにしている。第2蓄電セル31bが放電した電力を用いて第1蓄電セル31aを充電できるため、第2蓄電セル31bの電力を有効活用できる。
【0080】
(2-2)充電回路60は、第1蓄電セル31aにのみ設けられている。全ての蓄電セル31を充電できるように充電回路60を設ける場合に比べて、製造コストの低減を図ることができる。
【0081】
各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○各実施形態において、セルバランス回路80は、アクティブ方式のセルバランス回路であってもよい。複数の蓄電セル31のうち一部の蓄電セル31の電力を用いて、一部の蓄電セル31を充電することができれば、アクティブ方式のセルバランス回路の回路構成は任意である。アクティブ方式のセルバランス回路の一例としては、
図5に示す充電回路60に選択回路を追加したものを挙げることができる。選択回路は、複数のスイッチを備え、スイッチによって2次側巻線63の両端が接続される蓄電セル31を選択可能にするものである。これにより、任意の蓄電セル31の充電を行うことができる。なお、アクティブ方式のセルバランス回路は、充電回路としても機能する。従って、アクティブ方式のセルバランス回路を用いることで、蓄電セル31毎に充電回路が設けられているといえる。充電回路60は、少なくとも第1蓄電セル31aのみに設けられていればよく、第2蓄電セル31bに設けられていても、設けられていなくてもよい。
【0082】
○第2実施形態において、蓄電モジュール10は、セルバランス回路80を備えていなくてもよい。
○第2実施形態において、第1蓄電セル31aの電圧よりも低くなるように第2蓄電セル31bを放電する際に、セルバランス回路80と充電回路60とを併用してもよい。例えば、充電回路60によって第2蓄電セル31bの電力を用いて第1蓄電セル31aを充電した後に、セルバランス回路80により第2蓄電セル31bのセルバランスを行うことで更に第2蓄電セル31bの放電を行ってもよい。この場合、放電回路は、充電回路60と、セルバランス回路80と、を備える。
【0083】
○各実施形態において、放電回路としては、第2蓄電セル31bの放電を行えればよく、回路構成は任意である。例えば、抵抗素子81及びスイッチ82のうち第1蓄電セル31aに並列接続された抵抗素子81及びスイッチ82を省略し、第1蓄電セル31aの放電を行えないような放電回路にしてもよい。
【0084】
○各実施形態において、制御装置90は、ステップS1で複数の蓄電セル31に過放電の蓄電セル31が存在しているか否かを判定できればよく、最も電圧の低い蓄電セル31以外の蓄電セル31についても過放電か否かを判定してもよい。例えば、制御装置90は、全ての蓄電セル31について過放電か否かを判定してもよい。この場合、制御装置90は、少なくとも1つの蓄電セル31が過放電の場合にはステップS2の処理を行い、過放電の蓄電セル31が存在しない場合にはステップS3の処理を行う。同様に、制御装置90は、ステップS12で複数の蓄電セル31に過放電の蓄電セル31が存在しているか否かを判定できればよい。
【0085】
○各実施形態において、制御装置90は、ステップS1及びステップS12の少なくとも一方で蓄電セル31のSOC(State of Charge)から蓄電セル31が過放電か否かを判定してもよい。SOCとしては、例えば、充電率[%]及び残容量[Ah]を挙げることができる。この場合、過放電閾値は、SOCに対して設定される。蓄電セル31のSOCは、蓄電セル31の電圧との相関から導出することができる。
【0086】
○各実施形態において、制御装置90は、ステップS3及びステップS13の少なくとも一方で蓄電セル31のSOCが制限閾値より小さいか否かを判定してもよい。
○第1実施形態において、ステップS16では、各蓄電セル31に目標電圧を設定し、各蓄電セル31が目標電圧になるように各蓄電セル31のセルバランスを行うことで第2蓄電セル31bの放電を行ってもよい。以下、ステップS16で行われる処理について詳細に説明を行う。
【0087】
図6に示すように、ステップS21において、制御装置90は、第1蓄電セル31a及び第2蓄電セル31bのそれぞれに目標電圧を設定する。第1蓄電セル31aに設定される目標電圧を第1目標電圧、第2蓄電セル31bに設定される目標電圧を第2目標電圧とすると、第2目標電圧は第1目標電圧よりも所定値低い。なお、第2目標電圧は、全ての第2蓄電セル31bに設定される。ステップS21の処理を行うことで、電圧制御部97は、第2蓄電セル31bの目標電圧を第1蓄電セル31aの目標電圧よりも所定値低く設定する設定部を備えているといえる。
【0088】
次に、ステップS22において、制御装置90は、各蓄電セル31の電圧が目標電圧になるようにスイッチ82を制御する。全ての第2蓄電セル31bの電圧は第2目標電圧、第1蓄電セル31aの電圧は第1目標電圧になるようにセルバランスが行われることになる。これにより、第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも低くなるように第2蓄電セル31bの放電が行われる。ステップS22の処理を行うことで、電圧制御部97は、目標電圧となるように蓄電セル31の電圧を制御する目標電圧制御部を備えているといえる。
【0089】
上記したように第2蓄電セル31bの放電を行うことで、第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧よりも低くなるように第2蓄電セル31bの放電を行いつつ、蓄電セル31間のセルバランスを行うことができる。第1蓄電セル31aの電圧と第2蓄電セル31bの電圧には所定値の差が生じるが、上記したセルバランスを行わない場合に比べて、第2蓄電セル31b間の電圧差を小さくすることができる。制御装置90は、セルバランス制御部94が行うセルバランス、及び第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも低くするためのセルバランスの2種類のセルバランスを行うといえる。
【0090】
また、セルバランス制御部94によるセルバランスを、上記したセルバランスに置き換えて、セルバランス制御部94によるセルバランスを行う際に、第1蓄電セル31aには第1目標電圧が、第2蓄電セル31bには第2目標電圧がそれぞれ設定されるようにしてもよい。
【0091】
○第1実施形態において、ステップS16では、少なくとも1つの第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧より低くできればよく、放電の行われる第2蓄電セル31bは、任意である。例えば、第2蓄電セル31bのうち最も電圧の高い第2蓄電セル31bを放電させることで、当該第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも所定値低くしてもよい。
【0092】
○第1実施形態において、ステップS16では、複数の第2蓄電セル31bの放電を行ってもよい。例えば、2つの第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧より所定値低くなるように第2蓄電セル31bの放電を行ってもよいし、全ての第2蓄電セル31bの電圧が第1蓄電セル31aの電圧より所定値低くなるように第2蓄電セル31bの放電を行ってもよい。
【0093】
○各実施形態において、第1蓄電セル31aの電圧よりも第2蓄電セル31bの電圧のほうが低くなるように第2蓄電セル31bの放電を行うタイミングは任意である。例えば、セルスタック30の充放電が予め定められた時間以上継続して行われなかった場合に、第2蓄電セル31bの放電を行ってもよいし、車両Veのキーオフが行われた場合に第2蓄電セル31bの放電を行ってもよい。これらの場合、セルスタック30の電力が機器に供給されていない場合に第2蓄電セル31bの放電が行われるといえる。また、制限閾値よりも値の大きく満充電電圧よりも小さい所定の閾値、又は過放電閾値よりも大きく制御閾値よりも小さい所定の閾値を設定し、いずれかの蓄電セル31の電圧がこの所定の閾値を下回った場合に第2蓄電セル31bの放電を行ってもよい。満充電電圧とは、蓄電セル31が満充電の際の電圧である。所定の閾値を過放電閾値より大きい値とすることで、いずれかの蓄電セル31が過放電に至る前に、第2蓄電セル31bの電圧を第1蓄電セル31aの電圧よりも低くすることができる。また、所定の閾値は小さく設定すればするほど、蓄電セル31間の電圧にアンバランスが生じる頻度を低くすることができる。
【0094】
○各実施形態において、第1蓄電セル31aは、1つとは限らない。例えば、2つのセルスタック30を最外層の正極32が互いに向き合うよう積層したセルスタック30のように、2以上の第1蓄電セル31aを備えていてもよい。
【0095】
○各実施形態において、蓄電モジュール10は、セル間封止材37を備えていなくてもよい。
○各実施形態において、セル間封止材37は、封止材35と一体であっても、別体であってもよい。
【0096】
○各実施形態において、取得部93、セルバランス制御部94、判定部95、過放電制御部96、及び電圧制御部97はそれぞれ個別の装置によって構成されていてもよい。
○各実施形態において、蓄電モジュール10から電力を供給される機器としては、電力により駆動する装置であれば、どのようなものであってもよい。車両Veであれば、例えば、補機等の電装品であってもよい。
【0097】
○各実施形態において、蓄電モジュール10は、車両Ve以外の装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10…蓄電モジュール、30…セルスタック、31…リチウムイオン蓄電セル、31a…第1蓄電セル、31b…第2蓄電セル、32…正極、33…負極、33a…負極集電体、33b…負極活物質層、35…封止材、36…電解液、37…セル間封止材、60…放電回路としての充電回路、80…放電回路としてのセルバランス回路、95…判定部、96…過放電制御部、97…電圧制御部、110…機器としてのモータ。