(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ネブライザキット及びネブライザ
(51)【国際特許分類】
A61M 11/02 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A61M11/02 K
(21)【出願番号】P 2020211592
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】平澤 麻
(72)【発明者】
【氏名】西山 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元
(72)【発明者】
【氏名】アベート シモン
(72)【発明者】
【氏名】フラッカローリ ダビデ
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529012(JP,A)
【文献】特開2006-255308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0049976(US,A1)
【文献】特開2003-102837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を霧化する霧化部を収納し且つ第一開口部及び第二開口部を有する収納体と、
第一逆止弁を含み且つ前記第一開口部に着脱自在に構成された第一取り付け部と、第二逆止弁を含み且つ前記第二開口部に着脱自在に構成された筒状の第二取り付け部とが一体的に構成されたマウスピースと、を備え、
前記マウスピースが前記収納体から外された状態において、前記第二開口部には、前記マウスピースとは別の吸入用アタッチメントが装着可能に構成されているネブライザキット。
【請求項2】
請求項1記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースが前記収納体に装着された状態において、前記第一逆止弁は、前記マウスピースを用いた吸気動作に応じて前記収納体内部に外気を取込むものであり、前記第二逆止弁は、前記マウスピースを用いた呼気動作に応じて前記第二取り付け部の外部へ呼気を送出するものであるネブライザキット。
【請求項3】
請求項1又は2記載のネブライザキットであって、
前記第一開口部と前記第一取り付け部には、前記第一取り付け部の前記第一開口部に対する位置決めを行う位置決め機構が設けられているネブライザキット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースは、前記第一取り付け部と前記第二取り付け部とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、弾性変形可能に構成されているネブライザキット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースは、前記吸入用アタッチメントが前記第二取り付け部に対し装着不可となるよう構成されているネブライザキット。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースの吸口端部の少なくとも一部の外径は、前記吸入用アタッチメントの前記収納体への取り付け部分の内径よりも大きいネブライザキット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載のネブライザキットであって、
前記第一開口部は、前記収納体の長手方向に開口しており、
前記第二開口部は、前記収納体の短手方向に開口しているネブライザキット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載のネブライザキットであって、
前記第一開口部は、前記第二開口部よりも大きいネブライザキット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載のネブライザキットであって、
前記第二逆止弁は、可動部の支点が、前記マウスピースの吸口端部側に偏心して設けられるネブライザキット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載のネブライザキットと、
前記霧化部を制御する本体部と、
前記吸入用アタッチメントと、を備えるネブライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザキット及びネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なネブライザは、エアロゾルを生成可能なネブライザキットを備える。ネブライザキットを利用するネブライザを開示した文献としては、たとえば特許文献1が知られている。また、異なるアタッチメント(マウスピースと吸入マスク)をそれぞれ装着して薬液を吸入可能に構成されたネブライザが知られている(例えば、オムロンヘルスケア株式会社製 コンプレッサー式ネブライザ NE-C28)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸入マスクは、吸う力の弱い子供や高齢者に利用されることが想定される。一方、マウスピースは吸う力の強い人に利用されることが想定される。マウスピースを使うときは、吸引する力が必要であるが、薬液をより効率よく吸引できることが望まれる。一方、吸入マスクを使うときは、吸う力の弱い利用者が容易に薬液を吸入できるようにすることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、吸う力の弱い利用者が容易に薬液を吸入することを可能とし、吸う力の強い利用者は薬液を効率よく吸入することを可能にするネブライザキット及びネブライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
液体を霧化する霧化部を収納し且つ第一開口部及び第二開口部を有する収納体と、
第一逆止弁を含み且つ前記第一開口部に着脱自在に構成された第一取り付け部と、第二逆止弁を含み且つ前記第二開口部に着脱自在に構成された筒状の第二取り付け部とが一体的に構成されたマウスピースと、を備え、
前記マウスピースが前記収納体から外された状態において、前記第二開口部には、前記マウスピースとは別の吸入用アタッチメントが装着可能に構成されているネブライザキット。
【0007】
(1)によれば、マウスピースが収納体から外された状態においては、第一開口部は必ず開口した状態であり、第二開口部には、マウスピースとは別の吸入用アタッチメントが装着可能である。このため、別の吸入用アタッチメントを使用する際に、第一開口部がマウスピースによって塞がれる状態を防ぐことができ、吸う力の弱い利用者が容易に薬液を吸入することが可能になる。また、吸う力の強い利用者がマウスピースを利用する場合には、第一開口部に必ず第一逆止弁が取付けられた状態となるので、薬液を効率よく吸入することが可能になる。また、マウスピースは、第一取り付け部と第二取り付け部が一体的に構成されているため、例えば第一取り付け部と第二取り付け部とが個別に分離して構成されたものと比較すると、部品の紛失や、逆止弁の着脱し忘れ等を防ぐことができる。
【0008】
(2)
(1)記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースが前記収納体に装着された状態において、前記第一逆止弁は、前記マウスピースを用いた吸気動作に応じて前記収納体内部に外気を取込むものであり、前記第二逆止弁は、前記マウスピースを用いた呼気動作に応じて前記第二取り付け部の外部へ呼気を送出するものであるネブライザキット。
【0009】
(2)によれば、マウスピースを用いた吸気動作では第一逆止弁から外気が取込まれるため、霧化された薬液を効率よく吸入可能となる。一方、マウスピースを用いた呼気動作では、第二逆止弁から呼気が送出され、第一逆止弁は外気を取り込まない状態となる。このため、呼吸を無理なく行うことができると共に、霧化された薬液が外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0010】
(3)
(1)又は(2)記載のネブライザキットであって、
前記第一開口部と前記第一取り付け部には、前記第一取り付け部の前記第一開口部に対する位置決めを行う位置決め機構が設けられているネブライザキット。
【0011】
(3)によれば、位置決め機構によって第一取り付け部の取付け位置を正確にできる。この結果、第一取り付け部と一体になっている第二取り付け部の取付け位置も正確にでき、マウスピースの装着性を向上できる。
【0012】
(4)
(1)から(3)のいずれか1つに記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースは、前記第一取り付け部と前記第二取り付け部とを連結する連結部を有し、
前記連結部は、弾性変形可能に構成されているネブライザキット。
【0013】
(4)によれば、一体的に構成されたマウスピースの着脱を容易に行うことができる。
【0014】
(5)
(1)から(4)のいずれか1つに記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースは、前記吸入用アタッチメントが前記第二取り付け部に対し装着不可となるよう構成されているネブライザキット。
【0015】
(5)によれば、マウスピースが収納体に装着された状態では、吸入用アタッチメントをマウスピースに装着することができない。この結果、マウスピースを収納体に取り付けまま吸入用アタッチメントが使用されるのを防ぐことができる。
【0016】
(6)
(1)から(4)のいずれか1つに記載のネブライザキットであって、
前記マウスピースの吸口端部の少なくとも一部の外径は、前記吸入用アタッチメントの前記収納体への取り付け部分の内径よりも大きいネブライザキット。
【0017】
(6)によれば、マウスピースが収納体に装着された状態では、吸入用アタッチメントをマウスピースに装着することができない。この結果、マウスピースを収納体に取り付けまま吸入用アタッチメントが使用されるのを防ぐことができる。
【0018】
(7)
(1)から(6)のいずれか1つに記載のネブライザキットであって、
前記第一開口部は、前記収納体の長手方向に開口しており、
前記第二開口部は、前記収納体の短手方向に開口しているネブライザキット。
【0019】
(7)によれば、収納体の長手方向にみて、第一取り付け部と第二取り付け部が収納体の短手方向に並ぶ構成となる。このため、マウスピースを全体としてこの短手方向に延びる細長い形状とすることができ、マウスピースの非使用時における収納を容易とすることができる。また、収納体の短手方向にみて、第一取り付け部と第二取り付け部が収納体の長手方向にずれて配置されるため、第二取り付け部の着脱時に力が入れ易くなり、収納体とマウスピースとの着脱が容易にできる。さらに、第一開口部は、収納体の長手方向に開口しているので、吸気動作のときに収納体への空気流入がし易くなり、吸引し易い構造にできる。また、第二開口部は収納体の短手方向に開口しているので、マウスピースの第二取り付け部の吸口端部と吸入用アタッチメントとをそれぞれ、収納体の長手方向に対して交差(略直交)する向きに開口できる。この結果、ネブライザキットの使用時において、収納体を把持し易く使い勝手が良い。
【0020】
(8)
(1)から(7)のいずれか1つに記載のネブライザキットであって、
前記第一開口部は、前記第二開口部よりも大きいネブライザキット。
【0021】
(8)によれば、吸入用アタッチメント使用時に、相対的に大きな第一開口部が開放されることで、吸気動作と呼気動作をより負担なく行うことができる。
【0022】
(9)
(1)から(8)のいずれか1つに記載のネブライザキットであって、
前記第二逆止弁は、可動部の支点が、前記マウスピースの吸口端部側に偏心して設けられるネブライザキット。
【0023】
(9)によれば、呼気時の空気圧により開く第二逆止弁の自由端を、呼気による空気流の下流側とすることができる。この結果、呼気による空気流を滑らかな流線にすることができ、呼気動作時における呼気の排出を効率よく行うことができる
【0024】
(10)
(1)から(9)のいずれか1つに記載のネブライザキットと、
前記霧化部を制御する本体部と、
前記吸入用アタッチメントと、を備えるネブライザ。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、吸う力の弱い利用者が容易に薬液を吸入することを可能とし、吸う力の強い利用者は薬液を効率よく吸入することを可能にするネブライザキット及びネブライザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態のネブライザキットを備えるネブライザを示す斜視図である。
【
図2】ネブライザキットの収納体の拡大斜視図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿った部分の断面図である。
【
図4】マウスピースを取付け端部側から見た拡大斜視図である。
【
図5】
図4のB-B線に沿った部分の断面図である。
【
図6】
図4に示すマウスピースを収納体に装着した状態の拡大断面図である。
【
図7】
図1に示すネブライザキットの収納体に吸入用アタッチメントを取付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す吸入用アタッチメントの拡大斜視図である。
【
図9】マウスピースを吸口端部側から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態のネブライザキットの概要)
まず、本発明のネブライザキットの実施形態の概要について説明する。
実施形態のネブライザキットは、吸気動作時に霧化部の収納体内に外気を取り込む第一逆止弁及び呼気動作時に息を外部に送出する第二逆止弁をマウスピースと一体化し、このマウスピースを上記収納体に着脱可能に構成したものである。マウスピースが収納体から外された状態において、収納体には、マウスピースとは別の吸入用アタッチメントが装着可能に構成されている。
【0028】
このような構成により、別の吸入用アタッチメントを使用した際には、マウスピースが装着されるべき収納体の2つの開口部のうちの一方が必ず大きく開口した状態となるため、吸気動作時に収納体に外気を容易に流入させることができる。この結果、別の吸入用アタッチメントを使用した場合、吸う力の弱い利用者が容易に薬液を吸入することが可能になる。また、吸う力の強い利用者がマウスピースを利用する場合には、収納体の上記一方の開口部に第一逆止弁が取付けられた状態となる。これによって、薬液を効率よく吸入できる状態を必ず構成できる。
【0029】
(実施形態)
以下、実施形態のネブライザキットの具体的な構成例について説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態のネブライザキットを備えるネブライザを示す斜視図である。
【0031】
(ネブライザキット)
図1に示すネブライザ1は、本体部2と、本体部2に取り付け可能なネブライザキット8と、後述の吸入用アタッチメント30と、を備える。
【0032】
ネブライザキット8は、本体部2から空気が供給される収納体20と、マウスピース10と、収納体20と本体部2を連結するチューブ18と、を備えている。チューブ18の一端部の接続端18eを本体部2の接続部3に装着することで、収納体20が本体部2に接続される。このようしてネブライザ1の1つの形態が構成される。なお、収納体20は、例えば、図示の如く、その胴部20gの一端が本体部2の側面に着脱自在に保持されるようにしても良い。
【0033】
(本体部)
本体部2は、電源コード5等を備え、外部電力が供給されて駆動される図示しない駆動源を備えている。本体部2は、接続部3に接続されたチューブ18を介して、収納体20の一端側(
図1において下側)から圧縮空気を供給することができる。また、本体部2は、供給する圧縮空気を制御可能であり、収納体20内の後述する霧化部25における液体の霧化量を制御することができる。
【0034】
(収納体)
図2は、
図1に示す収納体20の拡大斜視図である。
図2に示すように、収納体20は、円筒形の胴部20gの長手方向の一端側(
図2において下側)に、チューブ18が接続され、他端側(
図2において上側)には、円形の開口を構成する第一開口部21が設けられている。また、胴部20gの側面(短手方向の端面)には、胴部20gの内部に連通する円筒形の側面突壁部22wが突出して形成されており、側面突壁部22wの内周部が第二開口部22を構成している。第一開口部21の内径D21は、第二開口部22の内径D22よりも大きく構成されている。
【0035】
(霧化部)
図3は、
図2のA-A線に沿った部分の断面図である。
図3に示すように、胴部20gの内部には、液体を霧化する霧化部25が設けられている。霧化部25は、圧縮空気導入管25pの先端に設けられたノズル25nと、ノズル25nに向かって突出する突起25dを含むバッフル部25bと、を有する。圧縮空気導入管25pには、チューブ18が接続されている。胴部20gの内部には、圧縮空気導入管25pの周囲に、薬液などの液体を貯留する液体貯留部26が設けられている。胴部20gの内部には、第一開口部21から圧縮空気導入管25p及び液体貯留部26に向かって延びる筒状の外気導入管24が設けられている。この外気導入管24における第一開口部21側と反対側の端部内に霧化部25が配置されている。外気導入管24を取り囲む胴部20gの側壁には、前述した側面突壁部22wが形成されている。
【0036】
本体部2からチューブ18を介して圧縮空気導入管25pの内部に導入された圧縮空気は、圧縮空気導入管25pの先端のノズル25nを通して噴き出される。この圧縮空気は、ノズル25nから突起25dに向かって噴き出された後、突起25dおよびバッフル部25bに衝突するとともに、ノズル25nから出た方向とは方向転換して放射状に広がる。これにより、霧化部25およびその近傍は、周囲の圧力よりも低い状態である負圧が発生する。
【0037】
霧化部25およびその近傍の負圧の作用によって、液体貯留部26に溜められていた液体(不図示)が、圧縮空気導入管25pに設けられたスリット状の導入路から霧化部25の近傍にまで吸い上げられる。吸い上げられた液体は、圧縮空気と共に突起25dおよびバッフル部25bに衝突し粉砕され、霧状粒子(微細な液滴)に霧化される。
【0038】
この霧状粒子は、第一開口部21から外気導入管24を通して導入された外気に付加されることで、霧化部25においてエアロゾルが生成される。このエアロゾルは、旋回するようにして外気導入管24の外側を通って第二開口部22に向かって移動する。
【0039】
(マウスピース)
図4は、
図1に示すマウスピース10を収納体20側から見た拡大斜視図である。
図5は、
図4のB-B線に沿った部分の断面図である。
図4及び
図5に示すように、マウスピース10は、略円盤状の第一取り付け部11と、筒状の第二取り付け部12と、これらを連結する連結部13と、を備え、これら3部材が一体的に構成されている。具体的には、第一取り付け部11と連結部13が固着され、第二取り付け部12と連結部13が固着されることで、これら3部材が一体化されている。固着とは、接着、ネジ止め、又は圧入等によって、容易には分離できないよう、強固に繋がっている状態を言う。
【0040】
第一取り付け部11には、その厚み方向に貫通する吸気開口11hが設けられている。第一取り付け部11は、大径の外面部11uと外面部11uよりも小径の取付け嵌合部11eとを備えている。取り付け嵌合部11eは、第一開口部21の内側に嵌め込みできるように、第一開口部21の内径D21(
図2参照)に合わせた径に構成されている。
【0041】
第一開口部21と第一取り付け部11には、第一取り付け部11の第一開口部21に対する位置決めができる位置決め機構が設けられている。この位置決め機構は、取り付け嵌合部11eにおいて下端側から外側面にかけて設けられた切欠き凹部11c(
図4参照)と、第一開口部21の内周壁部において切欠き凹部11cと嵌合可能に設けられた位置決め突起21d(
図2参照)と、により構成されている。
【0042】
第一取り付け部11の吸気開口11hには、吸気開口11hを塞ぐ形で第一逆止弁11vが設けられている。第一逆止弁11vは、平板状のシート部材であり、中央に取り付け突起11pが設けられている。取り付け突起11pは、吸気開口11hの中央に設けられた弁取り付け部11gに嵌め込まれている。
【0043】
第二取り付け部12の胴部分の一端側(第一取り付け部11側)は、円筒状の取付け端部12eとして構成されている。取付け端部12eは、収納体20の側面突壁部22wと嵌合可能に構成されている。つまり、取付け端部12eの内径D13は、側面突壁部22wに嵌るべく、側面突壁部22wの外径D23よりも若干大きく形成されている。また、第二取り付け部12の胴部分の他端側(第一取り付け部11側と反対側)は、円筒部分が扁平になった吸口端部12tとして構成されている。第二取り付け部12の胴部分の側面(
図4、5中上側)には、その側面から若干突出した突壁部12wによって呼気開口12hが設けられている。呼気開口12hには、これを塞ぐ形で、第二逆止弁12vが外側から取付けられている。
【0044】
第二逆止弁12vは、第一逆止弁11vと同様に平板状のシート部材であり、例えば、第二取り付け部12の長手方向(軸方向、
図5における左右方向)に沿う長軸を有する楕円形状に形成されている。第二逆止弁12vの取り付け部12pは、呼気開口12hの中央よりも吸口端部12t寄りの位置に設けられている。つまり、第二逆止弁12vは、弁として動くときの可動部の支点(取り付け部12p)が、呼気開口12hにおいて吸口端部12t側に偏心して設けられており、吸口端部12t側と反対側の端部である自由端部12veが開閉するように構成されている。
【0045】
(連結部)
連結部13は、
図5に示すように、例えば帯状で比較的薄い細長い形状に構成されており、その両端部には、先端が先太りの挿入ピン部13i,13pが設けられている。第一取り付け部11には、挿入ピン部13iが挿入係合される孔を備える取付け片11kが設けられる。第二取り付け部12には、挿入ピン部13pが挿入係合される孔を備える取付け片12kが設けられている。この連結部13は、比較的柔軟で弾性変形可能なゴムや樹脂によって構成されていることが好ましい。
【0046】
以下、マウスピース10の使用状態について説明する。
図6は、
図4に示すマウスピース10を収納体20に装着した状態の拡大断面図である。
図6に示すように、マウスピース10は、第一開口部21に第一取り付け部11が嵌め込まれ、第二開口部22の側面突壁部22wに第二取り付け部12の取付け端部12eが嵌め込まれることで、収納体20に装着される。この状態で、ユーザは、収納体20の胴部20gを手で持ち、吸口端部12tを口にくわえた状態で、吸気動作と呼気動作を行う。
【0047】
吸気動作時には、
図6に示したように、第一逆止弁11vが負圧によって収納体20の内側に変形し、第一取り付け部11の吸気開口11hと外気導入管24が繋がる。これにより、吸気開口11hから収納体20内部に外気が取り込まれる。このとき、第二逆止弁12vは、負圧によって呼気開口12hを閉じた状態にある。収納体20内部に取り込まれた外気は、外気導入管24を通り、霧化部25において霧状粒子化された薬液に付加され、エアロゾルが生成される。生成されたエアロゾルは、
図6中の実線矢印にて示すように、外気導入管24の外側を通って第二開口部22に到達し、第二開口部22からマウスピース10の第二取り付け部12を通って、人体内に吸引される。
【0048】
呼気動作時には、マウスピース10及び収納体20の内部が加圧される。このとき、第一逆止弁11vは、加圧により吸気開口11hを閉じる。一方、第二逆止弁12vは、加圧によって自由端部12veが外側に反るように変形し、呼気をマウスピース10の外部へ、
図6中の一点鎖線矢印にて示すように排出する。
【0049】
図7は、
図1に示すネブライザキット8の収納体20に、吸入用アタッチメント30を取付けた状態を示す斜視図である。
図7に示す形態のネブライザ1は、マウスピース10の替わりに、吸入用アタッチメント30が収納体20に取付けられたものである。このように、ネブライザキット8は、マウスピース10が収納体20から外された状態において、マウスピース10とは別の吸入用アタッチメント30が側面突壁部22w(第二開口部22)に装着可能に構成されている。
【0050】
(吸入用アタッチメント)
図8は、吸入用アタッチメント30の拡大斜視図である。
図8に示すように、吸入用アタッチメント30は、略漏斗状の漏斗胴部30bの先端側(図中左側)に、取付け孔30tが設けられている。取付け孔30tは、マウスピース10の取付け端部12eと同じ内径(内径D13)であり、側面突壁部22wに嵌るように構成されている。このため、
図7に示すように、収納体20からマウスピース10が外された状態においては、収納体20の側面突壁部22wに、吸入用アタッチメント30を装着することができる。吸入用アタッチメント30は、更に、取付け孔30tとは反対側に、口及び鼻も含めた領域を覆うと共に顔面にフィットする形状の対応縁部30eを備えている。漏斗胴部30bには、2つのサイド開口30hが形成されている。
【0051】
図9は、
図4に示すマウスピース10を吸口端部12t側から見た拡大斜視図である。
図9に示すように、マウスピース10の第二取り付け部12の吸口端部12tは、口に咥えやすいように横長の扁平形状となっている。そして、マウスピース10の吸口端部12tの横方向の幅D12は、マウスピース10の取付け端部12eの内径D13よりも大きく構成されている。つまり、マウスピース10の吸口端部12tの横方向の幅D12は、吸入用アタッチメント30の取り付け孔30tの内径D13よりも大きい。このように、マウスピース10の第二取り付け部12が側面突壁部22wに嵌められた状態においては、この第二取り付け部12に吸入用アタッチメント30を装着できない構成となっている。
【0052】
以下、吸入用アタッチメント30の使用状態について説明する。
図7に示すように、吸入用アタッチメント30は、マウスピース10が取り外された状態の収納体20の側面突壁部22wに取り付けられて使用される。
図7に示す状態で、ユーザは、収納体20の胴部20gを手で持ち、対応縁部30eを顔面にフィットさせた状態で、吸気動作と呼気動作を行う。
【0053】
吸気動作時には、第一開口部21から収納体20内部に外気が取り込まれる。この外気は、外気導入管24を通り、霧化部25において霧状粒子化された薬液に付加され、エアロゾルが生成される。生成されたエアロゾルは、外気導入管24の外側を通って第二開口部22に到達し、第二開口部22から吸入用アタッチメント30を通って、人体内に吸引される。
【0054】
呼気動作時には、呼気の一部が吸入用アタッチメント30のサイド開口30hから排出されると共に、収納体20に流入した一部の呼気は第一開口部21から外部に排出される。
【0055】
(実施形態の効果)
ネブライザキット8によれば、第一開口部21を閉塞可能な第一逆止弁11vを有する第一取り付け部11と、第二逆止弁12vを有する第二取り付け部12とが一体的に構成されたマウスピース10が収納体20から外された状態においては、第一開口部21は必ず開口した状態となり、第二開口部22にはマウスピース10とは別の吸入用アタッチメント30が装着可能な状態となる。このため、吸入用アタッチメント30を使用する場合には、第一開口部21が開放された状態となり、吸う力の弱い人であっても、外気を収納体20内部に用意に取り込むことができ、吸気動作時に薬液を十分に吸引することができる。また、吸う力の強い人がマウスピース10を利用する場合には、第一開口部21に必ず第一逆止弁11vが取付けられた状態となる。このため、薬液を効率よく吸入することが可能になる。
【0056】
また、ネブライザキット8によれば、収納体20の第一開口部21に取付けられるマウスピース10の第一取り付け部11と収納体20の第二開口部22に取付けられるマウスピース10の第二取り付け部12とが一体的に構成されている。このため、例えば第一取り付け部11と第二取り付け部12が分離して構成された構造と比較すると、部品の紛失を防ぐことができる。また、この構造と比較すると、マウスピース10の使用時に、第一逆止弁11vのつけ忘れを防ぐことができ、効率的な薬液の吸入が可能になる。また、この構造と比較すると、第一開口部21が閉塞された状態で吸入用アタッチメント30による吸入が行われるのを防ぐことができる。
【0057】
また、ネブライザキット8では、第一開口部21と第一取り付け部11には、第一取り付け部11の第一開口部21に対する位置決めを行う位置決め機構が設けられている。このため、第一取り付け部11の取付け位置を正確にできる。また、第一取り付け部11と一体になっている第二取り付け部12の取付けも正確にでき、マウスピース10の装着性を向上できる。
【0058】
また、ネブライザキット8では、マウスピース10の連結部13が弾性変形可能に構成されているので、マウスピース10の着脱を容易に行うことができる。
【0059】
また、ネブライザキット8では、吸入用アタッチメント30がマウスピース10の第二取り付け部12に対し装着不可となるよう構成されている。換言すると、マウスピース10の吸口端部12tの外径は、吸入用アタッチメント30の取付け孔30tの内径よりも大きくなっている。このため、マウスピース10の吸口端部12tには、吸入用アタッチメント30を嵌め合わせることができない。したがって、マウスピース10を収納体20につけたまま、吸入用アタッチメント30が使用されるのを防ぐことができる。
【0060】
また、ネブライザキット8では、収納体20の長手方向の端面にマウスピース10の第一取り付け部11が装着され、収納体20の短手方向の端面(側面)にマウスピース10の第二取り付け部12が装着される。例えば、収納体20の側面における側面突壁部22wの隣に、第一開口部21を設ける構成を想定する。この構成とした場合には、マウスピース10は、
図5において第一取り付け部11が右に90度回転した構成となる。このようなマウスピースの構成と比較すると、ネブライザキット8の構成によれば、マウスピース10の厚み(
図5中の上下方向の長さ)を小さくでき、マウスピース10を全体として細長い形状とすることができる。このため、マウスピース10の非使用時における収納が容易となり、使い勝手を向上させることができる。
【0061】
また、ネブライザキット8によれば、第一開口部21が第二開口部22よりも大きく構成されている。このため、吸入用アタッチメント30の使用時の吸気動作において、薬液の吸入がし易くなる。これにより、吸う力の弱い人でも十分な量の薬液を吸入可能になる。また、収納体20は細長い円筒状に構成されており、第一開口部21側と反対側の端部に霧化部25が配置される構成である。このため、吸入用アタッチメント30の使用時において吸気動作を行っていない場合でも、霧化部25にて霧化された薬液が第一開口部21から外部に逃げるのを極力防ぐことができる。また、吸入用アタッチメント30にはサイド開口30hが設けられている。このため、吸入用アタッチメント30の使用時の呼気動作において、第二開口部22から収納体20内部に向かう流体の量を減らすことができ、霧化部25にて霧化された薬液が第一開口部21から外部に逃げるのを極力防ぐことができる。
【0062】
また、ネブライザキット8では、第二逆止弁12vの可動部の支点が、吸口端部12t寄りに偏心して設けられている。このため、呼気時の空気圧により開く第二逆止弁12vの動きは、空気流の下流側の自由端部12veが反り返るように開く。この結果、呼気による空気流を滑らかな流線にすることができ、マウスピース10の使用時の呼気動作における呼気の排出を効率よく行うことができる
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、その形状、構造については図示されたものに何ら制限されるものではなく、本発明の範疇において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態における位置決め機構の凹凸嵌合形状においては、凸部と凹部は逆の構成であっても良い。また、マウスピース10は、第一取り付け部11と第二取り付け部12と連結部13の3部材が固着されることで、これらが一体的に構成されたものとしているが、第一取り付け部11と第二取り付け部12と連結部13を単一部材の一体成型することでマウスピース10を構成してもよい。また、ネブライザ1が霧化する液体は薬液に限らず、水道水等とすることもできる。また、吸入用アタッチメント30は、マスク形状となっているが、マウスピース10とは形状の異なる例えば略円筒状のマウスピース形状であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ネブライザ
2 本体部
8 ネブライザキット
10 マウスピース
11 第一取り付け部
11c 切欠き凹部(位置決め機構)
11v 第一逆止弁
12 第二取り付け部
12t 吸口端部
12v 第二逆止弁
13 連結部
20 収納体
21 第一開口部
21d 位置決め突起(位置決め機構)
22 第二開口部
25 霧化部
30 吸入用アタッチメント