(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240228BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240228BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20240228BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20240228BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G08G1/00 J
G01B11/30 Z
E01C23/01
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2021150296
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2020569451の分割
【原出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2019014330
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】十文字 奈々
(72)【発明者】
【氏名】塚原 英徳
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-028486(JP,A)
【文献】特開2018-041209(JP,A)
【文献】特開2018-018461(JP,A)
【文献】特開2011-069626(JP,A)
【文献】特開2014-089513(JP,A)
【文献】特開2017-091118(JP,A)
【文献】特開2016-218762(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158262(WO,A1)
【文献】特開2012-189523(JP,A)
【文献】特開2016-90547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 17/00 - G01N 17/04
G01B 11/00 - G01B 11/30
G08G 1/00 - G08G 99/00
E01C 21/00 - E01C 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた撮影装置が夜間に撮影した診断対象となる対象物が写る撮影画像と、前記対象物に照明が当たっているか否かを示す情報である照明情報と、
天候情報とを取得する取得手段と、
前記天候情報が晴れ又は曇りの場合に、前記照明情報に基づいて、前記撮影画像から診断対象となる診断対象画像を抽出する抽出手段と、
前記診断対象画像を用いて前記診断対象画像に含まれる対象物の劣化を診断する劣化診断手段と、
前記診断対象画像に含まれる対象物に劣化がある場合にその劣化種別を示すアイコン画像を劣化位置に表示する地図情報を出力する出力手段
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、劣化の診断に必要な照度条件を満たす撮影画像を診断対象画像として抽出する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記照明情報は、前記移動体に設けられた照度計から取得された照度の値であり、
前記抽出手段は、前記照度の値が所定の範囲に含まれる場合、前記照明情報に関連付けられた撮影画像を診断対象画像として抽出する
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記照明情報は、前記移動体に設けられた照明装置の動作状態に関する情報であり、
前記抽出手段は、前記照明装置が動作している場合、前記照明情報に関連付けられた撮影画像を診断対象画像として抽出する
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記照明情報は、前記移動体の周囲の照明装置の動作状態に関する情報であり、
前記抽出手段は、前記照明装置が点灯している場合、前記照明情報に関連付けられた撮影画像を診断対象画像として抽出する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記照明情報は、前記撮影画像の輝度の情報であり、
前記抽出手段は、前記撮影画像の輝度が所定の範囲に含まれる場合、前記照明情報に関連付けられた撮影画像を診断対象画像として抽出する
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
移動体に設けられた撮影装置が夜間に撮影した診断対象となる対象物が写る撮影画像と、前記対象物に照明が当たっているか否かを示す情報である照明情報と、
天候情報とを取得し、
前記天候情報が晴れ又は曇りの場合に、前記照明情報に基づいて、前記撮影画像から診断対象となる診断対象画像を抽出し、
前記診断対象画像を用いて前記診断対象画像に含まれる対象物の劣化を診断し、
前記診断対象画像に含まれる対象物に劣化がある場合にその劣化種別を示すアイコン画像を劣化位置に表示する地図情報を出力する
情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
移動体に設けられた撮影装置が夜間に撮影した診断対象となる対象物が写る撮影画像と、前記対象物に照明が当たっているか否かを示す情報である照明情報と、
天候情報とを取得し、
前記天候情報が晴れ又は曇りの場合に、前記照明情報に基づいて、前記撮影画像から診断対象となる診断対象画像を抽出し、
前記診断対象画像を用いて前記診断対象画像に含まれる対象物の劣化を診断し、
前記診断対象画像に含まれる対象物に劣化がある場合にその劣化種別を示すアイコン画像を劣化位置に表示する地図情報を出力する
ことを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路の路面や、路側に設置されている案内標識などの公共設備は経年劣化する。行政は経年劣化する公共設備の劣化を診断し劣化した公共設備の整備を行う。このような公共設備の劣化の診断には多大な労力を要する。
【0003】
特許文献1には舗装のひび割れを解析する装置の技術が開示されている。特許文献1の段落0011には、車両のライトで路面を照射することにより、太陽光による影響のない夜間に路面を撮影してひび割れの検出精度を向上させることが記載されている。
また特許文献2には舗装のポットホールの発生を早期に発見するための技術が開示されている。特許文献2の段落0044~0045には、アスファルトの経年劣化の評価において、ひび割れが鮮明に確認できるよう、予め定められた照度環境下である夜間に調査を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-21375号公報
【文献】特開2018-28486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような車両等の移動体の走行する走行路の劣化診断においては、さらに精度良く劣化の有無を判定する必要がある。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決する情報処理装置、情報処理方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、情報処理装置は、移動体に設けられた撮影装置が夜間に撮影した診断対象となる対象物が写る撮影画像と、前記対象物に照明が当たっているか否かを示す情報である照明情報と、を取得する取得手段と、前記照明情報に基づいて、前記撮影画像から診断対象となる診断対象画像を抽出する抽出手段と、前記診断対象画像を用いて前記診断対象画像に含まれる対象物の劣化を診断する劣化診断手段と、前記診断対象画像に含まれる対象物に劣化がある場合にその劣化種別を示すアイコン画像を劣化位置に表示する地図情報を出力する出力手段を備える。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、情報処理方法は、移動体に設けられた撮影装置が夜間に撮影した診断対象となる対象物が写る撮影画像と、前記対象物に照明が当たっているか否かを示す情報である照明情報と、を取得し、前記照明情報に基づいて、前記撮影画像から診断対象となる診断対象画像を抽出し、前記診断対象画像を用いて前記診断対象画像に含まれる対象物の劣化を診断し、前記診断対象画像に含まれる対象物に劣化がある場合にその劣化種別を示すアイコン画像を劣化位置に表示する地図情報を出力する。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、移動体に設けられた撮影装置が夜間に撮影した診断対象となる対象物が写る撮影画像と、前記対象物に照明が当たっているか否かを示す情報である照明情報と、を取得し、前記照明情報に基づいて、前記撮影画像から診断対象となる診断対象画像を抽出し、前記診断対象画像を用いて前記診断対象画像に含まれる対象物の劣化を診断し、前記診断対象画像に含まれる対象物に劣化がある場合にその劣化種別を示すアイコン画像を劣化位置に表示する地図情報を出力することを実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、路面の劣化の有無の判定精度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による劣化診断システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による劣化診断装置のハードウェア構成図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による劣化診断装置の機能ブロックを示す第一の図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態による劣化診断装置の機能ブロックを示す第二の図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態によるドライブレコーダのハードウェア構成を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態によるドライブレコーダに備わる制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態によるドライブレコーダの処理フローを示す第一の図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態によるドライブレコーダの処理フローを示す第二の図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態による劣化診断装置の処理フローを示す第一の図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態による制御装置の機能ブロックを示す第二の図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態による劣化診断装置を示す図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態による劣化診断装置による処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による劣化診断装置1を図面を参照して説明する。
図1は第1の実施形態による劣化診断装置を含む劣化診断システム100の概要を示す図である。
図1で示すように劣化診断システム100は劣化診断装置1とドライブレコーダ2とが無線通信ネットワークや有線通信ネットワークを介して接続されることにより構成される。劣化診断装置1は例えば劣化診断を行う事業者が設置し通信ネットワークに接続したコンピュータサーバ(クラウドサーバ)である。ドライブレコーダ2は複数の移動体にそれぞれ設けられている。
図1では、移動体が車両20である例を用いて説明している。移動体には自動運転車両が含まれてよい。ドライブレコーダ2はカメラを有しており車両20の外部を撮影した撮影画像を劣化診断装置1へ送信する。
【0014】
図2は劣化診断装置1のハードウェア構成図である。
図2が示すように劣化診断装置1はCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、通信モジュール105等の各ハードウェアを備えたコンピュータである。
【0015】
図3は劣化診断装置1の機能ブロックを示す第一の図である。
劣化診断装置1は電源が投入されると起動し、予め記憶する劣化診断プログラムを実行する。これにより劣化診断装置1は、制御部(制御手段)11、取得部(取得手段)12、撮影画像抽出部(撮影画像抽出手段)13、劣化診断部(劣化診断手段)14、診断結果生成部(診断結果生成手段)15、出力部(出力手段)16の各機能を発揮する。
【0016】
制御部11は、劣化診断装置1の各機能部を制御する。
取得部12は、車両20に取り付けられたドライブレコーダ2の撮影した撮影画像や、車両20や他の装置が各種センサによりセンシングして生成したセンシング情報を取得する。センシング情報には、車両の位置情報(緯度、経度)、時刻、照度、照明装置のオンオフの情報、などが含まれる。
【0017】
撮影画像抽出部13は、撮影画像のうち夜間に撮影された撮影画像であって、路面に対して照明が当たる撮影画像を抽出する。すなわち、撮影画像抽出部13は、夜間、かつ、路面に対して照明が当たっている状況で撮影された撮影画像を抽出する。
劣化診断部14は、路面に対して照明が当たっている状況撮影画像を用いて路面の劣化診断を行う。
診断結果生成部15は、劣化診断の結果に基づいて診断結果情報を生成する。
出力部16は、診断結果情報などを所定の出力先に出力する。出力先の一例としては、例えば公共設備の劣化を診断して点検、整備を行う行政の担当者の利用するコンピュータ等であってよい。
【0018】
図4は劣化診断装置1の機能ブロックを示す第二の図である。
上述の撮影画像抽出部13は、第一撮影画像抽出部(第一撮影画像抽出手段)131と、第二撮影画像抽出部(第二撮影画像抽出手段)132の機能を発揮する。
第一撮影画像抽出部131は、ドライブレコーダ2から受信した撮影画像のうち、夜間に撮影された撮影画像を抽出する。より具体的には、第一撮影画像抽出部131は、撮影時刻に基づいて夜間に撮影された撮影画像を抽出する。または第一撮影画像抽出部131は、照度情報に基づいて夜間に撮影された撮影画像を抽出する。または第一撮影画像抽出部131は、車両20に設けられた路面を照らす照明装置の動作状態に基づいて夜間に撮影された撮影画像を抽出する。
第二撮影画像抽出部132は、夜間に撮影された撮影画像のうち路面に対して照明が当っている状況で撮影された撮影画像を抽出する。
【0019】
図5はドライブレコーダ2のハードウェア構成を示す図である。
ドライブレコーダ2は、センサ21、通信装置22、カメラ23、制御装置24、記憶装置25などを含む。
【0020】
センサ21は、GPSセンサ等のセンシング装置である。センサ21は他の情報をセンシングする装置であってよい。例えば、センサ21は、さらにヘッドライトのオンまたはオフの動作状態を検知する装置であってよい。
通信装置22は劣化診断装置1と通信接続する。
カメラ23は車両20の走行する前方の路面を撮影して、その動画像、静止画像を生成する。
制御装置24はドライブレコーダ2の各機能を制御する。
記憶装置25は動画像や静止画像、ドライブレコーダ2の送信したセンシング情報を記憶する。ドライブレコーダ2は基地局等を介して劣化診断装置1と通信接続する。なおドライブレコーダ2の制御装置24は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータである。
【0021】
図6はドライブレコーダ2に備わる制御装置の機能ブロックを示す第一の図である。
制御装置24はドライブレコーダ2が起動すると制御プログラムを実行する。これにより制御装置24は、車両情報取得部(車両情報取得手段)241、位置情報取得部(位置情報取得手段)242、照度情報取得部(照度情報取得手段)243、画像生成部(画像生成手段)245、センシング情報送信部(センシング情報送信手段)246、画像送信部(画像送信手段)248の各機能を発揮する。
【0022】
車両情報取得部241は、ドライブレコーダ2に挿入されたメモリに記録されている車両20に関する情報(運転者ID、車両種別、車両ID)やタイマが出力した時刻情報などを含む車両情報を取得する。車両情報には、ヘッドライトの動作状態(オンまたはオフ)を示す情報が含まれてもよい。
位置情報取得部242は車両の時刻に応じた位置情報(緯度情報、経度情報)の情報をセンサ213などから取得する。
照度情報取得部243は、車両20において車内のフロントガラス近傍に設けられた照度計から得られた照度を取得する。照度計は、センサ21の一態様であり、路面に対して照明が当たっていることを検知するために車両20に設けられている。
【0023】
画像生成部245はカメラ23の撮影によりカメラ23から動画像、静止画像の何れか一つを少なくとも含む画像データを取得し、その画像データに基づいてアップロード用の撮影画像を所定の間隔毎で生成して出力する。画像生成部245は一例としては、所定の生成速度で撮影画像の生成を行う。
センシング情報送信部246は、車両情報や位置情報などのセンシング情報の送信を通信装置22へ指示する。
画像送信部248は画像生成部245の生成した撮影画像の送信を通信装置22へ指示する。
【0024】
上述のような劣化診断システム100において、劣化診断装置1は、路面を走行する移動体に設けられ路面を撮影する撮影装置から撮影画像を取得し、撮影画像のうち夜間に撮影された撮影画像であって、路面に対して照明が当たっている状況で撮影された撮影画像を抽出する。そして劣化診断装置1は、路面に対して照明が当たっている状況で撮影された撮影画像を用いて路面の劣化診断を行う。これにより、劣化診断装置1は、走行路の劣化の有無の判定精度を高めることができる。また劣化診断装置1は、多数の車両20から取得した撮影画像やセンシング情報に基づいて、多くの走行路の劣化状態を判定することができる。
【0025】
図7はドライブレコーダ2の処理フローを示す第一の図である。
次にドライブレコーダ2の処理フローについて順を追って説明する。
まずドライブレコーダ2におけるセンシング情報の送信処理について説明する。
車両の電気系統が起動するとドライブレコーダ2が動作を始動する(ステップS101)。ドライブレコーダ2のセンサ21は、ドライブレコーダ2の始動後に各種センシングを開始する(ステップS102)。またカメラ23は撮影を開始する(ステップS103)。
【0026】
そしてドライブレコーダ2の動作中、制御装置24の車両情報取得部241は車両情報(運転者ID、車両種別、車両ID)を取得する(ステップS104)。また位置情報取得部242はセンサ21から位置情報(緯度情報、経度情報)を所定の時間間隔毎に取得する(ステップS105)。また照度情報取得部243は、照度情報を取得する(ステップS106)。センシング情報送信部246は、車両情報、位置情報(緯度情報、経度情報)、照度情報を取得し、それらの情報と、現在時刻、ドライブレコーダ2のID等を含むセンシング情報を生成する(ステップS107)。センシング情報送信部246はセンシング情報の劣化診断装置1への送信を通信装置22へ要求する。通信装置22はセンシング情報を劣化診断装置1へ送信する(ステップS108)。制御装置24は処理終了かを判定し(ステップS109)、処理終了までステップS102からの処理を繰り返す。
【0027】
図8はドライブレコーダ2の処理フローを示す第二の図である。
次にドライブレコーダ2が撮影画像を劣化診断装置1へ送信する処理について説明する。画像生成部245はカメラ23の撮影によりカメラ23から動画像、静止画像の何れか一つを少なくとも含む画像データを取得する(ステップS301)。画像生成部145は取得した画像データに基づいてアップロード用の撮影画像を所定の間隔毎に生成する(ステップS302)。画像生成部145は生成した撮影画像の送信を画像送信部248に指示する。画像生成部145は撮影画像が示すデータに属性情報として生成時刻(または撮影時刻)、車両の位置情報(緯度情報、経度情報)、ドライブレコーダ2のID(識別子)、運転者ID、等の情報を含めてよい。画像送信部248は通信装置22を介して撮影画像を劣化診断装置1へ送信する(ステップS303)。
【0028】
図9は劣化診断装置1の処理フローを示す第一の図である。
劣化診断装置1において、取得部12は車両20の通信装置22が送信したセンシング情報を、通信モジュール105を介して取得する(ステップS401)。また取得部12は車両20の通信装置22が送信した撮影画像を取得する(ステップS402)。取得部12は、撮影画像を、撮影画像抽出部13へ出力する。また取得部12はセンシング情報を撮影画像抽出部13と劣化診断部14へ出力する。
【0029】
撮影画像抽出部13において、第一撮影画像抽出部131は、センシング情報から照度情報を取得する。第一撮影画像抽出部131は、センシング情報に含まれる時刻情報を取得する。第一撮影画像抽出部131は、時刻情報によって示される時刻が夜間を示す時刻であるかを判定する(ステップS403)。第一撮影画像抽出部131は、時刻情報によって示されるが夜間を示す時刻である場合には、第二撮影画像抽出部132へ処理開始を指示する。夜間とは、日の入りから日の出までの期間であってもよい。日の入りとは、太陽の上縁が西の地平線に接する時であってもよい。日の出とは、太陽の上縁が東の地平線に接する時であってもよい。
【0030】
第二撮影画像抽出部132は、時刻情報によって示される時刻が夜間を示す時刻である場合に、センシング情報に含まれる照度情報を取得する。第二撮影画像抽出部132は、照度情報によって示される照度が、路面に対して照明が当たる環境である場合の照度の範囲に含まれるかを判定する(ステップS404)。この判定は、劣化診断に必要な照度条件を満たすかどうかの判定の一態様である。第二撮影画像抽出部132は、照度情報によって示される照度が、路面に対して照明が当たる環境である場合の照度の範囲に含まれる場合(照度が所定値以上の場合)、その時刻に撮影された撮影画像を抽出する(ステップS405)。すなわち、第二撮影画像抽出部132は、照度情報によって示される照度が、路面に対して照明が当たる環境である場合の照度の範囲に含まれる場合、その照度情報(センシング情報)に関連付けられた撮影画像を抽出する。
【0031】
第二撮影画像抽出部132は、劣化診断に必要な照度条件を満たすかどうかの判定において時刻情報を用いずに、センシング情報から取得した照度情報によって示される照度が、路面に対して照明が当たる環境である場合の照度の範囲に含まれるかを判定する処理を行ってもよい。撮影画像抽出部13は、照度情報がその範囲に含まれる場合に、同様に撮影画像を抽出する。
【0032】
または第二撮影画像抽出部132は、劣化診断に必要な照度条件を満たすかどうかの判定において、路面を照らす照明装置の動作状態の情報を用いてもよい。例えば、照明装置の一態様である車両20のヘッドライトがオンになっていることを示す情報を、例えばヘッドライトのオンオフの状態を含む車両情報を取得する装置が、直接、劣化診断装置1へ送信する。または、照明装置の一態様である車両20のヘッドライトがオンになっていることを示す情報を、そのオンオフを検知するセンサからドライブレコーダ2が取得し、ドライブレコーダ2が車両情報に格納して劣化診断装置1へ送信してもよい。この場合、劣化診断装置1の第二撮影画像抽出部132は、その車両情報に基づいてヘッドライトがオンになっていることを検知する。第二撮影画像抽出部132は、ヘッドライトがオンになっていることを検知すると、その車両情報に含まれる時刻情報と一致、またはその時刻を基準とする所定の時間範囲で前後する時刻情報を含む撮影画像を、ステップS402において取得した撮影画像の中から抽出する。夜間に撮影された撮影画像を抽出する際の照明装置の動作状態として、ヘッドライトのオンであることを条件とする他、さらに/または、ヘッドライトのハイビームがオンであることや、フォグランプがオンであることを条件としてもよい。この場合、車両情報に、ハイビームのオンまたはオフの情報や、フォグランプのオンまたはオフの情報が含まれるものとする。
【0033】
第二撮影画像抽出部132は、劣化診断に必要な照度条件を満たすかどうかの判定において、街路灯の動作状態を用いてもよい。この場合、第二撮影画像抽出部132は、街路灯の動作状態を、他の装置から受信した情報や、撮影画像から検出して、街路灯の動作状態を判定する。例えば劣化診断装置1は、通信接続された街路灯の管理サーバから街路灯の動作状態を含む街路灯管理情報を受信する。街路灯管理情報には、各街路灯の位置情報と、現在の動作状態(点灯、消灯)の少なくとも一つが含まれる。第二撮影画像抽出部132は、街路灯管理情報から各街路灯の位置情報と、現在の動作状態(点灯、消灯)の少なくとも一つの情報を取得する。第二撮影画像抽出部132は、各街路灯の位置情報に基づいて、車両20の現在位置を基準として所定の範囲(半径10mなどの範囲)に街路灯が有る場合には、その街路灯の動作状態を取得する。第二撮影画像抽出部132は街路灯の動作状態が点灯を示す場合、その近傍で取得した撮影画像をステップS402において取得した撮影画像の中から抽出する。または第二撮影画像抽出部132は、街路灯の動作状態を撮影画像から検出する場合、撮影画像に写る街路灯の明かりの点灯または消灯を画像解析により検出して、その結果を用いて、同様に点灯している街路灯の近傍で取得した撮影画像をステップS402において取得した撮影画像の中から抽出する。
【0034】
第二撮影画像抽出部132は、劣化診断に必要な照度条件を満たすかどうかの判定において、撮影画像の輝度を用いて判定を行ってもよい。例えば、第二撮影画像抽出部132は、撮影画像の輝度が、路面に対して照明が当たる環境である場合の撮影画像中の輝度範囲に含まれるかを判定する。撮影画像抽出部13は、撮影画像中の輝度がその範囲に含まれる場合に、同様に撮影画像を抽出する。
【0035】
撮影画像抽出部13はさらに天候に基づいて、劣化診断に適した環境であるかを判定してもよい。この場合、撮影画像抽出部13は、天候情報の配信要求を通信接続された天候情報配信サーバへ送信する。配信要求には撮影画像抽出部13が検出した車両20の位置情報が含まれる。そして天候情報配信サーバは当該要求に基づいて天候情報を劣化診断装置1へ送信する。撮影画像抽出部13は、劣化診断装置1が天候情報配信サーバから受信した天候情報を取得する。撮影画像抽出部13は天候情報が、晴れ、曇りの場合には撮影画像を抽出すると判定する。撮影画像抽出部13は天候情報が、雨、雪の場合には撮影画像の抽出を停止すると判定してよい。
【0036】
そして、撮影画像抽出部13は、抽出した撮影画像を劣化診断部14へ出力する。劣化診断部14は、撮影画像抽出部13から受け取った撮影画像を用いて路面の劣化診断を行う。具体的には、劣化診断部14は、撮影画像抽出部13から受け取った撮影画像に検査対象物の一例である路面が含まれているか否かを判定する(ステップS406)。劣化診断部14は路面が撮影画像に含まれているかを画像のパターンマッチングや機械学習処理、AI(Artificial Intelligence)解析を用いて行う。撮影画像における路面の認識は公知の技術を用いればよい。劣化診断部14は撮影画像において路面が含まれると判定した場合、路面の劣化診断を開始する。
【0037】
劣化診断の具体例について説明する。
劣化診断部14は、撮影画像に写る路面に発生した亀裂により劣化診断を行う場合には、その亀裂の大きさ(長さ、幅、亀裂を含む範囲の撮影画像中の割合)を撮影画像から特定し、その亀裂の大きさに基づいて劣化度を算出する。亀裂の大きさが大きいほど、劣化度は高い。
また劣化診断部14は、撮影画像に写る路面に発生した穴により劣化診断を行う場合には、その穴の大きさ(直径、幅)を撮影画像から特定し、その穴の大きさに基づいて劣化度を算出する。穴の大きさが大きいほど、劣化度は高い。
また劣化診断部14は、撮影画像に写る路面に発生したわだちにより劣化診断を行う場合には、そのわだちの大きさ(長さ、幅)を撮影画像から特定し、そのわだちの大きさに基づいて劣化度を算出する。わだちの大きさが大きいほど、劣化度は高い。
【0038】
劣化診断部14は劣化度が閾値以上であれば劣化していると判定してよい。そして劣化診断部14は、劣化していると判定した場合、その劣化種別(亀裂、穴、わだち)と、劣化位置とを診断結果生成部15へ出力する。診断結果生成部15は、劣化種別(亀裂、穴、わだち)と、劣化位置とを少なくとも含む診断結果情報を生成する(ステップS407)。診断結果情報は、例えば、路面の劣化位置と、その位置における劣化種別を示すアイコン画像とを地図に表示する地図データであってもよい。診断結果生成部15は診断結果情報を出力部16へ出力する(ステップS408)。出力部16は診断結果情報を所定の装置へ出力する。または出力部16は診断結果情報を所定の記憶装置に記録してもよい。劣化診断装置1は上述の処理を繰り返す。
【0039】
以上の処理によれば、劣化診断装置1は、劣化診断に必要な照度条件を満たした撮影画像を用いて路面の劣化診断を行うことができる。例えば劣化診断装置1は、照度が低すぎることにより劣化診断に必要な照度条件を満たさない撮影画像を、劣化診断に利用しないことで、走行路の劣化の有無の判定精度を高めることができる。
【0040】
昼間の太陽光の照射強度の強い時間帯の路面の撮影画像を用いる場合、その路面には電線の細い影などが投影されることで、劣化診断装置1がその細い影を、亀裂と誤って認識する可能性が有る。上述の処理によれば、劣化診断装置1は夜間の撮影画像を用いることで、撮影画像に写る影による誤った劣化診断を低減することができる。
【0041】
図10はドライブレコーダ2に備わる制御装置の機能ブロックを示す第二の図である。
上述の説明においては、劣化診断装置1が撮影画像の抽出処理、劣化診断処理、診断結果情報の生成処理を行う場合について説明したが、これらの処理はドライブレコーダ2で行われてもよい。この場合、ドライブレコーダ2が劣化診断装置1となる。ドライブレコーダ2が劣化診断装置1として機能する場合、ドライブレコーダ2の制御装置24は、センシング情報出力部(センシング情報出力手段)250、画像取得部(画像取得手段)251、撮影画像抽出部(撮影画像抽出手段)252、劣化診断部(劣化診断手段)253、診断結果生成部(診断結果生成手段)254の機能を発揮する。そしてドライブレコーダ2の制御装置24において、センシング情報出力部250がセンシング情報を撮影画像抽出部252へ出力し、画像取得部251が撮影画像を撮影画像抽出部252へ出力する。そして、
図1~
図9を参照して説明した劣化診断装置1と同様、制御装置24の撮影画像抽出部252が撮影画像の抽出処理を行い、劣化診断部253が劣化診断処理を同様に行い、診断結果生成部254が診断結果情報の生成処理を同様に行う。そして診断結果生成部254は、生成した診断結果情報を、通信装置22を用いて所定の外部装置へ送信する。
【0042】
図11は第2の実施形態による劣化診断装置1を示す図である。
図12は第2の実施形態による劣化診断装置1による処理フローを示す図である。
図11が示すように劣化診断装置1は少なくとも、撮影画像取得部111と、撮影画像抽出部112、劣化診断部113の機能を発揮する。
撮影画像取得部111は、路面を走行する移動体に設けられ路面を撮影するカメラ23から撮影画像を取得する(ステップS501)。
撮影画像抽出部112は、撮影画像のうち夜間に撮影された撮影画像であって、路面に対して照明が当たっている状況で撮影された撮影画像を抽出する(ステップS502)。
劣化診断部113は、路面に対して照明が当たっている状況で撮影された撮影画像を用いて路面の劣化診断を行う(ステップS503)。
【0043】
上述の劣化診断装置1やドライブレコーダ2の制御装置24や端末装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。
【0044】
上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0045】
この出願は、2019年1月30日に出願された日本国特願2019-014330を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、劣化診断装置、劣化診断システム、劣化診断方法、記録媒体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1・・・劣化診断装置
2・・・ドライブレコーダ
11・・・制御部
12・・・取得部
14・・・劣化診断部
13・・・撮影画像抽出部
15・・・診断結果生成部
16・・・出力部
21・・・センサ
22・・・通信装置
23・・・カメラ
24・・・制御装置
25・・・記憶装置
131・・・第一撮影画像抽出部
132・・・第二撮影画像抽出部
241・・・車両情報取得部
242・・・位置情報取得部
243・・・照度情報取得部
245・・・画像生成部
246・・・センシング情報送信部
248・・・画像送信部
250・・・センシング情報出力部
251・・・画像取得部
252・・・撮影画像抽出部
253・・・劣化診断部
254・・・診断結果生成部