(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】蓄電セル及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240228BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20240228BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20240228BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240228BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240228BHJP
H01M 50/595 20210101ALI20240228BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/10
H01G11/80
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/595
(21)【出願番号】P 2020188078
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 希世奈
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-519646(JP,A)
【文献】特開2019-186063(JP,A)
【文献】特開2020-013729(JP,A)
【文献】特開2019-096476(JP,A)
【文献】特開2017-016825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/10
H01G 11/80
H01M 50/184
H01M 50/186
H01M 50/595
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体、及び前記第1集電体の一方面に設けられた正極活物質層を有する正極と、
第2集電体、及び前記第2集電体の一方面に設けられ、セパレータを介して前記正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極と、
前記第1集電体の縁部及び前記第2集電体の縁部の間に配置され、前記第1集電体及び前記第2集電体の間の空間を封止する封止部と、
前記封止部の外周部と、当該外周部と隣り合う前記第1集電体の縁部及び前記第2集電体の縁部とを一括で覆いながら、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の対向方向と交差する方向において延在するテープと、を備え、
前記テープは、前記外周部を覆う第1テープ部分と、前記第1集電体の縁部を覆う第2テープ部分と、前記第2集電体の縁部を覆う第3テープ部分と、を有し、
前記対向方向から見て、前記負極活物質層の外縁は、前記正極活物質層の外縁の外側に位置しており、前記第2テープ部分の内縁及び前記第3テープ部分の内縁のうちの少なくとも一方の内縁は、前記正極活物質層の外縁と前記負極活物質層の外縁との間に位置している、
蓄電セル。
【請求項2】
前記一方の内縁は、前記第1集電体及び前記第2集電体のうち、厚さが薄い集電体の他方面上に位置している、
請求項1に記載の蓄電セル。
【請求項3】
前記第2テープ部分の内縁及び前記第3テープ部分の内縁は、前記対向方向から見て、前記正極活物質層の外縁と前記負極活物質層の外縁との間に位置している、
請求項1又は2に記載の蓄電セル。
【請求項4】
前記対向方向から見て、前記封止部は、矩形枠状に形成され、前記テープは、前記封止部の少なくとも一辺に設けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電セル。
【請求項5】
複数の蓄電セルが積層された積層体を備え、
前記複数の蓄電セルのうち少なくとも一つは、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電セルである、
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セル及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、集電体に活物質層が形成されてなる電極と、電極の間に配置される電解質層と、を積層してなる二次電池において、電解質層の外周部に配置されるシール部が、積層方向に隣り合う集電体の間を液密に封止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の、複数の単電池層が一方向に積層された二次電池では、積層方向の上部に配置された単電池層の集電体が破損した場合、内部に封入されている電解液が外部に漏れ出て、積層方向の下部に配置された単電池層の外表面に付着することがある。そして、その外表面に付着した電解液の一部がシール部の外表面にまで流れ、そのシール部の外表面で電解液中の特定成分が空気中の水分と反応すると、シール部が損傷して二次電池の封止性能が低下するおそれがある。また、二次電池のエネルギー密度を高めるために集電体の厚みを薄くしていくと、内圧上昇時や搬送時などに破損しやすいという、別の問題が発生する。
【0005】
本開示の目的は、封止性の低下を抑制しながら、集電体を補強することが可能な蓄電セル及び蓄電装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電セルは、第1集電体、及び第1集電体の一方面に設けられた正極活物質層を有する正極と、第2集電体、及び第2集電体の一方面に設けられ、セパレータを介して正極活物質層と対向する負極活物質層を有する負極と、第1集電体の縁部及び第2集電体の縁部の間に配置され、第1集電体及び第2集電体の間の空間を封止する封止部と、封止部の外周部と、当該外周部と隣り合う第1集電体の縁部及び第2集電体の縁部とを一括で覆いながら、正極活物質層及び負極活物質層の対向方向と交差する方向において延在するテープと、を備え、テープは、外周部を覆う第1テープ部分と、第1集電体の縁部を覆う第2テープ部分と、第2集電体の縁部を覆う第3テープ部分と、を有し、対向方向から見て、負極活物質層の外縁は、正極活物質層の外縁の外側に位置しており、第2テープ部分の内縁及び第3テープ部分の内縁のうちの少なくとも一方の内縁は、正極活物質層の外縁と負極活物質層の外縁との間に位置している。
【0007】
上記蓄電セルでは、テープが封止部の外周部と第1集電体の縁部及び第2集電体の縁部とを一括で覆っている。これにより、封止部が外部に露出することなく保護される。よって、上部の蓄電セルから電解液が漏れ、空気中の水分と反応してフッ酸を発生させた場合でも、封止部の損傷が抑制されるので、封止性の低下が抑制される。また、第1集電体の縁部を覆う第2テープ部分の内縁、及び、第2集電体の縁部を覆う第3テープ部分の内縁のうち少なくとも一方の内縁は、対向方向から見て、正極活物質層の外縁と負極活物質層の外縁との間に位置している。これにより、第1集電体及び第2集電体の少なくとも一方は、テープにより負極活物質層の外縁の内側まで覆われて補強される。更に、テープは正極活物質層及び負極活物質層の両方と重ならないように設けられるので、正極活物質層及び負極活物質層に面圧がかかり難くなることが抑制される。
【0008】
上記一方の内縁は、第1集電体及び第2集電体のうち、厚さが薄い集電体の他方面上に位置していてもよい。この場合、より破れ易い集電体を補強することができる。
【0009】
第2テープ部分の内縁及び第3テープ部分の内縁は、対向方向から見て、正極活物質層の外縁と負極活物質層の外縁との間に位置していてもよい。この場合、第1集電体及び第2集電体の両方が、テープにより負極活物質層の外縁の内側まで覆われて補強される。
【0010】
対向方向から見て、封止部は、矩形枠状に形成され、テープは、封止部の少なくとも一辺に設けられていてもよい。この場合、封止部の少なくとも一辺について、封止性の低下を抑制することができる。
【0011】
本開示に係る蓄電装置は、複数の蓄電セルが積層された積層体を備え、複数の蓄電セルのうち少なくとも一つは、上記蓄電セルである。
【0012】
上記蓄電装置では、積層体が少なくとも一つの上記蓄電セルを有するので、当該蓄電セルの封止性の低下を抑制しながら、集電体を補強することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、封止性の低下を抑制可能な蓄電セル及び蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
図1は、一実施形態に係る蓄電装置を示す概略的な断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電装置1は、電気二重層キャパシタであってもよいし、全固体電池であってもよい。本実施形態では、蓄電装置1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0017】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2がスタック(積層)されたセルスタック3(積層体)を備える。
図2は、
図1に示される蓄電セルの概略的な断面図である。
図3は、
図1に示される蓄電セルの平面図である。
図1~
図3に示されるように、各蓄電セル2は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、封止部14と、テープ15とを備える。正極11及び負極12は、互いに対向して配置されている。正極11及び負極12の対向方向Dは、複数の蓄電セル2の積層方向と一致している。正極11及び負極12は、対向方向Dから見て、例えば矩形状の電極である。対向方向Dは、例えば、重力方向であり、正極11は、負極12に対し、重力方向の上側に配置されている。正極11は、負極12に対し、重力方向の下側に配置されていてもよい。
【0018】
正極11は、集電体21(第1集電体)と、正極活物質層23とを備える。集電体21は、互いに反対を向く第1面21a及び第2面21bと、縁部21cとを有している。第1面21aには、正極活物質層23が設けられている。第2面21bには、正極活物質層23が設けられていない。縁部21cには、第1面21a側及び第2面21b側のいずれにおいても、正極活物質層23が設けられていない。換言すると、第1面21aは、正極活物質層23が設けられていない領域を縁部21cに有している。縁部21cは、対向方向Dから見て、集電体21において正極活物質層23が設けられた領域の外側に位置している。
【0019】
負極12は、集電体22(第2集電体)と、負極活物質層24とを備える。集電体22は、互いに反対を向く第1面22a及び第2面22bと、縁部22cとを有している。第1面22aには、負極活物質層24が設けられている。負極活物質層24は、セパレータ13を介して正極活物質層23と対向方向Dにおいて対向する。第2面22bには、負極活物質層24が設けられていない。縁部22cには、第1面22a側及び第2面22b側のいずれにおいても、負極活物質層24が設けられていない。換言すると、第1面22aは、負極活物質層24が設けられていない領域を縁部22cに有している。縁部22cは、対向方向Dから見て、集電体22において負極活物質層24が設けられた領域の外側に位置している。
【0020】
正極11及び負極12は、正極活物質層23及び負極活物質層24が対向方向Dにおいて互いに対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層23及び負極活物質層24は、いずれも対向方向Dから見て矩形状に形成されている。負極活物質層24は、正極活物質層23よりも一回り大きく形成されている。負極活物質層24は、正極活物質層23よりも塗工面積が大きい。対向方向Dから見て、負極活物質層24の外縁24aは、正極活物質層23の外縁23aの外側に位置している。
【0021】
1つの蓄電セル2の集電体21の第2面21bと、他の蓄電セル2の集電体22の第2面22bとが互いに接するように、複数の蓄電セル2がスタックされることによって、セルスタック3が構成される。これにより、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続される。積層方向において互いに隣り合う蓄電セル2,2では、一方の蓄電セル2の集電体21と、他方の蓄電セル2の集電体22とが互いに接する。
【0022】
セルスタック3では、積層方向において互いに隣り合う1つの蓄電セル2の集電体21と、他の蓄電セル2の集電体22とにより、互いに接する集電体21及び集電体22を1つの集電体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成される。積層方向におけるセルスタック3の一端には、集電体21を含む終端電極(本実施形態では正極終端電極)が配置される。積層方向におけるセルスタック3の他端には、集電体22を含む終端電極(本実施形態では負極終端電極)が配置される。
【0023】
集電体21,22は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層23及び負極活物質層24に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21,22を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体21,22は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体21,22の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。
【0024】
集電体21,22は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。集電体21,22を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等が用いられる。集電体21,22は、上記金属箔の構成材料からなる合金箔又はクラッド箔であってもよい。集電体21,22が箔状の場合、集電体21,22の厚さは1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。本実施形態では、集電体21は厚さが50μmのアルミニウム箔であり、集電体22は厚さが15μmの銅箔である。集電体21は、集電体22よりも厚い。
【0025】
正極活物質層23は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物としては、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiCoO2、LiNiMnCoO2等が挙げられる。
【0026】
負極活物質層24は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0027】
正極活物質層23及び負極活物質層24には、活物質のほか、結着剤及び導電助剤が含まれ得る。結着剤は、活物質又は導電助剤を互いに繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たす。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などのアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等の導電性材料であり、電気伝導性を高めることができる。粘度調整溶媒には、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。
【0028】
正極活物質層23及び負極活物質層24を第1面21a,22aに形成するには、例えばロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法等の従来から公知の方法が用いられる。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の活物質層形成用組成物を製造し、当該活物質層形成用組成物を第1面21a,22aに塗布後、乾燥する。溶剤は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水である。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮してもよい。
【0029】
セパレータ13は、正極11及び負極12の間に介在するように配置されている。セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合う正極11及び負極12を隔離することで、両極の接触による電気的短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ13は、互いに対向する正極活物質層23及び負極活物質層24の間に配置されている。
【0030】
セパレータ13は、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24よりも一回り大きく、かつ集電体21,22よりも一回り小さい矩形状をなしている。セパレータ13の外周縁部である端部13aは、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24の外周縁部よりも集電体21,22の縁部21c,22c側に配置されている。セパレータ13の端部13aは、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24のいずれとも重ならない。
【0031】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータ13は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の場合、セパレータ13は、例えば、基材層及び一対の接着層を含み、一対の接着層により正極活物質層23及び負極活物質層24に接着固定されてもよい。セパレータ13は、耐熱層となるセラミック層を含んでもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。
【0032】
セパレータ13に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液)、又はポリマーマトリックス中に保持された電解質を含む高分子ゲル電解質などが挙げられる。セパレータ13に電解液が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0033】
封止部14は、集電体21及び集電体22の間の空間Sを封止する樹脂部材である。封止部14は、対向方向Dから見て正極活物質層23及び負極活物質層24の周囲を取り囲むように、集電体21の縁部21c及び集電体22の縁部22cの間に配置されている。蓄電セル2では、集電体21、集電体22、及び封止部14により空間Sが画定されている。空間Sには、電解液(不図示)が収容されている。封止部14は、集電体21及び集電体22の間に配置されることにより、集電体21と集電体22との間の間隔を保持するスペーサとしても機能している。
【0034】
封止部14は、集電体21の縁部21cの第1面21a側、及び、集電体22の縁部22cの第1面22a側に接着(溶着)されている。封止部14は、対向方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24から離間している。第1面21aは、正極活物質層23及び封止部14から露出した領域を有している。第1面22aは、負極活物質層24及び封止部14から露出した領域を有している。
【0035】
封止部14は、対向方向Dから見て、四辺を有する矩形枠状に形成されている。封止部14は、断面矩形状に形成されている。封止部14は、互いに反対を向く第1面14a及び第2面14bと、互いに反対を向く内周面14c及び外周面14dとを有している。第1面14aは、第1面21aと対向し、第1面21aに接着(溶着)されている。第1面14aの外周面14d側の端部は、集電体21から露出している。第2面14bは、第1面22aと対向し、第1面22aに接着(溶着)されている。第2面14bの外周面14d側の端部は、集電体22から露出している。
【0036】
内周面14c及び外周面14dは、それぞれ第1面14a及び第2面14bを接続するように、対向方向Dに沿って延在している。内周面14cは、空間Sに面している。外周面14dは、蓄電セル2の外側を向いている。対向方向Dから見て、外周面14dは、集電体21の外縁21d及び集電体22の外縁22dよりも外側に位置している。すなわち、封止部14は、外周面14dが集電体21,22からはみ出すように設けられている。封止部14と集電体22の第1面22aとの間にセパレータ13の端部13aを挟み込むことにより、セパレータ13の蓄電セル2内部における位置を固定している。
【0037】
封止部14は、電気絶縁性及び耐電解液性を有する。封止部14は、例えば、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン(PE)、又は、ポリプロピレン等の耐電解液性を有する樹脂材料により構成される。本実施形態では、封止部14は、酸変性ポリエチレン又は酸変性ポリプロピレンにより形成されている。酸変性ポリエチレン及び酸変性ポリプロピレンは、酸変性されていないポリエチレン及びポリプロピレンと比較して、金属に接着し易い。よって、封止部14の集電体21,22に対する接着強度を向上させ、封止性を高めることができる。
【0038】
テープ15は、電気絶縁性を有する帯状の部材である。テープ15は、封止部14の外周部14eと、外周部14eと隣り合う集電体21の縁部21c及び集電体22の縁部22cとを一括で覆いながら、対向方向Dに交差する方向において延在している。外周部14eは、外周面14dを含む部分である。テープ15は、外周部14eと縁部21c,22cとに連なって設けられている。テープ15は、耐電解液性、及び耐熱性を有する材料であってもよい。テープ15は、例えば、基材層の一方面に接着層を配置した2層構造により構成され、接着層が設けられた一方面が粘着性を有する面となっている。基材層は、例えば、ポリイミド(PI)からなる。基材層が防水機能を有する材料からなる場合、蓄電セル2の封止部14近傍における防水機能を向上させることができる。接着層は、例えば、シリコン系接着剤からなる。
【0039】
帯状部材であるテープ15は、蓄電セル2に取り付けられる前の状態において、集電体21、22の辺に沿う方向と直交する方向の長さを幅とすると、封止部14の外周部14eとともに集電体21の縁部21c及び集電体22の縁部22cを覆うことができる幅を有している。テープ15は、蓄電セル2に取り付けられた状態において、幅方向の一部分として、外周部14eを覆うテープ部分15aと、縁部21cを覆うテープ部分15bと、縁部22cを覆うテープ部分15cとを有している。テープ部分15aは、テープ部分15b及びテープ部分15cの間に配置されている。テープ部分15aは、テープ部分15b及びテープ部分15cのそれぞれと接続されている。
【0040】
対向方向Dから見て、テープ15は、矩形枠状の封止部14の少なくとも一辺に設けられている。テープ15は、封止部14の少なくとも一辺において、封止部14の外周部14eと集電体21の縁部21cと集電体22の縁部22cとを一括で覆っている。すなわち、矩形枠状の封止部14の少なくとも一辺は、集電体21,22及びテープ15により覆われることで、外部に露出しないようになっている。本実施形態では、テープ15は、矩形枠状の封止部14の四辺に連続して設けられている。
【0041】
テープ部分15bは、集電体21の第2面21bに設けられている。テープ部分15bの内縁15dは、テープ15の幅方向の一端を構成している。内縁15dは、対向方向Dから見て、集電体21の外縁21dよりも内側に位置している。テープ部分15cは、集電体22の第2面22bに設けられている。テープ部分15cの内縁15eは、テープ15の幅方向の他端を構成している。内縁15eは、対向方向Dから見て、集電体22の外縁22dよりも内側に位置している。内縁15d及び内縁15eは、対向方向Dから見て、少なくとも正極活物質層23の外縁23aよりも外側(集電体21、22の縁部側)に位置している。
【0042】
内縁15d及び内縁15eのうちの少なくとも一方の内縁は、対向方向Dから見て、正極活物質層23の外縁23aと負極活物質層24の外縁24aとの間に位置している。本実施形態では、対向方向Dから見て、内縁15eのみが外縁23aと外縁24aとの間に位置しており、内縁15dは、外縁24aよりも外側に位置している。対向方向Dから見て、テープ15は、正極活物質層23及び負極活物質層24のうち、塗工面積が大きい負極活物質層24と重なっていると共に、塗工面積が小さい正極活物質層23とは重なっていない。
【0043】
集電体22は薄い金属箔で構成されているので、例えば、搬送時の外力により破れる虞がある。集電体22における負極活物質層24及び封止部14が設けられていない領域と、集電体22における負極活物質層24及び封止部14が設けられた領域を比較した場合、特に、負極活物質層24及び封止部14が設けられていない領域で破れが発生し易い。集電体22にテープ15を設けることで、これらの領域を補強することができる。上述のように、集電体22は、集電体21よりも厚さが薄い金属箔で構成されている。したがって、本実施形態では、テープ15は、少なくとも集電体22を補強するように設けられている。
【0044】
蓄電装置1は、例えば、セルスタック3に積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材を更に備えている。これにより、セルスタック3では、複数の蓄電セル2が積層された状態が安定して維持されている。
【0045】
以上説明したように、蓄電セル2では、帯状のテープ15が封止部14の外周部14eと縁部21c及び縁部22cとを一括で覆っている。これにより、封止部14が外部に露出することなく保護される。蓄電装置1では、重力方向の上部の蓄電セル2から電解液が漏れ、下部の蓄電セル2に付着する場合がある。帯状のテープ15を設けていない場合、上部の蓄電セル2から外部に漏れ出た電解液の一部が下部の蓄電セル2の封止部14に付着すると、その電解液が空気中の水分と反応して、例えば、フッ酸を発生させ、封止部14を外部から損傷させるおそれがある。本実施形態の蓄電セル2では、帯状のテープ15を設けて封止部14が外部に露出しないようにしているので、仮に、上部の蓄電セル2から蓄電セル2の外部に電解液が漏れ出たとしても、下部の蓄電セル2の封止部14に電解液が付着することがない。すなわち、蓄電セル2の外部に漏れ出た電解液による他の蓄電セル2の封止部14の損傷が抑制される。この結果、蓄電装置1の封止性能の低下が抑制される。
【0046】
ある蓄電セル2から電解液が蓄電セル2の外部に漏れると、その電解液が蓄電装置1の側面を伝い、隣り合う蓄電セル2間で電解液を通じた短絡(液絡)が生じるおそれもある。蓄電セル2では、集電体21の縁部21c及び集電体22の縁部22cが絶縁性のテープ15により覆われているので、絶縁距離を延長することができる。よって、電解液を通じた液絡も抑制することができる。
【0047】
テープ部分15cの内縁15eは、対向方向Dから見て、外縁23aと外縁24aとの間に位置している。これにより、集電体22は、テープ15によって外縁24aの内側まで覆われて補強される。集電体22のより広い範囲をテープ15で覆うことにより、集電体22を補強することができる。ところで、対向方向Dから見て、テープ15が正極活物質層23及び負極活物質層24の両方と重なる領域に設けられていると、そのテープ15が設けられた部分の積層方向の厚みが局所的に大きくなるので、複数の蓄電セル2を積層して積層方向の両端から不図示の拘束部材で拘束荷重を加えた場合に正極活物質層23及び負極活物質層24の全体に均一な面圧がかかり難くなる。本実施形態の蓄電セル2では、テープ15の内縁15eは、対向方向Dから見て、正極活物質層23の外縁23aの外側に位置しており、正極活物質層23及び負極活物質層24の両方と重なる領域には設けられていない。よって、複数の蓄電セル2を積層して積層方向の両端から不図示の拘束部材で拘束荷重を加えた場合に正極活物質層23及び負極活物質層24の全体に均一な面圧がかかり難くなることが抑制される。
【0048】
テープ15の内縁15eは、集電体21,22のうち、厚さが薄い集電体22の第2面22b上に位置している。これにより、より破れ易い集電体22を補強することができるので、蓄電セル2の損傷をより効果的に抑制することができる。
【0049】
対向方向Dから見て、封止部14は、矩形枠状に形成され、テープ15は、封止部14の四辺に設けられている。このため、封止部14の四辺の全てについて、封止性の低下を抑制することができる。
【0050】
蓄電装置1は、複数の蓄電セル2が積層されたセルスタック3を備える。このため、蓄電装置1では、蓄電セル2の封止性の低下を抑制しながら、集電体21を補強することができる。
【0051】
本開示は上記実施形態に限定されない。例えば、集電体21は、集電体22よりも厚さが薄くてもよい。この場合、テープ15の内縁15eの代わりにテープ15の内縁15dが、対向方向Dから見て、正極活物質層23の外縁23aと負極活物質層24の外縁24aとの間に位置していてもよい。これにより、より破れやすい集電体21を補強することができる。
【0052】
絶縁性のテープ15の内縁15d,15eは、対向方向Dから見て、正極活物質層23の外縁23aと負極活物質層24の外縁24aとの間に位置していてもよい。この場合、集電体21及び集電体22の両方が、テープ15により外縁23aの内側まで覆われて補強される。また、電解液を通じた液絡が更に抑制される。
【0053】
テープ15は、2枚以上のテープを組み合わせて構成されてもよい。例えば、2枚のテープを幅方向に並べて、幅の広い1枚のテープ15を構成してもよい。この場合、2枚のテープの幅方向の一部同士を互いに重複させることにより、2枚のテープを隙間なく一体化させることができる。
【0054】
蓄電装置1では、セルスタック3は少なくとも一つの蓄電セル2を有していればよく、例えば、一つの蓄電セル2と、テープ15を備えていない蓄電セルとが積層されて構成されてもよい。この場合であっても、少なくとも一つの蓄電セル2において、封止性の低下を抑制しながら、集電体21を補強することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…蓄電装置、2…蓄電セル、3…セルスタック(積層体)、11…正極、12…負極、13…セパレータ、14…封止部、14e…外周部、15…テープ、15d…内縁、15e…内縁、21…集電体、21a…第1面、21b…第2面、21d…外縁、22…集電体、22a…第1面、22b…第2面、22d…外縁、23…正極活物質層、23a…外縁、24…負極活物質層、24a…外縁、S…空間。