(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】生体撮像装置及び生体計測装置
(51)【国際特許分類】
G06V 40/145 20220101AFI20240228BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20240228BHJP
【FI】
G06V40/145
A61B5/1171 100
(21)【出願番号】P 2020571231
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2020004300
(87)【国際公開番号】W WO2020162487
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019019677
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 美音
(72)【発明者】
【氏名】中林 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康生
【審査官】村松 貴士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-245416(JP,A)
【文献】国際公開第2007/037471(WO,A1)
【文献】特開2017-067705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06V 40/145
A61B 5/1171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を認証対象として撮像する生体撮像装置であって、
前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する撮像部を有し、
前記面光源と前記撮像部が同一平面上の対向する位置に配置され、
前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、
15~
40mmの範囲内であり、かつ、
前記平面上を指触して、静脈認証を行うことを特徴とする生体撮像装置。
【請求項2】
前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項
1に記載の生体撮像装置。
【請求項3】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、タッチセンサー機能を具備していることを特徴とする請求項
2に記載の生体撮像装置。
【請求項4】
前記面光源が、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体であることを特徴とする請求項
2又は請求項
3に記載の生体撮像装置。
【請求項5】
前記面光源積層体が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が600~700nmの範囲内の光を発光し、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介して、近赤外光を前記生体に放射することを特徴とする請求項
4に記載の生体撮像装置。
【請求項6】
生体に光を照射して生体信号を計測する生体計測装置であって、
前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する測定部を有し、
前記面光源と前記測定部が同一平面上の対向する位置に配置され、
前記面光源と前記測定部の対向するそれぞれの端部間の距離が、
20~
40mmの範囲内であることを特徴とする生体計測装置。
【請求項7】
前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項
6に記載の生体計測装置。
【請求項8】
前記面光源が、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体であることを特徴とする請求項
7に記載の生体計測装置 。
【請求項9】
前記面光源積層体が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が600~700nmの範囲内の光を発光し、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介して、近赤外光を前記生体に放射することを特徴とする請求項
8に記載の生体計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体撮像装置及び生体計測装置に関し、より詳しくは、反射型の静脈認証に適用する生体撮像装置及び脈波センサー、パルスオキシメーターに適用する生体計測装置で、生体表面からの反射光の入光を防止し、コントラストに優れた静脈の撮像やノイズの少ない生体情報の測定が可能で、認証精度や測定精度の高い生体撮像装置及び生体計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、銀行のATM(Automated Teller Machine、現金自動支払機)、携帯電話機、PDA(Personal Data Assistant,携帯情報端末)、パーソナルコンピュータ等においては、個人情報を取り扱うあらゆるデバイスには高度なセキュリティ対策が求められている。
【0003】
近年では、鍵やパスワードに比べてセキュリティが高く、忘却や紛失などがないことから、鍵やパスワードの代わりに生体の一部(例えば、顔、表情、声、指紋、動作、虹彩など。)を認証情報として用いる、生体認証技術(バイオメトリクス認証)が知られている。
中でも、盗難や模倣の恐れが少なく、認証精度が高い技術として、静脈を用いた認証(以下、「静脈認証」と称す。)が注目されている。静脈認証は、静脈内を流れる赤血球中のヘモグロビンが吸収を有する近赤外光を照射することにより情報を取得し、予め登録してある静脈パターンデータと照合を行うことで個人を識別する方法である。静脈のパターンは、皮膚表面の状態の影響を受けにくく、模倣も困難であるので個人認証に利用する生体情報として有用である。
【0004】
また、静脈認証においては、良質な静脈像を取得するために、認証対象である生体の所定範囲に亘って近赤外線を照射することが必要になる。生体の所定範囲に対し近赤外線を十分に照射するためには、光源を生体、例えば、指から十分に遠ざける必要が生じたり、多数の光源を用意する必要が生じたりする。しかしながら、このような場合、静脈像を取得する生体認証装置が大型化してしまい、本体機器に占める空間が増加してしまうという問題がある。
【0005】
静脈の代表的な認証方式としては、指の上部に光源部を、指の下部に撮像部を配置し、認証部位(例えば、指)を透過した光で認証を行う透過型認証方式や、指の下部に光源部と撮像部を配置し、生体から反射した光で認証する反射型認証方式がある。携帯電話をはじめとするモバイル端末などに静脈認証を適応する場合には、小型化の観点から、後者の反射型認証方式が好ましい。
【0006】
しかしながら、反射型認証方式で静脈撮像を行う場合、生体、例えば、指表面における反射光が直接撮像素子に入射することにより、得られる認証画素の一部分が飽和し、個体識別に利用可能な画素数が減少することで、生体認証精度の低下を招く恐れがある。
【0007】
上記問題を解決するため、一方の面側に、撮像手段と、当該撮像手段から離間された照射手段を直交する位置に配置し、光路に複数の偏光板を有する生体認証装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。本発明によれば、明瞭な対象生体の画像取得と、装置の小型化が可能とされている。しかしながら、上記方法では、照射手段より発光させる近赤外光が偏光板により減光するため、発光出力を、設置する偏光板の指数倍に設定する必要がある。
【0008】
また、生体に内在する被写体を撮像する第1のモードと、当該被写体以外の被写体を撮像する第2のモードを有し、第1のモードへの切り替えに応じて、被写体のみを選択的に認証する撮像装置が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載されている方法では、照射光の経路や撮像対象を物理的に遮蔽しないため、装置の小型化が可能である。しかしながら、近赤外線光源LSとして、面光源、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子を適用すること、同一平面状に照射光源と認証部位である撮像部を設けルーター構成に関しては、記載されているが、具体的な照射部の構成や、照射部と撮像部との距離をいかに設定するかの条件の明示はなされていない。
【0009】
また、生体センサーと、タッチパネルと、タッチパネルへの接触を制御する制御手段を有し、タッチパネル上に複数の接触位置を表示させる生体認証装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3で開示されている方法によれば、手のひらの大きさを問わずに認証が可能で、生体の認証精度を向上させることができるとされている。
【0010】
しかしながら、照明手段の記載や、同一平面状に照射光源と認証部位である撮像部を設ける構成に関しては、記載されているが、具体的な照射部の構成や、照射部と撮像部との距離をいかに設定するかの具体的な条件の明示はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第4930455号公報
【文献】特許第4556107号公報
【文献】特開2018-128785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、撮像部への生体表面(具体的には、「指表面」)からの反射光の入光を防止し、偏光板等を使用することなく、コントラストに優れ、高品位の静脈撮像を取得することができ、認証精度に優れた生体撮像装置及び生体計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、前記生体に対し光を照射する光源として面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する撮像部を有し、面光源と撮像部を同一平面上の対向する位置に配置し、前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、特定の範囲内とし、静脈認証を行うことを特徴とする生体撮像装置により、撮像部への生体表面からの反射光の入光を防止し、コントラストに優れ、高品位の静脈撮像を取得することができ、認証精度に優れた生体撮像装置及び生体計測装置を得ることができることを見いだし、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0015】
1.生体を認証対象として撮像する生体撮像装置であって、
前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する撮像部を有し、
前記面光源と前記撮像部が同一平面上の対向する位置に配置され、
前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、15~40mmの範囲内であり、かつ、
前記平面上を指触して、静脈認証を行うことを特徴とする生体撮像装置。
【0017】
2.前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする第1項に記載の生体撮像装置。
【0018】
3.前記有機エレクトロルミネッセンス素子が、タッチセンサー機能を具備していることを特徴とする第2項に記載の生体撮像装置。
【0019】
4.前記面光源が、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体であることを特徴とする第2項又は第3項に記載の生体撮像装置。
【0020】
5.前記面光源積層体が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が600~700nmの範囲内の光を発光し、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介して、近赤外光を前記生体に放射することを特徴とする第4項に記載の生体撮像装置。
【0021】
6.生体に光を照射して生体信号を計測する生体計測装置であって、
前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する測定部を
有し、
前記面光源と前記測定部が同一平面上の対向する位置に配置され、
前記面光源と前記測定部の対向するそれぞれの端部間の距離が、20~40mmの範囲内であることを特徴とする生体計測装置。
【0022】
7.前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする第6項に記載の生体計測装置。
【0023】
8.前記面光源が、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィ ルターより構成されている面光源積層体であることを特徴とする第7項に記載の生体計測装置。
【0024】
9.前記面光源積層体が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が600~700nmの範囲内の光を発光し、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介して、近赤外光を前記生体に放射することを特徴とする第8項に記載の生体計測装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明の上記手段により、撮像部への生体表面の反射光の入光を防止し、コントラストに優れ、高品位の静脈撮像を取得することができ、認証精度に優れた生体撮像装置及び生体計測装置を提供することができる。
【0026】
本発明で規定する構成の生体撮像装置とすることにより、上記課題を解決することができる効果の発現機構及び作用機構について、以下のように推測している。
【0027】
本発明は、生体表面の反射光が撮像部に入射しないように光源と撮像部の距離を特定の範囲に保ちつつ、光源から離れた静脈を撮像できる点に特徴を有する。
【0028】
生体内に入った近赤外光は生体内で散乱を起こすことが知られているが、光の指向性が強いLED光源(点光源)では生体が受ける照射面積が小さくなる。その結果、近赤外光の生体内散乱が活発に起きず、離れた撮像部まで近赤外光が生体内を進むことができない。これは、点光源に起因し、離れた撮像部上の静脈が撮像できない理由を上記のように推察している。
【0029】
これに対し、面光源の場合は、広い面積で近赤外光の照射を生体が受けるため、近赤外光の生体内散乱が活発に起き、近赤外光が生体内を導光できる距離が点光源と比較して劇的に伸びる。そのため、面光源では離れた撮像部上まで生体内で近赤外光が進む確率が増加する。
【0030】
最終的には、生体内部から撮像部に向けて近赤外光が出る時に、ヘモグロビンで吸収された部分が影となることで、静脈撮像が可能となっていると推定している。
【0031】
一般に、静脈での個体識別においては、得られた撮像図から特徴点を抽出することが重要である。生体撮像方式においても同様であるが、従来の生体撮像方式では指の反射光が撮像部に入光しやすく、その場合は得られた像の階調が飽和(白飛び)した部分が生じ、特徴点抽出のデータ量が減少し、その結果、認証率低下を招いてしまう。特に、LED光源(点光源)では光の指向性が強いため、わずかでも反射光が撮像部に入光すると撮像図内で白飛びを発生すること、上述の通り点光源では生体内の導光距離が短いこと、これらがトレードオフの関係となっているため、点光源では光源と撮像部の距離を制御することが非常に困難である。これに対し、本発明に係る面光源では点光源よりも光の指向性が低い分、白飛びへの影響が緩和されているため光源と撮像部の距離を近赤外光が生体内導光できる範囲まで近づけることができるため、本発明では認証率低下を招かない静脈撮像図を得ることができる。
【0032】
上記の理由から、本発明の面光源を用いた生体撮像装置によって、認証率低下を招くことなく、反射型(光源と撮像部が同一平面上にあること)の静脈認証を実現することができる。さらに本発明に係る面光源は、薄くて軽いことから、本発明の生体撮像装置はモバイル(スマートフォンやノートパソコン)への搭載も可能にする。
【0033】
可視光発光する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」又は「OLED」ともいう。)はすでに、スマートフォンや照明用として実用化されている一方で、近赤外発光するOLEDは大学などで研究が進められているが、発光波長、駆動電圧、素子寿命などで課題が存在している。本発明のより好ましい形態として、実用レベルに達している可視光発光するOLEDを用いて、OLEDの可視光を近赤外光に波長変換フィルターで変換することも提案している。
【0034】
可視光OLEDの中でも、高輝度発光が可能であるりん光OLEDや熱活性型遅延蛍光OLEDを用いると、近赤外光の出力を大きくできるため好ましい。その中でも、緑~赤色発光のOLEDを用いると、素子寿命の点でも好ましい。さらに、赤色は可視光の中でも近赤外光の波長域に近いために変換する波長距離が短くすることができ、波長変換フィルターでストークスシフトの大きな発光色素を特殊設計する必要がないことから発光色素設計を容易にできる点でも好ましい。
【0035】
また、上述した効果は、生体に光を照射して生体信号を取得する生体計測装置においても同様に有効であり、測定精度の低下を招く、生体表面の反射光の入光を防止することで、より精度の高い生体信号を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の面光源と撮像部を具備した生体撮像装置の構成の一例を示す概略図
【
図2A】同一平面上に配置した面光源と撮像部の構成と、端部間の距離Wの一例を説明するための模式図
【
図2B】同一平面上に配置した面光源と撮像部の構成と、端部間の距離Wの他の一例を説明するための模式図
【
図2C】同一平面上に配置した面光源と撮像部の構成と、端部間の距離Wの他の一例を説明するための模式図
【
図3】面光源である有機エレクトロルミネッセンス素子の構成の一例を示す概略断面図
【
図4】タッチセンサー機能を具備した有機エレクトロルミネッセンスモジュールの構成の一例を示す概略断面図
【
図5】タッチセンサー機能を具備した有機エレクトロルミネッセンスモジュールの駆動回路の一例を示す回路図
【
図6】有機エレクトロルミネッセンス素子を2個配列した有機エレクトロルミネッセンスモジュールの駆動回路の一例を示す回路図
【
図7】有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体の構成の一例を示す概略断面図
【
図8】本発明に適用可能なイメージセンサーの構成の一例を示す概略断面図
【
図9】実施例で用いた発光素子駆動回路ユニットを構成する発光素子駆動回路の一例を示す概略回路図
【
図10A】同一平面上に配置した面光源と測定部の構成と、端部間の距離Wの一例を説明するための生体計測装置の模式図
【
図10B】同一平面上に配置した面光源と測定部の構成と、端部間の距離Wの他の一例を説明するための生体計測装置の模式図
【
図10C】同一平面上に配置した面光源と測定部の構成と、端部間の距離Wの他の一例を説明するための生体計測装置の模式図
【
図11A】同一平面上に配置した2個の面光源と測定部の構成と、端部間の距離Wの一例を説明するための生体計測装置の模式図
【
図11B】同一平面上に配置した2個の面光源と測定部の構成と、端部間の距離Wの他の一例を説明するための生体計測装置の模式図
【
図11C】同一平面上に配置した2個の面光源と測定部の構成と、端部間の距離Wの他の一例を説明するための生体計測装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の生体撮像装置は、生体を認証対象として撮像する装置であって、前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する撮像部を有し、前記面光源と前記撮像部が同一平面上の対向する位置に配置され、前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、10~45mmの範囲内であり、かつ、前記平面上を指触して、静脈認証を行うことを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0038】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、10~45mmの範囲内であることが、撮像部への生体表面の反射光の入光をより効率よく抑制でき、コントラストに優れた高品位の静脈撮像を取得することができる点で好ましい。
【0039】
また、前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが、平面発光の高い面光源で、発光均一性に優れ、所望の発光波長、例えば、赤色発光を安定して得ることができる点で好ましい。
【0040】
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子が、タッチセンサー機能を具備していることが、従来の連続発光型のものに比較し、生体認証時に発光させることができるため、操作性及び省電力性に優れる点で好ましい。
【0041】
また、面光源が、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体であることが、生体の認証対象、例えば、生体内部の静脈内のヘモグロビンの吸収を影とし得ることができる生体透過性を有する近赤外光を発光させることができる点で好ましく、さらには、面光源積層体は、有機エレクトロルミネッセンス素子より600~700nmの範囲内の光を発光させ、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介して、近赤外光を前記生体に放射する構成であることが、生体認証精度を高くすることができる点で好ましい。
【0042】
また、本発明の生体計測装置は、生体に光を照射して生体信号を計測する生体計測装置であって、前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する測定部を有し、前記面光源と前記測定部が同一平面上の対向する位置に配置され、前記面光源と前記測定部の対向するそれぞれの端部間の距離が、10~45mmの範囲内であることを特徴とする。
【0043】
また、前記面光源が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが、平面発光の高い面光源で、発光均一性に優れ、所望の発光波長、例えば、赤色発光を安定して得ることができる点で好ましい。
【0044】
また、面光源が、少なくとも前記有機エレクトロルミネッセンス素子と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体であることが、生体計測対象、例えば、生体内部の静脈内のヘモグロビンの吸収を影とし得ることができる生体透過性を有する近赤外光を発光させることができる点で好ましく、さらには、面光源積層体は、有機エレクトロルミネッセンス素子より600~700nmの範囲内の光を発光させ、前記有機エレクトロルミネッセンス素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介し、近赤外光を前記生体に放射する構成であることが、精度の高い生体信号を取得できる点で好ましい。
【0045】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張され、実際の比率とは異なる場合がある。
【0046】
《生体撮像装置》
本発明の生体撮像装置は、生体を認証対象として撮像する生体撮像装置であって、前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する撮像部を有し、前記面光源と前記撮像部が同一平面上の対向する位置に配置され、前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、10~45mmの範囲内であり、かつ、前記平面上を指触して、静脈認証を行うことを特徴とする。
【0047】
本発明の生体撮像装置は、様々な技術を用いて対象物の認証を行う認証装置として、面光源と、画像を読み取り認証する撮像部より構成され、この生体撮像装置は携帯電話などのモバイル機器、現金自動取引装置、ディスプレイ、ファクシミリ、スキャナ、複合機などに搭載される。生体認証は、各個人の生体的特徴(動作や生体の一部)を採取し、あらかじめ登録した特徴データと比較した類似度を測定並びに判定することにより個人を認識する。
【0048】
図1は、本発明の面光源と撮像部を具備した生体撮像装置の構成の一例を示す概略図である。
【0049】
図1に示す生体撮像装置Aは、生体認証の対象である指Fの下部面側に、面光源Cと撮像部Dを同一平面上の対向する位置に配置されている。面光源C、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子より、生体(指F)に対し、照射光L1を照射し、生体内の静脈Bより得られる散乱光L2を撮像部D(以下、「イメージセンサー」ともいう。)で受光し、静脈のイメージ画像を取得し、生体認証を行う。
【0050】
本発明の生体撮像装置が対象とする生体情報としては、手のひら及び指の静脈、指紋、掌形、虹彩、網膜、顔、筆跡、音声、匂い等がある。中でも、小型化が可能である点や盗難のおそれがない点、高セキュリティ性などといった観点から、静脈を用いた認証(静脈認証装置)が特に注目を集めている。
【0051】
静脈認証は、生体内のヘモグロビンが生体透過性を有する近赤外光を吸収する性質を利用した認証方法であり、認証装置に用いる光源は近赤外光であり、850nm付近に発光極大を有するものがより好ましい。静脈認証は、指先に近赤外線を照射し、得られた静脈部が影となった画像を、あらかじめ登録しておいたデータと照合することにより認証を行う。静脈認証方式では、抽出するデータ量が少ないため、高速処理が可能であるほか、近赤外光を照射して初めて目視での確認が可能となるため、生体の同一部分を認証する技術である指紋認証と比較して偽造や盗難が起こりにくい。さらに、静脈パターンは生体内部に存在する情報であるため、外部の影響を受けにくく半永久的に変化しないことや、不適応者が非常に少ないことといった点でも優位性がある。
【0052】
静脈認証装置の具体的な構成としては、
図1で示すような近赤外光を発する面光源Cと、光源を調整する制御部、静脈等からの散乱光を検出して画像を得る撮像部D、画像処理を行う認証部、抽出データを保存し登録する記憶部、登録データとの照合を行う演算部などから構成される。
【0053】
従来の静脈認証では、一般に、発光ダイオード(LED)などの複数の点光源を用いて照射を行っているが、LEDは発光部の形状が球状である点光源のため、複数個並べることにより輝度にムラが生じ、得られる撮像の認識率が低下してしまう。さらに、そもそもLEDでは個々の光量が厳密には均一ではないため、照射光量を調整する制御部には複雑なシステムが要求されている。そこで、本発明の生体撮像装置においては、光源として輝度均一性を有する面光源Cを用いることを特徴とし、より具体的には有機EL素子を用いることが好ましい態様である。
【0054】
本発明においては、
図1で示す面光源と撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離が、10~45mmの範囲内であることを特徴とする。
【0055】
図2A~
図2Cは、同一平面上に配置した面光源と撮像部の構成と、端部間の距離Wを説明するための模式図である。
【0056】
図2Aで示す生体撮像装置Aでは、上記説明した
図1で示す構成と同様で、同一平面上に、面光源Cと撮像部Dを配置し、面光源Cは全面が発光領域である全面発光型の光源である。このような構成においては、本発明で規定する前記面光源と前記撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離をWで表すことができる。本発明では、この距離Wが10~45mmの範囲内であることを特徴とし、好ましくは距離Wが、15~40mmの範囲内であり、更に好ましくは20~40mmの範囲内である。
【0057】
生体認証においては、認証対象の生体が、面光源、例えば、有機EL素子からの光を受け、生体の内部に光が拡散し、その散乱光が撮像部に到達する。この時、照射光が生体の内部まで到達しないで、生体の表面(指の表皮)で反射した光、又は、面光源から発光した光が、直接、撮像部に達した場合には、得られる生体の撮像画像にノイズとなり、画像が飽和し、コントラストが低下する。
【0058】
上記問題に対し、本発明で規定する様に、面光源と撮像部の対向するそれぞれの端部間の距離Wを10~45mmの範囲内とすることにより、生体の表皮面からの反射光が撮像部に入ることを防止でき、この結果、高コントラストを有する撮像画像を得ることができる。
【0059】
図2Bで示す生体撮像装置Aでは、面光源CがベゼルBz(以下、非発光領域ともいう。)を有している例を示してある。この場合、発光領域は、ベゼルBzを除く領域であり、発光領域の端部から撮像部Dの端部までが、距離Wとなる。
【0060】
図2Cは、
図2Bの構成に対し、面光源Cと撮像部Dが直接接している構成であり、この構成においては、ベゼルBzの幅が距離Wとなる。
【0061】
《生体撮像装置の構成要素》
[面光源]
本発明の生体撮像装置では、発光光源が面光源であることを特徴とする。
【0062】
本発明でいう面光源とは、広がりのある面全体から均一な光を放射する光源であり、これに対する光源としては、発光ダイオード(LED)などに代表される点光源がある。面光源は、前記点光源に比較して、一般的に発光輝度のムラがなく影をつくらないため、居室内空間の照明、又はディスプレイなどのバックライト用途の他に、生体認証用の撮像装置の照明などに好適に用いることができ、生体認証用の撮像装置に用いる場合、面光源としては、有機EL素子、μLED(マイクロLED)、拡散板と組み合わせたLED光源などが好ましいが、その中でも、面光源が有機EL素子であることが好ましく、更には、有機EL素子が、タッチセンサー機能を具備している構成(以下、「有機ELモジュール」ともいう。)であることが好ましい。
【0063】
また、面光源が近赤外光を放射させる点から、面光源が、有機EL素子と波長変換フィルターより構成されていること、更に詳しくは、有機EL素子が600~650nmの範囲内の光を発光し、当該有機EL素子からの光を吸収して、前記波長変換フィルターを介して、近赤外光を生体に放射することが好ましい態様である。
【0064】
本発明に係る面光源においては、有機EL素子のフレキシブル性を生かすため、基材としてはフレキシブル性を有する樹脂フィルムを用いることがより好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン等、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)又はアペル(商品名、三井化学社製)に代表されるシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0065】
以下、本発明に係る面光源の構成要素の詳細について説明する。
【0066】
〔有機EL素子〕
(有機EL素子の基本構成)
図3は、本発明に適用可能な代表的面光源である有機EL素子の基本的な構成の一例を示す概略断面図である。
【0067】
図3で示す有機EL素子22は、光透過性を有する透明基材11、例えば、ガラス基材又はフレキシブル性樹脂基材上に、発光層を含む有機機能層ユニットUを積層した構造を示してある。
【0068】
図3において、光透過性を有する透明基材11上に、第1電極として陽極3を形成し、その上に、例えば、正孔注入層、正孔輸送層等から構成される第1のキャリア輸送機能層群4、発光層5及び、例えば、電子輸送層、電子注入層等から構成される第2のキャリア輸送機能層群6が積層して、有機機能層ユニットUを構成している。更に、有機機能層ユニットUの上部に、第2電極として、陰極7が設けられ、有機EL素子22を構成している。そして、上記有機EL素子(OLED)全体を被覆する構造で、封止用接着層8と封止基板9が設けられて、有機ELパネル2を構成している。
図3の構成では、陽極3を透明電極で構成し、陽極3が配置されている面より、生体、例えば、指面に対し光L1を照射する。
【0069】
本発明において、有機EL素子22とは、一対の対向電極及び有機機能層群により構成されているものをいい、有機ELパネル2とは、有機EL素子22に対し、封止樹脂及び封止部材により封止した構成をいい、後述する有機ELモジュールMとは、有機ELパネル2に、静電容量方式のタッチ検出回路ユニット14と発光素子駆動回路ユニット12とが電気接続部材により接続され、発光機能とタッチ検出機能を併せ持つ構成をいう。
【0070】
本発明でいう発光領域とは、
図3で示すように、陽極3と、有機機能層ユニットU、特には発光層5と、陰極7の全てが、同一面上に存在する領域をいう。それ以外の領域は、非発光領域(ベゼルBz)となる。
【0071】
(有機EL素子の構成要素)
以下に、本発明に適用可能な有機EL素子の構成の代表例を示すが、本発明においては、ここで例示する構成に限定されるものではない。
【0072】
(i)陽極3/有機機能層ユニットU〔第1のキャリア輸送機能層群4(正孔注入輸送層)/発光層5/第2のキャリア輸送機能層群6(電子注入輸送層)〕/陰極7
(ii)陽極3/有機機能層ユニットU〔第1のキャリア輸送機能層群4(正孔注入輸送層)/発光層5/第2のキャリア輸送機能層群6(正孔阻止層/電子注入輸送層)〕/陰極7
(iii)陽極3/有機機能層ユニット(U)〔第1のキャリア輸送機能層群4(正孔注入輸送層/電子阻止層)/発光層5/第2のキャリア輸送機能層群6(正孔阻止層/電子注入輸送層)〕/陰極7
(iv)陽極3/有機機能層ユニット(U)〔第1のキャリア輸送機能層群4(正孔注入層/正孔輸送層)/発光層5/第2のキャリア輸送機能層群6(電子輸送層/電子注入層)〕/陰極7
(v)陽極3/有機機能層ユニット(U)〔第1のキャリア輸送機能層群4(正孔注入層/正孔輸送層)/発光層5/第2のキャリア輸送機能層群6(正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層)〕/陰極7
(vi)陽極3/有機機能層ユニット(U)〔第1のキャリア輸送機能層群4(正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層)/発光層5/第2のキャリア輸送機能層群6(正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層)〕/陰極7
上記(i)~(vi)で説明した構成では、陰極7を非光透過性として説明したが、必要に応じて、陽極と同様の光透過性の陰極とする構成であってもよい。
【0073】
更に、発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。中間層は電荷発生層であってもよく、マルチフォトンユニット構成であってもよい。
【0074】
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013-157634号公報、特開2013-168552号公報、特開2013-177361号公報、特開2013-187211号公報、特開2013-191644号公報、特開2013-191804号公報、特開2013-225678号公報、特開2013-235994号公報、特開2013-243234号公報、特開2013-243236号公報、特開2013-242366号公報、特開2013-243371号公報、特開2013-245179号公報、特開2014-003249号公報、特開2014-003299号公報、特開2014-013910号公報、特開2014-017493号公報、特開2014-017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
【0075】
また、タンデム型の有機EL素子とすることもでき、タンデム型の具体例としては、例えば、米国特許第6,337,492号明細書、米国特許第7,420,203号明細書、米国特許第7,473,923号明細書、米国特許第6,872,472号明細書、米国特許第6,107,734号明細書、米国特許第6,337,492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006-228712号公報、特開2006-24791号公報、特開2006-49393号公報、特開2006-49394号公報、特開2006-49396号公報、特開2011-96679号公報、特開2005-340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010-192719号公報、特開2009-076929号公報、特開2008-078414号公報、特開2007-059848号公報、特開2003-272860号公報、特開2003-045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0076】
〔タッチセンサー付有機EL素子〕
本発明の生体撮像装置に適用する有機EL素子(有機ELパネル)として、更には、タッチセンサー機能を具備した有機ELモジュールであることが、生体認証時にのみ発光する機能を付与でき、操作性及び省電力性の観点から好ましい態様である。
【0077】
本発明でいう有機ELモジュールMとは、
図3で説明した有機ELパネル2に対し、発光素子駆動回路ユニットと、タッチ検出回路ユニットを具備した構成をいう。
【0078】
〈実施形態1:単一の有機EL素子構成〉
図4は、タッチセンサー機能を具備した有機ELモジュールで、有機EL素子が単一構成の一例を示す概略断面図(実施形態1)である。
【0079】
図4で示す有機ELモジュールMでは、適用する有機ELユニットUの構成は
図3で説明したのと同様で、透明基材11上に、第1電極として陽極3と、有機機能層ユニットUが積層されて、発光領域を構成している。有機機能層ユニットUの上部には、陰極7が積層されて、有機EL素子を構成している。この有機EL素子の外周部を封止用接着層8で封止され、その表面に、封止部材9が配置され、有機ELパネル2を構成している。
【0080】
図4に示す有機ELモジュールMの構成においては、陽極3が、有機EL素子の発光させる透明電極として機能するとともに、検出電極としての機能を付与する構成である。
【0081】
有機ELモジュールMにおいては、陽極3と陰極7との間に、発光を制御する発光素子駆動回路ユニット12が接続されている。
【0082】
陽極3は、更に、検出電極として機能し、タッチ(指触)を検出するためのタッチ検出回路ユニット14が接続されている。
【0083】
次いで、本発明に係る有機ELモジュールを構成する基本的な駆動回路とその駆動方法の一例について、回路図を交えて説明する。
【0084】
図5は、タッチセンサー機能を具備した有機ELモジュールの駆動回路の一例を示す回路図である。
【0085】
図5に示す有機ELモジュールMの回路図において、中央に示した有機ELパネル2は、陽極配線25と陰極配線26を有し、両配線間にダイオードである有機EL素子22と、コンデンサー(Cel)21が接続されている。
【0086】
左側の発光素子駆動回路ユニット12では、陽極より引き出された陽極配線25がスイッチSW1を介して、発光素子駆動回路部23に接続され、一方、陰極から引きだされた陰極配線26がスイッチSW2を介して、発光素子駆動回路部23に接続されている。また、発光素子駆動回路部23は、グランド27につながれている。このグランド27は、詳しくはシグナル・グランドと呼ばれている。
【0087】
この発光素子駆動回路ユニット12には、定電流駆動回路、又は定電圧駆動回路が組み込まれ、有機EL素子22の発光のタイミングを制御し、必要に応じて、逆バイアス印加(逆印加電圧)する発光素子駆動回路部23を有する。また、
図5では、発光素子駆動回路部23と、スイッチSW1とスイッチSW2とがそれぞれ独立した構成で示してあるが、必要に応じて、発光素子駆動回路部23に、スイッチSW1又はスイッチSW2が組み込まれた構成であってもよい。
【0088】
本発明でいう発光素子駆動回路ユニット12とは、
図5の破線で示すように、陽極配線25、スイッチSW1、発光素子駆動回路部23、スイッチSW2及び陰極配線26で構成されている回路範囲をいう。
【0089】
一方、右側に記載したタッチ検出回路ユニット14は、検出電極として機能させる陽極から引き出した陽極配線25を、スイッチSW3を介してタッチ検出回路部24に接続され、このタッチ検出回路部24は、グランド27につながれている。このタッチ検出回路部24の内部にスイッチSW3が組み込まれている構成であってもよい。
【0090】
スイッチSW1~SW3は、FET(電界効果トランジスター)、TFT(薄膜フィルムトランジスター)等のスイッチ機能を備えたものであればよく、特に制限はない。
【0091】
本発明に係る発光素子駆動回路部23としては、その構成に特に制限はなく、従来の公知の発光素子駆動回路部(有機EL素子駆動回路)を適用することができる。この光素子駆動回路としては、昇圧型又は降圧型のDC-DCコンバーター回路、電流値のフィードバック回路、DC-DCコンバーターのスイッチ制御回路等からなる定電流回路が知られており、また、特開2002-156944号公報、特開2005-265937号公報、特開2010-040246号公報等に記載されている発光素子駆動回路を参照することができる。
【0092】
また、タッチ検出回路部24としては、その構成に特に制限はなく、従来の公知のタッチ検出回路部を適用することができる。一般に、タッチ検出回路は、増幅器、フィルター、AD変換器、整流平滑回路、比較器等で構成され、代表例としては、自己容量検出方式、直列容量分圧比較方式(オムロン方式)等を挙げることができ、また、特開2012-073783号公報、特開2013-088932号公報、特開2014-053000号公報等に記載されているタッチ検出回路を参照することができる。
【0093】
〈実施形態2:複数の有機EL素子構成〉
また、本発明に適用可能なタッチセンサー付有機EL素子として、複数の有機EL素子を配置した構成の有機ELモジュールも適用することができる。
【0094】
図6は、有機EL素子22A及び22Bを2個配列した有機ELモジュールMの駆動回路の一例を示す回路図である。
【0095】
図6に示す有機ELモジュールMの回路図において、中央に示した有機ELパネル2は、それぞれ陽極配線25A及び25B、陰極配線26A及び26Bを有し、両配線間にダイオードである二つの有機EL素子22A及び22Bと、有機EL素子の寄生容量21A及び21Bが接続されている。
【0096】
左側の発光素子駆動回路ユニット12では、第1の有機EL素子22Aの陽極より引き出された陽極配線25AがスイッチSW1を介して、発光素子駆動回路部23に接続され、一方、第2の有機EL素子22Bの陰極から引きだされた陰極配線26Bが、スイッチSW2を介して、発光素子駆動回路部23に接続されている。
【0097】
この発光素子駆動回路ユニット12には、定電流駆動回路又は定電圧駆動回路が組み込まれ、有機EL素子の発光のタイミングを制御し、必要に応じて、逆バイアス印加(逆印加電圧)する発光素子駆動回路部23を有する。また、
図6では、発光素子駆動回路部23と、スイッチSW1とがそれぞれ独立した構成で示してあるが、必要に応じて、発光素子駆動回路部23内に、スイッチSW1が組み込まれた構成であってもよい。
【0098】
一方、右側に記載したタッチ検知回路ユニット14は、第1の有機EL素子22Aにおいては、タッチ検知電極として機能させる陽極から引き出した陽極配線25Aを、スイッチSW3を介してタッチ検知回路部24に接続し、第2の有機EL素子22Bのタッチ検知電極である陽極より引き出した陽極配線25Bは、スイッチSW4を介してタッチ検知回路部24に接続されている構成である。
【0099】
タッチセンサー付きの有機EL素子の詳細については、例えば、国際公開第2015/182001号、国際公開第2015/186265号、国際公開第2016/031593号等で記載されている内容を参照することができる。
【0100】
〔波長変換フィルター〕
本発明に係る面光源においては、少なくとも有機EL素子(有機ELパネル)と波長変換フィルターより構成されている面光源積層体であることが好ましい態様である。
【0101】
図7は、有機EL素子を有する有機ELパネル2と波長変換フィルター40より構成されている面光源積層体CAの一例を示す概略断面図である。
【0102】
図7に示す面光源積層体CAでは、赤色発光Rする面光源、例えば、赤色発光Rの有機ELパネル2上に、有機ELパネル2を構成する有機EL素子22の可視光を近赤外光IRに変換する波長変換フィルター40を配置した構成を挙げることができる。
【0103】
本発明に係る波長変換フィルターにおいては、波長変換能を有する発光体(例えば、発光色素等)を含有することが好ましい。本発明に係る波長変換フィルターは、波長変換能を有する発光色素を含有していれば、特に形態や製造方法などは制限されず、目的用途に応じて適宜決定される。
【0104】
本発明に係る波長変換フィルターは、近赤光領域を含む可視光領域(380~780nm)、好ましくは近赤光領域を含む緑~赤色領域(495~750nm)、特に好ましくは赤色領域(600~700nm)の範囲内の光を発光する有機EL素子からの光を吸収して、近赤外光、例えば、700nmを超え、1500nm以下の領域で発光する、さらには、850nm付近に発光極大を有する近赤外光に変換する機能を有することが好ましい。
【0105】
面光源積層体CAの作製方法としては、面光源である有機ELパネル2と波長変換フィルター40とを別途製造して、両者を貼合して作製する方法であっても、発光部材である有機EL素上に直接、波長変換フィルターを塗設して積層させてもよい。また、必要に応じて、波長変換されずに放射されてきた光を除外するためのカットフィルターを積層又は含んでもよい。
【0106】
本発明に係る波長変換フィルター40の厚さは、小型化、かつフレキシブル性を維持する観点からは、0.01~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~500μmの範囲内であり、さらには10~300μmの範囲内であることが好ましい。
【0107】
製造方法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法などによって、発光色素を含む波長変換フィルター形成用組成物を支持体上に一時的あるいは恒久的に付与することができる方法を挙げることができる。また、スピンコート法などの湿式法で製造する場合、使用する溶媒は特に制限されないが、例えば、水やアルコール系、ジオール系、ケトン系、エステル系、エステル系、芳香族炭化水素系(ハロゲンを含有してもよい)、脂肪族又は脂肪族炭化水素系の溶媒などが挙げられる。
【0108】
また、波長変換フィルター形成用組成物を形成する際に、発光色素を溶解又は分散させるため、マトリックス材料として、公知の樹脂材料等を用いてもよい。発光色素の発光波長に影響を及ぼさない観点から、非極性の樹脂材料が好適に用いられ、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラート(PVB)、トリアセチルセルロース(TAC)、ニトロセルロースなどのセルロースエステルなどが挙げられる。
【0109】
さらに、必要に応じて発光色素の他に、着色剤や光安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、難燃剤、無機添加剤、透明化剤、紫外線吸収剤、充填剤、光散乱性粒子といった周知の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0110】
(光散乱性粒子)
上述のうち、光散乱性粒子とは、波長変換フィルター中に入ってきた光を多重散乱させる機能を持った粒子である。これらを添加することで、波長変換フィルターに進入した光は膜中での光路長が伸び、波長変換フィルター内部で波長変換される機会が増えるので、波長変換効率が向上する。さらに、波長変換フィルター界面の反射により、波長変換フィルター内部に戻ってきた光を再度散乱することで、光取り出し効率の向上が見込める。
【0111】
光散乱性粒子の平均粒子径は、0.01μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.2μm以上1μm以下であることがさらに好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が0.01μm未満であると、波長変換フィルター中において充分な光散乱性を得ることが出来ず、充分な光散乱性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が10μmを超えると、添加量(質量%)が同じであっても光散乱粒子の数が少なくなるため、散乱点の数が減り充分な光散乱効果が得られない。
【0112】
光散乱性粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等
)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる
。なお、光散乱性粒子の粒子径は、光散乱性粒子の形状が球状でない場合、同体積を有す
る真球状の値とすることができる。
【0113】
光散乱性粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であっても良いが、屈折率が高いほど、粒子の散乱性能が高まるため、中でも高屈折率を有する無機微粒子であることが好ましい。
【0114】
高屈折率を有する有機微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル-スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ及びベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒドビーズ等が挙げられる。
【0115】
高屈折率を有する無機微粒子としては、例えば、ケイ素、ジルコニウム、チタン、インジウム、亜鉛、アンチモン、セリウム、ニオブ及びタングステン等の中から選ばれる少なくとも一つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子としては、具体的には、SiO2、ZrO2、TiO2、BaTiO3、In2O3、ZnO、Sb2O3、ITO、CeO2、Nb2O5及びWO3等が挙げられ、中でも、TiO2、BaTiO3、ZrO2、CeO2及びNb2O5が好ましく、TiO2が最も好ましい。また、TiO2の中でも、アナターゼ型よりルチル型の方が、触媒活性が低いため膜の耐候性が高くなり、更に屈折率も高いことから好ましい。
【0116】
また、これらの粒子は、波長変換フィルターに含有させるために、分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施したものを用いるか、あるいは表面処理を施さないものを用いるかを選択することができる。
【0117】
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理材は、1種を単独で用いても良く、複数種を組み合わせて用いても良い。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理材としては、異種無機酸化物又は金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。
【0118】
波長変換フィルターの全固形分質量に対する光散乱性粒子の含有量は、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が0.1質量%未満であると、光散乱効果が充分に得られないおそれがあり、また、光散乱性粒子の含有量が20質量%を超えると、光散乱性粒子が多すぎるために透過率が低下する。
【0119】
(カットフィルター)
カットフィルターの材質としては、ガラス、樹脂などが挙げられ、誘電体多層膜や、吸収色素を含有する膜を形成することで、波長変換されずに放射されてきた光を除外するものが使用できる。カットフィルターは、市販品を用いてもよく、又は、上記の膜を波長変換フィルター上に製膜するか、独立して作製した後に、波長変換フィルターと組み合わせて使用してもよい。
【0120】
(波長変換能を有する発光体)
本発明に係る波長変換フィルターが含有する発光体としては、近赤光領域を含む可視光領域(380~780nm)、好ましくは近赤光領域を含む緑~赤色領域(495~750nm)、特に好ましくは赤色領域(600~700nm)の光を吸収し、近赤外光領域(700nmを超え、1500nm以下)で発光する特性を備えていれば、特に制限されない。発光体を含む波長変換フィルターを生体認証装置として用いる場合、得られる撮像図での個体識別を保証するための生体透過光の観点から、750~1000nmの波長範囲内に発光極大波長を有することが好ましく、より好ましくは850nm付近に発光極大波長を有することが、生体内の水の吸収域と重ならず、静脈のヘモグロビンの吸収域と重なりをもつ点で好ましい。
【0121】
本発明に適用可能な発光体としては、例えば、重水素化トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ネオジム(III):Nd(hfa-D3)などの錯体や、希土類なイオンを内包する無機ナノ物質、インジウムヒ素、硫化鉛などからなる量子ドットナノ粒子、水溶性シリコンナノ粒子などの他、スクアリリウム、シアニン、フタロシアニン、クロコニウムローダミン、エオシン、フルオレセイン、トリフェニルメタン、ポルフィリンなどの発光色素を用いることができる。
【0122】
これらの発光体の中でも、発光色素であるスクアリリウム化合物が、赤色光領域に吸収を示す化合物として、従来から有機太陽電池の増感色素や電子写真感光体の電荷発生材料、蛍光プローブなどに用いられており、更に、耐久性が高く、かつ発光効率に優れており、本発明における発光色素として、特に好ましく用いることができる。
【0123】
また、本発明に係る波長変換フィルターにおいては、少なくとも1種の発光色素が含まれていればよく、2種以上の色素を併用してもよい。この場合、光源からの光を1種の色素が吸収し、励起したエネルギーより長波側に発光領域を有する他の色素に受け渡すことで、最終的な発光波長より長波化することができる。
【0124】
本発明に適用可能なスクアリリウム化合物の合成方法については、特に限定されず、例えば、特開平5-155144号公報、特開平5-239366号公報、特開平5-339233号公報、特開2000-345059号公報、特開2002-363434号公報、特開2004-86133号公報、特開2004-238606号公報等に記載の周知一般の反応を用いて得ることができる。
【0125】
〈一般式(1)で表される構造を有する化合物〉
本発明に適用可能なスクアリリウム化合物の種類は、特に限定されないが、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
【化1】
上記一般式(1)において、A及びBは、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、それぞれ隣接する置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。R
1~R
4はそれぞれ置換基を表し、少なくとも1つは芳香族炭化水素環を有する。また、R
1~R
4は、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
【0126】
A及びBで表される芳香族炭化水素環(芳香族炭化水素環基、芳香族炭素環基、アリール基等ともいう)は、炭素数6~18の置換又は無置換の芳香族炭化水素環であり、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等を挙げることができる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。また、A及びBで表される芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基等)、ピラゾロトリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等を挙げることができる。
【0127】
上記一般式(1)において、R1~R4で表される置換基、並びにA及びBが有してもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、p-クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基等)、ピラゾロトリアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2-ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2-エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2-エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2-ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2-ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2-エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2-ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2-エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2-ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジタートブチル基、シクロヘキシルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。好ましくは、アルキル基、芳香族炭化水素基、アミノ基、ヒドロキシ基、シリル基が挙げられる。
【0128】
また、これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。
【0129】
このうち、R1~R4で表される置換基は、アルキル基又は芳香族炭化水素基が好ましい。
【0130】
R1~R4で表されるアルキル基としては、炭素数6~10の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0131】
R1~R4で表される芳香族炭化水素基としては、炭素数6~18の置換又は無置換の芳香族炭化水素基が好ましい。例えば芳香族炭化水素基(フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基等)が挙げられる。好ましくは、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。
【0132】
隣接する置換基同士が環を形成する場合としては、その環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環等を挙げることができる。
【0133】
〈一般式(2)で表される構造を有する化合物〉
さらに、前記一般式(1)において、A若しくはB、又はその両方にヒドロキシ基を有していることが、発光性の向上の観点から好ましく、分子内のπ共役が拡張され、極大発光波長が長波化する観点から、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物であることがより好ましい。
【化2】
上記一般式(2)において、E
1~E
4はそれぞれ置換基を表す。m1~m4はそれぞれ0又は1~5の整数を表す。R及びR′はそれぞれ置換基を表し、n及びn′はそれぞれ0又は1~3の整数を表す。なお、m
1~m
4、n及びn′が2以上の場合、E
1~E
4、R及びR′はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0134】
E1~E4、R及びR′で表される置換基の構造は、上記で詳細に説明した一般式(1)の置換基と同様の基を挙げることができる。なお、E1~E4で表される置換基としては、特に、メチル基、エチル基、t-ブチル基等のアルキル基が好ましく、R及びR′で表される置換基としては、水素原子又はヒドロキシ基であることが好ましい。
【0135】
本発明に係る一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有するスクアリリウム化合物は、例えば、Chemistry of Materials,第23巻、4789ページ(2011年)、The Journal of Physical Chemistry,第91巻、5184ページ(1987年)に記載の方法、又は、これらの文献に記載の参照文献に記載の方法を参照することにより合成することができる。
【0136】
以下に、本発明に係る波長変換フィルターが含有する発光色素、スクアリリウム化合物、一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物の代表例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
さらに、本発明において、色素として用いられる化合物として、下記に示す文献1記載のピロロピロールシアニン色素や、文献2記載のジシアノビニル置換スクアリリウム色素等も好適に用いることができる。
【0144】
【0145】
文献1:Fischer et al-Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,3750-3753
文献2:Mayerh-ffer et al-Chem.Eur.J.2013,19,218-232
【0146】
また、本発明において用いられる化合物として、下記一般式(1a)~(1d)及び一般式(4)~(11)で表される構造を有する化合物(1a)~(1d)及び化合物(4)~(11)も好適に用いられる。以下、各一般式(1a)~(1d)及び一般式(4)~(11)についての説明とともに、各化合物を例示する。
【化10】
(一般式(1a)において、各Rcは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、4個のRcのうち少なくとも1個は、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は下記一般式(P)で表される構造を表する基(P)を表す。)
【0147】
【化11】
(一般式(P)において、※は置換部位を表す。Qは単結合又は2価の連結基を表す。nは1~9の整数を表す。R
51は水素原子又はメチル基を表す。)
【0148】
前記一般式(1a)で表される構造を有する化合物(1a)において、4個のRcが全て同じアルキル基(a)又は基(P)である、化合物の例示を表Iに示す。表Iには、化合物名と該化合物が有するRcの種類を列記した。なお、表Iにおいて、化合物名は略号のみを示した。以下に示す他の化合物を例示する表においても同様に化合物名は略号のみを示す。
【0149】
表Iにおいて、「n-butyl」はn-ブチル基を、「n-pentyl」はn-ペンチル基を、「n-hexyl」はn-ヘキシル基を、「n-heptyl」はn-ヘプチル基を、「n-octyl」はn-オクチル基を、「n-nonyl」はn-ノニル基を、「n-decyl」はn-デシル基を、「n-undecyl」はn-ウンデシル基を、「n-dodecyl」はn-ドデシル基をそれぞれ示す。基(a1)を(a1)で示す。基(P)を(P)で示し、例えば、(P)(Q=-CH2-,n=2,R11=CH3)のように、Qの種類、nの数、R11の種類を「(P)」の後の括弧内に示す。ただし、Qが単結合の場合はQの表記を省略した。後述する他の化合物に係る表の記載についても、同様である。
【0150】
また、以下に示す各表において、基(a1)は1-プロピルブチル基、基(a2)は1-エチルペンチル基、基(a3)は2,4,4-トリメチルペンチル基、基(a4)はイソブチル基、基(a5)は2-エチルブチル基、基(a6)は2-エチルヘキシル基、基(a7)は2-ブチルオクチル基である。
【0151】
【0152】
【0153】
(一般式(1c)において、各Rdは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、4個のRdのうち少なくとも1個は、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は前記一般式(P)で表される構造を有する基(P)を表す。各Xaは、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基又はフェニル基を表す。mは、0~4の整数を表す。)
【0154】
前記一般式(1c)で表される構造を有する化合物(1c)において、4個の(Xa)mが全て同じ(Rd及び(Xa)mが結合したベンゼン環において、それぞれの(Xa)mが同じ)である化合物の例示を表IIに示す。また、4個のRdは全て同じアルキル基(a)又は基(P)である。表IIには、化合物名と該化合物が有するRdの種類、Rdが結合する炭素原子以外の炭素原子に結合する基又は原子を、Rdの隣から順にX11、X12、X13、X14で示した。表IIにおいて、「-O-(a2)」は、連結基として-O-が結合した基(a2)を示す。また、「2,4,6-trimethoxyphenyl」は2,4,6-トリメトキシフェニル基を、「Me」はメチル基を、「Ph」はフェニル基をそれぞれ示す。後述する他の化合物に係る表の記載についても、同様である。
【0155】
【0156】
【0157】
(一般式(1b)において、各Raは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。各Rcは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、4個のRcのうち少なくとも1個は、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は前記一般式(P)で表される構造を有する基(P)を表す。)
【0158】
前記一般式(1b)で表される構造を有する化合物(1b)において、2個のRaが同じアルキル基であり、かつ4個のRcが全て同じアルキル基(a)又は基(P)である、化合物の例示を表IIIに示す。表IIIには、化合物名と該化合物が有するRc及びRaの種類を列記した。
【0159】
【0160】
【0161】
(一般式(1d)において、各Raは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。各Reは、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。各Xaは、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基若しくはアルコキシ基又は置換又は無置換のフェニル基を表し、4位に結合する場合のXaは、前記式(D)で表される構造を有する基であってもよい。mは、0~4の整数を表す。ただし、一般式(1d)においては、Raのいずれかが炭素数4~12の直鎖状又は分岐状のアルキル基(a)を表すか、4個のReのうち少なくとも1個が、連結基として-O-を有してもよい炭素数4~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(a)、又は前記式(P)で表される構造を有する基(P)を表すか、又は前記4位にXaとして前記式(D)で表される構造を有する基が結合する。)
【0162】
前記一般式(1d)で表される構造を有する化合物(1d)において、2個のRa、4個のRe及び、4個の(Xa)mが全て同じである化合物の例示を表IVに示す。2個のRaは、メチル基、エチル基(表中、「Et」で示す。)又はアルキル基(a)である。4個のReは全て同じアルキル基(a)、基(P)、メチル基又はフェニル基である。表IVには、化合物名と該化合物が有するRa及びReの種類、Reが結合する炭素原子以外の炭素原子に結合する基又は原子を、Reの隣から順にX11、X12、X13及びX14で示した。なお、X12が基(A)のベンゼン環における4位に相当する。表IVにおける「(D)-1」は下記式で表される構造を有する基を示す。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
前記一般式(4)で表される構造を有する化合物(4)においては、R1及びR5がNHCORa基、OH基、NHSO2Rb基、又はNHPO(ORf)(ORg)基であることが好ましく、各Raがアルキル基(a)である構成が好ましい。表Vにそのような化合物(4)を例示する。表中、「tolyl」はトリル基を示す。
【0167】
【0168】
【0169】
前記一般式(5)で表される構造を有する化合物(5)においては、R1及びR5がNHCORa基、OH基、NHSO2Rb基、又はNHPO(ORf)(ORg)基であることが好ましく、各Raがアルキル基(a)である構成が好ましい。表VIにそのような化合物(5)を例示する。
【0170】
【0171】
【0172】
前記一般式(6)~(8)で表される構造を有する各化合物(6)~(8)の具体的な例示を、それぞれ表VII、表VIII及び表IXに示す。また、下記表において、「-O-(a4)」は、連結基として-O-が結合した基(a4)を示す。
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
前記一般式(9)~(11)で表される構造を有する各化合物(9)~(11)の具体的な例示を、それぞれ表X、表XI及び表XIIに示す。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
さらに、本発明に係る第1の色素及び第2の色素に用いられる化合物として、下記化合物も用いることができる。
【化20】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【化56】
[撮像部]
次いで、生体撮像装置を構成する撮像部の詳細について説明する。
【0218】
本発明に適用可能な撮像部(以下、イメージセンサーともいう。)は、面光源と同一平面上に設置され、少なくとも近赤外線領域に感度を有するカメラから構成されていることが好ましく、必要に応じて複数設けてもよい。
【0219】
カメラを構成するイメージセンサーは、レンズから入射した光を電気信号に変換する半導体(撮像素子)である。このうち、CCD(Charge Coupled Device)方式、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)方式などを適用することができ、認証速度及び低コスト、低消費電力、小型化の観点から、CMOSがより好ましく用いられる。
【0220】
本発明に適用可能なイメージセンサーとしては、少なくとも有機光電変換層を有する光電変換方式であり、更には、少なくとも対向電極、有機光電変換層、画素電極及び薄膜トランジスター(TFT)により構成されていることが好ましい。
【0221】
図8は、本発明に適用可能なイメージセンサーの構成の一例を示す概略断面図である。
【0222】
図8では、上面側(指面側)より、指紋部(静脈)からの散乱光L2が入光する方式を示してある。本発明に係る撮像部Dを構成するイメージセンサーSは、散乱光L2が到達する面側から、対向電極52、有機光電変換層51、画素電極54が配置され、光電変換素子PEDを構成している。光電変換素子PEDの下部には、画素電極54と対向する位置にTFT56が配置され、その間が接続部55により接続されている。この時、画素電極54、接続部55及びTFT56は、絶縁層57内に配置され、その下部に、基材58が設けられている構成である。本発明では、接続部55、TFT56、絶縁層57及び基材58よりなる構成を、TFTユニット53と称す。
【0223】
また、本発明に適用可能な有機光電変換層を含む光学方式のイメージセンサーSの具体的な構成としては、例えば、特開2008-067034号公報、特開2009-207062号公報、特開2011-142318号公報、特開2011-222949号公報、特開2012-099592号公報、特開2012-227364号公報、特開2013-026483号公報、特開2013-084789号公報、特開2013-093353号公報、特開2014-022525号公報、特開2014-060315号公報、特開2015-015415号公報等で開示されている有機光電変換素子、光センサー等の記載内容及び構成要件を参照することができる。
《生体計測装置》
【0224】
本発明の生体計測装置は、生体に光を照射して生体信号を計測する生体計測装置であって、前記生体に対し光を照射する面光源と、前記生体内部からの散乱光を受光する測定部を有し、前記面光源と前記測定部が同一平面上の対向する位置に配置され、前記面光源と前記測定部の対向するそれぞれの端部間の距離が、10~45mmの範囲内であることを特徴とする。
【0225】
本発明の構成を備えた生体計測装置としては、特に限定されないが、パルスオキシメーター、脈波センサー等が挙げられる。生体計測装置は、現在社会において、日々の健康管理や医療現場での使用に欠かせない機器であり、精度の高い生体情報を得ることは非常に重要である。ここでは、パルスオキシメーター及び脈波センサーの詳細についての詳細な説明は省略する。
【0226】
本発明の生体計測装置の一例を、
図10A~
図10C、及び
図11A~
図11Cに示す。
図10Aに示す生体計測装置Gは、同一平面上に配置した面光源Cと測定部Hの構成と、端部間の距離Wを有している構成を示す。
図10Bに示す生体計測装置Gは、
図10Aの構成に対し面光源CがベゼルBzを有している例を示してある。この場合、発光領域は、ベゼルBzを除く領域であり、発光領域の端部から撮像部Dの端部までが、距離Wとなる。
図10Cに示す生体計測装置Gは、
図10Bの構成に対し、面光源Cと撮像部Dが直接接している構成であり、この構成においては、ベゼルBzの幅が距離Wとなる。
【0227】
図11Aに示す生体計測装置Gは、
図10Aの構成に対し、同一平面上に2個の面光源Cを測定部の両端部に配置した構成を示している。
図11Bに示す生体計測装置Gは、
図11Aの構成に対し面光源CがベゼルBzを有している例を示してある。この場合、発光領域は、ベゼルBzを除く領域であり、発光領域の端部から撮像部Dの端部までが、距離Wとなる。
図11Cに示す生体計測装置Gは、
図11Bの構成に対し、面光源Cと撮像部Dが直接接している構成であり、この構成においては、ベゼルBzの幅が距離Wとなる。
【実施例】
【0228】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0229】
実施例1
《発光体の構成材料の作製》
〔有機EL素子A(OLEDA)の作製〕
下記手順に従って、基材上に陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極を積層して封止を行い、面発光体であるボトルエミッション型の赤色発光有機EL素子Aを作製した。
【0230】
(陽極の形成)
はじめに、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポン社製、以下、PENと略記する。)の陽極を形成する側の全面に、特開2004-68143号公報に記載の構成の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、SiOxからなる無機物のガスバリアー層を厚さ500nmとなるように形成した。これにより、酸素透過度が0.001mL/(m2・24h・atm)以下、水蒸気透過度が0.001g/(m2・24h)以下のガスバリアー性を有するフレキシブル性を有する基材(ガスバリアーフィルム)を作製した。
【0231】
その後、厚さが150nmとなるよう、ITO(In2O3:SnO2=90:10 質量%比)をスパッタリング法で成膜した後、パターニングを行い、陽極を形成した。なお、パターンは発光領域の面積が10mm×40mmとなるようにした。続いて、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した後、乾燥窒素ガスで乾燥させて、UVオゾン洗浄を5分間行った。
【0232】
(有機機能層群の形成)
上記方法で作製した陽極を、露点―80℃以下、酸素濃度1ppm以下のグローブボックス内にて乾燥させたのち、真空蒸着装置内に移送した。真空蒸着装置内のるつぼ(モリブデン製、又はタングステン製の抵抗加熱用材料製)に、下記の各有機機能層の構成材料を有機EL素子の作製に必要とする量を充填した。
【0233】
〈正孔注入層の形成〉
上記真空蒸着装置を1×10-4Paまで減圧し、化合物HIL-1(MTDATA)を、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、陽極上に厚さ15nmの正孔注入層(以下、HILと表記)を形成した。
【0234】
〈正孔輸送層の形成〉
次いで、下記化合物HTL-1(α-NPD)をHIL上に蒸着し、厚さ30nmの正孔輸送層(HTL)を形成した。
【0235】
〈赤色りん光発光層の形成〉
続いて、発光ホストである化合物H-1とドーパントである化合物DP-1の入った加熱ボートをそれぞれ独立に通電し、H-1とDP-1の蒸着速度が100:6となるように調整し、厚さ20nmの赤色りん光発光層(EML)を形成した。
【0236】
〈電子輸送層の形成〉
次いで、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)の入った前記加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、EML上に厚さ25nmの電子輸送層(ETL)層を形成した。
【0237】
〈電子注入層の形成〉
次いで、LiFを蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、厚さ1nmの電子注入層(EIL)を形成した。
【0238】
(陰極の形成)
続いて、アルミニウムを厚さ70nmで蒸着して、陰極を形成した。
【0239】
(封止構造の形成)
次いで、上記で得られた陽極~陰極までの積層体の陰極上に、市販のロールラミネート装置を用いて封止基材を接着した。封止基材は、可撓性を有する厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム(株)製)に、ドライラミネーション用の2液反応型のウレタン系接着剤を用いて厚さ1.5μmの接着剤層を設け、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートして作製した。
【0240】
この封止基材のアルミニウム箔の接着面(つや面)に沿って、ディスペンサーを用いて熱硬化性接着剤を均一に塗布し、厚さ20μmの接着層を形成した。これを100Pa以下の減圧下で12時間乾燥させた。なお、熱硬化性接着剤としては、下記(A)~(C)構成成分を混合させたものを用いた。
【0241】
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
次いで、封止基材を露点温度-80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動して、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率が100ppm以下となるように調整した。
【0242】
最後に、封止基材を積層体に対して密着・配置し、圧着ロールを用いて、温度100℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/分の条件で密着封止し、その後、110℃で30分間の加熱処理を施すことにより、接着剤を硬化させ、有機EL素子Aを得た。
【0243】
有機EL素子Aの作製に用いた各構成材料の詳細は、以下の通りである。
【化57】
〔LEDパッケージの作製〕
国際公開第2015/011925号に記載の方法に従って、点光源として、基板上にAlGaAs系の赤色発光LED及び金属部が配置されたLEDパッケージを作製した。
【0244】
〔波長変換フィルター1の作製〕
下記の方法に従って、波長変換フィルター1を作製した。
【0245】
溶媒であるトルエンに、マトリックス材料であるポリスチレン(ACROS ORGANICS社製、重量平均分子量Mw=260000)と発光色素A-1(例示化合物(5)前出)とを、質量比で99:1となるように添加し、これらをナスフラスコに入れて80℃に加熱撹拌して十分に溶解させた。
【0246】
次いで、得られた混合溶液を、前述した有機EL素子の基材として用いたものと同様のガスバリアーフィルム上に、アプリケーターを用いて塗布し、室温で10分乾燥させた後、さらに80℃で10分加熱乾燥を行って、厚さ40μmの発光色素層を形成した。その後、封止用の接着剤を付けたガスバリアーフィルムを用意して塗布面と張り合わせ、90℃の加熱条件で真空ラミネーターを用いて封止を行った。その後、110℃で30分加熱処理を行うことにより接着剤を硬化させ、波長変換フィルター1を作製した。
【0247】
《発光体の作製》
〔発光体1の作製〕
上記作製した点光源であるLEDパッケージの発光面と、波長変換フィルター1とを密着させることにより、点発光体である発光体1を作製した。
【0248】
〔発光体2の作製〕
上記作製した面光源である有機EL素子Aの発光面と、波長変換フィルター1とを密着させることにより、
図7で示す構成の面発光体である発光体2を作製した。
【0249】
《生体撮像装置の作製》
〔生体撮像装置1-1の作製〕
生体撮像装置1-1は、近赤外線を発する発光体として、上記作製した点光源であるLEDパッケージと波長変換フィルター1とから構成される発光体1を用い、点光源の発光を調整する制御部と、被認証体として人間の人差し指を用い、そこからの静脈の散乱光を検出して撮像を行う撮像部(イメージセンサー)として、近赤外領域に感度を有する市販のCMOSセンサーを具備した撮像装置と、画像処理を行う認証部とから構成し、同一平面上に、発光体1と撮像部を、
図2Bで示す構成で配置した。このとき、発光体1を構成するLED光源の端部と、撮像部の端部間の距離Wが9mmとなる条件で配置した。
【0250】
〔生体撮像装置1-2及び1-3の作製〕
上記生体撮像装置1-1の作製において、発光体1を構成するLED光源の端部と撮像部の端部間の距離Wを、それぞれ20mm、35mmに変更した以外は同様にして、生体撮像装置1-2及び1-3を作製した。
【0251】
〔生体撮像装置1-4の作製〕
生体撮像装置1-4は、近赤外線を発する発光体として、上記作製した面光源である有機EL素子Aと波長変換フィルター1とから構成される発光体2を用い、面光源の発光を調整する制御部と、被認証体として人間の人差し指を用い、そこからの静脈の散乱光を検出して撮像を行う撮像部(イメージセンサー)として、近赤外領域に感度を有する市販のCMOSセンサーを具備した撮像装置と、画像処理を行う認証部とから構成し、同一平面上に、発光体2と撮像部を、
図2Bで示す構成で配置した。このとき、発光体2を構成する有機EL素子の
図3で示すような発光領域の端部と、撮像部の端部間の距離Wが9mmとなる条件で配置した。
【0252】
〔生体撮像装置1-5~1-13の作製〕
上記生体撮像装置1-4の作製において、発光体2を構成する有機EL素子の
図3で示すような発光領域の端部と、撮像部の端部間の距離Wを、それぞれ表XIIIに記載の条件となるように同一平面上に配置した以外は同様にして、生体撮像装置1-5~1-13を作製した。
【0253】
《撮像画像の評価》
上記生体撮像装置で撮像した静脈画像について、下記の方法に従って明度特性を評価した。画像の編集及び加工には、市販のソフトウェアであるGIMP(GNU Image Manipulation Program、GNU GPLの下で配布)を用いた。
【0254】
認証部により得られた各画像処理データについて、静脈部のみを選択して切り出した画像をI、それ以外の領域の画像をIIとして、それぞれ2種のデータに切り分けた。その後、各データについて各画素数(8ビット256階調とした)の明度の分布を示すヒストグラムを作成した。
【0255】
(1.コントラスト特性の評価)
得られた画像IIの各データのヒストグラムにおいて、階調が0~50となる領域(暗い画像部分)及び205~255となる領域(いずれも画像として不適な条件の画像)の合計の画素数をXとし、最適な範囲の輝度値である51~204までの範囲の画像数の合計をYとしたとき、下記式(A)に従い、コントラスト特性を測定し、下記の基準に従って、撮像画像のコントラストの評価を行った。
【0256】
式(A) コントラスト特性=X/(X+Y)
◎:コントラスト特性(X/(X+Y))が、0.33未満
〇:コントラスト特性(X/(X+Y))が、0.33以上、0.50未満
△:コントラスト特性(X/(X+Y))が、0.50以上、0.67未満
×:コントラスト特性(X/(X+Y))が、0.67以上
(2.静脈部画素数の評価)
得られた画像Iの各データのヒストグラムにおいて、画像Iを形成する各階調の度数の合計値を算出し、静脈部の画素数を算出した。
【0257】
上記評価1及び2で得られた結果を、表XIIIに示す。なお、評価2は生体撮像装置1-7の結果を100としたときの相対値で記載した。
【表1】
表XIIIに記載の結果より明らかなように、発光光源として面光源を使用し、同一平面上に配置された面光源である有機EL素子に発光領域の端部と、撮像部の端部間の距離Wを、10~45mmの範囲内に設定した本発明の生体撮像装置は、比較例に対し、生体認証により得られる撮像画像は、指面表面からの反射光の映り込みがなく、コントラスト特性優れていることがわかる。また静脈部を形成する画素数についても、距離Wが本願範囲の場合は認識に十分な量存在する一方、生体撮像装置1-13のように45mmを超えた位置にすることで急激に減少した。また、比較例である生体撮像装置1-1、1-2、1-3、1-4では、反射光が映り込み画像が飽和したことで静脈部の識別が難しく、測定が困難であった。よって、面光源を用いて距離Wを10~45mmの範囲内、更に15~40mm、より好ましくは20~40mmとした場合に精度良く認証を行うことができることがわかる。
【0258】
実施例2
《タッチセンサー機能付き有機ELモジュールの作製》
有機EL素子に対し、
図4及び
図5で示すような発光素子駆動回路ユニット12とタッチ検知回路14を付与したタッチセンサー機能付きの有機ELモジュールを作製した。
【0259】
有機EL素子の構成は、実施例1で作製した有機EL素子Aと同一の構成とした。
【0260】
図5で示す発光素子駆動回路ユニット12を構成する発光素子駆動回路23は、
図9に示す構成とした。
【0261】
図9は、発光素子駆動回路ユニットを構成する発光素子駆動回路の概略回路図である。
【0262】
図9において、発光素子駆動回路部23としては、昇圧型又は降圧型のDC-DCコンバーター回路31、DC-DCコンバーターのスイッチ素子制御回路32、電流値のフィードバック回路33で構成した。
【0263】
また、タッチ検知回路部24としては、増幅器、フィルター、AD変換器、整流平滑回路、比較器で構成される直列容量分圧比較方式(オムロン方式)とした。
【0264】
《面発光体3の作製》
上記作製した面光源であるタッチセンサー機能付き有機ELモジュールの発光面と、実施例1で作製した波長変換フィルター1とを密着させることにより、
図7で示す構成の面発光体3を作製した。
【0265】
《生体撮像装置2-1~2-10の作製》
実施例1に記載の生体撮像装置1-4~1-13の作製において、面発光体として、有機EL素子Aを具備した発光体2に代えて、上記作製したタッチセンサー機能付き有機ELモジュールを具備した面発光体3に変更した以外は同様にして、生体撮像装置2-1~2-10を作製した。
【0266】
《撮像画像の評価》
上記作製した生体撮像装置2-1~2-8について、実施例1に記載の方法と同様にし て、撮像画像の評価を行い、得られた結果を表XIVに示す。
【表2】
表XIVに記載の結果より明らかなように、面光源としてタッチセンサー機能付き有機ELモジュールを用いた場合でも、実施例1と同様に、コントラスト特性優れている生体認証画像を得ることができた。
【0267】
さらに、タッチセンサー機能付き有機ELモジュールを用いることにより、実施例1に記載の構成に対し、操作性及び省電力性に優れていることを確認することができた。
【0268】
実施例3
《脈波センサー3-1の作製》
脈波センサー3-1は、近赤外線を発する発光体として、上記作製した面光源である有機EL素子Aと波長変換フィルター1とから構成される発光体2を用い、面光源の発光を調整する制御部と、測定対象として人間の人差し指および手首を用い、そこからの動脈の散乱光を検出して脈波信号を取得する測定部として、近赤外領域に感度を有する市販のフォトダイオードを具備した測定装置とから構成し、同一平面上に、発光体2と測定部を、
図10Bで示す構成で配置した。このとき、発光体2を構成する有機EL素子の
図3で示すような発光領域の端部と、撮像部の端部間の距離Wが9mmとなる条件で配置した。
【0269】
《脈波センサー3-2~3-6の作製》
上記脈波センサー3-1の作製において、発光体2を構成する有機EL素子の
図3で示すような発光領域の端部と、測定部の端部間の距離Wを、それぞれ表XVに記載の条件となるように同一平面上に配置した以外は同様にして、脈波センサー3-2~3-6を作製した。
【0270】
《脈波測定の評価》
上記脈波センサーで計測した脈波信号について、心臓の拍動に対応した脈の容積変化に由来するAC成分と、拍動成分を含まない生体組織からの反射光や散乱光のDC成分を算出した。この際、DC成分の値(DC)に対してAC成分の値(AC)が大きいほど、精度の高い脈波信号が得られていると言える。
そこで、下記式(B)に従い、脈波測定の評価を行い、下記の基準に従って、脈波測定評価を行った。
【0271】
式(B) 脈波測定=AC/DC
〇:脈波測定(AC/DC)が、1%以上
△:脈波測定(AC/DC)が、0.1%以上、1%未満
×:脈波測定(AC/DC)が、0.1%未満
【0272】
上記作製した脈波センサー3-1~3-6において、得られた脈波測定の評価結果を表XVに示す。
【表3】
【0273】
表XVに記載の結果より明らかなように、発光光源として面光源を使用し、同一平面上に配置された面光源である有機EL素子の発光領域の端部と、測定部の端部間の距離Wを、10~45mmの範囲内に設定した本発明の脈波センサーは、比較例に対し、人差し指と手首での脈波測定において、優位な結果を示した。
【0274】
実施例4
〔発光体3の作製〕
上記作製した発光体2において、波長変換フィルターの上部から、さらに赤色光を遮蔽するカットフィルターを密着させることにより、赤外光のみを照射する面発光体である発光体3を作製した。
【0275】
《パルスオキシメーター4-1の作製》
パルスオキシメーター4-1は、近赤外線を発する発光体として、上記作製した発光体3と、赤色光を発する発光体として、上記作製した有機EL素子A、動脈からの散乱光を検出する測定部としてのフォトダイオードを、
図11Bのように配置して作製した。この時、発光体3および有機EL素子Aの発光領域の端部と、測定部の端部間の距離Wがそれぞれ9mmとなる条件で配置し、人間の人差し指で測定を行ってSpO
2(動脈血酸素飽和度)を測定した。
【0276】
《パルスオキシメーター4-2~4-6の作製》
上記パルスオキシメーター4-1の作製において、発光体3および有機EL素子Aの発光領域の端部と、測定部の端部間の距離Wを、それぞれ表XVIに記載の条件となるように同一平面上に配置した以外は同様にして、パルスオキシメーター4-2~4-6を作製した。
【0277】
《SpO2評価》
上記作製したパルスオキシメーターと、市販のパルスオキシメーターを同時に装着してSpO2の計測を行い、その差異から計測したSpO2の値の正確性を求めた。
測定したSpO2は下記の基準に従って、評価を行った。
【0278】
〇:測定値の差異が、3%未満
△:測定値の差異が、3%以上、5%未満
×:測定値の差異が、5%以上、
【0279】
上記作製したパルスオキシメーター4-1~4-6において、得られたSpO2の評価結果を表XVIに示す。
【表4】
【0280】
表XVIに記載の結果より明らかなように、発光光源として面光源を使用し、同一平面上に配置された面光源である有機EL素子の発光領域の端部と、測定部の端部間の距離Wを、10~45mmの範囲内に設定した本発明のパルスオキシメーターは、比較例に対し、人差し指と手首でのSpO2測定において優位な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明の生体撮像装置は、生体表面からの反射光の入光を防止し、コントラストに優れた静脈の撮像ができ、認証精度の高い生体撮像装置であり、ATM、携帯電話機、PDA、パーソナルコンピュータ等における静脈を用いた認証に好適に使用することができる。また、本発明の生体計測装置は、優れた脈波測定能を有する脈波センサーや、優れたSpO2測定能を有するパルスオキシメーターに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0282】
2 有機ELパネル
3 陽極
4 第1のキャリア輸送機能層群
5 発光層
6 第2のキャリア輸送機能層群
7 陰極
8 封止用接着層
9 封止基板
11 透明基材
12 発光素子駆動回路ユニット
14 タッチ検出回路ユニット
21A、21B 有機EL素子の寄生容量
22、22A、22B 有機EL素子
23 発光素子駆動回路部
24 タッチ検知回路部
25、25A、25B 陽極配線
26、26A、26B 陰極配線
27 グランド
31 DC-DCコンバーター回路
32 DC-DCコンバーターのスイッチ素子制御回路
33 電流値のフィードバック回路
40 波長変換フィルター
51 有機光電変換層
52 対向電極
53 TFTユニット
54 画素電極
55 接続部
56 TFT
57 絶縁層
58 基材
A 生体撮像装置
B 静脈
Bz ベゼル
C 面光源
CA 面光源積層体
D 撮像部
F 指
G 生体計測装置
H 測定部
IR 近赤外光
L1 照射光
L2 散乱光
M 有機ELモジュール
PED 光電変換素子
R 赤色発光
SW1、SW2、SW3、SW4、SW5 スイッチ
U 有機機能層ユニット
W 端部間の距離