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特許7444136物体認識システム、物体認識方法、物体認識プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】物体認識システム、物体認識方法、物体認識プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240228BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G06T7/00 650B
G06T7/00 C
G08G1/16 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021096063
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187855
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 駿
(72)【発明者】
【氏名】大石 智之
(72)【発明者】
【氏名】田中 基木
【審査官】小太刀 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173707(JP,A)
【文献】特開2014-178789(JP,A)
【文献】国際公開第2007/069726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(12)を有し、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識する物体認識システムであって、
前記プロセッサは、
前記観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、前記観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、前記マッチングに基づく前記移動物体の候補点(Pc)として前記三次元観測データから探索することと、
前記候補点に基づき前記移動物体を識別することとを、実行するように構成され
前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとをマッチングすることは、
前記観測空間を複数に分割した各三次元ボクセル(300)毎に、前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとをマッチングすることを、含み、
前記候補点を探索することは、
前記三次元ボクセルを大ボクセル(300L)と定義して、前記大ボクセルをさらに分割した複数の小ボクセル(300S)を設定することと、
前記大ボクセルにおける前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとのマッチング結果に基づき、前記大ボクセルのうち前記候補点の抽出が予測される候補ボクセル(300Lc)を探索することと、
各前記三次元ボクセル毎における前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとの点群分布の対比であって、前記候補ボクセルに設定された前記小ボクセルにおける前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとの点群分布の対比により、前記小ボクセルにおいて前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記小ボクセルにおいて前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを区別して、前記候補点を抽出することとを、含む物体認識システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
抽出された特定時刻における前記候補点の実数(Nr)と、前記特定時刻よりも前の過去時刻における前記候補点の実数に基づき予測される前記特定時刻での前記候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視することとを、さらに実行するように構成され、
前記移動物体を識別することは、
前記差分が許容範囲内となる場合に、前記特定時刻での前記候補点に基づき前記移動物体を識別することを、含む請求項1に記載の物体認識システム。
【請求項3】
プロセッサ(12)を有し、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識する物体認識システムであって、
前記プロセッサは、
前記観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、前記観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、前記マッチングに基づく前記移動物体の候補点(Pc)として前記三次元観測データから探索することと、
抽出された特定時刻における前記候補点の実数(Nr)と、前記特定時刻よりも前の過去時刻における前記候補点の実数に基づき予測される前記特定時刻での前記候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視することと、
前記候補点に基づき前記移動物体を識別することとを、実行するように構成され、
前記移動物体を識別することは、
前記差分が許容範囲内となる場合に、前記特定時刻での前記候補点に基づき前記移動物体を識別することを、含む物体認識システム。
【請求項4】
前記移動物体を識別することは、
前記差分が許容範囲外となる場合に、前記三次元ダイナミックマップと関連付けた異常通知を、前記ホスト車両と通信可能なリモートセンタ(8)へ送信することを、含み、
前記プロセッサは、
前記異常通知の送信後に前記リモートセンタから、更新された前記三次元ダイナミックマップを取得することを、さらに実行するように構成される請求項2又は3に記載の物体認識システム。
【請求項5】
前記候補点を探索することは、
前記三次元観測データにおいて前記三次元ダイナミックマップとは乖離した乖離点(Pe)の情報として、抽出された場合における前記候補点の位置情報を、前記ホスト車両と通信可能なリモートセンタ(8)へ送信することを、含み、
前記プロセッサは、
前記位置情報の送信後に前記リモートセンタから、更新された前記三次元ダイナミックマップを取得することを、さらに実行するように構成される請求項1~4のいずれか一項に記載の物体認識システム。
【請求項6】
ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)により実行される物体認識方法であって、
前記観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、前記観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、前記マッチングに基づく前記移動物体の候補点(Pc)として前記三次元観測データから探索することと、
前記候補点に基づき前記移動物体を識別することとを、含み、
前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとをマッチングすることは、
前記観測空間を複数に分割した各三次元ボクセル(300)毎に、前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとをマッチングすることを、含み、
前記候補点を探索することは、
前記三次元ボクセルを大ボクセル(300L)と定義して、前記大ボクセルをさらに分割した複数の小ボクセル(300S)を設定することと、
前記大ボクセルにおける前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとのマッチング結果に基づき、前記大ボクセルのうち前記候補点の抽出が予測される候補ボクセル(300Lc)を探索することと、
各前記三次元ボクセル毎における前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとの点群分布の対比であって、前記候補ボクセルに設定された前記小ボクセルにおける前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとの点群分布の対比により、前記小ボクセルにおいて前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記小ボクセルにおいて前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを区別して、前記候補点を抽出することとを、含む物体認識方法。
【請求項7】
ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)により実行される物体認識方法であって、
前記観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、前記観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、前記マッチングに基づく前記移動物体の候補点(Pc)として前記三次元観測データから探索することと、
抽出された特定時刻における前記候補点の実数(Nr)と、前記特定時刻よりも前の過去時刻における前記候補点の実数に基づき予測される前記特定時刻での前記候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視することと、
前記候補点に基づき前記移動物体を識別することとを、含み、
前記移動物体を識別することは、
前記差分が許容範囲内となる場合に、前記特定時刻での前記候補点に基づき前記移動物体を識別することを、含む物体認識方法。
【請求項8】
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む物体認識プログラムであって、
前記命令は、
前記観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、前記観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングさせることと、
前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、前記マッチングに基づく前記移動物体の候補点(Pc)として前記三次元観測データから探索させることと、
前記候補点に基づき前記移動物体を識別させることとを、含み、
前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとをマッチングさせることは、
前記観測空間を複数に分割した各三次元ボクセル(300)毎に、前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとをマッチングさせることを、含み、
前記候補点を探索させることは、
前記三次元ボクセルを大ボクセル(300L)と定義して、前記大ボクセルをさらに分割した複数の小ボクセル(300S)を設定させることと、
前記大ボクセルにおける前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとのマッチング結果に基づき、前記大ボクセルのうち前記候補点の抽出が予測される候補ボクセル(300Lc)を探索させることと、
各前記三次元ボクセル毎における前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとの点群分布の対比であって、前記候補ボクセルに設定された前記小ボクセルにおける前記三次元ダイナミックマップと前記三次元観測データとの点群分布の対比により、前記小ボクセルにおいて前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記小ボクセルにおいて前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを区別して、前記候補点を抽出させることとを、含む物体認識プログラム。
【請求項9】
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む物体認識プログラムであって、
前記命令は、
前記観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、前記観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングさせることと、
前記三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、前記三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、前記マッチングに基づく前記移動物体の候補点(Pc)として前記三次元観測データから探索させることと、
抽出された特定時刻における前記候補点の実数(Nr)と、前記特定時刻よりも前の過去時刻における前記候補点の実数に基づき予測される前記特定時刻での前記候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視させることと、
前記候補点に基づき前記移動物体を識別させることとを、含み、
前記移動物体を識別させることは、
前記差分が許容範囲内となる場合に、前記特定時刻での前記候補点に基づき前記移動物体を識別させることを、含む物体認識プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動物体を認識する物体認識技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
ホスト車両の観測デバイスにより観測された観測空間において移動可能な移動物体を認識する物体認識技術は、近年、重要となってきている。例えば特許文献1に開示される物体認識技術は、三次元距離画像データと三次元環境地図データとを比較することで、移動物体に関する点群データを抽出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-173707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の開示技術では、三次元環境地図データに記録されていない観測点群が、移動物体に関する点群データとして抽出されている。そのため、三次元環境地図データに点群として記録されている物標に移動物体が近接又は重畳して観測される場合には、移動物体を精確に認識することが困難となる。
【0005】
本開示の課題は、移動物体を高精度で認識する物体認識システムを、提供することにある。本開示の別の課題は、移動物体を高精度で認識する物体認識方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、移動物体を高精度で認識する物体認識プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識する物体認識システムであって、
プロセッサは、
観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、マッチングに基づく移動物体の候補点(Pc)として三次元観測データから探索することと、
候補点に基づき移動物体を識別することとを、実行するように構成され
三次元ダイナミックマップと三次元観測データとをマッチングすることは、
観測空間を複数に分割した各三次元ボクセル(300)毎に、三次元ダイナミックマップと三次元観測データとをマッチングすることを、含み、
候補点を探索することは、
三次元ボクセルを大ボクセル(300L)と定義して、大ボクセルをさらに分割した複数の小ボクセル(300S)を設定することと、
大ボクセルにおける三次元ダイナミックマップと三次元観測データとのマッチング結果に基づき、大ボクセルのうち候補点の抽出が予測される候補ボクセル(300Lc)を探索することと、
各三次元ボクセル毎における三次元ダイナミックマップと三次元観測データとの点群分布の対比であって、候補ボクセルに設定された小ボクセルにおける三次元ダイナミックマップと三次元観測データとの点群分布の対比により、小ボクセルにおいて三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、小ボクセルにおいて三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを区別して、候補点を抽出することとを、含む。
本開示の第二態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識する物体認識システムであって、
プロセッサは、
観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、マッチングに基づく移動物体の候補点(Pc)として三次元観測データから探索することと、
抽出された特定時刻における候補点の実数(Nr)と、特定時刻よりも前の過去時刻における候補点の実数に基づき予測される特定時刻での候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視することと、
候補点に基づき移動物体を識別することとを、実行するように構成され、
移動物体を識別することは、
差分が許容範囲内となる場合に、特定時刻での候補点に基づき移動物体を識別することを、含む。
【0008】
本開示の第態様は、
ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)により実行される物体認識方法であって、
観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、マッチングに基づく移動物体の候補点(Pc)として三次元観測データから探索することと、
候補点に基づき移動物体を識別することとを、含み、
三次元ダイナミックマップと三次元観測データとをマッチングすることは、
観測空間を複数に分割した各三次元ボクセル(300)毎に、三次元ダイナミックマップと三次元観測データとをマッチングすることを、含み、
候補点を探索することは、
三次元ボクセルを大ボクセル(300L)と定義して、大ボクセルをさらに分割した複数の小ボクセル(300S)を設定することと、
大ボクセルにおける三次元ダイナミックマップと三次元観測データとのマッチング結果に基づき、大ボクセルのうち候補点の抽出が予測される候補ボクセル(300Lc)を探索することと、
各三次元ボクセル毎における三次元ダイナミックマップと三次元観測データとの点群分布の対比であって、候補ボクセルに設定された小ボクセルにおける三次元ダイナミックマップと三次元観測データとの点群分布の対比により、小ボクセルにおいて三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、小ボクセルにおいて三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを区別して、候補点を抽出することとを、含む。
本開示の第四態様は、
ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)により実行される物体認識方法であって、
観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングすることと、
三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、マッチングに基づく移動物体の候補点(Pc)として三次元観測データから探索することと、
抽出された特定時刻における候補点の実数(Nr)と、特定時刻よりも前の過去時刻における候補点の実数に基づき予測される特定時刻での候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視することと、
候補点に基づき移動物体を識別することとを、含み、
移動物体を識別することは、
差分が許容範囲内となる場合に、特定時刻での候補点に基づき移動物体を識別することを、含む。
【0009】
本開示の第態様は、
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む物体認識プログラムであって、
命令は、
観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングさせることと、
三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、マッチングに基づく移動物体の候補点(Pc)として三次元観測データから探索させることと、
候補点に基づき移動物体を識別させることとを、含み、
三次元ダイナミックマップと三次元観測データとをマッチングさせることは、
観測空間を複数に分割した各三次元ボクセル(300)毎に、三次元ダイナミックマップと三次元観測データとをマッチングさせることを、含み、
候補点を探索させることは、
三次元ボクセルを大ボクセル(300L)と定義して、大ボクセルをさらに分割した複数の小ボクセル(300S)を設定させることと、
大ボクセルにおける三次元ダイナミックマップと三次元観測データとのマッチング結果に基づき、大ボクセルのうち候補点の抽出が予測される候補ボクセル(300Lc)を探索させることと、
各三次元ボクセル毎における三次元ダイナミックマップと三次元観測データとの点群分布の対比であって、候補ボクセルに設定された小ボクセルにおける三次元ダイナミックマップと三次元観測データとの点群分布の対比により、小ボクセルにおいて三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、小ボクセルにおいて三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを区別して、候補点を抽出させることとを、含む。
本開示の第六態様は、
記憶媒体(10)に記憶され、ホスト車両(2)の観測デバイス(3)により観測された観測空間(30)において移動可能な移動物体(9)を認識するために、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む物体認識プログラムであって、
命令は、
観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップ(Mt)と、観測空間において観測された観測点群の状態を表す三次元観測データ(Dt)とを、マッチングさせることと、
三次元ダイナミックマップに存在しない観測点(Pn)と、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点(Pd)とを、マッチングに基づく移動物体の候補点(Pc)として三次元観測データから探索させることと、
抽出された特定時刻における候補点の実数(Nr)と、特定時刻よりも前の過去時刻における候補点の実数に基づき予測される特定時刻での候補点の予測数(Np)との、差分(ΔL)を監視させることと、
候補点に基づき移動物体を識別させることとを、含み、
移動物体を識別させることは、
差分が許容範囲内となる場合に、特定時刻での候補点に基づき移動物体を識別させることを、含む。
【0010】
これら第一~第態様によると、観測空間に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップと、観測空間においてホスト車両の観測デバイスにより観測された観測点群の状態を表す三次元観測データとが、マッチングされる。そこで三次元観測データからは、三次元ダイナミックマップに存在しない観測点だけでなく、三次元ダイナミックマップのマッピング点とは異なる観測点が、マッチングに基づく移動物体の候補点として探索される。これによれば、特に三次元ダイナミックマップのマッピング点が表す物標に、三次元観測データの観測点が表す移動物体が近接又は重畳していたとしても、移動物体の候補点としてダイナミックマップとは乖離した後者の観測点が抽出され得る。故に、こうした候補点に基づく識別により、移動物体を高精度に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による物体認識システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】一実施形態によるホスト車両の観測デバイスと移動物体との関係を示す模式図である。
図3】一実施形態による物体認識システム装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態による物体認識方法を示すフローチャートである。
図5】一実施形態によるボクセル設定を説明するための模式図である。
図6】一実施形態による三次元ダイナミックマップとボクセルとの関係を示す模式図である。
図7】一実施形態による候補点探索を説明するための模式図である。
図8】一実施形態による候補点探索を説明するための模式図である。
図9】一実施形態による候補点探索を説明するための模式図である。
図10】一実施形態による候補点探索を説明するための模式図である。
図11】一実施形態による候補点探索を説明するための模式図である。
図12】一実施形態による候補点探索を説明するための模式図である。
図13】一実施形態による候補点に関しての、位置情報の可視化表示を説明するための模式図である。
図14】一実施形態による差分監視を説明するための模式図である。
図15】一実施形態による差分監視を説明するための模式図である。
図16】一実施形態による異常通知に関しての、地点情報の可視化表示を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0013】
図1に示す一実施形態の物体認識システム1は、図2に示すようにホスト車両2に搭載される観測デバイス3により観測された観測空間30において、移動可能な移動物体9を認識する。物体認識システム1の認識対象とする移動物体9は、例えばホスト車両2以外の他車両、バイク、人、動物、及びドローン(即ち、移動ロボット)等のうち、複数種類である。
【0014】
物体認識システム1のホスト車両2は、例えば自動車等、乗員の搭乗状態において道路を走行可能となっている。ホスト車両2では、運転タスクにおける乗員の手動介入度に応じてレベル分けされるように、自動運転モードが実行される。自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0015】
ホスト車両2には、図1に示すセンサ系4、通信系5、情報提示系6、及び地図データベース7が搭載される。センサ系4は、物体認識システム1により利用可能なセンサ情報を、ホスト車両2の外界及び内界から取得する。そのためにセンサ系4は、外界センサ40、及び内界センサ41を含んで構成される。
【0016】
外界センサ40は、ホスト車両2の周辺環境となる外界の情報を、取得する。外界センサ40には、ホスト車両2の外界のうち観測空間30を観測することで外界情報を取得する、観測デバイス3が含まれている。観測デバイス3は、例えば三次元LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、及び三次元レーダ等のうち、後述する三次元観測データDt(以下、単に観測データDtともいう)を生成可能な少なくとも一種類である。尚、観測デバイス3の他に外界センサ40としては、ホスト車両2の外界をセンシングすることで外界情報を取得する、例えばカメラ及びソナー等のうち少なくとも一種類が含まれていてもよい。
【0017】
外界センサ40のうち観測デバイス3は、ホスト車両2の外界へ向けて設定された視野角に応じて決まる観測空間30(図2参照)を観測することで、当該空間30に存在する物標に関連して外界情報を取得する。特に本実施形態の観測デバイス3により取得される外界情報は、観測空間30において観測された観測点群の状態を三次元で表す、観測データDtである。観測データDtは、例えば位置座標、距離、方位角、速度、及びビーム反射強度等のうち、少なくとも一種類に関する三次元状態値を含んでいる。
【0018】
内界センサ41は、ホスト車両2の内部環境となる内界の情報を、取得する。内界センサ41は、ホスト車両2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。物理量検知タイプの内界センサ41は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ41は、ホスト車両2の内界において乗員の特定状態を検知することで、内界情報を取得してもよい。乗員検知タイプの内界センサ41は、例えばドライバーステータスモニター(登録商標)、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0019】
通信系5は、物体認識システム1により利用可能な通信情報を、無線通信により取得する。通信系5には、ホスト車両2の外界に存在するV2Xシステムとの間において通信信号を送受信する、V2Xタイプが含まれている。V2Xタイプの通信系5は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。V2Xタイプの通信系5は、ホスト車両2外部のリモートセンタ8と通信可能な通信ネットワークを、構築している。
【0020】
ここでリモートセンタ8は、例えばクラウドサーバ及びエッジサーバ等のうち少なくとも一種類のサーバユニット、並びに通信ルータを主体として、構成されている。例えばリモートセンタ8は、ホスト車両2の運転を管理する管理センタ、又はホスト車両2に関連するサービスを提供するサービスセンタ等である。リモートセンタ8では、通信ルータを通じて通信可能な、ホスト車両2を含む道路ユーザに関連する情報を、例えばリモートセンタ8のオペレータへ表示する等の出力制御処理が、実行される。それに伴ってリモートセンタ8では、通信可能な道路ユーザへフィードバックされる情報を、例えばリモートセンタ8のオペレータから受付する等の入力制御処理が、実行される。
【0021】
通信系5としては、こうしたリモートセンタ8との通信を実現するV2Xタイプに加えて、ホスト車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信する、測位タイプも含まれている。測位タイプの通信系5は、例えばGNSS受信機等である。その他に通信系5としては、ホスト車両2の内界に存在する端末との間において通信信号を送受信する、端末通信タイプが含まれていてもよい。端末通信タイプの通信系5は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0022】
情報提示系6は、ホスト車両2の乗員へ向けた報知情報を提示する。情報提示系6は、乗員の視覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。視覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばHUD(Head-Up Display)、MFD(Multi-Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。情報提示系6は、乗員の聴覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。聴覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
地図データベース7は、物体認識システム1により利用可能な地図情報を、記憶する。地図データベース7は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地図データベース7は、ホスト車両2の位置を含む運動状態を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図データベース7は、ホスト車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図データベース7は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されてもよい。
【0024】
地図データベース7は、V2Xタイプの通信系5を通じたリモートセンタ8との通信により、最新の地図情報を取得して記憶する。特に本実施形態の地図情報は、ホスト車両2の走行環境を表すように三次元にデータ化された、高精度地図のデジタルデータとしての三次元ダイナミックマップMt(以下、単にダイナミックマップMtともいう)である。ダイナミックマップMtは、観測デバイス3の観測空間30に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を、表している。ダイナミックマップMtは、例えば物標の位置座標、距離、方位角、及び形状等のうち、少なくとも一種類に関する三次元状態値を含んでいる。ダイナミックマップMtのマッピング対象とする物標は、例えば道路、標識、信号機、建造物、及び樹木等のうち、道路を含む少なくとも一種類の静止物である。
【0025】
物体認識システム1は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系4、通信系5、情報提示系6、及び地図データベース7に接続されている。物体認識システム1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0026】
物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転を制御する、運転制御ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の位置を含む運動状態を推定する、ロケータECUであってもよい。物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2において情報提示系6による情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、例えば通信系5との間で通信可能な外部サーバ又はモバイル端末等を構築する、ホスト車両2以外のコンピュータであってもよい。
【0027】
物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0028】
プロセッサ12は、観測デバイス3により観測された観測空間30において移動可能な移動物体9を認識するためにメモリ10に記憶された、物体認識プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより物体認識システム1は、観測空間30の移動物体9を認識するための機能ブロックを、複数構築する。物体認識システム1において構築される複数の機能ブロックには、図3に示すようにマッチングブロック100、探索ブロック110、監視ブロック120、及び識別ブロック130が含まれる。
【0029】
これら各ブロック100,110,120,130の共同により、物体認識システム1が観測空間30の移動物体9を認識する物体認識方法のフロー(以下、認識フローという)を、図4に従って以下に説明する。認識フローのアルゴリズムサイクルは、ホスト車両2の起動中において繰り返し実行される。尚、認識フローにおける各「S」は、物体認識プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味する。
【0030】
認識フローのS101においてマッチングブロック100は、通信系5を通じてリモートセンタ8から最新のダイナミックマップMtを取得する。S101におけるマッチングブロック100は、取得したダイナミックマップMtにより地図データベース7を更新する。S101によるダイナミックマップMtの取得は、前回の取得からダイナミックマップMtがリモートセンタ8において更新されていない場合には、スキップされてもよい。S101によるダイナミックマップMtの取得は、一定時間の経過毎に実行され、当該実行タイミング以外にはスキップされてもよい。S101によるダイナミックマップMtの取得は、ホスト車両2における認識フローとは別の制御フローに従って、例えば更新時等の必要に応じて、又は一定時間毎に実行されることで、認識フローでは省かれてもよい。
【0031】
認識フローのS102においてマッチングブロック100は、観測デバイス3により取得された最新の観測データDtを取得する。認識フローのS103においてマッチングブロック100は、ダイナミックマップMtと観測データDtとをマッチングする。
【0032】
具体的にS103におけるマッチングブロック100は、図5に示すように観測空間30を複数に分割した三次元ボクセル300(以下、分割ボクセル300ともいう)300を、図6に示すようにダイナミックマップMtに対して設定する。各分割ボクセル300は、観測空間30に割り当てられる三次元絶対座標軸に沿って六辺を有した、立方体又は直方体の三次元格子状に定義される。但し、観測デバイス3の視野角に応じて決まる観測空間30の最外縁付近では、立方体又は直方体の一部となる、三次元格子の部分形状に分割ボクセル300が定義される。こうした各分割ボクセル300の格子サイズは、観測空間30内に各分割ボクセル300間の隙間空間が発生しない限りにおいて、互いに同一サイズ、又は互いに異なる複数サイズのいずれかに、設定される。例えば互いに同一な立方体格子状の各分割ボクセル300において六辺の長さは、1.5m等の長さに設定される。
【0033】
S103におけるマッチングブロック100は、マッチングに必要なマッチング用データを、ダイナミックマップMtから各分割ボクセル300毎に抽出する。ダイナミックマップMtから抽出されるマッチング用データは、特に本実施形態では、例えば分割ボクセル300のサイズ、分割ボクセル300の頂点座標、分割ボクセル300の識別情報、マッピング点群の有無、マッピング点群の平均座標、及びマッピング点群の分散値等のうち、少なくとも一種類を含んでいる。そこで、各分割ボクセル300毎の形状定義及びマッチング用データは、ダイナミックマップMtに含まれる地図情報としてリモートセンタ8から与えられてもよいし、ダイナミックマップMtに含まれる地図情報に基づきS103において生成されてもよいし、それらの組み合わせであってもよい。
【0034】
S103におけるマッチングブロック100は、特に本実施形態ではNDT(Normal Distribution Transform)アルゴリズムに基づくことで、ダイナミックマップMt及び観測データDt間での各分割ボクセル300毎のNDTスキャンマッチングを実行する。NDTスキャンマッチングでは、まず、ダイナミックマップMtの点群座標系に観測データDtの点群座標系を変換するための並進回転パラメータが、設定される。並進回転パラメータの設定は、例えば測位タイプの通信系5からの取得情報、過去のホスト車両2における運転状態の推定結果等のうち、少なくとも一種類に基づく初期パラメータから、開始される。
【0035】
NDTスキャンマッチングでは、設定された並進回転パラメータの下、観測データDtのダイナミックマップMtに対するマッチング度が、数1に従って各観測点毎に演算される。ここで数1のkは、ダイナミックマップMtにおいて分割ボクセル300を識別するインデックである。数1のiは、観測データDtにおいて観測点を識別するインデックスである。数1のpは、観測データDtにおいてインデックスiの観測点に関しての、並進回転パラメータによる変換後位置座標である。数1のqは、ダイナミックマップMtにおいて変換後位置座標pが属するインデックスkの分割ボクセル300に含まれたマッピング点群の、平均座標である。数1のΣは、ダイナミックマップMtにおいて変換後位置座標pが属するインデックスkの分割ボクセル300に含まれたマッピング点群の、共分散値である。数1のsは、変換後位置座標pの観測点に関しての、即ち設定された並進回転パラメータでのインデックスiの観測点に関する、マッチング度である。
【数1】
【0036】
NDTスキャンマッチングでは、全てのインデックスiの観測点に関するマッチング度sの数2に従う総和値が、設定された並進回転パラメータに対するスコアSCとして、演算される。そこでNDTスキャンマッチングでは、並進回転パラメータを変化させながらスコアSCの最適化処理を反復実行するニュートン法により、最適マッチングとなる並進回転パラメータを用いての変換後位置座標pが、各インデックスiの観測点に対して確定される。これにより、観測データDtを構成する各インデックスiの観測点は、それぞれ変換後位置座標pの属する分割ボクセル300と対応付けられる。
【数2】
【0037】
S103におけるマッチングブロック100は、各分割ボクセル300毎でのマッチング結果として、観測データDtにおける観測点の平均マッチング度を演算する。平均マッチング度の演算は、NDTスキャンマッチングにより変換後位置座標pの確定した各インデックスiの観測点に関しての、マッチング度sに基づいた数3に従う。このとき平均マッチング度は、最大値が1且つ最小値が0となるように、数3に従う値から全ての分割ボクセル300間において正規化されるとよい。ここで数3のlは、確定した変換後位置座標pがインデックスkの分割ボクセル300に属する観測点の、観測データDtにおけるインデックスである。数3のnは、確定した変換後位置座標pがインデックスkの分割ボクセル300に属する観測点の、存在数である。数3のμは、確定した変換後位置座標pがインデックスkの分割ボクセル300に属する観測点間での、平均マッチング度である。
【数3】
【0038】
S103におけるマッチングブロック100は、図7に示すように、ダイナミックマップMtにおいてマッピング点が存在しない分割ボクセル300のうち、観測データDtの観測点が少なくとも一つ存在している注目ボクセル300Aを、抽出する。抽出された注目ボクセル300Aには、各分割ボクセル300毎でのマッチング結果として、注目フラグFが付与される。尚、上述した平均マッチング度μの演算よりも注目ボクセル300Aの抽出が先に実行されることで、注目ボクセル300Aに対する当該演算は省かれてもよい。
【0039】
S103におけるマッチングブロック100はさらに、NDTスキャンマッチングによるマッチング結果として確定された、各インデックスiの観測点での変換後位置座標pに基づくことで、ホスト車両2の位置及び姿勢を含む運動状態を推定する。このとき運転状態の推定処理は、例えば拡張カルマンフィルタ等を用いて実行される。
【0040】
図4に示す認識フローのS104において探索ブロック110は、S103のマッチングブロック100によるマッチング結果に基づくことで、移動物体9の候補点Pcを観測データDtから探索する。候補点Pcとしては、分割ボクセル300を模式的に二次元表示した図8に示すように、観測データDtにおいてダイナミックマップMtには存在しない観測点Pnと、同データDtにおいてダイナミックマップMtのマッピング点とは異なる観測点Pdとが、探索される。
【0041】
具体的にS104における探索ブロック110は、S103のマッチングブロック100により図7の如く注目フラグFが付与された注目ボクセル300Aに属する観測点、即ちダイナミックマップMtには対応するマッピング点が存在しない観測点Pnの全てを、候補点Pcに設定する。このようにマッチング結果としての注目フラグFが利用されることで、探索処理の効率化を図ることが可能となる。
【0042】
S104における探索ブロック110は、図9に示すように、注目ボクセル300A以外の分割ボクセル300を大ボクセル300Lと定義して、当該大ボクセル300Lをさらに分割した複数の小ボクセル300Sを設定する。各小ボクセル300Sの形状及びサイズは、大ボクセル300Lとしての分割ボクセル300の場合に準じて、設定される。例えば互いに同一な立方体格子状の各小ボクセル300Sにおいて六辺の長さは、0.5m等の長さに設定される。
【0043】
S104における探索ブロック110は、図10に示すように、注目ボクセル300Aの除かれた大ボクセル300Lのうち、候補点Pcの抽出が予測されるメイン候補ボクセル300Lcを、探索する。メイン候補ボクセル300Lcは、S103のマッチングブロック100により大ボクセル300Lに定義の分割ボクセル300に対して取得された、マッチング結果としての平均マッチング度μに基づき探索される。探索により選定されるメイン候補ボクセル300Lcは、特に本実施形態では、平均マッチング度μが選定閾値以下の大ボクセル300Lに定義される。ここで選定閾値は、候補点Pcの抽出信頼性を確保するように、規定される。尚、上述した小ボクセル300Sの設定よりもメイン候補ボクセル300Lcの探索及び選定が先に実行されることで、メイン候補ボクセル300Lcから外れた大ボクセル300Lに対する当該設定は省かれてよい。
【0044】
S104における探索ブロック110は、メイン候補ボクセル300Lcとしての大ボクセル300Lに設定された各小ボクセル300S毎に、ダイナミックマップMtと観測データDtとの点群分布を対比する。点群分布の対比により探索ブロック110は、ダイナミックマップMtにおいてマッピング点が存在しない小ボクセル300Sのうち、観測データDtの観測点が少なくとも一つ存在しているサブ候補ボクセル300Scから、図11に示すように当該観測点を候補点Pcに設定する。即ち、サブ候補ボクセル300ScにおいてダイナミックマップMtには対応するマッピング点の存在しない観測点Pnが、全て候補点Pcとして抽出される。
【0045】
S104における探索ブロック110は、図12に示すように、メイン候補ボクセル300Lcとしての大ボクセル300Lにおいてサブ候補ボクセル300Scを除く小ボクセル300Sに対しては、点群分布の違いを定量化した対比をさらに進める。特に本実施形態における点群分布の対比は、例えばMMD(Maximum Mean Discrepancy)による推定値又はマハラノビス距離等の、分布間距離が対比閾値以上となる小ボクセル300Sに存在する観測点を、候補点Pcに設定する。ここで対比閾値は、候補点Pcの抽出信頼性を確保するように、規定される。以上により、マッピング点も観測点も存在する小ボクセル300Sのうち、ダイナミックマップMtのマッピング点とは異なる観測点Pdが、ダイナミックマップMtに存在しない観測点Pnとは区別される候補点Pcとして、抽出される。
【0046】
図4に示す認識フローのS105において探索ブロック110は、S104において候補点Pcは抽出されたか否かを、判定する。その結果、否定判定が下された場合には、認識フローの今回サイクルが終了する。一方、肯定判定が下された場合には、認識フローがS106以降のステップへと進む。S106では、観測データDtにおいてダイナミックマップMtとは乖離した乖離点Peの情報として、S104の探索ブロック110により抽出された候補点Pcの位置情報を、探索ブロック110がリモートセンタ8へと送信する。送信される位置情報は、例えば抽出候補点Pcの変換後位置座標p、抽出候補点Pcを含む小ボクセル300S若しくは分割ボクセル300の頂点座標等のうち、少なくとも一種類を含んでいる。
【0047】
S106の探索ブロック110により位置情報が送信されたリモートセンタ8では、当該送信後となる次回サイクル以降のS101においてマッチングブロック100の取得することになるダイナミックマップMtが、当該位置情報に基づく更新により書き換えられる。このときリモートセンタ8では、図13に示すように抽出候補点Pcの位置情報が、ダイナミックマップMtに重畳して可視化表示されることで、更新処理に関わるオペレータに提示されるとよい。尚、図13は、抽出候補点Pcを含む分割ボクセル300の頂点座標が可視化表示された例を、示している。
【0048】
図4に示す認識フローのS107において監視ブロック120は、S104の探索ブロック110によって候補点Pcの抽出された特定時刻において図14,15に示すように現出する、候補点Pcの実数Nrと予測数Npとの差分ΔNを、監視する。差分ΔNの監視において候補点Pcの実数Nrと対比される予測数Npは、特定時刻よりも前の過去時刻となる、過去複数サイクルの各々において抽出された候補点Pcの実数Nrに基づき、予測される。予測には、例えば線形回帰モデル等が用いられる。
【0049】
図4に示す認識フローのS108において監視ブロック120は、S107により特定時刻に認識された差分ΔNが、許容範囲外となる異常閾値以上であるか否かを、判定する。ここで許容範囲を規定する異常閾値は、ダイナミックマップMt自体の異常と、S104のマッチングブロック100によるダイナミックマップMt及び観測データDtのマッチング異常とを、判別可能に設定される。差分ΔNが許容範囲外との判定は、図14に示すように特定時刻の一点のみで下されてもよいし、図15に示すように特定時刻及び過去時刻の複数点に亘って許容範囲外の差分ΔNが連続した場合に下されてもよい。
【0050】
差分ΔNが許容範囲外であるのに応じて、S108の監視ブロック120により肯定判定が下された場合には、図4に示すように認識フローがS109へ移行する。S109では、候補点Pcの抽出された特定時刻でのホスト車両2の走行情報を含むようにダイナミックマップMtと関連付けた異常通知を、監視ブロック120がリモートセンタ8へと送信する。この異常通知の送信完了により、認識フローの今回サイクルが終了する。尚、S108における監視ブロック120は、情報提示系6を通じて異常通知をホスト車両2の乗員に提示してもよいし、異常通知の記録をタイムスタンプと共にメモリ10に蓄積してもよい。
【0051】
S109の監視ブロック120により異常通知が送信されたリモートセンタ8では、当該送信後となる次回以降サイクルのS101においてマッチングブロック100の取得することになるダイナミックマップMtが、当該異常通知に基づく更新により書き換えられる。このときリモートセンタ8では、図16に示すように異常通知が発生した特定時刻での車両2の走行情報として走行地点を表す地点情報Iが、ダイナミックマップMtに重畳して可視化表示されることで、更新処理に関わるオペレータに提示されるとよい。尚、図16は、複数点に亘って許容範囲外の差分ΔNが連続した場合の地点情報Iが可視化表示された例を、示している。
【0052】
さて、差分ΔNが許容範囲内であるのに応じて、S108の監視ブロック120により否定判定が下された場合には、図4に示すように認識フローがS110へ移行する。S110では、S104の探索ブロック110により抽出された特定時刻での候補点Pcに基づくことで、識別ブロック130が移動物体9を識別する。候補点Pcに基づく移動物体9の識別は、例えばディープラーニング等のニューラルネットワークベースでの学習モデルを用いて実行されてもよい。候補点Pcに基づく移動物体9の識別は、例えばマシンビジョン等のルールベースでの判定アルゴリズムを用いて実行されてもよい。この移動物体9の識別完了により、認識フローの今回サイクルが終了する。尚、S110における識別ブロック130は、移動体9の識別による認識結果をホスト車両2の乗員に提示してもよいし、当該認識結果の記録をタイムスタンプと共にメモリ10に蓄積してもよい。
【0053】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0054】
本実施形態によると、観測空間30に存在する物標をマッピングしたマッピング点群の状態を表す三次元ダイナミックマップMtと、観測空間30においてホスト車両2の観測デバイス3により観測された観測点群の状態を表す三次元観測データDtとが、マッチングされる。そこで観測データDtからは、ダイナミックマップMtに存在しない観測点Pnだけでなく、ダイナミックマップMtのマッピング点とは異なる観測点Pdが、マッチングに基づく移動物体9の候補点Pcとして探索される。これによれば、特にダイナミックマップMtのマッピング点が表す物標に、観測データDtの観測点が表す移動物体9が近接又は重畳していたとしても、移動物体9の候補点PcとしてダイナミックマップMtとは乖離した観測点Pdが抽出され得る。故に、こうした候補点Pcに基づく識別により、移動物体9を高精度に認識することが可能となる。
【0055】
本実施形態によると、観測空間30を複数に分割した各三次元ボクセル300毎に、ダイナミックマップMtと観測データDtとがマッチングされる。そこで、マッチングされた各三次元ボクセル300毎にダイナミックマップMtと観測データDtとの点群分布を対比することによれば、候補点Pcを精確に抽出することができる。故に、移動物体9の高精度認識に貢献することが可能となる。
【0056】
本実施形態によると、大ボクセル300Lとして定義される三次元ボクセル300をさらに分割した、複数の小ボクセル300Sが設定される。そこで、大ボクセル300LにおけるダイナミックマップMtと観測データDtとのマッチング結果に基づくことで、大ボクセル300Lのうち候補点Pcの抽出が予測される候補ボクセル300Lcは、大局的に探索され得る。これによれば、小ボクセル300SにおけるダイナミックマップMtと観測データDtとの点群分布の対比による候補点Pcの抽出を、候補ボクセル300Lcに設定された小ボクセル300Sに局所的に集中させることができる。故に、移動物体9の認識を高精度且つ高効率に実現することが可能となる。
【0057】
本実施形態によると、小ボクセル300SにおいてダイナミックマップMtには存在しない観測点Pnと、小ボクセル300SにおいてダイナミックマップMtのマッピング点とは異なる観測点Pdとが、区別して抽出される。このように小ボクセル300Sに集中した局所的な探索によれば、ダイナミックマップMtのマッピング点が表す物標に、観測データDtの観測点が表す移動物体9が近接又は重畳していたとしても、候補点Pcとしての観測点Pdを精確に抽出することができる。故に、移動物体9の高精度且つ高効率な認識に貢献することが可能となる。
【0058】
本実施形態によると、観測データDtにおいてダイナミックマップMtとは乖離した乖離点Peの情報として、抽出された場合における候補点Pcの位置情報が、ホスト車両2と通信可能なリモートセンタ8へ送信される。そこで位置情報の送信後にリモートセンタ8から、更新されたダイナミックマップMtが取得されることによれば、ダイナミックマップMtとは乖離した観測点Pn,Pdの存在が、マッチング対象のマッピング点として反映され得る。故に、移動物体9の高精度認識に貢献することが可能となる。
【0059】
本実施形態によると、特定時刻における候補点Pcの実数Nrと、特定時刻よりも前の過去時刻における候補点Pcの実数Nrに基づき予測される特定時刻での候補点Pcの予測数Npとの、差分ΔNが監視される。ここで、特定時刻における候補点Pcの実数Nrと予測数Npとの差分ΔNが許容範囲外となる場合には、ダイナミックマップMt自体の異常と、ダイナミックマップMtと観測データDtとのマッチング異常が、想定され得る。そこで逆に、特定時刻における差分ΔNが許容範囲内となる場合には、同時刻での候補点Pcに基づき移動物体9を識別することで、移動物体9の認識精度及び信頼性を高めることが可能となる。
【0060】
本実施形態によると、特定時刻における候補点Pcの実数Nrと予測数Npとの差分ΔNが許容範囲外となる場合に、ダイナミックマップMtと関連付けられた異常通知が、ホスト車両2と通信可能なリモートセンタ8へ送信される。そこで異常通知の送信後にリモートセンタ8から、更新されたダイナミックマップMtが取得されることによれば、マッチング対象となるマッピング点に異常通知の対象状態が反映され得る。故に、移動物体9の高精度認識に貢献することが可能となる。
【0061】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該説明の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0062】
変形例において物体認識システム1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路、及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0063】
変形例における分割ボクセル300は、観測空間30内に各分割ボクセル300間の隙間空間が発生しない限りにおいて、三次元格子状以外の三次元形状に定義されてもよい。変形例における小ボクセル300Sは、大ボクセル300Lとしての分割ボクセル300内に各小ボクセル300S間の隙間空間が発生しない限りにおいて、三次元格子状以外の三次元形状に定義されてもよい。変形例において分割ボクセル300を大ボクセル300Lと定義しての小ボクセル300Sの設定は、S104の探索ブロック110による処理から省かれてもよい。この場合には、点群分布の違いを定量化した対比が大ボクセル300Lに対して実行されるとよい。
【0064】
変形例における平均マッチング度μの演算は、S103のマッチングブロック100による処理から省かれると共に、S104の探索ブロック110による探索に伴って実行されてもよい。変形例における注目ボクセル300Aの抽出は、S103のマッチングブロック100による処理から省かれると共に、S104の探索ブロック110による探索に伴って実行されることで、注目フラグFが付与されなくてもよい。変形例においてマッチング結果に基づく運動状態の推定は、S103のマッチングブロック100による処理から省かれてもよい。この場合に、マッチング結果に基づく運動状態の推定は、認識プログラムとは別のプログラムにより、認識フローとは別のフローに従って実行されてもよい。
【0065】
変形例においてS106の探索ブロック110による位置情報の送信は、省かれてもよい。変形例においてS107の監視ブロック120による差分ΔNの監視は、省かれてもよい。この場合、又は差分ΔNの監視が実行される場合の変形例においてS108の監視ブロック120による異常通知の送信は、省かれてもよい。以上の他、変形例において物体認識システム1の適用されるホスト車両は、例えばリモートセンタ8により走行をリモート制御可能なドローン等であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
2:ホスト車両、3:観測デバイス、8:リモートセンタ、9:移動物体、10:メモリ、12:プロセッサ、30:観測空間、300:三次元ボクセル・分割ボクセル、300L:大ボクセル、300Lc:メイン候補ボクセル、300S:小ボクセル、Dt:三次元観測データ・観測データ、Mt:三次元ダイナミックマップ・ダイナミックマップ、Np:予測数、Nr:実数、Pc:候補点、Pd,Pn:観測点、Pe:乖離点、ΔL:差分
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