(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】処理システム、処理装置、処理方法、処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240228BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G06T7/00 650B
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021115163
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】清水 駿
【審査官】小太刀 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-46762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され
、
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得することを、含む処理システム。
【請求項2】
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の臨界ギャップ(tc)と、前記走行エリアにおける前記ホスト移動体の認識必要時間(ts)とのうち、大側において前記ホスト移動体が移動する移動距離範囲(ΔL)内での前記確率分布を取得することを、含む請求項
1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む請求項1
又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む処理システム。
【請求項5】
前記認識データをフュージョンすることは、
前記走行エリアを複数に分割したメッシュエリア(Am)別の前記認識率を前記存在確率により補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む請求項
3又は4に記載の処理システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
各前記認識モデル毎且つ各前記メッシュエリア別の前記認識スコアを前記フュージョン率により重み付けした加重平均(K)に基づき、自動運転モードでの前記ホスト移動体に対する運行設計領域の制約を設定することを、さらに実行するように構成される請求項
5に記載の処理システム。
【請求項7】
前記認識データをフュージョンすることは、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)である前記認識率を前記確率分布により補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む請求項1
~6のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項8】
前記認識データをフュージョンすることは、
現実に対する認識の不一致度(FP,FN)である前記認識率を前記確率分布により補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む請求項1
~7のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項9】
記憶媒体(10)を有し、
前記プロセッサは、
前記フュージョン率を前記記憶媒体に記憶することを、さらに実行するように構成される請求項1~8のいずれか一項に記載の処理システム。
【請求項10】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎の前記認識率
と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され
、
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得することを、含む処理システム。
【請求項11】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎の前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む処理システム。
【請求項12】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され
、
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得することを、含む処理装置。
【請求項13】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む処理装置。
【請求項14】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎の前記認識率
と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され
、
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得することを、含む処理装置。
【請求項15】
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎の前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む処理装置。
【請求項16】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含
み、
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得することを、含む処理方法。
【請求項17】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含み、
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む処理方法。
【請求項18】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎の前記認識率
と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含
み、
前記確率分布を取得することは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得することを、含む処理方法。
【請求項19】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各前記認識モデル毎の前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含み、
前記認識データをフュージョンすることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化することを、含む処理方法。
【請求項20】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含
み、
前記確率分布を取得させることは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得させることを、含む処理プログラム。
【請求項21】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
前記ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各前記認識モデル毎に前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含み、
前記認識データをフュージョンさせることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化させることを、含む処理プログラム。
【請求項22】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各前記認識モデル毎の前記認識率
と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含
み、
前記確率分布を取得させることは、
前記走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、前記確率分布を取得させることを、含む処理プログラム。
【請求項23】
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト移動体からの距離(Lh)に対して前記ターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、前記ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、前記ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各前記認識モデル毎の前記認識率と前記確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各前記認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含み、
前記認識データをフュージョンさせることは、
前記確率分布において前記距離に依存する存在確率により前記認識率を補正した、各前記認識モデル毎の前記認識スコアに基づき、前記フュージョン率を最適化させることを、含む処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホスト移動体におけるターゲット移動体の認識に関連した、認識関連処理を遂行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される技術は、ホスト移動体としての車両においてターゲット移動体としての歩行者を認識するために、認識モデルとしての辞書を複数利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術は、演算時間を低減するために、最低解像度となる辞書を探索して選択的に利用している。しかし、辞書に対して求められる要求認識性能は、車両の走行エリアに応じて変化するため、最低解像度の辞書に基づく認識だけでは認識精度の確保が困難となるおそれがあった。
【0005】
本開示の課題は、ホスト移動体におけるターゲット移動体の認識精度を確保する処理システムを、提供することにある。本開示の別の課題は、ホスト移動体におけるターゲット移動体の認識精度を確保する処理装置を、提供することにある。本開示のまた別の課題は、ホスト移動体におけるターゲット移動体の認識精度を確保する処理方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、ホスト移動体におけるターゲット移動体の認識精度を確保する処理プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
確率分布を取得することは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得することを、含む。
本開示の第二態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
認識データをフュージョンすることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化することを、含む。
本開示の第三態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
確率分布を取得することは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得することを、含む。
本開示の第四態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理システムであって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
認識データをフュージョンすることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化することを、含む。
【0008】
本開示の第五態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
確率分布を取得することは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得することを、含む。
本開示の第六態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
認識データをフュージョンすることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化することを、含む。
本開示の第七態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
確率分布を取得することは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得することを、含む。
本開示の第八態様は、
プロセッサ(12)を有し、ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行する処理装置であって、
プロセッサは、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、実行するように構成され、
認識データをフュージョンすることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化することを、含む。
【0009】
本開示の第九態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含み、
確率分布を取得することは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得することを、含む。
本開示の第十態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含み、
認識データをフュージョンすることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化することを、含む。
本開示の第十一態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含み、
確率分布を取得することは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得することを、含む。
本開示の第十二態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するためにプロセッサ(12)により実行される処理方法であって、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得することと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得することと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンすることとを、含み、
認識データをフュージョンすることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化することを、含む。
【0010】
本開示の第十三態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含み、
確率分布を取得させることは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得させることを、含む。
本開示の第十四態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
ターゲット移動体を認識する認識率を、複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各認識モデル毎に認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含み、
認識データをフュージョンさせることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化させることを、含む。
本開示の第十五態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含み、
確率分布を取得させることは、
走行エリアにおける移動体の速度分布(Dv)及び加速度分布(Da)に基づき、確率分布を取得させることを、含む。
本開示の第十六態様は、
ホスト移動体(2)におけるターゲット移動体(3)の認識に関連した、認識関連処理を遂行するために記憶媒体(10)に記憶され、プロセッサ(12)に実行させる命令を含む処理プログラムであって、
命令は、
ホスト移動体からの距離(Lh)に対してターゲット移動体が存在する確率分布(Dp)を、ホスト移動体の走行エリア(Ad)に応じて取得させることと、
現実に対する認識の一致度(TP,TN)及び不一致度(FP,FN)のうち、少なくとも一種類である認識率を、ターゲット移動体を認識する複数の認識モデル(Mn)毎に取得させることと、
各認識モデル毎の認識率と確率分布とに相関する、認識スコア(Sn)に基づいたフュージョン率(ωn)に従って、各認識モデルによる認識データをフュージョンさせることとを、含み、
認識データをフュージョンさせることは、
確率分布において距離に依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデル毎の認識スコアに基づき、フュージョン率を最適化させることを、含む。
【0011】
これら第一~第十六態様によると、ホスト移動体からの距離に対してターゲット移動体の存在する確率分布が、ホスト移動体の走行エリアに応じて取得される。そこで第一~第十六態様では、ターゲット移動体を認識する、複数認識モデル毎の認識率と、こうして取得の確率分布とに相関する、認識スコアに基づいたフュージョン率に従って、それら各認識モデルによる認識データがフュージョンされる。これによれば、走行エリアに応じて求められる要求認識性能が変化したとしても、当該変化が確率分布によって反映され得る認識スコアに合わせたフュージョン率に従うことで、適正なフュージョンを実現することができる。故に、ホスト移動体におけるターゲット移動体の認識精度を、確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態の適用されるホスト車両の走行環境を示す模式図である。
【
図3】一実施形態による処理システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態による処理フローを示すフローチャートである。
【
図5】一実施形態による確率分布を説明するためのグラフである。
【
図6】一実施形態による速度分布を説明するためのグラフである。
【
図7】一実施形態による加速度分布を説明するためのグラフである。
【
図8】一実施形態による軌道交差シーンを示す模式図である。
【
図9】一実施形態による軌道交差シーンを示す模式図である。
【
図10】一実施形態による軌道交差シーンを示す模式図である。
【
図11】一実施形態による軌道交差シーンを示す模式図である。
【
図12】一実施形態による軌道交差シーンを示す模式図である。
【
図13】一実施形態による臨界ギャップを示す特性表である。
【
図14】一実施形態による複数の認識モデルを示すブロック図である。
【
図15】一実施形態による認識率を説明するための模式図である。
【
図16】一実施形態による認識率を説明するための特性表である。
【
図17】一実施形態による認識スコアを説明するための特性表である。
【
図18】一実施形態によるフュージョン率の最適化演算を説明するための特性表である。
【
図19】一実施形態による運行設計領域の制約を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
図1に示す一実施形態の処理システム1は、ホスト移動体としての
図2に示すホスト車両2におけるターゲット移動体3の認識に関連した、認識関連処理を遂行する。ホスト車両2を中心とする視点において、ホスト車両2は自車両(ego-vehicle)であるともいえる。ホスト車両2は、乗員の搭乗状態において走行路を走行可能な、例えば自動車等の移動体である。ホスト車両2を中心とする視点において、ターゲット移動体3は他道路ユーザであるともいえる。ターゲット移動体3は、例えば自動車、バイク、自転車、ドローン、歩行者、及び動物等のうち、少なくとも一種類を含む。
【0015】
ホスト車両2においては、運転タスクにおける乗員の手動介入度に応じてレベル分けされる、自動運転モードが与えられる。自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0016】
ホスト車両2には、
図1に示すセンサ系4、通信系5、情報提示系6、及び地図データベース7が搭載される。センサ系4は、処理システム1により利用可能なセンサ情報を、ホスト車両2の外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系4は、外界センサ40及び内界センサ42を含んで構成されている。
【0017】
外界センサ40は、ホスト車両2の周辺環境となる外界から、センサ情報としての外界情報を取得する。外界センサ40は、ホスト車両2の外界に存在する物標を検知することで、外界情報を取得してもよい。物標検知タイプの外界センサ40は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。
【0018】
内界センサ42は、ホスト車両2の内部環境となる内界から、処理システム1により利用可能な内界情報を取得する。内界センサ42は、ホスト車両2の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。物理量検知タイプの内界センサ42は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ42は、ホスト車両2の内界において乗員の特定状態を検知することで、内界情報を取得してもよい。乗員検知タイプの内界センサ42は、例えばドライバーステータスモニター(登録商標)、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0019】
通信系5は、処理システム1により利用可能な通信情報を、無線通信により取得する。通信系5は、ホスト車両2の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から、測位信号を受信してもよい。測位タイプの通信系5は、例えばGNSS受信機等である。通信系5は、ホスト車両2の外界に存在するV2Xシステムとの間において、通信信号を送受信してもよい。V2Xタイプの通信系5は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系5は、ホスト車両2の内界に存在する端末との間において、通信信号を送受信してもよい。端末通信タイプの通信系5は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0020】
情報提示系6は、ホスト車両2の乗員へ向けた報知情報を提示する。情報提示系6は、乗員の視覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。視覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばHUD(Head-Up Display)、MFD(Multi-Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。情報提示系6は、乗員の聴覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。聴覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0021】
地図データベース7は、処理システム1により利用可能な地図情報を、記憶する。地図データベース7は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成されている。地図データベース7は、ホスト車両2の自己位置を含む自己状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図データベース7は、ホスト車両2の走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地図データベース7は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されていてもよい。
【0022】
地図データベース7は、例えばV2Xタイプの通信系5を介した外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、ホスト車両2の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。特に三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されるとよい。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。
【0023】
処理システム1は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系4、通信系5、情報提示系6、及び地図データベース7に接続されている。処理システム1は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0024】
処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の運転を制御する、運転制御ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2の走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、ホスト車両2において情報提示系6による情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。処理システム1を構成する専用コンピュータは、例えばV2Xタイプの通信系5を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構成する、ホスト車両2以外のコンピュータであってもよい。
【0025】
処理システム1を構成する専用コンピュータは、メモリ10及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ10は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0026】
処理システム1においてプロセッサ12は、ホスト車両2における認識関連処理を遂行するためにメモリ10に記憶された、処理プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより処理システム1は、ホスト車両2における認識関連処理を遂行するための機能ブロックを、複数構築する。処理システム1において構築される複数の機能ブロックには、
図3に示すように分布取得ブロック100、認識率取得ブロック110、フュージョンブロック120、及び制約ブロック130が含まれている。
【0027】
これらのブロック100,110の共同により、処理システム1がホスト車両2における認識関連処理を遂行するための処理方法は、
図4に示す処理フローに従って実行される。本処理フローは、ホスト車両2の起動中に繰り返し実行される。尚、本処理フローにおける各「S」は、処理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0028】
処理フローのS101において分布取得ブロック100は、センサ系4、通信系5、及び地図データベース7の取得又は記憶情報に基づき、ホスト車両2の自己位置を含む走行シーンを判断することで、ホスト車両2の走行エリアAd(
図2参照)を特定する。このとき走行エリアAdは、ホスト車両2の横方向の左右と縦方向の前後とにおいて、ホスト車両2がターゲット移動体3を認識する必要のある距離範囲のエリアに、特定される。
【0029】
処理フローのS102において分布取得ブロック100は、
図5に示すように、ホスト車両2からの距離Lhに対してターゲット移動体3が存在する確率分布Dpを、ホスト車両2の走行エリアAdに応じて取得する。
【0030】
具体的にS102の分布取得ブロック100は、走行エリアAdにおいて移動体の取る速度vmが
図6に示すように連続分散、若しくは断続分散(即ち、ヒストグラム分散)する状況を表した速度分布Dvを、センサ系4、通信系5、及び地図データベース7の取得又は記憶情報に基づき取得する。それと共にS102の分布取得ブロック100は、走行エリアAdにおいて移動体の取る加速度amが
図7に示すように連続分散、若しくは断続分散する状況を表した加速度分布Daを、センサ系4、通信系5、及び地図データベース7の取得又は記憶情報に基づき取得する。これら速度分布Dv及び加速度分布Daは、対象とする速度vm若しくは加速度amを取る移動体の頻度として、全体割合又は数を提供する。そこで速度分布Dv及び加速度分布Daは、走行エリアAd毎に特有のデータとして、例えば外部センタに蓄積された最新の交通情報等を用いて取得されるとよい。
【0031】
S102の分布取得ブロック100は、走行エリアAdにおける移動体の臨界ギャップtcと、走行エリアAdにおけるホスト車両2の認識必要時間tsとのうち、数1及び
図5に示すように大側となる一方を上限時間tmとして取得する。
【数1】
【0032】
ここで臨界ギャップtcは、例えば
図8~12に示すように複数移動体の走行軌道が交錯する交差点進入、合流、又は車線変更等の軌道交錯シーンにおいて、走行軌道を変化させる側の移動体が当該軌道変化を実行する確率と、当該軌道変化を見送る確率との、等しくなるギャップを意味する。尚、
図8~12では、走行軌道を変化させる側の移動体がホスト車両2として描かれ、ギャップを形成する側の移動体がターゲット移動体3として描かれている。
【0033】
そこで臨界ギャップtcは、例えば外部センタに蓄積された最新のギャップアクセスタンス情報等を用いて、
図13に例示するように取得されるとよい。また臨界ギャップtcは、ホスト車両2において軌道交錯シーンが想定されていない場合には、0値に強制されるとよい。
【0034】
一方で認識必要時間tsは、走行エリアAdにおいてホスト車両2がターゲット移動体3を認識する必要のある最大時間を、意味する。そこで認識必要時間tsは、例えばホスト車両2における経路計画情報等を用いて、取得されるとよい。また認識必要時間tsは、例えば軌道交錯シーンでは、ホスト車両2が現在から軌道変化を開始するまでの時間等に、設定されるとよい。
【0035】
S102の分布取得ブロック100は、
図5に示すように、現在から上限時間tmの間にホスト車両2が移動する移動距離範囲ΔL内において、走行エリアAdに応じた確率分布Dpを取得する。ここで確率分布Dpは、ホスト車両2からの距離Lhに対してターゲット移動体3が存在する全体割合又は数の分散状況を、示している。即ち確率分布Dpは、距離Lhに依存したターゲット移動体3の存在確率として、分散した全体割合又は数を提供する。そこで確率分布Dpは、上限時間tmを変数とした数2を満たすように、速度分布Dv及び加速度分布Daが合成されることで、取得される。
【数2】
【0036】
図4に示す処理フローのS103において認識率取得ブロック110は、走行エリアAdにおいてターゲット移動体3を認識する認識率を、複数の認識モデルMn毎に取得する。ここで各認識モデルMnは、走行エリアAdでの走行シーンに応じてターゲット移動体3を認識するためのルールモデル(即ち、認識ロジック)又は機械学習モデルとして、
図14に示すようにメモリ10に記憶されている。尚、符号Mnにおけるサフィックスnは、N個の認識モデルMnをそれぞれ識別するためのインデックスとして、1~Nの整数を意味する。
【0037】
具体的に各認識モデルMnは、ホスト車両2の横方向の左右と縦方向の前後とにおいて、
図15に示すように走行エリアAdをそれぞれ複数ずつの矩形格子状に分割したメッシュエリア(即ち、グリッドともいう)Am毎に、認識率を規定している。こうした各メッシュエリアAmの形状は、それらメッシュエリアAm間に隙間エリアが発生しない限りにおいて、矩形格子状以外の形状に設定されてもよい。尚、
図15において各メッシュエリアAm内の数値は、それぞれ認識率を表している。
【0038】
本実施形態の各認識モデルMnにおいてメッシュエリアAm毎に規定される認識率は、
図16に示すように、現実世界と認識とでの一致度TP,TN、及び現実世界と認識とでの不一致度FP,FNのうち、少なくとも一種類を含んでいる。ここで一致度TP(True Psitive)は、現実世界でのターゲット移動体3の存在有りに対して、認識結果が存在有りと一致する、認識成功率である。一致度TN(True Negative)は、現実世界でのターゲット移動体3の存在無しに対して、認識結果が存在無しと一致する、認識成功率である。不一致度FP(False Psitive)は、現実世界でのターゲット移動体3の存在無しに対して、認識結果が存在有りの不一致となる、誤認識率である。不一致度FN(False Negative)は、現実世界でのターゲット移動体3の存在有りに対して、認識結果が存在無しの不一致となる、誤認識率である。
【0039】
図4に示す処理フローのS104においてフュージョンブロック120は、各認識モデルMnによる認識データを、センサ系4、通信系5、及び地図データベース7の取得又は記憶情報に基づき取得する。各認識モデルMnによる認識データは、それぞれターゲット移動体3に関するデータとして、例えば位置、速度、形状、種別、及び認識自信度(即ち、認識信頼度)等のうち、少なくとも一種類を含んで取得される。
【0040】
処理フローのS105においてフュージョンブロック120は、各認識モデルMn毎に認識率と確率分布Dpとに
図17に示すように相関する、認識スコアSnに基づいたフュージョン率ωnに従って、各認識モデルMnによる認識データをフュージョンする。尚、符号Sn,ωnにおけるサフィックスnも、N個の認識モデルMnにそれぞれ対応する認識スコアSn及びフュージョン率ωnを識別するためのインデックスとして、1~Nの整数を意味する。
【0041】
具体的にS105のフュージョンブロック120は、各認識モデルMn毎の認識率を確率分布Dpにより補正することで、それら各認識モデルMn毎の認識スコアSnを取得する。このとき認識スコアSnを取得する補正は、確率分布Dpにおいて距離Lhに依存したターゲット移動体3の存在確率を、
図17の如く各認識モデルMn毎の認識率に乗算することで、実現される。
【0042】
そこで、ホスト車両2からエリア中心位置までの距離Lhが確率分布Dpの移動距離範囲ΔL内となる複数メッシュエリアAmでは、当該距離Lhに対する存在確率の乗算によって各認識モデルMn毎に認識率を補正した、認識スコアSnの取得を実行する。ここで、一致度TP,TN及び不一致度FP,FNのうち複数種類ずつを各認識モデルMn毎の認識率が含む場合、それら各種類別に存在確率が乗算されることになる。一方、一致度TP,TN及び不一致度FP,FNのうち一種類ずつを各認識モデルMn毎の認識率が含む場合、当該一種類に存在確率が乗算されることになる。但し、ホスト車両2からエリア中心位置までの距離Lhが確率分布Dpの移動距離範囲ΔL外となる少なくとも一つのメッシュエリアAmでは、各認識モデルMn毎での認識スコアSnの取得が中止される。
【0043】
S105のフュージョンブロック120は、各認識モデルMn毎に取得した認識スコアSnに基づくことで、それら各認識モデルMn毎のフュージョン率ωnを最適化する。このとき、エリア中心位置までの距離Lhが移動距離範囲ΔL内となる各メッシュエリアAm別の認識スコアSnに関して、それらメッシュエリアAmでの例えば総和値又は平均値等が、各認識モデルMn毎のスコア代表値S^n(後述の
図18参照)として用いられる。尚、符号S^nにおけるサフィックスnも、N個の認識モデルMnにそれぞれ対応するスコア代表値S^nを識別するためのインデックスとして、1~Nの整数を意味する。
【0044】
そこでS105のフュージョンブロック120は、各認識モデルMn毎のスコア代表値S^nを、各認識モデルMn毎のフュージョン率ωnにより重み付けして
図18の加重平均Jを求める、数3を定義する。この定義の下、数3を用いたフュージョン率ωnの最適化演算として、
図18に示す演算C1~C7のうち、いずれかが採用される。
【数3】
【0045】
演算C1は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C1は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)の逆数が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する。
【0046】
演算C2は、不一致度FP,FNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP+FN)の逆数が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C2は、不一致度FP,FNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP+FN)が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する。
【0047】
演算C3は、不一致度FPに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP)の逆数が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C3は、不一致度FPに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP)が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する。
【0048】
演算C4は、不一致度FNに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FN)の逆数が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C4は、不一致度FNに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FN)が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する。
【0049】
演算C5は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)と、不一致度FP,FNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP+FN)の逆数との、総和が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C5は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)の逆数と、不一致度FP,FNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP+FN)との、総和が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する。
【0050】
演算C6は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)と、不一致度FPに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP)の逆数との、総和が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C6は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)の逆数と、不一致度FPに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FP)との、総和が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する。
【0051】
演算C7は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)と、不一致度FNに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FN)の逆数との、総和が最大となるように、フュージョン率ωnを最適化する。あるいは演算C7は、一致度TP,TNにそれぞれ相関する認識スコアSnの和のスコア代表値S^nを用いた加重平均J(TP+TN)の逆数と、不一致度FNに相関する認識スコアSnのスコア代表値S^nを用いた加重平均J(FN)との、総和が最小となるように、フュージョン率ωnを最適化する
【0052】
S105のフュージョンブロック120は、各認識モデルMnによる認識データを、最適化したフュージョン率ωnにより重み付けすることで、統合データへとフュージョンする。このとき、例えば各認識モデルMnによる認識データがターゲット移動体3の位置座標を含む場合、各認識モデルMnによる当該位置座標がフュージョン率ωnにより重み付けされることで、加重平均後の位置座標が統合データとして出力されるとよい。
【0053】
また、例えば各認識モデルMnによる認識データがターゲット移動体3に対する認識自信度及び他種類データを含む場合、当該認識自信度が許容範囲外まで低下した認識モデルMnのフュージョン率ωnは、0値に強制されてもよい。ここで後者の例示において、認識自信度が低下した認識モデルMn以外となる認識モデルMnでは、フュージョン率ωnが正規化されることで、他種類データがフュージョンされるとよい。このように、認識自信度が低い認識モデルMnにより取得の他種類データは、最適化されたフュージョン率ωnに拘らず、統合データへのフュージョンから除外されもよいのである。
【0054】
S105のフュージョンブロック120は、最適化したフュージョン率ωnと、それによってフュージョンした認識データとのうち、少なくとも一方をタイムスタンプと関連付けて、メモリ10に記憶してもよい。S105のフュージョンブロック120は、最適化したフュージョン率ωnと、それによってフュージョンした認識データとのうち、少なくとも一方をタイムスタンプと関連付けた情報として通信系5を通じて外部サーバへと送信することで、当該外部サーバに蓄積させてもよい。S105のフュージョンブロック120は、最適化したフュージョン率ωnによってフュージョンした認識データを、情報提示系6から表示出力させてもよい。
【0055】
図4に示す処理フローのS106において制約ブロック130は、最適化された各認識モデルMn毎のフュージョン率ωnにより、各認識モデルMn毎且つ各メッシュエリアAm別の認識スコアSnを重み付けして
図19の加重平均Kを求める、数4を定義する。この定義の下、S105の制約ブロック130は、自動運転モードでのホスト車両2に対する運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)に関して、制約を加重平均Kに基づき設定する。このとき、一致度TP,TN及び不一致度FP,FNのうち少なくとも一種類に相関する認識スコアSnを用いての加重平均Kが、設定範囲外となっているメッシュエリアAmは、制約対象として
図19に×印を付して例示するように、ODDから外されることになる。
【数4】
【0056】
ここで、一致度TP,TNのうち少なくとも一方に相関する認識スコアSnを用いた加重平均Kは、当該一致度TP,TN側の許容範囲外まで低下した場合に、メッシュエリアAmの制約トリガとなる。一方で、不一致度FP,FNのうち少なくとも一方に相関する認識スコアSnを用いた加重平均Kは、当該不一致度FP,FN側の許容範囲外まで上昇した場合に、メッシュエリアAmの制約トリガとなる。
【0057】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0058】
本実施形態によると、ホスト車両2からの距離Lhに対してターゲット移動体3の存在する確率分布Dpが、ホスト車両2の走行エリアAdに応じて取得される。そこで本実施形態では、ターゲット移動体3を認識する複数認識モデルMn毎に認識率と、こうして取得の確率分布Dpとに相関する、認識スコアSnに基づいたフュージョン率ωnに従って、それら各認識モデルMnによる認識データがフュージョンされる。これによれば、走行エリアAdに応じて求められる要求認識性能が変化したとしても、当該変化が確率分布Dpによって反映され得る認識スコアSnに合わせたフュージョン率ωnに従うことで、適正なフュージョンを実現することができる。故に、ホスト車両2におけるターゲット移動体3の認識精度を、確保することが可能となる。
【0059】
本実施形態によると、走行エリアAdにおける移動体の速度分布Dv及び加速度分布Daに基づくことで、確率分布Dpが取得される。これによれば、走行エリアAdの確率分布Dpを左右する速度分布Dv及び加速度分布Daに応じて要求認識性能が変化したとしても、当該変化の反映され得る認識スコアSnに合わせたフュージョン率ωnにより、適正なフュージョンを実現することができる。故に、ホスト車両2におけるターゲット移動体3の認識精度を、高めることが可能となる。
【0060】
本実施形態によると、走行エリアAdにおける移動体の臨界ギャップtcと、走行エリアAdにおけるホスト車両2の認識必要時間tsとのうち、大側においてホスト車両2が移動する移動距離範囲ΔL内での確率分布Dpが取得される。これによれば、臨界ギャップtc及び認識必要時間tsのうち、安全側での移動距離範囲ΔL内に限定される確率分布Dpに応じて要求認識性能が変化したとしても、当該変化の反映され得る認識スコアSnに合わせたフュージョン率ωnにより、適正なフュージョンを実現することができる。故に、ホスト車両2におけるターゲット移動体3の認識精度を、可及的に短い処理時間にて確保することが可能となる。
【0061】
本実施形態によると、現実に対する認識の一致度TP,TNのうち少なくとも一方である認識率を確率分布Dpによって補正した、各認識モデルMn毎の認識スコアSnに基づくことで、フュージョン率ωnが最適化される。これによれば、フュージョン後において現実に対する認識の一致を担保するように、フュージョン率ωnを最適化することができる。故に、ホスト車両2におけるターゲット移動体3の認識精度を、高精度に確保することが可能となる。
【0062】
本実施形態によると、現実に対する認識の不一致度FP,FNのうち少なくとも一方である認識率を確率分布Dpによって補正した、各認識モデルMn毎の認識スコアSnに基づくことで、フュージョン率ωnが最適化される。これによれば、フュージョン後において現実に対する認識の不一致を低減するように、フュージョン率ωnを最適化することができる。故に、ホスト車両2におけるターゲット移動体3の認識精度を、高精度に確保することが可能となる。
【0063】
本実施形態によると、確率分布Dpにおいてホスト車両2からの距離Lhに依存する存在確率により認識率を補正した、各認識モデルMn毎の認識スコアSnに基づくことで、フュージョン率ωnが最適化される。これによれば、求められる要求認識性能が変化したとしても、走行エリアAdでの距離Lhに応じて当該変化が反映され得る認識スコアSnに合わせたフュージョン率ωnにより、適正なフュージョンを実現することができる。故に、ターゲット移動体3の認識精度を、ホスト車両2の走行エリアAdに亘って確保することが可能となる。
【0064】
本実施形態によると、走行エリアAdを複数に分割したメッシュエリアAm別の認識率を確率分布Dpの存在確率によって補正した、各認識モデルMn毎の認識スコアSnに基づくことで、フュージョン率ωnが最適化される。これによれば、ホスト車両2からの距離Lhに応じた各メッシュエリアAmでの要求認識性能に対して、フュージョン率ωnを緻密に最適化することができる。故に、ホスト車両2の走行エリアAdに亘るターゲット移動体3の認識精度を、高精度且つ短時間に確保することが可能となる。
【0065】
本実施形態によると、各認識モデルMn毎且つ各メッシュエリアAm別の認識スコアSnをフュージョン率ωnによって重み付けした加重平均Kに基づくことで、自動運転モードでのホスト車両2に対するODDの制約が設定される。これによれば、走行エリアAdに応じて求められる要求認識性能が変化したとしても、当該変化の反映され得る認識スコアSn及びフュージョン率ωnに合わせたODDの制約を、自動運転モードのホスト車両2に対して与えることができる。故にホスト車両2では、ターゲット移動体3の認識精度に加え、ODDの設定精度も確保することが可能となる。
【0066】
(他の実施形態)
以上、一実施形態について説明したが、本開示は、当該説明の実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
【0067】
変形例において処理システム1を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0068】
変形例の分布取得ブロック100によるS102では、臨界ギャップtcにおいてホスト車両2が移動する距離範囲に、移動距離範囲ΔLが限定されてもよい。変形例の分布取得ブロック100によるS102では、認識必要時間tsにおいてホスト車両2が移動する距離範囲に、移動距離範囲ΔLが限定されてもよい。変形例の分布取得ブロック100によるS102では、これら変形例以外の固定値に移動距離範囲ΔLが限定されてもよい。変形例の分布取得ブロック100によるS102では、走行エリアAd毎に特有の確率分布Dp自体が、例えば外部センタ等から取得されてもよい。
【0069】
変形例の認識率取得ブロック110によるS103では、走行エリアAdのうちホスト車両2を中心とした少なくとも一部の方位において、距離Lhに対して連続分散する認識率が、各認識モデルMn毎に取得されてもよい。この場合にフュージョンブロック120によるS105では、走行エリアAdのうちホスト車両2を中心とした少なくとも一部の方位において、距離Lhに対して連続分散する認識スコアSnが、各認識モデルMn毎に取得されてもよい。
【0070】
変形例の認識率取得ブロック110によるS103では、各認識モデルMn毎の認識率が、走行エリアAdの全域に亘る共通値として取得されてもよい。この場合にフュージョンブロック120によるS105では、各認識モデルMn毎の認識スコアSnが、走行エリアAdの全域に亘る共通値として取得される。
【0071】
変形例のフュージョンブロック120によるS105では、演算C1~C7のうち複数が組み合わされることで、フュージョン率ωnの最適化が実行されてもよい。変形例において制約ブロック130によるS106は、省かれてもよい。変形例において処理システム1の適用されるホスト移動体は、例えば走行をリモート制御可能なドローン等であってもよい。
【0072】
ここまでの説明形態の他、上述の実施形態及び変形例による処理システム1は、ホスト車両2に搭載の処理装置(例えば処理ECU等)として、実施されてもよい。また、上述の実施形態及び変形例は、処理システム1のプロセッサ12及びメモリ10を少なくとも一つずつ有した半導体装置(例えば半導体チップ等)として、実施されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1:処理システム、2:ホスト車両、3:ターゲット車両、10:メモリ、12:プロセッサ、Ad:走行エリア、Am:メッシュエリア、Da:加速度分布、Dp:確率分布、Dv:速度分布、FP,FN:不一致度、J,K:加重平均、Lh:距離、Mn:認識モデル、Sn:認識スコア、S^n:スコア代表値、TP,TN:一致度、tc:臨界ギャップ、ts:認識必要時間、ΔL:移動距離範囲、ωn:フュージョン率