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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ランバーサポート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/66 20060101AFI20240228BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B60N2/66
A47C7/46
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020184494
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074447
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】船木 章平
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-188259(JP,U)
【文献】特開平05-207920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052436(US,A1)
【文献】特開昭59-106328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/66
A47C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックを支持するバックフレームに取り付けられるように構成されたランバーサポート装置であって、
前記バックフレームに固定されるベースと、
前記ベースのシート前方に配置された受圧板と、
前記ベースに対し前記受圧板をシート前後方向に移動させるように構成されたヒンジ機構と、
前記ヒンジ機構を可動させるように構成されたリードスクリューと、
を備え、
前記ヒンジ機構は、
ヒンジピンと、
前記ヒンジピンによって互いに連結されると共に、前記ヒンジピンを中心にシート前後方向に揺動するように構成された第1パドル及び第2パドルとを有し、
前記第1パドルは、
前記受圧板をシート前方に押圧するように構成された第1押圧部と、
前記リードスクリューの回転によってシート幅方向に送られるように前記リードスクリューに連結された第1連結部と、
を有し、
前記第2パドルは、
前記受圧板をシート前方に押圧するように構成された第2押圧部と、
前記ベースに対し回転可能に連結された第2連結部と、
を有し、
前記受圧板は、前記ヒンジ機構によって、格納位置と、前記格納位置よりもシート前方の展開位置とに変位するように構成され、
前記受圧板が前記展開位置にあるとき、前記第1押圧部の前記受圧板との接触部分から前記受圧板のシート幅方向における中心線を含む仮想面までの第1距離は、前記第2押圧部の前記受圧板との接触部分から前記仮想面までの第2距離と等しく、
前記受圧板が前記格納位置にあるとき、前記第1距離は、前記第2距離と異なる、ランバーサポート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のランバーサポート装置であって、
前記ヒンジピンは、前記ベースよりもシート前方に配置される、ランバーサポート装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のランバーサポート装置であって、
前記バックフレームに取り付けられると共に、前記ヒンジ機構よりも上方において前記受圧板をシート前後方向に揺動可能に支持する支持部をさらに備える、ランバーサポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ランバーサポート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックを有するシートにおいて、着席者の腰部を支持する部位をシート前方に押し出すことで、着席者を安定した姿勢に保持するランバーサポート装置が公知である(特許文献1参照)。
【0003】
このランバーサポート装置では、ヒンジ構造を構成する2つのリンクの端部を同時にリードスクリューによってシート幅方向に移動させることで、取付板(つまり受圧板)が前方に押し出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-1686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のランバーサポート装置の構造では、2つのリンクを同時に、かつ逆方向に移動させる必要があるため、リードスクリューに設けられるネジの長さが大きくなる。そのため、装置のコストが大きくなる。
【0006】
本開示の一局面は、コストを低減できるランバーサポート装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シートバック(3)を支持するバックフレーム(4)に取り付けられるように構成されたランバーサポート装置(10)である。ランバーサポート装置(10)は、バックフレーム(4)に固定されるベース(11)と、ベース(11)のシート前方に配置された受圧板(12)と、ベース(11)に対し受圧板(12)をシート前後方向に移動させるように構成されたヒンジ機構(13)と、ヒンジ機構(13)を可動させるように構成されたリードスクリュー(14)と、を備える。
【0008】
ヒンジ機構(13)は、ヒンジピン(131)と、ヒンジピン(131)によって互いに連結されると共に、ヒンジピン(131)を中心にシート前後方向に揺動するように構成された第1パドル(132)及び第2パドル(133)とを有する。第1パドル(132)は、受圧板(12)をシート前方に押圧するように構成された第1押圧部(132A)と、リードスクリュー(14)の回転によってシート幅方向に送られるようにリードスクリュー(14)に連結された第1連結部(132B)と、を有する。
【0009】
第2パドル(133)は、受圧板(12)をシート前方に押圧するように構成された第2押圧部(133A)と、ベース(11)に対し回転可能に連結された第2連結部(133B)と、を有する。
【0010】
このような構成によれば、ヒンジ機構(13)を構成する第1パドル(132)及び第2パドル(133)のうち、一方の第1パドル(132)のみがリードスクリュー(14)によって送られるため、リードスクリュー(14)に設けられるネジの長さを低減できる。その結果、ランバーサポート装置(10)のコストが低減される。
【0011】
本開示の一態様では、ヒンジピン(131)は、ベース(11)よりもシート前方に配置されてもよい。このような構成によれば、ヒンジ機構(13)の構成を簡潔にできるため、ランバーサポート装置(10)のコスト低減が促進される。
【0012】
本開示の一態様は、バックフレーム(4)に取り付けられると共に、ヒンジ機構(13)よりも上方において受圧板(12)をシート前後方向に揺動可能に支持する支持部(16)をさらに備えてもよい。このような構成によれば、受圧板(12)の支持構造を簡潔化しつつ、受圧板(12)の押し出しを円滑に行うことができる。
【0013】
本開示の一態様では、受圧板(12)は、ヒンジ機構(13)によって、格納位置と、格納位置よりもシート前方の展開位置とに変位するように構成されてもよい。受圧板(12)が展開位置にあるとき、第1押圧部(132A)の受圧板(12)との接触部分から受圧板(12)のシート幅方向における中心線を含む仮想面までの第1距離は、第2押圧部(133A)の受圧板(12)との接触部分から仮想面までの第2距離と等しくてもよい。受圧板(12)が格納位置にあるとき、第1距離は、第2距離と異なってもよい。このような構成によれば、第2パドル(133)の第2連結部(133B)をシート幅方向に移動させることなく、受圧板(12)をシート前後方向に平行に移動させることができる。
【0014】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態における乗物用シートを示す模式的な斜視図である。
図2図2Aは、図1のランバーサポオート装置を示す模式的な背面図であり、図2Bは、図2Aのランバーサポート装置の模式的な斜視図である。
図3図3A及び図3Bは、図2Aのベースを示す模式的な斜視図である。
図4図4Aは、図2Aのベース、ヒンジ機構、リードスクリュー及びアクチュエータを示す模式的な平面図であり、図4Bは、図2Aのヒンジ機構、リードスクリュー及びアクチュエータを示す模式的な斜視図である。
図5図5は、図4AのV-V線での模式的な断面図である。
図6図6Aは、受圧板が格納位置にあるときのヒンジ機構を示す模式図であり、図6Bは、受圧板が展開位置にあるときのヒンジ機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、バックフレーム4と、ランバーサポート装置10とを備える。
【0017】
本実施形態の乗物用シート1は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート1を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0018】
シートクッション2は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック3は、着席者の背部を支持するための部位である。バックフレーム4は、シートバック3を支持する。
【0019】
<バックフレーム>
バックフレーム4は、第1サイドフレーム41と、第2サイドフレーム42と、アッパパネル43と、ロアパネル44とを有する。
【0020】
第1サイドフレーム41及び第2サイドフレーム42は、それぞれ、上下方向に延伸している。第1サイドフレーム41及び第2サイドフレーム42は、シート幅方向に互いに離れて配置されている。
【0021】
アッパパネル43は、第1サイドフレーム41の上端部と第2サイドフレーム42の上端部とをシート幅方向に連結している。ロアパネル44は、第1サイドフレーム41の下端部と第2サイドフレーム42の下端部とをシート幅方向に連結している。
【0022】
<ランバーサポート装置>
ランバーサポート装置10は、バックフレーム4に取り付けられ、シートバック3のうち着席者の腰部を支持する変位部3Aをシート前後方向に変位させるように構成されている。
【0023】
図2A,2Bに示すように、ランバーサポート装置10は、ベース11と、受圧板12と、ヒンジ機構13と、リードスクリュー14と、アクチュエータ15と、支持部16とを備える。
【0024】
(ベース)
ベース11は、支持部16を介して、バックフレーム4に固定されている。ベース11は、厚み方向がシート前後方向となる姿勢で配置された板状の部材である。
【0025】
図3A,3Bに示すように、ベース11は、第1軸受部111と、第2軸受部112と、第3軸受部113と、荷重受部114とを有する。
第1軸受部111には、後述する第2パドル133の第2連結部133Bが連結される。第1軸受部111は、第2連結部133Bを回転可能に保持する。
【0026】
第2軸受部112には、リードスクリュー14が挿通される。第2軸受部112は、リードスクリュー14を回転可能に支持する。第3軸受部113には、リードスクリュー14の先端が配置される。第3軸受部113は、第2軸受部112よりも右側に配置されている。
【0027】
荷重受部114は、シート幅方向において第2軸受部112と第3軸受部113との間に配置された板状の部位である。荷重受部114は、第2軸受部112及び第3軸受部113よりもシート後方に位置する。荷重受部114は、第1開口114Aと、第2開口114Bとを有する。
【0028】
第1開口114Aは、リードスクリュー14とシート前後方向に重なる位置に配置され、シート幅方向に延伸するスリットである。第1開口114Aには、後述するナット132Dの挿通部132Fが挿通される。また、第1開口114Aの上下方向の幅は、ナット132Dの係止部132Gの上下方向の幅よりも小さい。
【0029】
第2開口114Bは、第1開口114Aの左側に連続して設けられている。第2開口114Bの上下方向の幅は、ナット132Dの係止部132Gが挿通可能な大きさであり、第1開口114Aの上下方向の幅よりも大きい。第2開口114Bは、ヒンジ機構13のベース11への組付け時に係止部132Gを荷重受部114に係合させるために設けられている。
【0030】
(受圧板)
図2A,2Bに示す受圧板12は、シートバック3の変位部3Aをシート後方から支持する部位であり、ベース11のシート前方に配置されている。
【0031】
受圧板12は、後述する支持部16の吊下げ材163を保持する第1保持部121A及び第2保持部121Bを有する。第1保持部121Aと第2保持部121Bとは、シート幅方向に並んで配置されている。
【0032】
(ヒンジ機構)
ヒンジ機構13は、ベース11に対し受圧板12をシート前後方向に移動させるように構成されている。
【0033】
ヒンジ機構13は、受圧板12のシート後方に配置されている。図4A,4Bに示すように、ヒンジ機構13は、ヒンジピン131と、第1パドル132と、第2パドル133とを有する。
【0034】
ヒンジピン131は、ヒンジ機構13の軸を構成する棒状の部材である。ヒンジピン131の中心軸は、受圧板12の移動方向と直交する。ヒンジピン131は、ベース11よりもシート前方に配置されている。ヒンジピン131は、第1パドル132及び第2パドル133に上下方向に挿通されている。
【0035】
第1パドル132は、ヒンジピン131によって第2パドル133と互いに連結されている。第1パドル132は、ヒンジピン131を中心に、ベース11及び第2パドル133に対しシート前後方向に揺動するように構成されている。第1パドル132は、第1押圧部132Aと、第1連結部132Bとを有する。
【0036】
第1押圧部132Aは、受圧板12をシート前方に押圧するように構成されている。第1押圧部132Aは、第1パドル132の左端部で構成されており、第1パドル132の揺動に伴って、受圧板12と摺動しながらシート前後方向に変位する。
【0037】
第1連結部132Bは、リードスクリュー14の回転によってシート幅方向に送られるようにリードスクリュー14に連結された部位である。第1連結部132Bは、前方配置部132Cと、ナット132Dとを有する。
【0038】
前方配置部132Cは、シート前方からベース11の荷重受部114に接触又は対向する部位である。前方配置部132Cは、第1パドル132のうち、ヒンジピン131を挟んで第1押圧部132Aとは反対側の端部(つまり右端部)で構成されている。前方配置部132Cは、ナット132Dを回転可能に支持している。
【0039】
本実施形態では、前方配置部132Cは、第1パドル132の揺動中に、荷重受部114と摺動しながらシート幅方向に変位する。前方配置部132Cは、ベース11へシート後方への荷重を伝達するように構成された荷重伝達部である。
【0040】
ナット132Dは、リードスクリュー14に螺合すると共に、ベース11に係合する部位である。図5に示すように、ナット132Dは、本体132Eと、挿通部132Fと、係止部132Gとを有する。
【0041】
本体132Eは、リードスクリュー14が挿通される筒状の部位であり、内周面にネジ溝が形成されている。本体132Eは、前方配置部132Cに対し、上下方向と平行な軸を中心に回転可能に取り付けられている。本体132Eは、リードスクリュー14の回転によってシート幅方向に移動する。
【0042】
挿通部132Fは、本体132Eからシート後方に突出した部位である。挿通部132Fは、ベース11の第1開口114Aに挿通されている。挿通部132Fは、リードスクリュー14の回転に伴って第1開口114A内をシート幅方向に移動する。
【0043】
係止部132Gは、本体132Eよりもシート後方に配置されると共に、シート後方からベース11に係止する爪である。具体的には、係止部132Gは、挿通部132Fの後端部に連結され、ベース11の荷重受部114にシート後方から当接している。係止部132Gは、ベース11へシート前方への荷重を伝達するように構成された荷重伝達部である。
【0044】
図4A,4Bに示す第2パドル133は、ヒンジピン131によって第1パドル132と互いに連結されている。第2パドル133は、ヒンジピン131を中心に、ベース11及び第1パドル132に対しシート前後方向に揺動するように構成されている。第2パドル133は、第2押圧部133Aと、第2連結部133Bとを有する。
【0045】
第2押圧部133Aは、第1パドル132の第1押圧部132Aと共に、受圧板12をシート前方に押圧するように構成されている。第2押圧部133Aは、第2パドル133の右端部で構成されており、第2パドル133の揺動に伴って、受圧板12と摺動しながらシート前後方向に変位する。
【0046】
第2パドル133におけるヒンジピン131との連結部分から第2押圧部133Aまでの距離は、第1パドル132におけるヒンジピン131との連結部分から第1押圧部132Aまでの距離と等しい。
【0047】
第2パドル133は、第2押圧部133Aの受圧板12との接触部分が、シート前後方向において第1押圧部132Aの受圧板12との接触部分と同じ位置となるように揺動する。つまり、第2パドル133は、受圧板12の変位方向がシート前後方向と平行となるように、第1パドル132と同時に揺動する。
【0048】
第2連結部133Bは、ベース11に対し回転可能に連結された部位である。第2連結部133Bは、第1軸部133Cと、第2軸部133Dとを有する。第1軸部133C及び第2軸部133Dは、それぞれ上下方向に延伸したピン状の部位である。第1軸部133Cは、第2軸部133Dの上方に配置されている。第1軸部133C及び第2軸部133Dは、ベース11の第1軸受部111に軸回転可能に支持されている。
【0049】
第2連結部133Bは、第1軸受部111によってシート前後方向及びシート幅方向への移動が規制されている。そのため、第2パドル133は、ヒンジピン131によって連結された第1パドル132の揺動に伴って、第2連結部133Bを中心としてベース11に対して回転する。
【0050】
(リードスクリュー)
リードスクリュー14は、軸回転によって第1パドル132の第1連結部132Bをシート幅方向に送ることで、ヒンジ機構13を可動させるように構成されている。リードスクリュー14は、軸方向における一部にネジ山が設けられている。
【0051】
リードスクリュー14は、軸方向及び径方向において、ベース11に対して相対的に移動しないように第2軸受部112及び第3軸受部113によって保持されている。リードスクリュー14は、アクチュエータ15に連結されている。
【0052】
(アクチュエータ)
アクチュエータ15は、リードスクリュー14を軸回転させる駆動源である。アクチュエータ15の動力としては、電気、圧縮空気、又は油圧が使用できる。アクチュエータ15は、ベース11に保持されている。
【0053】
(支持部)
図2A,2Bに示すように、支持部16は、バックフレーム4に取り付けられると共に、受圧板12をバックフレーム4に対して変位可能に支持している。支持部16は、枠体161と、連結棒162と、吊下げ材163と、補強材164とを有する。
【0054】
枠体161は、U字状の棒材で構成されている。枠体161の上端部は、バックフレーム4のアッパパネル43に固定されている。枠体161の下端部は、左右方向に延伸する連結棒162を介して、バックフレーム4のロアパネル44に固定されている。枠体161には、ベース11が固定されている。
【0055】
吊下げ材163は、受圧板12を吊下げるようにC字状に曲げられた弾性を有する棒材で構成されている。吊下げ材163は、枠体161に固定されている。吊下げ材163は、ベース11及びヒンジ機構13よりも上方において受圧板12をシート前後方向に揺動可能に支持している。
【0056】
具体的には、吊下げ材163の2つの先端部は、それぞれ、受圧板12の第1保持部121A及び第2保持部121Bにシート幅方向に挿通されている。吊下げ材163の2つの先端部は、第1保持部121A及び第2保持部121Bによって軸回転が規制されている。
【0057】
第1保持部121A及び第2保持部121Bに保持された吊下げ材163は、受圧板12のシート前方への揺動によって、ねじりを受けるように構成されている。そのため、吊下げ材163は、弾性力によって、シート後方へ揺動するように受圧板12を付勢している。
【0058】
補強材164は、シート幅方向に延伸する棒材で構成されている。補強材164は、吊下げ材163よりも上方において枠体161に固定されており、枠体161の変形を抑制する。
【0059】
(受圧板の変位)
受圧板12は、ヒンジ機構13によって、図6Aに示す格納位置と、図6Bに示す格納位置よりもシート前方の展開位置とに変位するように構成されている。
【0060】
格納位置は、受圧板12が変位可能な範囲のうち、最もシート後方の位置である。受圧板12が格納位置にあるとき、第1パドル132の第1連結部132Bは、第1連結部132Bが可動な範囲のうち最も右側に位置する。
【0061】
また、受圧板12が格納位置にあるとき、第1パドル132が第1押圧部132Aからヒンジピン131の連結部分までに渡って受圧板12の後面に接触すると共に、第2パドル133が第2押圧部133Aからヒンジピン131の連結部分に渡って受圧板12の後面に接触する。
【0062】
第1パドル132は、ヒンジピン131と、第2パドル133の第2連結部133Bとを介して、ベース11にリンクとして連結されている。そのため、リードスクリュー14の回転によって第1パドル132の第1連結部132B(具体的にはナット132D及びナット132Dに回転可能に連結された前方配置部132C)がベース11に対してシート幅方向に移動することに伴い、第1パドル132の第1押圧部132Aがシート前後方向に変位する。
【0063】
そのため、受圧板12が格納位置にある状態において第1連結部132Bが左側に移動すると、第1押圧部132Aがシート前方に揺動すると共に、第1パドル132に連結されたヒンジピン131もシート前方に移動する。その結果、ヒンジピン131が連結された第2パドル133もリンクとして第2連結部133Bを中心に揺動し、第2押圧部133Aが第1押圧部132Aと同期してシート前方に移動する。
【0064】
つまり、第1連結部132Bの左側への移動によって、受圧板12が第1押圧部132Aと第2押圧部133Aとによって同時にシート前方に押圧される。これにより、受圧板12が展開位置に変位する。
【0065】
同様のメカニズムにより、受圧板12が展開位置にある状態において第1連結部132Bが右側に移動すると、第1押圧部132Aと第2押圧部133Aとが同期してシート後方に移動する。第1押圧部132A及び第2押圧部133Aのシート後方への移動に伴い、吊下げ材163の付勢によって受圧板12はシート後方に(つまり格納位置に向かって)変位する。
【0066】
図6Bに示すように、受圧板12が展開位置にあるときは、受圧板12のシート幅方向における中心線(つまりシートバック3のシート幅方向における中心線)Cは、ヒンジピン131の中心を通る。
【0067】
そのため、第1押圧部132Aの受圧板12との接触部分から中心線Cを含む仮想面までの第1距離D1は、第2押圧部133Aの受圧板12との接触部分から中心線Cを含む仮想面までの第2距離D2と等しい。
【0068】
一方、図6Aに示すように、受圧板12が格納位置にあるときは、受圧板12のシート幅方向における中心線Cは、ヒンジピン131の中心よりも左側に位置する。そのため、第1距離D1は、第2距離D2よりも小さい。
【0069】
このように、受圧板12が格納位置にあるときは、ヒンジ機構13は、受圧板12に対して右寄りに配置されているが、受圧板12が展開位置に変位することで、ヒンジ機構13は、中心線Cに対し左右対称の位置で受圧板12をシート後方から支持する。
【0070】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ヒンジ機構13を構成する第1パドル132及び第2パドル133のうち、一方の第1パドル132のみがリードスクリュー14によって送られるため、リードスクリュー14に設けられるネジの長さを低減できる。さらに、第2パドル133にナットを設ける必要がない。そのため、ランバーサポート装置10のコストが低減される。
【0071】
(1b)ヒンジピン131がベース11よりもシート前方に配置されることで、ヒンジ機構13の構成を簡潔にできる。その結果、ランバーサポート装置10のコスト低減が促進される。
【0072】
(1c)支持部16によって受圧板12をシート前後方向に揺動可能に支持することで、受圧板12の支持構造を簡潔化しつつ、受圧板12の押し出しを円滑に行うことができる。
【0073】
(1d)受圧板12が格納位置にあるときの第1距離D1と第2距離D2とを異ならせることで、第2パドル133の第2連結部133Bをシート幅方向に移動させることなく、受圧板12をシート前後方向に平行に移動させることができる。
【0074】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0075】
(2a)上記実施形態の乗物用シート1において、ヒンジピン131は、ベース11よりもシート後方に配置されてもよい。つまり、第1パドル132及び第2パドル133は、その一部がベース11よりもシート後方に配置されてもよい。
【0076】
(2b)上記実施形態の乗物用シート1において、受圧板12は必ずしもシート前後方向に揺動可能に支持されなくてもよい。また、受圧板12は、吊下げ材163以外の機構によってシート後方に(つまり格納位置に向かって)付勢されてもよい。
【0077】
(2c)上記実施形態の乗物用シート1において、第1パドル132は、必ずしも前方配置部132C及び係止部132Gを有しなくてもよい。
【0078】
(2d)上記実施形態の乗物用シート1は、上述した自動車に用いられるシート以外にも、例えば、自動車以外の鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【0079】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
1…乗物用シート、3…シートバック、3A…変位部、4…バックフレーム、
10…ランバーサポート装置、11…ベース、12…受圧板、13…ヒンジ機構、
14…リードスクリュー、15…アクチュエータ、16…支持部、
111…第1軸受部、112…第2軸受部、113…第3軸受部、114…荷重受部、
114A…第1開口、114B…第2開口、121A,121B…保持部、
131…ヒンジピン、132…第1パドル、132A…第1押圧部、
132B…第1連結部、132C…前方配置部、132D…ナット、132E…本体、
132F…挿通部、132G…係止部、133…第2パドル、133A…第2押圧部、
133B…第2連結部、133C…第1軸部、133D…第2軸部、161…枠体、
162…連結棒、163…吊下げ材、164…補強材。
図1
図2
図3
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図5
図6