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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240228BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B65G1/00 511J
B65G1/04 537Z
B65G1/04 539Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020216972
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102314
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】村松 良憲
(72)【発明者】
【氏名】北川 恵昭
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-162716(JP,A)
【文献】特開平11-008901(JP,A)
【文献】実開昭60-061294(JP,U)
【文献】特開2016-037386(JP,A)
【文献】特開2013-177214(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144278(WO,A1)
【文献】特開2014-192930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行し、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車を走行させる前記機能部としての走行部と、を備え、
前記走行部は、前記駆動対象としての走行車輪を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記走行部を駆動する走行駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記走行車輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記走行車輪を駆動するためのトルクを発生する走行モータが備えられ、
上下方向に沿う上下方向視で前記台車の走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
複数の前記走行車輪は、前記幅方向における前記台車の中央部である台車中央部に対して前記幅方向第1側に配置された複数の第1走行車輪と、前記台車中央部に対して前記幅方向第2側に配置された複数の第2走行車輪と、を含み、
前記監視処理部は、前記監視処理として、複数の前記第1走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの平均値と、複数の前記第2走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの平均値との差を監視し、又は、複数の前記第1走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの合算値と、複数の前記第2走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの合算値との差を監視する、監視システム。
【請求項2】
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行し、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車に搭載されて前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記台車に対して昇降させる前記機能部としての昇降部と、を備え、
前記昇降部は、前記駆動対象としての昇降回転体を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記昇降部を駆動する昇降駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記昇降回転体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記昇降回転体を駆動するためのトルクを発生する昇降モータが備えられ、
上下方向に沿う上下方向視で前記台車の走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記走行方向の一方側を走行方向第1側とし、前記走行方向の他方側を走行方向第2側とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
複数の前記昇降回転体は、前記台車に設定された基準位置に対して前記走行方向第1側かつ前記幅方向第1側に配置された第1昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第2側かつ前記幅方向第1側に配置された第2昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第1側かつ前記幅方向第2側に配置された第3昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第2側かつ前記幅方向第2側に配置された第4昇降回転体と、を含み、
前記第1昇降回転体、前記第2昇降回転体、前記第3昇降回転体、及び前記第4昇降回転体のそれぞれは、伝動部材を介して前記保持部に連結され、
複数の前記昇降モータは、前記第1昇降回転体に対応する第1昇降モータ、前記第2昇降回転体に対応する第2昇降モータ、前記第3昇降回転体に対応する第3昇降モータ、及び前記第4昇降回転体に対応する第4昇降モータを含み、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、の少なくとも1つを監視する、監視システム。
【請求項3】
前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、及び、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視し、
又は、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する、請求項に記載の監視システム。
【請求項4】
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行し、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車に搭載されて前記物品を保持する保持部と、前記保持部に対して前記物品を出退させて前記物品を移載する前記機能部としての移載部と、を備え、
前記移載部は、前記駆動対象としての出退移動体を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記移載部を駆動する移載駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記出退移動体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記出退移動体を駆動するためのトルクを発生する移載モータが備えられ、
前記監視処理部は、前記監視処理として、複数の前記出退移動体のそれぞれを駆動する前記移載モータが発生する前記トルクの差を監視する、監視システム。
【請求項5】
前記物品搬送装置は、前記機能部を複数備えると共に、前記駆動ユニットを複数備え、
複数の前記機能部は、互いに異なる機能を果たすように構成され、
複数の前記駆動ユニットは、それぞれ対応する前記機能部を駆動するように構成され、
前記監視処理部は、複数の前記駆動ユニットのそれぞれに対して個別に前記監視処理を実行する、請求項1から4のいずれか一項に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2006-315813号公報(特許文献1)に開示されたシステムでは、走行部や移載部などの各機能部を備えた物品搬送装置(16)において、これらの各機能部を駆動するモータ(38,43)が発生するトルクや回転数等の値から特徴量を求めている。そして、求めた特徴量の多次元ベクトル空間での位置に基づいて、各機能部が正常であるか異常であるかを診断している。
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、モータ(38,43)のトルクや回転数等の値に対して統計的処理を行って特徴量を求め、更に、求めた特徴量を多次元ベクトル空間のベクトルとし、クラスター解析を行うなど、各機能部の診断を行うために、複雑な処理を行う必要がある。また、このような処理を行うことができるようになるまでには多くのデータを取得する必要があり、システムの運用初期には適切な診断を行うことが難しいという問題もある。
【0004】
一方、特許文献1に開示されたような技術が属する技術分野では、機能部は、並列配置された複数の駆動対象を備えていることが多い。例えば、搬送台車が複数の走行車輪を有する場合であって、これらの走行車輪の各々が、別々のモータによって独立して駆動される駆動対象となっている場合がある。このような走行車輪は駆動対象としての一例に過ぎず、複数種類の駆動対象が存在する。これらの駆動対象は、独立して駆動されながらも、互いに協働することで同じ機能を果たす。しかしながら、特許文献1には、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象を備えた機能部に関して、その監視を行う点については特に開示が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-315813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実状に鑑みて、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象を有する機能部を備えた物品搬送装置において、そのような複数の駆動対象が並列配置されていることを利用して、統計的処理を必要としない簡易な処理により、当該機能部の監視を適切に行うことができるシステムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行し、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車を走行させる前記機能部としての走行部と、を備え、
前記走行部は、前記駆動対象としての走行車輪を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記走行部を駆動する走行駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記走行車輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記走行車輪を駆動するためのトルクを発生する走行モータが備えられ、
上下方向に沿う上下方向視で前記台車の走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
複数の前記走行車輪は、前記幅方向における前記台車の中央部である台車中央部に対して前記幅方向第1側に配置された複数の第1走行車輪と、前記台車中央部に対して前記幅方向第2側に配置された複数の第2走行車輪と、を含み、
前記監視処理部は、前記監視処理として、複数の前記第1走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの平均値と、複数の前記第2走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの平均値との差を監視し、又は、複数の前記第1走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの合算値と、複数の前記第2走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの合算値との差を監視する
【0008】
複数の対象モータのそれぞれは、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象のそれぞれを駆動するものであるため、機能部が正常な状態である場合には、フィードバック制御中に各対象モータが発生するトルクは基本的に同等の値になることが多い。そのため、これらのトルクに偏りがある場合には、機能部に何らかの異常が生じていると推測できる。本構成によれば、フィードバックトルク情報に示される複数の対象モータ同士のトルクの差を監視することにより、フィードバック制御中に各対象モータが発生するトルクの偏りを判別することができる。従って、本構成によれば、多くのデータを用いた複雑な統計処理等を行う必要がない簡易な処理により機能部を監視することができ、延いては、物品搬送装置の機能部が正常か異常かをトルクの情報を用いて発見することが可能となる。このように、本構成によれば、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象を有する機能部を備えた物品搬送装置において、そのような複数の駆動対象が並列配置されていることを利用して、統計的処理を必要としない簡易な処理により、当該機能部の監視を適切に行うことができる。
ここで、一般的に、台車の走行経路の状態が正常であれば、台車の幅方向両側に分かれて配置された複数の第1走行車輪と複数の第2走行車輪とのそれぞれのフィードバック制御中における走行モータのトルクは、基本的に同等の値になることが多い。一方、台車の走行経路の一部に異常がある場合、特に、第1走行車輪と第2走行車輪とのいずれか一方の経路上に異常がある場合等には、これらを駆動する走行モータのトルクに偏りが生じる可能性が高い。本構成によれば、複数の第1走行車輪のそれぞれを駆動する走行モータが発生するトルクに関する値と、複数の第2走行車輪のそれぞれを駆動する走行モータが発生するトルクに関する値との差を監視することで、統計的処理を必要としない簡易な処理により、このような台車の走行経路の状態を適切に監視することができる。
【0009】
他の監視システムとして、
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行し、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車に搭載されて前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記台車に対して昇降させる前記機能部としての昇降部と、を備え、
前記昇降部は、前記駆動対象としての昇降回転体を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記昇降部を駆動する昇降駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記昇降回転体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記昇降回転体を駆動するためのトルクを発生する昇降モータが備えられ、
上下方向に沿う上下方向視で前記台車の走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記走行方向の一方側を走行方向第1側とし、前記走行方向の他方側を走行方向第2側とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
複数の前記昇降回転体は、前記台車に設定された基準位置に対して前記走行方向第1側かつ前記幅方向第1側に配置された第1昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第2側かつ前記幅方向第1側に配置された第2昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第1側かつ前記幅方向第2側に配置された第3昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第2側かつ前記幅方向第2側に配置された第4昇降回転体と、を含み、
前記第1昇降回転体、前記第2昇降回転体、前記第3昇降回転体、及び前記第4昇降回転体のそれぞれは、伝動部材を介して前記保持部に連結され、
複数の前記昇降モータは、前記第1昇降回転体に対応する第1昇降モータ、前記第2昇降回転体に対応する第2昇降モータ、前記第3昇降回転体に対応する第3昇降モータ、及び前記第4昇降回転体に対応する第4昇降モータを含み、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、の少なくとも1つを監視する。
【0010】
他の監視システムとして、
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行し、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車に搭載されて前記物品を保持する保持部と、前記保持部に対して前記物品を出退させて前記物品を移載する前記機能部としての移載部と、を備え、
前記移載部は、前記駆動対象としての出退移動体を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記移載部を駆動する移載駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記出退移動体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記出退移動体を駆動するためのトルクを発生する移載モータが備えられ、
前記監視処理部は、前記監視処理として、複数の前記出退移動体のそれぞれを駆動する前記移載モータが発生する前記トルクの差を監視する。
【0011】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】監視システムが適用される物品搬送設備の平面図
図2】監視対象である機能部を備えた物品搬送装置の側面図
図3】監視対象である機能部を備えた物品搬送装置の平面図
図4】監視システムの制御ブロック図
図5】走行部を対象とした監視処理の実行結果を示す表
図6】走行部の監視を行う場合の処理手順を示すフローチャート
図7】昇降部を対象とした監視処理の実行結果を示す表
図8】昇降部の監視を行う場合の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
監視システムは、物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行うシステムである。以下、上記のような物品搬送装置を備えた物品搬送設備を例示して、監視システムの実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、物品搬送設備100は、物品4を搬送する物品搬送装置1と、物品4を収納する収納棚2と、を備えている。物品搬送装置1は、収納棚2への物品4の入庫及び収納棚2からの物品4の出庫を行う。本実施形態では、物品搬送装置1は、スタッカークレーンとして構成されている。そのため、物品搬送装置1は、床面に設置された走行レール3に沿って走行するように構成されている。そして、走行レール3を挟んだ両側のそれぞれに、収納棚2が配置されている。本例では、物品搬送装置1は、一対の収納棚2の間で走行レール3に沿って走行し、一対の収納棚2のそれぞれに対して物品4の入庫及び出庫を行うように構成されている。図示の例では、物品搬送装置1は台車10を備えており、台車10が、一対の収納棚2の間で走行レール3に沿って走行する。
【0015】
ここでは、上下方向に沿う上下方向視で台車10の走行方向Xに直交する方向を幅方向Yとする。そして、走行方向Xの一方側を走行方向第1側X1とし、走行方向Xの他方側を走行方向第2側X2とする。また、幅方向Yの一方側を幅方向第1側Y1とし、幅方向Yの他方側を幅方向第2側Y2とする。
【0016】
物品搬送装置1は、物品4を搬送するための機能部Fと当該機能部Fを駆動する駆動ユニットUとを備えている。図2及び図3に示すように、機能部Fは、同じ機能を果たすために並列設置された複数の駆動対象Tを備えている。駆動ユニットUは、対象モータMと制御部H(図4参照)とを備えている。対象モータMは、複数の駆動対象Tのそれぞれに対応して設けられ、対応する駆動対象Tを駆動するためのトルクを発生する。制御部Hは、複数の対象モータMを個別に制御する。
【0017】
本実施形態では、物品搬送装置1は、機能部Fを複数備えると共に、駆動ユニットUを複数備えている。複数の機能部Fは、互いに異なる機能を果たすように構成されている。
複数の駆動ユニットUは、それぞれ対応する機能部Fを駆動するように構成されている。
【0018】
本実施形態では、物品搬送装置1は、台車10と、台車10に搭載されて物品4を保持する保持部11と、を備えている。そして、物品搬送装置1は、機能部Fとして、台車10を走行させる走行部F1と、保持部11を台車10に対して昇降させる昇降部F2と、保持部11に対して物品4を出退させて物品4を移載する移載部F3と、を備えている。
すなわち、走行部F1は台車10を走行させるための機能を果たし、昇降部F2は保持部11を昇降させるための機能を果たし、移載部F3は物品4を移載するための機能を果たす。このように、上記の複数の機能部Fは、互いに異なる機能を果たす。
【0019】
更に、本実施形態では、物品搬送装置1は、保持部11に対して移載部F3を上下軸心まわりに旋回させる旋回部14を備えている。旋回部14は、移載部F3を旋回させることによって、移載部F3による物品4の移載方向を、一対の収納棚2のそれぞれに対応させて変更する。従って、1つの移載部F3によって一対の収納棚2の何れに対しても物品4を移載することが可能となっている。本例では、旋回部14は、旋回台140と、旋回台140を上下軸心まわりに旋回させる旋回モータ141と、を備えている。移載部F3は、旋回台140に載置されており、旋回台140と共に旋回するように構成されている。
【0020】
本実施形態では、物品搬送装置1は、駆動ユニットUとして、走行部F1を駆動する走行駆動ユニットU1と、昇降部F2を駆動する昇降駆動ユニットU2と、移載部F3を駆動する移載駆動ユニットU3と、を備えている。
【0021】
本実施形態では、走行部F1は、駆動対象Tとしての走行車輪T1を複数有している。
そして、走行駆動ユニットU1は、対象モータMとして、複数の走行車輪T1のそれぞれに対応して設けられ、対応する走行車輪T1を駆動するためのトルクを発生する走行モータM1を備えている。すなわち、複数の走行車輪T1のそれぞれは、独立した駆動源によって別々に駆動される。また本例では、走行駆動ユニットU1は、制御部Hとして、複数の走行モータM1を個別に制御する走行制御部H1(図4参照)を備えている。
【0022】
上述のように、走行部F1は、台車10を走行レール3に沿って走行させる。本例では、走行レール3は、互いに幅方向Yに離間して配置された第1走行レール31と第2走行レール32とを備えている。第1走行レール31は、第2走行レール32に対して幅方向第1側Y1に配置されている。第2走行レール32は、第1走行レール31に対して幅方向第2側Y2に配置されている。
【0023】
複数の走行車輪T1は、台車10に取り付けられている。図3に示すように、本実施形態では、複数の走行車輪T1は、幅方向Yにおける台車10の中央部である台車中央部10Cに対して幅方向第1側Y1に配置された複数の第1走行車輪T11と、台車中央部10Cに対して幅方向第2側Y2に配置された複数の第2走行車輪T12と、を含んでいる。複数の第1走行車輪T11のそれぞれは、同じ第1走行レール31上を転動する。複数の第2走行車輪T12のそれぞれは、同じ第2走行レール32上を転動する。本例では、2つの第1走行車輪T11が、台車中央部10Cよりも幅方向第1側Y1において走行方向Xに離間して配置されている。また、2つの第2走行車輪T12が、台車中央部10Cよりも幅方向第2側Y2において走行方向Xに離間して配置されている。
【0024】
本実施形態では、複数の走行モータM1は、複数の第1走行車輪T11のそれぞれに対応する第1走行モータM11と、複数の第2走行車輪T12のそれぞれに対応する第2走行モータM12と、を含んでいる。本例では、2つの第1走行車輪T11に対応して、2つの第1走行モータM11が設けられている。また、2つの第2走行車輪T12に対応して、2つの第2走行モータM12が設けられている。そして、2つの第1走行モータM11と2つの第2走行モータM12とが協働して、2つの第1走行車輪T11と2つの第2走行車輪T12とを回転させることで、台車10が走行方向Xに沿って走行する。
【0025】
本実施形態では、昇降部F2は、駆動対象Tとしての昇降回転体T2を複数有している。そして、昇降駆動ユニットU2は、対象モータMとして、複数の昇降回転体T2のそれぞれに対応して設けられ、対応する昇降回転体T2を駆動するためのトルクを発生する昇降モータM2を備えている。昇降回転体T2は、例えば、プーリやスプロケットなどにより構成される。また本例では、昇降駆動ユニットU2は、制御部Hとして、複数の昇降モータM2を個別に制御する昇降制御部H2(図4参照)を備えている。
【0026】
図2及び図3に示すように、本実施形態では、物品搬送装置1は、台車10から上方に向けて延在するマスト12と、マスト12に沿って配置された伝動部材13と、を備えている。伝動部材13は、保持部11に連結されていると共に、昇降回転体T2に巻回されている。伝動部材13は、例えば、ベルトやチェーンなどの無端状部材により構成される。
【0027】
昇降部F2は、保持部11をマスト12に沿って昇降させる。本実施形態では、マスト12は、第1マスト121と第2マスト122とを備えている。第1マスト121は、第2マスト122に対して走行方向第1側X1に配置されている。第2マスト122は、第1マスト121に対して走行方向第2側X2に配置されている。
【0028】
本実施形態では、複数の昇降回転体T2は、台車10に設定された基準位置10Pに対して走行方向第1側X1かつ幅方向第1側Y1に配置された第1昇降回転体T21と、基準位置10Pに対して走行方向第2側X2かつ幅方向第1側Y1に配置された第2昇降回転体T22と、基準位置10Pに対して走行方向第1側X1かつ幅方向第2側Y2に配置された第3昇降回転体T23と、基準位置10Pに対して走行方向第2側X2かつ幅方向第2側Y2に配置された第4昇降回転体T24と、を含んでいる。ここで「基準位置10P」は、複数の昇降回転体T2の配置領域の中心位置である。この基準位置10Pは、台車10における上下方向視での任意の位置に設定可能である。本例では、基準位置10Pは、上下方向視における台車10の走行方向X及び幅方向Yの双方における中央部に設定されている。
【0029】
第1昇降回転体T21、第2昇降回転体T22、第3昇降回転体T23、及び第4昇降回転体T24のそれぞれは、伝動部材13を介して保持部11に連結されている。図3に示すように、本例では、伝動部材13は、第1昇降回転体T21に巻回される第1伝動部材131と、第2昇降回転体T22に巻回される第2伝動部材132と、第3昇降回転体T23に巻回される第3伝動部材133と、第4昇降回転体T24に巻回される第4伝動部材134と、を備えている。第1伝動部材131及び第3伝動部材133は、第1マスト121に沿って配置され、保持部11に対して走行方向第1側X1から連結している。
第2伝動部材132及び第4伝動部材134は、第2マスト122に沿って配置され、保持部11に対して走行方向第2側X2から連結している。
【0030】
本実施形態では、複数の昇降モータM2は、第1昇降回転体T21に対応する第1昇降モータM21、第2昇降回転体T22に対応する第2昇降モータM22、第3昇降回転体T23に対応する第3昇降モータM23、及び第4昇降回転体T24に対応する第4昇降モータM24を含んでいる。第1昇降モータM21は、第1昇降回転体T21を回転駆動することで第1伝動部材131を駆動する。第2昇降モータM22は、第2昇降回転体T22を回転駆動することで第2伝動部材132を駆動する。第3昇降モータM23は、第3昇降回転体T23を回転駆動することで第3伝動部材133を駆動する。第4昇降モータM24は、第4昇降回転体T24を回転駆動することで第4伝動部材134を駆動する。そして、第1~第4昇降モータM21~M24が協働して第1~第4伝動部材131~134を駆動することで、第1~第4伝動部材131~134に連結された保持部11がマスト12に沿って昇降する。
【0031】
本実施形態では、第1昇降モータM21と第3昇降M23モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結されている。そして、第2昇降モータM22と第4昇降モータM24とが、互いに同期回転するように機械的に連結されている。このような構成により、機械的に連結された昇降モータM2同士で駆動力(トルク)を分担して昇降回転体T2を回転駆動することができると共に、機械的に連結された2つの昇降モータM2の一方が故障した場合であっても、保持部11を昇降させることができるようになっている。
【0032】
図2に示すように、本実施形態では、移載部F3は、駆動対象Tとしての出退移動体T3を複数有している。そして、移載駆動ユニットU3は、対象モータMとして、複数の出退移動体T3のそれぞれに対応して設けられ、対応する出退移動体T3を駆動するためのトルクを発生する移載モータM3を備えている。また本例では、移載駆動ユニットU3は、制御部Hとして、複数の移載モータM3を個別に制御する移載制御部H3(図4参照)を備えている。
【0033】
本実施形態では、複数の出退移動体T3は、第1出退移動体T31と第2出退移動体T32とを含んでいる。また、複数の移載モータM3は、第1出退移動体T31に対応する第1移載モータM31と、第2出退移動体T32に対応する第2移載モータM32と、を含んでいる。
【0034】
第1出退移動体T31は、その基端部において第1移載モータM31に連結されており、当該第1移載モータM31に駆動されて幅方向Yに出退する。第2出退移動体T32は、その基端部において第2移載モータM32に連結されており、当該第2移載モータM32に駆動されて幅方向Yに出退する(図1も参照)。更に本例では、移載部F3は、第1出退移動体T31の先端部と第2出退移動体T32の先端部とを連結すると共に物品4を保持可能な移載連結部F3aを備えている。第1移載モータM31と第2移載モータM32とが協働して、第1出退移動体T31と第2出退移動体T32とを出退させることで、移載連結部F3aが幅方向Yに移動する。これにより、移載部F3は、物品搬送装置1に対して幅方向Yに隣接して配置された収納棚2との間で、物品4を移載可能となっている。本例では、移載連結部F3aは、物品4を載置するフォークとして構成されている。また、本例では、移載部F3は、水平多関節アーム(いわゆるSCARA;Selective Compliance Assembly Robot Arm)を用いて構成されている。
【0035】
監視システムは、以上で説明した物品搬送装置1における、機能部Fの監視を行う。以下、監視システムの詳細について説明する。なお、以下では、走行部F1、昇降部F2、及び移載部F3を「機能部F」と総称する場合がある。また、走行駆動ユニットU1、昇降駆動ユニットU2、及び移載駆動ユニットU3を「駆動ユニットU」と総称する場合がある。また、走行制御部H1、昇降制御部H2、及び移載制御部H3を「制御部H」と総称する場合がある。また、走行モータM1、昇降モータM2、及び移載モータM3を「対象モータM」と総称する場合がある。さらに、走行車輪T1、昇降回転体T2、及び出退移動体T3を「駆動対象T」と総称する場合がある。
【0036】
図4に示すように、監視システムは、駆動ユニットUによる駆動情報Ifを取得する駆動情報取得部Gと、駆動情報Ifに基づいて駆動ユニットUを監視する監視処理部Pと、を備えている。
【0037】
制御部Hは、複数の対象モータMのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能である。制御部Hは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0038】
駆動情報Ifには、フィードバック制御中における複数の対象モータMそれぞれのトルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれている。すなわち、駆動情報取得部Gは、各駆動ユニットUから、フィードバックトルク情報を取得するように構成されている。
【0039】
そして、監視処理部Pは、フィードバックトルク情報に基づいて、複数の対象モータMのそれぞれが発生するトルクの差を監視する監視処理を実行する。ここで、同じ駆動ユニットUに属する複数の対象モータMのそれぞれは、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象Tのそれぞれを駆動するものであるため、機能部Fが正常な状態である場合には、フィードバック制御中に各対象モータMが発生するトルクは基本的に同等の値になることが多い。そのため、これらのトルクに偏りがある場合には、機能部Fに何らかの異常が生じていると推測できる。上記の構成によれば、フィードバックトルク情報に示される複数の対象モータM同士のトルクの差を監視することにより、フィードバック制御中に各対象モータMが発生するトルクの偏りを判別することができる。従って、多くのデータを用いた複雑な統計処理等を行う必要がない簡易な処理により機能部Fを監視することができ、延いては、物品搬送装置1の機能部Fが正常か異常かをトルクの情報を用いて発見することが可能となる。本実施形態では、監視処理部Pは、監視処理の実行により、機能部Fにおける異常の有無を検出する。更に本例では、監視処理部Pは、機能部Fにおける異常の有無を検出すると共に、その異常種別を判断する(図5及び図7参照)。
【0040】
本実施形態では、監視処理部Pは、複数の駆動ユニットUのそれぞれに対して個別に監視処理を実行する。具体的には、監視処理部Pは、走行駆動ユニットU1、昇降駆動ユニットU2、及び移載駆動ユニットU3のそれぞれに対して、個別に監視処理を実行する。
これにより、走行部F1、昇降部F2、及び移載部F3のそれぞれを、統計的処理を必要としない簡易な処理により適切に監視することができる。そのため、例えば、走行部F1、昇降部F2、及び移載部F3のうち1つの機能部Fに異常がある場合であっても、その異常を適切に発見することが可能となる。本実施形態では、監視処理部Pは、複数の駆動ユニットUのそれぞれに対して個別に監視処理を実行することにより、複数の機能部Fのそれぞれにおける異常の有無を検出する。
【0041】
〔走行部の監視〕
まず、監視処理部Pが走行部F1の監視を行う場合について説明する。監視処理部Pは、走行駆動ユニットU1から取得したフィードバックトルク情報に基づいて、走行モータM1が発生するトルクを監視する。
【0042】
ここで、走行モータM1が発生するトルクを、複数の走行モータM1の組み合わせに応じて監視することにより、走行モータM1自体の異常や、走行モータM1以外の異常を検出することが可能である。走行モータM1自体の異常とは、経年劣化等に起因して走行モータM1が適切なトルクを発生できない場合や走行モータM1が故障して動かなくなった場合などを言う(以下、「走行モータの異常」と称する)。また、走行モータM1以外の異常とは、走行レール3が劣化していたり、走行レール3上に油や突起物などの異物が存在していたり、台車10や走行車輪T1が偏心しているなど、走行車輪T1又はその周辺環境の異常により、走行モータM1自体に異常が無くても当該走行モータM1が適切なトルクを発生できない場合を言う(以下、「走行モータ以外の異常」と称する)。
【0043】
本実施形態では、監視処理部Pは、走行部F1の監視を行う場合には、異種の走行モータM1同士が発生するトルクの値の差を監視する異種モータ監視処理と、同種の走行モータM1同士が発生するトルクの値の差を監視する同種モータ監視処理と、を実行する。「異種の走行モータ」とは、互いに異なる部分を転動する複数の走行車輪T1のそれぞれを駆動するための走行モータM1同士のことを言う。また、「同種の走行モータ」とは、互いに同じ部分を転動する複数の走行車輪T1のそれぞれを駆動するための走行モータM1同士のことを言う。本実施形態では、第1走行レール31上を転動する第1走行車輪T11を駆動するための第1走行モータM11と、第2走行レール32上を転動する第2走行車輪T12を駆動するための第2走行モータM12との関係性が、「異種の走行モータ」である。また、第1走行レール31上を転動する複数の第1走行車輪T11のそれぞれを駆動するための第1走行モータM11同士の関係性が、「同種の走行モータ」である。複数の第2走行モータM12同士の関係性も同様に、「同種の走行モータ」である。
【0044】
異種モータ監視処理は、第1走行モータM11が発生するトルクの値と第2走行モータM12が発生するトルクの値との差を監視する処理である。同種モータ監視処理は、複数の第1走行モータM11同士が発生するトルクの値の差を監視し、又は、複数の第2走行モータM12同士が発生するトルクの値の差を監視する処理である。
【0045】
本実施形態では、監視処理部Pは、監視処理(異種モータ監視処理)として、複数の第1走行車輪T11のそれぞれを駆動する走行モータM1(第1走行モータM11)が発生するトルクの平均値と、複数の第2走行車輪T12のそれぞれを駆動する走行モータM1(第2走行モータM12)が発生するトルクの平均値との差を監視する。そして、監視処理部Pは、これらのトルクの平均値の差が、予め定められた規定範囲を超える場合には「異常」と判断し、規定範囲内である場合には「正常」と判断する。規定範囲は、モータの性能や運転状況等に応じて適宜設定される。
【0046】
また、監視処理部Pは、監視処理(同種モータ監視処理)として、複数の第1走行車輪T11のそれぞれを駆動する走行モータM1(第1走行モータM11)同士が発生するトルクの値の差を監視し、また、複数の第2走行車輪T12のそれぞれを駆動する走行モータM1(第2走行モータM12)同士が発生するトルクの値の差を監視する。そして、これらのトルクの値の差が、予め定められた規定範囲を超える場合には「異常」と判断し、規定範囲内である場合には「正常」と判断する。
【0047】
図5は、走行部F1を対象とした監視処理の実行結果を表にしたものである。図5における「〇」は、監視処理部Pが「正常」と判断した場合であり、「×」は、監視処理部Pが「異常」と判断した場合である。また、図6は、監視処理部Pが走行部F1の監視を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0048】
図5及び図6に示すように、監視処理部Pは、異種モータ監視処理を実行し(#11)、異種モータ監視処理の実行結果が「正常」である場合には(#12:No)、「走行部F1に異常なし」と判断する(#13)。この場合、図5の表の1行目に示すように、異常種別は「異常なし」となる。異種モータ監視処理の実行結果が「正常」である場合には、同種の走行モータM1同士も正常にトルクを発生していると考えることができるため、監視処理部Pは、同種モータ監視処理を実行しない。
【0049】
監視処理部Pは、異種モータ監視処理の実行結果が「異常」である場合には(#12:Yes)、同種モータ監視処理を実行する(#14)。監視処理部Pは、異種モータ監視処理の実行結果が「異常」であり、同種モータ監視処理の実行結果が「正常」である場合には(#15:No)、「走行モータ以外の異常」が生じていると判断する(#16)。
この場合、図5の表の2行目に示すように、異常種別は「走行モータ以外の異常」となる。上記の場合、同種モータ監視処理の実行結果が「正常」であるため走行モータM1自体は正常である。そのため、第1走行モータM11によって駆動される第1走行車輪T11の周辺環境と第2走行モータM12によって駆動される第2走行車輪T12の周辺環境とに差があると判断できる。このような場合としては、例えば、第1走行レール31や第2走行レール32の何れかに異物が存在していたり、台車10が幅方向Yの何れかの側に偏心するなどして、第1走行車輪T11又は第2走行車輪T12に過度の負荷や空回りが生じている場合などが考えられる。
【0050】
監視処理部Pは、異種モータ監視処理の実行結果が「異常」であり、同種モータ監視処理の実行結果も「異常」である場合には(#15:Yes)、「何れかの異常」が生じていると判断する(#17)。この場合、図5の表の3行目に示すように、異常種別は「何れかの異常」となる。すなわち、監視処理部Pは、「走行モータの異常」または「走行モータ以外の異常」が生じていると判断する。
【0051】
〔昇降部の監視〕
次に、監視処理部Pが昇降部F2の監視を行う場合について説明する。監視処理部Pは、昇降駆動ユニットU2から取得したフィードバックトルク情報に基づいて、昇降モータM2が発生するトルクを監視する。
【0052】
ここで、昇降モータM2が発生するトルクを、複数の昇降モータM2の組み合わせに応じて監視することにより、昇降モータM2自体の異常や、昇降モータM2以外の異常を検出することが可能である。昇降モータM2自体の異常とは、経年劣化等に起因して昇降モータM2が適切なトルクを発生できない場合や昇降モータM2が故障して動かなくなった場合などを言う(以下、「昇降モータの異常」と称する)。また、昇降モータM2以外の異常とは、マスト12が歪んでいたり、昇降対象である保持部11や昇降回転体T2が偏心しているなど、昇降回転体T2又はその周辺環境の異常により、昇降モータM2が適切なトルクを発生できない場合を言う(以下、「昇降モータ以外の異常」と称する)。
【0053】
上述のように本実施形態では、第1昇降モータM21と第3昇降M23モータとが互いに同期回転するように機械的に連結され、第2昇降モータM22と第4昇降モータM24とが互いに同期回転するように機械的に連結されている。ここでは、互いに同期回転するように機械的に連結された昇降モータM2同士を、「同組の昇降モータ」と言う。また、機械的に連結されていない昇降モータM2同士を、「異組の昇降モータ」と言う。本実施形態では、互いに機械的に連結された第1昇降モータM21と第3昇降モータM23との関係性、及び、第2昇降モータM22と第4昇降モータM24との関係性が、「同組の昇降モータ」である。また、以下の例では、互いに機械的に連結されていない昇降モータM2のうち、台車中央部10Cに対して幅方向Yの同じ側に配置された第1昇降モータM21と第2昇降モータM22との関係性、及び、第3昇降モータM23と第4昇降モータM24との関係性を、「異組の昇降モータ」とする。
【0054】
本実施形態では、監視処理部Pは、監視処理として、第1昇降モータM21と第3昇降モータM23とのそれぞれが発生するトルクの差、第2昇降モータM22と第4昇降モータM24とのそれぞれが発生するトルクの差、第1昇降モータM21と第2昇降モータM22とのそれぞれが発生するトルクの差、及び、第3昇降モータM23と第4昇降モータM24とのそれぞれが発生するトルクの差、の少なくとも1つを監視する。すなわち本実施形態では、監視処理部Pは、昇降部F2の監視を行う場合には、異組の昇降モータM2同士が発生するトルクの差を監視する異組モータ監視処理と、同組の昇降モータM2同士が発生するトルクの差を監視する同組モータ監視処理と、の少なくとも1つを実行する。
【0055】
本実施形態では、監視処理部Pは、監視処理(異組モータ監視処理)として、第1昇降モータM21と第2昇降モータM22とのそれぞれが発生するトルクの差、及び、第3昇降モータM23と第4昇降モータM24とのそれぞれが発生するトルクの差を監視する。
そして、監視処理部Pは、これらのトルクの差が、予め定められた規定範囲を超える場合には「異常」と判断し、規定範囲内である場合には「正常」と判断する。
【0056】
また、監視処理部Pは、監視処理(同組モータ監視処理)として、第1昇降モータM21と第3昇降モータM23とのそれぞれが発生するトルクの差、及び、第2昇降モータM22と第4昇降モータM24とのそれぞれが発生するトルクの差を監視する。そして、監視処理部Pは、これらのトルクの差が、予め定められた規定範囲を超える場合には「異常」と判断し、規定範囲内である場合には「正常」と判断する。
【0057】
図7は、昇降部F2を対象とした監視処理の実行結果を表にしたものである。図7における「〇」は、監視処理部Pが「正常」と判断した場合であり、「×」は、監視処理部Pが「異常」と判断した場合である。また、図8は、監視処理部Pが昇降部F2の監視を行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
図7及び図8に示すように、監視処理部Pは、異組モータ監視処理を実行し(#21)、異組モータ監視処理の実行結果が「正常」である場合には(#22:No)、「昇降部F2に異常なし」と判断する(#23)。この場合、図7の表の1行目に示すように、異常種別は「異常なし」となる。異組モータ監視処理の実行結果が「正常」である場合には、同組の昇降モータM2同士も正常にトルクを発生していると考えることができるため、監視処理部Pは、同組モータ監視処理を実行しない。
【0059】
監視処理部Pは、異組モータ監視処理の実行結果が「異常」である場合には(#22:Yes)、同組モータ監視処理を実行する(#24)。監視処理部Pは、異組モータ監視処理の実行結果が「異常」であり、同組モータ監視処理の実行結果が「正常」である場合には(#25:No)、「昇降モータ以外の異常」が生じていると判断する(#26)。
この場合、図7の表の2行目に示すように、異常種別は「昇降モータ以外の異常」となる。上記の場合、同組モータ監視処理の実行結果が「正常」であるため昇降モータM2自体は正常である。そのため、昇降対象である保持部11やマスト12などの周辺環境に異常があると判断できる。このような場合としては、例えば、マスト12が歪んでいたり、保持部11や昇降回転体T2が偏心するなどして、昇降回転体T2に過度の負荷や空回りが生じている場合などが考えられる。
【0060】
監視処理部Pは、異組モータ監視処理の実行結果が「異常」であり、同組モータ監視処理の実行結果も「異常」である場合には(#25:Yes)、「何れかの異常」が生じていると判断する(#27)。この場合、図7の表の3行目に示すように、異常種別は「何れかの異常」となる。すなわち、監視処理部Pは、「昇降モータの異常」または「昇降モータ以外の異常」が生じていると判断する。
【0061】
〔移載部の監視〕
次に、監視処理部Pが移載部F3の監視を行う場合について説明する。監視処理部Pは、移載駆動ユニットU3から取得したフィードバックトルク情報に基づいて、移載モータM3が発生するトルクを監視する。
【0062】
本実施形態では、監視処理部Pは、監視処理として、複数の出退移動体T3のそれぞれを駆動する移載モータM3が発生するトルクの差を監視する。本例では、監視処理部Pは、移載部F3の監視を行う場合には、第1出退移動体T31を駆動する第1移載モータM31が発生するトルクと、第2出退移動体T32を駆動する第2移載モータM32が発生するトルクとの差を監視する。そして、監視処理部Pは、これらのトルクの差が、予め定められた規定範囲を超える場合には「異常」と判断し、規定範囲内である場合には「正常」と判断する。これらのトルクの差が規定範囲を超える場合には、出退移動体T3、出退移動体T3を出退させる機構、或いは移載モータM3に異常があると判断することができる。出退移動体T3を出退させる機構に異常がある場合としては、例えば、保持部11や移載部F3が保持している物品4の姿勢が偏っている場合や移載部F3を構成する機構の一部に異常が発生した場合などが考えられる。
【0063】
〔その他の実施形態〕
次に、監視システムのその他の実施形態について説明する。
【0064】
(1)上記の実施形態では、監視処理部Pが、監視処理(異種モータ監視処理)として、複数の第1走行車輪T11のそれぞれを駆動する走行モータM1(第1走行モータM11)が発生するトルクの平均値と、複数の第2走行車輪T12のそれぞれを駆動する走行モータM1(第2走行モータM12)が発生するトルクの平均値との差を監視する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、監視処理部Pは、トルクの平均値でなく、トルクの合算値に基づいて監視処理を行っても良い。すなわち、監視処理部Pは、監視処理(異種モータ監視処理)として、複数の第1走行車輪T11のそれぞれを駆動する走行モータM1(第1走行モータM11)が発生するトルクの合算値と、複数の第2走行車輪T12のそれぞれを駆動する走行モータM1(第2走行モータM12)が発生するトルクの合算値との差を監視しても良い。
【0065】
(2)上記の実施形態では、第1昇降モータM21と第3昇降M23モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、及び、第2昇降モータM22と第4昇降モータM24とが、互いに同期回転するように機械的に連結されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1昇降モータM21と第2昇降モータM22とが、互いに同期回転するように機械的に連結され、及び、第3昇降モータM23と第4昇降モータM24とが、互いに同期回転するように機械的に連結されていても良い。この場合、監視処理部Pは、監視処理として、第1昇降モータM21と第2昇降モータM22とのそれぞれが発生するトルクの差、及び、第3昇降モータM23と第4昇降モータM24とのそれぞれが発生するトルクの差を監視すると良い。
【0066】
(3)上記の実施形態では、監視処理部Pが、走行部F1の監視を行う場合には、異種の走行モータM1同士が発生するトルクの値の差を監視する異種モータ監視処理と、同種の走行モータM1同士が発生するトルクの値の差を監視する同種モータ監視処理と、の双方を実行する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、監視処理部Pは、走行部F1の監視を行う場合には、異種モータ監視処理及び同種モータ監視処理のうち一方のみを実行しても良い。
【0067】
(4)上記の実施形態では、物品搬送装置1が、機能部Fを複数備えると共に、駆動ユニットUを複数備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、物品搬送装置1は、機能部Fと駆動ユニットUとを、少なくとも1つずつ備えていれば良い。
【0068】
(5)上記の実施形態では、物品搬送装置1が、台車10、保持部11、マスト12、伝動部材13、及び旋回部14を備えたスタッカークレーンとして構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、物品搬送装置1は、上記で述べた台車10などの各要素を備えていなくても良い。物品搬送装置1は、監視システムの監視対象とされる機能部Fを少なくとも1つ備えていれば良い。物品搬送装置1は、スタッカークレーンとして構成されることの他、例えば、無人搬送車や天井搬送車などにより構成されていても良い。物品搬送装置1は、無人搬送車として構成される場合、床面に沿って台車を走行させる走行部と、台車と移載対象箇所(例えば物品収納部)との間で物品を移載する移載部を備える。これら走行部や移載部が、機能部Fとなる。また、物品搬送装置1は、天井搬送車として構成される場合、天井付近に設置されたレールに沿って台車を走行させる走行部と、物品を保持する保持部と、床面付近に設置された移載対象箇所(例えば物品載置部)と台車との間で保持部を昇降させる昇降部と、を備える。これら走行部や昇降部が、機能部Fとなる。
【0069】
(6)上記の実施形態では、駆動対象Tおよび対象モータMが設けられる数について具体的な数字を挙げて説明したが、駆動対象Tおよび対象モータMのそれぞれは、少なくとも2つ以上設けられていれば良い。
【0070】
(7)上記の実施形態では、移載部F3が、水平多関節アームを用いて構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、移載部F3は、物品4を幅方向Yから挟持可能な一対のアーム又はベルトを用いて構成されていても良く、或いは、物品4を下方から支持可能な一対のフォークを用いて構成されていても良い。
【0071】
(8)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0072】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した監視システムについて説明する。
【0073】
物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムであって、
前記機能部を駆動する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットによる駆動情報を取得する駆動情報取得部と、
前記駆動情報に基づいて前記駆動ユニットを監視する監視処理部と、を備え、
前記機能部は、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象を備え、
前記駆動ユニットは、複数の前記駆動対象のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記駆動対象を駆動するためのトルクを発生する対象モータと、複数の前記対象モータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記対象モータのそれぞれに対して、回転方向の位置及び回転速度の少なくとも一方を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御を実行可能であり、
前記駆動情報には、前記フィードバック制御中における複数の前記対象モータそれぞれの前記トルクの情報であるフィードバックトルク情報が含まれ、
前記監視処理部は、前記フィードバックトルク情報に基づいて、複数の前記対象モータのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する監視処理を実行する。
【0074】
複数の対象モータのそれぞれは、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象のそれぞれを駆動するものであるため、機能部が正常な状態である場合には、フィードバック制御中に各対象モータが発生するトルクは基本的に同等の値になることが多い。そのため、これらのトルクに偏りがある場合には、機能部に何らかの異常が生じていると推測できる。本構成によれば、フィードバックトルク情報に示される複数の対象モータ同士のトルクの差を監視することにより、フィードバック制御中に各対象モータが発生するトルクの偏りを判別することができる。従って、本構成によれば、多くのデータを用いた複雑な統計処理等を行う必要がない簡易な処理により機能部を監視することができ、延いては、物品搬送装置の機能部が正常か異常かをトルクの情報を用いて発見することが可能となる。このように、本構成によれば、同じ機能を果たすために並列配置された複数の駆動対象を有する機能部を備えた物品搬送装置において、そのような複数の駆動対象が並列配置されていることを利用して、統計的処理を必要としない簡易な処理により、当該機能部の監視を適切に行うことができる。
【0075】
ここで、
前記物品搬送装置は、前記機能部を複数備えると共に、前記駆動ユニットを複数備え、
複数の前記機能部は、互いに異なる機能を果たすように構成され、
複数の前記駆動ユニットは、それぞれ対応する前記機能部を駆動するように構成され、
前記監視処理部は、複数の前記駆動ユニットのそれぞれに対して個別に前記監視処理を実行する、と好適である。
【0076】
本構成によれば、物品搬送装置が互いに異なる機能を果たす複数の機能部を備える場合であっても、それら複数の機能部のそれぞれを、統計的処理を必要としない簡易な処理により、適切に監視することができる。
【0077】
また、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車を走行させる前記機能部としての走行部と、を備え、
前記走行部は、前記駆動対象としての走行車輪を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記走行部を駆動する走行駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記走行車輪のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記走行車輪を駆動するためのトルクを発生する走行モータが備えられ、
上下方向に沿う上下方向視で前記台車の走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
複数の前記走行車輪は、前記幅方向における前記台車の中央部である台車中央部に対して前記幅方向第1側に配置された複数の第1走行車輪と、前記台車中央部に対して前記幅方向第2側に配置された複数の第2走行車輪と、を含み、
前記監視処理部は、前記監視処理として、複数の前記第1走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの平均値と、複数の前記第2走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの平均値との差を監視し、又は、複数の前記第1走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの合算値と、複数の前記第2走行車輪のそれぞれを駆動する前記走行モータが発生する前記トルクの合算値との差を監視する、と好適である。
【0078】
一般的に、台車の走行経路の状態が正常であれば、台車の幅方向両側に分かれて配置された複数の第1走行車輪と複数の第2走行車輪とのそれぞれのフィードバック制御中における走行モータのトルクは、基本的に同等の値になることが多い。一方、台車の走行経路の一部に異常がある場合、特に、第1走行車輪と第2走行車輪とのいずれか一方の経路上に異常がある場合等には、これらを駆動する走行モータのトルクに偏りが生じる可能性が高い。本構成によれば、複数の第1走行車輪のそれぞれを駆動する走行モータが発生するトルクに関する値と、複数の第2走行車輪のそれぞれを駆動する走行モータが発生するトルクに関する値との差を監視することで、統計的処理を必要としない簡易な処理により、このような台車の走行経路の状態を適切に監視することができる。
【0079】
また、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車に搭載されて前記物品を保持する保持部と、前記保持部を前記台車に対して昇降させる前記機能部としての昇降部と、を備え、
前記昇降部は、前記駆動対象としての昇降回転体を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記昇降部を駆動する昇降駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記昇降回転体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記昇降回転体を駆動するためのトルクを発生する昇降モータが備えられ、
上下方向に沿う上下方向視で前記台車の走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記走行方向の一方側を走行方向第1側とし、前記走行方向の他方側を走行方向第2側とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
複数の前記昇降回転体は、前記台車に設定された基準位置に対して前記走行方向第1側かつ前記幅方向第1側に配置された第1昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第2側かつ前記幅方向第1側に配置された第2昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第1側かつ前記幅方向第2側に配置された第3昇降回転体と、前記基準位置に対して前記走行方向第2側かつ前記幅方向第2側に配置された第4昇降回転体と、を含み、
前記第1昇降回転体、前記第2昇降回転体、前記第3昇降回転体、及び前記第4昇降回転体のそれぞれは、伝動部材を介して前記保持部に連結され、
複数の前記昇降モータは、前記第1昇降回転体に対応する第1昇降モータ、前記第2昇降回転体に対応する第2昇降モータ、前記第3昇降回転体に対応する第3昇降モータ、及び前記第4昇降回転体に対応する第4昇降モータを含み、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、の少なくとも1つを監視する、と好適である。
【0080】
本構成のように、物品搬送装置が、物品を保持する保持部を昇降させる昇降部を備えると共に、当該昇降部が分散して配置された4つの昇降回転体をそれぞれ駆動する4つの昇降モータを備えている場合、一般的に、保持部が保持する物品の状態や昇降部の状態が正常であれば、フィードバック制御中における4つの昇降モータのそれぞれのトルクは、基本的に同等の値になることが多い。一方、例えば、保持部が物品を偏った姿勢で保持している場合や昇降部の一部に異常が発生した場合等には、4つの昇降モータのトルクに偏りが生じる可能性が高い。本構成によれば、基準位置に対して走行方向第1側にある第1昇降モータと第3昇降モータとのそれぞれが発生するトルクの差、基準位置に対して走行方向第2側にある第2昇降モータと第4昇降モータとのそれぞれが発生するトルクの差、基準位置に対して幅方向第1側にある第1昇降モータと第2昇降モータとのそれぞれが発生するトルクの差、及び、基準位置に対して幅方向第2側にある第3昇降モータと第4昇降モータとのそれぞれが発生するトルクの差の少なくとも1つを監視することで、統計的処理を必要としない簡易な処理により、このような保持部及び昇降部の状態を適切に監視することができる。
【0081】
また、複数の前記昇降モータが、前記第1昇降回転体に対応する第1昇降モータ、前記第2昇降回転体に対応する第2昇降モータ、前記第3昇降回転体に対応する第3昇降モータ、及び前記第4昇降回転体に対応する第4昇降モータを含む構成において、
前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、及び、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第3昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第2昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視し、
又は、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとが、互いに同期回転するように機械的に連結され、
前記監視処理部は、前記監視処理として、前記第1昇降モータと前記第2昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差、及び、前記第3昇降モータと前記第4昇降モータとのそれぞれが発生する前記トルクの差を監視する、と好適である。
【0082】
本構成のように、物品搬送装置が、2つの昇降モータが機械的に連結されている構成では、それら2つの昇降モータがいずれも正常である場合には、それら2つの昇降モータのそれぞれのトルクは、基本的に同等の値になるはずである。一方、このように機械的に連結された2つの昇降モータの一方に異常が生じた場合には、正常な方の昇降モータに作用する負荷が大きくなるため、それら2つの昇降モータのトルクに大きな差が生じることになる。本構成によれば、互いに同期回転するように機械的に連結された昇降モータ同士のトルクの差を監視することで、統計的処理を必要としない簡易な処理により、このような昇降モータの状態も適切に監視することができる。
【0083】
また、
前記物品搬送装置は、台車と、前記台車に搭載されて前記物品を保持する保持部と、前記保持部に対して前記物品を出退させて前記物品を移載する前記機能部としての移載部と、を備え、
前記移載部は、前記駆動対象としての出退移動体を複数有し、
前記駆動ユニットとして、前記移載部を駆動する移載駆動ユニットが備えられ、
前記対象モータとして、複数の前記出退移動体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記出退移動体を駆動するためのトルクを発生する移載モータが備えられ、
前記監視処理部は、前記監視処理として、複数の前記出退移動体のそれぞれを駆動する前記移載モータが発生する前記トルクの差を監視する、と好適である。
【0084】
本構成のように、物品搬送装置が、保持部に対して物品を出退させて当該物品を移載する移載部を備えると共に、当該移載部が複数の出退移動体をそれぞれ駆動する複数の移載モータを備えている場合、一般的に、保持部が保持する物品の状態や移載部の状態が正常であれば、フィードバック制御中における複数の移載モータのそれぞれのトルクは、基本的に同等の値になることが多い。一方、例えば、保持部や移載部が保持している物品の姿勢が偏っている場合や移載部の一部に異常が発生した場合等には、複数の移載モータのトルクに偏りが生じる可能性が高い。本構成によれば、複数の出退移動体のそれぞれを駆動する移載モータが発生するトルクの差を監視することで、統計的処理を必要としない簡易な処理により、このような保持部及び移載部の状態を適切に監視することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示に係る技術は、物品を搬送するための機能部と前記機能部を駆動する駆動ユニットとを備えた物品搬送装置における、前記機能部の監視を行う監視システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
P :監視処理部
G :駆動情報取得部
1 :物品搬送装置
4 :物品
10 :台車
10C :台車中央部
10P :基準位置
11 :保持部
13 :伝動部材
F :機能部
F1 :走行部
F2 :昇降部
F3 :移載部
H :制御部
If :駆動情報
M :対象モータ
M1 :走行モータ
M2 :昇降モータ
M21 :第1昇降モータ
M22 :第2昇降モータ
M23 :第3昇降モータ
M24 :第4昇降モータ
M3 :移載モータ
T :駆動対象
T1 :走行車輪
T11 :第1走行車輪
T12 :第2走行車輪
T2 :昇降回転体
T21 :第1昇降回転体
T22 :第2昇降回転体
T23 :第3昇降回転体
T24 :第4昇降回転体
T3 :出退移動体
U :駆動ユニット
U1 :走行駆動ユニット
U2 :昇降駆動ユニット
U3 :移載駆動ユニット
X :走行方向
X1 :走行方向第1側
X2 :走行方向第2側
Y :幅方向
Y1 :幅方向第1側
Y2 :幅方向第2側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8