(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】航空機監視システム
(51)【国際特許分類】
B64D 47/06 20060101AFI20240228BHJP
B64C 27/26 20060101ALI20240228BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B64D47/06
B64C27/26
B64D47/08
(21)【出願番号】P 2021065814
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真梨子
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240798(JP,A)
【文献】米国特許第10896512(US,B1)
【文献】米国特許第9976907(US,B1)
【文献】特開2021-20573(JP,A)
【文献】米国特許第10053236(US,B1)
【文献】特開2014-36326(JP,A)
【文献】特開2006-197068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 47/06-47/08
B64C 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)の機体(120)を監視する航空機監視システム(10)であって、
前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)
と、
前記撮像画像を利用して、前記機体の上方から前記航空機を俯瞰した俯瞰画像を生成する画像処理部(20)と、を備える、航空機監視システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の航空機監視システムにおいて、
前記俯瞰画像を表示する俯瞰画像表示部(50)を、さらに備える、航空機監視システム。
【請求項3】
航空機(100)の機体(120)を監視する航空機監視システム(10)であって、
前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)と、
前記撮像装置を制御する作動制御部(31)と、
前記作動部を作動する機体制御部(60)に対して、前記作動部に対する作動指令情報を送信することにより前記作動部を作動させ、前記作動指令情報と前記撮像画像とに基づき前記作動部の作動の正常性を判断する作動部正常性判断部(32)と、
を備え、
前記撮像装置は、前記作動指令情報に応じて前記作動部が作動する際に、前記作動部を時系列的に撮像して複数の前記撮像画像を取得し、
前記作動部正常性判断部は、前記撮像装置により取得された複数の前記撮像画像を利用して前記作動の正常性を判断する、航空機監視システム。
【請求項4】
請求項
3に記載の航空機監視システムにおいて、
前記撮像装置は、前記作動部に加えて、前記作動部の周りを撮像して周囲画像を取得し、
前記周囲画像に基づき、前記作動部から予め定められた距離の範囲内の障害物の有無を特定する障害物特定部(33)と、
前記作動部正常性判断部は、前記障害物特定部により前記障害物が無いと特定された場合に、前記機体制御部に対して前記作動指令情報を送信することにより前記作動部を作動させる、航空機監視システム。
【請求項5】
航空機(100)の機体(120)を監視する航空機監視システム(10)であって、
前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)を備え、
前記撮像装置は、前記機体に取り付けられている照明装置を、さらに撮像し、
前記作動部を作動する機体制御部に対して、前記照明装置に対する点灯および消灯を指令する照明指令情報を送信することにより前記照明装置をさらに作動させ、
前記照明指令情報と前記照明装置を撮像して得られた撮像画像とに基づき前記照明装置の動作の正常性を判断する照明装置正常性判断部、をさらに備え、
前記照明装置正常性判断部は、
前記照明装置に対して点灯を指示する前記照明指令情報が送信されたタイミングから任意の時間後に得られた前記撮像画像における前記照明装置の輝度が、予め定められた第1閾値以上である場合に、前記照明装置は正常であると判定することと、
前記照明装置に対して消灯を指示する前記照明指令情報が送信されたタイミングから任意の時間後に得られた前記撮像画像における前記照明装置の輝度が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である場合に、前記照明装置は正常であると判定することと、
のうちの少なくとも一方を判定する、航空機監視システム。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の航空機監視システムにおいて、
前記撮像装置による撮像により得られた撮像画像を表示する撮像画像表示部を、さらに備える、航空機監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航空機監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機を検査するための検査システムが知られている。例えば、特許文献1では、航空機の外観を検査するための外観検査システムが開示されている。この外観検査システムでは、航空機の機体に縞状パターンを照射して機体表面を撮像し、運用前の初期状態において同様にして得られた画像との差分に基づいて、機体の損傷を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の外観検査システムのように、機体に所定パターンを投影して撮像し、得られた画像に基づき機体の損傷を検知する方法では、航空機の表面の傷やへこみなどの外観上の不具合は目視検査によらず検知できる一方、プロペラや動翼といった揚力や推力の発生に関連して作動する部位の作動上の不具合の有無の確認はできないという問題がある。そのため、プロペラや動翼といった揚力や推力の発生に関連して作動する部位につき作動上の不具合の有無の確認は、飛行前に操縦士が目視により確認することが一般的である。今後eVTOL機が普及し飛行する航空機の台数が飛躍的に増加した場合、これまでと同様に全機に対して目視検査を行うことは困難となることが予想され、作動部の目視検査の自動化、簡易化が求められている。加えて、上記方法では、飛行中において不具合が発生した場合、不具合箇所を確認できないという問題がある。eVTOLでは作動部の数が従来の航空機に比べて多く、飛行時に不具合箇所が生じた場合に原因の特定がより困難になるため、飛行中において、作動部の作動上の不具合を確認可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]航空機(100)の機体(120)を監視する航空機監視システム(10)であって、前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)と、前記撮像画像を利用して、前記機体の上方から前記航空機を俯瞰した俯瞰画像を生成する画像処理部(20)と、を備える、航空機監視システム。
[形態2]航空機(100)の機体(120)を監視する航空機監視システム(10)であって、前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)と、前記撮像装置を制御する作動制御部(31)と、前記作動部を作動する機体制御部(60)に対して、前記作動部に対する作動指令情報を送信することにより前記作動部を作動させ、前記作動指令情報と前記撮像画像とに基づき前記作動部の作動の正常性を判断する作動部正常性判断部(32)と、を備え、前記撮像装置は、前記作動指令情報に応じて前記作動部が作動する際に、前記作動部を時系列的に撮像して複数の前記撮像画像を取得し、前記作動部正常性判断部は、前記撮像装置により取得された複数の前記撮像画像を利用して前記作動の正常性を判断する、航空機監視システム。
[形態3]航空機(100)の機体(120)を監視する航空機監視システム(10)であって、前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)を備え、前記撮像装置は、前記機体に取り付けられている照明装置を、さらに撮像し、前記作動部を作動する機体制御部に対して、前記照明装置に対する点灯および消灯を指令する照明指令情報を送信することにより前記照明装置をさらに作動させ、前記照明指令情報と前記照明装置を撮像して得られた撮像画像とに基づき前記照明装置の動作の正常性を判断する照明装置正常性判断部、をさらに備え、前記照明装置正常性判断部は、前記照明装置に対して点灯を指示する前記照明指令情報が送信されたタイミングから任意の時間後に得られた前記撮像画像における前記照明装置の輝度が、予め定められた第1閾値以上である場合に、前記照明装置は正常であると判定することと、前記照明装置に対して消灯を指示する前記照明指令情報が送信されたタイミングから任意の時間後に得られた前記撮像画像における前記照明装置の輝度が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である場合に、前記照明装置は正常であると判定することと、のうちの少なくとも一方を判定する、航空機監視システム。
【0006】
本開示の一形態として、航空機監視システム(10)が提供される。この航空機監視システムは、航空機の機体(120)を監視する航空機監視システムであって、前記機体に取り付けられ、少なくとも前記航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部(40)を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置(12)を備える。
【0007】
この形態の航空機監視システムによれば、機体に取り付けられ、少なくとも航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置を備えるので、飛行前点検時などの航空機が着陸している状況において航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部の不具合の有無の確認を目視検査によらず実施できる。加えて、飛行中において、航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部に不具合が生じた場合の不具合状況の確認を行うことができる。このため、航空機の着陸および飛行中において、航空機の作動部の作動上の不具合の有無および状況を確認できる。
【0008】
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、航空機の機体を監視する航空機監視システムの制御方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態である航空機監視システムを搭載した電動垂直離着陸機を示す概略図である。
【
図2】航空機監視システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】作動確認処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A-1.システム構成:
図1に示すように、本開示の一実施形態としての航空機監視システム10は、電動垂直離着陸機100(以下、「eVTOL(electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)100」とも呼ぶ)に搭載されている。本実施形態において、航空機監視システム10は、eVTOL100を監視する。まず、eVTOL100について説明する。
【0011】
eVTOL100は、電気により駆動され、鉛直方向に離着陸可能な有人航空機として構成されている。eVTOL100は、
図1に示すように、本体部120と、複数の回転翼130と、各回転翼130をそれぞれ回転駆動させるための複数の電駆動システム110(以下、「EDS(Electric Drive System)110とも呼ぶ」)とを備えている。本実施形態のeVTOL100は、回転翼130とEDS110と図示しないチルト駆動部をそれぞれ6つずつ備えている。なお、回転翼130とEDS110とチルト駆動部は、それぞれ6つに限らず、1つ以上であれば任意の数であってもよい。
【0012】
本体部120は、eVTOL100において、6つの回転翼130とEDS110とチルト駆動部を除いた部分に相当する。本体部120は、胴体部121と、図示しない支柱部と、6つの第1支持部123と、6つの第2支持部124と、主翼125と、尾翼128とを備える。
【0013】
胴体部121は、eVTOL100の胴体部分を構成する。胴体部121の内部には、図示しない乗員室が形成されている。図示しない支柱部は、鉛直方向に延びる略柱状の外観形状を有し、胴体部121の上部に固定されている。本実施形態において、支柱部は、鉛直方向に見てeVTOL100の図示しない本体部重心位置と重なる位置に配置されている。支柱部の上端部には、6つの第1支持部123の一方の端部がそれぞれ固定されている。6つの第1支持部123は、それぞれ略棒状の外観形状を有し、鉛直方向に垂直な面に沿って延びるように、互いに等角度間隔で放射状に配置されている。各第1支持部123の他方の端部、すなわち支柱部から遠ざかる位置にある端部には、それぞれ回転翼130とEDS110とが配置されている。6つの第2支持部124は、それぞれ略棒状の外観形状を有し、互いに隣り合う第1支持部123他方の端部(支柱部と接続されていない側の端部)同士を接続している。
【0014】
主翼125は、右翼126と左翼127とにより構成されている。右翼126は、胴体部121から右方向に延びて形成されている。左翼127は、胴体部121から左方向に延びて形成されている。尾翼128は、胴体部121の後端部に形成されている。
【0015】
6つの回転翼130は、各第2支持部124の端部に配置され、離着陸時には鉛直方向上向きに推力を発生し、主に本体部120の揚力を得るためのリフト用回転翼として作動し、その後チルト駆動部により推進方向後方に推力を発生可能な向きに偏向させることにより、主に本体部120の推力を得るためのクルーズ用回転翼として作動する。各回転翼130は、それぞれの回転軸を中心として、互いに独立して回転駆動される。各回転翼130は、互いに等角度間隔で配置された3つのブレード133をそれぞれ有する。
【0016】
6つのEDS110は、各回転翼130をそれぞれ回転駆動させるための駆動装置として構成されている。チルト駆動部は、回転翼130の推力を発生させる方向を変えるための駆動部である。
【0017】
続いて、航空機監視システム10について説明する。
図2に示すように、航空機監視システム10は、撮像装置12と、画像処理部20と、制御装置30と、俯瞰画像表示部50とを備える。
【0018】
図1および
図2に示すように、本実施形態において、撮像装置12は、4つのカメラ12a~12dを備える。4つのカメラ12a~12dは、本体部120に取り付けられている。具体的には、4つのカメラ12a~12dは、図示しない支柱部の上方に、撮像の向きが互いに異なるように配置して取り付けられている。
図1に示すように、各カメラ12a~12dの撮像範囲Ar1~Ar4は、それぞれ破線や一点鎖線などで示されている。カメラ12a~12dは、eVTOL100が有する作動部40を含むように撮像し、かかる撮像によって得られた撮像画像を取得する。「作動部」とは、eVTOL100の飛翔のための揚力または推力の発生に関連し作動する部分を意味する。本実施形態では、「eVTOL100の飛翔のための揚力または推力の発生に関連し作動する部分」とは、eVTOL100の飛翔のための揚力または推力を発生させることが可能な作動する部分と、eVTOL100の飛翔のための揚力または推力を発生するために用いられる作動部分とを意味する。作動部40としては、例えば、回転翼130や図示しないエルロン、エレベーター、ラダーといった動翼やEDS110やチルト駆動部が該当する。なお、作動部40は、回転翼130や図示しないエルロン、エレベーター、ラダーといった動翼やEDS110やチルト駆動部に限らず、eVTOL100の飛翔のための揚力または推力の発生に関連し作動する任意の種類の構成部分であってもよい。
【0019】
画像処理部20は、撮像装置12において得られた撮像画像を利用して、本体部120の上方からeVTOL100を俯瞰した俯瞰画像を生成する。
【0020】
俯瞰画像表示部50は、本実施形態において、eVTOL100のコックピットに搭載されている。本実施形態では、俯瞰画像表示部50は、液晶表示装置により構成されている。俯瞰画像表示部50は、画像処理部20で生成された俯瞰画像を表示する。
【0021】
制御装置30は、航空機監視システム10の全体動作を制御する。
図3に示すように、制御装置30は、記憶部36と、入出力インターフェイス37と、CPU(Central Processing Unit)とを備えるコンピュータとして構成されている。記憶部36は、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを有する。
【0022】
入出力インターフェイス37は、制御装置30と外部との間で、指令値や出力値を入出力するために用いられる。例えば、入出力インターフェイス37は、作動確認開始コマンドを外部装置から入力する。かかる外部装置としては、例えば、作動確認の制御や作動確認結果の記録等を行うサーバ装置等の管理および制御用のコンピュータが該当する。かかる管理および制御用コンピュータは、例えば、航空管制室に配置されているサーバ装置であってもよく、また、作動確認を行う保守作業員がeVTOL100の運用場所に持ち込んだパーソナルコンピュータであってもよい。また、入出力インターフェイス37を介して入力された作動指令情報(チルト駆動部に対してチルト角の指令値など)が、制御装置30から機体制御部60へと送られる。そして、機体制御部60は作動部40を作動する。
【0023】
CPUは、記憶部36に予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、作動制御部31、作動部正常性判断部32、障害物特定部33として機能する。
【0024】
作動制御部31は、撮像装置12を制御する。例えば、作動制御部31は、撮像装置12に対して撮像指示を送る。
【0025】
作動部正常性判断部32は、機体制御部60に対して作動部40に対する作動指令情報を送信することにより作動部40を作動させる。作動部正常性判断部32は、かかる作動指令情報と、撮像装置12によって撮像されて取得された撮像画像とに基づき、作動部40の作動の正常性を判断する。
【0026】
障害物特定部33は、作動部40から予め定められた距離の範囲内の障害物の有無を特定する。障害物の有無の特定について、具体的には後述する。
【0027】
A-2.作動確認処理:
本実施形態において、航空機監視システム10に対して、入出力インターフェイス37を介して作動確認開始コマンドが入力されると、
図4に示す作動確認処理が実行される。作動確認処理とは、航空機監視システム10によって作動部40の作動を確認するための処理である。
【0028】
作動制御部31は、撮像装置12に対して撮像指示を送る(ステップS10)。撮像装置12は、作動部40および作動部40の周りを撮像して、複数の周囲画像を取得する(ステップS12)。かかる複数の周囲画像とは、複数のカメラで略同一時間に撮像された複数の撮像画像を意味する。
【0029】
画像処理部20は、複数の周囲画像を利用して、本体部120の上方からeVTOL100を俯瞰した俯瞰画像を生成する(ステップS14)。
【0030】
障害物特定部33は、ステップS14で生成された俯瞰画像に基づき、作動部40から予め定められた距離の範囲内の障害物の有無を特定する(ステップS16)。例えば、障害物特定部33は、俯瞰画像を利用して、回転翼130から1m(メートル)以内に人や物が存在していないかを特定する。
【0031】
障害物が有ると特定された場合(ステップS18:Yes)、ステップS18の前に処理が戻る。言い換えると、障害物が存在する間は、ステップS18以後の処理には進まない。障害物が無いと特定された場合(ステップS18:No)、作動部正常性判断部32は、機体制御部60に対して作動指令情報を送信することにより作動部40を作動させる(ステップS20)。
【0032】
撮像装置12は、予め定められた時間間隔で時系列的に、作動部40および作動部40の周りを予め定められた回数撮像する。(ステップS22)。画像処理部20は、ステップS22で撮像された複数の撮像画像を利用して、本体部120の上方からeVTOL100を俯瞰した俯瞰画像を生成する(ステップS24)。ステップS24において、画像処理部20は、複数のカメラで略同一時間に撮像された複数の撮像画像を利用して俯瞰画像を生成する。画像処理部20は、ステップS22で時系列的に複数のカメラで撮像された複数の撮像画像を利用して、略同一時間ごとに俯瞰画像を生成する。
【0033】
作動部正常性判断部32は、作動指令情報と、ステップS24で生成された俯瞰画像に基づき、作動部40の作動の正常性を判断する(ステップS26)。具体的には、例えば、チルト駆動部に対してチルト角の指令値を45度とする作動指令情報が指令された場合、時系列的に得られた複数の俯瞰画像において、チルト駆動部により駆動される作動部40のチルト角が45度に傾斜したか否かが判断される。
【0034】
作動部正常性判断部32は、作動部40の作動の正常性の判断結果を記憶部36に保存する(ステップS28)。作動部40の正常性の判断結果が俯瞰画像表示部50に表示される(ステップS30)。具体的には、作動部ごとに、正常または異常を示す結果がテキスト表示される。
【0035】
本実施形態における本体部120は、特許請求の範囲における機体に相当する。
【0036】
以上説明した本実施形態の航空機監視システム10によれば、本体部120に取り付けられ、eVTOL100の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部40を撮像して得られた撮像画像を取得する撮像装置12を備えるので、飛行前点検時などのeVTOL100が着陸している状況において航空機の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部の不具合の有無の確認を目視検査によらず実施できる。
【0037】
また、画像処理部20は、撮像装置12によって取得された撮像画像を利用して、本体部120の上方からeVTOL100を俯瞰した俯瞰画像を生成し、かかる俯瞰画像が俯瞰画像表示部50に表示されるので、作業員や操縦者がeVTOL100の作動部40の作動上の不具合の有無を直感的に確認できる。
【0038】
さらに、作動指令情報に応じて作動部40が作動する際に、作動部40を時系列的に撮像して複数の撮像画像が取得され、かかる複数の撮像画像を利用して作動の正常性が判断されるので、単数の撮像画像を利用する構成と比較して、正常性の判断精度が向上する。
【0039】
また、作動部40の作動前に、障害物特定部33は、作動部40および作動部40の周りが撮像された周囲画像に基づき、作動部40から予め定められた距離の範囲内の障害物の有無を特定するので、安全確認の人為的ミスの抑制に繋がり検査時の安全性が向上する。
【0040】
B.他の実施形態:
(B1)本実施形態の航空機監視システム10において、撮像装置12は、本体部120に取り付けられている照明装置を、さらに撮像し、作動部40を作動する機体制御部60に対して照明装置に対する点灯および消灯を指令する照明指令情報を送信することにより照明装置をさらに作動させ照明指令情報と照明装置を撮像して得られた撮像画像とに基づき照明装置の動作の正常性を判断する照明装置正常性判断部と、をさらに備え、照明装置正常性判断部は、照明装置に対して点灯を指示する照明指令情報が送信されたタイミングから任意の時間後に得られた撮像画像における照明装置の輝度が、予め定められた第1閾値以上である場合に、照明装置は正常であると判定することと、照明装置に対して消灯を指示する照明指令情報が送信されたタイミングから任意の時間後に得られた撮像画像における照明装置の輝度が、第1閾値よりも小さい第2閾値以下である場合に、照明装置は正常であると判定することと、のうちの少なくとも一方を判定してもよい。かかる照明装置の輝度という定量値に基づき照明装置の正常性が判断されるので、定量的に正常性の検査が可能となる。
【0041】
(B2)本実施形態の航空機監視システム10において、撮像装置12による撮像により得られた撮像画像、すなわち俯瞰画像への画像処理前の状態の画像を、俯瞰画像に加えて、または、俯瞰画像に代えて表示させてもよい。これにより、eVTOL100が有する作動部40の作動上の不具合を部分的により表示させやすくなる。この構成においては、俯瞰画像表示部50が撮像画像表示部に相当する。なお、俯瞰画像表示部50とは別の撮像画像表示部を追加させて、撮像画像を表示させてもよい。
【0042】
(B3)本実施形態の航空機監視システム10は、eVTOL100に搭載されていたが、eVTOL100に限らず、例えば、ジェット機やヘリコプターなど任意の種類の航空機に搭載されていてもよい。また、eVTOL100は、有人航空機として構成されていたが、無人航空機として構成されていてもよい。
【0043】
(B4)本実施形態の航空機監視システム10において、撮像装置12は、本体部120に取り付けられ、eVTOL100の飛翔のための揚力または推力の発生に関連する作動部40および作動部40の周りを撮像して得られた撮像画像を取得していたが、作動部40のみを撮像して得られた撮像画像を取得してもよい。言い換えると、撮像装置12は、少なくとも作動部40を撮像して得られた撮像画像を取得すればよい。
【0044】
(B5)本実施形態の航空機監視システム10において、画像処理部20と、俯瞰画像表示部50と、作動制御部31と、作動部正常性判断部32と、障害物特定部33とを備えていたが、これらを備えていなくてもよい。言い換えると、撮像装置12を備えていればよい。かかる撮像装置12によって作動部40が撮像され、取得された撮像画像を利用して、作業員等が作動部40の正常性の判断を行ってもよい。
【0045】
(B6)本実施形態の航空機監視システム10において、撮像装置12のカメラ12a~12dは、図示しない支柱部の上方に配置されていたが、支柱部とは異なる位置に配置されていてもよい。本体部120のうち支柱部から離れた所に分散して配置されていてもよい。例えば、胴体部121の進行方向側と、後退方向側とに分散してカメラが配置されていてもよい。また、尾翼128に複数のカメラがまとまって配置されていてもよい。
【0046】
(B7)本実施形態の航空機監視システム10において、撮像装置12は、4つのカメラ12a~12dを備えていたが、4つに限らず、1つ以上の任意の数のカメラを備えていてもよい。
【0047】
(B8)本実施形態の航空機監視システム10において、画像処理部20は、本体部120の上方からeVTOL100を俯瞰した俯瞰画像を生成していたが、本開示はこれに限られない。上方からの俯瞰画像だけでなく、全方位からの俯瞰画像を取得可能な位置にカメラを配置してもよい。機体表面の傷や凹みなどの損傷を検知可能な精度のカメラを備えてもよく、これにより作動部の不具合確認だけでなく、機体損傷検知を実施してもよい。
【0048】
(B9)本実施形態の航空機監視システム10の作動確認処理において、作動部ごとに、正常または異常を示す結果が俯瞰画像表示部50にテキスト表示されていたが、俯瞰画像における作動部ごとに、正常または異常を示す色分け表示がされてもよい。
【0049】
(B10)本実施形態の航空機監視システム10において、eVTOL100の停止中に、作動部40を作動させて作動確認処理が行われていたが、加えて、eVTOL100の飛行中に、作動確認処理が行われてもよい。具体的には、eVTOL100の飛行中に、作動部40のいずれかに不具合が発生したことを検知した際、作動制御部から不具合発生個所の撮像を撮像装置12に対して指示し、撮像結果を俯瞰画像表示部50に表示することにより、不具合状況の確認を行ってもよい。
【0050】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0051】
本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…航空機監視システム、12…撮像装置、40…作動部、100…電動垂直離着陸機、120…本体部