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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
G01D5/245 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021119396
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015547
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】守屋 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】大山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】石川原 俊夫
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-194033(JP,A)
【文献】特開2007-121256(JP,A)
【文献】特開2008-241369(JP,A)
【文献】特表2013-515234(JP,A)
【文献】特開2002-81903(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041682(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031261(WO,A1)
【文献】特開2017-58169(JP,A)
【文献】実開昭56-95150(JP,U)
【文献】特開2012-108029(JP,A)
【文献】特開2007-198989(JP,A)
【文献】特開2016-212070(JP,A)
【文献】特開2015-38527(JP,A)
【文献】特開2020-153824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0205998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の直線移動を検出するための磁気センサ装置であって、
磁界発生部と、
前記磁界発生部から発生する磁界を検出可能に設けられている磁界検出部と
を備え、
前記磁界検出部は、前記移動体の直線移動に伴い、第1軸に沿って相対的に移動可能に設けられており、
前記第1軸は、前記移動体の移動方向に平行であり、
前記磁界発生部は、第1磁界発生部及び第2磁界発生部を含み、
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、前記第1軸に対して実質的に平行に並列しており、
前記第1磁界発生部の第1磁化方向と平行な第1線分は、前記第1軸に直交する第2軸に対して傾いており、
前記第2磁界発生部の第2磁化方向と平行な第2線分は、前記第2軸に対して傾いており、
前記第1線分と前記第2線分とは、前記第2軸に対して対称に位置し、かつ前記第1軸に向かって開放するように互いに交差する線分であり、
平面視において、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、それぞれ、互いに対向する第1辺及び第2辺と、互いに対向する第3辺及び第4辺とを含む略矩形状であり、
前記第1辺及び前記第2辺は、前記第1軸に実質的に平行であり、
前記第3辺及び前記第4辺は、前記第2軸に実質的に平行であ
ことを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
移動体の直線移動を検出するための磁気センサ装置であって、
磁界発生部と、
前記磁界発生部から発生する磁界を検出可能に設けられている磁界検出部と
を備え、
前記磁界検出部は、前記移動体の直線移動に伴い、第1軸に沿って相対的に移動可能に設けられており、
前記第1軸は、前記移動体の移動方向に平行であり、
前記磁界発生部は、第1磁界発生部及び第2磁界発生部を含み、
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、前記第1軸に実質的に平行な線分上に配置されており、
前記第1磁界発生部の第1磁化方向と平行な第1線分は、前記第1軸に直交する第2軸に対して傾いており、
前記第2磁界発生部の第2磁化方向と平行な第2線分は、前記第2軸に対して傾いており、
前記第1線分と前記第2線分とは、前記第2軸に対して対称に位置し、かつ前記第1軸に向かって開放するように互いに交差する線分であり、
平面視において、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、それぞれ、互いに対向する第1辺及び第2辺と、互いに対向する第3辺及び第4辺とを含む略矩形状であり、
前記第1辺及び前記第2辺は、前記第1軸に実質的に平行であり、
前記第3辺及び前記第4辺は、前記第2軸に実質的に平行であ
ことを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項3】
移動体の直線移動を検出するための磁気センサ装置であって、
磁界発生部と、
前記磁界発生部から発生する磁界を検出可能に設けられている磁界検出部と
を備え、
前記磁界検出部は、前記移動体の直線移動に伴い、第1軸に沿って相対的に移動可能に設けられており、
前記第1軸は、前記移動体の移動方向に平行であり、
前記磁界発生部は、第1磁界発生部及び第2磁界発生部を含み、
前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、前記第1軸に実質的に平行な線分上に配置されており、
前記第1磁界発生部の第1磁化方向と平行な第1線分は、前記第1軸に直交する第2軸に対して傾いており、
前記第2磁界発生部の第2磁化方向と平行な第2線分は、前記第2軸に対して傾いており、
前記第1線分と前記第2線分とは、前記第2軸に対して対称に位置し、かつ前記第1軸に向かって開放するように互いに交差する線分であり、
平面視において、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、それぞれ、互いに対向する第1辺及び第2辺と、互いに対向する第3辺及び第4辺を含む四角形状であり、
前記第1辺及び前記第2辺の少なくとも一方は、前記第1軸に対して傾斜しており、
前記第3辺及び前記第4辺は、前記第2軸に実質的に平行であることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項4】
前記四角形状は、平行四辺形状又は台形状であることを特徴とする請求項に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記第1線分及び前記第2線分は、前記第2軸に対して45°以下の角度で傾いていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記第1線分の前記第2軸に対する傾斜角度と前記第2線分の前記第2軸に対する傾斜角度とは、実質的に同一であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記第1磁界発生部に接続されている第1ヨーク部と、前記第2磁界発生部に接続されている第2ヨーク部とを備えることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記第1ヨーク部と前記第2ヨーク部とが互いに連続していることを特徴とする請求項に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記磁界検出部は、磁界検出素子を含むことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
前記磁界検出素子は、磁気抵抗効果素子であることを特徴とする請求項に記載の磁気センサ装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の磁気センサ装置を備えることを特徴とするペダル操作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途において、物理量(例えば、移動体の直線移動による位置や移動量(変化量)等)を検出するための物理量検出装置(位置検出装置)が用いられている。例えば、自動車のトランスミッションにおけるクラッチ等の位置を検出したり、各種ペダルの踏み込み量を検出したりするために、上記位置検出装置が用いられている。この位置検出装置としては、外部磁場の変化を検出可能な磁気センサと、磁気センサに対する相対的な位置を変化させ得る磁界発生部(例えば磁石)とを備える磁気センサ装置が知られている。磁気センサ装置において、外部磁場の変化に応じたセンサ信号が磁気センサから出力される。
【0003】
磁気センサとしては、被検出磁界を検出する磁気センサ素子が基板上に設けられているものが知られている。磁気センサ素子としては、外部磁場の変化に応じて抵抗が変化する磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子等)等が用いられている。
【0004】
移動体の直線移動による位置や移動量等を検出するための上記磁気センサ装置100は、図19に示すように、例えば、磁気センサ素子を含む磁気センサ120と、磁界発生部としての2つの磁石130,130とを備える。移動体の移動方向に沿って並列する2つの磁石130,130は、移動体とともに移動することで、磁気センサ120に対して2つの磁石130,130の位置が相対的に変位する。これにより、2つの磁石130,130から発生し、磁気センサ120に入力される磁束が変化するため、移動体の位置や移動量を検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5116576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記磁気センサ装置100において、移動体の移動方向に沿って並列する2つの磁石130,130は、当該移動方向に沿って見たときに、互いのN極とS極とを対向させて所定の間隔で配置されている。この磁気センサ装置100において、移動方向に沿って並列した2つの磁石130,130が占める領域(磁界発生部領域)に対し、磁気センサ120により検出できる範囲(検出可能範囲)が決定される。
【0007】
上記磁気センサ装置100において、2つの磁石130,130の着磁方向(磁化方向)が、移動体の移動方向に対して直交しているため、上記検出可能範囲をより大きくするためには、2つの磁石130,130の間隔を広げ、上記磁界発生部領域を相対的に大きくしなければならない。これにより、上記検出可能範囲を大きくすることができるものの、磁気センサ装置100も相対的に大型化してしまう。上記磁界発生部領域を相対的に小さくすることで磁気センサ装置100の小型化を図りつつ、上記検出可能範囲を相対的に大きくすることが要求される。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、磁気センサによる検出可能範囲を相対的に大きくしつつ、かつ相対的に小型化が可能な磁気センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、移動体の直線移動を検出するための磁気センサ装置であって、磁界発生部と、前記磁界発生部から発生する磁界を検出可能に設けられている磁界検出部とを備え、前記磁界検出部は、前記移動体の直線移動に伴い、第1軸に沿って相対的に移動可能に設けられており、前記第1軸は、前記移動体の移動方向に平行であり、前記磁界発生部は、第1磁界発生部及び第2磁界発生部を含み、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、前記第1軸に対して実質的に平行に並列しており、前記第1磁界発生部の第1磁化方向と平行な第1線分は、前記第1軸に直交する第2軸に対して傾いており、前記第2磁界発生部の第2磁化方向と平行な第2線分は、前記第2軸に対して傾いており、前記第1線分と前記第2線分とは、前記第2軸に対して対称に位置し、かつ前記第1軸に向かって開放するように互いに交差する線分であり、平面視において、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、それぞれ、互いに対向する第1辺及び第2辺と、互いに対向する第3辺及び第4辺とを含む略矩形状であり、前記第1辺及び前記第2辺は、前記第1軸に実質的に平行であり、前記第3辺及び前記第4辺は、前記第2軸に実質的に平行であることを特徴とする磁気センサ装置を提供する。
また、本発明は、移動体の直線移動を検出するための磁気センサ装置であって、磁界発生部と、前記磁界発生部から発生する磁界を検出可能に設けられている磁界検出部とを備え、前記磁界検出部は、前記移動体の直線移動に伴い、第1軸に沿って相対的に移動可能に設けられており、前記第1軸は、前記移動体の移動方向に平行であり、前記磁界発生部は、第1磁界発生部及び第2磁界発生部を含み、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、前記第1軸に実質的に平行な線分上に配置されており、前記第1磁界発生部の第1磁化方向と平行な第1線分は、前記第1軸に直交する第2軸に対して傾いており、前記第2磁界発生部の第2磁化方向と平行な第2線分は、前記第2軸に対して傾いており、前記第1線分と前記第2線分とは、前記第2軸に対して対称に位置し、かつ前記第1軸に向かって開放するように互いに交差する線分であり、平面視において、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、それぞれ、互いに対向する第1辺及び第2辺と、互いに対向する第3辺及び第4辺とを含む略矩形状であり、前記第1辺及び前記第2辺は、前記第1軸に実質的に平行であり、前記第3辺及び前記第4辺は、前記第2軸に実質的に平行であることを特徴とする磁気センサ装置を提供する。
【0010】
た、本発明は、移動体の直線移動を検出するための磁気センサ装置であって、磁界発生部と、前記磁界発生部から発生する磁界を検出可能に設けられている磁界検出部とを備え、前記磁界検出部は、前記移動体の直線移動に伴い、第1軸に沿って相対的に移動可能に設けられており、前記第1軸は、前記移動体の移動方向に平行であり、前記磁界発生部は、第1磁界発生部及び第2磁界発生部を含み、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、前記第1軸に実質的に平行な線分上に配置されており、前記第1磁界発生部の第1磁化方向と平行な第1線分は、前記第1軸に直交する第2軸に対して傾いており、前記第2磁界発生部の第2磁化方向と平行な第2線分は、前記第2軸に対して傾いており、前記第1線分と前記第2線分とは、前記第2軸に対して対称に位置し、かつ前記第1軸に向かって開放するように互いに交差する線分であり、平面視において、前記第1磁界発生部及び前記第2磁界発生部は、それぞれ、互いに対向する第1辺及び第2辺と、互いに対向する第3辺及び第4辺を含む四角形状であり、前記第1辺及び前記第2辺の少なくとも一方は、前記第1軸に対して傾斜しており、前記第3辺及び前記第4辺は、前記第2軸に実質的に平行であることを特徴とする磁気センサ装置を提供する
【0011】
上記磁気センサ装置において、前記第1線分及び前記第2線分は、前記第2軸に対して45°以下の角度で傾いていればよく、前記第1線分の前記第2軸に対する傾斜角度と前記第2線分の前記第2軸に対する傾斜角度とは、実質的に同一であってもよい。
【0012】
上記磁気センサ装置において、前記第1磁界発生部に接続されている第1ヨーク部と、前記第2磁界発生部に接続されている第2ヨーク部とを備えていてもよく、前記第1ヨーク部と前記第2ヨーク部とが互いに連続していてもよい。前記磁界検出部は、磁界検出素子を含んでいてもよく、前記磁界検出素子としては、AMR素子、GMR素子又はTMR素子を用いることができる。
また、本発明は、上記磁気センサ装置を備えることを特徴とするペダル操作機構を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、磁気センサによる検出可能範囲を相対的に大きくしつつ、かつ相対的に小型化が可能な磁気センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る磁気センサ装置の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る磁気センサ装置の概略構成を示す平面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における磁界発生部の概略構成を示す平面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図6A図6Aは、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図6B図6Bは、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図7A図7Aは、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図7B図7Bは、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図8図8は、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図9A図9Aは、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図9B図9Bは、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る磁気センサ装置の概略構成を示すブロック図である。
図11図11は、本発明の一実施形態におけるブレーキペダル操作機構の構成を示す概略図である。
図12図12は、本発明の一実施形態における磁界発生部の他の態様の概略構成を示す平面図である。
図13図13は、試験例1~試験例4のシミュレーション結果を示すグラフである。
図14図14は、試験例5~試験例7のシミュレーション結果を示すグラフである。
図15図15は、試験例8~試験例11のシミュレーション結果を示すグラフである。
図16図16は、試験例12~試験例15のシミュレーション結果を示すグラフである。
図17図17は、試験例16~試験例19のシミュレーション結果を示すグラフである。
図18図18は、試験例20~試験例25のシミュレーション結果を示すグラフである。
図19図19は、従来の磁気センサ装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態における磁気センサ装置において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X方向及びY方向」を規定している。ここで、X方向は、第1軸AX1に平行な方向であって、移動体の移動方向に平行な方向であり、Y方向は、第2軸AX2に平行な方向であって、移動体の移動方向に直交する方向である。
【0016】
図1図3に示すように、本実施形態に係る磁気センサ装置1は、磁界検出部としての磁気センサ2と、移動体とともに第1軸AX1に沿って±X方向に移動する磁界発生部3とを備える。本実施形態に係る磁気センサ装置1は、移動体の±X方向への移動量を検出するストロークセンサとして用いられ得る。磁界発生部3は、第1磁界発生部としての第1磁石31と、第2磁界発生部としての第2磁石32とを含む。第1磁石31及び第2磁石32は、第1軸AX1に対して実質的に平行に、所定の間隔G1で並列している。本実施形態において、第1磁石31の+X側の端部と第2磁石32の-X側の端部との間の領域AR(第1軸AX1に沿って両端部に挟まれた領域)を「磁界発生部領域」と称する。
【0017】
第1磁石31及び第2磁石32の平面視形状は、略矩形状であればよい。当該略矩形状は、第1軸AX1に対して実質的に平行な第1辺3A及び第2辺3Bと、第2軸AX2に対して実質的に平行な第3辺3C及び第4辺3Dとを含む。当該「実質的に平行」とは、第1軸AX1に対する第1辺3A及び第2辺3Bのなす角度、並びに第2軸AX2に対する第3辺3C及び第4辺3Dのなす角度が85~95°の範囲内であることを意味する。また、略矩形とは、平面視四角形のすべての角の角度が、85~95°の範囲内であることを意味する。すなわち、第1磁石31及び第2磁石32は、略方体状であればよい。
【0018】
第2軸AX2に沿った第1磁石31の両端部のうち、磁気センサ2の近くに位置する第1端部E311はN極に着磁され、磁気センサ2から遠くに位置する第2端部E312はS極に着磁されている。一方、第2軸AX2に沿った第2磁石32の両端部のうち、磁気センサ2の近くに位置する第1端部E321はS極に着磁され、磁気センサ2から遠くに位置する第2端部E322はN極に着磁されている。すなわち、移動体の移動方向(±X方向)である第1軸AX1に沿って見たときに、互いに異なる磁極を対向させるように第1磁石31及び第2磁石32が並列している。このように並列する第1磁石31及び第2磁石32において、第1磁石31の第1端部E311に位置するN極から第2磁石32の第1端部E321に位置するS極に向かう(-X方向に向かう)磁力線と、第1磁石31の第1端部E311に位置するN極から+X側に向かう磁力線と、-X側から第2磁石32第1端部E321に位置するS極に向かう磁力線とが形成される。
【0019】
第1磁石31の磁化方向M1と平行な第1線分L1は、第2軸AX2に対して所定の角度θで傾いている。同様に、第2磁石32の磁化方向M2と平行な第2線分L2は、第2軸AX2に対して所定の角度θで傾いている。そして、互いに逆方向に傾斜する第1線分L1と第2線分L2とは、第1軸AX1(+Y側)に向かって開放するように互いに交差する。このように、第1線分L1と第2線分L2とが第1軸AX1(+Y側)に向かって開放するように互いに交差することで、後述する実施例からも明らかであるが、検出可能範囲S2を磁界発生部領域ARよりも大きくすることができる。本実施形態に係る磁気センサ装置1は、後述するように、磁気センサ2に印加される磁界の方向の第1軸AX1に対する角度を表す検出値θを生成する。この検出値θとしての角度が0°以上360°未満となる範囲、すなわち±X方向において磁気センサ2が磁界発生部3に対し相対的に移動可能な範囲が、本実施形態における検出可能範囲S2と定義される。
【0020】
第2軸AX2に対する第1線分L1の傾斜角度θは、45°以下であればよい。同様に、第2軸AX2に対する第2線分L2の傾斜角度θは、45°以下であればよい。当該傾斜角度θ,θが45°を超えると、移動体が第1磁石31及び第2磁石32の間の中心Cから±X方向に所定距離移動したときに、移動体が+X方向に移動しているのか-X方向に移動しているのかを正確に検出することができないおそれがある。
【0021】
第1線分L1と第2線分L2とは、第1磁石31及び第2磁石32のX方向における中心点P1を通る第2軸AX2に対して実質的に対称(線対称)に位置する線分であってもよいし、当該第2軸AX2に対して非対称に位置する線分であってもよい。すなわち、傾斜角度θと傾斜角度θとが実質的に同一であってもよいし、異なっていてもよい。傾斜角度θと傾斜角度θとが実質的に同一であると、所定の基準位置(移動体の移動量を0mmと設定可能な位置)から+X方向への移動体の移動量(絶対値)と当該基準位置から-X方向への移動体の移動量(絶対値)とが実質的に同一となる範囲を上記検出可能範囲S2とすることができる。一方で、傾斜角度θと傾斜角度θとが異なっていると、上記+X方向への移動体の移動量(絶対値)と上記-X方向への移動体の移動量(絶対値)とが異なる範囲を上記検出可能範囲S2とすることができる。磁気センサ装置1が用いられるアプリケーションにおける当該磁気センサ装置1の設置位置及び移動体の移動可能スペース等の関係によって、傾斜角度θと傾斜角度θとが実質的に同一である磁気センサ装置1と、両者が異なっている磁気センサ装置1とを使い分けることができる。なお、傾斜角度θと傾斜角度θとが実質的に同一であるとは、両者の差が5°以下であることを意味するものとする。傾斜角度θと傾斜角度θとが異なっている場合において、傾斜角度θと傾斜角度θとの差は90°以下であることが好ましい。
【0022】
なお、第1磁石31及び第2磁石32の平面視形状は、略矩形状に限定されるものではなく、例えば、図4及び図5に示すような平行四辺形状や、図6A図6B図7A及び図7Bに示すような台形状であってもよい。
【0023】
第1磁石31及び第2磁石32の平面視形状が平行四辺形状である場合、図4及び図5に示すように、当該平面視形状は、第1軸AX1に対して所定の角度θで傾斜し、互いに平行である第1辺3A及び第2辺3Bと、第2軸AX2に対して実質的に平行な第3辺3C及び第4辺3Dとを有していればよい。第1磁石31の第1辺3Aと第2磁石32の第1辺3Aとは、各第1辺3Aに対する垂線が磁気センサ2側(+Y側)に開放するように傾斜していてもよいし、磁気センサ2の反対側(-Y側)に開放するように傾斜していてもよい。第1磁石31の第1辺3Aと第2磁石32の第1辺3Aとのそれぞれに対する垂線が、磁気センサ2側(+Y側)に開放するように傾斜していることで、磁気センサ2における検出可能範囲S2をより大きくすることができる。なお、第1磁石31及び第2磁石32の第1辺3Aの傾斜角度θは、特に制限されるものではない。
【0024】
第1磁石31及び第2磁石32の平面視形状が台形状である場合、図6A及び図6Bに示すように、当該平面視形状は、第1軸AX1に対して所定の角度θで傾斜する第1辺3A及び第2辺3Bと、第2軸AX2に対して実質的に平行な第3辺3C及び第4辺3Dとを有していてもよい。また、別の態様として、図7A及び図7Bに示すように、上記平面視形状は、第1軸AX1に対して所定の角度θで傾斜する第1辺3A及び第1軸AX1に実質的に平行な第2辺3Bと、第2軸AX2に対して実質的に平行な第3辺3C及び第4辺3Dとを有してもよい。第1磁石31及び第2磁石32の第1辺3Aの傾斜角度θは、特に制限されるものではない。
【0025】
図8及び図9に示すように、本実施形態における第1磁石31は、S極側(-Y側)に設けられた第1ヨーク部41を有していてもよく、第2磁石32は、N極側(-Y側)に設けられた第2ヨーク部42を有していてもよい。第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42は、例えばNiFe等の磁性材料により構成される。第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42は、互いに連続した一体物であってもよいし(図8参照)、所定の距離で離間していてもよい(図9A及び図9B参照)。第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42が所定の距離で離間している態様において、第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42のX方向の長さが第1磁石31及び第2磁石32のX方向の長さよりも長くてもよいし(図9A参照)、第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42のX方向の長さが第1磁石31及び第2磁石32のX方向の長さと同一であってもよい(図9B参照)。第1磁石31及び第2磁石32の-Y側に第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42が設けられていることで、磁気センサ2の検出可能範囲S2を大きくすることができ、第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42が互いに連続していることで、当該検出可能範囲S2をより大きくすることができる。
【0026】
本実施形態において、第1磁石31及び第2磁石32の間隔(X方向の長さ)は、特に限定されるものではない。本実施形態に係る磁気センサ装置1が用いられるアプリケーション等において要求される検出可能範囲S2、当該磁気センサ装置1に要求される小型化の程度等に応じて適宜設定されればよく、例えば5~50mm程度であればよい。
【0027】
本実施形態において、第1磁石31及び第2磁石32の磁気センサ2側(+Y側)の端面と、磁気センサ2との間隔(Y方向の長さ)であるセンシングギャップG1は、特に限定されるものではない。本実施形態に係る磁気センサ装置1が用いられるアプリケーション等において要求される検出可能範囲S2、当該磁気センサ装置1に要求される小型化の程度等に応じて適宜設定されればよく、例えば3~10mm程度であればよい。
【0028】
図10に示すように、本実施形態に係る磁気センサ装置1は、信号処理部5を備える。信号処理部5は、磁気センサ2から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ-デジタル)変換部51と、A/D変換部51によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理する演算部52とを含む。なお、演算部52にて演算処理された演算処理結果をアナログ信号として出力する場合には、信号処理部5は、演算部52の下流側にD/A(デジタル-アナログ)変換部(図示を省略)をさらに含んでいればよい。
【0029】
信号処理部5は、磁界発生部3から発生し、磁気センサ2に印加される磁界の方向の第1軸AX1に対する角度を表す検出値θを生成する。検出値θは、磁界発生部3の磁気センサ2に対する相対位置と対応関係を有する。
【0030】
本実施形態において、複数の相対位置における検出値θが同じ値になることがないようにしなければならない。本実施形態において、検出値θとしての角度が0°以上360°未満に対応する範囲を検出可能範囲S2としてもよいし、実際に磁気センサ2が生成する検出値θの範囲を0°以上360°未満よりも狭い範囲(例えば、5~355°)に制限して、その制限された検出値θの範囲に対応する相対位置の範囲のみを、検出可能範囲S2としてもよい。これらのことにより、検出値θによって、磁界発生部3の相対位置を一意に特定することができる。
【0031】
本実施形態において、磁気センサ2は、例えば、ホール素子であってもよいし、1つの抵抗部を含むものであってもよいし、複数の抵抗部(例えば第1~第4抵抗部)を含むものであってもよい。複数の抵抗部が含まれる場合、複数の抵抗部によるホイートストンブリッジ回路(第1~第4抵抗部によるフルブリッジ回路、又は第1抵抗部及び第2抵抗部によるハーフブリッジ回路)が構成されていてもよい。抵抗部は、単一の磁気抵抗効果素子(AMR素子、GMR素子、TMR素子等)を含んでいてもよいし、複数の磁気抵抗効果素子を含んでいてもよい。
【0032】
A/D変換部51は、磁気センサ2から出力されるセンサ信号(電流に関するアナログ信号)をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号が演算部52に入力される。演算部52は、A/D変換部51によりアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行う。この演算部52は、例えば、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。
【0033】
本実施形態において、移動体の移動に伴い磁気センサ2に対する磁界発生部3(第1磁石31及び第2磁石32)の相対的な位置が±X方向に変化すると、磁気センサ2に印加される磁場の方向が変化し、それにより磁気センサ2に対する磁界発生部3(第1磁石31及び第2磁石32)の±X方向における相対的な位置に対応するセンサ信号が磁気センサ2から出力される。このセンサ信号を用いて信号処理部5により検出値θが生成される。
【0034】
本実施形態に係る磁気センサ装置1によれば、第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向が第2軸AX2に対して傾斜していることで、磁界発生部領域ARに対して検出可能範囲S2を相対的に大きくすることができる。例えば、磁界発生部領域ARの第1軸AX1に沿った長さを1としたとき、検出可能範囲S2の第1軸AX1に沿った長さを1.5以下とすることができ、1.1~1.5以下とすることができる。したがって、所定の移動量を検出するための磁気センサ装置1として小型化が可能となる。
【0035】
上記実施形態において、磁気センサ装置1は、実質的に直線的に移動する移動体の位置変化を検知する用途に用いることができる。本実施形態に係る磁気センサ装置1は、例えば、トランスミッションのクラッチの位置検出装置や、トランスミッションのシフトの位置検出装置等として用いられ得る他、各種ペダルの踏み込み量を検出するための装置等としても用いられ得る。例えば、図11に示すように、本実施形態に係る磁気センサ装置1は、車両ブレーキペダル等のペダル101及びECU(Eletronic Control Unit)102を備えるブレーキペダル操作機構100において、車両ブレーキペダル101の踏み込み量を検出可能に設けられる。例えば、磁気センサ装置1が車両ブレーキペダル101の踏み込み量を検出することで、ECU102により回生ブレーキの制御が行われる。
【0036】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0037】
上記実施形態において、第2軸AX2に対して所定の角度θ,θで傾斜した磁化方向M1,M2を有する第1磁石31及び第2磁石32が、第3辺3C及び第4辺3Dが第2軸AX2に実質的に平行になるように配置された態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではない。例えば、図12に示すように、第3辺3C及び第4辺3Dに平行な磁化方向M1,M2を有する第1磁石31及び第2磁石32が、第3辺3C及び第4辺3Dが第2軸AX2に対して所定の角度θ,θで傾くように配置されていてもよい。
【0038】
上記実施形態において、磁界発生部3が2つの磁石(第1磁石31及び第2磁石32)を含む態様を例に挙げて説明したが、この態様に限定されるものではない。磁界発生部3は、少なくとも2つの磁石を含んでいればよく、例えば、第1軸AX1に沿って並列する3つの磁石(順に並列する第1磁石31、第3磁石及び第2磁石32)を含むものであってもよい。この場合において、第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2が+Y方向に対して所定の角度θ,θで傾斜している場合、第3磁石の磁化方向は-Y方向に平行であればよく、第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2が-Y方向に対して所定の角度θ,θで傾斜している場合、第3磁石の磁化方向は+Y方向に平行であればよい。
【実施例
【0039】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0040】
〔試験例1〕
図1図3に示す構成を有する磁気センサ装置1(Sample 1)を用い、検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。なお、磁気センサ装置1において、第1磁石31及び第2磁石32の大きさは、X方向の長さを5mm、Y方向の長さを3mm、厚さ(XY平面に直交する方向の長さ)を5mmとした。第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する傾斜角度θ,θをそれぞれ10°とした。センシングギャップG1を5mmとした。結果を図13に示す。
【0041】
〔試験例2〕
図12に示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 2)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図13に示す。
【0042】
〔試験例3〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する傾斜角度θ,θをそれぞれ0°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 3)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図13に示す。
【0043】
〔試験例4〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する傾斜角度θ,θをそれぞれ90°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 4)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図13に示す。
【0044】
図13に示すグラフにおける縦軸は、磁気センサ装置1にて生成される検出値θ(deg)であり、横軸の検出可能範囲S2は、第1磁石31及び第2磁石32のX方向における中心点P1を「0」とし、磁界発生領域ARのX方向長さを「1」としたときにおける磁界発生部3の±X方向の相対移動量の規格値である。
【0045】
図13に示すように、Sample 1、Sample 2の磁気センサ装置1における検出可能範囲S2のX方向長さは、Sample 3、Sample 4の磁気センサ装置1における検出可能範囲S2のX方向長さよりも長い結果となった。Sample 1の磁気センサ装置1は、Sample 3の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを13.8%長くすることができ、Sample 2の磁気センサ装置1は、Sample 3の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを8.1%長くすることができることが判明した。この結果から、第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2を第2軸AX2に対して傾斜させることで、より長い移動量を検出可能であることが確認された。また、Sample 1のように、第1磁石31及び第2磁石32の第3辺3C及び第4辺3Dを第2軸AX2と平行にし、それぞれの磁化方向M1,M2を第2軸AX2に対して傾斜させることで、磁界発生領域ARのX方向長さよりも長い範囲を検出可能範囲S2とすることができることが確認された。
【0046】
〔試験例5〕
図8に示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 5)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図14に示す。
【0047】
〔試験例6〕
図9Aに示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 6)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図14に示す。
【0048】
〔試験例7〕
図9Bに示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 7)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図14に示す。
【0049】
図14に示すグラフにおける縦軸は、磁気センサ装置1にて生成される検出値θB(deg)であり、横軸の検出可能範囲S2は、第1磁石31及び第2磁石32のX方向における中心点P1を「0」とし、磁界発生領域ARのX方向長さを「1」としたときにおける磁界発生部3の±X方向の相対移動量の規格値である。
【0050】
図14に示すグラフから、第1磁石31のS極側に第1ヨーク部41を設け、第2磁石32のS極側に第2ヨーク部42を設けることで、検出可能範囲S2のX方向長さが長くなることが確認された。Sample 5の磁気センサ装置1は、Sample 1の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを67.3%長くすることができ、Sample 6の磁気センサ装置1は、Sample 1の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを11.1%長くすることができることが判明した。特に、Sample 5の磁気センサ装置1のように、第1ヨーク部41及び第2ヨーク部42が連続していることで、検出可能範囲S2のX方向長さを極めて長くすることが可能であることが確認された。
【0051】
〔試験例8〕
図4に示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 8)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図15に示す。
【0052】
〔試験例9〕
図5に示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 9)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図15に示す。
【0053】
〔試験例10〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを0°とした以外は、試験例8(Sample 8)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 10)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図15に示す。
【0054】
〔試験例11〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを0°とした以外は、試験例9(Sample 9)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 11)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図15に示す。
【0055】
図15に示すグラフにおける縦軸は、磁気センサ装置1にて生成される検出値θB(deg)であり、横軸の検出可能範囲S2は、第1磁石31及び第2磁石32のX方向における中心点P1を「0」とし、磁界発生領域ARのX方向長さを「1」としたときにおける磁界発生部3の±X方向の相対移動量の規格値である。
【0056】
図15に示すグラフから、第1磁石31及び第2磁石32の平面視形状が平行四辺形状であっても、それぞれの磁化方向M1,M2を第2軸AX2に対して所定の角度で傾斜させることで、検出可能範囲S2のX方向長さが長くなることが確認された。Sample 8の磁気センサ装置1は、Sample 1の磁気センサ装置に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを7.9%長くすることができ、Sample 9の磁気センサ装置1は、Sample 1の磁気センサ装置に対し、検出可能範囲S2を5.5%長くすることができることが判明した。
【0057】
〔試験例12〕
図6Aに示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 12)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図16に示す。
【0058】
〔試験例13〕
図6Bに示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 13)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図16に示す。
【0059】
〔試験例14〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを0°とした以外は、試験例12(Sample 12)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 14)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図16に示す。
【0060】
〔試験例15〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを0°とした以外は、試験例13(Sample 13)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 15)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図16に示す。
【0061】
〔試験例16〕
図7Aに示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 16)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図17に示す。
【0062】
〔試験例17〕
図7Bに示す構成を有する以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 17)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図17に示す。
【0063】
〔試験例18〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを0°とした以外は、試験例16(Sample 16)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 18)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図17に示す。
【0064】
〔試験例19〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを0°とした以外は、試験例17(Sample 17)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 19)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図17に示す。
【0065】
図16及び図17に示すグラフにおける縦軸は、磁気センサ装置1にて生成される検出値θ(deg)であり、横軸の検出可能範囲S2は、第1磁石31及び第2磁石32のX方向における中心点P1を「0」とし、磁界発生領域ARのX方向長さを「1」としたときにおける磁界発生部3の±X方向の相対移動量の規格値である。
【0066】
図16及び図17に示すグラフから、第1磁石31及び第2磁石32の平面視形状が台形状であっても、それぞれの磁化方向M1,M2を第2軸AX2に対して所定の角度で傾斜させることで、検出可能範囲S2のX方向長さが長くなることが確認された。Sample 12の磁気センサ装置1は、Sample 1の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを5.9%長くすることができ、Sample 13の磁気センサ装置1は、Sample 1の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを7.3%長くすることができ、Sample 16の磁気センサ装置1は、Sample1の磁気センサ装置1に対し、検出可能範囲S2のX方向長さを9.8%長くすることができることが判明した。
【0067】
〔試験例20〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを5°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 20)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図18に示す。
【0068】
〔試験例21〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを20°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 21)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図18に示す。
【0069】
〔試験例22〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを30°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 22)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図18に示す。
【0070】
〔試験例23〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを45°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 23)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図18に示す。
【0071】
〔試験例24〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを60°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 24)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図18に示す。
【0072】
〔試験例25〕
第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の第2軸AX2に対する角度θ,θを75°とした以外は、試験例1(Sample 1)と同様の構成を有する磁気センサ装置1(Sample 25)を用い、試験例1と同様にして検出可能範囲S2のX方向長さをシミュレーションにより求めた。結果を図18に示す。
【0073】
図18に示すグラフにおける縦軸は、磁気センサ装置1にて生成される検出値θ(deg)であり、横軸の検出可能範囲S2は、第1磁石31及び第2磁石32のX方向における中心点P1を「0」とし、磁界発生領域ARのX方向長さを「1」としたときにおける磁界発生部3の±X方向の相対移動量の規格値である。
【0074】
図18に示すように、第1磁石31及び第2磁石32の磁化方向M1,M2の傾斜角度θ,θが45°を超えると、磁気センサ装置1により生成される検出値θによって、磁界発生部3の相対位置を一意に特定することが困難であるということが推測される。
【符号の説明】
【0075】
1…磁気センサ装置
2…磁気センサ
3…磁界発生部
31…第1磁石
32…第2磁石
41…第1ヨーク部
42…第2ヨーク部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19