(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/18 20060101AFI20240228BHJP
B60R 22/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R22/14
(21)【出願番号】P 2021034698
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020061220
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】深浦 和実
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】林 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0299899(US,A1)
【文献】特開2011-235693(JP,A)
【文献】特表2002-506401(JP,A)
【文献】特開2008-183993(JP,A)
【文献】特開2015-051744(JP,A)
【文献】米国特許第05062662(US,A)
【文献】特開2020-066425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、
該シートベルトにおいて、装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されて、作動時に、前記乗員の前方を覆うように膨張するエアバッグと、
を備える構成とされて、
前記エアバッグが、作動時に内部に膨張用ガスを流入させて前上方に向かって突出するように膨張するバッグ本体と、該バッグ本体の膨張完了時の位置を規制する規制テザーと、
インフレーターと接続されて前記バッグ本体内に膨張用ガスを流入させる導管部と、前記バッグ本体をラップベルトに連結させるためのベルト取付部と、を備える構成とされ、
前記導管部が、元部側を前記バッグ本体における後下端側に配設させるとともに、前記バッグ本体から左方若しくは右方に延びて前記ラップベルトに略沿うように配設され、
前記ベルト取付部は、前記導管部における元部側の領域の下面側に、配設され、
前記バッグ本体が、膨張完了時の下面側に、前記乗員の大腿部と当接可能な大腿部当接面を、配設させ、膨張完了時の後面側に、前記乗員の上半身を拘束可能な上半身拘束面を、配設させる構成とされ、
前記規制テザーが、元部端を膨張完了時の前記バッグ本体の上下の中間部位における後面側に連結させ、該元部端から下方に延びている先端を
、前記ベルト取付部、若しくは、前記導管部における元部側の領域に、連結される構成とされるとともに、長さ寸法を、前記バッグ本体における前記元部端を連結させる連結部位を前記ラップベルト側に引張可能な寸法に、設定されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、
該シートベルトにおいて、装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されて、作動時に、前記乗員の前方を覆うように膨張するエアバッグと、
を備える構成とされて、
前記エアバッグが、作動時に内部に膨張用ガスを流入させて前上方に向かって突出するように膨張するバッグ本体と、該バッグ本体の膨張完了時の位置を規制する規制テザーと、を備える構成とされ、
前記バッグ本体が、膨張完了時の下面側に、前記乗員の大腿部と当接可能な大腿部当接面を、配設させ、膨張完了時の後面側に、前記乗員の上半身を拘束可能な上半身拘束面を、配設させる構成とされ、
前記規制テザーが、前記バッグ本体の膨張完了時の左右両側に、配設されるとともに、それぞれ、元部端を膨張完了時の前記バッグ本体における側面側に連結させ、先端を、前記元部端から後下方に配置された前記シートの側面側に、連結させるように、構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項3】
前記規制テザーが、それぞれ、元部端を、前記バッグ本体において、前記上半身拘束面の上部側の領域における左右の側面側に、連結させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記バッグ本体が、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状として、膨張完了時に前記乗員から離れた前側に配置される前壁部と、膨張完了時に前記乗員側に配置される後上壁部及び後下壁部と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部及び右壁部と、を備える構成とされ、
前記上半身拘束面が、前記後上壁部から構成され、
前記大腿部当接面が、前記後下壁部から構成され、
前記バッグ本体が、乗員側パネルと前側パネルと、の2枚の基材の周縁相互を結合させて、形成される構成とされて、
前記乗員側パネルが、
前記後上壁部と、前記左壁部及び前記右壁部における後上側の領域と、を構成する上側部位と、
前記後下壁部と、前記左壁部及び前記右壁部における後下側の領域と、を構成する下側部位と、
を有する構成とされ、
前記前側パネルが、前記前壁部と、前記左壁部及び前記右壁部における前側の領域と、を構成し、
前記各規制テザーが、元部端を、前記前側パネルと、前記上側部位と、の周縁相互を結合させている結合部位の領域に、結合させる構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグが、前記バッグ本体の後面側に配置される後側テザーを、備える構成とされ、
該後側テザーが、元部端を膨張完了時の前記バッグ本体の上下の中間部位における後面側に連結させ、該元部端から下方に延びている先端を前記ラップベルト側に連結される構成とされるとともに、長さ寸法を、前記バッグ本体における前記元部端を連結させる連結部位を前記ラップベルト側に引張可能な寸法に、設定されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、折り畳まれたエアバッグを収納保持させた保持体を、シートに着座した乗員の腰部の前にセットさせる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。この従来の乗員保護装置では、エアバッグは、作動時に保持体から前上方に向かって突出させるように膨張し、膨張完了時に、乗員の大腿部の上面から上半身の前面にかけてを覆う構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/299899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、エアバッグは、単に保持体から前上方に向かって突出するように膨張する構成であることから、膨張完了時に乗員との間に隙間が生じる場合があり、乗員を迅速に保護する点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張を完了させたエアバッグにより、乗員を迅速に保護することが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、
シートベルトにおいて、装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されて、作動時に、乗員の前方を覆うように膨張するエアバッグと、
を備える構成とされて、
エアバッグが、作動時に内部に膨張用ガスを流入させて前上方に向かって突出するように膨張するバッグ本体と、バッグ本体の膨張完了時の位置を規制する規制テザーと、を備える構成とされ、
バッグ本体が、膨張完了時の下面側に、乗員の大腿部と当接可能な大腿部当接面を、配設させ、膨張完了時の後面側に、乗員の上半身を拘束可能な上半身拘束面を、配設させる構成とされ、
規制テザーが、元部端を膨張完了時のバッグ本体の上下の中間部位における後面側に連結させ、元部端から下方に延びている先端をラップベルト側に連結される構成とされるとともに、長さ寸法を、バッグ本体における元部端を連結させる連結部位をラップベルト側に引張可能な寸法に、設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、エアバッグの膨張完了時に、規制テザーによって、膨張を完了させたバッグ本体を、乗員側となる後方側に牽引させることができ、バッグ本体が、乗員から離れて膨張することを、抑制することができる。具体的には、本発明の乗員保護装置では、規制テザーは、元部端を、バッグ本体の後面側における上下の中間部位に連結させており、この元部端を連結させているバッグ本体の連結部位(すなわち、バッグ本体における後面側の上下の中間部位)を、ラップベルト側、すなわち、下方に向かって引っ張ることから、膨張完了時のバッグ本体の後面側に配置される上半身拘束面を、乗員側に近接させるように配置させることができ、特に、この上半身拘束面における上端側の領域が、乗員から前方に大きく離隔するように、配置されることを、抑制できる。そのため、上半身拘束面により、乗員の上半身を迅速に拘束することができる。そして、この上半身拘束面による上半身の拘束時には、バッグ本体は、下面側の大腿部当接面を乗員の大腿部の上面と当接させつつ、乗員の上半身の前側に配置されることとなる。その結果、バッグ本体は、大腿部当接面を広い面積で大腿部に支持されることから、倒れや圧縮等を抑制されて、乗員の上半身(胸部から頭部にかけて)を、上半身拘束面によって、的確に拘束することができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、膨張を完了させたエアバッグにより、乗員を迅速に保護することができる。
【0009】
また、乗員保護装置は、下記構成としてもよい。
【0010】
シートベルトと、
シートベルトにおいて、装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されて、作動時に、乗員の前方を覆うように膨張するエアバッグと、
を備える構成とされて、
エアバッグが、作動時に内部に膨張用ガスを流入させて前上方に向かって突出するように膨張するバッグ本体と、バッグ本体の膨張完了時の位置を規制する規制テザーと、を備える構成とされ、
バッグ本体が、膨張完了時の下面側に、乗員の大腿部と当接可能な大腿部当接面を、配設させ、膨張完了時の後面側に、乗員の上半身を拘束可能な上半身拘束面を、配設させる構成とされ、
規制テザーが、バッグ本体の膨張完了時の左右両側に、配設されるとともに、それぞれ、元部端を膨張完了時のバッグ本体における側面側に連結させ、先端を、元部端から後下方に配置されたシートの側面側に、連結させるように、構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成の乗員保護装置では、エアバッグの膨張完了時に、左右一対の規制テザーによって、膨張を完了させたバッグ本体を、乗員側となる後方側に牽引させることができ、バッグ本体が、乗員から離れて膨張することを、抑制することができる。具体的には、上記構成の乗員保護装置では、規制テザーは、バッグ本体の左右両側から延びるように配置されて、先端を、元部端から後下方に配置されたシートの側面側に、連結させる構成であることから、バッグ本体の後面における左右両縁側の前方移動を、規制テザーによって、的確に規制することができて、バッグ本体を、左右でバランスよく乗員側となる後方側に牽引させることができ、膨張完了時のバッグ本体の後面側に配置される上半身拘束面を、乗員側に近接させるように配置させることができる。また、バッグ本体は、膨張完了時に、下面側の大腿部当接面を乗員の大腿部の上面と当接させつつ、乗員の上半身の前側に配置されることとなる。そのため、バッグ本体は、大腿部当接面を広い面積で大腿部に支持されることから、倒れや圧縮等を抑制されて、乗員の上半身(胸部から頭部にかけて)を、上半身拘束面によって、的確に拘束することができる。また、上記構成の乗員保護装置では、規制テザーは、先端側をシートの側面側に連結されることから、バッグ本体のシートに対する位置も規制でき、膨張を完了させたバッグ本体によって、乗員の腰部も、前方移動を規制するように拘束することができる。
【0012】
したがって、このような構成の乗員保護装置においても、膨張を完了させたエアバッグにより、乗員を迅速に保護することができる。
【0013】
また、上記構成の乗員保護装置において、規制テザーを、それぞれ、元部端を、バッグ本体において、上半身拘束面の上部側の領域における左右の側面側に、連結させる構成とすれば、バッグ本体の左右の側面側における上部側の領域の前方移動を、規制テザーによって、的確に規制することができることから、バッグ本体を、一層安定して、乗員側となる後方側に牽引させることができ、膨張完了時のバッグ本体の後面側に配置される上半身拘束面を、上下に広く安定して乗員側に近接させるように配置させることができて、好ましい。
【0014】
具体的には、上記構成の乗員保護装置において、バッグ本体を、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状として、膨張完了時に乗員から離れた前側に配置される前壁部と、膨張完了時に乗員側に配置される後上壁部及び後下壁部と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部及び右壁部と、を備える構成とし、
上半身拘束面を、後上壁部から構成し、
大腿部当接面を、後下壁部から構成し、
バッグ本体を、乗員側パネルと前側パネルと、の2枚の基材の周縁相互を結合させて、形成される構成として、
乗員側パネルを、
後上壁部と、左壁部及び右壁部における後上側の領域と、を構成する上側部位と、
後下壁部と、左壁部及び右壁部における後下側の領域と、を構成する下側部位と、
を有する構成とし、
前側パネルを、前壁部と、左壁部及び右壁部における前側の領域と、を構成し、
各規制テザーの元部端を、前側パネルと、上側部位と、の周縁相互を結合させている結合部位の領域に、結合させる構成とすることが、好ましい。
【0015】
乗員保護装置を上記構成とすれば、各規制テザーの元部端を、バッグ本体における内部に膨張用ガスを流入させて膨張する周壁ではなく、周壁を構成している基材の外周縁相互を結合させている結合部位の領域に、結合させていることから、エアバッグの膨張時における各規制テザーの元部端のバッグ本体側への結合状態を安定させることができ、規制テザーによって、膨張完了時のバッグ本体の位置を安定して規制することができる。また、規制テザーの元部端のバッグ本体への結合部位が、ガス漏れの虞れのある周壁単体の部位ではなく、バッグ本体の膨張している周壁相互の結合部位の領域に形成されることから、ガス漏れの虞れを抑制して、規制テザーの元部端をバッグ本体に結合させることができる。
【0016】
さらに、上記構成の乗員保護装置において、エアバッグに、バッグ本体の後面側に配置される後側テザーを、配設させ、
後側テザーを、元部端を膨張完了時のバッグ本体の上下の中間部位における後面側に連結させ、元部端から下方に延びている先端をラップベルト側に連結される構成とするとともに、長さ寸法を、バッグ本体における元部端を連結させる連結部位をラップベルト側に引張可能な寸法に、設定する構成とすることが、好ましい。
【0017】
乗員保護装置をこのような構成とすれば、左右一対の規制テザーによる規制に加えて、後側テザーによって、バッグ本体の膨張完了時の位置を規制することができる。詳細には、上記構成の乗員保護装置では、元部端をバッグ本体の後面側における上下の中間部位に連結させている後側テザーにより、この元部端を連結させているバッグ本体の連結部位(バッグ本体における後面側の上下の中間部位)を、ラップベルト側、すなわち、下方に引っ張ることができる。そのため、左右の側面側から延びる規制テザーによってバッグ本体を、左右でバランスよく乗員側となる後方側に牽引させることができることに加えて、後側テザーによって、膨張完了時のバッグ本体の後面側に配置される上半身拘束面を、乗員側に近接させるように配置させることができ、特に、この上半身拘束面における上端側の領域が、乗員から前方に大きく離隔するように、配置されることを、抑制できる。その結果、上記構成の乗員保護装置では、エアバッグの膨張完了時に、上半身拘束面により、乗員の上半身を迅速かつ安定して拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
【
図3】
図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
【
図4】
図1の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【
図5】
図4のエアバッグの概略縦断面図であり、規制テザーの先端のベルト取付部への縫着前の状態と縫着後の状態とを示す。
【
図6】第1実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
【
図7】第1実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【
図8】第1実施形態の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
【
図10】第2実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【
図11】第2実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの平面図である。
【
図12】他の例であるエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
【
図13】
図12の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【
図14】さらに他の例であるエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
【
図15】
図14のエアバッグを使用した乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの平面図である。
【
図16】
図14のXVI-XVI部位における部分拡大断面図である。
【
図17】
図14のエアバッグにおけるバッグ本体を構成する基材と規制テザーとを並べた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、シートの前後・上下・左右の方向と一致するものである。
【0020】
まず、第1実施形態の乗員保護装置S1について、説明する。第1実施形態の乗員保護装置S1は、車両のシート1に搭載されるもので、
図1,2に示すように、シートベルト7と、エアバッグ25と、インフレーター17と、を備える構成とされている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0021】
シートベルト7は、シート1に着座した乗員MPを拘束するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に、一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端左方に配置されるアンカ部材14(
図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員の非着座状態においては、
図1,2に示すように、エアバッグ25を収納させるラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩から胸部にかけて)を拘束する構成とされている(
図3参照)。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、
図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。
【0022】
インフレーター17は、シート1における座部3の座面よりも下方となる位置に、配設されている。実施形態の場合、インフレーター17は、
図1に示すように、インフレーター本体18(詳細な図示省略)と、インフレーター本体18から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給するパイプ部19と、を備えている。パイプ部19は、インフレーター本体18から延びて、先端を、シート1の左方において、座部3と背もたれ部2との境界部位付近に位置させるように、配設されるもので、この先端を、クランプ20を利用して、エアバッグ25における後述する導管部40と接続させる構成とされている(
図7参照)。
【0023】
エアバッグ25は、可撓性を有したシート体から構成される袋状とされるもので、
図4,5に示すように、バッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26に膨張用ガスを流入させる導管部40と、バッグ本体26をラップベルト10に連結させるためのベルト取付部42と、バッグ本体26の膨張完了時の位置を規制する規制テザー45と、を備えている。実施形態の場合、エアバッグ25は、バッグ本体26と規制テザー45とを、長尺状に折り畳まれて、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、ラップベルト10の領域に配置されている(
図3参照)。すなわち、
図1,2に示すような非装着状態においては、エアバッグ25(折り畳まれたバッグ本体26及び規制テザー45と、導管部40)は、ラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。実施形態の場合、折り畳まれたエアバッグ25とラップベルト10とは、
図3に示すように、周囲を、エアバッグ25の展開膨張時に破断可能なカバー22によって覆われて、一体化されている。
【0024】
バッグ本体26は、実施形態の場合、膨張完了時の外形形状を、
図4,5に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされている。詳細に説明すれば、バッグ本体26は、左右の側方側から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(
図6,7参照)。バッグ本体26は、膨張完了時に乗員MPから離れた前側に配置される前壁部27と、膨張完了時に乗員MP側に配置される後上壁部28及び後下壁部29と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部30及び右壁部31と、を備える構成とされている(
図4,5参照)。そして、実施形態のバッグ本体26では、後下壁部29が、膨張完了時に乗員MPの大腿部MTと当接可能な大腿部当接面36を構成し、後上壁部28が、膨張完了時に乗員MPの前方に配置されて乗員MPの上半身MU(胸部MBから頭部MHにかけて)を拘束可能な上半身拘束面37を、構成している。具体的には、バッグ本体26は、実施形態の場合、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、シート1の背もたれ部2より小さく、かつ、乗員MPの上半身MUを安定して保護可能に、上半身MUと同等として、構成されている(
図6参照)。また、後上壁部28と後下壁部29とは、略直交するように配置される構成であり、後下壁部29(大腿部当接面36)は、前端29aを、実施形態の場合、乗員MPの大腿部MTより前方に位置させ、後上壁部28(上半身拘束面37)は、上端28aを、実施形態の場合、乗員MPの頭部MHの前方となる位置に配置させるように、構成されている(
図7参照)。このバッグ本体26は、左壁部30及び右壁部31の部位に、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気させるためのベントホール33を、備えている。また、バッグ本体26は、膨張完了時における後下端側の部位(後下壁部29の後端29b側の部位)で、連通孔(図符号省略)を介して、導管部40と連通されている(
図5参照)。
【0025】
導管部40は、
元部側をバッグ本体26における後下端側に配設させて、バッグ本体26から左方に延びるように構成されるもので、先端40a側を開口させた略筒状として、インフレーター17のパイプ部19と接続されるもので、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成である。この導管部40は、先端40a側を、上述したごとく、クランプ20を用いて、インフレーター17のパイプ部19に接続される構成である。また、実施形態の場合、導管部40の先端40a付近の領域は、外側面側(実施形態における左側面側)を、シート1側から延びる押え部材15によって、押えられる構成とされている(
図7参照)。バッグ本体26をラップベルト10に連結させるためのベルト取付部42は、
図4,5に示すように、導管部40
における元部側の領域の下面側に、配設されている。ベルト取付部42は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている(
図4参照)。
【0026】
規制テザー45は、バッグ本体26の後面側に配設されるもので、元部端45aを膨張完了時のバッグ本体26の上下の中間部位における後面側に連結させ、元部端45aから下方に延びている先端45bを連結部位45cとして、ラップベルト10側に、連結される構成とされている(
図4,5参照)。詳細には、規制テザー45は、元部端45a側を幅広とし、先端45b側にかけて狭幅とされる略台形状とされており、元部端45a側の幅寸法は、具体的には、バッグ本体26の左右方向側の幅寸法の1/3程度に、設定されている(
図6参照)。そして、規制テザー45は、左右の中央を、バッグ本体26における左右の中央(後上壁部28の左右の中央)と略一致させるようにして、左右方向に略沿って配置される元部端45aを、全長にわたって、バッグ本体26の後面側における上下の略中央となる後上壁部28の中央側部位28bに、縫合糸を用いて縫着されている。また、規制テザー45は、先端45bを、ベルト取付部42に縫着させることにより、連結部位45cとして、ラップベルト10側に連結される構成とされている。具体的には、規制テザー45の先端45b(連結部位45c)は、ベルト取付部42の後端付近に、縫合糸を用いて縫着(連結)されている(
図4参照)。この規制テザー45は、
図5のAに示すように、長さ寸法(元部端45aと先端45b(連結部位45c)との離隔距離)を、エアバッグ25の膨張完了時に、バッグ本体26における元部端45aを連結させる連結部位(後上壁部28の中央側部位28b)を、ラップベルト10側に引張可能な寸法に、設定されている。具体的には、実施形態の場合、規制テザー45は、長さ寸法L1を、単体で膨張させた状態のバッグ本体26の前後方向に沿った断面において、中央側部位28bから導管部40までの膜長の長さL2よりも、小さくするように、構成されている(
図5のA参照)。そして、バッグ本体26は、
図5のA,Bに示すように、規制テザー45の先端45b側の連結部位45cをベルト取付部42に縫着させることにより、規制テザー45に中央側部位28bをラップベルト10側(ベルト取付部42側)に引っ張られて、この先端45b(連結部位45c)のベルト取付部42への縫着前の状態と比較して、後上壁部28を上下方向に略沿わせるように、傾いて配置されることとなる。
【0027】
第1実施形態の乗員保護装置S1では、車両に搭載した状態で、インフレーター17が作動すれば、インフレーター17から吐出される膨張用ガスが、導管部40を経てバッグ本体26内に流入することとなり、バッグ本体26が、カバー22を破断させるようにして、ラップベルト10から前上方に突出しつつ、
図3の二点鎖線及び
図6,7に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0028】
そして、第1実施形態の乗員保護装置S1では、エアバッグ25の膨張完了時に、規制テザー45によって、膨張を完了させたバッグ本体26を、乗員MP側となる後方側に牽引させることができ、バッグ本体26が、乗員MPから離れて膨張することを、抑制することができる。具体的には、第1実施形態の乗員保護装置S1では、規制テザー45は、元部端45aを、バッグ本体26の後面側における上下の中間部位に連結させており、この元部端45aを連結させているバッグ本体26の連結部位(すなわち、実施形態の場合、バッグ本体26における後上壁部28の中央側部位28b)を、ラップベルト10側、すなわち、下方に向かって引っ張ることから、
図7に示すように、膨張完了時のバッグ本体26の後面側に配置される上半身拘束面37を、乗員MP側に近接させるように配置させることができ、特に、この上半身拘束面37における上端側(後上壁部28の上端28a側)の領域が、乗員MPから前方に大きく離隔するように、配置されることを、抑制できる。そのため、上半身拘束面37により、乗員MPの上半身MUを迅速に拘束することができる。そして、この上半身拘束面37による上半身MUの拘束時には、バッグ本体26は、下面側の大腿部当接面36を乗員MPの大腿部MTの上面と当接させつつ、乗員MPの上半身MUの前側に配置されることとなる。その結果、バッグ本体26は、大腿部当接面36を広い面積で大腿部MTに支持されることから、倒れや圧縮等を抑制されて、乗員MPの上半身MU(胸部MBから頭部MHにかけて)を、上半身拘束面37によって、的確に拘束することができる(
図8参照)。ちなみに、規制テザーを設けない構成とする場合、
図7の二点鎖線に示すように、バッグ本体26´の後上壁部28´は、上端を前方に向けるように、傾斜して配置されることとなる。
【0029】
したがって、第1実施形態の乗員保護装置S1では、膨張を完了させたエアバッグ25により、乗員MPを迅速に保護することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態である乗員保護装置S2について、説明をする。第2実施形態の乗員保護装置S2では、エアバッグ48以外の構成部材は、前述の乗員保護装置S1と同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号を付して、詳細な説明を省略する。エアバッグ48は、
図9~11に示すように、バッグ本体26と、インフレーター17と接続されてバッグ本体26に膨張用ガスを流入させる導管部40と、バッグ本体26をラップベルト10に連結させるための図示しないベルト取付部と、バッグ本体26の膨張完了時の位置を規制する規制テザー50L,50Rと、を備えている。エアバッグ48において、規制テザー50L,50R以外は、前述の乗員保護装置S1におけるエアバッグ25と同一の構成であることから、同一の部材には、同一の図符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
規制テザー50L,50Rは、外形形状を略同一とした左右一対として、バッグ本体26の膨張完了時の左右両側に、配設されるとともに、それぞれ、元部端50aを膨張完了時のバッグ本体26における側面側に連結させ、先端50bを、元部端50aから後下方に配置されたシート1の側面側(実施形態の場合、シート1の側面側における背もたれ部2と座部3との境界部位付近)に、連結させるように、構成されている。詳細には、各規制テザー50L,50Rは、元部端50a側を幅広とし、先端50b側にかけて収束される略三角形状とされており(
図9,10参照)、元部端50a側を、バッグ本体26における左壁部30,右壁部31の後縁30a,31a側において、それぞれ、後縁30a,31aに略沿って結合させる構成とされている(
図10,11参照)。具体的には、各規制テザー50L,50Rは、元部端50a側の上下方向側の幅寸法を、左壁部30,右壁部31の後縁30a,31a側(すなわち、後上壁部28)の上下の幅寸法の半分程度に設定されており、元部端50aを、各左壁部30,右壁部31の後縁30a,31a近傍における下半分程度の領域に、全長にわたって、縫合糸を用いて縫着されている(
図10参照)。各規制テザー50L,50Rの先端50bは、連結部位50cとして、元部端50aから後下方に配置されたシート1の側面側(詳細には、シート1の側面側における背もたれ部2と座部3との境界部位付近)に連結される構成であり、具体的には、実施形態の場合、左側の規制テザー50Lの先端50bの連結部位50cは、シート1の左側面側に配置されて、
図10に示すように、導管部40の先端40a側の外側面を押える押え部材15(
図1,2参照)に、連結され、右側の規制テザー50Rの先端50bの連結部位50cは、
図9,11に示すように、シート1の右側面側に配置されるシートベルト7のバックル13(
図1,3参照)に、連結される構成である。各規制テザー50L,50Rは、長さ寸法(元部端50aと先端50b(連結部位50c)との離隔距離)を、エアバッグ48の膨張完了時に、バッグ本体26における後下端側の領域(後下側部26a、
図10参照)を乗員MPの腰部MWの前側に近接して配置可能な寸法に、設定されている。
【0032】
この第2実施形態の乗員保護装置S2においても、エアバッグ48の膨張完了時に、左右一対の規制テザー50L,50Rによって、膨張を完了させたバッグ本体26を、乗員MP側となる後方側に牽引させることができ、バッグ本体26が、乗員MPから離れて膨張することを、抑制することができる。具体的には、第2実施形態の乗員保護装置S2では、規制テザー50L,50Rは、バッグ本体26の左右両側から延びるように配置されて、先端50b(連結部位50c)を、元部端50aから後下方に配置されたシート1の側面側に、連結させる構成であることから、バッグ本体26の後面(上半身拘束面37,後上壁部28)における左縁28c側と右縁28d側との前方移動を、規制テザー50L,50Rによって、的確に規制することができて(
図11参照)、バッグ本体26を、左右でバランスよく乗員MP側となる後方側に牽引させることができ、膨張完了時のバッグ本体26の後面側に配置される上半身拘束面37を、乗員MP側に近接させるように配置させることができる。また、バッグ本体26は、膨張完了時に、下面側の大腿部当接面36を乗員MPの大腿部MTの上面と当接させつつ、乗員MPの上半身MUの前側に配置されることとなる。そのため、バッグ本体26は、大腿部当接面36を広い面積で大腿部MTに支持されることから、倒れや圧縮等を抑制されて、乗員MPの上半身(胸部MBから頭部MHにかけて)を、上半身拘束面37によって、的確に拘束することができる。また、第2実施形態の乗員保護装置S2では、規制テザー50L,50Rは、先端50b側をシート1の側面側に連結されることから、バッグ本体26のシート1に対する位置も規制でき、膨張を完了させたバッグ本体26によって、乗員MPの腰部MWも、前方移動を規制するように拘束することができる。
【0033】
したがって、第2実施形態の乗員保護装置S2においても、膨張を完了させたエアバッグ48により、乗員MPを迅速に保護することができる。
【0034】
また、第2実施形態の乗員保護装置S2では、バッグ本体26と導管部40とは、ベルト取付部42によって、ラップベルト10に対して若干相対移動可能に取り付けられる構成であることから、バッグ本体26の左右の側面側から延びて先端50bをシート1側に連結される規制テザー50L,50Rにより、バッグ本体26の膨張完了時における乗員MPに対する左右の位置を、微調整(センタリング)することも、できる。
【0035】
さらに、エアバッグ48Aとして、
図12,13に示すように、規制テザー50L,50Rに加えて、バッグ本体26の後面側に、後側テザー45Aを、配設させる構成のものを使用してもよい。この後側テザー45Aは、前述のエアバッグ25に配設される規制テザー45と同一の構成である。エアバッグ48Aをこのような構成とすれば、左右一対の規制テザー50L,50Rによる規制に加えて、後側テザー45Aによって、バッグ本体26の膨張完了時の位置を規制することができる。詳細には、このような構成のエアバッグ48Aでは、元部端45aをバッグ本体26の後面側における上下の中間部位(後上壁部28の中央側部位28b)に連結させている後側テザー45Aにより、この元部端45aを連結させているバッグ本体26の連結部位(バッグ本体26における後上壁部28の中央側部位28b)を、ラップベルト10側、すなわち、下方に引っ張ることができる。そのため、左右の側面側から延びる規制テザー50L,50Rによってバッグ本体26を、左右でバランスよく乗員MP側となる後方側に牽引させることができることに加えて、後側テザー45Aによって、膨張完了時のバッグ本体26の後面側に配置される上半身拘束面37を、乗員MP側に近接させるように配置させることができ、特に、この上半身拘束面37における上端側の領域が、乗員MPから前方に大きく離隔するように、配置されることを、抑制できる。その結果、エアバッグ48Aでは、膨張完了時に、上半身拘束面37により、乗員MPの上半身MUを迅速かつ安定して拘束することができる。
【0036】
さらにまた、エアバッグ48Bとして、
図14,15に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ48Bは、前述のエアバッグ48と同様に、バッグ本体26Bと、導管部40と、バッグ本体26Bをラップベルト10に連結させるための図示しないベルト部と、バッグ本体26Bの膨張完了時の位置を規制する規制テザー50BL,50BRと、を備えている。
【0037】
バッグ本体26Bは、前述の乗員保護装置S1におけるエアバッグ25のバッグ本体26と同様の構成として、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされて、膨張完了時に乗員MPから離れた前側に配置される前壁部27Bと、膨張完了時に乗員MP側に配置される後上壁部28B及び後下壁部29Bと、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部30B及び右壁部31Bと、を備える構成とされている。このバッグ本体26Bにおいても、後下壁部29Bが、大腿部当接面36Bを構成し、後上壁部28Bが、上半身拘束面37Bを構成している。
【0038】
バッグ本体26Bは、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、実施形態の場合、
図17に示すように、2枚の乗員側パネル60,前側パネル64から、構成されている。
【0039】
乗員側パネル60は、膨張完了時に乗員MP側に配置されて大腿部当接面36Bから上半身拘束面37Bにかけての部位を構成するもので、膨張完了時のバッグ本体26Bにおける後上壁部28Bから後下壁部29Bにかけてを主に構成している。具体的には、乗員側パネル60は、主に大腿部当接面36B(後下壁部29B)を構成する下側部位62と、主に上半身拘束面37B(後上壁部28B)を構成する上側部位61と、を備えている。詳細には、下側部位62は、後下壁部29Bと、左壁部30B及び右壁部31Bにおける後下側の領域と、を構成し、上側部位61は、後上壁部28Bと、左壁部30B及び右壁部31Bにおける後上側の領域と、を構成するもので、ともに、外形形状を略六角形状とされている。そして、乗員側パネル60は、この下側部位62と上側部位61とを、膨張完了時に後端側に位置する一辺で連結させたような外形形状とされており、下側部位62と上側部位61とは、この連結部位60aを基準として対称形とされている(
図17参照)。
【0040】
前側パネル64は、膨張完了時のバッグ本体26Bにおける前壁部27Bを主に構成するもので、詳細には、前壁部27Bと、左壁部30B及び右壁部31Bにおける前側の領域と、を構成している。この前側パネル64は、外形形状を、乗員側パネル60において、後左縁61a,62a相互、後右縁61b,62b相互を、それぞれ結合させた残りの縁部(前縁61c,62c)相互を離隔させるように開いた状態の下側部位62及び上側部位61と、略一致させた六角形状とされている。
【0041】
そして、バッグ本体26Bは、乗員側パネル60における上側部位61と下側部位62とを、周縁相互を一致させるように、連結部位60aで折り返して、後左縁61a,62a相互、後右縁61b,62b相互を、それぞれ、側方結合部位54,54を形成するように、縫合糸を用いて縫着(結合)させ、その後、残りの縁部である前縁61c,62c相互を離隔させるように開いた状態の上側部位61と下側部位62とに、平らに展開した状態の前側パネル64を重ね、前縁61c,62cと、前側パネル64の外周縁64と、を、上側結合部位52及び下側結合部位53を形成するように、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、形成される(
図14,15,17参照)。また、実施形態のバッグ本体26Bでは、乗員側パネル60と前側パネル64との周縁相互を結合させて形成される上側結合部位52,下側結合部位53,側方結合部位54,54は、それぞれ、結合代52a,53a,54aを、バッグ本体26Bの外周面側に露出させるようにして、配設されている(
図14~16参照)。
【0042】
規制テザー50BL,50BRは、外形形状を略同一とした左右一対として、バッグ本体26Bの膨張完了時の左右両側に配設されるもので、それぞれ、元部端50aを、膨張完了時のバッグ本体26Bの側面側であって、上半身拘束面37Bの上部側の領域における左右の側面側に、連結させるように、構成されている。具体的には、各規制テザー50BL,50BRは、元部端50aを、前側パネル64の外周縁64aと、上側部位61の前縁61cと、を結合させている上側結合部位52の端部52b近傍の領域に、結合させる構成とされている(
図16,17参照)。具体的には、実施形態の場合、各規制テザー50BL,50BRの元部端50aは、上側結合部位52の結合代52aの領域に、結合部位55L,55Rを設けるようにして、縫合糸を用いて縫着(結合)されている。すなわち、規制テザー50BL,50BRは、元部端50aを、前述のエアバッグ48における規制テザー50L,50Rよりも前方であってかつ上方となる位置であって、左壁部30B,右壁部31Bにおける上下前後の略中央となる位置に、連結させる構成とされている。規制テザー50BL,50BRの先端50bは、前述のエアバッグ48における規制テザー50L,50Rと同様に、シート1の側面側に連結される構成である。
【0043】
このような構成のエアバッグ48Bを使用した場合、規制テザー50BL,50BRが、それぞれ、元部端50aを、バッグ本体26Bにおいて、上半身拘束面37Bの上部側の領域における左右の側面側に、連結させていることから、バッグ本体26Bの左右の側面側における上部側の領域の前方移動を、規制テザー50BL,50BRによって、的確に規制することができて、バッグ本体26Bを、一層安定して、乗員MP側となる後方側に牽引させることができ、膨張完了時のバッグ本体26Bの後面側に配置される上半身拘束面37Bを、上下に広く安定して乗員MP側に近接させるように配置させることができる。
【0044】
また、上記構成のエアバッグ48Bでは、各規制テザー50BL,50BRの元部端50aを、バッグ本体26Bにおける内部に膨張用ガスを流入させて膨張する周壁(左壁部30B,右壁部31B)ではなく、周壁(左壁部30B,右壁部31B)を構成している基材である前側パネル64と、乗員側パネル60における上側部位61と、の周縁相互(前縁61cと外周縁64a)相互を結合させている上側結合部位52の領域に、結合させていることから、エアバッグ48Bの膨張時における各規制テザー50BL,50BRの元部端50aのバッグ本体26B側への結合状態を安定させることができ、規制テザー50BL,50BRによって、膨張完了時のバッグ本体26Bの位置を安定して規制することができる。また、規制テザー50BL,50BRの元部端50aのバッグ本体26Bへの結合部位55L,55Rが、ガス漏れの虞れのある周壁単体の部位ではなく、バッグ本体26Bの膨張している周壁相互の上側結合部位52の領域に形成されることから、ガス漏れの虞れを抑制して、規制テザー50BL,50BRの元部端50aをバッグ本体26Bに結合させることができる。なお、実施形態では、規制テザー50BL,50BRの元部端50aは、バッグ本体26Bの製造後に、上側結合部位52の結合代52aの領域に、結合部位55L,55Rを形成するようにして縫着されているが、規制テザーの元部端は、バッグ本体の製造時(乗員側パネルと前側パネルとの周縁相互の結合時に、共縫いすることにより、バッグ本体に連結させる構成としてもよい。
【0045】
なお、実施形態のエアバッグ25,48Aでは、規制テザー45(後側テザー45A)は、外形形状を略台形状として、幅広の元部端45aを、左右方向に略沿わせるようにして、バッグ本体26の後上壁部28の上下の略中央となる中央側部位28bに、連結させている構成であるが、規制テザー(後側テザー)の外形形状や、バッグ本体に対する連結位置は、実施形態に限定されるものではない。エアバッグの膨張完了時に、元部端を連結させているバッグ本体の連結位置を、円滑にラップベルト側に引張可能な構成であれば、規制テザー(後側テザー)のバッグ本体に対する連結位置は、上下の中央より上方、あるいは、下方としてもよい。また、規制テザー(後側テザー)の外形形状も、台形に限定されるものではなく、例えば、幅寸法を全長にわたって略同一とした略帯状としてもよい。しかしながら、実施形態のエアバッグ25,48Aでは、膨張完了時に、後上壁部28の上端28a側で、乗員MPの頭部MHを受け止める構成であることから、規制テザー45(後側テザー45A)の元部端45aは、頭部MHと接触するエリアに、連結させない構成とすることが、好ましい。また、バッグ本体における連結部位を安定して下方に引っ張る観点からは、規制テザー(後側テザー)は、元部端側を、ある程度幅広に形成することが、好ましい。
【0046】
また、実施形態のエアバッグ25,48Aでは、規制テザー45の先端45b側の連結部位45cは、ラップベルト10を挿通させているベルト取付部42に縫着(連結)される構成であるが、規制テザーの先端側の連結位置は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、導管部における元部側の領域に連結させる構成としてもよく、さらには、別途、筒状の連結手段を設けてラップベルトを挿通させることにより、ラップベルト側に直接連結させる構成としてもよい。
【0047】
さらに、実施形態のエアバッグ48,48Aでは、規制テザー50L,50Rは、元部端50a側を上下に幅広とした略三角形状として、元部端50aを、バッグ本体26の左壁部30,右壁部31における後縁30a,31a近傍において、下半分程度の領域に連結させる構成とされており、また、エアバッグ48Bでは、規制テザー50BL,50BRは、元部端50aを、バッグ本体26Bの左壁部30B,右壁部31Bにおける前後上下の略中央となる位置に、連結させる構成とされている。しかしながら、規制テザーの外形形状や、バッグ本体に対する連結位置は、実施形態に限定されるものではない。膨張完了時のバッグ本体の後面における左右両縁側の前方移動を、的確に規制可能であれば、例えば、規制テザーの元部端は、バッグ本体の左壁部,右壁部における後縁から離れた前側の領域に、連結させる構成としてもよく、また、規制テザーの外形形状を略帯状として、元部端を、バッグ本体の左壁部,右壁部における上下の中間部位に、連結させる構成としてもよい。膨張完了時のバッグ本体の後面における左右両縁側を安定して後下方に引っ張ることを考慮すれば、規制テザーの元部端は、左壁部,右壁部の後縁近傍に連結させることが、好ましい。また、膨張完了時のバッグ本体の後下端側の領域によって、腰部の前方移動を安定して規制できる点を考慮すれば、規制テザーの元部端は、バッグ本体の側面における下端側に、連結させることが、好ましい。
【0048】
さらにまた、実施形態のエアバッグ48,48A,48Bでは、規制テザー50L,50R,50BL,50BRの先端50b(連結部位50c)は、それぞれ、シートベルト7のバックル3と、導管部40の先端40a側を押える押え部材15と、に、連結されている構成であるが、規制テザーの先端側を連結させせる連結部材は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、シートから延びるように別途形成される連結部材に、直接連結させる構成としてもよい。
【0049】
なお、実施形態では、エアバッグ25,48,48A,48Bにおけるバッグ本体26,26Bが、膨張完了形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされていることから、エアバッグ25,48,48A,48Bの膨張完了時に、乗員MPが上半身MUを下半身MDに近づけるように大きく移動させる場合にも、バッグ本体26,26Bは、上半身拘束面37,37Bを大腿部当接面36,36Bに接近させるような圧縮や、倒れを抑制されることとなり、乗員MPの上半身MUを、バッグ本体26,26Bによって、的確に拘束することができる。なお、エアバッグの膨張完了形状は、大腿部当接面と上半身拘束面とを備えるものであれば、実施形態に限られるものではなく、例えば、エアバッグとして、左右方向側から見た状態での膨張完了形状を、略L字板状としたものを、使用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…シート、2…背もたれ部、3…座部、7…シートベルト、20…ラップベルト、17…インフレーター、25,48,48A,48B…エアバッグ、26,26B…バッグ本体、28,28B…後上壁部、28b…中央側部位(連結部位)、29,29B…後下壁部、30,30B…左壁部、31,31B…右壁部、36,36B…大腿部当接面、37,37B…上半身拘束面、42…ベルト取付部、45…規制テザー、45A…後側テザー、45a…元部端、45b…先端、45c…連結部位、50L,50R,50BL,50BR…規制テザー、50a…元部端、50b…先端、50c…連結部位、52…上側結合部位、52a…結合代、60…乗員側パネル、61…上側部位、62…下側部位、64…前側パネル、MP…乗員、MU…上半身、MD…下半身、MT…大腿部、S1,S2…乗員保護装置。