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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】内燃機関システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20240228BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20240228BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240228BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240228BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20240228BHJP
【FI】
F02D23/00 J
F02B37/12 302Z
F02D43/00 301J
F02D43/00 301N
F02D43/00 301R
F02D45/00 364E
F02M26/05
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021062945
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158204
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉瀧 慎一郎
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-109261(JP,A)
【文献】特開平11-036994(JP,A)
【文献】特開2001-090525(JP,A)
【文献】特開2007-327480(JP,A)
【文献】特開2009-013952(JP,A)
【文献】特開2019-157798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/12
F02D 23/00
F02D 41/00-45/00
F02M 26/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関システムの制御装置であって、
前記内燃機関システムは、
内燃機関と、
前記内燃機関の排気経路に一方端が接続され、前記内燃機関の吸気経路に他方端が接続され、前記内燃機関からの排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気経路へ戻すEGR配管と、
前記EGR配管の開度を調整可能なEGR弁と、
前記排気経路に接続された前記EGR配管よりも前記排気経路の下流側に配置されたタービンを用いて前記内燃機関の吸気を過給するターボ過給機と、
前記ターボ過給機による吸気の過給圧を調整可能な過給圧調整装置と、
前記内燃機関に燃料を噴射するインジェクタと、
前記過給圧調整装置と前記EGR弁と前記インジェクタを制御する前記制御装置と、
を有しており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の運転状態を検出し、検出した前記運転状態に基づいた目標過給圧を設定し、前記過給圧が前記目標過給圧に近づくように前記過給圧調整装置の制御関連量である目標過給圧制御関連量を求める、目標過給圧制御関連量算出部と、
前記EGR弁を開いて前記EGR配管を介して排気ガスの一部を前記EGRガスとして前記排気経路から前記吸気経路に戻す場合、前記EGR配管が接続されている前記排気経路の個所における排気ガスの圧力のほうが、前記EGR配管が接続されている前記吸気経路の個所における吸気の圧力よりも高くなるように、前記内燃機関の前記運転状態に応じて、前記過給圧調整装置の制御関連量であるEGR担保制御関連量を求める、EGR担保制御関連量算出部と、
前記目標過給圧制御関連量と前記EGR担保制御関連量に基づいた最終過給圧制御関連量を求め、前記最終過給圧制御関連量に基づいて前記過給圧調整装置を制御する、過給圧調整装置制御部と、
前記内燃機関の前記運転状態に基づいて、前記内燃機関のシリンダ内に充填される吸気量である総吸気量に対するEGRガス量であるEGR率の目標である目標EGR率を設定し、前記EGR率が前記目標EGR率に近づくように前記EGR弁の開度を制御する、EGR弁制御部と、
前記内燃機関の前記運転状態に基づいて、前記インジェクタから噴射した燃料が着火する時期の目標である目標着火時期を設定し、前記目標着火時期で着火するように前記インジェクタからの燃料噴射時期を制御する、燃料噴射時期制御部と、
を有しており、
前記制御装置は、さらに、
実際の前記過給圧である実過給圧が前記目標過給圧よりも所定圧力以上高い場合に、実際の前記EGR率である実EGR率が前記目標EGR率よりも高くなるように前記EGRガス量を増量させるとともに、前記目標着火時期よりも進角した位置で着火するように前記燃料噴射時期を進角させる、吸気・燃料協調制御部を有している、
内燃機関システムの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関システムの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記吸気・燃料協調制御部にて、前記実過給圧が前記目標過給圧よりも前記所定圧力以上高い場合に前記EGRガス量を増量させるEGRガス増加量を求める際、
前記運転状態に応じた目標吸気状態として、前記目標過給圧と前記目標EGR率と前記内燃機関のシリンダ容量とに基づいて、前記シリンダ内に充填される総吸気量である目標総吸気量から前記EGRガス量の目標である目標EGRガス量を除いた新気量の目標である目標新気量を求め、
前記目標吸気状態に対して実際の吸気状態である実吸気状態として、前記実過給圧と前記目標EGR率と前記シリンダ容量とに基づいて、前記シリンダ内に充填される実際の前記新気量である実新気量を求め、
前記実新気量と前記目標新気量との差分を前記EGRガス増加量とする、
内燃機関システムの制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関システムの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記吸気・燃料協調制御部にて、前記実過給圧が前記目標過給圧よりも前記所定圧力以上高い場合に前記燃料噴射時期を進角させる際、
前記EGRガス増加量に基づいて着火時期補正量を求め、前記目標着火時期を前記着火時期補正量にて進角する側に補正した着火時期で着火するように前記燃料噴射時期を進角させる、
内燃機関システムの制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃機関システムの制御装置であって、
前記制御装置は、
前記吸気・燃料協調制御部にて、前記実過給圧が前記目標過給圧よりも前記所定圧力以上高い場合に前記燃料噴射時期を進角させる際、
前記EGRガス増加量に応じたNOx減少量を求め、
前記NOx減少量以下のNOx増加量となるように前記目標着火時期に対する着火時期補正量を求め、前記目標着火時期を前記着火時期補正量にて進角する側に補正した着火時期で着火するように前記燃料噴射時期を進角させる、
内燃機関システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ過給機と、排気ガスの一部を排気経路から吸気経路へ再循環させるEGRシステムとを有する内燃機関システムを制御する、内燃機関システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両は、排気ガス中のNOxをより低減するために、排気ガスの一部を吸気経路へ再循環し、燃焼温度を低下させてNOx発生量を低減させるEGRシステムを搭載している。一般的なEGRシステムは、排気マニホルドと吸気マニホルドを連通するEGR配管を有し、EGR配管に設けたEGR弁を用いてEGR配管の開度を調整してEGRガス流量を調整することで、排気ガスの一部を吸気経路へ再循環させている。
【0003】
過給機を有していない自然吸気の内燃機関では、吸気マニホルド内の圧力は大気圧よりも低い負圧であり、排気マニホルド内の圧力は大気圧よりも高い正圧であるので、EGRガスは、EGR配管内を排気マニホルドの側から吸気マニホルドの側へと問題なく流れる。しかし、過給機を有する内燃機関では、吸気マニホルド内の圧力が大気圧よりも高い正圧となる場合があるので、EGRガスが排気マニホルドの側から吸気マニホルドの側へと流れない場合がある。EGRシステムの制御性を担保させるためには、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGR前後差圧(排気マニホルド内圧力と吸気マニホルド内圧力の圧力差)が必要である。そしてEGR前後差圧を担保させるためには、ターボ過給機の可変ノズルの閉度(またはウエストゲートバルブの閉度)を適切な閉度に調整する必要がある(可変ノズルの閉度(またはウエストゲートバルブの閉度)を大きく(開度を小さく)するほど、排気抵抗が増加して排気マニホルド内の圧力が上昇する)。
【0004】
例えば特許文献1に記載のターボチャージャの制御装置では、可変ノズルの開度(閉度)の変化に対して過給圧がほとんど変化しない無過給域(主に、アイドル回転数などの低回転・低負荷の領域)において、EGRの制御性を担保可能となるように可変ノズルの開度(閉度)を適切に調整している。これにより、内燃機関の無過給域において、EGRの制御性を担保している(EGRガスを再循環可能な一定以上のEGR前後差圧を保障している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-157798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のターボチャージャの制御装置では、アイドリング回転数での定常状態(無過給域の定常状態)、アイドリング回転数よりも高い回転数での定常状態(過給域の定常状態)、にてEGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障できるようにしている。また近年では、回転数(及び過給圧)が変動している過渡状態(過給域の過渡状態及び無過給域の過渡状態)であっても(すなわち、どのような運転状態であっても)、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障できるように開発が進められている。
【0007】
このように、NOx発生量を低減させるため、一定以上のEGRの前後差圧を保障(EGRの制御性を担保)できるように可変ノズルの閉度(またはウエストゲートバルブの閉度)を制御すると、例えば実際の過給圧が目標過給圧よりも高いにもかかわらず、さらに可変ノズルの閉度(またはウエストゲートバルブの閉度)を閉じる側に制御する必要が発生する場合があり、その場合は実際の過給圧がさらに上昇する。この場合は排気マニホルド内の排気の圧力が上昇するので、ピストンのポンプロスが増加し、燃費がやや悪化する場合がある。例えば、従来よりも高効率のターボチャージャを用いて、従来よりも低い排気マニホルド内圧力で目標過給圧を得ることができても、EGRの制御性を担保するために、要求される排気マニホルド内圧力の上昇量がさらに大きくなり、ピストンのポンプロスがさらに増加し、燃費がさらに悪化してしまう場合がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧の保障に伴う燃費の悪化を抑制することができる、内燃機関システムの制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、内燃機関システムの制御装置であって、前記内燃機関システムは、内燃機関と、前記内燃機関の排気経路に一方端が接続され、前記内燃機関の吸気経路に他方端が接続され、前記内燃機関からの排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気経路へ戻すEGR配管と、前記EGR配管の開度を調整可能なEGR弁と、前記排気経路に接続された前記EGR配管よりも前記排気経路の下流側に配置されたタービンを用いて前記内燃機関の吸気を過給するターボ過給機と、前記ターボ過給機による吸気の過給圧を調整可能な過給圧調整装置と、前記内燃機関に燃料を噴射するインジェクタと、前記過給圧調整装置と前記EGR弁と前記インジェクタを制御する前記制御装置と、を有している。そして前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態を検出し、検出した前記運転状態に基づいた目標過給圧を設定し、前記過給圧が前記目標過給圧に近づくように前記過給圧調整装置の制御関連量である目標過給圧制御関連量を求める、目標過給圧制御関連量算出部と、前記EGR弁を開いて前記EGR配管を介して排気ガスの一部を前記EGRガスとして前記排気経路から前記吸気経路に戻す場合、前記EGR配管が接続されている前記排気経路の個所における排気ガスの圧力のほうが、前記EGR配管が接続されている前記吸気経路の個所における吸気の圧力よりも高くなるように、前記内燃機関の前記運転状態に応じて、前記過給圧調整装置の制御関連量であるEGR担保制御関連量を求める、EGR担保制御関連量算出部と、前記目標過給圧制御関連量と前記EGR担保制御関連量に基づいた最終過給圧制御関連量を求め、前記最終過給圧制御関連量に基づいて前記過給圧調整装置を制御する、過給圧調整装置制御部と、前記内燃機関の前記運転状態に基づいて、前記内燃機関のシリンダ内に充填される吸気量である総吸気量に対するEGRガス量であるEGR率の目標である目標EGR率を設定し、前記EGR率が前記目標EGR率に近づくように前記EGR弁の開度を制御する、EGR弁制御部と、前記内燃機関の前記運転状態に基づいて、前記インジェクタから噴射した燃料が着火する時期の目標である目標着火時期を設定し、前記目標着火時期で着火するように前記インジェクタからの燃料噴射時期を制御する、燃料噴射時期制御部と、を有している。そして前記制御装置は、さらに、実際の前記過給圧である実過給圧が前記目標過給圧よりも所定圧力以上高い場合に、実際の前記EGR率である実EGR率が前記目標EGR率よりも高くなるように前記EGRガス量を増量させるとともに、前記目標着火時期よりも進角した位置で着火するように前記燃料噴射時期を進角させる、吸気・燃料協調制御部を有している、内燃機関システムの制御装置である。
【0010】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関システムの制御装置であって、前記制御装置は、前記吸気・燃料協調制御部にて、前記実過給圧が前記目標過給圧よりも前記所定圧力以上高い場合に前記EGRガス量を増量させるEGRガス増加量を求める際、前記運転状態に応じた目標吸気状態として、前記目標過給圧と前記目標EGR率と前記内燃機関のシリンダ容量とに基づいて、前記シリンダ内に充填される総吸気量である目標総吸気量から前記EGRガス量の目標である目標EGRガス量を除いた新気量の目標である目標新気量を求め、前記目標吸気状態に対して実際の吸気状態である実吸気状態として、前記実過給圧と前記目標EGR率と前記シリンダ容量とに基づいて、前記シリンダ内に充填される実際の前記新気量である実新気量を求め、前記実新気量と前記目標新気量との差分を前記EGRガス増加量とする、内燃機関システムの制御装置である。
【0011】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る内燃機関システムの制御装置であって、前記制御装置は、前記吸気・燃料協調制御部にて、前記実過給圧が前記目標過給圧よりも前記所定圧力以上高い場合に前記燃料噴射時期を進角させる際、前記EGRガス増加量に基づいて着火時期補正量を求め、前記目標着火時期を前記着火時期補正量にて進角する側に補正した着火時期で着火するように前記燃料噴射時期を進角させる、内燃機関システムの制御装置である。
【0012】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明に係る内燃機関システムの制御装置であって、前記制御装置は、前記吸気・燃料協調制御部にて、前記実過給圧が前記目標過給圧よりも前記所定圧力以上高い場合に前記燃料噴射時期を進角させる際、前記EGRガス増加量に応じたNOx減少量を求め、前記NOx減少量以下のNOx増加量となるように前記目標着火時期に対する着火時期補正量を求め、前記目標着火時期を前記着火時期補正量にて進角する側に補正した着火時期で着火するように前記燃料噴射時期を進角させる、内燃機関システムの制御装置である。
【発明の効果】
【0013】
一般的に、EGRガス量(またはEGR率)をより増量すると、燃焼温度がより低下し、NOx発生量がより減少する傾向にある。また、燃料の着火時期をより進角させると、出力トルクはより上昇するが、燃焼温度がより上昇し、NOx発生量がより増加する傾向にある。また、空燃比をより小さくすると(よりリッチにすると)、スモークの発生量がより増加する傾向にある。
【0014】
第1の発明によれば、制御装置は、目標過給圧制御量算出部、EGR担保制御量算出部、過給圧調整装置制御部にてEGRの制御性を担保するとともに、EGR弁制御部にて実際のEGR率を目標EGR率に近づける。また制御装置は、燃料の着火時期が目標着火時期となるように燃料噴射時期を制御している。この場合、EGRの制御性を担保するために、実際の過給圧である実過給圧が、目標過給圧よりも高くなる場合があり、その場合は上述したようにピストンのポンプロスが増加し、燃費がやや悪化する場合がある。実過給圧が目標過給圧よりも所定圧力以上高い過剰過給状態の場合には、目標とする新気よりもより多くの新気を吸気しており、空燃比は目標空燃比よりもリーンとなっているはずである。従って、過剰過給状態では、スモークは目標量よりも低減されている。また過剰過給状態であってもEGR率は目標EGR率に近づけているので、NOx発生量は目標量とされている。そこで、空燃比を目標空燃比に近づけるようにEGRガス量を増量する。すると、スモークの発生量は目標量に近づき、NOx発生量は目標量よりも低減する。そして燃料の着火時期を目標着火時期よりも進角させると、出力トルクは増加するが、NOx発生量も増加する。しかし、増加したNOx発生量はEGRガス量の増量によるNOx低減量で相殺される。以上より、スモーク発生量、NOx発生量を、目標に対して増加させることなく、出力トルクを増加させることができるので、燃費の悪化を抑制することができる。
【0015】
第2の発明によれば、実過給圧が目標過給圧よりも所定圧力以上高い過剰過給状態の場合において、適切なEGRガス増加量を求めることができる。
【0016】
第3の発明によれば、EGRガス増加量に応じた(EGRガス増加に伴うNOx低減量に応じた)適切な着火時期補正量を求めることができる。
【0017】
第4の発明によれば、EGRガス増加に伴うNOx低減量に応じた、適切な着火時期補正量を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】内燃機関システム全体の概略構成の例を説明する図である。
図2】[過給圧調整装置の制御]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図3】[吸気・燃料協調制御]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図4図3に示すフローチャートの[目標吸気状態を算出]の詳細を説明するフローチャートである。
図5図3に示すフローチャートの[協調前の実吸気状態を算出]の詳細を説明するフローチャートである。
図6図3に示すフローチャートの[協調後の実吸気状態を算出]の詳細を説明するフローチャートである。
図7】[EGR弁の制御]の処理手順の例を説明するフローチャートである
図8】[燃料噴射開始時期の算出]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図9】所定圧力特性の例を説明する図である。
図10】EGR率補正量・着火時期補正量特性の例を説明する図である。
図11】目標吸気状態、吸気・燃料協調制御による協調前の実吸気状態、吸気・燃料協調制御による協調後の実吸気状態、を説明する図である。
図12】EGR率・NOx排出量特性の例を説明する図である。
図13】燃料着火時期・NOx排出量特性の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
●[内燃機関システム1の概略構成の例(図1)]
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず図1を用いて、内燃機関システム1の概略構成の例について説明する。本実施の形態の説明では、内燃機関の例として、車両に搭載された内燃機関10(例えばディーゼルエンジン)を用いて説明する。
【0020】
以下、システム全体について、吸気側から排気側に向かって順に説明する。吸気管11Aの流入側には、エアクリーナ(図示省略)、吸気流量検出装置21(例えば、吸気流量センサ)が設けられている。吸気流量検出装置21は、内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また吸気流量検出装置21には、吸気温度検出装置28A(例えば、吸気温度センサ)、大気圧検出装置23(例えば、大気圧センサ)が設けられている。吸気温度検出装置28Aは、吸気流量検出装置21を通過する吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。大気圧検出装置23は、周囲の大気圧に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0021】
吸気管11Aの流出側はコンプレッサ35の流入側に接続され、コンプレッサ35の流出側は吸気管11Bの流入側に接続されている。ターボ過給機30のコンプレッサ35は、排気ガスのエネルギーによって回転駆動されるタービン36にて回転駆動され、吸気管11Aから流入された吸気を吸気管11Bに圧送することで過給する。
【0022】
コンプレッサ35の上流側となる吸気管11Aには、コンプレッサ上流圧力検出装置24A(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ上流圧力検出装置24Aは、吸気管11A内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。コンプレッサ35の下流側となる吸気管11B(吸気管11Bにおけるコンプレッサ35とインタークーラ16との間の位置)には、コンプレッサ下流圧力検出装置24B(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ下流圧力検出装置24Bは、吸気管11B内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0023】
吸気管11Bには、上流側にインタークーラ16が配置され、インタークーラ16よりも下流側にスロットル装置47が配置されている。インタークーラ16は、コンプレッサ下流圧力検出装置24Bよりも下流側に配置されている。インタークーラ16とスロットル装置47との間には、吸気温度検出装置28B(例えば、吸気温度センサ)が設けられている。吸気温度検出装置28Bは、インタークーラ16にて温度が低下された吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0024】
スロットル装置47は、制御装置50からの制御信号に基づいて吸気管11Bの開度を調整するスロットルバルブ47Vを駆動し、吸気流量を調整可能である。制御装置50は、運転状態に応じて求めた目標スロットル開度に基づいて、スロットル装置47に制御信号を出力してスロットルバルブ47Vの開度を調整可能である。
【0025】
アクセルペダル踏込量検出装置25は、例えばアクセルペダル踏込角度センサであり、アクセルペダルに設けられている。制御装置50は、アクセルペダル踏込量検出装置25からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出することが可能である。
【0026】
吸気管11Bの流出側は吸気マニホルド11Cの流入側に接続されており、吸気マニホルド11Cの流出側は内燃機関10の流入側に接続されている。また吸気管11Bにおけるスロットル装置47よりも下流側には(吸気マニホルド11Cには)、吸気マニホルド圧力検出装置24C(例えば圧力センサ)が設けられており、EGR配管13の流出側が接続されている。吸気マニホルド圧力検出装置24Cは、吸気マニホルド11Cに流入する直前の吸気の圧力(過給圧)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。またEGR配管13の流出側(吸気管11Bとの接続部)からは、EGR配管13の流入側(排気管12Bとの接続部)から流入してきたEGRガスが、吸気管11B内に吐出される。EGR配管13は、排気経路に一方端が接続され、吸気経路に他方端が接続されている。
【0027】
内燃機関10は複数のシリンダ45A~45D(気筒)を有しており、インジェクタ43A~43Dが、それぞれのシリンダに設けられている。インジェクタ43A~43Dには、コモンレール41と燃料配管42A~42Dを介して燃料が供給されており、インジェクタ43A~43Dは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ45A~45D内に燃料を噴射する。コモンレール41には、燃料圧力検出装置73が設けられており、燃料ポンプ72によって目標燃料圧力に調整された燃料が充填されている。制御装置50は、燃料圧力検出装置73を用いて検出した燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように燃料ポンプ72を制御する。
【0028】
内燃機関10には、クランク角度検出装置22A、カム角度検出装置22B、クーラント温度検出装置28C等が設けられている。クランク角度検出装置22Aは、例えば回転センサであり、内燃機関10のクランクシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。カム角度検出装置22Bは、例えば回転センサであり、内燃機関10のカムシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。制御装置50は、クランク角度検出装置22Aとカム角度検出装置22Bからの検出信号に基づいて、各シリンダの工程及び回転角度等を検出することができる。またクーラント温度検出装置28Cは、例えば温度センサであり、内燃機関10内に循環されている冷却用クーラントの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0029】
内燃機関10の排気側には排気マニホルド12Aの流入側が接続され、排気マニホルド12Aの流出側には排気管12Bの流入側が接続されている。排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。
【0030】
排気管12Bの上流側には、EGR配管13の流入側が接続されている。EGR配管13は、EGR流路に相当しており、排気管12Bと吸気管11Bとを連通し、排気管12Bの排気ガスの一部をEGRガスとして吸気管11Bに還流させる(排気ガスの一部をEGRガスとして吸気に戻す)ことが可能である。またEGR配管13には、EGRクーラ15、EGR弁14が設けられている。制御装置50は、EGR弁14の開度を調整することで、EGR配管13内を流れるEGRガスの流量を調整可能である。
【0031】
また排気管12Bにおける上流側には(排気マニホルド12Aには)、排気マニホルド圧力検出装置26C(例えば圧力センサ)が設けられている。排気マニホルド圧力検出装置26Cは、排気マニホルド12A内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0032】
排気管12Bには、排気温度検出装置29が設けられている。排気温度検出装置29は、例えば排気温度センサであり、排気温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0033】
排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。タービン36には、タービン36へ導く排気ガスの流速を制御可能な(タービンへと排気ガスを導く流路の閉度に関連する閉度関連量を調整可能な)可変ノズル33が設けられており、可変ノズル33(過給圧調整装置に相当)は、ノズル駆動装置31によって閉度(開度)が調整される。制御装置50は、ノズル閉度検出装置32(例えば、ノズル閉度センサ)からの検出信号と目標ノズル閉度(開度)に基づいて、ノズル駆動装置31に制御信号を出力して可変ノズル33の閉度(開度)を調整することで過給圧を調整可能である。なおタービン36は、排気経路に接続されたEGR配管13よりも排気の下流側に配置されている。
【0034】
タービン36の上流側となる排気管12Bには、タービン上流圧力検出装置26A(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン上流圧力検出装置26Aは、排気管12B内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。タービン36の下流側となる排気管12Cには、タービン下流圧力検出装置26B(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン下流圧力検出装置26Bは、排気管12C内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0035】
排気管12Cの流出側には排気浄化装置61が接続されている。例えば内燃機関10がディーゼルエンジンの場合、排気浄化装置61には、酸化触媒、微粒子捕集フィルタ、選択式還元触媒等が含まれている。
【0036】
車速検出装置27は、例えば車両速度検出センサであり、車両の車輪等に設けられている。車速検出装置27は、車両の車輪の回転速度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0037】
制御装置50は、CPU51、RAM52、記憶装置53、タイマ54等を有している。制御装置50(CPU51)は、上述した種々の検出装置からの検出信号が入力され、上述した種々のアクチュエータへの制御信号を出力する。なお、制御装置50の入出力は、上記の検出装置やアクチュエータに限定されるものではない。また、各部の温度や圧力等はセンサを搭載せずに推定計算により算出しても良い。制御装置50は、上記の検出装置を含めた各種の検出装置からの検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出可能であり、運転状態に基づいて上記のアクチュエータを含む各種のアクチュエータを制御する。記憶装置53は、例えばFlash-ROM等の記憶装置であり、内燃機関の制御や自己診断等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。また制御装置50(CPU51)は、目標過給圧制御関連量算出部51A、EGR担保制御関連量算出部51B、過給圧調整装置制御部51C、EGR弁制御部51D、燃料噴射時期制御部51E、吸気・燃料協調制御部51F等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0038】
制御装置50は、内燃機関10の運転状態に基づいて、EGR率等を算出し、算出したEGR率等に基づいてEGR弁14の開度を調整し、排気管12B(排気マニホルド12A)からEGR配管13、EGRクーラ15、EGR弁14を経由させて、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気管11B(吸気マニホルド11C)へ再循環させる。なお、このとき、EGR配管13の上流側(排気マニホルド12Aの側)の圧力と、EGR配管13の下流側(吸気マニホルド11Cの側)の圧力と、の圧力差であるEGR前後差圧が所定差圧以上でなければ、EGRガスは再循環しない。過給機を有する内燃機関システムでは、過給状態によっては、EGR前後差圧が所定差圧未満となる場合が有るので、制御装置50には、これを回避する「EGRの制御性を担保する処理」が含まれている。
【0039】
●[制御装置50の処理手順(図2図8)]
次に図2図8に示すフローチャート等を用いて、制御装置50の各処理の例を順に説明する。
【0040】
●[過給圧調整装置の制御(図2)]
制御装置50(CPU51)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔)にて、図2に示す[過給圧調整装置の制御]を起動し、ステップS010に処理を進める。なお図2に示す[過給圧調整装置の制御]には、EGR配管13の上流側の圧力と、EGR配管13の下流側の圧力と、の圧力差であるEGR前後差圧を所定差圧以上とすることで「EGRの制御性を担保する処理」が含まれている。
【0041】
ステップS010にて制御装置50は、内燃機関の運転状態に基づいて目標過給圧を算出し、ステップS020へ処理を進める。なお、内燃機関の運転状態には、上述した各種の検出装置を用いて検出した流量、温度、圧力、回転数等や、各種のアクチュエータの動作状態等があり、制御装置50は、図示省略した別の処理にて運転状態を検出(取得)している。
【0042】
ステップS020にて制御装置50は、吸気マニホルド圧力検出装置24Cを用いて検出した過給圧が目標過給圧に近づくようにするための可変ノズル33の目標閉度である第1目標ノズル閉度を、運転状態に基づいたマップ等を用いて算出し、ステップS030へ処理を進める。なおステップS020の処理は既存の処理であるので、詳細な説明は省略する。
【0043】
ステップS030にて制御装置50は、EGRの制御性を担保するための(EGR前後差圧を所定圧力差以上とするための)可変ノズル33の目標閉度である第2目標ノズル閉度を、運転状態に基づいたマップ等を用いて算出し、ステップS040へ処理を進める。なお、ステップS030の処理は既存の処理であるので、詳細な説明は省略する。
【0044】
ステップS040にて制御装置50は、第1目標ノズル閉度が第1目標ノズル閉度以上であるか否かを判定する。制御装置50は、第1目標ノズル閉度が第2目標ノズル閉度以上である場合(Yes)はステップS050Aへ処理を進め、第1目標ノズル閉度が第2目標ノズル閉度未満である場合(No)はステップS050Bへ処理を進める。
【0045】
ステップS050Aへ処理を進めた場合、制御装置50は、第1目標ノズル閉度を最終目標ノズル閉度に代入して記憶し、ステップS060へ処理を進める。
【0046】
ステップS050Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、第2目標ノズル閉度を最終目標ノズル閉度に代入して記憶し、ステップS060へ処理を進める。ステップS040、S050A、S050Bにて、第1目標ノズル閉度と第2目標ノズル閉度の大きいほうを最終目標ノズル閉度にすることで「EGRの制御性が担保」されている。
【0047】
ステップS060へ処理を進めた場合、制御装置50は、可変ノズル33の(実際の)ノズル閉度が最終目標ノズル閉度に近づくように、ノズル駆動装置(過給圧調整装置)をフィードバック制御して、図2に示す処理を終了する。
【0048】
なおステップS010、S020の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、検出した運転状態に基づいた目標過給圧を設定し、過給圧が目標過給圧に近づくように過給圧調整装置の制御関連量である目標過給圧制御関連量(この場合、第1目標ノズル閉度)を求める、目標過給圧制御関連量算出部51A(図1参照)に相当している。
【0049】
またステップS030の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、EGR弁を開いてEGR配管を介して排気ガスの一部をEGRガスとして排気経路(排気マニホルド12A、排気管12B)から吸気経路(吸気マニホルド11C、吸気管11B)へ戻す場合、EGR配管が接続されている排気経路の個所における排気ガスの圧力のほうが、EGR配管が接続されている吸気経路の個所における吸気の圧力よりも高くなるように(EGR前後差圧が所定差圧以上となるように)、内燃機関の運転状態に応じて、過給圧調整装置の制御関連量であるEGR担保制御関連量(この場合、第2目標ノズル閉度)を求める、EGR担保制御関連量算出部51B(図1参照)に相当している。
【0050】
またステップS040、S050A、S050B、S060の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、目標過給圧制御関連量(この場合、第1目標ノズル閉度)と、EGR担保制御関連量(この場合、第2目標ノズル閉度)に基づいた最終過給圧制御関連量(この場合、最終目標ノズル閉度)を求め、最終過給圧制御関連量に基づいて過給圧調整装置を制御する、過給圧調整装置制御部51C(図1参照)に相当している。
【0051】
●[吸気・燃料協調制御(図3)]
制御装置50(CPU51)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔)にて、図3に示す[吸気・燃料協調制御]を起動し、ステップS110に処理を進める。
【0052】
ステップS110にて制御装置50は、運転状態に応じた所定圧力を算出してステップS120へ処理を進める。例えば制御装置50の記憶装置53には、図9に示す所定圧力特性が記憶されている。所定圧力特性には、内燃機関の回転数(N1、N2、N3・・)と、燃料噴射量(Q1、Q2、Q3・・)に応じた、所定圧力(P11、P12・・)が、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等に基づいて設定されている。なお、所定圧力は、図9の例に示すマップ等に限定されず、一定値とされていてもよいし、回転数や燃料噴射量に限らず、他の運転状態に応じて設定されていてもよい。
【0053】
ステップS120にて制御装置50は、「実際の過給圧である実過給圧-目標過給圧」が所定圧力以上であるか否かを判定する。制御装置50は、「実過給圧-目標過給圧」が所定圧力以上である場合(Yes)はステップS130へ処理を進め、「実過給圧-目標過給圧」が所定圧力未満である場合(No)はステップS160Bへ処理を進める。
【0054】
ステップS130へ処理を進めた場合、制御装置50は、[目標吸気状態を算出]する処理を実行してステップS140へ処理を進める。なお[目標吸気状態を算出]する処理(図4)の詳細については後述する。
【0055】
ステップS140にて制御装置50は、[協調前の実吸気状態を算出]する処理を実行してステップS150へ処理を進める。なお[協調前の実吸気状態を算出]する処理(図5)の詳細については後述する。
【0056】
ステップS150にて制御装置50は、[協調後の実吸気状態を算出]する処理を実行してステップS160Aへ処理を進める。なお[協調後の実吸気状態を算出]する処理(図6)の詳細については後述する。
【0057】
ステップS160Aにて制御装置50は、ステップS150にて求めた協調後実EGR率から、目標EGR率(後述する[EGR弁の制御]にて算出)を減算した値をEGR率補正量に代入して記憶する。また制御装置50は、EGR率補正量に基づいて着火時期補正量を算出して記憶し、図3に示す処理を終了する。例えば制御装置50の記憶装置53には、図10に示すEGR率補正量・着火時期補正量特性が記憶されており、制御装置50は、EGR率補正量・着火時期補正量特性とEGR率補正量に基づいて着火時期補正量を算出する。
【0058】
ステップS160Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、EGR率補正量を0(ゼロ)に初期化し、着火時期補正量を0(ゼロ)に初期化し、図3に示す処理を終了する。
【0059】
●[目標吸気状態を算出(図4図11)]
次に図4を用いて、図3に示すフローチャートのステップS130の[目標吸気状態を算出]する処理の詳細を説明する。図3に示すフローチャートのステップS130の処理を実行する際、制御装置50は、図4に示すステップS210へ処理を進める。図4に示す[目標吸気状態を算出]する処理は、図11に示す[目標吸気状態]の各値を求める処理である。
【0060】
[目標吸気状態]は、現在の運転状態に対して、出力トルク、NOx発生量、スモーク発生量等が、狙った値となるようにするための吸気状態であり、実際の車両を使った実験やシミュレーション等にて予め決められている。[目標吸気状態]では、運転状態に応じて、狙った出力トルクを得るための目標燃料噴射量Qv1及び目標着火時期、狙ったスモーク発生量とするための目標新気量Gn1(目標空燃比にするための目標新気量Gn1)、狙ったNOx発生量とするための目標EGR率及び目標着火時期、が設定されている。なお、一般的に、NOx発生量は、EGR率の増加に伴って減少し、燃料着火時期の進角に伴って増加する傾向にある。また出力トルクは、燃料着火時期の進角に伴って増加する傾向にある。またスモーク発生量は、空燃比を大きくしていく(リーンにしていく)に伴って減少する傾向にある。
【0061】
[目標吸気状態]は、その時点の運転状態において、(実際の)過給圧=目標過給圧、(実際の)EGR率=目標EGR率、(実際の)燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、(実際の)空燃比=目標空燃比、(実際の)燃料着火時期=目標着火時期、が実現できている場合の吸気状態である。なお、シリンダ容量C1は、予めわかっており、記憶装置53に記憶されている。
【0062】
制御装置50は、運転状態を検出すると、運転状態に応じて、目標過給圧(図2の処理にて算出)、目標EGR率(図7の処理にて算出)、目標燃料噴射量Qv1(図示省略)、目標着火時期(図8の処理にて算出)、をそれぞれ設定(算出)する。従って、図11に示す[目標吸気状態]において、制御装置50は、残りの目標EGRガス量Ge1、目標新気量Gn1、目標空燃比、を算出する。
【0063】
ステップS210にて制御装置50は、予め設定されたシリンダ容量C1、図2のステップS010にて求めた目標過給圧、後述する図7のステップS510にて求めた目標EGR率、に基づいて、目標EGRガス量Ge1、目標新気量Gn1、を算出して記憶し、ステップS220へ処理を進める。
【0064】
制御装置50は、図11の[シリンダ容量]、[目標吸気状態]に示すように、シリンダ容量C1と、目標過給圧を用いて、シリンダ内の総吸気量である目標総吸気量G1(目標EGRガス量Ge1+目標新気量Gn1)を算出する。そして制御装置50は、目標総吸気量G1(目標EGRガス量Ge1+目標新気量Gn1)と、目標EGR率を用いて、目標EGRガス量Ge1を算出し、目標新気量Gn1を算出する。目標EGRガス量Ge1=目標総吸気量G1*目標EGR率であり、目標新気量Gn1=目標総吸気量G1-目標EGRガス量Ge1である。
【0065】
ステップS220にて制御装置50は、目標新気量Gn1、目標燃料噴射量Qv1、に基づいて目標空燃比を算出して記憶し、図4に示す処理を終了して図3に示すステップS140へ処理を戻す。
【0066】
制御装置50は、目標新気量Gn1と、目標燃料噴射量Qv1を用いて目標空燃比を算出する。目標空燃比=目標新気量Gn1/目標燃料噴射量Qv1である。
【0067】
以上より、[目標吸気状態]となっている場合では、図11に示すように、総吸気量=目標総吸気量G1、過給圧=目標過給圧、EGR率=目標EGRガス量Ge1/(目標新気量Gn1+目標EGRガス量Ge1)=目標EGR率、EGRガス量=目標EGRガス量Ge1、新気量=目標新気量Gn1、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、空燃比=目標新気量Gn1/目標燃料噴射量Qv1=目標空燃比、燃料着火時期=目標着火時期、となっており、各値は上述したようにわかっている。
【0068】
●[協調前の実吸気状態を算出(図5図11)]
次に図5を用いて、図3に示すフローチャートのステップS140の[協調前の実吸気状態を算出]する処理の詳細を説明する。図3に示すフローチャートのステップS140の処理を実行する際、制御装置50は、図5に示すステップS310へ処理を進める。図5に示す[協調前の実吸気状態を算出]する処理は、図11に示す[協調前の実吸気状態]の各値を求める処理である。
【0069】
図11に示すように、[協調前の実吸気状態]は、過給圧=目標過給圧である[目標吸気状態]に対して、EGRの制御性を担保するために可変ノズルの閉度を大きくして排気マニホルド内の圧力を上昇させた結果、実際の過給圧が目標過給圧よりも高くなった状態(実過給圧-目標過給圧≧所定圧力)であり、図3に示す[吸気・燃料協調制御]を実行する前の状態である。
【0070】
[協調前の実吸気状態]では、図11に記載しているように、協調前実EGR率=目標EGR率、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、燃料着火時期=目標着火時期、である。しかし、過給圧>目標過給圧であるので、協調前総吸気量G2>目標総吸気量G1、協調前実EGRガス量Ge2>目標EGRガス量Ge1、協調前実新気量Gn2>目標新気量Gn1、であり、協調前実空燃比=協調前実新気量Gn2/目標燃料噴射量Qv1>目標空燃比、である。
【0071】
図11に示す[協調前の実吸気状態]では、過給圧=実過給圧、協調前実EGR率=目標EGR率である。[協調前の実吸気状態]では、[目標吸気状態]に対して、協調前実EGRガス量Ge2>目標EGRガス量Ge1であるが、協調前実EGR率=目標EGR率であるので、EGR率に応じたNOx発生量は[目標吸気状態]と同等である。また協調前実新気量Gn2>目標新気量Gn1であるので、協調前実空燃比>目標空燃比であり、スモーク発生量は[目標吸気状態]よりも低減されている。また、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、燃料着火時期=目標着火時期、である点は[目標吸気状態]と同じであるので、燃料着火時期に応じたNOx発生量は[目標吸気状態]と同等である。しかし、EGRの制御性を担保するために可変ノズルの閉度をより大きくして(この結果、過給圧が目標過給圧よりも高くなる)排気マニホルド内の圧力を上昇させているので、ピストンのポンプロスが増加し、出力トルクは[目標吸気状態]よりもやや低減され、燃費はやや悪化している場合がある。
【0072】
[協調前の実吸気状態]では、(実際の)過給圧(>目標過給圧)、協調前実EGR率(=目標EGR率)、燃料噴射量(=目標燃料噴射量Qv1)、燃料着火時期(=目標着火時期)は、すでにわかっている。従って、図11に示す[協調前の実吸気状態]において、制御装置50は、残りの協調前実EGRガス量Ge2、協調前実新気量Gn2、協調前実空燃比、を算出する。
【0073】
ステップS310にて制御装置50は、予め設定されたシリンダ容量C1、実際の過給圧、後述する図7のステップS510にて求めた目標EGR率、に基づいて、協調前実EGRガス量Ge2、協調前実新気量Gn2、を算出して記憶し、ステップS320へ処理を進める。
【0074】
制御装置50は、図11の[シリンダ容量]、[協調前の実新気状態]に示すように、シリンダ容量C1と実過給圧を用いて、シリンダ内の総吸気量である協調前総吸気量G2(協調前実EGRガス量Ge2+協調前実新気量Gn2)を算出する。そして制御装置50は、協調前総吸気量G2(協調前実EGRガス量Ge2+協調前実新気量Gn2)と、目標EGR率を用いて、協調前実EGRガス量Ge2を算出し、協調前実新気量Gn2を算出する。協調前実EGRガス量Ge2=協調前総吸気量G2*目標EGR率であり、協調前実新気量Gn2=協調前総吸気量G2-協調前実EGRガス量Ge2である。なお、吸気流量検出装置21を用いて検出した吸気量と内燃機関の回転数等に基づいて協調前実新気量Gn2を求めてもよい。
【0075】
ステップS320にて制御装置50は、協調前実新気量Gn2、目標燃料噴射量Qv1、に基づいて協調前実空燃比を算出して記憶し、図5に示す処理を終了して図3に示すステップS150へ処理を戻す。
【0076】
制御装置50は、協調前実新気量Gn2と、目標燃料噴射量Qv1を用いて協調前実空燃比を算出する。協調前実空燃比=協調前実新気量Gn2/目標燃料噴射量Qv1(>目標空燃比)である。
【0077】
以上より、[協調前の実吸気状態]となっている場合では、図11に示すように、総吸気量=協調前総吸気量G2>目標総吸気量G1、過給圧=実過給圧>目標過給圧、協調前実EGR率=協調前実EGRガス量Ge2/(協調前実新気量Gn2+協調前実EGRガス量Ge2)=目標EGR率、協調前実EGRガス量Ge2>目標EGRガス量Ge1、協調前実新気量Gn2>目標新気量Gn1、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、協調前実空燃比=協調前実新気量Gn2/目標燃料噴射量Qv1>目標空燃比、燃料着火時期=目標着火時期、となっており、各値は上述したようにわかっている。
【0078】
●[協調後の実吸気状態を算出(図6図11)]
次に図6を用いて、図3に示すフローチャートのステップS150の[協調後の実吸気状態を算出]する処理の詳細を説明する。図3に示すフローチャートのステップS150の処理を実行する際、制御装置50は、図6に示すステップS410へ処理を進める。図6に示す[協調後の実吸気状態を算出]する処理は、図11に示す[協調後の実吸気状態]の各値を求める処理である。
【0079】
図11に示すように、[協調後の実吸気状態]は[協調前の実吸気状態]に対して、過給圧=実過給圧>目標過給圧、は同じであり、協調後総吸気量G3=協調前総吸気量G2であり総吸気量は同じであり、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、であることは同じである。しかし、協調後実EGRガス量Ge3>協調前実EGRガス量Ge2、協調後実新気量Gn3=目標新気量Gn1<協調前実新気量Gn2、である点が相違している。
【0080】
この相違点により、[協調後の実吸気状態]は[協調前の実吸気状態]に対して、協調後実EGR率=協調後実EGRガス量Ge3/(目標新気量Gn1+協調後実EGRガス量Ge3)=「目標EGR率+EGR率補正量」>目標EGR率、とされている。また、[協調後の実吸気状態]は[協調前の実吸気状態]に対して、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、である点は同じであるが、燃料着火時期=「目標着火時期-着火時期補正量」とされて、[協調前の実吸気状態]よりも進角されている。なお、協調後実空燃比=目標空燃比である。
【0081】
[協調後の実吸気状態]は、EGRの制御性を担保するために可変ノズルの閉度を大きくして排気マニホルド内の圧力を上昇させた結果、実際の過給圧が目標過給圧よりも高くなった[協調前の実吸気状態]に対して、図3に示す[吸気・燃料協調制御]を実行した後の状態である。
【0082】
[協調後の実吸気状態]では、図11に記載しているように、協調後実EGR率=「目標EGR率+EGR率補正量」>目標EGR率、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、燃料着火時期=目標着火時期-着火時期補正量(目標着火時期よりも進角)、である。そして、協調後実EGRガス量Ge3>実EGRガス量Ge2、協調後実新気量Gn3=目標新気量Gn1<協調前実新気量Gn2、であるので、空燃比=協調後実新気量Gn3/目標燃料噴射量Qv1=目標新気量Gn1/目標燃料噴射量Qv1=目標空燃比、である。
【0083】
図11に示す[協調後の実吸気状態]では、[協調前の実吸気状態]に対して、協調後実EGRガス量Ge3>協調前実EGRガス量Ge2であり、協調後実EGR率=「目標EGR率+EGR率補正量」>目標EGR率であるので、EGR率に応じたNOx発生量は[協調前の実吸気状態]よりも低減されている。また協調後実新気量Gn3=目標新気量Gn1であるので、空燃比=目標空燃比であり、スモーク発生量は[目標吸気状態]と同等とされている。また、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、である点は同じであるが、燃料着火時期=目標着火時期-着火時期補正量、にて進角されており、燃料着火時期に応じたNOx発生量は[協調前の実吸気状態]よりも増加するが、協調後実EGR率>目標EGR率によるNOx発生量の減少によって相殺されている(NOx増加量は、NOx減少量以下であればよい)。そして、燃料着火時期を進角させているので、出力トルクは[協調前の実吸気状態]よりも増加され、燃費の悪化が抑制されている。
【0084】
[協調後の実吸気状態]では、(実際の)過給圧(>目標過給圧)、協調後実新気量Gn3(=目標新気量Gn1)、燃料噴射量(=目標燃料噴射量Qv1)は、すでにわかっている。従って、図11に示す[協調後の実吸気状態]において、制御装置50は、協調後実EGRガス量Ge3、協調後実EGR率、協調後実空燃比、を算出する。
【0085】
ステップS410にて制御装置50は、予め設定されたシリンダ容量C1、実際の過給圧、上述した図4のステップS210にて求めた目標新気量Gn1(=協調後実新気量Gn3)、に基づいて、協調後実EGRガス量Ge3、協調後実EGR率、を算出して記憶し、ステップS420へ処理を進める。
【0086】
制御装置50は、図11の[シリンダ容量]、[協調後の実新気状態]に示すように、シリンダ容量C1と実過給圧を用いて、シリンダ内の総吸気量である協調後総吸気量G3(協調後実EGRガス量Ge3+協調後実新気量Gn3)を算出する。そして制御装置50は、協調後総吸気量G3(協調後実EGRガス量Ge3+協調後実新気量Gn3)と、協調後実新気量Gn3=目標新気量Gn1を用いて、協調後実EGRガス量Ge3を算出し、協調後実EGR率を算出する。協調後実EGRガス量Ge3=協調後総吸気量G3-目標新気量Gn1であり、協調後実EGR率=協調後実EGRガス量Ge3/(目標新気量Gn1+協調後実EGRガス量Ge3)である。
【0087】
ステップS420にて制御装置50は、協調後実新気量Gn3(=目標新気量Gn1)、目標燃料噴射量Qv1、に基づいて協調後実空燃比(=目標空燃比)を算出して記憶し、図6に示す処理を終了して図3に示すステップS160Aへ処理を戻す。
【0088】
制御装置50は、協調後実新気量Gn3=目標新気量Gn1と、目標燃料噴射量Qv1を用いて協調後実空燃比を算出する。協調後実空燃比=協調後実新気量Gn3/目標燃料噴射量Qv1=目標新気量Gn1/目標燃料噴射量Qv1=目標空燃比である。
【0089】
以上より、[協調後の実吸気状態]となっている場合では、図11に示すように、総吸気量=協調後総吸気量G3=協調前総吸気量G2、過給圧=実過給圧>目標過給圧、協調後実EGR率=協調後実EGRガス量Ge3/(目標新気量Gn1+協調後実EGRガス量Ge3)=「目標EGR率+EGR率補正量」>目標EGR率、協調後実EGRガス量Ge3>協調前実EGRガス量Ge2、協調後実新気量Gn3=目標新気量Gn1、燃料噴射量=目標燃料噴射量Qv1、協調後実空燃比=目標新気量Gn1/目標燃料噴射量Qv1=目標空燃比、燃料着火時期=目標着火時期-着火時期補正量、となっており、EGR率補正量と着火時期補正量を除いて、各値は上述したようにわかっている。なお、EGR率補正量と着火時期補正量については、図3に示すステップS160Aにて制御装置50が算出する。
【0090】
●[EGR弁の制御(図7)]
制御装置50(CPU51)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔)にて、図7に示す[EGR弁の制御]を起動し、ステップS510に処理を進める。図7に示す[EGR弁の制御]には、図3に示す[吸気・燃料協調制御]にて算出した「EGR率補正量」を用いた吸気・燃料協調制御の一部が含まれている。
【0091】
ステップS510にて制御装置50は、運転状態に基づいて目標EGR率を算出し、ステップS520へ処理を進める。なお、目標EGR率の算出は既存の処理であるので、詳細は省略する。
【0092】
ステップS520にて制御装置50は、目標EGR率にEGR率補正量を加算して、最終目標EGR率を算出して記憶し、ステップS530へ処理を進める。
【0093】
ステップS530にて制御装置50は、吸気流量検出装置21を用いて検出した吸気量、吸気マニホルド圧力検出装置24Cを用いて検出した過給圧、シリンダ容量、等に基づいて実際のEGR率である実EGR率を算出して記憶し、ステップS540へ処理を進める。
【0094】
ステップS540にて制御装置50は、実EGR率が最終目標EGR率に近づくようにEGR弁の開度をフィードバック制御して、図7に示す処理を終了する。
【0095】
図7に示す処理を実行している制御装置50(CPU51)は、内燃機関の運転状態に基づいて、内燃機関のシリンダ内に充填される吸気量である総吸気量に対するEGRガス量であるEGR率の目標である目標EGR率を設定し、EGR率が目標EGR率に近づくようにEGR弁の開度を制御する、EGR弁制御部51D(図1参照)に相当している。
【0096】
●[燃料噴射開始時期の算出(図8)]
制御装置50(CPU51)は、例えば所定クランク角度タイミングにて、図8に示す[燃料噴射開始時期の算出]を起動し、ステップS610に処理を進める。図8に示す[燃料噴射開始時期の算出]には、図3に示す[吸気・燃料協調制御]にて算出した「着火時期補正量」を用いた吸気・燃料協調制御の一部が含まれている。
【0097】
ステップS610にて制御装置50は、運転状態に基づいて目標着火時期を算出し、ステップS620へ処理を進める。なお、目標着火時期の算出は既存の処理であるので、詳細は省略する。
【0098】
ステップS620にて制御装置50は、目標着火時期から着火時期補正量を減算して最終目標着火時期を算出して記憶し、ステップS630へ処理を進める。
【0099】
ステップS630にて制御装置50は、最終目標着火時期で燃料が着火するように、運転状態に基づいて燃料噴射開始時期を算出し、当該燃料噴射開始時期から燃料噴射を開始するように制御し、図8に示す処理を終了する。なお当該処理は既存の処理であるので、詳細は省略する。
【0100】
図8の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、内燃機関の運転状態に基づいてインジェクタから噴射した燃料が着火する時期の目標である目標着火時期を設定し、目標着火時期で着火するようにインジェクタからの燃料噴射時期を制御する、燃料噴射時期制御部51Eに相当している。
【0101】
また、図3の処理、図7のステップS520、図8のステップS620、の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、実際の過給圧である実過給圧が目標過給圧よりも所定圧力以上高い場合に、実際のEGR率である実EGR率が目標EGR率よりも高くなるようにEGRガス量を増量させるとともに、目標着火時期よりも進角した位置で着火するように燃料噴射開始時期を進角させる、吸気・燃料協調制御部51F(図1参照)に相当している。なお、図11に示すように、EGRガス増加量=協調前実新気量Gn2-協調後実新気量Gn3=協調前実新気量Gn2-目標新気量Gn1(協調前実新気量Gn2と目標新気量Gn1との差分)、である。
【0102】
●[着火時期補正量を求める別の方法(図12図13)]
次に図12図13を用いて、着火時期補正量を求める別の方法について説明する。上述した図3のステップS160Aでは、図10に示すEGR率補正量・着火時期補正量特性と、EGR率補正量を用いて、EGR率の増量によるNOx発生量の減少分で相殺できるNOx発生量の増量分となる着火時期補正量を求めたが、以下の手順で着火時期補正量を求めてもよい。
【0103】
記憶装置53には、図12に示すEGR率・NOx排出量特性と、図13に示す燃料着火時期・NOx排出量特性が記憶されている。EGR率・NOx排出量特性は、図12に示すように、EGR率を増加させていくとNOx排出量が減少していくことを示している。また燃料着火時期・NOx排出量特性は、図13に示すように、燃料着火時期を進角させていくとNOx排出量が増加していくことを示している。
【0104】
ステップS160Aにて制御装置50は、EGR率補正量を求めた後、図12に示すEGR率・NOx排出量特性と目標EGR率を用いて、目標EGR率の場合のNOx排出量(QN1)を求める。そして制御装置50は、図12に示すEGR率・NOx排出量特性と協調後実EGR率を用いて、協調後実EGR率の場合のNOx排出量(QN3)を求める。そして制御装置50は、目標EGR率の場合のNOx排出量(QN1)から協調後実EGR率の場合のNOx排出量(QN3)を減算したNOx排出量の減量分であるΔQNを求める。
【0105】
次に制御装置50は、図13に示す燃料着火時期・NOx排出量特性と目標着火時期を用いて、目標着火時期の場合のNOx排出量(QT1)を求める。そして制御装置50は、図13に示す燃料着火時期・NOx排出量特性と、上記のΔQNを用いて、NOx排出量がQT1よりもΔQNだけ大きいQT3となる燃料着火時期を、協調後着火時期とする。そして制御装置50は、目標着火時期-協調後着火時期を着火時期補正量とする(着火時期補正量=目標着火時期-協調後着火時期)。つまり、EGR率の増量によるNOx発生量の減少分=着火時期の進角によるNOx発生量の増加分、としてNOx発生量を相殺する(NOx増加量は、NOx減少量以下であればよい)。
【0106】
以上に説明したように、本実施の形態にて説明した吸気・燃料協調制御では、図11に示す[協調前の実吸気状態]を[協調後の実吸気状態]にすることで、協調後実EGR率=目標EGR率+EGR率補正量、としてEGR率を増加させてNOx発生量を減少させる。それと同時に燃料着火時期=目標着火時期-着火時期補正量、として燃料着火時期を進角させてNOx発生量を増加させるが発生トルクを増加させる。なお、燃料着火時期の進角によるNOx発生量の増加分は、EGR率の増加によるNOx発生量の減少分にて相殺させる。また、スモークの発生量については、[協調後の実吸気状態]の協調後実空燃比=目標空燃比、であるので、[目標吸気状態]と同等である。従って、[協調前の実吸気状態]で燃費がやや悪化する場合であっても、[協調後の実吸気状態]にすることで、排気ガスの状態を悪化させることなく発生トルクを増加させ、燃費の悪化を抑制することができる。
【0107】
本発明の内燃機関システムの制御装置50は、本実施の形態で説明した構成、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0108】
また、本発明の内燃機関システムの制御装置は、ディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジンにも適用することが可能である。
【0109】
本実施の形態の説明では、過給圧調整装置として、可変ノズル33、ノズル駆動装置31、ノズル閉度検出装置32を有する例を説明したが、これらの代わりに、タービン36をバイパスする排気バイパス通路と、排気バイパス通路の閉度を調整するウエストゲートバルブにて過給圧調整装置を構成してもよい。
【0110】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(より小さい)(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 内燃機関システム
10 内燃機関
11A、11B 吸気管
11C 吸気マニホルド
12A 排気マニホルド
12B、12C 排気管
13 EGR配管
14 EGR弁
15 EGRクーラ
16 インタークーラ
21 吸気流量検出装置
22A クランク角度検出装置
22B カム角度検出装置
23 大気圧検出装置
24A コンプレッサ上流圧力検出装置
24B コンプレッサ下流圧力検出装置
24C 吸気マニホルド圧力検出装置
25 アクセルペダル踏込量検出装置
26A タービン上流圧力検出装置
26B タービン下流圧力検出装置
26C 排気マニホルド圧力検出装置
27 車速検出装置
28A、28B 吸気温度検出装置
28C クーラント温度検出装置
29 排気温度検出装置
30 ターボ過給機
31 ノズル駆動装置
32 ノズル閉度検出装置
33 可変ノズル(過給圧調整装置)
35 コンプレッサ
36 タービン
41 コモンレール
43A~43D インジェクタ
45A~45D シリンダ
47 スロットル装置
47S スロットル開度検出手段
47V スロットルバルブ
50 制御装置
51 CPU
51A 目標過給圧制御関連量算出部
51B EGR担保制御関連量算出部
51C 過給圧調整装置制御部
51D EGR弁制御部
51E 燃料噴射時期制御部
51F 吸気・燃料協調制御部
53 記憶装置
61 排気浄化装置
72 燃料ポンプ
73 燃料圧力検出装置
C1 シリンダ容量
G1 目標総吸気量
G2 協調前総吸気量
G3 協調後総吸気量
Ge1 目標EGRガス量
Ge2 協調前実EGRガス量
Ge3 協調後実EGRガス量
Gn1 目標新気量
Gn2 協調前実新気量
Gn3 協調後実新気量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13