(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240228BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240228BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20240228BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240228BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20240228BHJP
C08L 61/28 20060101ALI20240228BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240228BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240228BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20240228BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240228BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240228BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20240228BHJP
【FI】
C08L101/00
C08G73/10
C08K5/34
C08L79/08
C08L33/00
C08L61/28
H05B33/14 A
H05B33/02
H05B33/26 Z
H01L29/78 626C
H10K85/00
(21)【出願番号】P 2020550492
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038882
(87)【国際公開番号】W WO2020071415
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2018187968
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019016036
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019117543
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅井 智美
(72)【発明者】
【氏名】大津 信也
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩
(72)【発明者】
【氏名】谷 邦夫
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-122186(JP,A)
【文献】特開2015-122247(JP,A)
【文献】特開2009-108112(JP,A)
【文献】国際公開第2013/024849(WO,A1)
【文献】特開2015-178628(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116651(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 73/10
H10K 50/00-50/30
H05B 33/02
H05B 33/26
H01L 21/336
H10K 85/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂又は樹脂前駆体と、含窒素芳香族複素環化合物と、を含有する樹脂組成物であって、
前記含窒素芳香族複素環化合物が、下記一般式(4)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される構造を有し、かつ、
当該含窒素芳香族複素環化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して0.10~30質量%の範囲内で含有する樹脂組成物。
【化1】
[
一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L
2
は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。
一般式(6)中、X
1~X
6は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良い。A1及びA2はヘテロアリール環を形成する。
一般式(7)中、X
7~X
9は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。X
10~X
13は、-N=、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良く、X
10~X
13のうち少なくとも一つが-N=を表す。A3及びA4はヘテロアリール環を形成する。]
【請求項2】
前記樹脂が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有する請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(4)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して1~10質量%の範囲内で含有する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、
前記樹脂層が、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有し、
前記樹脂層と前記金属導電層とが隣接している電子デバイス。
【請求項6】
前記金属導電層が、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかを含有するか、若しくは、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかの合金を含有する請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、樹脂前駆体を2種以上含有する請求項5又は請求項6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記樹脂層が、無機粒子を含有する請求項5から請求項7までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記樹脂層が、光又は熱重合開始剤により硬化された硬化物からなる樹脂層である請求項5から請求項8までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、
前記樹脂層と前記金属導電層の間に、下記一般式(4)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有する中間層を有する電子デバイス。
【化2】
[
一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L
2
は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。
一般式(6)中、X
1~X
6は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良い。A1及びA2はヘテロアリール環を形成する。
一般式(7)中、X
7~X
9は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。X
10~X
13は、-N=、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良く、X
10~X
13のうち少なくとも一つが-N=を表す。A3及びA4はヘテロアリール環を形成する。]
【請求項11】
前記樹脂層が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有する請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記金属導電層が、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかを含有するか、若しくは、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかの合金を含有する請求項10又は請求項11に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び電子デバイスに関し、特に、金属導電層に対する密着性、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた樹脂組成物及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量な導電性素子が、液晶方式、プラズマ方式、有機エレクトロルミネッセンス方式、フィールドエミッション方式などの各種ディスプレイをはじめ、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子なとのオプトエレクトロニクスデバイスの基板や、各種センサー等の電極や電磁波遮蔽層、又は、防曇フィルムや融雪槽の発熱素子など、様々な分野で使用されている。そして、これら導電性素子に使用される導電層として、金属導電層が広く用いられている。
【0003】
ところで、前記金属導電層の下層に樹脂で構成される層が存在する場合、この金属導電層と樹脂層との界面の密着性や、高温保存時の安定性が問題となっている。
導電性素子の金属導電層を構成する材料としては、例えば、Au、Ag、Pt、Cu、Rh、Pd、Al、Cr、Mo、W、Ti等の金属や、Ag、Cu、Al、Mo、W、Ti合金や、In2O3、CdO、CdIn2O4、Cd2SnO4、TiO2、SnO2、ZnO、インジウム・スズ酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)等の金属材料が用いられている。これらの金属材料の中でも、銀がよく用いられているが、銀は非常に銀同士で凝集しやすい。そのため、金属導電層と樹脂層との界面で均一な膜ができず、通常、海島構造となってしまい、銀の層を薄く成膜することは困難であり、そのため、光透過性が悪く、また、高温保存時には、銀層と樹脂層の分離がさらに進み、高温保存時の安定性に問題がある。銀以外の金属も、同様の問題を有している。
樹脂層としては、例えば特許文献1及び2の技術が開示されているが、金属導電層と樹脂層の界面の密着性や高温保存時の安定性については問題にしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/024849号
【文献】特開2015-178628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、金属導電層に対する密着性、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、樹脂又は樹脂前駆体に、特定の構造を有する含窒素芳香族複素環化合物を特定量含有することで、金属導電層中の金属と相互作用し、当該金属の拡散を抑えることができ、その結果、金属導電層への密着性が良好となり、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた混合物等を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
1.樹脂又は樹脂前駆体と、含窒素芳香族複素環化合物と、を含有する樹脂組成物であって、
前記含窒素芳香族複素環化合物が、下記一般式(4)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される構造を有し、かつ、
当該含窒素芳香族複素環化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して0.10~30質量%の範囲内で含有する樹脂組成物。
【化1】
[
一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L
2
は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。
一般式(6)中、X
1~X
6は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良い。A1及びA2はヘテロアリール環を形成する。
一般式(7)中、X
7~X
9は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。X
10
~X
13は、-N=、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリー
ル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良く、X
10~X
13のうち少なくとも一つが-N=を表す。A3及びA4はヘテロアリール環を形成する。]
【0008】
2.前記樹脂が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有する第1項に記載の樹脂組成物。
【0009】
3.前記樹脂が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有する第1項又は第2項に記載の樹脂組成物。
【0010】
4.前記一般式(4)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して1~10質量%の範囲内で含有する第1項から第3項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【0017】
5.樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、
前記樹脂層が、第1項から第4項までのいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有し、
前記樹脂層と前記金属導電層とが隣接している電子デバイス。
【0018】
6.前記金属導電層が、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかを含有するか、若しくは、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかの合金を含有する第5項に記載の電子デバイス。
【0019】
7.前記樹脂組成物が、樹脂前駆体を2種以上含有する第5項又は第6項に記載の電子デバイス。
【0020】
8.前記樹脂層が、無機粒子を含有する第5項から第7項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
【0021】
9.前記樹脂層が、光又は熱重合開始剤により硬化された硬化物からなる樹脂層である第5項から第8項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
【0022】
10.樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、
前記樹脂層と前記金属導電層の間に、下記一般式(
4)、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有する中間層を有する電子デバイス。
【化2】
[
一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、
この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L
2
は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。
一般式(6)中、X
1~X
6は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良い。A1及びA2はヘテロアリール環を形成する。
一般式(7)中、X
7~X
9は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。X
10~X
13は、-N=、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良く、X
10~X
13のうち少なくとも一つが-N=を表す。A3及びA4はヘテロアリール環を形成する。]
【0023】
11.前記樹脂層が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有する第10項に記載の電子デバイス。
【0029】
12.前記金属導電層が、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかを含有するか、若しくは、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかの合金を含有する第10項又は第11項に記載の電子デバイス。
【発明の効果】
【0030】
本発明の上記手段により、金属導電層に対する密着性、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた電子デバイスを提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
下記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物は、分子内に窒素原子を含有する芳香族複素環を有するので、金属と相互作用し、当該金属を固定する。すなわち、金属の拡散を抑えることができる。
ここで、一般的な窒素原子を含有する芳香族複素環化合物では、金属との相互作用は弱く、金属の拡散を抑える効果は弱い。そこで、我々が鋭意検討した結果、主に下記二つの相互作用を形成する化合物(下記構造A及び構造Bを有する化合物)の場合に、強い効果が得られる。なお、下記構造A及び構造Bを有する化合物において、Mは金属を表す。
A:縮環構造のオルト位に窒素(N)原子が存在する場合
B:自由回転する窒素(N)原子が分子内に多数ある場合に、2分子で相互作用する。
【0031】
【0032】
したがって、前記構造Aを有する化合物として、下記一般式(2)及び(3)で表される構造を有する化合物の場合、前記構造Bを有する化合物として、前記一般式(4)及び(5)で表される構造を有する化合物の場合に、金属の拡散を確実に抑えることができ、その結果、金属導電層に対する密着性が良好で、高温保存時の安定性に優れる。また、金属導電層を薄膜とすることができることから光透過性に優れると推察される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の樹脂組成物は、樹脂又は樹脂前駆体と、含窒素芳香族複素環化合物と、を含有する樹脂組成物であって、前記含窒素芳香族複素環化合物が、下記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有し、かつ、当該含窒素芳香族複素環化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して0.10~30質量%の範囲内で含有する。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0034】
本発明の実施態様としては、前記樹脂が、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することが機械特性及び電気特性の点で好ましく、特に、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することが好ましい。
【0035】
前記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して1~10質量%の範囲内で含有することが、高温保存時の安定性及び樹脂層の作製が良好となる点で好ましい。
【0036】
前記一般式(1)において、A1及びA2のうち少なくとも一つが、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ピラゾール環又はベンズピラゾール環を表すことが、金属導電層との親和力及び安定性の点で好ましく、特に、ピリジン環、ピリミジン環、キナゾリン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環又はベンズイミダゾール環を表すことが好ましい。
【0037】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物が、前記一般式(2)~(5)で表される構造を有する化合物のいずれかであることが、金属の拡散を抑制し、金属導電層に対する密着性、高温保存時の安定性の点で好ましい。
【0038】
本発明の電子デバイスは、樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、前記樹脂層が、前記樹脂組成物を含有し、前記樹脂層と前記金属導電層とが隣接している。
これにより、金属導電層と樹脂層との界面の密着性、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた電子デバイスとすることができる。
【0039】
前記金属導電層が、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかを含有するか、若しくは、Ag、Cu、Al、Mo、W又はTiのいずれかの合金を含有することが、本発明である非共有電子対を持つ窒素原子を有する有機化合物と相互作用する点で好ましい。
【0040】
前記樹脂組成物が、樹脂前駆体を2種以上含有することが、それぞれの樹脂特性を両立できる点で好ましい。
また、前記樹脂層が、無機粒子を含有することが、物理的強度等を向上させる点で好ましい。
さらに、前記樹脂層が、光又は熱重合開始剤により硬化された硬化物からなる樹脂層であることが、表面硬化性に加え、鉛筆硬度及び耐熱性等の点で好ましい。
【0041】
また、本発明の他の電子デバイスは、樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、前記樹脂層と前記金属導電層の間に、前記一般式(1)、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有する中間層を有する。これによっても、金属導電層と樹脂層との界面の密着性、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた電子デバイスとすることができる。
【0042】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、樹脂又は樹脂前駆体と、含窒素芳香族複素環化合物と、を含有する樹脂組成物であって、前記含窒素芳香族複素環化合物が、下記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有し、かつ、当該含窒素芳香族複素環化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して0.10~30質量%の範囲内で含有する。
【0044】
【化12】
[一般式(1)中、A1及びA2は、窒素原子とともに6員の含窒素芳香族複素環を表し、この6員の含窒素芳香族複素環は縮環を形成してもよい。Lは、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。
一般式(6)中、X
1~X
6は、-N=、-NH-、又は、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良い。A1及びA2はヘテロアリール環を形成する。
一般式(7)中、X
7~X
9は、-N=、―NH-、又は、-CR
1-を表す。X
10~X
13は、-N=、-CR
1-を表す。R
1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良く、X
10~X
13のうち少なくとも一つが-N=を表す。A3及びA4はヘテロアリール環を形成する。]
【0045】
本発明の樹脂組成物は、前記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物を、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して1~10質量%の範囲内で含有することが、高温保存時の安定性及び樹脂層の作製が良好となる点で好ましい。
【0046】
<一般式(1)で表される構造を有する化合物>
一般式(1)中、A1及びA2で表される、窒素原子とともに形成される6員の芳香族複素環としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。また、縮環を形成した6員の含窒素芳香族複素環としては、キナゾリン、キノリン、イソキノリン、アザジベンゾフラン、アザカルバゾール、アザジベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール環、ベンゾキノリン環及びベンゾイソキノリン環等が挙げられる。
Lが表す連結基として用いられる芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環(フェニル環)、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環又はフルオレン環、芳香族複素環としては、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基、へキシル基等が挙げられる。
【0047】
また、前記一般式(1)におけるA1及びA2のうち少なくとも一つが、下記一般式(2)又は(3)で表される構造を有することが好ましい。また、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(4)又は(5)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【0048】
<一般式(2)で表される構造>
【化13】
[一般式(2)中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n1は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Ra、Rb及びRcで表される置換基における置換可能な位置、又は、キナゾリン環において置換基としてRa、Rb及びRcが存在する位置以外の置換可能な位置である。]
【0049】
一般式(2)中、Ra、Rb及びRcで表される置換基としては、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、アルキル、シアノ、ハロゲン原子等が挙げられる。また、Ra、Rb及びRcのうちの少なくとも一つが表す6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0050】
<一般式(3)で表される構造>
【化14】
[一般式(3)中、Re、Rd及びRfは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。n2は、1~4の整数を表す。なお、前記一般式(1)における連結基Lとの連結位置は、Re、Rd及びRfで表される置換基における置換可能な位置、又は、キノキサリン環において置換基としてRe、Rd及びRfが存在する位置以外の置換可能な位置である。]
【0051】
一般式(3)中、Re、Rd及びRfで表される置換基としては、前記一般式(2)のRa、Rb及びRcで表される置換基と同様である。また、Re、Rd及びRfのうち少なくとも一つが6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0052】
<一般式(4)で表される構造を有する化合物>
【化15】
[一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環を形成してもよい。L
2は、単結合、芳香族炭化水素環、芳香族複素環又はアルキル基に由来する連結基を表す。]
【0053】
一般式(4)中、Rg、Rh、Ri及びRjで表される置換基としては、前記一般式(2)のRa、Rb及びRcで表される置換基と同様である。また、Rg、Rh、Ri及びRjのうち少なくとも一つが6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
また、L2が表す芳香族炭化水素環、芳香族複素環、アルキル基としては、それぞれ前記一般式(1)のLで挙げたものと同様である。
【0054】
<一般式(5)で表される構造を有する化合物>
【化16】
[一般式(5)中、Arは、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、アザジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスレン環又はフルオレン環を表す。Rkは、水素原子又は置換基を表す。Rkのうち少なくとも二つが、6員の芳香族複素環を表し、この6員の芳香族複素環は縮環してもよい。n3は2以上を表す。]
【0055】
一般式(5)中、Rkで表される置換基としては、前記一般式(2)のRa、Rb及びRcで表される置換基と同様である。また、Rkで表される6員の芳香族複素環としては、前記一般式(1)のA1及びA2で挙げたものと同様である。
【0056】
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の例示化合物を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
<一般式(6)で表される構造を有する化合物>
一般式(6)中、X1~X6は、-N=、-NH-、又は、-CR1-を表す。
R1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良い。
A1及びA2はヘテロアリール環を形成する。
-CR1-はアリール基、又はヘテロアリール基を有することが好ましい。さらに好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基にアルキル基、アルコキシ基、カルボニル基が置換されていることが好ましい。
【0065】
前記一般式(6)で表される構造を有する化合物の例示化合物を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
<一般式(7)で表される構造を有する化合物>
一般式(7)中、X7~X9は、-N=、―NH-、又は、-CR1-を表す。X10~X13は、-N=、-CR1-を表す。R1は、水素原子、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、シリル基、チオール基、カルボニル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシ基を表し、さらに置換基を有していても良く、X10~X13のうち少なくとも一つが-N=を表す。A3及びA4はヘテロアリール環を形成する。
-CR1-はアリール基、又はヘテロアリール基を有することが好ましい。さらに好ましくは、アリール基、ヘテロアリール基にアルキル基、アルコキシ基、カルボニル基が置換されていることが好ましい。
【0070】
前記一般式(7)で表される構造を有する化合物の例示化合物を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
<樹脂又は樹脂前駆体>
前記樹脂は、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することが耐熱性、寸法安定性などの機械特性及び絶縁性などの電気特性の点で好ましい。
【0075】
前記セルロースエステル樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(略称:TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース等が挙げられる。
前記ポリカーボネート樹脂としては、例えば、パンライト、マルチロン(以上、帝人社製)が挙げられる。
前記シクロオレフィン樹脂としては、例えば、ゼオノア(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)等が挙げられる。
前記アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリライト(三菱レイヨン社製)、スミペックス(住友化学社製)等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等が挙げられる。
【0076】
前記樹脂の中でも、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することがより好ましく、特に、樹脂層が樹脂フィルムである場合にはポリイミド樹脂を含有することが好ましく、樹脂層がレジストである場合にはアクリル樹脂又はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0077】
前記ポリイミド樹脂は、下記一般式で表される構造を有するものを使用できる。
【化30】
[前記一般式中、Rは、芳香族炭化水素環若しくは芳香族複素環、又は、炭素数4~39の4価の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を表す。Φは、炭素数2~39の2価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として、-O-、-SO
2-、-CO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-OSi(CH
3)
2-、-C
2H
4O-及び-S-からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を含有していても良い。]
【0078】
前記Rで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、フルオレン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o-テルフェニル環、m-テルフェニル環、p-テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0079】
前記Rで表される芳香族複素環としては、例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環等が挙げられる。
【0080】
前記Rで表される炭素数4~39の4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブタン-1,1,4,4-トリイル基、オクタン-1,1,8,8-トリイル基、デカン-1,1,10,10-トリイル基等の基が挙げられる。
また、前記Rで表される炭素数4~39の4価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン-1,2,3,4-テトライル基、シクロペンタン-1,2,4,5-テトライル基、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトライル基、3,3′,4,4′-ジシクロヘキシルテトライル基、3,6-ジメチルシクロヘキサン-1,2,4,5-テトライル基、3,6-ジフェニルシクロヘキサン-1,2,4,5-テトライル基等の基が挙げられる。
【0081】
前記Φで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2~39の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
【0082】
【0083】
前記Φで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2~39の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
【0084】
【0085】
前記Φで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2~39の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
【0086】
【0087】
前記Φで表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせからなる基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
【0088】
【0089】
前記樹脂は、後述する樹脂フィルムやレジストに含有されて用いられることが好ましく、前記樹脂フィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
また、樹脂の代わりに樹脂前駆体(ワニス等)を用いてよく、その場合は、樹脂前駆体(ワニス等)に前記一般式(1)で表される構造を有する化合物を混合してから、熱や光等で硬化した後に、使用できる。なお、本発明に係る樹脂前駆体とは、前記樹脂を構成する成分(モノマー、オリゴマー等)である。
【0090】
前記樹脂がレジストに含有して用いられる場合には、当該樹脂は分子内に光反応性官能基と熱硬化性官能基を有することが好ましい。
光反応性官能基としては(メタ)アクリロイル基、熱硬化性官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等のモノマーが挙げられる。
【0091】
分子内に分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を持ったモノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルージグリコールアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタロ酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-アクリロイロキシエチルー2-ヒドロキシエチルーフタル酸、グリシジルメタクリレート、ラクトン変性可撓性アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン等を挙げることができる。
【0092】
分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を持った多官能モノマーの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート類、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等を上げることができる。
【0093】
多官能の例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリアクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシアクリレート、ビスフェノールフルオレンジメタクリレート、又はこれらのシルセスキオキサン変性物等に代表される多官能アクリレート、又はこれらに対応するメタアクリレートモノマーが挙げられる。
【0094】
熱硬性官能基がヒドロキシ基の具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、市販品としてはライトエステルHO、ライトエステルHOP、ライトエステルHOA(以上、共栄社化学(株)製の商品名)等がある。
【0095】
熱硬性官能基がカルボキシ基の具体的な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ダイマー、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられ、市販品としてはライトエステルHO-MS、ライトエステルHO-HH(以上、共栄社化学(株)製の商品名)、アロニックスM-5400(東亞合成化学(株)製の商品名)等がある。
【0096】
熱硬性官能基がイソシアネート基の具体的な例としては、2-メタクリロイオキシエチルイソシアネート(例えば、昭和電工(株)製の商品名、MOI)等が挙げられる。
熱硬性官能基がエポキシ基の具体的な例としては、グリシジルメタクリレート、(メタ)アクリロイル基含有脂環式エポキシ樹脂等が挙げられ、市販品としてはサイクロマーM100、サイクロマーA200、サイクロマー2000(以上、ダイセル化学(株)製の商品名)等がある。
【0097】
熱硬性官能基がオキセタニル基の具体的な例としては、オキセタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、市販品としてはOXE-10、OXE-30(大阪有機化学(株)製の商品名)等がある。
【0098】
熱硬性官能基がメルカプト基の具体的な例としては、エチルチオアクリレート、エチルチオメタクリレート、ビフェニルチオアクリレート、ビフェニルチオメタクリレート、ニトロフェニルチオアクリレート、ニトロフェニルチオメタクリレート、トリフェニルメチルチオアクリレート、トリフェニルメチルチオメタクリレート、1,2 -ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]―3-メルカプトプロパンのトリスアクリレート、2-プロペン酸の2-(メルカプトメチル)-メチルエステル、メタクリル酸の2-[(2-メルカプトエチル)チオ]エチルエステル等が挙げられる。
【0099】
熱硬性官能基がメトキシメチル基の具体的な例としては、メトキシメチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、ジメトキシメチルアクリレート、ジメトキシメチルメタクリレート等が挙げられ、市販品としてはニカラックMX-302(アクリル変性アルキル化メラミン、三和ケミカル(株)製の商品名)等がある。
【0100】
熱硬性官能基がメトキシエチル基の具体的な例としては、1-メトキシエチルアクリレート、1-メトキシエチルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、1,1-メトキシエチルアクリレート、1 ,1-メトキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0101】
熱硬性官能基がエトキシエチル基の具体的な例としては、1-エトキシエチルアクリレート、1-エトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0102】
熱硬性官能基がエトキシメチル基の具体的な例としては、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルメタクリルアミド、エトキシメチルアクリレート、エトキシメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0103】
熱硬性官能基がオキサゾリン基の具体的な例としては、2-プロペン酸の2-メチル-2-{[3-(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾイル)ベンゾイル]アミノ}エチルエステル、2-プロペン酸の2-メチル-2-(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾイル)エチルエステル、2-プロペン酸の3-(4,5-ジヒドロ-4,4-ジメチル-2-オキサゾイル)プロピルエステル等が挙げられる。
【0104】
[電子デバイス]
(1)第1の実施形態
本発明の第1の実施形態に係る電子デバイスは、樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、前記樹脂層が、前記樹脂組成物を含有し、前記樹脂層と前記金属導電層とが隣接している。
【0105】
<金属導電層>
前記金属導電層に用いられる金属としては、例えば、金、銀、白金、亜鉛、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、銅、ニッケル、コバルト、鉄、スズ、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムなどの金属、又はこれらの合金を用いることができる。
また、金属化合物としては、金属酸化物を好ましく用いることができ、例えば、TiO2、ITO(インジウム・スズ酸化物)、ZnO、Nb2O5、ZnO/Sb2O5(アンチモン酸亜鉛)、ZrO2、CeO2、Ta2O5、Ti3O5、Ti4O7、Ti2O3、TiO、SnO2、La2Ti2O7、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、AZO(アルミニウム・亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム・亜鉛酸化物)、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ICO(インジウム・セリウム酸化物)、Bi2O3、a-GIO、Ga2O3、GeO2、SiO2、Al2O3、HfO2、SiO、MgO、Y2O3、WO3、a-GIO(ガリウム・インジウム酸化物)等が挙げられる。
【0106】
<樹脂層>
本発明に係る樹脂層は、前記した本発明の樹脂組成物を含有する。
前記樹脂組成物は、樹脂又は樹脂前駆体と、前記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有する。
前記樹脂は、特に限定しないが、前記したポリイミド樹脂、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することが機械特性及び電気特性の点で好ましい。また、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂のいずれかを含有することがより好ましい。特に、樹脂層が樹脂フィルムである場合には、前記樹脂がポリイミド樹脂を含有することが好ましく、樹脂層がレジストである場合には、前記樹脂がアクリル樹脂又はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。また、樹脂層がレジストである場合には、2種以上の樹脂前駆体を含有することや、前記樹脂層が、光又は熱重合開始剤を含み、それによる硬化物により形成された樹脂層であること、また、無機粒子を含有することが好ましい。前記2種以上の樹脂前駆体としては、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂の前駆体であることが好ましい。
【0107】
前記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物(含窒素芳香族複素環化合物)は、前記樹脂又は樹脂前駆体に対して、0.10~30質量%の範囲内で含有されることを特徴とし、1~10質量%の範囲内で含有されることが高温保存時の安定性及びフィルム作製が良好となる点で好ましい。
【0108】
前記樹脂層は、前記樹脂組成物の他、下記の添加物を含有することが好ましい。
なお、樹脂層が、樹脂フィルムである場合と、レジストである場合とで含有する添加物が異なるため、それぞれに分けて以下に説明する。
【0109】
(A)樹脂フィルム
樹脂層を樹脂フィルムとして用いる場合には、樹脂層は前記樹脂組成物の他、必要に応じてマット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、剥離促進剤等を含有することが好ましい。
(マット剤)
本発明に係る樹脂フィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることができる。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるため、好ましい。
【0110】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが耐光性を向上する観点から好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐光性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が、0.1~30%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1~20%の範囲、さらに好ましくは2~10%の範囲である。
【0111】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に電子デバイスなどが置かれた場合には、樹脂フィルムの劣化が起こる場合がある。
【0112】
酸化防止剤は、例えば、樹脂フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により樹脂フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、本発明に係る樹脂フィルム中に含有させる事ができる。
【0113】
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート等を挙げることができる。
【0114】
特に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
【0115】
(剥離促進剤)
樹脂フィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多く、好ましい剥離剤としてはリン酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸又はカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸又はスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。RZ-1 C8H17O-P(=O)-(OH)2
RZ-2 C12H25O-P(=O)-(OK)2
RZ-3 C12H25OCH2CH2O-P(=O)-(OK)2
RZ-4 C15H31(OCH2CH2)5O-P(=O)-(OK)2
RZ-5 {C12H25O(CH2CH2O)5}2-P(=O)-OH
RZ-6 {C18H35(OCH2CH2)8O}2-P(=O)-ONH4
RZ-7 (t-C4H9)3-C6H2-OCH2CH2O-P(=O)-(OK)2RZ-8 iso-C9H19-C6H4-O-(CH2CH2O)5-P(=O)-(OK)(OH)
RZ-9 C12H25SO3Na
RZ-10 C12H25OSO3Na
RZ-11 C17H33COOH
RZ-12 C17H33COOH・N(CH2CH2OH)3
RZ-13 iso-C8H17-C6H4-O-(CH2CH2O)3-(CH2)2SO3Na
RZ-14 (iso-C9H19)2-C6H3-O-(CH2CH2O)3-(CH2)4SO3Na
RZ-15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ-16 トリ-t-ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ-17 C17H33CON(CH3)CH2CH2SO3Na
RZ-18 C12H25-C6H4SO3・NH4
【0116】
(B)レジスト
樹脂層をレジストとして用いる場合には、樹脂層は、前記樹脂組成物の他、必要に応じて光重合開始剤又は熱硬化剤、着色剤、無機粒子(フィラー)、ゲル化剤等を含有することが好ましい。
【0117】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、光ラジカル開始剤及び光カチオン重合開始剤等が挙げられる。本発明では、光重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤が用いられる。光ラジカル重合開始剤は、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始する化合物であれば全て用いることができる。
【0118】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4 ,6-トリス-s-トリアジン、2,2,2-トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、が挙げられる。
光重合開始剤は、その一種を用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
(熱硬化剤)
熱硬化剤としては、有機酸、アミン化合物、アミド化合物、ヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、フェノール化合物、ユリア化合物、ポリスルフィド化合物及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤として、アミン-エポキシアダクトなどの変性ポリアミン化合物を用いてもよい、これら以外の熱硬化剤をもちいてもよい。
【0120】
(着色剤)
着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の顔料や染料などを挙げることができる。
このような着色剤は、単独又は二種類以上を混合して用いてもよい。
【0121】
(無機粒子)
無機粒子(フィラー)としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
また、樹脂組成物の厚み精度をより一層高め、さらに樹脂組成物にボイドをより一層生じ難くする観点からは、上記組成物におけるフィラーの含有量は少ないほどよい。
【0122】
(ゲル化剤)
ゲル化剤としては、ステアロン(18-ペンタトリアコンタノン)、16-ヘントリアコンタノン、12-トリコサノン、UNILIN425等の脂肪酸アルコール、脂肪酸エステル、ステアリン酸イヌリン・脂肪酸デキストリン(レオパールシリーズとして千葉製粉社より入手可能)、L-グルタミン酸誘導体(味の素ファインテクノ社より入手可能)、脂肪酸アミド(FATTY AMIDシリーズ、花王社より入手可能)、ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル(ノムコートHK-G、日清セイリオ社)、ホホバエステル(Floraester70、池田物産社より入手可能)等の分子量1000未満のような低分子な化合物が好ましく挙げられるが、この限りではない。
また、脂肪酸アミドであるゲル化剤の具体例には、FATTY AMID E:エルカ酸アミド、FATTY AMID T:オレイン酸アミド、FATTY AMID O-N:硬化牛脂酸アミド(以上、花王社より入手可能)、ニッカアマイドAP1:ステアリン酸アミド(日本化成社より入手可能)、GP-1:N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジブチルアミド(味の素ファインテクノ社より入手可能)等がある。
ゲル化能の観点から、特に好ましく用いられるゲル化剤には、下記一般式(I)及び(II)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
一般式(I):R1-CO-R2
一般式(II):R3-COO-R4
[式中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を持ち、かつ分岐を持ってもよいアルキル鎖を表す。]
前記一般式(I)で表される構造を有する化合物はケトンワックスと称され、前記一般式(II)で表される構造を有する化合物は脂肪酸エステルと称される。
ケトンワックスとしては、ジステアリルケトン、ジパルミチルケトン、ジラウリルケトンが、脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸セチル、ベヘニンン酸ベヘニル等が挙げられるがこの限りではない。
前記ゲル化剤をレジストに含有されることで、ゲル化剤によるゾル・ゲル層相転移により、樹脂組成物のピニング性を高めることができる。
【0123】
(他の成分)
レジストは、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、顔料分散剤、カップリング剤等の接着助剤、レベリング剤、消泡剤、及び重合禁止剤等が挙げられる。
【0124】
<樹脂フィルムの製造方法>
本発明に係る樹脂層として用いられる樹脂フィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0125】
以下、本発明に係る樹脂フィルムの製造方法として、ポリイミドフィルムの製造方法について、溶液流延製膜法を例に挙げて説明するが、アクリルフィルム等のその他の樹脂フィルムも同様の方法で製造することができる。
【0126】
前記ポリイミドフィルムの製造方法としては、上述のポリイミドを、溶媒に溶解してドープを調製する工程(ドープ調製工程)、前記ドープを支持体上に流延して流延膜を形成する工程(流延工程)、支持体上で流延膜から溶媒を蒸発させる工程(溶媒蒸発工程)、流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、得られたフィルムを乾燥させる工程(第1乾燥工程)、フィルムを延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムをさらに乾燥させる工程(第2乾燥工程)、得られたポリイミドフィルムを巻き取る工程(巻取り工程)等を有することが好ましい。
【0127】
<レジストの製造方法>
本発明に係る樹脂層として用いられるレジストの製造方法としては、レジスト組成物の塗膜を基板上に形成する工程、塗膜を露光しパターニング形成する工程、露光した塗膜を機アルカリ水溶液にて現像する工程、現像した塗膜に含まれる酸基に結び付いたアルカリ性イオン基を洗浄液にて水素イオン基に置換する工程、塗膜を熱硬化する工程等を有することが好ましい。
又はインクジェット装置を用いて上述したレジスト組成物をパターン状に描画する工程とパターン状に描画された前記レジスト組成物に光を照射及び熱を付与し、硬化させてレジストパターンを形成する工程等を有することが好ましい。
【0128】
以上のようにして製造された樹脂フィルム又はレジストに、前記金属導電層を形成する。
前記金属導電層は、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)等の真空成膜法により形成することができ、中でも、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法等の物理気相成長法が好ましい。
また、金属導電層は、金属導電層形成用組成物を塗工したり、金属導電層が金属メッシュの場合には、樹脂フィルム又はレジスト上に、金属細線を格子状のパターンとすることにより形成することができる。さらに、金属導電層は接着剤を介して圧着することもできる。
【0129】
(2)第2の実施形態
本発明の第2の実施形態に係る電子デバイスは、樹脂層と、金属導電層とを有する電子デバイスであって、前記樹脂層と前記金属導電層の間に、前記一般式(1)、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有する中間層を有する。すなわち、前記第1の実施形態に係る電子デバイスは、樹脂層と金属導電層とが隣接した層構成であり、かつ、樹脂層が、樹脂又は樹脂前駆体と、前記一般式(1)、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される構造を有する化合物とを含有していたが、第2の実施形態に係る電子デバイスは、樹脂又は樹脂前駆体を含有する樹脂層と、金属導電層との間に、前記一般式(1)、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される構造を有する化合物を含有する中間層が設けられた層構成となっている。
【0130】
<金属導電層>
第2の実施形態に係る電子デバイスの金属導電層は、前記第1の実施形態に係る電子デバイスの金属導電層と同様の層である。
【0131】
<樹脂層>
第2の実施形態に係る電子デバイスの樹脂層は、樹脂又は樹脂前駆体を含有し、前記一般式(1)、一般式(6)又は一般式(7)で表される構造を有する化合物(含窒素芳香族複素環化合物)を含有しない。
また、前記樹脂層は、前記含窒素芳香族複素環化合物の他、前記した第1の実施形態に係る電子デバイスの樹脂層で用いた添加物を含有してもよい。
【0132】
<中間層>
前記中間層は、前記一般式(1)、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される構造を有する化合物(含窒素芳香族複素環化合物)を含有する層であり、前記樹脂層に含有される前記樹脂又は樹脂前駆体を含有しない。
また、前記中間層は、前記含窒素芳香族複素環化合物以外に他の有機低分子化合物(UV吸収剤、酸化防止剤等)を含有してもよい。前記含窒素芳香族複素環化合物は、中間層において主成分として含有することが好ましく、中間層全体に対して、60~100質量%の範囲内で含有することが好ましい。
なお、前記一般式(1)、前記一般式(6)又は前記一般式(7)で表される構造は、前記した構造と同様であり、各例示化合物も同様である。
【0133】
[用途]
本発明の電子デバイスとしては、例えば、有機ELデバイス、液晶表示デバイス(LCD)、有機光電変換デバイス、プリント基板、薄膜トランジスタ、タッチパネル、偏光板、位相差フィルム等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、フレキシブルプリント基板、LED照明装置及びフレキシブルディスプレイ用前面部材に好ましく用いられる。
【0134】
<フレキシブルプリント基板>
前記フレキシブルプリント基板は、本発明の樹脂組成物を含有する樹脂フィルムに、接着剤を介して金属導電層を圧着することによって得られる。ここで用いられる接着剤としては、例えば、アクリル系、ポリイミド系及びエポキシ系接着剤等が挙げられる。
【0135】
また、接着剤を介して樹脂フィルムと熱圧着される金属導電層は、コスト低減の観点から銅箔であることが好ましいが、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ等、他の金属箔でも良い。
【0136】
<LED照明装置>
前記LED照明装置としては、本発明の樹脂組成物を含有する樹脂フィルムを用いたLED用基板を用いていれば、特に制限されるものではなく、例えば、両面基板やアルミ板との複合基板が挙げられる。LEDの高輝度化に伴い、より放熱性が要求される場合には、アルミ板と複合化することにより放熱性を向上させることが可能である。有機材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス照明装置に適用することもできる。
【0137】
<フレキシブルディスプレイ用前面部材>
前記フレキシブルディスプレイ用前面部材は、本発明の樹脂組成物を含有する樹脂フィルムを用いてなるものであれば、特に制限されるものではない。前記フレキシブルディスプレイ用前面部材が搭載されるフレキシブルディスプレイとしては、例えば、基板上に発光層等の有機機能層が積層されてなる有機ELデバイス、ガスバリアーフィルム、フィルムカラーフィルター、片面又は両面に偏光板保護フィルムを備える偏光板、フィルム型タッチセンサー等がこの順に積層されて構成される。前記フレキシブルディスプレイ用前面部材は、例えば、上記のように構成されるフレキシブルディスプレイのフィルム型タッチセンサー上に積層される。
【0138】
なお、本発明の樹脂組成物を含有する樹脂フィルムは、上記フレキシブルディスプレイを構成する有機ELデバイスの基板に用いられても良いし、上記フレキシブルディスプレイを構成する偏光板の偏光板保護フィルムに用いられても良い。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0140】
[実施例1]
実施例に用いるポリイミドを以下の手順で準備した。
<ポリイミドAの合成>
ステンレススチール製錨型撹拌機、窒素導入管、ディーン・スターク装置を取り付けた500mLのセパラブル4つ口フラスコに4,4′-オキシジフタル酸無水物(ODPA)56.11g(0.18モル)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)32.09g(0.18モル)、ガンマブチロラクトン(GBL)326.87g、ピリジン2.85g、トルエン33gを仕込み、反応系内を窒素置換した。窒素気流下80℃にて30分間撹拌することによりODPAを溶解させ、その後180℃まで昇温して6時間加熱撹拌を行った。
反応中に生成する水はトルエン、ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応終了後、室温まで冷却し、20質量%濃度のポリイミド溶液を得た。得られたポリイミドの構造は、下記の式のとおりである。
このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドAの固体を得た。
【0141】
【化35】
[式中、R
1~R
3のうち一つがメチル基、二つがエチル基を表す。]
【0142】
<ポリイミドBの合成>
前記ポリイミドAの合成で使用した装置と同様の装置に、ODPA46.80g(0.15モル)、4,4′-ジアミノ-3,3′,5,5′-テトラメチルジフェニルメタン38.16g(0.15モル)、GBL147.67g、ピリジン2.39g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換した。窒素気流下80℃にて30分間撹拌することによりODPAを溶解させ、その後180℃まで昇温して7時間加熱撹拌行った。
反応中に生成する水はトルエン、ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応終了後、120℃まで冷却したところでGBL100gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド溶液を得た。得られたポリイミドの構造は、下記の式のとおりである。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドBの固体を得た。
【0143】
【化36】
[式中、nは繰り返し単位の数を表す。]
【0144】
<ポリイミドCの合成>
5-ノルボルネン-2-スピロ-2′-シクロペンタノン-5′-スピロ-2′′-5′′-ノルボルネンを用い、1994年に発行されたMacromolecules(27巻)の1117頁に記載の方法にしたがって、テトラカルボン酸二無水物を製造した。このようにしてテトラカルボン酸二無水物を製造した結果、全収率88%で、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α′-スピロ-2′′-ノルボルナン-5,5′′,6,6′′-テトラカルボン酸二無水物を得た。
次に、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱乾燥させた。そして、十分に乾燥させた前記三口フラスコに、まず、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル(固体)を0.200g(1.00mmol)入れた後、ジメチルアセトアミドを2.7g添加し、撹拌することにより、前記固体を溶解させて溶解液を得た。
次いで、前記溶解液に、前述のようにして得られたノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α′-スピロ-2′′-ノルボルナン-5,5′′,6,6′′-テトラカルボン酸二無水物を0.384g(1.00mmol)を添加し、前記三口フラスコ内の雰囲気を窒素雰囲気とした後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間撹拌し、下記構造のポリイミドを含有する反応液を得た。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドCの固体を得た。
【0145】
【0146】
<ポリイミドDの合成>
5-ノルボルネン-2-スピロ-2′-シクロヘキサノン-6′-スピロ-2′′-5′′-ノルボルネンを用い、1994年発行のMacromolecules(27巻)の1117頁に記載の方法にしたがって、テトラカルボン酸二無水物を製造した。このようにしてテトラカルボン酸二無水物を製造した結果、全収率87%で、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α′-スピロ-2′′-ノルボルナン-5,5′′,6,6′′-テトラカルボン酸二無水物を得た。
次に、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱乾燥させた。そして、十分に乾燥させた前記三口フラスコに、まず、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル(固体)を0.200g(1.00mmol)入れた後、ジメチルアセトアミドを2.7g添加し、撹拌することにより、前記固体を溶解させて溶解液を得た。
次いで、前記溶解液に、前述のようにして得られたノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α′-スピロ-2′′-ノルボルナン-5,5′′,6,6′′-テトラカルボン酸二無水物を0.398g(1.00mmol)を添加し、前記三口フラスコ内の雰囲気を窒素雰囲気とした後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間撹拌し、下記構造のポリイミドを含有する反応液を得た。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドDの固体を得た。
【0147】
【0148】
<ポリイミドEの合成>
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean-Stark凝集器、撹拌機を備えた4口フラスコに、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(下記酸無水物1)(ダイキン工業社製)25.59g(57.6mmol)をN,N-ジメチルアセトアミド(134g)に加え、窒素気流下、室温で撹拌した。
それに4,4′-ジアミノ-2,2′-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(下記ジアミン1)(ダイキン工業社製)19.2g(60mmol)を加え、80℃で6時間加熱撹拌した。
その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンとともに共沸留去した。6時間加熱、還流、撹拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、さらにトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥し、ポリイミドEの固体を得た。
【0149】
<ポリイミドFの合成>
(ポリイミド前駆体の重合)
反応容器としてステンレス製セパラブルフラスコを備え、該セパラブルフラスコ内の撹拌装置として2枚のパドル翼を備え、冷却装置を備えた反応装置を用いてポリアミド酸を製造した。重合反応中は水分の混入を防ぐために塩化カルシウム管を通過させて脱水を行った窒素ガスを0.05L/minで流して重合反応を行った。
上記セパラブルフラスコに、重合溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)223.5gを仕込み、これに、ジアミンとして下記例示化合物であるジアミン2を40.0g(0.125モル)溶解する。この溶液に、酸無水物として例示化合物である酸無水物2を55.5g(0.125モル)添加・撹拌して完全に溶解させた。この反応溶液におけるジアミン2と酸無水物2の仕込み濃度は、全反応液に対して30質量%となっている。
【0150】
(ポリイミドへの化学イミド化)
上記溶液にDMACを加え固形分濃度を15質量%とし、イミド化促進剤としてピリジン(pkBH+;5.17)を60g(イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比=3)添加して、完全に分散させる。分散させた溶液中に無水酢酸を1分間に1gの速度で30.6g(脱水剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比=1.2)を添加してさらに30分間撹拌した。撹拌後に内部温度を50℃に上昇させて5時間過熱撹拌を行った。
【0151】
(ポリイミドの抽出)
得られた溶液をメタノールに加え、目的ポリイミド粉末を沈殿させた。得られた白色沈殿をメタノールで十分洗浄後、乾燥装置を用い50℃に加熱乾燥して、ポリイミドFとして取り出した。ポリイミドFは、重量平均分子量:203000、イミド化率:100%であった。
【0152】
<ポリイミドGの合成>
ポリイミドFの合成において、下記ジアミン3及び酸無水物3を用いた以外は同様にして、ポリイミドGを合成した。
【0153】
<ポリイミドHの合成>
ポリイミドFの合成において、下記ジアミン4及び酸無水物4を用いた以外は同様にして、ポリイミドHを合成した。
【0154】
【0155】
<ポリイミドフィルム101の作製>
(ドープの調製)
下記組成の主ドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したポリイミドAを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、残りの成分を添加し、撹拌して溶解させて、主ドープを調製した。
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 100質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
【0156】
(流延工程)
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度30℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0157】
(剥離工程)
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力180N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0158】
(延伸工程)
剥離したポリイミドフィルムを、200℃の熱をかけながらクリップ式テンターを用いて幅方向に1.50倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は20質量%であった。
【0159】
(乾燥工程)
延伸したフィルムを、搬送張力100N/m、乾燥時間15分間として、残留溶媒量が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、乾燥膜厚50μmのポリイミドフィルム101を得た。
【0160】
(電極作製工程)
乾燥したポリイミドフィルム101を50mm×50mmに切り取り、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼに、銀を作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはタンタル製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10-4Paまで減圧した後、銀の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚8nmの電極を形成し、ポリイミド電極101とした。
【0161】
<ポリイミドフィルム103の作製>
上記ポリイミド電極101の作製において、比較化合物であるCDBPをさらに用いて、下記主ドープを調製した以外は同様にして、ポリイミドフィルム103及びその電極103を作製した。
【0162】
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 90質量部
比較化合物(CDBP) 10質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
【0163】
【0164】
<ポリイミドフィルム107の作製>
上記ポリイミドフィルム101の作製において、本発明に係る化合物(2)をさらに用いて、下記主ドープを調製した以外は同様にして、ポリイミドフィルム107を作製した。また、電極101の作成については、膜厚を10nmとした以外は同様にして電極107を作製した。
【0165】
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 90質量部
化合物(2) 10質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
【0166】
<ポリイミドフィルム102、104~106及び108~211の作製>
上記ポリイミドフィルム107の作製において、ポリイミドの種類及び添加化合物(化合物(2)、化合物(12)、化合物(18)、化合物(30)、化合物(32)、化合物(47)、化合物(6-5)、化合物(6-6)、化合物(6-9)、化合物(6-18)、化合物(6-21)~化合物(6-32)、化合物(7-1)、化合物(7-5)、化合物(7-12)、化合物(7-13)、化合物(7-32)及び化合物(7-34)~化合物(7-47))とこれらの添加量、電極の膜厚を下記表I及び表IIに示したように変更した以外は同様にして、ポリイミドフィルム102、104~106、108~211及びその電極を作製した。なお、上記添加化合物は、用いるポリイミドとの合計量をいずれも100質量部とし、表中の添加量は質量部を表す。
また、比較例であるポリイミドフィルム102、146、147、158、169、180、197、202及び207は、ポリイミドフィルム101の作製と同様にポリイミドB~Hを単独で用いたポリイミドフィルムである。
【0167】
[評価]
<光透過率(%)>
作製した各ポリイミド電極について、550nmの波長の光透過率を測定した。
光透過率の測定は、分光光度計(日立ハイテクサイエンス製U-3300)を用いて、基材のない状態をベースラインとして行った。
【0168】
<シート抵抗値>
作製した各ポリイミド電極について、シート抵抗値[Ω/sq.]を測定した。
シート抵抗値の測定は、抵抗率計(三菱化学アナリテック製MCP-T610)を用いて、4端子4探針法低電流印加方式で行った。
【0169】
<高温保存下でのシート抵抗値変化>
上記作製したポリイミド電極を、温度80℃で、10時間後のシート抵抗値を測定した。
得られた高温保存後と前記で測定したシート抵抗値を比較して、抵抗値変化率を下記評価基準に基づいて評価した。下記評価の3、4及び5を実用上問題ないレベルとした。
5:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%未満の値を示す。
4:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%以上7.5%未満の値を示す。
3:高温保存後のシート抵抗値の変化率が7.5%以上10.0%未満の値を示す。
2:高温保存後のシート抵抗値の変化率が10.0%以上の値を示す。
1:高温保存後のシート抵抗値が測定できない。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いたポリイミドフィルムは、比較例のポリイミドフィルムに比べて、光透過率、シート抵抗値及び高温保存下でのシート抵抗値変化の点で優れていることが分かる。
【0174】
[実施例2]
実施例に用いるアクリル樹脂を準備し、アクリルフィルムを以下の方法で形成した以外は実施例1と同様にしてアクリルフィルムとその電極を作製及び評価を行った。
【0175】
<アクリルフィルム201の作製>
(主ドープの組成)
アクリル系樹脂(ヒタロイド7927、日立化成(株)製) 90質量部
上記組成の主ドープを調製した後、塗布液をガラス基材上に塗布して塗布膜を形成し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気に窒素パージしながら、紫外線ランプを用い、照射部の照度が300mW/cm2、照射量を0.3J/cm2として塗布膜を硬化させ、アクリルフィルム201を得た。
【0176】
(電極作製工程)
乾燥したアクリルフィルム201を50mm×50mmに切り取り、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼに、銀を作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはタンタル製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10-4Paまで減圧した後、銀の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚8nmの電極を形成し、電極201とした。
【0177】
<アクリルフィルム202の作製>
上記アクリルフィルム201の作製において、下記主ドープを調製した以外は同様にして、アクリルフィルム202及びその電極を作製した。
(主ドープの組成)
アクリル系樹脂(ヒタロイド7927、日立化成(株)製) 90質量部
化合物(2) 10質量部
【0178】
<アクリルフィルム203~207、222及び223の作製>
上記アクリルフィルム202の作製において、化合物(2)を下記化合物にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、アクリルフィルム203~207、222、223及びその電極を作製した。
アクリルフィルム203 …化合物(12)
アクリルフィルム204 …化合物(18)
アクリルフィルム205 …化合物(30)
アクリルフィルム206 …化合物(32)
アクリルフィルム207 …化合物(47)
アクリルフィルム222 …化合物(6-9)
アクリルフィルム223 …化合物(7-13)
【0179】
<アクリルフィルム208の作製>
上記アクリル電極201の作製において、アクリルフィルムを以下の方法で形成した以外は同様にして、アクリルフィルム208及びその電極を作製した。
(主ドープの組成)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 80質量部
スチレンアクリル樹脂(YL-1098、星光(株)製) 90質量部
上記組成の主ドープを調製した後、塗布液をガラス基材上に塗布して塗布膜を形成し、乾燥させ、アクリルフィルム208を得た。
【0180】
<アクリルフィルム209の作製>
上記アクリル電極208の作製において、下記主ドープを調製した以外は同様にして、アクリルフィルム209及びその電極を作製した。
(主ドープの組成)
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート 80質量部
スチレンアクリル樹脂(YL-1098、星光PMC(株)製)
90質量部
化合物(2) 10質量部
【0181】
<アクリルフィルム210~214、224、225の作製>
上記アクリルフィルム209の作製において、化合物(2)を下記化合物にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、アクリルフィルム210~214、224、225及びその電極を作製した。
アクリルフィルム210 …化合物(12)
アクリルフィルム211 …化合物(18)
アクリルフィルム212 …化合物(30)
アクリルフィルム213 …化合物(32)
アクリルフィルム214 …化合物(47)
アクリルフィルム224 …化合物(6-9)
アクリルフィルム225 …化合物(7-13)
【0182】
<アクリルフィルム215の作製>
上記アクリル電極201の作製において、アクリルフィルムを以下の方法で形成した以外は同様にして、アクリルフィルム215及びその電極を作製した。
(主ドープの組成)
メチルエチルケトン 150質量部
アクリル系樹脂(ヒタロイド 7975、日立化成(株)製)
90質量部
上記組成の主ドープを調製した後、塗布液をガラス基材上に塗布して塗布膜を形成し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気に窒素パージしながら、紫外線ランプを用い、照射部の照度が300mW/cm2、照射量を0.3J/cm2として塗布膜を硬化させ、アクリルフィルム215を得た。
【0183】
<アクリルフィルム216の作製>
上記アクリル電極215の作製において、下記主ドープを調製した以外は同様にして、アクリルフィルム216及びその電極を作製した。
(主ドープの組成)
メチルエチルケトン 150質量部
アクリル系樹脂(ヒタロイド 7975、日立化成(株)製)
90質量部
化合物(2) 10質量部
【0184】
<アクリルフィルム217~221、226及び227の作製>
上記アクリルフィルム216の作製において、化合物(2)を下記化合物にそれぞれ置き換えた以外は同様にして、アクリルフィルム217~221、226、227及びその電極を作製した。
アクリルフィルム217 …化合物(12)
アクリルフィルム218 …化合物(18)
アクリルフィルム219 …化合物(30)
アクリルフィルム220 …化合物(32)
アクリルフィルム221 …化合物(47)
アクリルフィルム226 …化合物(6-9)
アクリルフィルム227 …化合物(7-13)
【0185】
上記作製したアクリルフィルム電極を、作製初期のシート抵抗と、温度80℃で、10時間後のシート抵抗値を測定した。得られた高温保存前と後のシート抵抗値を比較して、抵抗値変化率を評価したところ、本発明のアクリルフィルム202~207、209~214及び216~221、222~227を用いた電極は変化率が7%以内と保存安定性に優れていたが、比較例201、208及び215は抵抗値変化率の変動が10%以上の発生が見られた。
【0186】
[実施例3]
実施例1で作製したポリイミドフィルムを用いて、下記構成により、ポリイミド電極を得た。
【0187】
<ポリイミド電極301の作製>
(電極作製工程)
乾燥したポリイミドフィルム101を50mm×50mmに切り取り、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼに、銀を作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはタンタル製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10-4Paまで減圧した後、銀の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚50nmの電極を形成し、ポリイミド電極301とした。
【0188】
<ポリイミド電極302~324の作製>
上記ポリイミド電極301の作製において、基板とするポリイミドフィルムを下記表IIIに示したように変更した以外は同様にして、ポリイミド電極302~324を作製した
。
【0189】
<ポリイミド電極325~378の作製>
上記ポリイミド電極301の作製において、下記表IVに示したように電極を銅又はチタンに変更し、かつ、基板とするポリイミドフィルムを変更した以外は同様にして、ポリイミド電極325~378を作製した。
【0190】
[評価]
<高温保存下でのシート抵抗値変化>
上記作製したポリイミド電極301~378を、成膜初期のシート抵抗値と温度80℃で、10時間後のシート抵抗値を測定した。
得られた高温保存後と成膜初期のシート抵抗を比較して、抵抗値変化率を下記評価基準に基づいて評価した。下記評価の3、4及び5を実用上問題ないレベルとした。
5:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%未満の値を示す
4:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%以上7.5%未満の値を示す
3:高温保存後のシート抵抗値の変化率が7.5%以上10.0%未満の値を示す
2:高温保存後のシート抵抗値の変化率が10.0%以上の値を示す
1:高温保存後のシート抵抗値が測定できない
【0191】
<密着性>
得られたポリイミド電極301~378を用いて、テープ剥離試験を行った。テープ剥離試験はJIS K5600に準拠して実施した。
基材に達するが切断しない程度の深さで、カッターナイフを使用して幅1mm 間隔で縦方向に6本、横方向に6本の切れ目を入れことで、5マス×5マスの計25個のマス目を形成した。このマス目部分に市販セロハンテープ(24mm幅、ニチバン社製)を指の腹で強く圧着させ、テープの端を60°の角度で一気に引き剥がし、残存したマス目の状態を下記評価基準に基づいて評価した。
◎:変化がない。(良好)
○:マス全体は剥離しないが、マスの一部が剥離する。(実用上問題ない)
△:1~5個のマスが剥離する。(実用不可)
×:6個以上のマスが剥離する。(実用不可)
【0192】
【0193】
【0194】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いたポリイミド電極は、比較例のポリイミド電極に比べて、高温保存下でのシート抵抗値変化の点で優れていることが分かる。
【0195】
[実施例4]
実施例1で使用したポリイミドフィルムの場合と同じ組成のドープを用いて、下記構成により、ポリイミド電極を得た。
<金属膜の作製>
150mm×150mm、厚さ0.7mmのガラス基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼに、銀を作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはタンタル製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10-4Paまで減圧した後、銀の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚50nmの電極を形成した。
【0196】
<ポリイミド電極401の作製>
上記作製した銀膜付きガラス基板上に実施例1で使用したポリイミドフィルム101の場合と同じ組成のドープを用いてポリイミド電極401を作製した。
ガラス基板とその周囲が同じ高さとなるよう台座を組んだのち、ポリイミドフィルム101の主ドープ組成と市販のフィルムアプリケーターを用いて銀膜付きガラス基板上に塗布し、乾燥、硬化工程を経てポリイミド電極401を作製した。
【0197】
<ポリイミド電極402~415の作製>
上記ポリイミド電極401の作製において、基板とするポリイミドフィルムを下記表Vに示したように変更した以外は同様にして、ポリイミド電極402~415を作製した。
【0198】
[評価]
<高温保存下でのシート抵抗値変化>
上記作製したポリイミド電極401~415を、成膜初期のシート抵抗値と温度80℃で、10時間後のシート抵抗値を測定した。
シート抵抗値の測定は、抵抗測定器(ナプソン(株)製 EC-80)を用いて、渦電流方式で行った。
得られた高温保存後と成膜初期のシート抵抗を比較して、抵抗値変化率を下記評価基準に基づいて評価した。下記評価の3、4及び5を実用上問題ないレベルとした。
5:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%未満の値を示す。
4:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%以上7.5%未満の値を示す。
3:高温保存後のシート抵抗値の変化率が7.5%以上10.0%未満の値を示す。
2:高温保存後のシート抵抗値の変化率が10.0%以上の値を示す。
1:高温保存後のシート抵抗値が測定できない。
【0199】
【0200】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いたポリイミド電極は、比較例のポリイミド電極に比べて、高温保存下でのシート抵抗値変化の点で優れていることが分かる。
【0201】
[実施例5]
実施例1で作製したポリイミドフィルム101~211を用いて、下記構成により、有機EL素子を作製した。
【0202】
<有機EL素子の作製>
実施例1で作製したポリイミドフィルム101~107及び109~211を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、基板として用いる。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製又はタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10-4Paまで減圧した後、Agの入った蒸着用坩堝に通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒でポリイミドフィルム基板上に蒸着し、層厚100nmの陽極を形成した。
さらに、HAT-CN(1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)を蒸着速度0.1nm/秒でAg電極上に蒸着し、層厚10nmの正孔注入層を形成した。
次いで、α-NPD(4,4′-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル)を蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔注入層上に蒸着し、層厚40nmの正孔輸送層を形成した。
ホスト化合物として下記CBP、発光ドーパントとして下記Ir(ppy)3を、それぞれ90%、10%の体積%になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚30nmの発光層を形成した。
次いで、Alq3(トリス(8-キノリノール)アルミニウム)及びLiFを蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層上に蒸着し、それぞれ膜厚40nmの電子輸送層を形成した。
さらに、LiQ(リチウム8-ヒドロキシキノレート)を膜厚2nmで形成した後に、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成した。次に、この陰極上にCVD法によって窒化ケイ素を200nm成膜することで、絶縁膜とし、有機EL素子ユニットを作製した。
次に、ガラスバリアーフィルムとして、厚さ20μmのガスバリアー層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このガスバリアーフィルムの片面に、封止層として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで付与した封止ユニットを作製した。
次に、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、透明基板~絶縁層まで形成した有機EL素子ユニットと封止ユニットに押圧をかけて5分間保持した。続いて積層体を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させて、有機EL素子を作製した。
【0203】
【0204】
上記作製した有機EL素子に6Vの直流電圧を引火した際の正面輝度は1200cd/m2であった。正面輝度の測定は、コニカミノルタ社製分光放射輝度計CS-1000を用いて、2°視野角正面輝度を、発光面からの法線に分光放射輝度計に光軸が一致するようにして、可視光波長430~480nmの輝度を測定し、積分強度をとった。
【0205】
さらに、上記作製した有機EL素子を、温度80℃で、2.5mA/cm2の定電流条件下で発光させ、発光開始直後の駆動電圧と、開始100時間後の駆動電圧を測定した。
得られた高温保存前と後の駆動電圧を比較して、駆動電圧変化率を評価したところ、本発明のポリイミドフィルム105~107、109~145、148~157、159~168、170~179、181~186、188~191、193~196、198~201、203~206、及び208~211を用いた素子は、駆動電圧の変化率が5%以内と保存安定性に優れていたが、比較例101~104、146、147、158、169、180、197、202、及び207は駆動電圧変化率が10%以上の発生が見られた。
【0206】
[実施例6]
実施例に用いる各樹脂を準備し、各樹脂フィルムを以下の方法で形成した以外は実施例1と同様にして表VI記載の各樹脂フィルムとその電極を作製し、その評価を行った。
【0207】
<TACフィルム601の作製>
TACフィルム601の作製において、下記主ドープを調製した以外は実施例1と同様にして、TACフィルム601及びその電極601を作製した。
【0208】
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
トリアセチルセルロース(TAC) 100質量部
【0209】
<ポリイミド電極601の作製>
(電極作製工程)
乾燥したTACフィルム601を50mm×50mmに切り取り、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼに、銀を作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはタンタル製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10-4Paまで減圧した後、銀の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚50nmの電極を形成し、電極601とした。
【0210】
<TACフィルム602の作製>
上記アクリルフィル601の作製において、下記主ドープを調製した以外は同様にして、TACフィルム602及びその電極を作製した。
【0211】
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
トリアセチルセルロース(TAC) 90質量部
化合物(30) 10質量部
【0212】
<各樹脂フィルム603~632の作製>
上記TACフィルム602の作製において、表VI記載の主ドープを調製した以外は同様にして、各樹脂フィルム603~632及びその電極を作製した。
(樹脂)
・ポリカーボネート樹脂(PC)
・シクロオレフィン樹脂(ゼオノア)
・ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)
・メラミン樹脂
【0213】
[評価]
<高温保存下でのシート抵抗値変化>
上記作製した樹脂電極601~632を、成膜初期のシート抵抗値と温度80℃で、10時間後のシート抵抗値を測定した。
得られた高温保存後と成膜初期のシート抵抗を比較して、抵抗値変化率を下記評価基準に基づいて評価した。下記評価の3、4及び5を実用上問題ないレベルとした。
5:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%未満の値を示す
4:高温保存後のシート抵抗値の変化率が5.0%以上7.5%未満の値を示す
3:高温保存後のシート抵抗値の変化率が7.5%以上10.0%未満の値を示す
2:高温保存後のシート抵抗値の変化率が10.0%以上の値を示す
1:高温保存後のシート抵抗値が測定できない。
【0214】
【0215】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いた電極は、比較例の電極に比べて、高温保存下でのシート抵抗値変化の点で優れていることが分かる。
【0216】
[実施例7]
銅張積層板(サンハヤト製)(以下、銅基材ともいう。)を剥離液による表面処理を実施した後、以下の手順で積層体を得た。
【0217】
<積層体701の作製>
(主ドープの組成)
ジクロロメタン 350質量部
前記ポリイミドA 100質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
上記組成の主ドープを調整した後、塗布液を表面処理済みの銅基材上に塗布して塗布膜を形成し、残留溶媒が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、乾燥膜厚20μmの積層体701を得た。
【0218】
<積層体727の作製>
(主ドープの組成)
アクリル系樹脂(ヒタロイド7927) 90質量部
上記組成の主ドープを調整した後、塗布液を表面処理済みの銅基材上に塗布して塗布膜を形成し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気に窒素パージしながら、紫外線ラングを用い、照射部の照度が300mW/cm2、照射量を0.3J/cm2として塗布膜を硬化させ、乾燥膜厚20μmの積層体727を得た。
【0219】
<積層体754の作製>
(主ドープの組成)
メチルエチルケトン 350質量部
エポキシ樹脂(HP-5000、DIC社製) 50質量部
フェノール硬化剤(MEH-7851-3H、明和化成社製)
48質量部
環状シロキサン化合物
(1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、アズマックス社製)
2質量部
上記組成の主ドープを調整した後、塗布液を表面処理済みの銅基材上に塗布して塗布膜を形成し、150℃で乾燥後、乾燥膜厚20μmの積層体754を得た。
【0220】
<積層体702~706、728~753及び755~780の作製>
樹脂及び添加化合物の配合量を下記表VIIに示したように変更した以外は同様にして、積層体702~706、728~753及び755~780を作製した。なお、添加化合物は用いる主ドープ中の固形分量を100質量部とし、表中の添加量は質量部を表す。
なお、表中に示す各樹脂は以下のとおりである。
ポリイミド:ポリイミドA
アクリル:ヒタロイド7927
エポキシ:エポキシ樹脂(25)HP-5000:メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、DIC社製、エポキシ当量250
【0221】
[評価]
<高温保存下での剥離強度>
作製した各積層体について、成膜初期の剥離強度と温度80℃で、168時間の剥離強度を測定した。
剥離強度の測定は、SAICAS(ダイプラ・ウィンテス製、NN-04T)を用いて定荷重モードで行った。
比較例である積層体701、727、754をそれぞれ100%とし、実施例と各比較例の計測値を比較して評価した。
【0222】
【0223】
【0224】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いた積層体は、比較例の積層体に比べて、高温保存後の密着性の点で優れていることが分かる。
【0225】
[実施例8]
市販品であるソルダーレジスト液(以下、SRともいう。)を、下記表VIIIに示す樹脂及び添加化合物の組み合わせ(SR組成)で調製し、くし型パターン(ライン幅/スペース幅:75/75μm)に塗布、硬化工程を経て、厚さ30μmの硬化物801~860を得た。硬化工程は各SRの技術資料に準拠した。
SR1…SR-4000 HT-1/CA-40 HT-1
(太陽インキ製造株式会社製)
上記SR1はアクリル樹脂及びエポキシ樹脂等を含有する。
SR2…PSR-4000 LEW3/CA-40 LEW3
(太陽インキ製造株式会社製)
上記SR2はアクリル樹脂及びエポキシ樹脂等を含有する。
SR3…PLAS FINE PSR-310
(互応化学工業株式会社製)(紫外線硬化型ソルダーレジスト)
【0226】
[評価]
<表面硬化性>(UV硬化性)
前記で得られた硬化物の表面を指で触れて、タック(べたつき)を評価した。
〇:べとつきなし
△:わずかにべとつき、指紋が残る
×:べとつく
【0227】
<鉛筆硬度>
前記で得られた硬化物を25℃・60%RHの環境下に24時間放置した後、JIS-K-5400に準じて表面の鉛筆硬度を測定し、下記ランクで評価した。
〇:鉛筆硬度2H以上
△:鉛筆硬度B,F,H
×:鉛筆硬度2B以下
【0228】
<保存安定性>
硬化前の各SRを調整してから1時間毎に、室温での粘度を動的粘弾性測定装置により測定した。粘度が初期値の2倍に達するまでの時間を計測し、可使時間とした。可使時間が2時間を超えている場合を「〇」と判定し、2時間以内の場合を「×」と判定した。
【0229】
<ソルダーレジストの絶縁性の確認>
硬化物801~860の初期の絶縁抵抗を測定したのち、85℃及び相対温度85%及び直流75Vを印加した条件で、1500時間の加湿試験を行った。加湿試験後に再度絶縁抵抗を測定し、下記ランクでソルダーレジストの絶縁性を評価した。
〇:絶縁抵抗変化が初期に対し1×102Ω未満
×:絶縁抵抗変化が初期に対し1×102Ω以上
【0230】
【0231】
【0232】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いた硬化物は、比較例の硬化物に比べて、レジスト特性を損なうことなくソルダーレジストの絶縁性の点で優れていることが分かる。
【0233】
[実施例9]
銅張積層板(サンハヤト製)(以下、銅基材ともいう。)を剥離液による表面処理を実施した後、以下の手順で積層体を得た。
【0234】
<積層体901の作製>
(樹脂層の形成)
ジクロロメタン 350質量部
前記ポリイミドA 100質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
上記組成の主ドープを調整した後、塗布液を表面処理済みの銅基材上に塗布して塗布膜を形成し、残留溶媒が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、樹脂層を有する乾燥膜厚20μmの積層体901を得た。
【0235】
<積層体902の作製>
(中間層の形成)
化合物(12)5mgをトルエン1mLに溶解させた後、スピンコート法(3000rpm、30秒)により、表面処理済みの銅基材上に塗布して、乾燥膜厚30nmの中間層を形成した。
【0236】
(樹脂層の形成)
積層体901の作製における樹脂層の形成と同様の組成の主ドープを調製した後、塗布液を前記中間層上に塗布して塗布膜を形成し、残留溶媒が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、樹脂層を形成し、中間層及び樹脂層を有する乾燥膜厚20μmの積層体902を得た。
【0237】
<積層体910の作製>
(樹脂層の形成)
アクリル系樹脂(ヒタロイド7927) 90質量部
上記組成の主ドープを調整した後、塗布液を表面処理済みの銅基材上に塗布して塗布膜を形成し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気に窒素パージしながら、紫外線ラングを用い、照射部の照度が300mW/cm2、照射量を0.3J/cm2として塗布膜を硬化させ、乾燥膜厚20μmの積層体910を得た。
【0238】
<積層体911の作製>
(中間層の形成)
化合物(2)5mgをトルエン1mLに溶解させた後、スピンコート法(3000rpm、30秒)により、表面処理済みの銅基材上に塗布して、乾燥膜厚30nmの中間層を形成した。
【0239】
(樹脂層の形成)
積層体910の作製における樹脂層の形成と同様の組成の主ドープを調製した後、塗布液を前記中間層上に塗布して塗布膜を形成し、残留溶媒が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、樹脂層を形成し、中間層及び樹脂層を有する乾燥膜厚20μmの積層体911を得た。
【0240】
<積層体917の作製>
(樹脂層の形成)
メチルエチルケトン 350質量部
エポキシ樹脂(HP-5000、DIC社製) 50質量部
フェノール硬化剤(MEH-7851-3H、明和化成社製)
48質量部
環状シロキサン化合物
(1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、アズマックス社製)
2質量部
上記組成の主ドープを調整した後、塗布液を表面処理済みの銅基材上に塗布して塗布膜を形成し、150℃で乾燥後、乾燥膜厚20μmの積層体917を得た。
【0241】
<積層体918の作製>
(中間層の形成)
化合物(51)5mgをトルエン1mLに溶解させた後、スピンコート法(3000rpm、30秒)により、表面処理済みの銅基材上に塗布して、乾燥膜厚30nmの中間層を形成した。
【0242】
(樹脂層の形成)
積層体917の作製における樹脂層の形成と同様の組成の主ドープを調製した後、塗布液を前記中間層上に塗布して塗布膜を形成し、残留溶媒が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、樹脂層を形成し、中間層及び樹脂層を有する乾燥膜厚20μmの積層体918を得た。
【0243】
<積層体903~909、912~916及び919~923の作製>
樹脂及び添加化合物を下記表IXに示したように変更した以外は同様にして、積層体903~909、912~916及び919~923を作製した。
なお、表中に示す各樹脂は以下のとおりである。
ポリイミド:ポリイミドA
アクリル:ヒタロイド7927
エポキシ:エポキシ樹脂(25)HP-5000:メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、DIC社製、エポキシ当量250
【0244】
[評価]
<高温保存下での剥離強度>
作製した各積層体について、成膜初期の剥離強度と温度80℃で、168時間の剥離強度を測定した。
剥離強度の測定は、SAICAS(ダイプラ・ウィンテス製、NN-04T)を用いて定荷重モードで行った。
比較例である積層体901、910、917をそれぞれ100%とし、実施例と各比較例の計測値を比較して評価した。
【0245】
【0246】
上記結果より、本発明に係る化合物を用いた積層体は、比較例の積層体に比べて、高温保存後の密着性の点で優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明は、金属導電層に対する密着性、高温保存時の安定性及び光透過性に優れた樹脂組成物及び電子デバイスに利用することができる。