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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240228BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20240228BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20240228BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E02F9/22 K
E02F9/22 D
E02F9/22 F
F15B11/02 M
F15B11/02 C
F15B11/17
F15B11/028 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020190091
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079112
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】川本 真大
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 一茂
(72)【発明者】
【氏名】柚本 夏輝
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-27261(JP,A)
【文献】特開2015-197185(JP,A)
【文献】特開2017-180712(JP,A)
【文献】特開平5-263442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/02
F15B 11/17
F15B 11/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械であって、
作動油を吐出する可変容量形の油圧ポンプである第1ポンプと、
作動油を吐出する可変容量形の油圧ポンプである第2ポンプと、
前記第1ポンプから吐出される作動油の供給を受けて作動する第1アクチュエータと、
前記第2ポンプから吐出される作動油の供給を受けて作動する第2アクチュエータと、
前記第1ポンプと前記第1アクチュエータとの間に介在し、前記第1ポンプから前記第1アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように開閉作動する第1制御弁と、
前記第1ポンプと前記第2アクチュエータとの間に介在し、前記第1ポンプから前記第2アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように開閉作動する第2制御弁と、
前記第2ポンプと前記第2アクチュエータとの間に介在し、前記第2ポンプから前記第2アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように開閉作動する第3制御弁と、
前記第1アクチュエータの作動を指令するための第1指令操作が与えられる第1操作装置と、
前記第2アクチュエータの作動を指令するための第2指令操作が与えられる第2操作装置と、
前記第1指令操作の操作量に基づいて決まる前記第1アクチュエータへの作動油の目標流量である第1目標流量と前記第2指令操作の操作量に基づいて決まる前記第2アクチュエータへの作動油の目標流量である第2目標流量との和である合計目標流量の作動油が前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの少なくとも一方から吐出されるように、前記第1ポンプの吐出量及び前記第2ポンプの吐出量を調節するポンプ制御部と、
前記第1目標流量に基づいて決まる第1目標開度に前記第1制御弁の開度を調節し、前記第2目標流量のうち前記第2制御弁を介した前記第2アクチュエータへの作動油の目標流量である第2制御弁目標流量に基づいて決まる第2目標開度に前記第2制御弁の開度を調節し、前記第2目標流量のうち前記第3制御弁を介した前記第2アクチュエータへの作動油の目標流量である第3制御弁目標流量に基づいて決まる第3目標開度に前記第3制御弁の開度を調節する弁制御部と、
予め設定された負荷判定条件であって前記第1アクチュエータの負荷である第1負荷が前記第2アクチュエータの負荷である第2負荷よりも大きいことを判定するための条件である負荷判定条件が満たされたか否かを判定する条件判定部と、
前記第1操作装置に前記第1指令操作が与えられるとともに前記第2操作装置に前記第2指令操作が与えられる複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第1指令操作の操作量に基づいて決まる前記第1アクチュエータの目標速度である第1目標速度と前記第1アクチュエータの実速度である第1実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第2目標開度から減算して得られる開度に前記第2制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御を行う速度補償部と、を備える、建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械であって、
前記第1実速度又はこれに対応する物理量を検出する第1検出器をさらに備え、
前記負荷判定条件は、前記第1検出器により検出される前記第1実速度又はこれに対応する物理量が前記第1目標速度又はこれに対応する物理量よりも小さいという条件である、建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械であって、
前記第1アクチュエータは、前記建設機械において旋回可能に構成される上部旋回体を旋回させるための油圧モータである旋回モータであり、
前記第1実速度は、前記旋回モータの回転速度であり、
前記第1目標速度は、前記旋回モータの目標回転速度である、建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械であって、
前記第1負荷を検出する第1負荷検出器と、
前記第2負荷を検出する第2負荷検出器と、をさらに備え、
前記負荷判定条件は、前記第1負荷検出器により検出される前記第1負荷が前記第2負荷検出器により検出される前記第2負荷よりも大きいという条件である、建設機械。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の建設機械であって、
前記速度補償部は、前記複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第2指令操作の操作量に基づいて決まる前記第2アクチュエータの目標速度である第2目標速度と前記第2アクチュエータの実速度である第2実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第3目標開度に加算して得られる開度に前記第3制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御をさらに行う、建設機械。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の建設機械であって、
前記速度補償部は、前記複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第1目標速度と前記第1実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第1目標開度に加算して得られる開度に前記第1制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御をさらに行う、建設機械。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の建設機械であって、
前記速度補償部は、前記複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第1アクチュエータに供給される作動油の実流量である第1実流量と前記第2アクチュエータに供給される作動油の実流量である第2実流量との和である合計実流量を演算し、前記合計目標流量と前記合計実流量との流量差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量に基づいて前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの少なくとも一方の吐出量を調節するようなフィードバック制御をさらに行う、建設機械。
【請求項8】
請求項7に記載の建設機械であって、
前記速度補償部は、当該速度補償部により演算された前記合計目標流量が、前記第1ポンプが吐出可能な作動油の最大吐出量である第1最大吐出量と前記第2ポンプが吐出可能な作動油の最大吐出量である第2最大吐出量との和である合計最大吐出量よりも大きい場合に、前記第1目標流量と前記第2目標流量との比を保持しながら前記合計目標流量が前記合計最大吐出量以下となるように前記第1目標流量及び前記第2目標流量を補正する、建設機械。
【請求項9】
請求項8に記載の建設機械であって、
前記第1ポンプの作動油の吐出圧力である第1吐出圧を検出する第1吐出圧検出器と、
前記第2ポンプの作動油の吐出圧力である第2吐出圧を検出する第2吐出圧検出器と、
前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを駆動するエンジンと、
前記エンジンの出力を判定する出力判定部と、をさらに備え、
前記速度補償部は、前記エンジンの前記出力と前記第1吐出圧及び前記第2吐出圧とに基づいて前記合計最大吐出量を演算する、建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ショベルなどの建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの建設機械は、一般に、下部走行体と、当該下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、当該上部旋回体に装着されるブームを含む作業装置と、上部旋回体を旋回させる油圧モータである旋回モータと、ブームを駆動させる油圧シリンダであるブームシリンダと、旋回モータに供給されるべき作動油を吐出する第1油圧ポンプと、ブームシリンダに供給されるべき作動油を吐出する第2油圧ポンプと、第1油圧ポンプと旋回モータとの間に介在する旋回制御弁と、第2油圧ポンプとブームシリンダとの間に介在するブーム制御弁と、を備える。第1油圧ポンプが吐出する作動油は、旋回モータに供給されるだけでなくそれ以外の他のアクチュエータ(例えばブームシリンダ)にも供給される場合が多い。この場合、建設機械は、さらに合流弁を備え、当該合流弁は、第1油圧ポンプとブームシリンダとの間に介在し、第1油圧ポンプから吐出される作動油の一部が第2油圧ポンプから吐出される作動油に合流してブームシリンダに供給されることを許容するように開閉作動する。このような建設機械において上部旋回体の旋回動作とブームの起伏動作のバランスを維持するためには、旋回モータとブームシリンダへの作動油の分配が前記合流弁によって適正に行われることが必要になる。
【0003】
特許文献1は、上記のような合流弁(特許文献1ではブーム2速制御弁)を備える旋回式油圧作業機械を開示する。この旋回式油圧作業機械では、旋回レバーに第1指令操作が与えられかつブーム上げレバーにブーム上げ指令操作が与えられている場合、すなわち、複合操作が行われている場合、コントローラは、旋回モータ及びブームシリンダに対して油圧ポンプから吐出される作動油の流量配分の制御を実行する。具体的に、コントローラは、旋回の加速が要求される可能性の高いときには、大きな制限度でアクチュエータ流量を制限して旋回モータの作動圧を高く保持することにより、加速に必要な旋回トルクを確保する運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-27261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の旋回式油圧作業機械は、前記複合操作が行われ、かつ、旋回の加速が要求される可能性の高いときに、上記のような作動油の流量配分の制御を行うことにより旋回の加速に必要な旋回トルクを確保して旋回モータの実速度(旋回モータの回転速度)を増加させることはできるが、旋回モータの実速度を目標速度に精度よく調節することを考慮したものではない。
【0006】
上記の課題は、旋回モータとブームシリンダの組み合わせにおいて生じるだけでなく、旋回モータとブームシリンダの少なくとも一方を他の油圧アクチュエータに代替したような2つの油圧アクチュエータの組み合わせにおいても生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、複合操作が行われるときに第1アクチュエータの負荷が第2アクチュエータの負荷よりも大きい場合であっても、第1アクチュエータの実速度を目標速度に精度よく調節することができる建設機械を提供することを目的とする。
【0008】
提供されるのは、建設機械であって、作動油を吐出する可変容量形の油圧ポンプである第1ポンプと、作動油を吐出する可変容量形の油圧ポンプである第2ポンプと、前記第1ポンプから吐出される作動油の供給を受けて作動する第1アクチュエータと、前記第2ポンプから吐出される作動油の供給を受けて作動する第2アクチュエータと、前記第1ポンプと前記第1アクチュエータとの間に介在し、前記第1ポンプから前記第1アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように開閉作動する第1制御弁と、前記第1ポンプと前記第2アクチュエータとの間に介在し、前記第1ポンプから前記第2アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように開閉作動する第2制御弁と、前記第2ポンプと前記第2アクチュエータとの間に介在し、前記第2ポンプから前記第2アクチュエータに供給される作動油の流量を変化させるように開閉作動する第3制御弁と、前記第1アクチュエータの作動を指令するための第1指令操作が与えられる第1操作装置と、前記第2アクチュエータの作動を指令するための第2指令操作が与えられる第2操作装置と、前記第1指令操作の操作量に基づいて決まる前記第1アクチュエータへの作動油の目標流量である第1目標流量と前記第2指令操作の操作量に基づいて決まる前記第2アクチュエータへの作動油の目標流量である第2目標流量との和である合計目標流量の作動油が前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの少なくとも一方から吐出されるように、前記第1ポンプの吐出量及び前記第2ポンプの吐出量を調節するポンプ制御部と、前記第1目標流量に基づいて決まる第1目標開度に前記第1制御弁の開度を調節し、前記第2目標流量のうち前記第2制御弁を介した前記第2アクチュエータへの作動油の目標流量である第2制御弁目標流量に基づいて決まる第2目標開度に前記第2制御弁の開度を調節し、前記第2目標流量のうち前記第3制御弁を介した前記第2アクチュエータへの作動油の目標流量である第3制御弁目標流量に基づいて決まる第3目標開度に前記第3制御弁の開度を調節する弁制御部と、予め設定された負荷判定条件であって前記第1アクチュエータの負荷である第1負荷が前記第2アクチュエータの負荷である第2負荷よりも大きいことを判定するための条件である負荷判定条件が満たされたか否かを判定する条件判定部と、前記第1操作装置に前記第1指令操作が与えられるとともに前記第2操作装置に前記第2指令操作が与えられる複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第1指令操作の操作量に基づいて決まる前記第1アクチュエータの目標速度である第1目標速度と前記第1アクチュエータの実速度である第1実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第2目標開度から減算して得られる開度に前記第2制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御を行う速度補償部と、を備える。
【0009】
この建設機械では、速度補償部は、第1指令操作の操作量に基づいて決まる第1目標速度と第1実速度との速度差(第1目標速度-第1実速度)が大きいほど大きな補正量を演算し、演算された補正量を第2目標開度から減算して得られる開度に第2制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御が行われるので、複合操作が行われるときに第1アクチュエータの第1負荷が第2アクチュエータの第2負荷よりも大きい場合であっても、第1アクチュエータの第1実速度を、第1指令操作の操作量に応じた第1目標速度に精度よく調節することができる。
【0010】
なお、前記フィードバック制御において、速度補償部は、第1目標速度と第1実速度の速度差を実際に演算し、演算された速度差が大きいほど大きな補正量を演算してもよく、また、第1目標速度に対応する物理量と第1実速度に対応する物理量の偏差を演算し、演算された偏差が大きいほど大きな補正量を演算してもよい。第1目標速度に対応する物理量としては、例えば、第1アクチュエータへの作動油の目標流量である第1目標流量を例示できる。この第1目標流量は、第1指令操作の操作量に基づいて決まるものであり、前記第1目標速度と非常によく相関する値である。第1実速度に対応する物理量としては、例えば、第1アクチュエータに供給される作動油の実流量である第1実流量を例示できる。第1実流量は、前記第1実速度と非常によく相関する値である。
【0011】
前記建設機械は、前記第1実速度又はこれに対応する物理量を検出する第1検出器をさらに備え、前記負荷判定条件は、前記第1検出器により検出される前記第1実速度又はこれに対応する物理量が前記第1目標速度又はこれに対応する物理量よりも小さいという条件であることが好ましい。この場合、建設機械が第1負荷及び第2負荷を実際に検出するための検出器を備えていなくても、条件判定部は、負荷判定条件が満たされたか否かを判定することができる。具体的には以下の通りである。
【0012】
前記複合操作が行われたときに第1負荷が第2負荷よりも大きい場合には、第1ポンプから吐出される作動油は、第2アクチュエータに偏って流れるので、第1アクチュエータの第1実速度は、第1目標速度よりも小さくなる。すなわち、第1負荷が第2負荷よりも大きいことは、第1実速度が第1目標速度よりも小さいことと相関している。従って、建設機械が第1負荷及び第2負荷を実際に検出するための検出器を備えていなくても、条件判定部は、第1検出器により検出される第1実速度又はこれに対応する物理量が第1目標速度又はこれに対応する物理量よりも小さいか否かを判定することにより負荷判定条件が満たされたか否かを判定することができる。
【0013】
具体的に、第1検出器が第1実速度を検出する速度検出器である場合には、条件判定部は、第1検出器により検出される第1実速度が第1目標速度よりも小さいか否かを判定することにより負荷判定条件が満たされたか否かを判定することができる。また、第1検出器が第1実速度に対応する物理量を検出する検出器である場合には、条件判定部は、第1検出器により検出される当該物理量が第1目標速度に対応する物理量よりも小さいか否かを判定することにより負荷判定条件が満たされたか否かを判定することができる。第1実速度に対応する物理量が例えば第1アクチュエータへの作動油の実流量である第1実流量である場合、第1検出器は、第1実流量を検出する流量検出器である。
【0014】
前記第1アクチュエータは、前記建設機械において旋回可能に構成される上部旋回体を旋回させるための油圧モータである旋回モータであり、前記第1実速度は、前記旋回モータの回転速度であり、前記第1目標速度は、前記旋回モータの目標回転速度であることが好ましい。例えば油圧ショベルなどの旋回式の建設機械において、旋回モータの回転が加速しているとき、特に、旋回モータの起動時には、第1アクチュエータである旋回モータの負荷は、第2アクチュエータ(例えばブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダなど)の負荷よりも大きくなる。このとき、第1ポンプから吐出される作動油は、第2アクチュエータに偏って流れるので、第1実速度は第1目標速度よりも小さくなる。従って、条件判定部は、第1実速度としての旋回モータの回転速度が第1目標速度としての旋回モータの目標回転速度よりも小さい場合に、負荷判定条件が満たされたと判定することができ、速度補償部は、条件判定部による判定結果に基づいて、前記フィードバック制御を行うことができる。
【0015】
また、前記建設機械は、前記第1負荷を検出する第1負荷検出器と、前記第2負荷を検出する第2負荷検出器と、をさらに備え、前記負荷判定条件は、前記第1負荷検出器により検出される前記第1負荷が前記第2負荷検出器により検出される前記第2負荷よりも大きいという条件であってもよい。この態様では、条件判定部は、実際に検出された第1負荷及び第2負荷を比較することにより負荷判定条件が満たされたか否かを判定することができる。
【0016】
前記建設機械において、前記速度補償部は、前記複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第2指令操作の操作量に基づいて決まる前記第2アクチュエータの目標速度である第2目標速度と前記第2アクチュエータの実速度である第2実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第3目標開度に加算して得られる開度に前記第3制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御をさらに行うことが好ましい。この態様では、第2目標速度と第2実速度との速度差に基づいて第3制御弁の開度を調節するための前記フィードバック制御がさらに行われることにより第2アクチュエータの第2実速度を第2目標速度に精度よく調節することができる。
【0017】
前記建設機械において、前記速度補償部は、前記複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第1目標速度と前記第1実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第1目標開度に加算して得られる開度に前記第1制御弁の開度を調節するようなフィードバック制御をさらに行うことが好ましい。この態様では、第1目標速度と第1実速度との速度差に基づいて第1制御弁の開度を調節するための前記フィードバック制御がさらに行われることにより第1アクチュエータの第1実速度を第1目標速度により迅速に調節することができる。
【0018】
前記建設機械において、前記速度補償部は、前記複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと前記条件判定部が判定した場合に、前記第1アクチュエータに供給される作動油の実流量である第1実流量と前記第2アクチュエータに供給される作動油の実流量である第2実流量との和である合計実流量を演算し、前記合計目標流量と前記合計実流量との流量差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量に基づいて前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの少なくとも一方の吐出量を調節するようなフィードバック制御をさらに行うことが好ましい。この態様では、合計目標流量と合計実流量との流量差に基づいて第1ポンプ及び第2ポンプの少なくとも一方の吐出量を調節するための前記フィードバック制御が行われることにより合計実流量を合計目標流量に精度よく調節することができる。
【0019】
前記建設機械において、前記速度補償部は、当該速度補償部により演算された前記合計目標流量が、前記第1ポンプが吐出可能な作動油の最大吐出量である第1最大吐出量と前記第2ポンプが吐出可能な作動油の最大吐出量である第2最大吐出量との和である合計最大吐出量よりも大きい場合に、前記第1目標流量と前記第2目標流量との比を保持しながら前記合計目標流量が前記合計最大吐出量以下となるように前記第1目標流量及び前記第2目標流量を補正することが好ましい。この態様では、第1指令操作の操作量及び第2指令操作の操作量に応じた第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの速度のバランスを保ちながら、第1ポンプの吐出量及び第2ポンプの吐出量の合計吐出量を合計最大吐出量以下に設定することができる。
【0020】
前記建設機械は、前記第1ポンプの作動油の吐出圧力である第1吐出圧を検出する第1吐出圧検出器と、前記第2ポンプの作動油の吐出圧力である第2吐出圧を検出する第2吐出圧検出器と、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプを駆動するエンジンと、前記エンジンの出力を判定する出力判定部と、をさらに備え、前記速度補償部は、前記エンジンの前記出力と前記第1吐出圧及び前記第2吐出圧とに基づいて前記合計最大吐出量を演算することが好ましい。この態様では、エンジンの出力と第1吐出圧及び第2吐出圧とに基づいて、第1ポンプ及び第2ポンプの吐出量に制限を加えることができ、これにより、エンジンに過負荷を与えることなく、第1アクチュエータ及び第2アクチュエータの速度を補償することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本開示によれば、複合操作が行われるときに第1アクチュエータの負荷が第2アクチュエータの負荷よりも大きい場合であっても、第1アクチュエータの実速度を目標速度に精度よく調節することができる建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る建設機械の油圧回路を示す図である。
図3】第1実施形態に係る建設機械のコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る建設機械のコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る建設機械の油圧回路を示す図である。
図6】変形例1に係る建設機械のコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
図7】変形例2に係る建設機械のコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
図8】変形例3に係る建設機械のコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
図9】変形例3に係る建設機械のコントローラが行う処理を示すフローチャートである。
図10】第1指令操作の操作量とポンプ流量指令値の関係を示すマップの一例である。
図11】第2指令操作の操作量とポンプ流量指令値の関係を示すマップの一例である。
図12】ポンプ流量指令値と制御弁開度指令値の関係を示すマップの一例である。
図13】第1指令操作の操作量と第1目標速度の関係を示すマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本開示の実施形態に係る建設機械100の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【0024】
建設機械100は、地面を走行可能な下部走行体1と、前記下部走行体1に上下方向の軸Zの回りに旋回可能となるように搭載される上部旋回体2と、上部旋回体2に搭載される作業装置3と、複数の油圧アクチュエータと、を備える。上部旋回体2の前後方向の前側部分に運転室であるキャブが設けられるとともに作業装置3が搭載されている。上部旋回体2の後側部分にエンジンルームが設けられるとともにカウンタウエイトが搭載されている。作業装置3は、ブーム4と、アーム5と、バケット6と、を含む。複数の油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7と、アームシリンダ8と、バケットシリンダ9と、旋回モータ10と、を含む。
【0025】
ブーム4は、上部旋回体2の前側部分に起伏可能に支持されている。ブーム4は、上部旋回体2に対して水平軸を中心として上下方向に回動可能となるように上部旋回体2に取り付けられる基端部と、その反対側の先端部と、を有する。アーム5は、ブーム4の先端部に水平軸回りに回動可能に連結される基端部と、その反対側の先端部と、を有する。バケット6は、アーム5の先端部に水平軸回りに回動可能に連結される基端部を有する。
【0026】
ブーム4は、その基端部を中心として起立方向に回動するブーム上げ動作と、前記基端部を中心として倒伏方向に回動するブーム下げ動作と、を行う。起立方向は、ブーム4の先端部が地面から離れる方向であり、倒伏方向は、ブーム4の先端部が地面に近づく方向である。アーム5は、その基端部を中心として前方に回動するアーム押し動作と、前記基端部を中心として後方に回動するアーム引き動作と、を行う。バケット6は、その基端部を中心として回動するバケット押し動作とバケット引き動作とを行う。
【0027】
ブームシリンダ7は、上部旋回体2に接続された一端部と、ブーム4に接続された他端部とを有し、当該ブームシリンダ7が伸長することによりブーム4が起立方向に回動するようにブーム4にブーム上げ動作を行わせ、当該ブームシリンダ7が収縮することによりブーム4が倒伏方向に回動するようにブーム4にブーム下げ動作を行わせる。
【0028】
アームシリンダ8は、ブーム4に接続された一端部と、アーム5に接続された他端部とを有し、当該アームシリンダ8が伸長することによりアーム5にアーム引き動作を行わせ、当該アームシリンダ8が収縮することによりアーム5にアーム押し動作を行わせる。
【0029】
バケットシリンダ9は、アーム5に接続された一端部と、バケット6に接続された他端部とを有し、当該バケットシリンダ9が伸長することによりバケット6にバケット引き動作を行わせ、当該バケットシリンダ9が収縮することによりバケット6にバケット押し動作を行わせる。
【0030】
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る建設機械100の油圧回路を示す図である。図2に示すように、建設機械100は、第1ポンプ21と、第2ポンプ22と、エンジン23と、複数の制御弁と、複数の操作装置と、複数の電磁比例減圧弁と、パイロット油圧源24と、複数の検出器と、タンクと、コントローラ50と、を備える。なお、図2の油圧回路では、ブームシリンダ7及び旋回モータ10に関連する構成要素のみが図示され、その他の構成要素の図示は省略されている。
【0031】
第1ポンプ21及び第2ポンプ22のそれぞれは、可変容量形の油圧ポンプであり、エンジン23の出力軸に連結されている。第1ポンプ21及び第2ポンプ22のそれぞれは、エンジン23によって駆動され、これにより、タンク内の作動油を吐出する。第1ポンプ21及び第2ポンプ22のそれぞれは、レギュレータを有し、コントローラ50からレギュレータに入力される吐出量指令に基づいて傾転角を変えることによりモータ容量を変化させて作動油の吐出量を変化させるように構成される。
【0032】
旋回モータ10は、第1ポンプ21から吐出される作動油の供給を受けることにより上部旋回体2を旋回させるように作動する油圧モータである。旋回モータ10は、作動油の供給を受けて回転する図略の出力軸を有し、当該出力軸は上部旋回体2を左右双方向に旋回させるように上部旋回体2に連結されている。具体的に、旋回モータ10は、一対のポートを有し、これらのうちの一方のポートへの作動油の供給を受けることにより当該一方のポートに対応する方向に前記出力軸が回転するとともに他方のポートから作動油を排出する。旋回モータ10は、第1アクチュエータの一例である。
【0033】
ブームシリンダ7は、第1ポンプ21から吐出される作動油及び第2ポンプ22から吐出される作動油の少なくとも一方の作動油が供給されることにより伸長又は収縮し、これにより、ブーム4を起立方向又は倒伏方向に回動させる。ブームシリンダ7は、第2アクチュエータの一例である。
【0034】
複数の制御弁は、第1制御弁31と、第2制御弁32と、第3制御弁33と、を含む。
【0035】
第1制御弁31は、第1ポンプ21と旋回モータ10との間に介在し、第1ポンプ21から旋回モータ10に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。第1制御弁31は、一対のパイロットポートを有する3位置方向切換弁であり、そのスプールの変位量(スプールの位置)に応じて第1制御弁31の開度(開口量)が調節されることにより作動油の流量を変化させる流量調節機能を有する。
【0036】
第2制御弁32は、第1ポンプ21とブームシリンダ7との間に介在し、第1ポンプ21からブームシリンダ7に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。第2制御弁32は、一対のパイロットポートを有する3位置方向切換弁であり、そのスプールの変位量(スプールの位置)に応じて第2制御弁32の開度(開口量)が調節されることにより作動油の流量を変化させる流量調節機能を有する。
【0037】
第3制御弁33は、第2ポンプ22とブームシリンダ7との間に介在し、第2ポンプ22からブームシリンダ7に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。第3制御弁33は、一対のパイロットポートを有する3位置方向切換弁であり、そのスプールの変位量(スプールの位置)に応じて第3制御弁33の開度(開口量)が調節されることにより作動油の流量を変化させる流量調節機能を有する。
【0038】
複数の操作装置は、第1操作装置41と、第2操作装置42と、を含む。
【0039】
第1操作装置41は、旋回モータ10の作動を指令するための第1指令操作が与えられる第1操作レバー41Aを有する。第1操作装置41は、第1指令操作を受けて当該第1指令操作に対応する電気信号である第1指令信号を出力する電気レバー装置である。第1操作装置41から出力された第1指令信号は、コントローラ50に入力される。
【0040】
第2操作装置42は、ブームシリンダ7の作動を指令するための第2指令操作が与えられる第2操作レバー42Aを有する。第2操作装置42は、第2指令操作を受けて当該第2指令操作に対応する電気信号である第2指令信号を出力する電気レバー装置である。第2操作装置42から出力された第2指令信号は、コントローラ50に入力される。
【0041】
複数の電磁比例減圧弁は、一対の電磁比例減圧弁34,34と、一対の電磁比例減圧弁35,35と、一対の電磁比例減圧弁36,36と、を含む。
【0042】
一対の電磁比例減圧弁34,34は、パイロット油圧源24と第1制御弁31の一対のパイロットポートとを接続する一対のパイロットラインにそれぞれ設けられている。一対の電磁比例減圧弁35,35は、パイロット油圧源24と第2制御弁32の一対のパイロットポートとを接続する一対のパイロットラインにそれぞれ設けられている。一対の電磁比例減圧弁36,36は、パイロット油圧源24と第3制御弁33の一対のパイロットポートとを接続する一対のパイロットラインにそれぞれ設けられている。
【0043】
コントローラ50は、第1指令信号の入力を受け、当該第1指令信号に対応したパイロット圧が第1制御弁31の一方のパイロットポート(一対のパイロットポートのうち第1指令操作の方向に対応するパイロットポート)に入力されるように、一方の電磁比例減圧弁34(一対の電磁比例減圧弁34,34のうち第1指令操作の方向に対応する電磁比例減圧弁34)を開閉作動させる。
【0044】
コントローラ50は、第2指令信号の入力を受け、当該第2指令信号に対応したパイロット圧が第2制御弁32の一方のパイロットポート(一対のパイロットポートのうち第2指令操作の方向に対応するパイロットポート)に入力されるように、一方の電磁比例減圧弁35(一対の電磁比例減圧弁35,35のうち第2指令操作の方向に対応する電磁比例減圧弁35)を開閉作動させる。
【0045】
コントローラ50は、第2指令信号の入力を受け、当該第2指令信号に対応したパイロット圧が第3制御弁33の一方のパイロットポート(一対のパイロットポートのうち第2指令操作の方向に対応するパイロットポート)に入力されるように、一方の電磁比例減圧弁36,36(一対の電磁比例減圧弁36のうち第2指令操作の方向に対応する電磁比例減圧弁36)を開閉作動させる。
【0046】
第1制御弁31、第2制御弁32及び第3制御弁33のそれぞれは、スプールを有し、一対のパイロットポートの何れにもパイロット圧が供給されていないときには、スプールが中立位置にある。スプールが中立位置にあるときの第1制御弁31は、第1ポンプ21から旋回モータ10への作動油の供給を遮断して旋回モータ10の回転を停止させる。スプールが中立位置にあるときの第2制御弁32は、第1ポンプ21からブームシリンダ7への作動油の供給を遮断し、スプールが中立位置にあるときの第3制御弁33は、第2ポンプ22からブームシリンダ7への作動油の供給を遮断する。第2制御弁32及び第3制御弁33のスプールがともに中立位置にあるときには、第1ポンプ21及び第2ポンプ22の何れからもブームシリンダ7へ作動油が供給されないので、ブームシリンダ7は停止する。
【0047】
第1制御弁31における一対のパイロットポートのうち一方のパイロットポートにパイロット圧が供給されているときには、当該パイロット圧に対応する変位量で前記一方のパイロットポートに対応する方向にスプールが中立位置からシフトする。これにより、第1制御弁31は、前記変位量に対応する開度(開口量)に調節され、旋回モータ10の一方のポートに前記変位量に対応する流量で第1ポンプ21から作動油が供給されることを許容しつつ、他方のポートからタンクに作動油が戻ることを許容する。
【0048】
第2制御弁32における一対のパイロットポートのうち一方のパイロットポートにパイロット圧が供給されているときには、当該パイロット圧に対応する変位量で前記一方のパイロットポートに対応する方向にスプールが前記中立位置からシフトする。これにより、第2制御弁32は、前記変位量に対応する開度(開口量)に調節され、ブームシリンダ7のヘッド側室及びロッド側室の一方に前記変位量に対応する流量で第1ポンプ21から作動油が供給されることを許容しつつ、ヘッド側室及びロッド側室の他方からタンクに作動油が戻ることを許容する。
【0049】
第3制御弁33における一対のパイロットポートのうち一方のパイロットポートにパイロット圧が供給されているときには、当該パイロット圧に対応する変位量で前記一方のパイロットポートに対応する方向にスプールが前記中立位置からシフトする。これにより、第3制御弁33は、前記変位量に対応する開度(開口量)に調節され、ブームシリンダ7のヘッド側室及びロッド側室の一方に前記変位量に対応する流量で第2ポンプ22から作動油が供給されることを許容しつつ、ヘッド側室及びロッド側室の他方からタンクに作動油が戻ることを許容する。
【0050】
複数の検出器は、第1速度検出器61と、第2速度検出器62と、第1吐出圧検出器63と、第2吐出圧検出器64と、を含む。第1速度検出器61は、旋回モータ10の回転速度を検出するセンサである。このようなセンサとしては、例えば、ロータリーエンコーダ、レゾルバなどを用いることができる。第2速度検出器62は、ブームシリンダ7の伸縮速度を検出するセンサである。第1吐出圧検出器63は、第1ポンプ21の作動油の吐出圧力である第1吐出圧を検出する圧力センサである。第2吐出圧検出器64は、第2ポンプ22の作動油の吐出圧力である第2吐出圧を検出する圧力センサである。
【0051】
コントローラ50は、例えばCPU、メモリなどを備えるコンピュータにより構成され、弁制御部51と、ポンプ制御部52と、条件判定部53と、速度補償部54と、出力判定部55と、を含む。なお、図2では、便宜上、コントローラ50を表す2つのブロックが左右2か所に描かれているが、これらの2つのブロックは、実際には単一のコントローラ50である。
【0052】
ポンプ制御部52は、前記第1指令操作の操作量に基づいて決まる旋回モータ10への作動油の目標流量である第1目標流量と前記第2指令操作の操作量に基づいて決まるブームシリンダ7への作動油の目標流量である第2目標流量との和である合計目標流量の作動油が第1ポンプ21及び第2ポンプ22の少なくとも一方から吐出されるように、第1ポンプ21の吐出量及び第2ポンプ22の吐出量を調節する。
【0053】
コントローラ50は、ポンプ制御部52が第1ポンプ21の吐出量及び第2ポンプ22の吐出量を調節するためのマップを予め記憶している。
【0054】
ポンプ制御部52は、例えば図10に示すような第1操作装置41に与えられる第1指令操作の操作量とポンプ流量指令値との関係を表すマップから第1指令操作の操作量に対応するポンプ流量指令値(第1指令値)を求め、この第1指令値を出力する。同様に、ポンプ制御部52は、例えば図11に示すような第2操作装置42に与えられる第2指令操作の操作量とポンプ流量指令値との関係を表すマップから第2指令操作の操作量に対応するポンプ流量指令値(第2指令値)を求め、この第2指令値を出力する。
【0055】
図11に示すマップは、第1ポンプ21及び第2ポンプ22のうち、第1ポンプ21の容量が最大容量に達するまでは第1ポンプ21のみが使用され、第1ポンプ21の容量が最大容量に達した後に第2ポンプ22の使用が開始されるような形態を表している。この形態では、第1ポンプ21の容量が最大容量に達するまでは、第1ポンプ21の容量は、第1指令値に対応する容量と第2指令値に対応する容量とを足し合わせた容量に調節される。これにより、第1ポンプ21は、第1目標流量と第2目標流量とを足し合わせた量の作動油を吐出する。また、第1ポンプ21の容量が最大容量に達した後には、第1ポンプ21の容量は、最大容量に調節され、第2ポンプ22の容量は、第2指令値(図11に示すマップにおける第2指令操作の操作量に対応する指令値)に対応する容量に調節される。これにより、第1ポンプ21は、最大容量に対応する吐出量の作動油を吐出し、第2ポンプ22は、第2指令に対応する吐出量の作動油を吐出する。第2ポンプ22が吐出する第2指令に対応する吐出量は、第1目標流量と第2目標流量との和である合計目標流量から第1ポンプ21の最大容量に対応する吐出量を減算した量である。
【0056】
ただし、第2指令操作の操作量とポンプ流量指令値との関係を表すマップは、図11に示す形態に限られない。第2指令操作の操作量とポンプ流量指令値との関係を表すマップは、例えば、第1ポンプ21と第2ポンプ22とが同時に使用開始されるような形態を表すものであってもよい。また、第2指令操作の操作量とポンプ流量指令値との関係を表すマップは、例えば、第1ポンプ21及び第2ポンプ22のうち、第2ポンプ22の容量が最大容量に達するまでは第2ポンプ22のみが第2目標流量用として使用され、第2ポンプ22の容量が最大容量に達した後に第1ポンプ21も第2目標流量用として使用されるような形態を表すものであってもよい。なお、この後者の場合において、第2ポンプ22の容量が最大容量に達する前でも、第1操作装置41に第1指令操作が与えられた場合には、第1ポンプ21も使用される。
【0057】
弁制御部51は、第1制御弁31の開度を第1制御弁31の目標開度である第1目標開度に調節し、第2制御弁32の開度を第2制御弁32の目標開度である第2目標開度に調節し、第3制御弁33の開度を第3制御弁33の目標開度である第3目標開度に調節する。
【0058】
第1目標開度は、前記第1目標流量に基づいて決まる第1制御弁31の目標開度である。第2目標開度は、前記第2目標流量のうち第2制御弁32を介したブームシリンダ7への作動油の目標流量である第2制御弁目標流量に基づいて決まる開度である。第3目標開度は、前記第2目標流量のうち第3制御弁33を介したブームシリンダ7への作動油の目標流量である第3制御弁目標流量に基づいて決まる開度である。
【0059】
コントローラ50は、弁制御部51が第1制御弁31の開度、第2制御弁32の開度及び第3制御弁33の開度を調節するためのマップを予め記憶している。
【0060】
弁制御部51は、例えば図12に示すようなポンプ流量指令値と制御弁開口指令値(制御弁開度指令値)との関係を表すマップからポンプ流量指令値に対応する制御弁開口指令値を求め、この制御弁開口指令値を出力する。
【0061】
具体的に、弁制御部51は、図10に示すマップから求められたポンプ流量指令値(第1指令値)、すなわち、第1指令操作の操作量に対応するポンプ流量指令値と、図12に示すマップから第1制御弁の開口指令値を求め、この開口指令値を出力する。前記一対の電磁比例減圧弁34,34のうち第1指令操作の方向に対応する電磁比例減圧弁34に前記開口指令値が入力されると、当該電磁比例減圧弁34は、開口指令値に対応するパイロット圧が第1制御弁31のパイロットポートに入力されるように開閉作動する。これにより、第1制御弁31は、前記第1目標流量に基づいて決まる第1目標開度に調節される。
【0062】
また、第1ポンプ21の容量が最大容量に達した後において、弁制御部51は、図11に示すマップから求められたポンプ流量指令値(第2指令値)、すなわち、第2指令操作の操作量に対応するポンプ流量指令値と、第2制御弁32用に設定された図12と同様の図略のマップから第2制御弁の開口指令値を求め、この開口指令値を出力する。前記一対の電磁比例減圧弁35,35のうち第2指令操作の方向に対応する電磁比例減圧弁35に前記開口指令値が入力されると、当該電磁比例減圧弁35は、開口指令値に対応するパイロット圧が第2制御弁32のパイロットポートに入力されるように開閉作動する。これにより、第2制御弁32は、前記第2目標流量のうち第2制御弁32を介したブームシリンダ7への作動油の目標流量である第2制御弁目標流量に基づいて決まる第2目標開度に調節される。
【0063】
弁制御部51は、図11に示すマップから求められたポンプ流量指令値(第2指令値)、すなわち、第2指令操作の操作量に対応するポンプ流量指令値と、第3制御弁33用に設定された図12と同様のマップから第3制御弁の開口指令値を求め、この開口指令値を出力する。前記一対の電磁比例減圧弁36,36のうち第2指令操作の方向に対応する電磁比例減圧弁36に前記開口指令値が入力されると、当該電磁比例減圧弁36は、開口指令値に対応するパイロット圧が第3制御弁33のパイロットポートに入力されるように開閉作動する。これにより、第3制御弁33は、前記第2目標流量のうち第3制御弁33を介したブームシリンダ7への作動油の目標流量である第3制御弁目標流量に基づいて決まる第3目標開度に調節される。
【0064】
条件判定部53は、予め設定された負荷判定条件が満たされたか否かを判定する。負荷判定条件は、第1アクチュエータの負荷である第1負荷が第2アクチュエータの負荷である第2負荷よりも大きいことを判定するための条件である。第1実施形態では、負荷判定条件は、第1速度検出器61により検出される旋回モータ10の回転速度が旋回モータ10の目標回転速度よりも小さいという条件である。条件判定部53は、前記回転速度が前記目標回転速度よりも小さい場合に前記負荷判定条件が満たされたと判定する。
【0065】
速度補償部54は、第1操作装置41に第1指令操作が与えられるとともに第2操作装置42に第2指令操作が与えられる複合操作が行われ、かつ、前記負荷判定条件が満たされたと条件判定部53が判定した場合に、速度補償制御を行う。
【0066】
当該速度補償制御は、前記第1指令操作の操作量に基づいて決まる旋回モータ10の目標回転速度と旋回モータ10の実速度である回転速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第2目標開度から減算して得られる開度に第2制御弁32の開度を調節するようなフィードバック制御(第2制御弁フィードバック制御)を含む。
【0067】
この第2制御弁フィードバック制御において、速度補償部54は、第1目標速度と第1実速度の速度差を実際に演算し、演算された速度差が大きいほど大きな補正量を演算してもよく、また、第1目標速度に対応する第1目標流量と第1実速度に対応する第1実流量の偏差を演算し、演算された偏差が大きいほど大きな補正量を演算してもよい。
【0068】
旋回モータ10の回転速度は、第1実速度の一例であり、旋回モータ10の目標回転速度は、第1目標速度の一例である。
【0069】
第1目標速度は、第1指令操作の操作量に基づいて決まる目標速度であり、第2目標速度は、第2指令操作の操作量に基づいて決まる目標速度である。第1目標速度は、前記第1目標流量に非常によく相関する値であり、第2目標速度は、前記第2目標流量に非常によく相関する値である。従って、コントローラ50は、前記第1目標流量から予め設定された換算式を用いて第1目標速度を演算することができ、前記第2目標流量から予め設定された換算式を用いて第2目標速度を演算することができる。同様に、コントローラ50は、前記第1目標速度から予め設定された換算式を用いて第1目標流量を演算することができ、前記第2目標速度から予め設定された換算式を用いて第2目標流量を演算することもできる。また、コントローラ50は、例えば図13に示すように第1指令操作の操作量と第1目標速度との関係が予め設定されたマップと、第1操作装置41から出力されてコントローラ50に入力される第1指令信号とに基づいて第1目標速度を演算することもできる。同様に、コントローラ50は、第2指令操作の操作量と第2目標速度との関係が予め設定された図略のマップと、第2操作装置42から出力されてコントローラ50に入力される第2指令信号とに基づいて第2目標速度を演算することもできる。
【0070】
本実施形態では、前記速度補償制御は、第1制御弁フィードバック制御、第3制御弁フィードバック制御、及びポンプフィードバック制御をさらに含む。
【0071】
第1制御弁フィードバック制御は、前記第1目標速度と前記第1実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第1目標開度に加算して得られる開度に第1制御弁31の開度を調節するようなフィードバック制御である。
【0072】
この第1制御弁フィードバック制御において、速度補償部54は、第1目標速度と第1実速度の速度差を実際に演算し、演算された速度差が大きいほど大きな補正量を演算してもよく、また、第1目標速度に対応する第1目標流量と第1実速度に対応する第1実流量の偏差を演算し、演算された偏差が大きいほど大きな補正量を演算してもよい。
【0073】
第3制御弁フィードバック制御は、前記第2指令操作の操作量に基づいて決まるブームシリンダ7の目標速度である第2目標速度とブームシリンダ7の実速度である第2実速度との速度差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量を前記第3目標開度に加算して得られる開度に第3制御弁33の開度を調節するようなフィードバック制御である。
【0074】
この第3制御弁フィードバック制御において、速度補償部54は、第2目標速度と第2実速度の速度差を実際に演算し、演算された速度差が大きいほど大きな補正量を演算してもよく、また、第2目標速度に対応する第2目標流量と第2実速度に対応する第2実流量の偏差を演算し、演算された偏差が大きいほど大きな補正量を演算してもよい。
【0075】
ポンプフィードバック制御は、前記第1目標流量と前記第2目標流量との和である合計目標流量を演算し、旋回モータ10に供給される作動油の実流量である第1実流量とブームシリンダ7に供給される作動油の実流量である第2実流量との和である合計実流量を演算し、前記合計目標流量と前記合計実流量との流量差が大きいほど大きな補正量を演算し、この補正量の分だけ第1ポンプ21の吐出量と第2ポンプ22の吐出量との和である合計吐出量が増加するように第1ポンプ21及び第2ポンプ22の少なくとも一方の吐出量を調節するようなフィードバック制御である。
【0076】
速度補償制御は、第1制御弁31の開度を第1目標開度よりも大きくすることと、第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくすることと、第3制御弁33の開度を第3目標開度よりも大きくすることと、第1ポンプ21の吐出量及び第2ポンプ22の吐出量の少なくとも一方を増加させることと、を含む。前記第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくすることは、第2制御弁32を閉じることであってもよい。
【0077】
出力判定部55は、エンジン23の最大出力を判定する。具体的には次の通りである。コントローラ50は、エンジンスペックから決定されるエンジンの回転速度とエンジンの出力の特性を表すマップを予め記憶している。出力判定部55は、コントローラ50からエンジン23へ出力されるエンジン回転速度指令と前記マップとに基づいてエンジン23の最大出力を判定する。
【0078】
図3及び図4は、前記コントローラ50により実行される制御動作を示すフローチャートである。図3及び図4は、便宜上2つに分かれているが、図3及び図4に示すフローチャートは、一連の制御動作を示すものである。
【0079】
まず、第1速度検出器61、第2速度検出器62、第1吐出圧検出器63及び第2吐出圧検出器64が検出した検出値に対応する信号がコントローラ50に入力される(ステップS1)。
【0080】
次に、コントローラ50は、予め設定された前記マップと、第1操作装置41の第1操作レバー41Aに与えられる第1指令操作に対応する第1指令信号とに基づいて第1目標速度を決定する。同様に、コントローラ50は、予め設定された前記マップと、第2操作装置42の第2操作レバー42Aに対応する第2指令信号とに基づいて第2目標速度を決定する(ステップS2)。
【0081】
次に、速度補償部54は、第1目標速度と第1実速度との差である旋回モータ10の速度偏差(第1目標速度-第1実速度)を演算し、第2目標速度と第2実速度との差であるブームシリンダ7の速度偏差(第2目標速度-第2実速度)を演算する(ステップS3)。
【0082】
次に、速度補償部54は、前記第1指令信号と前記第2指令信号とに基づいて、前記複合操作が行われているか否かを判定する(ステップS4)。前記複合操作が行われている場合(ステップS4においてYES)、条件判定部53は、前記負荷判定条件が満たされているか否かを判定する(ステップS5)。第1実施形態では、条件判定部53は、前記回転速度(第1実速度)が前記目標回転速度(第1目標速度)よりも小さい場合、すなわち、第1実速度と第1目標速度との差(第1目標速度-第1実速度)がプラスの値である場合に前記負荷判定条件が満たされたと判定する。
【0083】
前記負荷判定条件が満たされている場合(ステップS5においてYES)、コントローラ50は、ステップS6a~S16a,S17,S18の処理(第1の速度補償制御)を実行する。この第1の速度補償制御は、本開示の速度補償制御に相当する制御である。一方、前記複合操作が行われていない場合(ステップS4においてNO)又は前記負荷判定条件が満たされていない場合(ステップS5においてNO)、コントローラ50は、ステップS6b~S16b,S17,S18の処理(第2の速度補償制御)を実行する。
【0084】
ステップS6a~S16a,S17,S18の第1の速度補償制御では、速度補償部54は、旋回モータ10の速度偏差がゼロに近づくように第1制御弁31の開度を調節するフィードバック制御を行い、旋回モータ10の速度偏差がゼロに近づくように第2制御弁32の開度を調節するフィードバック制御を行うとともにブームシリンダ7の速度偏差がゼロに近づくように第3制御弁33の開度を調節するフィードバック制御を行う。具体的には以下の通りである。
【0085】
速度補償部54は、旋回モータ10の速度偏差(第1目標速度-第1実速度)と、例えば次の式(1)とを用いて、旋回モータ10の速度偏差がゼロに近づくような第1制御弁31の開度(開口量)の補正値(第1補正値)を演算する(ステップS6a)。ステップS6aにおいて演算される第1補正値は、第1制御弁31の開度を第1目標開度よりも大きくするための補正値である。速度補償部54は、この第1補正量を前記第1目標開度に加算することにより補正された第1開口指令値を演算する。
【0086】
第1補正値=比例ゲイン×速度偏差+積分ゲイン×速度偏差の積算値+微分ゲイン×速度偏差の差分 ・・・(1)
また、速度補償部54は、ブームシリンダ7の速度偏差(第2目標速度-第2実速度)と、例えば下記式(2)とを用いて、ブームシリンダ7の速度偏差がゼロに近づくような第3制御弁33の開度(開口量)の補正値(第3補正値)を演算する(ステップS7a)。ステップS7aにおいて演算される第3補正値は、第3制御弁33の開度を第3目標開度よりも大きくするための補正値である。速度補償部54は、この第3補正量を前記第3目標開度に加算することにより補正された第3開口指令値を演算する。
【0087】
第3補正値=比例ゲイン×速度偏差+積分ゲイン×速度偏差の積算値+微分ゲイン×速度偏差の差分 ・・・(2)
さらに、速度補償部54は、旋回モータ10の速度偏差(第目標速度-第実速度)と、例えば下記式(3)とを用いて、旋回モータ10の速度偏差がゼロに近づくような第2制御弁32の開度(開口量)の補正値(第2補正値)を演算する(ステップS8a)。ステップS8aにおいて演算される第2補正値は、第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくするための補正値である。速度補償部54は、この第2補正量を前記第2目標開度から減算することにより補正された第2開口指令値を演算する。
【0088】
第2補正値=比例ゲイン×速度偏差+積分ゲイン×速度偏差の積算値+微分ゲイン×速度偏差の差分 ・・・(3)
次に、速度補償部54は、第1目標速度に基づいて、旋回モータ10に供給すべき作動油の目標流量(第1目標流量)を演算し、第2目標速度に基づいて、ブームシリンダ7に供給すべき作動油の目標流量(第2目標流量)を演算する(ステップS9a)。
【0089】
速度補償部54は、第1目標流量と第2目標流量との和である合計目標流量を演算する(ステップS10a)。この合計目標流量は、第1ポンプ21及び第2ポンプ22から吐出される必要のある作動油の流量である。
【0090】
次に、速度補償部54は、第1吐出圧検出器63及び第2吐出圧検出器64が検出した第1吐出圧及び第2吐出圧と、出力判定部55により判定されたエンジン23の最大出力とに基づいて、合計最大吐出量(最大吐出可能流量)を演算する(ステップS11a)。この合計最大吐出量は、第1ポンプ21が吐出可能な作動油の最大吐出量である第1最大吐出量と、第2ポンプ22が吐出可能な作動油の最大吐出量である第2最大吐出量との和である。
【0091】
速度補償部54は、合計目標流量が合計最大吐出量以下であるか否かを判定する(ステップS12a)。合計目標流量が合計最大吐出量よりも大きい場合(ステップS12aにおいてNO)、速度補償部54は、第1目標流量と第2目標流量との比を保持しながら合計目標流量が合計最大吐出量以下となるように第1目標流量及び第2目標流量を補正する(ステップS18)
【0092】
一方、合計目標流量が合計最大吐出量以下である場合(ステップS12aにおいてYES)、速度補償部54は、前記第1実速度に基づいて、旋回モータ10に実際に供給される作動油の流量(第1実流量)を演算し、前記第2実速度に基づいて、ブームシリンダ7に実際に供給される作動油の流量(第2実流量)を演算する(ステップS13a)。
【0093】
速度補償部54は、前記第1実流量と前記第2実流量との和である合計実流量を演算する(ステップS14a)。この合計実流量は、第1ポンプ21及び第2ポンプ22が実際に吐出している作動油の総量である。
【0094】
速度補償部54は、前記合計実流量と前記合計目標流量との差を小さくするために第2ポンプ22の吐出量を調節するフィードバック制御を行うことにより前記合計実流量を前記合計目標流量に近づける。具体的には以下の通りである。
【0095】
速度補償部54は、合計目標流量と合計実流量との流量偏差(合計目標流量-合計実流量)と、例えば次の式(4)とを用いて、流量偏差がゼロに近づくような第2ポンプ22の吐出量の補正値(吐出量補正値)を演算する(ステップS15a)。
【0096】
吐出量補正値=比例ゲイン×流量偏差+積分ゲイン×流量偏差の積算値+微分ゲイン×流量偏差の差分 ・・・(4)
速度補償部54は、上記の吐出量補正値が演算される直前の合計目標吐出量に前記吐出量補正値を加算して吐出量指令値を演算する。
【0097】
速度補償部54は、第2ポンプ22のレギュレータに前記吐出量指令値(吐出量指令)を出力し、当該レギュレータは、第2ポンプ22の吐出量が当該吐出量指令値に対応する吐出量となるように第2ポンプ22の傾転角を変える。これにより、第2ポンプ22の吐出量が吐出量指令値に対応する吐出量まで増加する(ステップS16a)。
【0098】
速度補償部54は、電磁比例減圧弁34に前記第1開口指令値を出力し、当該電磁比例減圧弁34は、第1制御弁31の開度が第1開口指令値に対応する開度に調節されるようなパイロット圧を第1制御弁31のパイロットポートに出力する。また、速度補償部54は、電磁比例減圧弁35に前記第2開口指令値を出力し、当該電磁比例減圧弁35は、第2制御弁32の開度が第2開口指令値に対応する開度に調節されるようなパイロット圧を第2制御弁32のパイロットポートに出力する。さらに、速度補償部54は、電磁比例減圧弁36に前記第3開口指令値を出力し、当該電磁比例減圧弁36は、第3制御弁33の開度が第3開口指令値に対応する開度に調節されるようなパイロット圧を第3制御弁33のパイロットポートに出力する(ステップS17)
【0099】
次に、ステップS6b~S16b,S17,S18の処理について説明する。上述したように、前記複合操作が行われていない場合(ステップS4においてNO)又は前記負荷判定条件が満たされていない場合(ステップS5においてNO)、コントローラ50は、ステップS6b~S16b,S17,S18の処理(第2の速度補償制御)を実行する。
【0100】
ステップS6b~S16b,S17,S18の処理のうち、第2の速度補償制御が第1の速度補償制御と異なる処理は、ステップS7b、ステップS8b及びステップS16bである。すなわち、ステップ6bは、上述したステップ6aと同じであり、ステップS9b~S15bは、上述したステップS9a~S15aと同じであり、ステップS17は、上述したステップ17と同じである。
【0101】
ステップS7bでは、速度補償部54は、ブームシリンダ7の速度偏差(第2目標速度-第2実速度)と、予め設定された関係式とを用いて、ブームシリンダ7の速度偏差がゼロに近づくような第制御弁33の開度(開口量)の補正値を演算する。ステップS7bにおいて演算される補正値は、第制御弁33の開度を第目標開度よりも小さくする又は大きくするような補正値である。
【0102】
ステップS8bでは、速度補償部54は、ブームシリンダ7の速度偏差(第2目標速度-第2実速度)と、予め設定された関係式とを用いて、ブームシリンダ7の速度偏差がゼロに近づくような第2制御弁32の開度(開口量)の補正値を演算する。ステップS8bにおいて演算される補正値は、第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくする又は大きくするような補正値である。
【0103】
ステップ16bでは、速度補償部54は、第1ポンプ21のレギュレータに前記吐出量指令値(吐出量指令)を出力し、当該レギュレータは、第1ポンプ21の吐出量が当該吐出量指令値に対応する吐出量となるように第1ポンプ21の傾転角を変える。これにより、第1ポンプ21の吐出量が吐出量指令値に対応する吐出量まで増加する(ステップS16b)。
【0104】
以上説明したように、第1実施形態に係る建設機械100では、速度補償部54は、第1指令操作の操作量に基づいて決まる第1目標速度と第1実速度との速度差(第1目標速度-第1実速度)が大きいほど大きな第2補正量を演算し、演算された第2補正量を第2目標開度から減算して得られる開度に第2制御弁32の開度を調節するようなフィードバック制御が行われるので、複合操作が行われるときに旋回モータ10の第1負荷がブームシリンダ7の第2負荷よりも大きい場合であっても、旋回モータ10の回転速度を、第1指令操作の操作量に応じた目標回転速度に精度よく調節することができる。
【0105】
また、第1実施形態では、第2目標速度と第2実速度との速度差に基づいて第3制御弁33の開度を調節するための前記第3制御弁フィードバック制御がさらに行われることによりブームシリンダ7の第2実速度を第2目標速度に精度よく調節することができる。
【0106】
さらに、第1実施形態では、第1目標速度と第1実速度との速度差に基づいて第1制御弁31の開度を調節するための前記第1制御弁フィードバック制御がさらに行われることにより旋回モータ10の第1実速度を第1目標速度により迅速に調節することができる。
【0107】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る建設機械100の油圧回路を示す図である。図5に示すように、第2実施形態では、速度補償制御が行われる2つの油圧アクチュエータの組み合わせが、第1実施形態とは異なっており、その他の構成は第1実施形態と同様である。従って、以下では、第1実施形態と異なる第2実施形態の構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成については図5において第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0108】
第1実施形態では、旋回モータ10(第1アクチュエータ)とブームシリンダ7(第2アクチュエータ)の組み合わせに対して速度補償制御が行われるが、第2実施形態では、アームシリンダ8(第1アクチュエータ)とブームシリンダ7(第2アクチュエータ)の組み合わせに対して速度補償制御が行われる。
【0109】
図5に示すように、アームシリンダ8は、第1ポンプ21から吐出される作動油が供給されることにより伸長又は収縮し、これにより、アーム5を前方又は後方に回動させる。アームシリンダ8は、第1アクチュエータの一例である。
【0110】
第1制御弁31は、第1ポンプ21とアームシリンダ8との間に介在し、第1ポンプ21からアームシリンダ8に供給される作動油の方向及び流量を変化させるように開閉作動する。第1制御弁31は、一対のパイロットポートを有する3位置方向切換弁であり、そのスプールの変位量(スプールの位置)に応じて第1制御弁31の開度(開口量)が調節されることにより作動油の流量を変化させる流量調節機能を有する。
【0111】
第1速度検出器67は、アームシリンダ8の伸縮速度を検出するセンサである。
【0112】
第2実施形態では、負荷判定条件は、第1速度検出器67により検出されるアームシリンダ8の第1実速度(伸縮速度)がアームシリンダ8の第1目標速度よりも小さいという条件である。条件判定部53は、前記第1実速度が前記第1目標速度よりも小さい場合に前記負荷判定条件が満たされたと判定する。
【0113】
第2実施形態においてコントローラ50により実行される制御動作は、第1実施形態と同様に、図3及び図4に示すフローチャートに沿って行われてもよい。すなわち、第2実施形態に係る制御動作は、図3及び図4のフローチャートにおいて第1アクチュエータがアームシリンダ8である以外は、第1実施形態に係る制御動作と同様である。
【0114】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る建設機械100は、第1アクチュエータの第1負荷及び第2アクチュエータの第2負荷を実際に検出するための検出器を備えている点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。第3実施形態におけるその他の構成は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0115】
従って、第3実施形態に係る建設機械100は、第1負荷を検出する第1負荷検出部と、第2負荷を検出する第2負荷検出部と、をさらに備える。前記負荷判定条件は、前記第1負荷検出器により検出される前記第1負荷が前記第2負荷検出器により検出される前記第2負荷よりも大きいという条件である。第1負荷検出器は、第1ポンプ21から吐出される作動油の圧力を検出する圧力センサであり、第2負荷検出器は、第2ポンプ22から吐出される作動油の圧力を検出する圧力センサである。第1負荷検出器は、例えば図2に示す油圧回路において、第1ポンプ21と第1制御弁31とを接続する油圧配管に設けられた圧力センサ63により構成されていてもよい。第1負荷検出器は、例えば、旋回モータ10の差圧を検出することが可能な差圧センサ65(一対の圧力センサ65A,65B)により構成されていてもよい。第2負荷検出器は、例えば、第2ポンプ22と第3制御弁33とを接続する油圧配管に設けられた圧力センサ64により構成されていてもよい。第2負荷検出器は、例えば、第3制御弁33とブームシリンダ7のヘッド側室とをつなぐ配管に設けられた圧力センサ66により構成されていてもよい。なお、第1実施形態及び第2実施形態に係る建設機械100では、第1負荷検出器と第2負荷検出器は省略可能である。
【0116】
第3実施形態では、条件判定部53は、第1負荷検出器及び第2負荷検出器によって実際に検出された第1負荷及び第2負荷を比較することにより、負荷判定条件が満たされたか否かを判定することができる。
【0117】
[変形例]
なお、図3及び図4のフローチャートに示す複数の処理のうち、ステップS6a~S8a及びステップS6b~S8bは、第1~第3制御弁31~33を制御するための処理(バルブ処理)であり、ステップS9a~S16a及びステップ9b~16bは、第1,第2ポンプ21,22を制御するための処理(ポンプ処理)である。図3では、バルブ処理の後にポンプ処理が行われるが、このような態様に限られない。
【0118】
例えば、図6に示す変形例1のように、バルブ制御の前にポンプ制御が行われてもよく、図7に示す変形例2のように、バルブ制御とポンプ制御が並列的に行われてもよい。
【0119】
図8及び図9は、変形例3に係る建設機械100のコントローラ50が行う処理を示すフローチャートである。図8及び図9は、便宜上2つに分かれているが、図8及び図9に示すフローチャートは、一連の制御動作を示すものである。
【0120】
図8及び図9に示す変形例3に係る制御動作は、速度を作動油の流量に換算して行われる点で、図3及び図4に示す制御動作と異なり、全体的な制御動作の流れは、図3及び図4に示す制御動作と同様である。変形例3に係る制御動作は、第1実施形態及び第2実施形態の何れにも適用可能である。以下、変形例3について具体的に説明する。
【0121】
まず、第1速度検出器61、第2速度検出器62、第1吐出圧検出器63、第2吐出圧検出器64及び差圧検出器65が検出した検出値に対応する信号がコントローラ50に入力される(ステップS31)。
【0122】
次に、コントローラ50は、ステップS2と同様にして第1目標速度及び第2目標速度を決定する(ステップS32)。
【0123】
速度補償部54は、第1目標速度に基づいて、アームシリンダ8に供給すべき作動油の目標流量(第1目標流量)を演算し、第2目標速度に基づいて、ブームシリンダ7に供給すべき作動油の目標流量(第2目標流量)を演算する(ステップS33)。
【0124】
速度補償部54は、前記第1実速度に基づいて、アームシリンダ8に実際に供給される作動油の流量(第1実流量)を演算し、前記第2実速度に基づいて、ブームシリンダ7に実際に供給される作動油の流量(第2実流量)を演算する(ステップS34)。
【0125】
速度補償部54は、第1目標流量と第1実流量との差であるアームシリンダ8の流量偏差(第1目標流量-第1実流量)を演算し、第2目標流量と第2実流量との差であるブームシリンダ7の流量偏差(第2目標流量-第2実流量)を演算する(ステップS35)。
【0126】
次に、速度補償部54は、前記第1指令信号と前記第2指令信号とに基づいて、前記複合操作が行われているか否かを判定する(ステップS36)。前記複合操作が行われている場合(ステップS36においてYES)、条件判定部53は、前記負荷判定条件が満たされているか否かを判定する(ステップS37)。
【0127】
前記負荷判定条件が満たされている場合(ステップS37においてYES)、コントローラ50は、ステップS38a~S40a及びステップS41~S49の処理(第1の速度補償制御)を実行する。この第1の速度補償制御は、本開示の速度補償制御に相当する制御である。一方、前記複合操作が行われていない場合(ステップS36においてNO)又は前記推定条件が満たされていない場合(ステップS37においてNO)、コントローラ50は、ステップS38b~S40b及びステップS41~S49の処理(第2の速度補償制御)を実行する。
【0128】
ステップS38a~S40a及びステップS41~S49の処理を行う第1の速度補償制御では、速度補償部54は、アームシリンダ8の速度偏差がゼロに近づくように第1制御弁31の開度を調節するフィードバック制御を行い、アームシリンダ8の速度偏差がゼロに近づくように第2制御弁32の開度を調節するフィードバック制御を行うとともにブームシリンダ7の速度偏差がゼロに近づくように第3制御弁33の開度を調節するフィードバック制御を行う。具体的には以下の通りである。
【0129】
速度補償部54は、アームシリンダ8の流量偏差(第1目標流量-第1実流量)と、例えば次の式(5)とを用いて、アームシリンダ8の流量偏差がゼロに近づくような第1制御弁31の開度(開口量)の補正値(第1補正値)を演算する(ステップS38a)。ステップS38aにおいて演算される第1補正値は、第1制御弁31の開度を第1目標開度よりも大きくするための補正値である。速度補償部54は、この第1補正量を前記第1目標開度に加算することにより補正された第1開口指令値を演算する。
【0130】
第1補正値=比例ゲイン×流量偏差+積分ゲイン×流量偏差の積算値+微分ゲイン×流量偏差の差分 ・・・(5)
また、速度補償部54は、ブームシリンダ7の流量偏差(第2目標流量-第2実流量)と、例えば下記式(6)とを用いて、ブームシリンダ7の流量偏差がゼロに近づくような第3制御弁33の開度(開口量)の補正値(第3補正値)を演算する(ステップS39a)。ステップS39aにおいて演算される第3補正値は、第3制御弁33の開度を第3目標開度よりも大きくするための補正値である。速度補償部54は、この第3補正量を前記第3目標開度に加算することにより補正された第3開口指令値を演算する。
【0131】
第3補正値=比例ゲイン×流量偏差+積分ゲイン×流量偏差の積算値+微分ゲイン×流量偏差の差分 ・・・(6)
さらに、速度補償部54は、アームシリンダ8の流量偏差(第目標流量-第実流量)と、例えば上記式(7)とを用いて、アームシリンダ8の流量偏差がゼロに近づくような第2制御弁32の開度(開口量)の補正値(第2補正値)を演算する(ステップS40a)。ステップS40aにおいて演算される第2補正値は、第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくするための補正値である。速度補償部54は、この第2補正量を前記第2目標開度から減算することにより補正された第2開口指令値を演算する。
【0132】
第2補正値=比例ゲイン×流量偏差+積分ゲイン×流量偏差の積算値+微分ゲイン×流量偏差の差分 ・・・(7)
次に、速度補償部54は、第1目標流量と第2目標流量との和である合計目標流量を演算する(ステップS41)。この合計目標流量は、第1ポンプ21及び第2ポンプ22から吐出される必要のある作動油の流量である。
【0133】
速度補償部54は、第1吐出圧検出器63及び第2吐出圧検出器64が検出した第1吐出圧及び第2吐出圧と、出力判定部55により判定されたエンジン23の最大出力とに基づいて、合計最大吐出量(最大吐出可能流量)を演算する(ステップS42)。この合計最大吐出量は、第1ポンプ21が吐出可能な作動油の最大吐出量である第1最大吐出量と、第2ポンプ22が吐出可能な作動油の最大吐出量である第2最大吐出量との和である。
【0134】
速度補償部54は、合計目標流量が合計最大吐出量以下であるか否かを判定する(ステップS43)。合計目標流量が合計最大吐出量よりも大きい場合(ステップS43においてNO)、速度補償部54は、第1目標流量と第2目標流量との比を保持しながら合計目標流量が合計最大吐出量以下となるように第1目標流量及び第2目標流量を補正する(ステップS49)。
【0135】
一方、合計目標流量が合計最大吐出量以下である場合(ステップS43においてYES)、速度補償部54は、前記第1実流量と前記第2実流量との和である合計実流量を演算する(ステップS44)。この合計実流量は、第1ポンプ21及び第2ポンプ22が実際に吐出している作動油の総量である。
【0136】
速度補償部54は、前記合計実流量と前記合計目標流量との差を小さくするために第1ポンプ21又は第2ポンプ22の吐出量を調節するフィードバック制御を行うことにより前記合計実流量を前記合計目標流量に近づける。具体的には以下の通りである。
【0137】
速度補償部54は、合計目標流量と合計実流量との流量偏差(合計目標流量-合計実流量)と、例えば次の式(8)とを用いて、流量偏差がゼロに近づくような第1ポンプ21又は第2ポンプ22の吐出量の補正値(吐出量補正値)を演算する(ステップS45)。
【0138】
吐出量補正値=比例ゲイン×流量偏差+積分ゲイン×流量偏差の積算値+微分ゲイン×流量偏差の差分 ・・・(8)
速度補償部54は、上記の吐出量補正値が演算される直前の合計目標吐出量に前記吐出量補正値を加算して吐出量指令値を演算する。
【0139】
次に、速度補償部54は、第1ポンプ21の吐出量が第1ポンプ21の最大吐出量に達しているか否かを判定する(ステップS46)。第1ポンプ21の吐出量が第1ポンプ21の最大吐出量に達している場合(ステップS46においてYES)、速度補償部54は、第2ポンプ22のレギュレータに前記吐出量指令値(吐出量指令)を出力し、当該レギュレータは、第2ポンプ22の吐出量が当該吐出量指令値に対応する吐出量となるように第2ポンプ22の傾転角を変える。これにより、第2ポンプ22の吐出量が吐出量指令値に対応する吐出量まで増加する(ステップS47b)。
【0140】
一方、第1ポンプ21の吐出量が第1ポンプ21の最大吐出量に達していない場合(ステップS46においてNO)、速度補償部54は、第1ポンプ21のレギュレータに前記吐出量指令値(吐出量指令)を出力し、当該レギュレータは、第1ポンプ21の吐出量が当該吐出量指令値に対応する吐出量となるように第1ポンプ21の傾転角を変える。これにより、第1ポンプ21の吐出量が吐出量指令値に対応する吐出量まで増加する(ステップS47a)。
【0141】
速度補償部54は、電磁比例減圧弁34に前記第1開口指令値を出力し、当該電磁比例減圧弁34は、第1制御弁31の開度が第1開口指令値に対応する開度に調節されるようなパイロット圧を第1制御弁31のパイロットポートに出力する。また、速度補償部54は、電磁比例減圧弁35に前記第2開口指令値を出力し、当該電磁比例減圧弁35は、第2制御弁32の開度が第2開口指令値に対応する開度に調節されるようなパイロット圧を第2制御弁32のパイロットポートに出力する。さらに、速度補償部54は、電磁比例減圧弁36に前記第3開口指令値を出力し、当該電磁比例減圧弁36は、第3制御弁33の開度が第3開口指令値に対応する開度に調節されるようなパイロット圧を第3制御弁33のパイロットポートに出力する(ステップS48)。
【0142】
次に、ステップS38b~S40b及びステップS41~S49の処理を行う第2の速度補償制御について説明する。上述したように、前記複合操作が行われていない場合(ステップS36においてNO)又は前記負荷判定条件が満たされていない場合(ステップS37においてNO)、コントローラ50は、ステップS38b~S40b及びステップS41~S49の処理(第2の速度補償制御)を実行する。
【0143】
ステップS38b~S40bの処理のうち、第2の速度補償制御が第1の速度補償制御と異なる処理は、ステップ39b及びステップS40bである。第2の速度補償制御のその他のステップは、第1の速度補償制御と同じである。
【0144】
ステップS39bでは、速度補償部54は、ブームシリンダ7の流量偏差(第2目標速度-第2実速度)と、予め設定された関係式とを用いて、ブームシリンダ7の流量偏差がゼロに近づくような第制御弁33の開度(開口量)の補正値を演算する。ステップS39bにおいて演算される補正値は、第制御弁33の開度を第目標開度よりも小さくする又は大きくするような補正値である。
【0145】
ステップS40bでは、速度補償部54は、ブームシリンダ7の流量偏差(第2目標流量-第2実流量)と、予め設定された関係式とを用いて、ブームシリンダ7の流量偏差がゼロに近づくような第2制御弁32の開度(開口量)の補正値を演算する。ステップS40bにおいて演算される補正値は、第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくする又は大きくするような補正値である。
【0146】
以上説明したように、第2実施形態に係る建設機械100では、アクチュエータの目標速度及び実速度に高い相関を有する目標流量及び実流量を用いて第2制御弁32の開度を調節するための第2補正量を演算する。このような第2実施形態であっても、速度補償部54は、第1指令操作の操作量に基づいて決まる第1目標速度と第1実速度との速度差が大きいほど大きな第2補正量を演算し、演算された第2補正量を第2目標開度から減算して得られる開度に第2制御弁32の開度を調節するようなフィードバック制御を行うことができる。これにより、複合操作が行われるときにアームシリンダ8の第1負荷がブームシリンダ7の第2負荷よりも大きい場合であっても、アームシリンダ8の実速度を、第1指令操作の操作量に応じた第1目標速度に精度よく調節することができる。
【0147】
なお、第2実施形態において、複合操作が行われるときに第1負荷が第2負荷よりも大きい場合としては、例えば、ブーム上げ動作のための操作とアーム押し動作のための操作とが同時に行われる複合操作が行われる場合が想定される。
【0148】
また、第2実施形態では、第2目標流量及び第2実流量を用いて第3制御弁33の開度を調節するための第3補正量を演算し、第1目標流量及び第1実流量を用いて第1制御弁31の開度を調節するための第補正量を演算し、前記第3制御弁フィードバック制御及び前記第1制御弁フィードバック制御がさらに行われる。これにより、ブームシリンダ7の第2実速度を第2目標速度に精度よく調節することができ、アームシリンダ8の第1実速度を第1目標速度により迅速に調節することができる。
【0149】
前記速度補償制御において、第1ポンプ21の吐出量を第1アクチュエータで全て使用する場合には、第2制御弁32の開度を第2目標開度よりも小さくすることよりも、第2制御弁32を閉じる方が好ましい。第2制御弁32が閉じられると、第1ポンプ21と第2アクチュエータとの接続が遮断されるので、第1アクチュエータの作動圧は、第2アクチュエータの作動圧による影響を受けない。また、第2ポンプ22により第2アクチュエータの流量をまかなうことが可能なことと、第1アクチュエータが油圧モータである場合には作動圧をより確保しやすくなるので、第1実速度を第1目標速度により迅速に近づけることができる。
【0150】
本開示は、以上説明した実施形態に限定されない。本開示は、例えば次のような態様を包含する。
【0151】
(A)速度補償制御が行われる2つの油圧アクチュエータの組み合わせについて
第1実施形態では、旋回モータとブームシリンダの組み合わせに対して速度補償制御が行われ、第2実施形態では、アームシリンダとブームシリンダの組み合わせに対して速度補償制御が行われるが、これらの態様に限られない。速度補償制御の対象となる2つの油圧アクチュエータの組み合わせは、第1実施形態及び第2実施形態のような組み合わせ以外の2つの油圧アクチュエータの組み合わせであってもよい。
【0152】
(B)油圧ポンプについて
前記実施形態では、第1ポンプ21及び第2ポンプ22のそれぞれは、可変容量形の油圧ポンプであるが、前記速度補償制御が、第1制御弁31の開度を第1目標開度よりも大きくすることを含まず、第1制御弁31の開度の調節が行われない場合には、第1ポンプ21は、固定容量形の油圧ポンプであってもよい。
【符号の説明】
【0153】
7 :ブームシリンダ(第2アクチュエータの一例)
10 :旋回モータ(第1アクチュエータの一例)
21 :第1ポンプ
22 :第2ポンプ
23 :エンジン
31 :第1制御弁
32 :第2制御弁
33 :第3制御弁
41 :第1操作装置
42 :第2操作装置
50 :コントローラ
51 :弁制御部
52 :条件判定部
53 :速度補償部
54 :出力判定部
61 :第1速度検出器
62 :第2速度検出器
63 :第1吐出圧検出器
64 :第2吐出圧検出器
65 :差圧検出器
100 :建設機械
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