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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/34 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B60T8/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020183193
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022073299
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】大竹 毅
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0217837(US,A1)
【文献】特開平06-122362(JP,A)
【文献】特開2008-044471(JP,A)
【文献】国際公開第2020/036008(WO,A1)
【文献】特開2011-036110(JP,A)
【文献】国際公開第2018/215169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の第一の車輪に付与される制動力を調整する電動の第一要素と、
前記車両の第二の車輪に付与される制動力を調整する電動の第二要素と、
前記第一要素及び前記第二要素を制御する電気回路が形成され、前記電気回路のうち前記第一要素を制御する第一回路が形成されている第一区画と、前記電気回路のうち前記第二要素を制御する第二回路が形成されている第二区画とが配置されている回路基板と、を備え、
記第一要素は、前記第一区画に対向するように配置され、
記第二要素は、前記第二区画に対向するように配置され
前記第一要素は、前記第一回路のみによって制御される第一電気モータと、前記第一電気モータによって駆動されて第一シリンダ内を摺動する第一ピストンの位置に応じた液圧を、前記第一シリンダ及び前記第一ピストンによって区画される液圧室に発生させる第一電動シリンダ装置と、を含み、
前記第二要素は、前記第一電気モータとは異なり、前記第二回路のみによって制御される第二電気モータと、前記第一電動シリンダ装置とは異なり、前記第二電気モータによって駆動されて第二シリンダ内を摺動する第二ピストンの位置に応じた液圧を、前記第二シリンダ及び前記第二ピストンによって区画される液圧室に発生させる第二電動シリンダ装置と、を含む、車両用制動装置。
【請求項2】
前記第一要素及び前記第二要素とは物理的に別体であり、前記車両のマスタシリンダと前記第一の車輪及び前記第二の車輪との連通又は遮断を切り替える第三要素を備え、
前記第三要素は、前記第一回路及び前記第二回路の両回路によって制御され、前記第一区画及び前記第二区画の境界に対向するように、又は、前記第一区画と前記第二区画との間の領域に対向するように配置されている、請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記回路基板は、前記第一区画と前記第二区画とが並んで配置されており、
前記第一の車輪及び前記第二の車輪に設けられるホイルシリンダと、
前記ホイルシリンダに接続され、シリンダ内を摺動するピストンの位置に応じた液圧が前記シリンダ及び前記ピストンに区画されている液圧室に発生するシリンダ装置と、を備え、
前記シリンダ装置は、前記第一区画及び前記第二区画の境界に対向するように、又は、前記第一区画と前記第二区画との間の領域に対向するように配置されている、請求項1又は2に記載の車両用制動装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に開示された車両用制動装置が知られている。この従来の車両用制動装置は、2つの電子制御ユニット(ECU)を有しており、各々のECUによって制御される電気モータ、電動シリンダ装置及び各種電磁弁等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102010020002号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の車両用制動装置は、2つのECUの各々に対応して電気モータ、電動シリンダ装置及び各種電磁弁等を備えている。即ち、従来の車両用制動装置は、冗長性を有しており、2つのECUの各々が、対応する電気モータ、電動シリンダ装置及び各種電磁弁等を制御する。
【0005】
ところで、従来の車両用制動装置のように、冗長性を有するために2つのECUの各々に対応して、それぞれ独立した電気モータ、電動シリンダ装置及び各種電磁弁等を設ける場合には、部品点数の増加に伴って車両用制動装置が大きくなる。又、車両用制動装置の限られたスペースにおいて、各々のECUによる制御される各種電磁弁等を、それぞれの機能が発揮されるように配置する必要がある。このため、各種電磁弁等が対応するECUから離れた位置に配置される場合がある。この場合、2つのECUの各々と各種電磁弁等とを電気的に接続するために、例えば、ECU及び電気回路を備えた回路基板の形状が複雑化したり、大型化したりする虞があり、その結果、車両用制動装置が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型化が可能な車両用制動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用制動装置は、車両の第一の車輪に付与される制動力を調整する電動の第一要素と、車両の第二の車輪に付与される制動力を調整する電動の第二要素と、第一要素及び第二要素を制御する電気回路が形成され、電気回路のうち第一要素を制御する第一回路が形成されている第一区画と、電気回路のうち第二要素を制御する第二回路が形成されている第二区画とが配置されている回路基板と、を備え、第一要素は第一区画に対向するように配置され、第二要素は第二区画に対向するように配置され、前記第一要素は、前記第一回路のみによって制御される第一電気モータと、前記第一電気モータによって駆動されて第一シリンダ内を摺動する第一ピストンの位置に応じた液圧を、前記第一シリンダ及び前記第一ピストンによって区画される液圧室に発生させる第一電動シリンダ装置と、を含み、前記第二要素は、前記第一電気モータとは異なり、前記第二回路のみによって制御される第二電気モータと、前記第一電動シリンダ装置とは異なり、前記第二電気モータによって駆動されて第二シリンダ内を摺動する第二ピストンの位置に応じた液圧を、前記第二シリンダ及び前記第二ピストンによって区画される液圧室に発生させる第二電動シリンダ装置と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用制動装置によれば、第一回路が形成された第一区画に対向するように第一要素が配置され、第二回路が形成された第二区画に対向するように第二要素が配置される。これにより、第一回路と電気的に接続されて制御される第一要素を第一回路に近づけて配置することができると共に、第二回路と電気的に接続されて制御される第二要素を第二回路に近づけて配置することができる。即ち、第一区画において第一回路と第一要素との間の距離を短くすることができると共に、第二区画において第二回路と第二要素との間の距離を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両用制動装置の構成を示す斜視図である。
図2】車両用制動装置の構成を詳細に説明するための断面図である。
図3】車両用制動装置を形成する液圧ブロックの構成を示し、車両用制動装置を電気モータが組み付けられた側から見た斜視図である。
図4】車両用制動装置を形成する液圧ブロックの構成を示し、車両用制動装置を制御ユニットが組み付けられる側から見た斜視図である。
図5】制御ユニットの構成を説明するための斜視図である。
図6】制御ユニットを形成する回路基板の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態の説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0011】
(1.車両用制動装置10の構成)
本実施形態の車両用制動装置10の構成を詳細に説明する。車両用制動装置10は、図1に示すように、2つの電気モータ11、2つの電動シリンダ装置12、液圧ブロック13、制御ユニット16、マスタシリンダ17及びストロークシミュレータ18を備える。又、本実施形態の車両用制動装置10は、図2に示すように、直動変換機構14及び動力伝達部15を備える。尚、以下の説明において、2つの電気モータ11及び2つの電動シリンダ装置12をそれぞれ「第一要素」と「第二要素」として区別する場合には、電気モータ11については第一要素の「第一電気モータ11A」及び第二要素の「第二電気モータ11B」と称呼し、電動シリンダ装置12については第一要素の「第一電動シリンダ装置12A」及び第二要素の「第二電動シリンダ装置12B」と称呼する。
【0012】
ここで、本実施形態の車両用制動装置10は、図1に示すように、第一電気モータ11A及び第二電気モータ11Bと、第一電気モータ11A及び第二電気モータ11Bの各々によってそれぞれ駆動される第一電動シリンダ装置12A及び第二電動シリンダ装置12Bとを備える。即ち、車両用制動装置10は、第一電気モータ11Aにより駆動される第一電動シリンダ装置12Aと、第二電気モータ11Bにより駆動される第二電動シリンダ装置12Bと、を備える。このように、車両用制動装置10においては、第一電気モータ11A及び第一電動シリンダ装置12Aと、第二電気モータ11B及び第二電動シリンダ装置12Bとの各々が対として設けられており、各々の対がそれぞれ独立して制動液圧を発生可能とする冗長性を有するようになっている。
【0013】
2つの電気モータ11(第一電気モータ11A及び第二電気モータ11B)及び2つの電動シリンダ装置12(第一電動シリンダ装置12A及び第二電動シリンダ装置12B)は、図2に示すように、液圧ブロック13に対して、電気モータ11の回転軸111及びシリンダ121(電動シリンダ装置12)の軸線が平行となるように取り付けられている。ここで、車両用制動装置10は、図3に示すように、車両に搭載された姿勢において、電気モータ11が車両前後方向にて後方側、具体的には、液圧ブロック13における車両の隔壁(ダッシュボードやダッシュパネル、ダッシュカウルとも呼ばれる。)に対向する面側に配置される。又、電動シリンダ装置12は、車両前後方向にて後方側となるように、液圧ブロック13の内部に収容される。
【0014】
電気モータ11は、回転駆動力を発生して電動シリンダ装置12を駆動するものであり、図2に示すように、回転軸111を有する。回転軸111は、図4に示すように、後述する液圧ブロック13に形成された回転軸収容部13Aの内部に進入し、回転運動(回転駆動力)を電動シリンダ装置12に供給するようになっている。
【0015】
電動シリンダ装置12は、図2に示すように、シリンダ121、ピストン122及び液圧室123を主に備える。シリンダ121は、液圧ブロック13の内部に組み付けられる。各々のシリンダ121は、液路T1及び液路T2を介して、図示省略のリザーバに接続されると共に、内部にてピストン122を摺動可能に収容する。ここで、シリンダ121(電動シリンダ装置12)は、互いの軸線Jを平行にして径方向に並んで配置される(例えば、図1を参照)。ピストン122は、直動変換機構14に同軸に連結され、直動部である後述のボールねじ141と共にシリンダ121の軸方向に移動する。液圧室123は、シリンダ121の内周面とピストン122とにより形成される。
【0016】
これにより、液圧室123においては、ピストン122の圧縮方向(図2において左方向)への移動に伴ってブレーキ液が加圧され、ピストン122の位置に応じた制動液圧が発生する。そして、液圧室123にて発生した制動液圧は、液圧ブロック13に形成された液路(図示省略)を介して、第一の車輪(例えば、車両の左前輪)及び第二の車輪(例えば、車両の右前輪)に設けられたホイルシリンダに供給される。
【0017】
液圧ブロック13には、図3及び図4に示すように、2つの電気モータ11(第一電気モータ11A及び第二電気モータ11B)に1対1で対応する2つの回転軸収容部13Aが形成されている。回転軸収容部13Aは、対応する電気モータ11の回転軸111を挿通して収容する。ここで、回転軸収容部13Aは、回転軸111が電動シリンダ装置12の軸線Jと平行であり、且つ、第一電気モータ11A及び第二電気モータ11Bが径方向に並んで配置されるように形成される。尚、以下の説明において回転軸収容部13Aを区別する場合、第一電気モータ11Aの回転軸111を収容する回転軸収容部13Aを「第一回転軸収容部13A1」と称呼し、第二電気モータ11Bの回転軸111を収容する回転軸収容部13Aを「第二回転軸収容部13A2」と称呼する。
【0018】
又、液圧ブロック13には、2つの電動シリンダ装置12(より詳しくは、第一電動シリンダ装置12Aのシリンダ121及び第二電動シリンダ装置12Bのシリンダ121)に1対1で対応する2つのシリンダ収容部13Bが形成されている。シリンダ収容部13Bは、対応する電動シリンダ装置12を収容する。尚、以下の説明においてシリンダ収容部13Bを区別する場合、第一電動シリンダ装置12Aのシリンダ121を収容するシリンダ収容部13Bを「第一シリンダ収容部13B1」と称呼し、第二電動シリンダ装置12Bのシリンダ121を収容するシリンダ収容部13Bを「第二シリンダ収容部13B2」と称呼する。
【0019】
ここで、回転軸収容部13A及びシリンダ収容部13Bは、互いに平行であり、且つ、同軸にならないように形成される。又、第一回転軸収容部13A1及び第二回転軸収容部13A2は、液圧ブロック13において互いに離間して配置される。同様に、第一シリンダ収容部13B1及び第二シリンダ収容部13B2は、液圧ブロック13において互いに離間して配置される。即ち、液圧ブロック13においては、図3及び図4に示すように、マスタシリンダ17及びストロークシミュレータ18を配置するための中央部分が形成される。
【0020】
これにより、液圧ブロック13の中央部分には、図3に示すように、マスタシリンダ17を収容するためのマスタシリンダ収容部13C、及び、ストロークシミュレータ18を収容するためのストロークシミュレータ収容部13Dが形成される。又、液圧ブロック13の中央部分には、図4に示すように、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2が組み付けられる。又、液圧ブロック13の中央部分には、マスタ圧センサS1及びマスタ圧センサS2が組み付けられると共に、図示を省略するストロークセンサが組み付けられる。尚、本実施形態においては、マスタ圧センサS1,S2を設けて冗長性を有するようにする。但し、必要に応じて、1つのマスタ圧センサ及び1つのストロークセンサを、それぞれ冗長性を有するように設けることも可能である。
【0021】
即ち、液圧ブロック13の中央部分に組み付けられるマスタシリンダ17、ストロークシミュレータ18、マスタカット弁V1、シミュレータカット弁V2、マスタ圧センサS1,S2及びストロークセンサは、後述する制御ユニット16における第一区画K1を含む第一領域R1と第二区画K2を含む第二領域R2との境界(或いは、第一領域R1と第二領域R2との間の領域)に配置される。
【0022】
更に、液圧ブロック13には、図4に示すように、中央部分よりも周縁部分側に位置し、第一電気モータ11A及び第一電動シリンダ装置12Aが配置される後述の第一領域R1に第一要素としての第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3が組み付けられる。又、液圧ブロック13には、中央部分よりも周縁部分側に位置し、第二電気モータ11B及び第二電動シリンダ装置12Bが配置される後述の第二領域R2に第二要素としての第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4が組み付けられる。即ち、第一電気モータ11Aの回転軸111が収容される液圧ブロック13の第一回転軸収容部13A1、第一電動シリンダ装置12Aのシリンダ121が収容される第一シリンダ収容部13B1、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3は、第一領域R1内に配置される。又、第二電気モータ11Bの回転軸111が収容される液圧ブロック13の第二回転軸収容部13A2、第二電動シリンダ装置12Bのシリンダ121が収容される第二シリンダ収容部13B2、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4は、第二領域R2内に配置される。
【0023】
尚、マスタカット弁V1は、後述するように、液圧ブロック13に収容されるマスタシリンダ17と車両の第一の車輪(例えば、車両の左前輪)及び第二の車輪(例えば、車両の右前輪)との連通又は遮断を、制御ユニット16からの通電状態に応じて切り替えるものである。シミュレータカット弁V2は、制御ユニット16からの通電状態に応じて、マスタカット弁V1が連通状態にある場合にマスタシリンダ17とストロークシミュレータ18とを遮断し、マスタカット弁V1が遮断状態にある場合にマスタシリンダ17とストロークシミュレータ18とを連通する。ここで、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2は、後述するように、制御ユニット16を構成する第一ECU16B及び第二ECU16Cの両方によって制御されるものである。このため、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2は、「第三要素」に対応する。
【0024】
又、第一電磁弁V3は、第一電動シリンダ装置12Aと第一の車輪(例えば、車両の左前輪)に設けられたホイルシリンダとを接続する液路に配置されており、制御ユニット16からの通電状態に応じて第一電動シリンダ装置12Aとホイルシリンダとの連通又は遮断を切り替える。第二電磁弁V4は、第二電動シリンダ装置12Bと第二の車輪(例えば、車両の右前輪)に設けられたホイルシリンダとを接続する液路に配置されており、制御ユニット16からの通電状態に応じて第二電動シリンダ装置12Bとホイルシリンダとの連通又は遮断を切り替える。
【0025】
又、マスタ圧センサS1,S2は、マスタシリンダ17が発生する制動液圧(マスタ圧)を検出して制御ユニット16に出力する。図示を省略するストロークセンサは、運転者によって操作される図示省略のブレーキ操作部材(例えば、ブレーキペダル等)の操作量として検出可能なストローク量を検出して制御ユニット16に出力する。ここで、マスタ圧センサS1,S2及びストロークセンサは、制御ユニット16を構成する第一ECU16B及び第二ECU16Cの各々に電気的に接続される。そして、第一ECU16B及び第二ECU16Cは、マスタ圧センサS1、S2及びストロークセンサから検出値を取得する。尚、マスタ圧センサ及びストロークセンサについては、それぞれ1つずつ設け、1つのマスタ圧センサ及びストロークセンサを第一ECU16B及び第二ECU16Cに電気的に接続することも可能である。この場合、第一ECU16B及び第二ECU16Cに電気的に接続されるマスタ圧センサ及びストロークセンサは、「第三要素」に対応する。
【0026】
第一圧力センサS3は、車両の第一の車輪に接続された第一電動シリンダ装置12Aが発生する制動液圧を検出して制御ユニット16に出力する。第二圧力センサS4は、車両の第二の車輪に接続された第二電動シリンダ装置12Bが発生する制動液圧を検出して制御ユニット16に出力する。
【0027】
直動変換機構14は、図2に示すように、電動シリンダ装置12のピストン122に連結されており、電気モータ11からの回転駆動力(回転運動)によって駆動してピストン122をシリンダ121に対して摺動させる。本実施形態の直動変換機構14は、直動部として電動シリンダ装置12のピストン122に連結されたボールねじ141と、ボールねじ141に螺着されたボールねじナット142とを備える。
【0028】
ボールねじ141は、電気モータ11から供給される回転運動(回転駆動力)によってボールねじナット142に対して回転すると共に、ボールねじナット142に対して軸方向に相対移動する。ボールねじナット142は、液圧ブロック13に対して相対回転不能に支持される。これにより、ボールねじ141及びボールねじナット142は、電気モータ11、より詳しくは、回転軸111の回転運動をボールねじ141の直線運動に変換する。従って、直動部としてのボールねじ141は、電動シリンダ装置12のピストン122と共に直線運動を行う。
【0029】
動力伝達部15は、図2に示すように、電気モータ11の回転軸111、より詳しくは、液圧ブロック13の回転軸収容部13Aを挿通した回転軸111と共に回転する駆動ギヤ151を備える。又、動力伝達部15は、駆動ギヤ151に歯合する第一従動ギヤ152を備えると共に、第一従動ギヤ152とシャフトを介して同軸に配置されて直動変換機構14のボールねじ141に回転運動(回転駆動力)を伝達する第二従動ギヤ153を備える。これにより、動力伝達部15は、電気モータ11の回転軸111の回転速度を減速しながら直動変換機構14のボールねじ141に回転を伝達することができる。
【0030】
尚、本実施形態においては、第一従動ギヤ152を設け、動力伝達部15が3つのギヤを有するように構成する。しかしながら、例えば、第一従動ギヤ152を省略して駆動ギヤ151と第二従動ギヤ153とを直接歯合させるようにすることも可能である。
【0031】
本実施形態の制御ユニット16は、図5及び図6に示すように、1枚の回路基板16Aを有しており、図6に示すように、回路基板16Aに対して組み付けられた第一ECU16B及び第二ECU16Cを有する。回路基板16Aは、電動シリンダ装置12の軸線Jに対して垂直となるように、液圧ブロック13の対応する位置に固定されたケース16Dに収容されて取り付けられる。尚、「垂直」には、実質的な垂直、即ち、垂直を目指したが公差や配置誤差等により多少垂直からずれたものも含まれる。本実施形態の回路基板16A即ち制御ユニット16と電気モータ11は、電動シリンダ装置12の軸線Jの方向において、液圧ブロック13を挟んで互いに反対側に配置される。ここで、ケース16Dには、外部との通信を可能とするためのコネクタが、第一ECU16B及び第二ECU16Cの各々に対応して設けられる(図1を参照)。
【0032】
第一ECU16B及び第二ECU16Cは、それぞれ、CPU、ROM、RAM、各種インターフェースを主要構成部品とするマイクロコンピュータである。そして、第一ECU16Bは、図6に示すように、回路基板16Aに設定された第一区画K1において、第一要素としての第一電磁弁V3と、第三要素としてのマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2と、に電気的に接続するための電気回路としての第一回路C1と共に配置される。同様に、第二ECU16Cは、回路基板16Aに設定された第二区画K2において、第二要素としての第二電磁弁V4と、第三要素としてのマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2と、に電気的に接続するための電気回路としての第二回路C2と共に配置される。
【0033】
尚、第一回路C1は、第一ECU16Bと、第一電気モータ11A、第一電磁弁V3、第一圧力センサS3、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2と、マスタ圧センサS1,S2及びストロークセンサと、を電気的に接続する接点(図6にて実線の丸で示す)及び配線パターン(基板パターン)を有する。又、第二回路C2は、第二ECU16Cと、第二電気モータ11B、第二電磁弁V4、第二圧力センサS4、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2と、マスタ圧センサS1,S2及びストロークセンサと、を電気的に接続する接点(図6にて実線の丸で示す)及び配線パターン(基板パターン)を有する。
【0034】
ここで、回路基板16Aに設定された第一区画K1は、電動シリンダ装置12の軸線J(即ち、第一区画K1の法線方向)と平行となるように設定された第一領域R1に含まれる。又、回路基板16Aに設定された第二区画K2は、電動シリンダ装置12の軸線J(即ち、第二区画K2の法線方向)と平行となるように設定された第二領域R2に含まれる。つまり、第一要素である第一電動シリンダ装置12Aは、第一回路C1が形成された第一区画K1に対向するように(第一区画K1の法線上に)配置されている。又、第二要素である第二電動シリンダ装置12Bは、第二回路C2が形成された第二区画K2に対向するように(第二区画K2の法線上に)配置されている。
【0035】
そして、第一区画K1即ち第一領域R1の内部に配置された第一ECU16B及び第一回路C1は、第一領域R1の内部に配置された第一電気モータ11A(即ち、第一電動シリンダ装置12A)及び第一電磁弁V3の作動を制御すると共に、第一領域R1の内部に配置された第一圧力センサS3によって検出された制動液圧の検出値を取得する。一方、第二区画K2即ち第二領域R2の内部に配置された第二ECU16C及び第二回路C2は、第二領域R2の内部に配置された第二電気モータ11B(即ち、第二電動シリンダ装置12B)及び第二電磁弁V4の作動を制御すると共に、第二領域R2の内部に配置された第二圧力センサS4によって検出された制動液圧の検出値を取得する。
【0036】
又、第一区画K1(第一領域R1)及び第二区画K2(第二領域R2)の境界、或いは、第一区画K1(第一領域R1)と第二区画K2(第二領域R2)との間の領域、即ち、液圧ブロック13の中央部分に配置されたマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2(必要に応じて、マスタ圧センサ及びストロークセンサを含む)は、第一回路C1及び第二回路C2の両回路に電気的に接続されており、第一ECU16B及び第二ECU16Cの両方によって作動が制御可能である。尚、本実施形態においては、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2は、第一区画K1(第一領域R1)及び第二区画K2(第二領域R2)の境界に配置される。
【0037】
これにより、例えば、正常時においてマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2の作動を制御している第一ECU16Bに異常が生じた場合、第二ECU16Cは、第一ECU16Bに代わってマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2の作動を制御することができる。即ち、本実施形態の車両用制動装置10においては、第一ECU16B及び第二ECU16Cの各々に対応してマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2が設けられておらず、第一ECU16B及び第二ECU16Cは、共通のマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2の作動を制御することができる。
【0038】
これにより、本実施形態の車両用制動装置10においては、冗長性を有しながら、電磁弁等、具体的には、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2の数を減少させることができる。その結果、車両用制動装置10の小型化を達成することができると共に、車両用制動装置10の製造コスト等を低減することも可能となる。
【0039】
シリンダ装置としてのマスタシリンダ17は、図3図5及び図6に示すように、液圧ブロック13の中央部分(第一区画K1(第一領域R1)と第二区画K2(第二領域R2)との境界)に形成されたマスタシリンダ収容部13Cに収容される。本実施形態のマスタシリンダ17は、電気モータ11の回転軸111と電動シリンダ装置12の軸線Jとに平行となるように配置される。マスタシリンダ17は、液圧ブロック13に形成された液路T3を介して、ブレーキ液を貯留している図示省略のリザーバに接続される。マスタシリンダ17のマスタピストン(図示省略)は、ブレーキ操作部材(例えば、ブレーキペダル等)と連結される。これにより、マスタシリンダ17は、運転者によるブレーキペダル等の操作に応じてマスタピストンが摺動して移動し、その結果、マスタピストンの位置に応じた制動液圧(マスタ圧)をマスタシリンダ17の内部にてマスタピストンによって区画される液圧室に発生させる。尚、マスタシリンダ17は、図示省略の液路を介して、第一の車輪(例えば、車両の左前輪)及び第二の車輪(例えば、車両の右前輪)に設けられたホイルシリンダに対して、発生した制動液圧(マスタ圧)を供給する。
【0040】
ストロークシミュレータ18は、図3図5及び図6に示すように、液圧ブロック13の中央部分に形成されたストロークシミュレータ収容部13Dに収容される。本実施形態のストロークシミュレータ18は、電気モータ11の回転軸111と電動シリンダ装置12の軸線Jと平行となるように配置される。ストロークシミュレータ18は、マスタカット弁V1が遮断状態、且つ、シミュレータカット弁V2が連通状態にある場合、運転者によるブレーキペダル等の操作に対して反力(負荷)を発生させる。
【0041】
ところで、本実施形態の車両用制動装置10においては、制御ユニット16の回路基板16A、即ち、第一ECU16B及び第二ECU16Cが、電動シリンダ装置12の軸線J(電気モータ11の回転軸111)に対して垂直になるように配置される。この場合、図6にて二点鎖線の円により示すように、電動シリンダ装置12の軸線Jの方向(電気モータ11の回転軸111の方向)において、電気モータ11(第一電気モータ11A、第二電気モータ11B)及び電動シリンダ装置12(第一電動シリンダ装置12A、第二電動シリンダ装置12B)が回路基板16Aに向けて投影された場合を想定する。この場合、第一区画K1及び第二区画K2における電気モータ11(第一電気モータ11A、第二電気モータ11B)及び電動シリンダ装置12(第一電動シリンダ装置12A、第二電動シリンダ装置12B)の投影面積の大きさは、電動シリンダ装置12の軸線Jの方向(電気モータ11の回転軸111の方向)に沿うことなく、例えば、軸線Jに垂直な方向に投影された投影面積に比べて小さくなる。
【0042】
特に、回路基板16A(制御ユニット16)が電動シリンダ装置12の軸線J(電気モータ11の回転軸111)に対して垂直になるように配置された場合には、第一区画K1及び第二区画K2において、電気モータ11及び電動シリンダ装置12が投影された場合の投影面積が最小となる。ところで、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4は、液圧ブロック13に配置(組み付けられる)際には、一般に、回路基板16Aに対する投影が、回路基板16Aに対する電気モータ11及び電動シリンダ装置12の投影と重ならないように配置される。従って、第一区画K1及び第二区画K2における電気モータ11及び電動シリンダ装置12の投影面積が最小である場合には、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を液圧ブロック13に配置可能な配置範囲が最大になると言える。
【0043】
これにより、液圧ブロック13において第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を配置する(組み付ける)際の自由度が向上する。
【0044】
ところで、マスタカット弁V1、シミュレータカット弁V2,第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4と回路基板16Aとの接続に関しては、回路基板16Aに接点として孔を開ける必要があり、設けられた孔(接点)の周辺は電気回路の素子や配線(銅箔パターン)の配置を避けなければならないという実装制約が存在する。仮に、マスタカット弁V1、シミュレータカット弁V2、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を回路基板16Aの中央部分に配置するとなると、回路基板16Aの中央部に孔(接点)を設けることになる。この場合、マスタカット弁V1、シミュレータカット弁V2,第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4の駆動回路以外の電気回路における素子の配置や配線が複雑化し、その結果、回路基板16Aの大型化を引き起こす場合がある。
【0045】
これに対し、本例においては、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2を第一区画K1(第一領域R1)及び第二区画K2(第二領域R2)の境界に配置することができる。又、第一電磁弁V3を第一区画K1の周縁部分に配置し、第二電磁弁V4を第二区画K2の周縁部分に配置することができる。即ち、本例においては、上述したように、液圧ブロック13において、マスタカット弁V1、シミュレータカット弁V2,第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を配置自由度が高いため、上述した配置を実現することができる。
【0046】
又、例えば、回路基板16A(制御ユニット16)を電動シリンダ装置12の軸線J(電気モータ11の回転軸111)平行に配置した場合、電動シリンダ装置12の回路基板16Aへの投影面積が垂直に配置した場合に比べて大きくなる。この場合には、電動シリンダ装置12の回路基板16Aへの投影を避けるように第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を配置する場合、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4の配置自由度が減少してしまう。或いは、電動シリンダ装置12の回路基板16Aへの投影上に第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を配置する場合、回路基板16Aと電動シリンダ装置12との間における液圧ブロック13の厚みを大きくして、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を配置する必要がある。これらの場合、液圧ブロック13の大型化が生じてしまう。
【0047】
これに対して、車両用制動装置10においては、上述したように、液圧ブロック13に対する第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4の配置の自由度を向上させることができる。これにより、車両用制動装置10においては、回路基板16Aを電動シリンダ装置12の軸線J(電気モータ11の回転軸111)に対して垂直に配置し、且つ、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を電気モータ11の回転軸111及び電動シリンダ装置12の軸線Jと平行になるように配置することができる。これにより、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を配置するためのスペースを別途確保する必要がなく、即ち、液圧ブロック13を大きくする必要がなく、液圧ブロック13の小型化を達成することができ、且つ、回路基板16A(制御ユニット16)の小型化も達成することができる。即ち、車両用制動装置10の小型化を達成することができる。
【0048】
又、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4は、液圧ブロック13の内部に設けられる液路の開閉手段であるため、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4の液圧ブロック13への配置と液路の構造は相互に影響する。第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4の液圧ブロック13への配置自由度が向上することにより、液圧ブロック13の液路の構成を簡素にすることができ、ひいては液圧ブロック13を小型化することができる。
【0049】
又、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4を電動シリンダ装置12の軸線J(電気モータ11の回転軸111)と平行になるように配置することにより、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4の軸線にて対向する回路基板16A(制御ユニット16)までの距離を短くすることができる。これにより、車両用制動装置10の小型化を達成することもできる。
【0050】
又、本実施形態の車両用制動装置10においては、上述したように、第一電磁弁V3及び第二電磁弁V4や第一圧力センサS3及び第二圧力センサS4を配置する自由度を向上させることができる。これにより、回路基板16Aにおいて、第一区画K1に形成される第一回路C1と、第二区画K2に形成される第二回路C2とを、図6に示すように、例えば、第一区画K1(第一領域R1)と第二区画K2(第二領域R2)との境界に対して、対称にすることができる。
【0051】
これにより、車両用制動装置10の開発において、例えば、第一区画K1(第一領域R1)側の第一回路C1を設計した後、第一回路C1の対称形状とすることにより、第二区画K2(第二領域R2)に形成される第二回路C2を容易に設計することができる。又、回路基板16Aの製造に際しても、第一回路C1及び第二回路C2が互いに対称であるため、容易に製造することができる。従って、回路基板16Aにおける第一回路C1及び第二回路C2の開発に要する開発コスト及び製造コストを低減することも可能になる。
【0052】
更に、本実施形態の車両用制動装置10においては、液圧ブロック13の中央部分、即ち、第一区画K1(第一領域R1)と第二区画K2(第二領域R2)との境界に重量物であるマスタシリンダ17及びストロークシミュレータ18を配置することができる。これにより、車両用制動装置10における重量バランスを適正化することができる。
【0053】
以上の説明からも理解できるように、本実施形態の車両用制動装置10は、車両の第一の車輪(例えば、車両の左前輪)に付与される制動力を調整する電動の第一要素としての第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3と、車両の第二の車輪(例えば、車両の右前輪)に付与される制動力を調整する電動の第二要素としての第二電気モータ11B、第二電動シリンダ装置12B、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4と、を備える。更に、車両用制動装置10は、第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3、並びに、第二電気モータ11B、第二電動シリンダ装置12B、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4を制御する電気回路が形成され、第一電気モータ11A(第一電動シリンダ装置12A)、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3を制御する第一回路C1が形成されている第一区画K1と、第二電気モータ11B(第二電動シリンダ装置12B)、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4を制御する第二回路C2が形成されている第二区画K2と、が配置されている回路基板16Aを備える。そして、車両用制動装置10においては、第一回路C1のみに制御される第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3は第一区画K1に対向するように配置され、第二回路C2のみに制御される第二電気モータ11B、第二電動シリンダ装置12B、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4は第二区画K2に対向するように配置される。
【0054】
これによれば、第一回路C1が形成された第一区画K1に対向するように第一要素である第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3が配置され、第二回路C2が形成された第二区画K2に対向するように第二要素である第二電気モータ11B、第二電動シリンダ装置12B、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4が配置される。これにより、第一回路C1と電気的に接続されて制御される第一電気モータ11A(第一電動シリンダ装置12A)、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3を第一回路C1に近づけて配置することができると共に、第二回路C2と電気的に接続されて制御される第二電気モータ11B(第二電動シリンダ装置12B)、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4を第二回路C2に近づけて配置することができる。
【0055】
即ち、第一区画K1を含む第一領域R1内において第一回路C1と第一電気モータ11A(第一電動シリンダ装置12A)、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3との間の距離を短くすることができると共に、第二区画K2を含む第二領域R2内において第二回路C2と第二電気モータ11B(第二電動シリンダ装置12B)、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4との間の距離を短くすることができる。その結果、車両用制動装置10を小型化することができる。
【0056】
又、仮に第一領域R1に設けられる第一要素(第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3)を第二領域R2に設けられる第二回路C2によって制御する場合、第一要素(第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3)と回路基板16Aとの距離を短くするためには、第一領域R1に設けられる第一回路C1に接続させる必要があり、その際、第一領域R1から第二領域R2への配線が必要となる。その結果、回路基板16A内の電気回路の配線が複雑化し、回路基板16Aの大型化に繋がる虞がある。又、第一要素(第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3)から第二回路C2に直接接続する場合、第一要素(第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3)と第二回路C2の第二領域R2は離れているために接続機構が大型化し、車両用制動装置10が大型化する。本発明では、第一要素(第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3)と回路基板16Aとの距離を短くしつつ、電気回路(第一回路C1及び第二回路C2を含む)の配線を簡素化できるため、回路基板16Aの小型化も可能である。
【0057】
又、この場合、第一回路C1及び第二回路C2の両回路によって制御される第三要素としてのマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2は、第一区画K1及び第二区画K2の境界に対向するように、又は、第一区画K1と第二区画K2との間の領域に対向するように配置されている。尚、本実施形態においては、第一回路C1及び第二回路C2の両回路によって制御される第三要素としてのマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2は、第一区画K1及び第二区画K2の境界に対向するように配置されている。
【0058】
これによれば、第一回路C1及び第二回路C2の両回路によって制御されるマスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2を第一区画K1(或いは、第一領域R1)及び第二区画K2(或いは、第二領域R2)の境界(或いは、第一領域R1と第二領域R2との間の領域)に配置することができる。これにより、第一回路C1及び第二回路C2と、マスタカット弁V1及びシミュレータカット弁V2との間の距離を均等に短くすることができる。従って、第一区画K1と第二区画K2とが並んで配置される回路基板16Aを小型化することができて、車両用制動装置10を小型化することができる。
【0059】
更に、これらの場合、回路基板16Aは、第一区画K1と第二区画K2とが並んで配置されており、第一の車輪(例えば、車両の左前輪)及び第二の車輪(例えば、車両の右前輪)に設けられるホイルシリンダと、ホイルシリンダに接続され、シリンダ内を摺動するピストンの位置に応じた液圧がシリンダ及びピストンに区画されている液圧室に発生するシリンダ装置としてのマスタシリンダ17と、を備え、マスタシリンダ17は第一区画K1及び第二区画K2の境界、又は、第一区画K1と第二区画K2との間の領域のうち、第一区画K1及び第二区画K2の境界に配置されている。
【0060】
これによれば、第一区画K1に対向するように(或いは、第一領域R1内に)第一電気モータ11A、第一電動シリンダ装置12A、第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3を配置し、第二区画K2に対向するように(或いは、第二領域R2内に)第二電気モータ11B、第二電動シリンダ装置12B、第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4を配置し、更に、マスタシリンダ17(ストロークシミュレータ18を含むことも可能)を第一区画K1(或いは、第一領域R1)及び第二区画K2(或いは、第二領域R2)の境界に配置することができる。これにより、車両用制動装置10における重量バランスを適正化することができる。
【0061】
(2.変形例)
上述した実施形態の車両用制動装置10は、車両に組み付けた姿勢において、電気モータ11が電動シリンダ装置12よりも鉛直方向にて下方となるように、液圧ブロック13に組み付けられるようにした。しかしながら、液圧ブロック13に組み付けられる電気モータ11及び電動シリンダ装置12の配置については限定されない。例えば、車両用制動装置10を車両に組み付けた姿勢において、電動シリンダ装置12が電気モータ11よりも鉛直方向にて下方となるように、液圧ブロック13に組み付けることも可能である。
【0062】
又、上述した実施形態の車両用制動装置10は、液圧ブロック13と制御ユニット16との間に動力伝達部15を配置するようにした。しかしながら、動力伝達部15の配置については限定されない。例えば、液圧ブロック13に対して、制御ユニット16と反対側に動力伝達部15を組み付け、電気モータ11の回転軸111の回転運動(回転駆動力)を直動変換機構14に伝達するように構成することも可能である。尚、この場合、動力伝達部15の配置に合わせて、電気モータ11の配置方向及び電動シリンダ装置12の配置方向が変更されることは言うまでもない。
【0063】
又、上述した実施形態においては、直動変換機構14の直動部としてボールねじ141を用いると共に、ボールねじ141に対して回転運動を伝達するように、ボールねじ141に螺着されるボールねじナット142を用いるようにした。しかしながら、直動変換機構としては、回転運動を直線運動に変換することができれば、例えば、ローラねじ及びローラねじナットの組み合わせや、台形ねじ又は滑りねじとナットとの組み合わせ等、如何なる構成を採用しても良い。
【0064】
又、上述した実施形態においては、制御ユニット16の回路基板16Aにおいて、第一区画K1及び第二区画K2を設定し、第一区画K1に対向するように第一要素としての第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3を制御する第一回路C1を配置すると共に、第二区画K2に対向するように第二要素としての第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4を制御する第二回路C2を配置するようにした。そして、上述した実施形態においては、第一区画K1を含む第一領域R1内に第一回路C1のみに制御される第一電磁弁V3及び第一圧力センサS3が配置され、第二区画K2を含む第二領域R2内に第二回路C2のみに制御される第二電磁弁V4及び第二圧力センサS4が配置されるようにした。しかしながら、回路基板16Aに第一区画K1及び第二区画K2を設定することなく、第一領域R1及び第二領域R2を設定することも、勿論可能である。
【0065】
又、上述した実施形態においては、制御ユニット16の1枚の回路基板16Aに対して第一区画K1(第一領域R1)及び第二区画K2(第二領域R2)を設定するようにした。しかしながら、回路基板16Aについては、複数枚の基板から構成して第一区画K1(第一領域R1)及び第二区画K2(第二領域R2)を設定することも可能である。
【0066】
更に、上述した実施形態においては、回路基板16Aは第一区画K1と第二区画K2とを合計した範囲よりも広い範囲とした。しかしながら、第一区画K1と第二区画K2とを合計した範囲と回路基板16Aの範囲が一致していても良い。
【符号の説明】
【0067】
10…車両用制動装置、11…電気モータ、11A…第一電気モータ(第一要素)、11B…第二電気モータ(第二要素)、111…回転軸、12…電動シリンダ装置、12A…第一電動シリンダ装置(第一要素)、12B…第二電動シリンダ装置(第二要素)、121…シリンダ、122…ピストン、123…液圧室、13…液圧ブロック、13A…回転軸収容部、13A1…第一回転軸収容部、13A2…第二回転軸収容部、13B…シリンダ収容部、13B1…第一シリンダ収容部、13B2…第二シリンダ収容部、13C…マスタシリンダ収容部、13D…ストロークシミュレータ収容部、14…直動変換機構、141…ボールねじ(直動部)、142…ボールねじナット、15…動力伝達部、151…駆動ギヤ、152…第一従動ギヤ、153…第二従動ギヤ、16…制御ユニット、16A…回路基板、16B…第一ECU、16C…第二ECU、16D…ケース、17…マスタシリンダ、T1…液路、T2…液路、T3…液路、V1…マスタカット弁(第三要素)、V2…シミュレータカット弁(第三要素)、V3…第一電磁弁(第一要素)、V4…第二電磁弁(第二要素))、C1…第一回路(電気回路)、C2…第二回路(電気回路)、J…(電動シリンダ装置の)軸線、R1…第一領域、R2…第二領域、K1…第一区画、K2…第二区画、S1,S2…マスタ圧センサ、S3…第一圧力センサ(第一要素)、S4…第二圧力センサ(第二要素)
図1
図2
図3
図4
図5
図6