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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20240228BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H05K5/02 P
B60R16/02 610A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021016159
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119134
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 慧梧
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-340700(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0229258(US,A1)
【文献】特開2011-103446(JP,A)
【文献】国際公開第2006/120966(WO,A1)
【文献】特開2003-158386(JP,A)
【文献】特開平8-114788(JP,A)
【文献】特開2004-302212(JP,A)
【文献】実開昭50-853(JP,U)
【文献】特開2011-23459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
H05K 7/12
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する筐体であって、
箱状を成すとともに一面に開口部(16a)が形成されたケース(10)と、
四角形状の主面(S)を有する四角板状を成し、前記一面上において前記開口部を塞ぐように配置されたカバー(20)と、を備え、
前記カバーには、前記カバーの第1辺(241)から前記第1辺と対向する第2辺(242)側に凹む複数の第1切り欠き部(211、212)が形成されるとともに前記カバーの前記第2辺から前記第1辺側に凹む複数の第2切り欠き部(221、222)が形成され、
前記ケースの前記一面と交差する一側面には、前記カバーに形成された前記複数の第1切り欠き部に入り込んで前記複数の第1切り欠き部の凹み方向に折り曲げられた複数の第1ケース爪(141、142)が形成され、
前記ケースの前記一側面と対向する他の一面には、前記カバーに形成された前記複数の第2切り欠き部に入り込んで前記複数の第2切り欠き部の凹み方向に折り曲げられた複数の第2ケース爪(151、152)が形成され、
前記複数の第1切り欠き部の少なくとも1つの凹み量は、前記複数の第1切り欠き部の他の前記第1切り欠き部の前記凹み量よりも小さくなっている筐体。
【請求項2】
前記複数の第2切り欠き部の少なくとも1つの凹み量は、前記複数の前記第2切り欠き部の他の前記第2切り欠き部の凹み量よりも小さくなっている請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記複数の第1切り欠き部における前記主面の第1辺から前記第2辺側に凹む方向と直交する方向の長さを前記複数の第1切り欠き部の切り欠き幅としたとき、
前記複数の第1切り欠き部の少なくとも1つの切り欠き幅は、前記複数の前記第1切り欠き部の他の前記第1切り欠き部の切り欠き幅よりも小さくなっており、前記複数の第2切り欠き部の少なくとも1つの切り欠き幅は、前記複数の第2切り欠き部の他の前記第2切り欠き部の切り欠き幅よりも小さくなっている請求項1または2に記載の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を収納する筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された筐体がある。この筐体は、上ケースと下ケースを備え、上ケースと下ケースを結合させることにより形成される内部空間に電子装置の基板を収納するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-210882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載される電子制御装置等の電子装置においては、電子部品から放出される熱に対する耐熱性を確保するとともに、外部からの電磁ノイズによる影響や回路基板から放射される放射ノイズを低減する必要がある。このため、電子回路を搭載した基板を金属製の筐体の内部空間に収納してシールドするようにしている。
【0005】
比較例の筐体9の斜視図を図12に示す。図に示すように、筐体9は、箱状を成す金属製のケース90と、長方形状の主面Sを有する四角板状を成す金属製のカバー91と、を有している。カバー91は、ケース90の一面に形成された不図示の開口部を塞ぐように配置されている。また、カバー91の2つの長辺の一方に2つの切り欠き部911が形成され、カバー912つの長辺の他方にも2つの切り欠き部911が形成されている。各切り欠き部911は、それぞれカバー91の各長辺と直交する方向に凹むように形成されている。
【0006】
また、ケース90におけるカバー91の各切り欠き部911に対応する部位にそれぞれケース爪902が設けられている。そして、カバー91に形成された複数の切り欠き部911に入り込んだ各ケース爪902が各切り欠き部911の凹み方向に折り曲げられている。このように、各ケース爪902が折り曲げられることによってカバー91がケース90に係止され、カバー91がケース90に保持されるようになっている。
【0007】
このような筐体において、ケース90におけるケース爪902が形成された一面が、この面に対して直交する方向に衝撃を受けると、この面に形成された複数のケース爪902が同時に起き上がってしまうことがある。このように複数のケース爪902が同時に起き上がってしまうと、ケース90とカバー91の間にガタツキが発生して組付け不良となってしまうという課題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みたもので、ケース爪が形成された側面が衝撃を受けた際のガタツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、基板を収納する筐体であって、箱状を成すとともに一面に開口部(16a)が形成されたケース(10)と、四角形状の主面(S)を有する四角板状を成し、一面上において開口部を塞ぐように配置されたカバー(20)と、を備え、カバーには、カバーの第1辺(241)から第1辺と対向する第2辺(242)側に凹む複数の第1切り欠き部(211、212)が形成されるとともにカバーの第2辺から第1辺側に凹む複数の第2切り欠き部(221、222)が形成され、ケースの一面と交差する一側面には、カバーに形成された複数の第1切り欠き部に入り込んで複数の第1切り欠き部の凹み方向に折り曲げられた複数の第1ケース爪(141、142)が形成され、ケースの一側面と対向する面には、カバーに形成された複数の第2切り欠き部に入り込んで複数の第2切り欠き部の凹み方向に折り曲げられた複数の第2ケース爪(151、152)が形成され、複数の第1切り欠き部の少なくとも1つの凹み量は、複数の第1切り欠き部の他の第1切り欠き部の凹み量よりも小さくなっている。
【0010】
上記した構成によれば、複数の第1ケース爪が形成された一側面が衝撃を受けると、複数の第1切り欠き部のうち凹み量の少ない切り欠き部に配置された第1ケース爪に衝撃の大きな反作用の力が作用する。しかし、凹み量の大きな切り欠き部に配置された第1ケース爪への衝撃の反作用の力は、凹み量の少ない切り欠き部に配置された第1ケース爪より小さくなる。したがって、凹み量の大きな切り欠き部に配置された第1ケース爪は大きく起き上がるものの、凹み量の少ない切り欠き部に配置された第1ケース爪は大きく起き上がることなくカバーを保持し続ける。また、複数の第2切り欠き部に配置された複数のケース爪は衝撃の反作用の力が加わる配置となっていないので、複数の第2切り欠き部に配置された複数のケース爪も起き上がることなくカバーを保持し続ける。したがって、ケース爪が形成された側面が衝撃を受けた際のガタツキを抑制することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る筐体がブラケットに取り付けられた様子を表した図である。
図2】一実施形態に係る筐体を模式的に示した外観斜視図である。
図3図2に示した筐体をカバー側から見た外観斜視図であって、各ケース爪が折り曲げられてカバーがケースに保持された状態を表した図である。
図4】ケースの外観斜視図であって、各ケース爪が折り曲げられる前の状態を示した図である。
図5】一実施形態に係る筐体をカバー側から見た図であって、各ケース爪をカバーの各切り欠き部の位置に合わせた状態で、かつ、各ケース爪を折り曲げる前の状態を表した図である。
図6】衝撃によってケース爪が起き上がった状態を表した図である。
図7】凹み量の比較的大きな切り欠き部に配置されたケース爪に作用する力とケース爪の位置の変化を表した図である。
図8】凹み量の比較的小さな切り欠き部に配置されたケース爪に作用する力とケース爪の位置の変化を表した図である。
図9】比較例の筐体をカバー側から見た図であって、各ケース爪をカバーの各切り欠き部の位置に合わせた状態で、かつ、各ケース爪を折り曲げる前の状態を表した図である。
図10】切り欠き部の凹み始め部に形成される角部にケース爪が乗り上げる現象について説明するための模式図である。
図11】一実施形態に係る筐体のカバーの組み付けについて説明するための図である。
図12】比較例の筐体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図1図11を用いて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。図1に示すように、筐体1は、ブラケット2を介して車両のインストルメントパネルの内側等に取り付けられる。
【0014】
図2図3に示すように、筐体1は、ケース10とカバー20を備えている。ケース10とカバー20は、それぞれ金属により構成されている。具体的には、ケース10とカバー20は、それぞれ鉄により構成されている。
【0015】
図2図4に示すように、ケース10は、直方体の箱状を成しており、内部に不図示の電子制御装置の基板を収容する空間を形成している。図4に示すように、ケース10の後述する下面16には、開口部16aが形成されている。カバー20は、この開口部16aを塞ぐように配置されている。なお、カバー20におけるケース10の内部空間側の面には電子制御装置の基板が配置されている。
【0016】
ケース10は、上面11、正面12、背面13、右側面14、左側面15および下面16を有している。正面12と背面13は対向しており、右側面14と左側面15は対向しており、上面11は下面16と対向している。また、図4に示すように、正面12には、電子制御装置の基板に接続された不図示のコネクタを外部に露出させるための切り欠き121aが形成されている。正面12、背面13、右側面14および左側面15はケース10の側面を構成している。なお、ケース10の側面を構成している正面12、背面13、右側面14および左側面15は、それぞれ下面16と交差するように配置されている。
【0017】
図3図5に示すように、カバー20は、長方形状の主面Sを有する四角板状を成しており、下面16上に配置されている。カバー20の主面Sは、対向する第1辺241と第2辺242および対向する第3辺243と第4辺244を有している。第1辺241および第2辺242の長さは、第3辺243および第4辺244よりも長くなっている。
【0018】
カバー20には、主面Sの第1辺241から、この第1辺241と対向する第2辺242側に凹む切り欠き部211、212が形成されている。さらに、カバー20には、主面Sの第2辺242から第1辺241側に凹む切り欠き部221、222が形成されている。各切り欠き部211、212は、第1辺241に対して垂直方向に凹んでおり、各切り欠き部221、222は、第2辺242に対して垂直方向に凹んでいる。
【0019】
切り欠き部211、212は、第1辺241に並んで配置されている。また、切り欠き部221、222は、第2辺242に並んで配置されている。なお、切り欠き部211、212は第1切り欠き部に相当し、切り欠き部221、222は第2切り欠き部に相当する。
また、図3図4に示すように、カバー20の第3辺243には長方形を成す板部材23が立設されている。板部材23における第3辺243の長さ方向の長さは、ケース10における切り欠き121a第3辺243の長さ方向の長さと同じになっている。また、板部材23における上下方向の長さは、ケース10の切り欠き121aの凹み方向の長さよりも短くなっている。板部材23がケース10の切り欠き121aに入り込むことによってカバー20の正面12に孔部121が形成されている。
【0020】
図3図5に示すように、ケース10の右側面14には、2つのケース爪141、142が形成され、ケース10の左側面15には、2つのケース爪151、152が形成されている。図4に示すように、ケース10にてカバー20を保持する前の状態では、ケース爪141、142は、それぞれ右側面14の下面16側の端部から上面11側と反対側に突出するように形成されている。また、ケース爪151、152は、それぞれ左側面15の下面16側の端部から上面11側と反対側に突出するように形成されている。
【0021】
ケース爪141は、ケース10の主面Sの第1辺241と第3辺243とが成す角部に対応し、ケース爪142は、ケース10の主面Sの第1辺241と第4辺244とが成す角部に対応するよう配置されている。また、ケース爪151は、ケース10の主面Sの第2辺242と第3辺243とが成す角部に対応し、ケース爪152は、ケース10の主面Sの第2辺242と第4辺244とが成す角部に対応するよう配置されている。
【0022】
また、ケース爪141と正面12との最短距離は、ケース爪151と正面12との最短距離と同じになっている。また、ケース爪142と背面13との最短距離は、ケース爪152と背面13との最短距離と同じになっている。また、ケース爪141とケース爪142との距離は、ケース爪151とケース爪152との距離と同じになっている。なお、ケース爪141、142は第1ケース爪に相当し、ケース爪151、152は第2ケース爪に相当する。
【0023】
また、図5に示すように、ケース爪141とケース爪142は、それぞれカバー20に形成された切り欠き部211と切り欠き部212に対応する位置に形成されている。また、ケース爪151とケース爪152は、それぞれカバー20に形成された切り欠き部221と切り欠き部222に対応する位置に形成されている。また、図4に示すケース爪141、142、151、152の長さLはそれぞれ同じとなっており、図4に示すケース爪141、142、151、152の幅dについても、それぞれ同じとなっている。
【0024】
具体的には、ケース爪141、142、151、152の長さLは9ミリメートル、ケース爪141、142、151、152の板厚は0.6ミリメートルとなっている。また、ケース爪141、142、151、152の幅dは7ミリメートルとなっている。
【0025】
図5に示すように、本実施形態の切り欠き部211の凹み量D1は、切り欠き部212の凹み量D2よりも小さくなっている。また、切り欠き部221の凹み量D3は、切り欠き部222の凹み量D4よりも小さくなっている。切り欠き部211の凹み量D1および切り欠き部221の凹み量D3は同じになっており、切り欠き部212の凹み量D2および切り欠き部222の凹み量D4は同じになっている。
【0026】
具体的には、切り欠き部211の凹み量D1および切り欠き部221の凹み量D3は、それぞれ0.25ミリメートル、切り欠き部212の凹み量D2および切り欠き部222の凹み量D4は、それぞれ0.55ミリメートルとなっている。
【0027】
なお、切り欠き部212の凹み量D2と切り欠き部211の凹み量D1の差は0.1ミリメートル以上とするのが好ましい。また、切り欠き部222の凹み量D4と切り欠き部221の凹み量D3の差についても0.1ミリメートル以上とするのが好ましい。
【0028】
なお、切り欠き部211の凹み量D1は、主面Sの第1辺241から第2辺242側に凹む切り欠き部211の凹み量である。また、切り欠き部212の凹み量D2は、主面Sの第1辺241から第2辺242側に凹む切り欠き部212の凹み量である。また、切り欠き部221の凹み量D3は、第2辺242から第1辺241側に凹む切り欠き部221の凹み量である。また、切り欠き部222の凹み量D4は、第2辺242から第1辺241側に凹む切り欠き部222の凹み量である。
【0029】
また、本実施形態の切り欠き部211の幅W1は、切り欠き部212の幅W2よりも小さくなっている。また、切り欠き部221の幅W3は、切り欠き部222の幅W4よりも小さくなっている。また、切り欠き部211の幅W1および切り欠き部221の幅W3は同じになっている。また、切り欠き部212の幅W2および切り欠き部222の幅W4は同じになっている。
【0030】
具体的には、切り欠き部211の幅W1および切り欠き部221の幅W3は、それぞれ7.2ミリメートル、切り欠き部212の幅W2および切り欠き部222の幅W4は、それぞれ8.5ミリメートルとなっている。
【0031】
なお、本実施形態の切り欠き部211の幅W1は、切り欠き部211の凹み方向と直交する方向の長さである。また、切り欠き部212の幅W2は、切り欠き部212の凹み方向と直交する方向の長さである。また、切り欠き部221の幅W3は、切り欠き部221の凹み方向と直交する方向の長さである。また、切り欠き部222の幅W4は、切り欠き部222の凹み方向と直交する方向の長さである。
【0032】
図3図5に示すように、カバー20の各切り欠き部211、212、221、222に入り込んだ各ケース爪141、142、151、152が、各切り欠き部211、212、221、222の凹み方向に折り曲げられている。このように、各ケース爪141、142、151、152が折り曲げられることにより、カバー20が各ケース爪141、142、151、152に係止され、カバー20がケース10に保持されるようになっている。
【0033】
このような構成において、例えば、図6に示すように、ケース10の右側面14が、矢印F1に示す方向の衝撃を受けると、この衝撃と反対の矢印F2に示す方向の反作用が生じる。そして、この反作用によりケース爪142が起き上がってしまうと、ケース10とカバー20の間にガタツキが発生して異音が発生してしまう。
組付け不良となってしまう。
【0034】
そこで、本実施形態の筐体1では、切り欠き部211の凹み量D1を切り欠き部212の凹み量D2よりも小さくすることにより、ケース爪141、142が受ける衝撃を異ならせ、ケース10とカバー20の間にガタツキを抑制している。
【0035】
ここで、右側面14が衝撃を受けた場合のケース爪141とケース爪142に作用する力の違いについて説明する。
【0036】
図7は、切り欠き部211よりも凹み量の大きな切り欠き部212に配置されたケース爪142が形成された右側面14が衝撃を受けた場合におけるケース爪142に作用する力とケース爪142の位置の変化を表している。図7中の点線L1は、右側面14が衝撃を受けた後のカバー20の位置を表している。
【0037】
図中、左側から右側に向けて右側面14への衝撃が発生すると、カバー20には図中、右側から左側への反作用の力が作用し、カバー20は点線L1に示す位置に移動する。この際、ケース爪142には、矢印F3に示す反作用の力が作用する。矢印F3に示す反作用の力は、F31と力F32の成分に分解することができる。なお、F31は、ケース爪142を押し上げる力である。そして、ケース爪142を押し上げる力F31の成分により、ケース爪142が押し上げられる。
【0038】
図8は、切り欠き部212よりも凹み量の小さな切り欠き部211に配置されたケース爪141が形成された右側面14が衝撃を受けた場合にケース爪141の位置の変化を表している。図8中の点線L1は、右側面14が衝撃を受けた後のカバー20の位置を表している。
【0039】
図中、左側から右側に向けて右側面14への衝撃が発生すると、カバー20には図中、右側から左側への反作用の力が作用し、カバー20は点線L1に示す位置に移動する。この際、ケース爪141には、矢印F4に示す反作用の力が作用する。矢印F4に示す反作用の力は、F41と力F42の成分に分解することができる。なお、F41はケース爪141を押し上げる力である。そして、ケース爪141を押し上げる力F41の成分により、ケース爪141が押し上げられる。
【0040】
ここで、図7図8を比較すると、ケース爪141を押し上げる力F41の方がケース爪142を押し上げる力F31よりも大きくなっている。そして、衝撃印加後のケース爪141の位置が衝撃印加後のケース爪142の位置よりも大きく起き上がっている。
【0041】
これは、切り欠き部212よりも凹み量の小さな切り欠き部211にケース爪141が配置されており、ケース爪141よりもケース爪141の方がより根元の近くでカバー20からの反作用の力を受けるためである。
【0042】
したがって、上記右側面14への衝撃が発生すると、その衝撃の反作用の力により、切り欠き部211に配置されたケース爪141は大きく起き上がるものの、切り欠き部212に配置されたケース爪142は大きく起き上がることなくカバー20を保持し続ける。さらに、切り欠き部221に配置されたケース爪151および切り欠き部222に配置されたケース爪152は、それぞれ衝撃の反作用の力が加わる配置となっていないため、起き上がることなくカバー20を保持し続ける。すなわち、ケース爪142、ケース爪151およびケース爪152の3箇所でカバー20を保持し続けることができる。
【0043】
以上、右側面14への衝撃が発生した場合について説明した。次に、ケース爪141、152、151、152が正常に組み付けられた状態で左側面15への衝撃が発生した場合について説明する。
【0044】
この場合、その衝撃の反作用の力により、切り欠き部221に配置されたケース爪151は大きく起き上がるものの、切り欠き部222に配置されたケース爪152は大きく起き上がることなくカバー20を保持し続ける。さらに、ケース爪141およびケース爪142は、それぞれ衝撃の反作用の力が加わる配置となっていないため、起き上がることなくカバー20を保持し続ける。すなわち、ケース爪152、ケース爪141およびケース爪142の3箇所でカバー20を保持し続けることができる。
【0045】
図9は、図12に示した比較例の筐体9をカバー91側から見た図であって、各ケース爪902をカバー91の各切り欠き部911の位置に合わせた状態で、かつ、各ケース爪902を折り曲げる前の状態を表した図である。この筐体1は、各切り欠き部911の凹み量が、図5に示した切り欠き部212の凹み量D2と同じとなっており、各切り欠き部911の幅が、図5に示した切り欠き部212の幅W2と同じとなっている。
【0046】
図10は、切り欠き部911の凹み始め部に形成される角部Cにケース爪902が乗り上げてしまう場合について説明するための模式図である。なお、図10において、ケース90とカバー91を区別するためカバー91にハッチングを施してある。
【0047】
図9に示した筐体9においては、例えば、図10(a)に示すように、カバー91に対してケース90が図中左側に寄ってしまうと、図中左側のケース爪902がカバー91の外形からはみ出してしまう。
【0048】
このように、ケース爪902がカバー91の外形からはみ出してしまうと、図10(b)に示すように、ケース爪902を折り曲げる際に作業者がケース90を大きく捻ってしまう。そして、ケース爪902が切り欠き部911の凹み始め部に形成される角部Cに乗り上げてしまう。このように、角部Cにケース爪902が乗り上げてしまうと組付け不良となってしまう。
【0049】
しかし、本実施形態の筐体1は、切り欠き部211の凹み量D1および切り欠き部221の凹み量D3が、切り欠き部222の凹み量D2および切り欠き部222の凹み量D4よりも小さくなっている。したがって、図11に示すように、カバー20の組付け時にケース爪141およびケース爪142がカバー20の外形からはみ出し難くすることができる。
【0050】
これにより、ケース爪141、142、151、152を折り曲げる際に作業者がケース10を捻って切り欠き部211、212、221、222の凹み始め部に形成される角部にケース爪141、142、151、152が乗り上げるのを防止することができる。したがって、より確実に、組付け不良となってしまうことを防止することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の筐体1は、ケース爪141が配置される切り欠き部211の幅W1が、ケース爪142が配置される切り欠き部212の幅W2よりも小さくなっている。また、本実施形態の筐体1は、ケース爪151が配置される切り欠き部221の幅W3が、ケース爪152が配置される切り欠き部222の幅W4よりも小さくなっている。
【0052】
このため、さらに、カバー20の組付け時に作業者がケース10を捻りにくくなり、切り欠き部211、212、221、222の凹み始め部に形成される角部にケース爪141、142、151、152が乗り上げてしまうことを防止することができる。したがって、組付け不良となってしまうことを防止することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の筐体は、基板を収納する筐体1であって、箱状を成すとともに一面である下面16に開口部16aが形成されたケース10を備えている。また、筐体1は、長方形状の主面Sを有する四角板状を成し、一面上において開口部16aを塞ぐように配置されたカバー20を備えている。カバー20には、カバー20の第1辺241から第1辺241と対向する第2辺242側に凹む複数の切り欠き部211、212が形成されるとともにカバー20の第2辺242から第1辺241側に凹む複数の切り欠き部221、222が形成されている。
【0054】
ケース10の一面である下面16と交差する一側面である右側面14には、カバー20の複数の切り欠き部211、212に入り込んで複数の切り欠き部211、212の凹み方向に折り曲げられた複数の第1ケース爪141、142が形成されている。また、ケース10の右側面14と対向する面である左側面15には、カバー20に形成された複数の切り欠き部221、222に入り込んで複数の切り欠き部221、222の凹み方向に折り曲げられた複数の第2ケース爪151、152が形成されている。そして、切り欠き部211の凹み量D1は、切り欠き部212の凹み量D2よりも小さくなっている。
【0055】
上記した構成によれば、複数のケース爪141、142が形成された右側面14が衝撃を受けると、複数の切り欠き部211、212のうち凹み量の少ない切り欠き部211に配置されたケース爪141に衝撃の大きな反作用の力が作用する。しかし、凹み量の大きな切り欠き部212に配置されたケース爪142への衝撃の反作用の力はケース爪141より小さくなる。したがって、凹み量の少ない切り欠き部211に配置されたケース爪141は大きく起き上がるものの、凹み量の大きな切り欠き部212に配置されたケース爪142は大きく起き上がることなくカバー20を保持し続ける。また、複数の切り欠き部221、222に配置された複数のケース爪151、152は衝撃の反作用の力が加わる配置となっていないので、複数のケース爪151、152も起き上がることなくカバー20を保持し続ける。したがって、ケース爪141、142が形成された側面が衝撃を受けた際のガタツキを抑制するとともに異音の発生を抑制することができる。
【0056】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0057】
(1)上記実施形態では、複数の切り欠き部211、212のうち切り欠き部211の凹み量が切り欠き部212の凹み量よりも小さくなっている。さらに、複数の切り欠き部221、222のうち切り欠き部221の凹み量が切り欠き部222の凹み量よりも小さくなっている。
【0058】
これよれば、複数のケース爪151、152が形成された一側面である左側面15が衝撃を受けると、複数の切り欠き部221、222のうち凹み量の少ない切り欠き部221に配置されたケース爪151に衝撃の大きな反作用の力が作用する。しかし、凹み量の大きな切り欠き部222に配置された他のケース爪152への衝撃の反作用の力はケース爪151より小さくなる。したがって、凹み量の少ない切り欠き部221に配置されたケース爪151は大きく起き上がるものの、凹み量の大きなケース爪152は大きく起き上がることなくカバー20を保持し続ける。また、複数の切り欠き部211、212に配置された複数のケース爪141、142には衝撃の反作用の力が加わる構成となっていないので、複数のケース爪141、142も起き上がることなくカバー20を保持し続ける。したがって、ケース爪151、152が形成された側面が衝撃を受けた際のガタツキを抑制することができる。
【0059】
(2)上記実施形態では、複数の切り欠き部211の凹み量D1は、切り欠き部212の凹み量D2よりも小さくなっており、さらに、複数の切り欠き部221の凹み量D3は、切り欠き部222の凹み量D4よりも小さくなっている。したがって、カバー20の組付け時に各ケース爪141、142、151、152がカバー20の外形からはみ出し難くすることができる。
【0060】
これにより、カバー20の組付け時に作業者がケース10を捻って切り欠き部211、212、221、222の凹み始め部に形成される角部にケース爪141、142、151、152が乗り上げてしまうことを防止することができる。したがって、組付け不良となってしまうことを防止することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、複数の切り欠き部211における第1辺241から第2辺242側に凹む方向と直交する方向の長さを切り欠き幅W1とする。また、複数の切り欠き部212における第1辺241から第2辺242側に凹む方向と直交する方向の長さを切り欠き幅W2とする。また、切り欠き部221における第2辺242から第1辺241側に凹む方向と直交する方向の長さを切り欠き幅W3とし、切り欠き部222における第2辺242から第1辺241側に凹む方向と直交する方向の長さを切り欠き幅W4とする。
【0062】
このとき、複数の切り欠き部211の切り欠き幅W1は、切り欠き部212の他の切り欠き幅W2よりも小さくなっている。それに対応して、切り欠き部221の切り欠き幅W3は、切り欠き部222の切り欠き幅W4よりも小さくなっている。
【0063】
このため、さらに、カバー20の組付け時に作業者がケース10を捻りにくくなり、切り欠き部211、212、221、222の凹み始め部に形成される角部にケース爪141、142、151、152が乗り上げてしまうことを防止することができる。したがって、より確実に、組付け不良となってしまうことを防止することができる。
【0064】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態のカバー20には、第1辺241に複数の第1切り欠き部として2つの切り欠き部211、212が形成され、カバー20の第2辺242に複数の第2切り欠き部として2つの切り欠き部221、222が形成されている。しかし、複数の第1切り欠き部の数および第2切り欠き部の数はそれぞれ3つ以上としてもよい。なお、第1辺241と第2辺242に、それぞれ3つ以上の切り欠き部を形成した場合、各辺241、242に対して、それぞれ複数の切り欠き部の少なくとも1つの凹み量が、複数の切り欠き部の他の切り欠き部よりも小さくなるよう構成する。また、複数の切り欠き部に対応させてケース10に複数のケース爪を形成する。
【0065】
(2)上記実施形態では、カバー20の第1辺241に2つの切り欠き部211、212が形成され、カバー20の第2辺242に2つの切り欠き部221、222が形成されている。そして、切り欠き部211、221の凹み量が切り欠き部212、222よりも小さくなっている。しかし、切り欠き部212、222の凹み量D2、D4が切り欠き部211、221の凹み量D1、D3よりも小さくなるよう構成してもよい。また、切り欠き部212、222の凹み量D2、D4が切り欠き部211、221の凹み量D1、D3よりも小さくなるよう構成してもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、カバー20の第1辺241に形成された2つの切り欠き部211、212の凹み量を異ならせるとともに、カバー20の第2辺242に形成された2つの切り欠き部221、222の凹み量を異ならせるようにした。これに対し、カバー20の第1辺241に形成された2つの切り欠き部211、212の凹み量を異ならせ、カバー20の第2辺242に形成された2つの切り欠き部221、222の凹み量を同じにしてもよい。また、カバー20の第2辺242に形成された2つの切り欠き部221、222の凹み量を異ならせ、カバー20の第1辺241に形成された2つの切り欠き部211、212の凹み量を同じにしてもよい。
【0067】
(4)上記実施形態では、ケース10とカバー20を鉄により構成したが、鉄以外の金属により構成することもできる。また、ケース10とカバー20は同じ金属である場合に限らず、異なる材質の金属で構成してもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では、ケース爪141と正面12との最短距離と、ケース爪151と正面12との最短距離とが同じになるよう構成したが、異なるように構成してもよい。その場合、各ケース爪141、151の位置に合せて各切り欠き部211、221の位置を変更する。また、上記実施形態では、ケース爪142と背面13との最短距離と、ケース爪152と背面13との最短距離とが同じになるよう構成したが、異なるよう構成してもよい。その場合、各ケース爪142、152の位置に合せて各切り欠き部212、222の位置を変更する。
【0069】
(6)上記実施形態では、ケース爪141とケース爪142との距離と、ケース爪151とケース爪152との距離が同じになるよう構成したが、異なるよう構成してもよい。その場合、各ケース爪141、142、151、152の位置に合わせて各切り欠き部211、212、221、222の位置を変更する。
【0070】
(7)上記実施形態において、各切り欠き部211、212、221、222の凹み量D1~D4を変更してもよく、各切り欠き部211、212、221、222の幅W1~W4を変更してもよい。
【0071】
(8)上記実施形態の筐体1は、長方形状の主面Sを有するカバー20を備えている。これに対し、正方形状の主面Sを有するカバー20を備えた構成とすることもできる。また、長方形状、正方形状以外の四角形状の主面Sを有するカバー20を備えた構成とすることもできる。
【0072】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記実施形態、すなわち一実施形態および他の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1 筐体
10 ケース
15 開口部
20 カバー
141、142、151、152 ケース爪
211、212、221、222 切り欠き部
図1
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