(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】遠隔操作支援システムおよび遠隔操作支援方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240228BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E02F9/26 B
H04N7/18 J
(21)【出願番号】P 2021017122
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真輝
(72)【発明者】
【氏名】上村 佑介
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 洋一郎
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-54464(JP,A)
【文献】特開2020-131365(JP,A)
【文献】特開2020-2717(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188389(WO,A1)
【文献】特開2020-160777(JP,A)
【文献】特開2020-183696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作装置による作業機械の遠隔操作を支援するための遠隔操作支援システムであって、
前記作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された、前記作業機械に搭載され、かつ、実空間において前記撮像装置による撮像範囲と重複する測距範囲を有する測距装置に付されたマーカを含む撮像画像に基づき、前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置および相対姿勢を認識する第1支援処理要素と、
前記第1支援処理要素により認識された前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置および相対姿勢に基づき、前記遠隔操作装置を構成する遠隔出力インターフェースに出力される、前記測距装置により取得された測距画像に含まれる情報が前記撮像画像に組み込まれた環境画像を生成する第2支援処理要素と、
を備えている遠隔操作支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔操作支援システムにおいて、
前記第1支援処理要素は、前記撮像画像における前記マーカのサイズおよび表示位置に応じて前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置を認識する 遠隔操作支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遠隔操作支援システムにおいて、
前記測距装置に付されたマーカは複数であり、
前記第1支援処理要素は、複数の前記マーカに応じて前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対姿勢を認識する
遠隔操作支援システム。
【請求項4】
遠隔操作装置による作業機械の遠隔操作を支援するための遠隔操作支援方法であって、って、
前記作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された、前記作業機械に搭載され、かつ、実空間において前記撮像装置による撮像範囲と重複する測距範囲を有する測距装置に付されたマーカを含む撮像画像に基づき、前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置および相対姿勢を認識する第1支援処理ステップと、
前記第1支援処理ステップにおいて認識された前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置および相対姿勢に基づき、前記遠隔操作装置を構成する遠隔出力インターフェースに出力される、前記測距装置により取得された測距画像に含まれる情報が前記撮像画像に組み込まれた環境画像を生成する第2支援処理ステップと、
を含んでいる遠隔操作支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作装置により油圧ショベル等の作業機械を遠隔操作する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔ショベルにおいて、距離検出装置が求めた距離の情報から旋回体の旋回中心軸を中心とする円弧の画像を生成し、カメラで撮影した画像と合成した合成画像を表示装置に表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。カメラで撮影した2次元映像だと奥行感・地形の凹凸がわからないので、従来技術では、LIDAR等の距センサで取得した地形情報をカメラ映像に重畳させ、奥行感や地面の凹凸情報をオペレータに認識できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カメラで取得される画像データと、LIDARで取得される距離情報とがずれた状態で合成されると有用性が低い情報しか生成されない。このため、画像データと距離情報とを的確に合成する技術が必要とされている。
【0005】
そこで、本発明は、作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された撮像画像と、同じ作業機械に搭載されている測距装置を通じて取得された測距画像に含まれる測距情報と、が的確に複合された環境画像を生成することができる技術的手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遠隔操作支援サーバは、
遠隔操作装置による作業機械の遠隔操作を支援するための遠隔操作支援システムであって、
前記作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された、前記作業機械に搭載され、かつ、実空間において前記撮像装置による撮像範囲と重複する測距範囲を有する測距装置に付されたマーカを含む撮像画像に基づき、前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置および相対姿勢を認識する第1支援処理要素と、
前記第1支援処理要素により認識された前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置および相対姿勢に基づき、前記遠隔操作装置を構成する遠隔出力インターフェースに出力される、前記測距装置により取得された測距画像に含まれる情報が前記撮像画像に組み込まれた環境画像を生成する第2支援処理要素と、
を備えている。
【0007】
当該構成の遠隔操作支援システムによれば、作業機械に搭載されている撮像装置を通じて取得された撮像画像、ひいては同じく作業機械に搭載されている測距装置に付されたマーカの映り込み態様に基づき、撮像装置を基準とした測距装置の相対位置および相対姿勢が認識される。撮像装置を基準とした測距装置の相対位置および相対姿勢、ひいては撮像画像座標系および測距画像座標系の座標変換態様に基づき、測距画像に含まれる距離情報が撮像画像に組み込まれた環境画像が生成される。この環境画像が遠隔操作装置を構成する遠隔出力インターフェースに出力されることにより、当該環境画像に接したオペレータに撮像画像(2次元画像)に映り込んでいる物体の3次元実空間における位置(または位置および姿勢)を的確に認識させることができる。
【0008】
また、本発明の遠隔操作支援システムにおいて、前記第1支援処理要素は、前記撮像画像における前記マーカのサイズに応じて前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対位置を認識する。
【0009】
当該構成の遠隔操作支援システムによれば、撮像画像(2次元画像)に映り込んでいるマーカのサイズおよび表示位置に応じて撮像装置を基準とした測距装置の相対位置が認識される。これにより、マーカの映り込み態様に基づいて撮像装置を基準とした測距装置の相対位置が認識される。
【0010】
また、本発明の遠隔操作支援システムにおいて、前記測距装置に付されたマーカは複数であり、前記第1支援処理要素は、複数の前記マーカに応じて前記撮像装置を基準とする前記測距装置の相対姿勢を認識する。
【0011】
当該構成の遠隔操作支援サーバによれば、撮像画像(2次元画像)に映り込んでいる複数のマーカに応じて撮像装置を基準とする前記測距装置の相対姿勢を認識する。これにより、マーカの映り込み態様に基づいて撮像装置を基準とした測距装置の相対姿勢が認識される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の遠隔操作支援システムに関する説明図。
【
図6】撮像画像座標系および測距画像座標系の相対位置・姿勢に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(遠隔操作支援システムの構成)
図1に示されている遠隔操作支援複合システムは、遠隔操作支援サーバ10(遠隔操作支援システムを構成する。)と、作業機械40を遠隔操作するための遠隔操作装置20と、により構成されている。遠隔操作支援サーバ10、遠隔操作装置20および作業機械40は相互にネットワーク通信可能に構成されている。遠隔操作支援サーバ10および遠隔操作装置20の相互通信ネットワークと、遠隔操作支援サーバ10および作業機械40の相互通信ネットワークと、は同一であってもよく相違していてもよい。
【0014】
本発明の構成要素が情報を「認識する」とは、当該情報を受信すること、当該情報を記憶装置から読み出すこと、当該情報をデータベースから検索すること、当該情報を測定すること、受信等された基礎情報に基づき、当該情報を決定、判定、推定または予測すること、当該情報を記憶装置に保存することなど、後続する演算処理において当該情報を利用可能な状態にするためのあらゆる演算処理を包含する概念である。
【0015】
(遠隔操作支援サーバの構成)
遠隔操作支援サーバ10は、データベース102と、第1支援処理要素121と、第2支援処理要素122と、を備えている。データベース102は、撮像画像データ等を記憶保持する。データベース102は、遠隔操作支援サーバ10とは別個のデータベースサーバにより構成されていてもよい。各支援処理要素は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった後述の演算処理を実行する。
【0016】
(遠隔操作装置の構成)
遠隔操作装置20は、遠隔制御装置200と、遠隔入力インターフェース210と、遠隔出力インターフェース220と、を備えている。遠隔制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0017】
遠隔入力インターフェース210は、遠隔操作機構211を備えている。遠隔出力インターフェース220は、画像出力装置221と、音響出力装置222と、遠隔無線通信機器222と、を備えている。
【0018】
遠隔操作機構211には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置と、が含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、作業機械40の下部走行体410を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部または下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、作業機械40の旋回機構430を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、作業機械40のブームシリンダ442を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)は作業機械40のアームシリンダ444を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)は作業機械40のバケットシリンダ446を動かすために操作される。
【0019】
遠隔操作機構211を構成する各操作レバーは、例えば、
図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートStの周囲に配置されている。シートStは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、または、背もたれがないチェアのような形態など、オペレータが着座できる任意の形態の着座部であってもよい。
【0020】
シートStの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一つの操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、
図2に示されているシートStの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。同様に、
図2に示されているシートStの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
【0021】
画像出力装置221は、例えば
図2に示されているように、シートStの前方、左斜め前方および右斜め前方のそれぞれに配置された略矩形状の画面を有する中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212により構成されている。中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のそれぞれの画面(画像表示領域)の形状およびサイズは同じであってもよく相違していてもよい。
【0022】
図2に示されているように、中央画像出力装置2210の画面および左側画像出力装置2211の画面が傾斜角度δ1(例えば、120°≦δ1≦150°)をなすように、左側画像出力装置2211の右縁が、中央画像出力装置2210の左縁に隣接している。
図2に示されているように、中央画像出力装置2210の画面および右側画像出力装置2212の画面が傾斜角度δ2(例えば、120°≦δ2≦150°)をなすように、右側画像出力装置2212の左縁が、中央画像出力装置2210の右縁に隣接している。当該傾斜角度δ1およびδ2は同じであっても相違していてもよい。
【0023】
中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のそれぞれの画面は、鉛直方向に対して平行であってもよく、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。中央画像出力装置2210、左側画像出力装置2211および右側画像出力装置2212のうち少なくとも1つの画像出力装置が、複数に分割された画像出力装置により構成されていてもよい。例えば、中央画像出力装置2210が、略矩形状の画面を有する上下に隣接する一対の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0024】
画像出力装置221を構成する画像出力装置の個数は任意に変更されてもよい。例えば、画像出力装置221がシートStを前方において囲むように湾曲面状または屈曲面状の1個の画像出力装置により構成されていてもよい。画像出力装置221がシートStを前方において囲むように横方向に連続して配置された4枚以上の平面状の画像出力装置により構成されていてもよい。
【0025】
音響出力装置222は、スピーカーにより構成され、例えば
図2に示されているように、シートStの後方、左アームレスト後部および右アームレスト後部のそれぞれに配置された中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222により構成されている。中央音響出力装置2220、左側音響出力装置2221および右側音響出力装置2222のそれぞれの仕様は同じであってもよく相違していてもよい。
【0026】
(作業機械の構成)
作業機械40は、実機制御装置400と、実機入力インターフェース41と、実機出力インターフェース42と、作業機構440と、を備えている。実機制御装置400は、演算処理装置(シングルコアプロセッサまたはマルチコアプロセッサもしくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータおよびソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアにしたがった演算処理を実行する。
【0027】
作業機械40は、例えばクローラショベル(建設機械)であり、
図3に示されているように、クローラ式の下部走行体410と、下部走行体410に旋回機構430を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体420と、を備えている。上部旋回体420の前方左側部にはキャブ424(運転室)が設けられている。上部旋回体420の前方中央部には作業機構440が設けられている。
【0028】
実機入力インターフェース41は、実機操作機構411と、実機撮像装置S1と、測距装置S2と、を備えている。作業機械40は、GPSおよび必要に応じてジャイロセンサ等により構成されている測位装置を備えていてもよい。実機操作機構411は、キャブ424の内部に配置されたシートの周囲に遠隔操作機構211と同様に配置された複数の操作レバーを備えている。遠隔操作レバーの操作態様に応じた信号を受信し、当該受信信号に基づいて実機操作レバーを動かす駆動機構またはロボットがキャブ424に設けられている。実機撮像装置S1は、キャブ424の内部空間に配置され、フロントウィンドウおよび左右一対のサイドウィンドウ越しに作業機構440の少なくとも一部を含む作業環境または作業機械40の周囲の様子を撮像する。フロントウィンドウおよびサイドウィンドウのうち一部または全部が省略されていてもよい。測距装置S2は、キャブ424の内部空間に配置され、フロントウィンドウ越しに作業機械40の周囲にある地面等の物体までの距離を測定する。
【0029】
実機撮像装置S1は、キャブ424の内部空間後部(例えば、シートのヘッドレストの付近またはその後方)に配置されている。このため、
図5に示されているように、撮像装置S1を通じて取得される撮像画像には、キャブ424の内部空間に配置されている実機操作機構411を構成する操作レバーおよびシートの一部など、キャブ424の内部空間が映り込んでいる。測距装置S2は、キャブ424の内部空間において実機撮像装置S1の撮像範囲に含まれる位置(例えば、キャブ424の内部空間前部または撮像装置S1よりも前方またはフロントウィンドウ寄りの位置)に配置されている。
【0030】
実機撮像装置S1の位置および姿勢が作業機械40に対して固定されていてもよいが、駆動機構により実機撮像装置S1の位置および/または姿勢が作業機械40に対して下辺に調節されてもよい。
【0031】
このため、
図5に示されているように、撮像装置S1を通じて取得される撮像画像には、測距装置S2および当該測距装置S2に付された3つのマーカM0、M1およびM2が映り込んでいる。
マーカM0は、例えば、測距装置S2のハウジングの背面上部に配置されている。マーカM1およびM2は、例えば、測距装置S2のハウジングの背面下部または当該ハウジングを支持するフレームまたはブラケットの背面に横方向に離間して配置されている。マーカM0、M1、M2の平均座標値は測距装置S2の背面に位置する。また、3つのマーカM0、M1、M2のうちのいずれか一つ(例えばM0)が測距装置S2の背面に位置するように配置されてもよい。
【0032】
実機出力インターフェース42は、実機無線通信機器422を備えている。
【0033】
図3に示されているように、作業機構としての作業機構440は、上部旋回体420に起伏可能に装着されているブーム441と、ブーム441の先端に回動可能に連結されているアーム443と、アーム443の先端に回動可能に連結されているバケット445と、を備えている。作業機構440には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されているブームシリンダ442、アームシリンダ444およびバケットシリンダ446が装着されている。
【0034】
ブームシリンダ442は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム441を起伏方向に回動させるように当該ブーム441と上部旋回体420との間に介在する。アームシリンダ444は、作動油の供給を受けることにより伸縮してアーム443をブーム441に対して水平軸回りに回動させるように当該アーム443と当該ブーム441との間に介在する。バケットシリンダ446は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット445をアーム443に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット445と当該アーム443との間に介在する。
【0035】
(機能)
前記構成の遠隔操作支援システムの機能について
図4に示されているフローチャートを用いて説明する。当該フローチャートにおいて「C●」というブロックは、記載の簡略のために用いられ、データの送信および/または受信を意味し、当該データの送信および/または受信を条件として分岐方向の処理が実行される条件分岐を意味している。受信されたデータは、データベース102および/または不揮発性もしくは揮発性のメモリにより構成されている記憶装置に格納される。
【0036】
遠隔操作装置20において、オペレータにより遠隔入力インターフェース210を通じた指定操作の有無が判定される(
図4/STEP210)。「指定操作」は、例えば、オペレータが遠隔操作を意図する作業機械40を指定するための遠隔入力インターフェース210におけるタップなどの操作である。当該判定結果が否定的である場合(
図4/STEP210‥NO)、一連の処理が終了する。その一方、当該判定結果が肯定的である場合(
図4/STEP210‥YES)、遠隔無線通信機器222を通じて、遠隔操作支援サーバ10に対して環境確認要求が送信される(
図4/STEP212)。
【0037】
遠隔操作支援サーバ10において、環境確認要求が受信された場合、第1支援処理要素121により当該環境確認要求が該当する作業機械40に対して送信される(
図4/C110)。
【0038】
作業機械40において、実機無線通信機器422を通じて環境確認要求が受信された場合(
図4/C410)、実機制御装置400が実機撮像装置S1を通じて撮像画像を取得し、かつ、測距装置S2を通じて測距画像を取得する(
図4/STEP410)。ここで、実機制御装置400またはこれを構成する画像処理装置により、撮像画像および/または測距画像を対象として、画像データ量を低下させるため、および/またはノイズを除去するための画像処理が実行されてもよい。実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて、撮像画像に応じた撮像画像データおよび測距画像に応じた測距画像データが遠隔操作サーバ10に対して送信される(
図4/STEP412)。
【0039】
遠隔操作支援サーバ10において、撮像画像データおよび測距画像データが受信された場合(
図4/C112)、
図5に示されているように、測距装置S2に付されたマーカM0、M1およびM2が含まれている撮像画像に基づき、第1支援処理要素121により、実機撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対位置および相対姿勢が認識される(
図4/STEP111)。これは、
図6に示されている撮像装置座標系C(S1)=(X1,Y1,Z1)および測距装置座標系C(S2)=(X2,Y2,Z2)の間の座標変換行列またはこれに相当するクォータニオンを求めることと同義である。撮像装置座標系C(S1)のX1軸は撮像装置S1の光軸と一致するように定義されている。Y1-Z1平面座標系が撮像画像座標系を構成する。測距装置座標系C(S2)のX2軸は測距装置S2の光軸と一致するように定義されている。Y2-Z2平面座標系が測距画像座標系を構成する。
【0040】
実機撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対位置を求めることは、
図6に示されている撮像装置座標系C(S1)の原点O1から測距装置座標系C(S2)の原点O2まで延びるベクトルRを求めることと同義である。例えば、
図5に示されている撮像画像におけるマーカM0、M1およびM2それぞれのサイズに基づき、撮像装置座標系C(S1)の原点O1からマーカM0、M1およびM2(の中心または重心)までのそれぞれの長さ(ノルム)が定められる。マーカM0、M1およびM2のサイズが大きいほど、原点O1から各マーカの長さは短いという幾何学的関係が利用される。また、前工程で定められる長さと
図5に示されている撮像画像におけるマーカM0、M1およびM2の撮像画像上の表示位置とから、各マーカM0、M1およびM2の撮像装置座標系C(S1)における座標値が定められる。撮像装置座標系C(S1)においてマーカがX1軸上の任意点からY1軸方向およびX1軸方向にずれるほど前工程で定められる長さが大きくなる(撮像画像上のマーカのサイズが小さくなる)という幾何学的関係が利用される。
【0041】
また、撮像画像におけるマーカM0、M1およびM2の平均座標値に基づき、
図6に示されている撮像装置座標系C(S1)におけるベクトルRが定められる。ベクトルRは、ベクトルRの長さ、方位角θ1および仰角φ1で示すこともできる。
図6に示されているベクトルR1は、ベクトルRがX1-Y1平面に投影された結果を模式的に表わしており、ベクトルR1がX1軸に対してなす角度が当該方位角θ1に相当する。同様にして、ベクトルR2は、ベクトルRがY1-Z1平面に投影された結果を模式的に表わしており、ベクトルR2がY1軸に対してなす角度が当該仰角φ1に相当する。ベクトルRの長さ、方位角θ1および仰角φ1に基づき、撮像装置座標系C(S1)および測距装置座標系C(S2)の間の並進行列が定められる。また、3つのマーカM0、M1、M2のうちのいずれか一つ(例えばM0)が測距装置S2の背面に位置するように配置されている場合には、原点O1からマーカM0で延びるベクトルがベクトルRに相当する。また、3つのマーカM0、M1、M2に対する相対的な位置関係を考慮してベクトルRが定められてもよい。
【0042】
実機撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対姿勢を求めることは、
図6に示されている撮像装置座標系C(S1)が、その原点O1を測距装置座標系C(S2)の原点O2に一致させるように並進された結果としての座標系C(S1)を基準とした、測距装置座標系C(S2)の方位角θ2および仰角φ2を求めることと同義である。例えば、マーカM0,マーカM1およびマーカM2がY2‐Z2平面に位置することから、3マーカの座標からY2‐Z2平面を特定し、X2軸はY2‐Z2平面に対して垂直又は垂直から方位角θ2および仰角φ2にオフセットした方向の軸であって、原点O2を通る軸がX2軸として特定される。当該オフセット量は、3つのマーカM0、M1、M2を取り付けた測距装置S2を特定の平面に設定した際の光軸の傾き量を予め確認しておくことにより設定される。
【0043】
また、X2軸を特定する別の方法として、
図5に示されている撮像画像において、複数のマーカとして、例えば、マーカM1とマーカM2が横並びに配置されている場合、マーカM1とマーカM2との間隔に基づき、
図6に示されている方位角θ2が求められる。当該間隔が小さいほど方位角θ2が大きくなるという幾何学的関係が用いられる。
図5に示されている撮像画像におけるマーカM0とマーカM1およびマーカM2のうち一方または両方との間隔または平均間隔に基づき、
図6に示されている仰角φ2が求められる。当該間隔が小さいほど仰角φ2が大きくなるという幾何学的関係が用いられる。方位角θ2および仰角φ2に基づき、撮像装置座標系C(S1)および測距装置座標系C(S2)の間の回転行列が定められる。
【0044】
作業機械40またはキャブ424の内部空間における実機撮像装置S1および測距装置S2の位置および姿勢が不変である場合、STEP111の処理は初期においてのみ実行され、その後は省略されてもよい。
【0045】
第1支援処理要素121により認識された実機撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対位置および相対姿勢に基づき、第2支援処理要素122により、撮像画像に測距画像に含まれている距離情報が組み合わせられた環境画像が生成される(
図4/STEP112)。具体的には、測距画像座標系(Y2,Z2)の各画素における画素値である物体までの距離が、撮像画像座標系(Y1,Z1)の各画素に対して割り当てられる。この際、測距画像座標系(Y2,Z2)の各画素の座標値が、前記のようにして求められた並進行列および回転行列が用いられることにより、撮像画像座標系(Y1,Z1)の座標値に座標変換される。実機撮像装置S1および測距装置S2のそれぞれの解像度の相違等により、一般的に、当該座標変換後の測距画像座標系(Y2,Z2)の各画素の座標値は、撮像画像座標系(Y1,Z1)の各画素の座標値に一致しない。このため、適当な補間方法にしたがって、測距画像座標系(Y2,Z2)の各画素の画素値が撮像画像座標系(Y1,Z1)の各画素(すべての画素でなくてもよい。)に対して割り当てられる。これにより、撮像画像に映り込んでいる物体の複数箇所のそれぞれの、撮像装置S1を基準とした実空間位置、ひいては当該物体の表面の凹凸等の形状が推定される。
【0046】
これらの結果として、例えば、
図7に示されているように、撮像画像に含まれている物体としての地面の上に、測距画像に含まれている距離情報に応じた網目状の線図が重畳された環境画像が生成される。当該網目状の線図のうち緯線図の延在態様は、測距画像において縦座標値を固定したままで横座標値を右(または左)方向に変化させた際の、画素値(測距装置S2から物体までの距離)の変化態様に応じて定まる。当該網目状の線図のうち経線図の延在態様は、測距画像において横座標値を固定したままで縦座標値を上(または下)方向に変化させた際の、画素値(測距装置S2から物体までの距離)の変化態様に応じて定まる。
【0047】
第2支援処理要素122により撮像画像に応じた環境画像データが遠隔操作装置20に対して送信される(
図4/STEP114)。
【0048】
遠隔操作装置20において、遠隔無線通信機器222を通じて環境画像データが受信された場合(
図4/C210)、遠隔制御装置200により、環境画像データに応じた環境画像が画像出力装置221に出力される(
図4/STEP214)。これにより、
図7に示されているような画像が、キャブ424のフロントウィンドウ越しに映る混んでいるような環境画像が画像出力装置221に出力される。
【0049】
遠隔操作装置20において、遠隔制御装置200により遠隔操作機構211の操作態様が認識され(
図4/STEP216)、かつ、遠隔無線通信機器222を通じて、当該操作態様に応じた遠隔操作指令が遠隔操作支援サーバ10に対して送信される(
図4/STEP218)。
【0050】
遠隔操作支援サーバ10において、第2支援処理要素122により当該遠隔操作指令が受信された場合、第1支援処理要素121により、当該遠隔操作指令が作業機械40に対して送信される(
図4/C114)。
【0051】
作業機械40において、実機制御装置400により、実機無線通信機器422を通じて操作指令が受信された場合(
図4/C412)、作業機構440等の動作が制御される(
図4/STEP414)。例えば、バケット445により作業機械40の前方の土をすくい、上部旋回体410を旋回させたうえでバケット445から土を落とす作業が実行される。
【0052】
(効果)
当該構成の遠隔操作支援システムによれば、作業機械40に搭載されている撮像装置S1を通じて取得された撮像画像、ひいては同じく作業機械40に搭載されている測距装置S2に付されたマーカM0、M1およびM2の映り込み態様に基づき、撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対位置および相対姿勢が認識される(
図4/STEP111、
図5および
図6参照)。撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対位置および相対姿勢、ひいては撮像画像座標系および測距画像座標系の座標変換態様に基づき、測距画像に含まれる距離情報が撮像画像に組み込まれた環境画像が生成される(
図4/STEP112および
図7参照)。
【0053】
この環境画像が遠隔操作装置20を構成する遠隔出力インターフェース220に出力されることにより、当該環境画像に接したオペレータに撮像画像(2次元画像)に映り込んでいる物体の3次元実空間における位置(または位置および姿勢)を的確に認識させることができる。
【0054】
(本発明の他の実施形態)
遠隔支援処理サーバ10の少なくとも一部の機能要素が、遠隔操作装置20および/または作業機械40により構成されていてもよい。例えば、第1支援処理要素121が、第1演算処理装置としての遠隔制御装置200および/または実機制御装置400により構成されていてもよい。第2支援処理要素122が、第2演算処理装置としての遠隔制御装置200および/または実機制御装置400により構成されていてもよい。遠隔操作支援サーバ10の機能要素が遠隔操作装置20に搭載されている場合、前記実施形態における無線通信に代えて、当該遠隔操作装置20に搭載されている有線ネットワークを通じた有線通信によって情報が通信されてもよい。同様に、遠隔操作支援サーバ10の機能要素が作業機械40に搭載されている場合、前記実施形態における無線通信に代えて、当該作業機械40に搭載されている有線ネットワークを通じた有線通信によって情報が通信されてもよい。
【0055】
例えば、
図4/STEP112およびSTEP114、または、
図4/C112、STEP111、STEP112およびSTEP114により表わされる機能要素が、遠隔制御装置200により構成されていてもよい。
図4/C112およびSTEP111、または、
図4/C112、STEP111、STEP112およびSTEP1114により表わされる機能要素が、実機制御装置400により構成されていてもよい。
【0056】
マーカの個数は4以上であってもよい。複数のマーカM0、M1およびM2は合同、相似または非相似であってもよい。複数のマーカM0、M1およびM2のそれぞれの形状は、円形、楕円形、三角形、正方形、矩形、台形、正六角形等の多角形および星形など、様々な形状の中から選択されてもよい。また、マーカには二次元コード(QRコード(登録商標))を付与しておき、撮像画像から二次元コードを抽出することでマーカを特定してもよい。
図6に示されている撮像装置座標系C(S1)における測距装置座標系C(S2)の姿勢が既知である場合、ベクトルRを求める観点から、マーカの個数は1または2であってもよい。
図6に示されている撮像装置座標系C(S1)における測距装置座標系C(S2)の方位角θ2または仰角φ2が既知である場合、マーカの個数は2であってもよく、仰角φ2または方位角θ2を前記のように幾何学的関係から定めるために当該2個のマーカが縦方向または横方向に離間して配置されていてもよい。2個のマーカが縦方向および横方向のそれぞれにずれて配置されるように測距装置S2に対して付されていてもよい。
【0057】
撮像装置S1を基準とした測距装置S2の相対姿勢としては、ねじれの要素が含まれてもよい。例えば、
図5に示されている撮像画像におけるマーカM0、M1およびM2の撮像画像上の相対的な表示位置が、右回り又は左回りにずれている場合には、測距装置S2が右回り又は左回りにずれて設置されている。第1支援処理要素121によりこのようなねじれを考慮した相対姿勢が認識されてもよい。
【0058】
前記実施形態では、マーカM0、M1、M2の平均座標値又は3つのマーカM0、M1、M2のうちのいずれか一つ(例えばM0)測距装置S2の背面に位置するように配置されていたが、他の実施形態として、マーカM0、M1、M2に対する測距装置S2の背面の相対的な位置を予め確認しておくことにより設定してもよい。3つのマーカM0、M1、M2の配置位置の自由度が向上する。
【0059】
前記実施形態では、作業機械40において撮像装置S1および測距装置S2がともにキャブ424の内部空間に配置されていたが、他の実施形態として、撮像装置S1の撮像範囲に測距装置S2に付されたマーカM0、M1およびM2が映り込み、かつ、実空間において撮像装置S1の撮像範囲と測距装置S2の測距範囲とが重複していることを条件として、作業機械40において撮像装置S1および測距装置S2が異なる形態で配置されていてもよい。例えば、撮像装置S1が前方に向けられてキャブ424の内部空間に配置される一方、測距装置S2が前方に向けられてキャブ424の前方に配置されていてもよい。。
【符号の説明】
【0060】
10‥遠隔操作支援サーバ、20‥遠隔操作装置、40‥作業機械、102‥データベース、121‥第1支援処理要素、122‥第2支援処理要素、200‥遠隔制御装置、210‥遠隔入力インターフェース、211‥遠隔操作機構、220‥遠隔出力インターフェース、221‥画像出力装置、222‥音響出力装置、400‥実機制御装置、410‥実機入力インターフェース、420‥実機出力インターフェース、424‥キャブ(運転室)、440‥作業機構、445‥バケット(作業部)、S1‥実機撮像装置、S2‥測距装置、M0、M1、M2‥マーカ。