(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ペダル装置
(51)【国際特許分類】
G05G 23/00 20060101AFI20240228BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240228BHJP
G05G 5/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G05G23/00
G05G1/30 E
G05G5/04 B
(21)【出願番号】P 2021029096
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 高生
(72)【発明者】
【氏名】北斗 大輔
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰久
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100175(JP,A)
【文献】特開2017-49892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 23/00
G05G 1/30
G05G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるオルガン式のペダル装置において、
車体に取り付けられるハウジング(10)と、
前記ハウジングに対して所定の回転軸(CL)周りに回転可能に設けられ、運転者に踏まれる部位が前記回転軸に対して車両搭載時の天地方向における上方に配置され、前記運転者の踏力の増加により正方向に回転し、前記運転者の踏力の減少により逆方向に回転するペダルパッド(40)と、
前記ペダルパッドの回転角度に応じた電気信号を出力するセンサユニット(50)と、
前記ハウジングの外壁のうち前記回転軸に対して前記運転者に近い部位に設けられ、前記ペダルパッドに対して前記運転者の踏力が印加されていないときに前記ペダルパッドのうち前記回転軸に対して車両搭載時の天地方向における下方の部位に接触し、前記ペダルパッドの逆方向の回転を制止する全閉ストッパ(71)と、を備えるペダル装置。
【請求項2】
前記ハウジングの外壁のうち前記回転軸に対して前記運転者から遠い部位に設けられ、前記ペダルパッドに対する前記運転者の踏力が増加したときに前記ペダルパッドのうち前記回転軸に対して車両搭載時の天地方向における上方の部位に接触し、前記ペダルパッドの正方向の回転を制止する全開ストッパ(70)を備える請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記全開ストッパおよび前記全閉ストッパは、前記ペダルパッドに接触する部位が非金属である、請求項2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記全開ストッパおよび前記全閉ストッパは、前記ペダルパッドに接触する部位が樹脂またはゴムである、請求項2または3に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記全開ストッパおよび前記全閉ストッパは、前記ペダルパッドに接触する面が、前記ペダルパッド側に凸の曲面である、請求項2ないし4のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項6】
前記全開ストッパおよび前記全閉ストッパは、円柱状または円筒状である、請求項2ないし5のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項7】
前記全開ストッパと前記全閉ストッパとは、形状、大きさおよび材質が同一である、請求項2ないし6のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項8】
前記全開ストッパの中心と前記回転軸との距離(D1)は、前記全閉ストッパの中心と前記回転軸との距離(D2)より遠いものとされている、請求項2ないし7のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、ハウジング本体(11)とハウジングカバー(12)とを有しており、
前記回転軸に平行な方向における前記ハウジング本体の幅(W1)と、前記全開ストッパの長さ(L1)と、前記全閉ストッパの長さ(L2)とは同一である、請求項2ないし8のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項10】
前記ハウジングは、前記全開ストッパを取り付けるための第1凹部(13)、および、前記全閉ストッパを取り付けるための第2凹部(14)を有し、
前記全開ストッパは、前記回転軸に垂直な断面が円形であり、その円形の面積の半分以上が前記第1凹部の内側に埋め込まれ、
前記全閉ストッパは、前記回転軸に垂直な断面が円形であり、その円形の面積の半分以上が前記第2凹部の内側に埋め込まれている、請求項2ないし9のいずれか1つに記載のペダル装置。
【請求項11】
前記ペダル装置は、前記ハウジングのうち前記ペダルパッドとは反対側の面に設けられるベースプレート(20)をさらに備えており、
前記ハウジングは、前記ベースプレートを介して前記車体に固定されている、請求項2ないし10のいずれか1つに記載のペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるオルガン式のペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペダルパッドのうち運転者に踏まれる部位が回転中心(以下、「回転軸」という)に対して車両搭載時の天地方向における上方に配置されるオルガン式のペダル装置が知られている。オルガン式のペダル装置は、アクセルペダル装置またはブレーキペダル装置などとして用いられる。
【0003】
特許文献1に記載のペダル装置は、ペダルパッドの裏面からハウジング内に延びるロッドと、そのロッドのうちハウジングの内側の部位に設けられるストッパと呼ばれる部材を備えている。また、このペダル装置は、ハウジングの内壁のうちストッパに対応する位置に設けられる制止部と呼ばれる部材を備えている。そして、このペダル装置は、ペダルパッドに運転者の踏力が印加されていない状態でストッパと制止部とが接触し、ペダルパッドの初期角度(すなわち全閉角度)を規定している。
【0004】
また、このペダル装置は、ハウジングの内側に設けられたセンサユニットがペダルパッドの回転角に応じた電気信号を車両の電子制御装置(以下、ECUという)に出力するように構成されている。なお、ECUは、Electronic Control Unitの略である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のペダル装置は、ペダルパッドの初期角度を規定するための構成が複雑であり、その部品点数も多いことから製造公差が大きく、製品ごとのペダルパッドの初期角度のばらつきが大きくなることが考えられる。ここで、運転者の踏力の増加によりペダルパッドが回転する方向を正方向といい、運転者の踏力の減少によりペダルパッドが回転する方向を逆方向ということとする。ペダルパッドの設計上の初期角度に対し、実際のペダルパッドの初期角度が正方向にずれていると、運転者がペダルパッドに踏力を印加していない状態のときに、ペダルパッドが回転していることを示す信号がセンサユニットから出力されてしまう。或いは、ペダルパッドの設計上の初期角度に対し、実際のペダルパッドの初期角度が逆方向にずれていると、運転者がペダルパッドに踏力の印加を開始したときに、ペダルパッドが回転したことを示す信号がセンサユニットから遅れて出力されてしまう。そのため、このペダル装置は、例えばブレーキ回路の液圧制御またはブレーキランプの点灯などの車両制御を正確に実行することが困難になるおそれがある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、オルガン式のペダル装置において、ペダルパッドの初期角度(すなわち全閉角度)のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車両に搭載されるオルガン式のペダル装置において、ハウジング(10)、ペダルパッド(40)、センサユニット(50)、および全閉ストッパ(71)を備える。ハウジングは、車体に取り付けられる。ペダルパッドは、ハウジングに対して所定の回転軸(CL)周りに回転可能に設けられ、運転者に踏まれる部位が回転軸に対して車両搭載時の天地方向における上方に配置され、運転者の踏力の増加により正方向に回転し、運転者の踏力の減少により逆方向に回転する。センサユニットは、ペダルパッドの回転角度に応じた電気信号を出力する。全閉ストッパは、ハウジングの外壁のうち回転軸に対して運転者に近い部位に設けられ、ペダルパッドに対して運転者の踏力が印加されていないときにペダルパッドのうち回転軸に対して車両搭載時の天地方向における下方の部位に接触し、ペダルパッドの逆方向の回転を制止する。
【0009】
これによれば、全閉ストッパとペダルパッドとが直接接触する簡素な構成であり、部品点数が少ないので製造公差が小さく抑えられ、部品の組み付けおよび調整も容易である。そのため、このペダル装置は、製品ごとのペダルパッドの初期角度のばらつきを抑えることが可能であり、ペダルパッドの初期角度を正確に規定することができる。したがって、このペダル装置は、運転者がペダルパッドに踏力を印加していないとき、および、踏力の印加を開始したときにセンサユニットから出力される電気信号に誤差が生じることを防ぎ、正確な車両制御を実現することができる。
また、このペダル装置は、全閉ストッパがハウジングの外壁に設けられているので、例えば製造、検査、メンテナンス時などに、それらの部品とペダルパッドとの接触の有無を目視により容易に確認することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るペダル装置が使用されるブレーキバイワイヤシステムの構成図である。
【
図2】第1実施形態に係るペダル装置においてペダルパッドが初期角度にある状態を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るペダル装置においてペダルパッドが初期角度にある状態を示す平面図である。
【
図4】
図3のIV方向視におけるペダル装置の左側面図である。
【
図5】
図3のV方向視におけるペダル装置の右側面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線におけるペダル装置の断面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線におけるペダル装置の断面図である。
【
図8】第1実施形態に係るペダル装置においてペダルパッドが最大回転角度にある状態を示す左側面図である。
【
図9】第1実施形態に係るペダル装置においてペダルパッドが最大回転角度にある状態を示す右側面図である。
【
図12】第2実施形態に係るペダル装置が備える全開ストッパおよびその近傍の拡大図である。
【
図13】第2実施形態に係るペダル装置が備える全閉ストッパおよびその近傍の拡大図である。
【
図14】第3実施形態に係るペダル装置の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態のペダル装置を
図1~
図11に示す。本実施形態のペダル装置1は、車両に搭載され、運転者の踏力により踏み込み操作されるオルガン式のペダル装置1である。オルガン式のペダル装置1とは、ペダルパッド40のうち運転者に踏まれる部位が回転中心(以下、「回転軸CL」という)に対して車両搭載時の天地方向における上方に配置される構成のものをいう。このようなオルガン式のペダル装置1は、アクセルペダル装置またはブレーキペダル装置などとして用いられる。本実施形態では、ペダル装置1の一例として、ブレーキペダル装置について説明する。
【0014】
まず、本実施形態のペダル装置1が使用されるブレーキバイワイヤシステム100について説明する。
【0015】
図1に示すように、ブレーキバイワイヤシステム100とは、ペダル装置1のセンサユニット50から出力される電気信号に基づき、車両に搭載される電子制御装置(以下、ECU110という)の駆動制御によりブレーキ回路120が車両の制動に必要な油圧を発生させてホイールシリンダ131~134を駆動するシステムである。
【0016】
図1に例示したブレーキバイワイヤシステム100では、ECU110が第1ECU111と第2ECU112とで構成されている。また、ブレーキ回路120が第1ブレーキ回路121と第2ブレーキ回路122とで構成されている。
【0017】
ペダル装置1のセンサユニット50から出力される電気信号は、第1ECU111と第2ECU112に伝送される。第1ECU111は、図示しないマイコンおよび駆動回路などを有している。第1ECU111は、第1ブレーキ回路121の有するモータ123などに電力を供給し、第1ブレーキ回路121を駆動制御する。また、第2ECU112も図示しないマイコンおよび駆動回路などを有している。第2ECU112は、第2ブレーキ回路122の有する図示しない電磁弁やモータなどを駆動制御する。
【0018】
第1ブレーキ回路121は、リザーバ124、モータ123、ギヤ機構125、マスターシリンダ126などを有している。リザーバ124は、ブレーキ液を貯蔵する。モータ123はギヤ機構125を駆動する。ギヤ機構125は、マスターシリンダ126の有するマスターピストン127を、マスターシリンダ126の軸方向に往復移動させる。マスターピストン127の移動により、リザーバ124からマスターシリンダ126に供給されたブレーキ液の液圧が増加し、その液圧は第1ブレーキ回路121から第2ブレーキ回路122に供給される。
【0019】
第2ブレーキ回路122は、第2ECU112からの制御信号に応じて各ホイールシリンダ131~134の液圧を制御することで、通常制御、ABS制御およびVSC制御などを行うための回路である。なお、ABSはAnti-lock Braking Systemの略であり、VSCはVehicle Stability Controlの略である。なお、各車輪に配置されたホイールシリンダ131~134は、それぞれの車輪に設けられたブレーキバッドを駆動する。
【0020】
車両に乗車する運転者がペダル装置1のペダルパッド40を踏み込み操作すると、そのペダルパッド40の回転角度に応じた信号がセンサユニット50から第1ECU111と第2ECU112に出力される。第1ECU111は、車両を減速させるため、モータ123を駆動する。これにより、モータ123の回転数が大きくなると、マスターシリンダ126は、リザーバ124から供給されるブレーキ液の圧力を増加させる。そのブレーキ液の液圧は、第1ブレーキ回路121から第2ブレーキ回路122に伝わる。
【0021】
第2ECU112は、通常制御、ABS制御およびVSC制御などを実行する。例えば、第2ECU112は、運転者によるペダルパッド40の操作に応じた制動を行う通常制御において、第2ブレーキ回路122の有する各電磁弁などの駆動を制御し、第1ブレーキ回路121から供給される液圧が第2ブレーキ回路122を介して各ホイールシリンダ131~134に供給されるようにする。したがって、各ホイールシリンダ131~134により駆動されるブレーキパッドがそれに対応するブレーキディスクと摩擦接触し、各車輪が制動されることで車両が減速する。
【0022】
また、例えば、第2ECU112は、車両の各車輪速度および車速に基づいて各車輪のスリップ率を演算し、ABS制御を実行する。また、例えば、第2ECU112は、ヨーレート、操舵角、加速度、各車輪速度および車速等に基づいて車両の横滑り状態を演算し、VSC制御を実行する。なお、第2ECU112は、図示しない他のECUからの信号に基づき、衝突回避制御および回生協調制御などを行ってもよい。
【0023】
次に、ペダル装置1について説明する。
図2~
図7に示すように、ペダル装置1は、ハウジング10、ペダルパッド40、センサユニット50、全開ストッパ70および全閉ストッパ71などを備えている。
【0024】
ハウジング10は、ハウジング本体11とハウジングカバー12を有している。ハウジング本体11の外壁には、全開ストッパ70を取り付けるための第1凹部13と、全閉ストッパ71を取り付けるための第2凹部14が設けられている。第1凹部13は、ハウジング本体11のうちペダルパッド40側を向く外壁において、ペダルパッド40の回転軸CLに対して運転者から遠い部位(すなわち、車両前方側の部位)に設けられている。具体的には、第1凹部13は、ハウジング本体11のうちペダルパッド40側を向く外壁において、ペダルパッド40の回転軸CLから出来る限り遠い位置に設けられている。一方、第2凹部14は、ハウジング本体11のうちペダルパッド40側を向く外壁において、ペダルパッド40の回転軸CLに対して運転者に近い部位(すなわち、車両後方側の部位)に設けられている。なお、第1凹部13と第2凹部14にそれぞれ取り付けられる全開ストッパ70と全閉ストッパ71に関する説明は後述する。
【0025】
図4~
図6に示すように、ハウジング本体11は、ベースプレート20を介して車体の一部に取り付けられる。詳細には、ハウジング本体11は、ベースプレート20を介して車両の車室内のフロア2またはダッシュパネルなどに取り付けられる。なお、ダッシュパネルは、車両のエンジンルーム等の車室外と車室内とを区切る隔壁であり、バルクヘッドと呼ばれることもある。
【0026】
ベースプレート20は、ハウジング本体11のうちペダルパッド40とは反対側の面に設けられている。ベースプレート20は、ハウジング本体11のうち車両前方側の部位から車両後方側の部位に亘り連続して延びている。そして、ベースプレート20は、車両のフロア2またはダッシュパネルに対してボルト21などにより固定される。ベースプレート20は、例えば金属など、ハウジング本体11に比べて強度の高い材料により構成されている。そのため、ベースプレート20は、ハウジング本体11の剛性(例えば、第1凹部13と第2凹部14が設けられる外壁、および、後述するシャフト受部15およびその周囲の剛性)を高める機能を有している。
【0027】
図6および
図7に示すように、ハウジング本体11の内側には、センサユニット50および反力発生機構60などが設けられる空間が形成されている。
図2、
図3および
図7に示すように、ハウジングカバー12は、ハウジング本体11の側面に設けられ、ハウジング本体11の内側に形成される空間の側面開口部を塞いでいる。
【0028】
図7に示すように、ハウジング本体11には、シャフト30を回転可能に支持するためのシャフト受部15が設けられている。シャフト30は、そのシャフト受部15に回転可能に支持されている。詳細には、シャフト受部15には、シャフト30を支持するための円筒状の軸受16が取り付けられており、シャフト30は、その軸受16に支持されている。したがって、シャフト30は、シャフト受部15の中心(すなわち、軸受16の中心)を回転軸CLとして回転可能である。なお、シャフト30は、ハウジング本体11に設けられたシャフト受部15のみに支持されており、ハウジングカバー12には支持されていない。
【0029】
図2および
図7に示すように、シャフト30は、例えば円柱状の金属を複数回折り曲げた形状とされており、軸部31、固定部32および連結部33を有している。軸部31は、シャフト受部15の中心線(すなわちシャフト30の回転軸CL)と平行に延び、シャフト受部15に配置される部位である。固定部32は、ペダルパッド40に対して回転不能に固定される部位である。本実施形態では、固定部32は、ペダルパッド40のうち運転者からの踏力を受ける面とは反対側の面(以下、「ペダルパッド40の裏面42」という)に設けられた固定金具34に固定されている。連結部33は、軸部31と固定部32とを連結する部位である。シャフト30が軸部31、固定部32および連結部33を有することで、シャフト30の回転軸CLとペダルパッド40とを離れた位置に配置し、その回転軸CLの周りの空間にセンサユニット50を容易に設けることが可能である。
【0030】
図2~
図6に示すように、ペダルパッド40は、例えば金属または樹脂などにより板状に形成され、フロア2に対して斜めに配置される。具体的には、ペダルパッド40は、その上端部が車両前方となり、下端部が車両後方となるように斜めに配置される。そして、ペダルパッド40のうち上側の部位には、運転者に踏まれる部位として厚肉部41が設けられている。厚肉部41は回転軸CLに対して車両搭載時の天地方向における上方に配置されている。なお、ペダルパッド40は、図に示した配置に限らず、例えば、フロア2に対して略垂直に配置してもよい。
【0031】
上述したように、ペダルパッド40の裏面42とシャフト30の固定部32とは、固定金具34によって固定されている。そのため、ペダルパッド40は、シャフト30と同一の回転軸CL周りに回転動作する。すなわち、ペダルパッド40の回転軸CLとシャフト30の回転軸CLとは同一である。ペダルパッド40は、運転者の踏力の増加および減少に応じて、回転軸CL周りに所定角度範囲内で正方向および逆方向に回転動作する。なお、以下の説明では、ペダルパッド40に印加される運転者の踏力の増加によりペダルパッド40が回転する方向を正方向といい、ペダルパッド40に印加される運転者の踏力の減少によりペダルパッド40が回転する方向を逆方向という。
【0032】
図2~
図6は、ペダルパッド40に対して運転者の踏力が印加されていない状態を示している。ペダルパッド40に運転者の踏力が印加されていない状態におけるペダルパッド40の角度を、初期角度または全閉角度と呼ぶこととする。なお、ペダルパッド40の初期角度および全閉角度は、ゼロ点と呼ばれることもある。ペダルパッド40が初期角度にある状態で、ペダルパッド40およびシャフト30の回転軸CLは、ペダルパッド40のうち回転軸CLと同一の高さの部位およびそれより下側(すなわちフロア2側)の部位に対して運転者から遠い場所(すなわち、車両前方に離れた場所)に位置している。そのため、ペダルパッド40およびシャフト30の回転軸CL上およびその周囲にセンサユニット50を取り付けることが可能である。
【0033】
一方、
図8および
図9は、ペダルパッド40に対して運転者の踏力が印加され、ペダルパッド40が正方向に最大回転した状態を示している。ペダルパッド40に対する運転者の踏力の増加によりペダルパッド40が最大回転した角度を、最大回転角度または全開角度と呼ぶこととする。
【0034】
ペダルパッド40は、運転者の踏力の増加に応じて、回転軸CLより車両前方の部位が、フロア2側またはダッシュパネル側に回転移動する。また、
図4および
図5に示したように、ペダルパッド40は、運転者の踏力の減少に応じて、回転軸CLより車両前方の部位が、上側または運転者側に回転移動する。
【0035】
図6に示すように、ハウジング10内には、運転者がペダルパッド40に印加する踏力に対する反力を発生させる反力発生機構60が設けられている。ペダル装置1は、反力発生機構60を備えることで、ペダルパッド40とマスターシリンダ126との機械的な接続を廃止しても、マスターシリンダ126と接続している場合(すなわち、油圧による反力が得られる場合)と同様の反力を得ることが可能である。
【0036】
本実施形態では、反力発生機構60は、例えば、板ばね61と、ホルダ62の内側に設けられる図示しない1つまたは複数のコイルばねなどより構成されている。反力発生機構60を1つまたは複数の弾性部材で構成することで、ペダルパッド40の回転角に応じた所定の踏力特性を形成することが可能である。
【0037】
板ばね61は、荷重を受けていない状態でフロア2側に凸の曲面となるように曲がっている。板ばね61の一端63は、シャフト30およびペダルパッド40の回転軸CLとベースプレート20との間に配置され、ハウジング10またはベースプレート20に固定されている。一方、板ばね61の他端64には、ホルダ62が固定されている。板ばね61は、ペダルパッド40の回転軸CLに対して垂直な仮想平面に沿って撓むように配置されている。そのため、板ばね61は、ホルダ62側から荷重を受けると、そのホルダ62を固定する他端64側の部位がベースプレート20側に近づくように撓む。
【0038】
ホルダ62は、有底筒状に形成されている。図示は省略するが、ホルダ62の内側には、1つまたは複数のコイルばねなどが設けられている。ホルダ62のうちペダルパッド40側の端部には、蓋部材65が設けられている。蓋部材65は、ホルダ62の内側に設けられるコイルばねの伸縮に伴ってホルダ62の内側を往復移動可能に設けられている。蓋部材65とペダルパッド40とは、連結ロッド66により接続されている。連結ロッド66の一端とペダルパッド40は回転可能に接続されており、連結ロッド66の他端と蓋部材65も回転可能に接続されている。このような構成により、運転者がペダルパッド40に踏力を印加し、ペダルパッド40がハウジング10側に回転すると、ペダルパッド40から連結ロッド66を介して反力発生機構60の各部材に荷重が印加される。そのため、反力発生機構60を構成する板ばね61とコイルばねは、運転者がペダルパッド40に印加した踏力に対する反力を発生させる。なお、反力発生機構60および連結ロッド66の構成は上記に例示したものに限るものでなく、種々の構成を採用することが可能である。
【0039】
本実施形態のペダル装置1は、上述したように、ペダルパッド40とシャフト30とが同一の回転軸CL周りに回転する構成である。そのため、車両走行を制御するために運転者が踏み込み操作したペダルパッド40の操作量(すなわち、ペダルパッド40の回転角度)は、シャフト30の回転角度と同一である。そのペダルパッド40およびシャフト30の回転角度は、シャフト30の回転軸CL上またはその回転軸CLの周りに設けられたセンサユニット50により直接検出される。なお、以下の説明では、ペダルパッド40およびシャフト30の回転角度を、「ペダル回転角」という。
【0040】
図7に示すように、センサユニット50は、シャフト30に設けられる回動部51と、ハウジング10に設けられて回動部51の位相に応じた信号を出力する信号出力部55とを有している。回動部51は、例えば、磁石およびヨークなどにより円筒状に形成された磁気回路52とその磁気回路52を保持する保持部54などを含んで構成されている。回動部51は、シャフト30の端部に対してボルト53などにより固定され、シャフト30と共に回転する。本実施形態では回動部51の回転中心と、シャフト30の回転軸CLとは同一である。回動部51を構成する磁気回路52は、シャフト30の回転軸CLを交差するように磁束が流れる磁界を形成する。
【0041】
一方、信号出力部55は、1個または複数個のホールIC56と、そのホールIC56をモールドするセンサ保持部57などを含んで構成されている。ホールIC56は、ホール素子と、そのホール素子の出力する信号の増幅などを行う集積回路を有している。ホールIC56は、ホール素子の感磁面を通過する磁束密度に応じた電気信号を出力する。シャフト30と共に回動部51が回転軸CL周りに回転すると、ホールIC56の有するホール素子の感磁面を通過する磁束密度が変化する。そのため、信号出力部55は、ペダルパッド40およびシャフト30の回転角度(すなわち、ペダル回転角)に応じた電気信号を出力する。
【0042】
ハウジング10のうちシャフト30の一端側に対応する位置には、信号出力部55を設置するための開口部17が設けられている。一方、信号出力部55のセンサ保持部57には、ハウジング10に設けられた開口部17の内壁面に嵌合する突起58が設けられている。ハウジング10に設けられた開口部17の内壁面に対し、信号出力部55のセンサ保持部57に設けられた突起58の外壁面が嵌合することで、信号出力部55のセンサ中心とシャフト30の回転軸CLとは同軸上に組み付けられる。
【0043】
センサユニット50は、ペダルパッド40がいずれの状態にあるときにも、そのペダル回転角に応じた電気信号を車両のECUに出力する。すなわち、センサユニット50は、ペダルパッド40が初期角度にあるとき、その角度を示す電気信号を車両のECUに出力する。また、センサユニット50は、ペダルパッド40が最大回転角度にあるとき、その角度を示す電気信号を車両のECUに出力する。
【0044】
図2~
図6、
図8および
図9に示すように、ペダルパッド40の初期角度と最大回転角度はそれぞれ、全閉ストッパ71と全開ストッパ70により規定される。
全閉ストッパ71は、ハウジング本体11の外壁のうちペダルパッド40の回転軸CLに対して運転者に近い部位(すなわち、車両後方側の部位)に設けられた第2凹部14に取り付けられている。すなわち、全閉ストッパ71は、ハウジング10の外壁のうちペダルパッド40の回転軸CLに対して運転者に近い部位(すなわち、車両後方側の部位)に設けられている。
図2、
図4~
図6に示したように、全閉ストッパ71は、ペダルパッド40に運転者の踏力が印加されないときにペダルパッド40の裏面42のうち回転軸CLに対して車両搭載時の天地方向における下方の部位に接触し、ペダルパッド40の逆方向の回転を制止する。これにより、全閉ストッパ71は、ペダルパッド40の初期角度を規定する。
【0045】
一方、全開ストッパ70は、ハウジング本体11の外壁のうちペダルパッド40の回転軸CLに対して運転者から遠い部位(すなわち、車両前方側の部位)に設けられた第1凹部13に取り付けられている。すなわち、全開ストッパ70は、ハウジング10の外壁のうちペダルパッド40の回転軸CLに対して運転者から遠い部位(すなわち、車両前方側の部位)に設けられている。
図8および
図9に示したように、全開ストッパ70は、ペダルパッド40に対する運転者の踏力が増加したときにペダルパッド40の裏面42のうち回転軸CLに対して車両搭載時の天地方向における上方の部位に接触し、ペダルパッド40の正方向の回転を制止する。これにより、全開ストッパ70は、ペダルパッド40の最大回転角度を規定する。
【0046】
本実施形態では、全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、形状、大きさおよび材質が同一である。全閉ストッパ71と全開ストッパ70の形状は、ペダルパッド40に接触する面が、ペダルパッド40側に凸の曲面に形成されている。具体的には、本実施形態の全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、円柱状または円筒状に形成されている。全開ストッパ70と全閉ストッパ71の材質は、少なくともペダルパッド40に接触する部位が非金属(具体的には、樹脂またはゴム)である。なお、本実施形態の全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、全部が非金属(具体的には、樹脂またはゴム)である。
【0047】
図3に示すように、全開ストッパ70の長さL1と、全閉ストッパ71の長さL2と、ハウジング本体11の幅W1とは同一である。なお、全開ストッパ70の長さL1、全閉ストッパ71の長さL2、ハウジング本体11の幅W1とは、いずれもペダルパッド40の回転軸CLに平行な方向における距離をいう。
【0048】
図5に示すように、全開ストッパ70の中心と回転軸CLとの距離D1は、全閉ストッパ71の中心と回転軸CLとの距離D2より遠いものとされている。具体的には、全開ストッパ70は、ハウジング本体11のうちペダルパッド40側を向く壁面において、ペダルパッド40の回転軸CLから出来る限り遠い位置に設けられている。それに対し、全閉ストッパ71は、ハウジング本体11のうち回転軸CLに対して車両搭載時の天地方向における下方の部位において、ペダルパッド40の裏面42に接触可能な位置に設けられている。
【0049】
図10に示すように、全開ストッパ70は、円柱状または円筒状であるので、ペダルパッド40の回転軸CLに垂直な断面が円形である。ハウジング本体11に設けられる第1凹部13の内壁は、そこに接触する全開ストッパ70の外形の一部と略同一の形状および大きさで形成されている。そのため、第1凹部13は、全開ストッパ70の外形の一部を覆うように保持している。そして、全開ストッパ70は、その断面形状である円形の面積の半分以上が第1凹部13の内側に埋め込まれた状態で第1凹部13に取り付けられる。言い換えれば、全開ストッパ70は、その断面形状である円形の中心C1が、第1凹部13のうちペダルパッド40側の開口面S1よりも第1凹部13の内側に配置されている。これにより、全開ストッパ70を第1凹部13に容易に組み付け可能であると共に、第1凹部13から全開ストッパ70が脱落することを防ぐことができる。
【0050】
図11に示すように、全閉ストッパ71も、円柱状または円筒状であるので、ペダルパッド40の回転軸CLに垂直な断面が円形である。ハウジング本体11に設けられる第2凹部14内壁は、そこに接触する全閉ストッパ71の外形の一部と略同一の形状および大きさで形成されている。そのため、第2凹部14は、全閉ストッパ71の外形の一部を覆うように保持している。そして、全閉ストッパ71は、その断面形状である円形の面積の半分以上が第2凹部14の内側に埋め込まれる状態で第2凹部14に取り付けられる。言い換えれば、全閉ストッパ71は、その断面形状である円形の中心C2が、第2凹部14のうちペダルパッド40側の開口面S2よりも第2凹部14の内側に配置されている。これにより、全閉ストッパ71を第2凹部14に容易に組み付け可能であると共に、第2凹部14から全閉ストッパ71が脱落することを防ぐことができる。
【0051】
上述した第1実施形態のペダル装置1の構成において、運転者の踏力がペダルパッド40に印加されていない状態で、ペダルパッド40の裏面42と全閉ストッパ71とが当接し、ペダルパッド40の逆方向の回転が制止される。これにより、ペダルパッド40の初期角度が規定される。センサユニット50は、ペダルパッド40が初期角度にあるとき、その角度を示す電気信号を車両のECU110に出力する。
【0052】
運転者の踏力がペダルパッド40に印加されると、ペダルパッド40とは回転軸CL周りに回転動作する。センサユニット50は、ペダルパッド40の回転角度に応じた電気信号を車両のECU110に出力する。ECU110は、ブレーキ回路120を駆動制御して車両の制動に必要な油圧を発生させ、その油圧によりブレーキパッドを駆動して車両を減速または停止させる。
【0053】
ペダルパッド40に印加される運転者の踏力が増加し、ペダルパッド40の裏面42と全開ストッパ7070とが当接すると、ペダルパッド40の正方向の回転が制止される。これにより、ペダルパッド40の最大回転角度が規定される。センサユニット50は、ペダルパッド40が最大回転角度にあるとき、その角度を示す電気信号を車両のECU110に出力する。この時も、ECU110は、ブレーキ回路120を駆動制御して車両の制動に必要な油圧を発生させ、その油圧によりブレーキパッドを駆動して車両を減速または停止させる。
【0054】
以上説明した第1実施形態のペダル装置1は、次の作用効果を奏するものである。
(1)本実施形態のペダル装置1が備える全閉ストッパ71は、ハウジング10の外壁のうち回転軸CLに対して運転者に近い部位に設けられる。そして、全閉ストッパ71は、運転者の踏力がペダルパッド40に印加されていないときにペダルパッド40の裏面42のうち回転軸CLに対して車両搭載時の天地方向における下方の部位に接触し、ペダルパッド40の逆方向の回転を制止する。
これによれば、全閉ストッパ71により、ペダルパッド40の初期角度が規定される。本実施形態では、全閉ストッパ71とペダルパッド40とが直接接触する簡素な構成であり、部品点数が少ないので製造公差が小さく抑えられ、部品の組み付けおよび調整も容易である。そのため、このペダル装置1は、製品ごとのペダルパッド40の初期角度のばらつきを抑えることが可能であり、ペダルパッド40の初期角度を正確に規定することができる。したがって、このペダル装置1は、運転者がペダルパッド40に踏力を印加していないとき、および、踏力の印加を開始したときにセンサユニット50から出力される電気信号に誤差が生じることを防ぎ、正確な車両制御を実現することができる。
【0055】
ところで、上記先行技術文献として示した特許文献1に記載のペダル装置は、ペダルパッドの初期角度を規定するためのストッパと制止部とがハウジングの内側に設けられている構成である。そのため、特許文献1に記載のペダル装置は、それらの部品または関連する部品が破損または摩耗したときに、ハウジングの外部から目視できない。
それに対し、本実施形態のペダル装置1は、全閉ストッパ71がハウジング10の外壁に設けられている。そのため、このペダル装置1は、例えば製造、検査、メンテナンス時などに、全閉ストッパ71とペダルパッド40との接触の有無を目視により容易に確認することができる。
【0056】
(2)本実施形態のペダル装置1が備える全開ストッパ70は、ハウジング10の外壁のうち回転軸CLに対して運転者から遠い部位に設けられる。そして、全開ストッパ70は、ペダルパッド40に対する運転者の踏力が増加したときにペダルパッド40の裏面42のうち回転軸CLに対して車両搭載時の天地方向における上方の部位に接触し、ペダルパッド40の正方向の回転を制止する。
これによれば、本実施形態のペダル装置1は、例えば製造、検査、メンテナンス時などに、全開ストッパ70とペダルパッド40との接触の有無を目視により容易に確認することができる。
【0057】
(3)本実施形態では、全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、ペダルパッド40に接触する部位が非金属である。
これによれば、全開ストッパ70とペダルパッド40とが接触したときの音を低減することができる。また、全閉ストッパ71とペダルパッド40とが接触したときの音も低減することができる。
【0058】
(4)本実施形態では、全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、ペダルパッド40に接触する部位が樹脂またはゴムである。
これによれば、全開ストッパ70および全閉ストッパ71としての具体的な材質が例示される。
【0059】
(5)本実施形態では、全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、ペダルパッド40に接触する面が、ペダルパッド40側に凸の曲面である。
これによれば、全開ストッパ70および全閉ストッパ71はペダルパッド40に接触する面が直線状になり、ペダルパッド40から作用する荷重によるつぶれ量も小さいので、ペダルパッド40の制止位置の調整を容易に行うことが可能となる。そのため、このペダル装置1は、製品ごとのペダルパッド40の初期角度のばらつきを抑え、ペダルパッド40の初期角度を正確に規定することができる。
なお、本実施形態の全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、仮に全開ストッパ70および全閉ストッパ71を球面としたものに比べて経年劣化も少ない。また、本実施形態の全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、仮に全開ストッパ70および全閉ストッパ71を直方体にしたものに比べて、面当たりの調整が不要なので、ペダルパッド40制止位置の調整を容易に行うことが可能である。
【0060】
(6)本実施形態では、全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、円柱状または円筒状である。
これによれば、全開ストッパ70および全閉ストッパ71は、ハウジング10への組み付け時に周方向の向きが無いので、組み付けやすい。すなわち、全閉ストッパ71の組み付け方向(すなわち全閉ストッパ71の周方向)の違いによってペダルパッド40の初期角度にばらつきが生じることが無い。したがって、このペダル装置1は、製品ごとのペダルパッド40の初期角度のばらつきを抑え、ペダルパッド40の初期角度を正確に規定することができる。
【0061】
(7)本実施形態では、全開ストッパ70と全閉ストッパ71とは、形状、大きさおよび材質が同一である。
これによれば、ペダル装置1の製造時に全開ストッパ70および全閉ストッパ71として使用する部品の種類を少なくし、製造コストを低減できる。
【0062】
(8)本実施形態では、全開ストッパ70の中心と回転軸CLとの距離D1は、全閉ストッパ71の中心と回転軸CLとの距離D2より遠いものとされている。
これによれば、全開ストッパ70の中心と回転軸CLとの距離D1を遠ざけることで、ペダルパッド40に対する運転者の踏力が増加したときに、全開ストッパ70がペダルパッド40から受ける荷重を低減することが可能である。一方、全閉ストッパ71は、運転者の踏力がペダルパッド40に印加されていないときにペダルパッド40と接触するため、全閉ストッパ71がペダルパッド40から受ける荷重は全開ストッパ70がペダルパッド40から受ける荷重より小さい。そのため、全閉ストッパ71は、回転軸CLに近い位置に配置することが可能である。このような配置とすることで、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の経年劣化を抑制することができる。
【0063】
(9)本実施形態では、ハウジング本体11の幅W1と、全開ストッパ70の長さL1と、全閉ストッパ71の長さL2とは同一である。
これによれば、ペダルパッド40から全開ストッパ70に作用する面圧を下げ、その全開ストッパ70からハウジング10に作用する面圧を下げることができる。また、ペダルパッド40から全閉ストッパ71に作用する面圧を下げ、その全閉ストッパ71からハウジング10に作用する面圧を下げることができる。したがって、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の経年劣化を抑制することができる。
【0064】
(10)本実施形態では、全開ストッパ70は、回転軸CLに垂直な断面が円形であり、その円形の面積の半分以上が第1凹部13の内側に埋め込まれる構成とされている。全閉ストッパ71は、回転軸CLに垂直な断面が円形であり、その円形の面積の半分以上が第2凹部14の内側に埋め込まれる構成とされている。
これによれば、全開ストッパ70および全閉ストッパ71をハウジング10に容易に組み付けることが可能であると共に、全開ストッパ70および全閉ストッパ71がハウジング10から脱落することを防ぐことができる。
【0065】
(11)本実施形態では、ペダル装置1は、ハウジング10のうちペダルパッド40とは反対側の面に設けられるベースプレート20を備えている。ハウジングは、ベースプレート20を介して車体に固定されている。
これによれば、ハウジング10と車体との間にベースプレート20を設けることで、ハウジング10の剛性が高くなる。そのため、ハウジング10のうち全開ストッパ70および全閉ストッパ71を取り付ける壁の変形が防がれる。したがって、このペダル装置1は、製品ごとのペダルパッド40の初期角度のばらつきを抑え、ペダルパッド40の初期角度を正確に規定することが可能である。
また、ハウジング10の剛性を高めることで、ハウジング10のうちシャフト30を回転可能に支持するシャフト受部15の変形が防がれる。したがって、このペダル装置1は、センサユニット50が有する回動部51と信号出力部55との位置ずれを防ぎ、ペダル回転角の検出精度を高めることができる。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して全閉ストッパ71と全開ストッパ70の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
図12および
図13に示すように、第2実施形態においても、全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、形状、大きさおよび材質が同一である。全閉ストッパ71と全開ストッパ70の形状は、ペダルパッド40に接触する面が、ペダルパッド40側に凸の曲面に形成されている。具体的には、全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、その断面が四角形と半円を組み合わせた形状であり、言い換えれば、直方体の一辺がペダルパッド40側に凸の曲面とされた形成である。
【0068】
なお、第2実施形態でも、全開ストッパ70の長さL1と、全閉ストッパ71の長さL2と、ハウジング本体11の幅W1とは同一である。また、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の材質は、少なくともペダルパッド40に接触する部位が非金属(具体的には、樹脂またはゴム)である。なお、第2実施形態においても全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、全部が非金属(具体的には、樹脂またはゴム)である。
【0069】
図12に示すように、ハウジング本体11に設けられる第1凹部13は、全開ストッパ70の外形の一部を覆う形状とされている。そして、全開ストッパ70は、その断面形状のうち四角形側の部位が第1凹部13の内側に埋め込まれ、半円状の部位が第1凹部13の開口面S1よりもペダルパッド40側に配置されている。
【0070】
図13に示すように、ハウジング本体11に設けられる第2凹部14も、全閉ストッパ71の外形の一部を覆う形状とされている。そして、全閉ストッパ71は、その断面形状のうち四角形側の部位が第2凹部14の内側に埋め込まれ、半円状の部位が第2凹部14の開口面S2よりもペダルパッド40側に配置されている。
【0071】
以上説明した第2実施形態のペダル装置1も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1実施形態等に対してベースプレート20を廃止したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
図14に示すように、第3実施形態では、ペダル装置1は、ベースプレートを備えていない。そのため、ペダル装置1の備えるハウジング10は、車両の車室内のフロア2またはダッシュパネルに対し、ボルト21などによって直接取り付けられている。
以上説明した第3実施形態も、第1実施形態と同様の構成から、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、第3実施形態では、ペダル装置1の部品点数を少なくすることが可能である。
【0074】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、ペダル装置1の一例としてブレーキペダル装置について説明したが、これに限らず、ペダル装置1はアクセルペダル装置とすることもできる。または、ペダル装置1は、運転者が足で操作する種々の装置とすることもできる。
【0075】
(2)上記各実施形態では、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の形状、大きさおよび材質を同一としたが、これに限らず、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の形状、大きさおよび材質は異なっていてもよい。
【0076】
(3)上記各実施形態では、全開ストッパ70の長さL1と、全閉ストッパ71の長さL2と、ハウジング本体11の幅W1とを同一としたが、これに限らず、それらは異なっていてもよい。
【0077】
(4)上記各実施形態では、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の形状を円柱状、円筒状、またはその断面が四角形と半円を組み合わせた形状としたが、これに限らず、全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、種々の形状のものを採用できる。例えば、全閉ストッパ71と全開ストッパ70は、球体、直方体、多角形、または、多角形と曲面とを組み合わせた形状であってもよい。
【0078】
(5)上記各実施形態では、ハウジング10に設けた第1凹部13と第2凹部14に全開ストッパ70と全閉ストッパ71を取り付ける構成について説明したが、これに限らず、全開ストッパ70と全閉ストッパ71の取り付け方法は種々の方法を採用できる。例えば、ストッパ70、71またはハウジング10の一方に設けた突起を、ストッパ70、71またはハウジング10の他方に設けた穴に差し込む方法としてもよい。或いは、全開ストッパ70と全閉ストッパ71は、ねじ、または接着剤などを使用してハウジング10に取り付けてもよい。
【0079】
(6)上記各実施形態では、ペダル装置1の一例として、ペダルパッド40とマスターシリンダ126とが機械的に接続されていないものについて説明したが、これに限らず、ペダル装置1はペダルパッド40とマスターシリンダ126とが機械的に接続されたものであってもよい。その場合、ペダル装置1は、反力発生機構60を備えることなく、ペダルパッド40に印加される踏力に対する反力をマスターシリンダ126によりを発生させる構成としてもよい。
【0080】
(7)上記各実施形態では、反力発生機構60の一例として板ばね61と複数のコイルばねの組み合わせで構成したものについて説明したが、これに限らず、反力発生機構60は例えば1個または複数個のコイルばねで構成してもよく、或いは、1個または複数個の板ばね61で構成してもよい。
【0081】
(8)上記各実施形態では、センサユニット50を回転軸CL上およびその近傍に配置する構成について説明したが、これに限らず、センサユニット50は、回転軸CLから離れた場所に設けてもよい。例えば、センサユニット50は、例えば反力発生機構60など、ペダルパッド40と連動して動作する部材に設けることが可能である。
【0082】
(9)上記各実施形態では、ブレーキバイワイヤシステム100がマスターシリンダ126を使用してブレーキ回路120を流れるブレーキ液に液圧を発生させる構成について説明したが、これに限らず、例えば液圧ポンプを使用してブレーキ回路120を流れるブレーキ液に液圧を発生させる構成としてもよい。
【0083】
(10)上記第1実施形態では、ECU110が第1ECU111と第2ECU112とで構成されているものを例示したが、これに限らず、ECUは、1個または3個以上で構成してもよい。
【0084】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
1 ペダル装置
10 ハウジング
40 ペダルパッド
50 センサユニット
70 全開ストッパ
71 全閉ストッパ
CL 回転軸