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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20240228BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20240228BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20240228BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
H01Q17/00
H01Q1/52
H01Q21/06
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2021166774
(22)【出願日】2021-10-11
(62)【分割の表示】P 2020004388の分割
【原出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2022000998
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】青木 公甫
(72)【発明者】
【氏名】沼田 達宏
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/006815(US,A1)
【文献】特開2010-081716(JP,A)
【文献】特開2000-307494(JP,A)
【文献】特開平09-051293(JP,A)
【文献】特表2020-510956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 17/00
H01Q 1/52
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(10)と、
前記筐体内に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
監視装置(40)と、を有する電池パック(104)において、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記筐体内に配置されたアンテナ(46,36)を備え、
前記監視装置は、前記監視装置の前記アンテナ(46)と各前記取得装置の前記アンテナ(36)との間で無線通信をして前記電池情報を取得し、
前記監視装置の前記アンテナと少なくとも所定の前記取得装置の前記アンテナとは、互いに相手方が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されており、
前記筐体内に、電波を反射させる反射部(50)が設けられており、前記監視装置の前記アンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記所定の取得装置の前記アンテナに届き、前記所定の取得装置の前記アンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記監視装置の前記アンテナに届く、電池パック。
【請求項2】
筐体(10)と、
前記筐体内に設置されている複数の電池セル(22)と、
前記電池セルに設置されており、自身に対応する前記電池セルから当該電池セルに関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
監視装置(40)と、を有する電池パック(104)において、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記筐体内に配置されたアンテナ(46,36)を備え、
前記監視装置は、前記監視装置の前記アンテナ(46)と各前記取得装置の前記アンテナ(36)との間で無線通信をして前記電池情報を取得し、
前記監視装置の前記アンテナと少なくとも所定の前記取得装置の前記アンテナとは、互いに相手方が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されており、
前記筐体内に、電波を反射させる反射部(50)が設けられており、前記監視装置の前記アンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記所定の取得装置の前記アンテナに届き、前記所定の取得装置の前記アンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記監視装置の前記アンテナに届く、電池パック。
【請求項3】
前記筐体は、底部および前記底部と対向する天井面(10)を備え、
複数の前記組電池は、前記筐体内における前記底部に設置されており、
前記取得装置の前記アンテナは、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収される、請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記監視装置の前記アンテナは、前記組電池の側壁と前記筐体の側壁との間に配置されている、請求項1又はに記載の電池パック。
【請求項5】
前記監視装置の下端部は、複数の前記組電池の上面(23)よりも下方に位置している、請求項1,3,4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記監視装置の上端部は、複数の前記組電池の上面(23)よりも下方に位置している、請求項1,3~5のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項7】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
前記筐体内において各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され
前記監視装置の前記アンテナは、複数の前記組電池の上面(23)よりも下方に位置している、電池パック。
【請求項8】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
前記筐体内において各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され、
前記監視装置の前記アンテナと前記取得装置の前記アンテナとの間に導電体が存在している、電池パック。
【請求項9】
前記監視装置は、前記筐体の内面と接して配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項10】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
前記筐体内において各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され、
前記監視装置の前記アンテナと前記取得装置の前記アンテナとの間に前記組電池が存在している、電池パック。
【請求項11】
前記吸収部は、前記監視装置の前記アンテナ又は前記取得装置の前記アンテナと対向する位置に配置されている、請求項に記載の電池パック。
【請求項12】
前記筐体は、底部および前記底部と対向する天井面(10)を備え、
複数の前記組電池は、前記筐体内における前記底部に設置され、
前記筐体内の前記天井面における所定部以外の部分に、電波を吸収する吸収部(60)が設けられており、前記所定部が前記反射部を構成している、請求項に記載の電池パック。
【請求項13】
複数の前記組電池は、所定方向に並んで設置されており、
前記所定方向における前記反射部の長さは、前記所定方向における各前記取得装置の長さよりも長い、請求項12に記載の電池パック。
【請求項14】
前記筐体は、底部および前記底部と対向する天井面(10)を備え、
前記監視装置の前記アンテナと前記反射部とは、上下方向において異なる位置に配置されている、請求項に記載の電池パック。
【請求項15】
前記筐体は、底部および前記底部と対向する天井面(10)を備え、
前記取得装置の前記アンテナと前記反射部とは、上下方向において異なる位置に配置されている、請求項に記載の電池パック。
【請求項16】
各前記取得装置の前記アンテナは、前記取得装置の側方に突出するように設けられている、請求項1~15のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項17】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
前記筐体内において各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され、
複数の前記組電池は、所定方向に並んで設置されており、
各前記取得装置の前記アンテナと前記監視装置の前記アンテナとは、前記所定方向において離間しており、
前記監視装置の前記アンテナの上方に前記吸収部が配置されている、電池パック。
【請求項18】
各前記取得装置の前記アンテナと前記監視装置の前記アンテナとは、上下方向において異なる位置に配置されている、請求項17に記載の電池パック。
【請求項19】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され
前記監視装置の前記アンテナは、複数の前記組電池の上面(23)よりも下方に位置している、電池パック。
【請求項20】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され、
前記監視装置の前記アンテナと前記取得装置の前記アンテナとの間に導電体が存在している、電池パック。
【請求項21】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され、
前記監視装置の前記アンテナと前記取得装置の前記アンテナとの間に前記組電池が存在している、電池パック。
【請求項22】
底部および前記底部と対向する天井面(10)を備える筐体(10)と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池(20)と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、
各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記取得装置の前記アンテナ(36)は、前記組電池の上面(23)と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収され、
複数の前記組電池は、所定方向に並んで設置されており、
各前記取得装置の前記アンテナと前記監視装置の前記アンテナとは、前記所定方向において離間しており、
前記監視装置の前記アンテナの上方に前記吸収部が配置されている、電池パック。
【請求項23】
各前記取得装置の前記アンテナと前記監視装置の前記アンテナとは、上下方向において異なる位置に配置されており、
前記監視装置の前記アンテナの上方に前記吸収部が配置されている、請求項に記載の電池パック。
【請求項24】
複数の前記組電池は、所定方向に並んで設置されており、
前記監視装置の前記アンテナを通ってかつ水平方向に延びる面からずれた位置に各前記取得装置の前記アンテナが配置されており、
前記監視装置の前記アンテナの上方に前記吸収部が配置されている、請求項に記載の電池パック。
【請求項25】
前記監視装置の前記アンテナ(46)は、前記上面と前記天井面との間に設けられており、
前記監視装置の前記アンテナを上下方向から見た場合において、前記監視装置の前記アンテナと重なる位置に前記吸収部が配置されている、請求項3,17,18,23,24のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項26】
前記監視装置の前記アンテナの数は、各前記取得装置の前記アンテナの数よりも少ない、請求項3,17,18,23~25のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項27】
前記吸収部の厚みが、前記筐体の内面から外面までの厚みよりも小さくなっており、
前記吸収部は、前記取得装置の前記アンテナと対向する位置に配置されている、請求項に記載の電池パック。
【請求項28】
前記筐体は、前記底部から上下方向に延びる側壁部を備え、
前記監視装置は、前記側壁部に設けられており、
前記吸収部の少なくとも一部は、前記天井面に設けられている、請求項に記載の電池パック。
【請求項29】
前記側壁部には前記吸収部が設けられていない、請求項28に記載の電池パック。
【請求項30】
前記天井面のうち水平方向における端部には前記吸収部が設けられていない、請求項3,28,29のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項31】
前記筐体における前記吸収部が設置されていない部分の少なくとも一部は、導電体製である、請求項3,28~30のいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の組電池を有する電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックの中には、次のように構成されたものがある。電池パックは、金属製の筐体と、その筐体内に設置されている複数の組電池と複数の取得装置と監視装置とを有する。取得装置は、組電池毎に設置されており、自身に対応する組電池から電池情報を取得する。監視装置は、各取得装置と無線通信をして電池情報を取得する。
【0003】
監視装置及び各取得装置は、無線通信用のアンテナを備える。それらのアンテナから発信される電波は、金属製の筐体の内面で反射することで多数の反射波が生成される。そのため、受信側のアンテナに複数の電波が重畳することがある。その重畳による電波干渉により通信障害が生じて、無線通信が成立しなくなったり通信途絶が発生したりすることがある。
【0004】
そして、電波干渉による通信障害の大小は、通信周波数により変化する。そのため、ある通信周波数において、通信不成立や通信途絶が発生した場合、通信周波数を変更して無線通信を行う。そして、このような技術を示す文献としては、次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6228552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
筐体内において、監視装置のアンテナと、複数の取得装置のうち少なくとも所定の取得装置のアンテナとは、互いに相手側が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されることがある
【0007】
本発明は、監視装置のアンテナと、所定の取得装置のアンテナとが、互いに相手側が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されている場合において、監視装置のアンテナと所定の取得装置のアンテナとの間の無線通信を行うことができる電池パックを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、筐体と、
前記筐体内に設置されている複数の組電池と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置と、
監視装置と、を有する電池パックにおいて、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記筐体内に配置されたアンテナを備え、
前記監視装置は、前記監視装置の前記アンテナと各前記取得装置の前記アンテナとの間で無線通信をして前記電池情報を取得し、
前記監視装置の前記アンテナと少なくとも所定の前記取得装置の前記アンテナとは、互いに相手方が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されており、
前記筐体内に、電波を反射させる反射部が設けられており、前記監視装置の前記アンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記所定の取得装置の前記アンテナに届き、前記所定の取得装置の前記アンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記監視装置の前記アンテナに届く。
第1の発明によれば、監視装置のアンテナと所定の取得装置のアンテナとが、互いに相手方が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されている場合において、監視装置のアンテナと所定の取得装置のアンテナとの間の無線通信を行うことができる。
第2の発明は、底部および前記底部と対向する天井面を備える筐体と、
前記筐体内における前記底部に設置されている複数の組電池と、
前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置と、
各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナを備える、電池パックに関する。
前記取得装置の前記アンテナは、前記組電池の上面と前記天井面との間に設けられており、
前記天井面と前記上面との間の距離は、前記上面と前記底部との間の距離よりも小さくなっており、
前記上面と前記天井面との間に、電波を吸収する吸収部が設置されており、前記アンテナから発信された電波の一部が前記吸収部により吸収される。
上記の通信周波数を変更する技術によれば、通信周波数を変更することにより、無線通信を成立させることはできる。しかしながら、通信不成立や通信途絶の発生自体を抑制するものではない。そのため、通信不成立や通信途絶が頻発して、その都度、通信周波数の変更に迫られる、といった状況等が起こり得る。そして、このように通信不成立や通信途絶が頻発すれば、データの更新頻度が下がる。そのため、このような通信システムは、電池パック等のリアルタイム性を重視する装置に対しては、適さないものとなってしまう。
第2の発明によれば、電池パックにおける無線通信において、電波干渉による通信障害を抑制できる。
【0009】
なお、電池パックとしては、例えば以下のような構成をとることができる。
第1の構成は、筐体(10)と、前記筐体内に設置されている複数の組電池(20)と、前記組電池毎に設置されており、自身に対応する前記組電池から当該組電池に関する情報である電池情報を取得する取得装置(30)と、前記筐体内において各前記取得装置と無線通信をして前記電池情報を取得する監視装置(40)と、を有し、
前記監視装置及び各前記取得装置は、それぞれ前記無線通信のためのアンテナ(46,36)を備える、電池パック(101~106)において、
前記筐体及びその内側のうちの少なくとも一方に、電波を吸収する吸収部(60)が設置されており、前記アンテナから発信された電波(W)の一部が前記吸収部により吸収される。
第2の構成では、第1の構成において、前記筐体における前記吸収部が設置されていない部分の少なくとも一部は、導電体製である。
第3の構成では、第1又は第2の構成において、各前記取得装置のアンテナは、自身に対応する前記組電池の外面(23)又は当該組電池に取り付けられている部材の外面(33)である所定面と、前記筐体の内面における前記所定面に対向する部分である対向面(13)との間に設置されており、
前記所定面及び前記対向面は導電体製であり、前記所定面及び前記対向面のうちの少なくとも一方に、前記吸収部が設置されている。
第4の構成では、第1~第3のいずれか1つの構成において、前記筐体内において、前記組電池、前記取得装置及び前記監視装置のうちの少なくとも1つは、導電体製の外面を有し、前記導電体製の外面のうちの少なくとも1つに前記吸収部が設置されている。
第5の構成では、第1~第4のいずれか1つの構成において、前記監視装置のアンテナと少なくとも所定の前記取得装置のアンテナとは、互いに相手方が発信した電波における反射していない直接波が届かない位置に配置されており、
前記筐体内に、電波を反射させる反射部(50)が設けられており、前記監視装置のアンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記所定の取得装置のアンテナに届き、前記所定の取得装置のアンテナから発信された電波における前記反射部で反射した反射波が、前記監視装置のアンテナに届く。
第6の構成では、第5の構成において、前記監視装置のアンテナから発信された電波における一の前記反射部でのみ反射した1回反射波が、前記所定の取得装置のアンテナに届き、前記所定の取得装置のアンテナから発信された電波における一の前記反射部でのみ反射した1回反射波が、前記監視装置のアンテナに届く。
第7の構成では、第5又は第6の構成において、前記筐体の少なくとも一部は導電体製であり、前記導電体製の部分における前記筐体の内面の所定部以外の部分に、前記吸収部が設置されており、前記所定部が前記反射部を構成している。
第8の構成では、第2~第4のいずれか1つの構成において、前記吸収部が、前記監視装置のアンテナ及び前記取得装置の各アンテナを3次元的に囲むように、前記筐体の全体に設置されている。
第9の構成では、第1又は第2の構成において、前記筐体の一部(10a)は導電体製であり、前記筐体の他の一部(10b)は非導電体製であり、少なくとも前記筐体における前記非導電体製の部分に、前記吸収部が設置されている。
第10の構成では、第9の構成において、前記監視装置のアンテナ及び前記取得装置の各アンテナは、前記筐体における導電体製の部分及び前記吸収部により3次元的に囲まれている。
第11の構成では、第1~第10のいずれか1つの構成において、前記筐体の少なくとも一部は、非導電体製であり、少なくとも前記非導電体製の部分における前記筐体の外面又は肉厚内部に、前記吸収部が設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の電池パックを示す正面断面図
図2】比較例における通信を示す正面断面図
図3】本実施形態における通信を示す正面断面図
図4】第2実施形態の電池パックを示す正面断面図
図5】第3実施形値の電池パックを示す正面断面図
図6】第4実施形値の電池パックを示す正面断面図
図7】第5実施形値の電池パックを示す正面断面図
図8】第6実施形値の電池パックを示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の電池パック101を示す正面断面図である。電池パック101は、車両等に搭載されている。電池パック101は、筐体10と、筐体10内に設置されている複数の組電池20及び複数の取得装置30と、監視装置40とを有する。各取得装置30及び監視装置40は、各組電池20を監視する電池監視システムを構成している。
【0013】
筐体10は、金属等の導電体製である。また、組電池20、取得装置30及び監視装置40の外面も、金属等の導電体製である。よって、筐体10の内面及び外面、並びに組電池20、取得装置30及び監視装置40の外面は、電波Wを反射させる、すなわち電波シールド性を有する。
【0014】
以下では、図に合わせて、互いに直交し合う所定の3方向を、それぞれ「左右方向X」「前後方向Y」「上下方向Z」という。ただし、例えば、以下でいう「上下方向Z」を左右や前後にして設置したり、以下でいう「左右方向X」を前後にして設置したりする等、電池パック101は任意の方向に設置できる。
【0015】
複数の組電池20は、左右方向Xに並設されている。そして、各組電池20は、複数の電池セル22を前後方向Yに並べて有している。それら複数の電池セル22は、電気的に直列に接続されている。
【0016】
複数の取得装置30は、組電池20毎に設置されている。具体的には、各取得装置30は、自身に対応する組電池20の上面23に設置されている。そして、各取得装置30は、自身に対応する組電池20から、当該組電池20に関する情報である電池情報を取得する。その電池情報は、例えば、当該組電池20が有する複数の各電池セル22の電圧情報及び温度情報や、当該組電池20に流れる電流情報等を含む。各取得装置30は、筐体10内において、監視装置40と無線通信するための子機アンテナ36を有する。その子機アンテナ36は、本実施形態では、自身に対応する取得装置30の上面から上方に突出している。それにより、各子機アンテナ36が、自身に対応する取得装置30の上面33と、筐体10の天井面13との間に設置されている。
【0017】
監視装置40は、筐体10の右側壁に取り付けられている。その監視装置40は、上位ECU(図示略)に無線又は有線により通信可能に接続されている。また、監視装置40は、筐体10内において、各子機アンテナ36と無線通信をするための親機アンテナ46を有する。監視装置40はその無線通信により、取得装置30に電池情報を取得させる取得指令を送信したり、各取得装置30から電池情報を受信したり、取得装置30に各電池セル22の電圧を均等化させる均等化指令を送信したりする。
【0018】
筐体10は、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36を3次元的に囲む箱型の形状をしている。ただし、本明細書でいう「3次元的に囲む」とは、互いに直交し合う所定の3つの各方向のプラス側及びマイナス側からなる6つの方向を「6方向」として、囲まれる対象の6方向側に、囲む対象があること、すなわち、ここでは、各アンテナ46,36の6方向側に、筐体10があることをいう。よって、筐体10に、例えばネジ穴や通気口やコネクタ挿通孔等の開口部があってもよいし、その他の隙間があってもよい。
【0019】
以下では、アンテナ46,36から発信されてから一度も反射していない電波を「直接波」といい、一度でも反射した電波を「反射波」という。筐体10内において、親機アンテナ46は、右端の組電池20よりも右方における組電池20の上面23よりも上方に設置されている。そのため、親機アンテナ46は、自身の直接波を各子機アンテナ36に送信することができ、各子機アンテナ36は、自身の直接波を親機アンテナ46に送信することができる。
【0020】
組電池20の上面23と筐体10の天井面13との上下方向Zの間隔や、取得装置30の上面33と筐体10の天井面13との上下方向Zの間隔は狭く、具体的には、それらの各間隔は、例えば3cm以下であったり、2cm以下であったり、1cm以下であったりする。そのため、当該間隔で、電波Wの乱反射が発生し易い。そのため、筐体10の天井面13には、電波吸収材からなる吸収部60が設置されている。
【0021】
その吸収部60は、例えば、筐体10の天井面13に塗布された粉体や液体の電波吸収材であってもよいし、筐体10の天井面13に貼り付けられたシート状の電波吸収材であってもよい。また例えば、吸収部60は、天井部に電波吸収作用のある物質を含有させて成形した筐体10の当該天井部であってもよいし、天井面13が電波を吸収する吸収形状である筐体10の当該天井面13であってもよい。より具体的には、吸収部60は、例えば、通電性繊維であってもよいし、誘電性電波吸収材であってもよいし、磁性電波吸収材であってもよい。
【0022】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。各子機アンテナ36を、取得装置30の上面33と筐体10の天井面13との間に設置することにより、電池パック101をコンパクトにまとめることができる。しかしこのままでは、次に示す問題が発生する。
【0023】
図2は、本実施形態の筐体10の天井面13から吸収部60を省いた場合の比較例を示す正面断面図である。このように筐体10の天井面13に吸収部60が無い場合、組電池20や取得装置30の上面23,33と筐体10天井面13との間隔部分で電波Wの乱反射が発生するおそれがある。組電池20及び取得装置30の上面23,33と筐体10の天井面13とはいずれも導電体製であり、電波Wを反射させるのに加え、組電池20や取得装置30の上面23,33と筐体10の天井面13との間隔は、電池パック101の大きさ等の関係上、狭くなりがちであるからである。そして、この間隔部分で乱反射した電波Wが子機アンテナ36に重畳することにより、通信障害が発生するおそれがある。
【0024】
その点、本実施形態では、図3に示すように、筐体10の天井面13に吸収部60が設置されている。そのため、筐体10の天井面13に到達した電波Wは、吸収部60により吸収される。それにより、組電池20や取得装置30の上面23,33と筐体10の天井面13との間隔部分での乱反射が抑制される。以上により、電池パック101のコンパクト化と、通信障害の抑制との両立を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態では、筐体10が導電体製であるため、筐体10における吸収部60が無い部分、すなわち、筐体10の側壁部や底部においても、筐体10の内部の電波Wの筐体10の外部への漏洩を、導電体製の筐体10の内面での反射により防止できる。そのため、セキュリティの向上に繋がると共に、漏洩した電波Wが電池パックの周囲の通信機器等に悪影響を及ぼすのを抑制できる。
【0026】
さらに、筐体10の外部の電波Woが筐体10の内部に侵入するのを、導電体製の筐体10の外面での反射により防止できる。そのため、筐体10の外部の電波Woが筐体10の内部に侵入してアンテナ36,46に重畳するのを抑制できる。そのため、筐体10の外部の電波Woに起因する通信障害も抑制できる。
【0027】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。以下の実施形態においては、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等については、同一の符号を付する。ただし、電池パック自体については、実施形態毎に異なる符号を付する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0028】
図4は、本実施形態の電池パック102を示す正面断面図である。吸収部60が、筐体10の天井面13のみならず、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36を3次元的に囲むように、筐体10の内面全体に設置されている。なお、「3次元的に囲む」の定義は、前述のとおりであり、多少の隙間があってもよい。
【0029】
本実施形態によれば、吸収部60が、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36を3次元的に囲むように設置されているため、筐体10内での電波の反射をより強固に抑制して、より強固に電波干渉による通信障害を抑制できる。
【0030】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0031】
図5は、第3実施形態の電池パック103を示す正面断面図である。筐体10内において、さらに、組電池20、取得装置30及び監視装置40のうちの少なくとも1つの導電体製の外面に、吸収部60が設置されている。なお、図では、組電池20、取得装置30及び監視装置40の各外面に、吸収部60が設置されている。また、筐体10の内側面や底面等にも吸収部60が設置されている。
【0032】
本実施形態によれば、組電池20や取得装置30や監視装置40の導電体製の外面に吸収部60を設置することにより、当該外面での電波の反射を抑制できる。そのため、電波干渉による通信障害をより強固に抑制できる。
【0033】
[第4実施形態]
次に第4実施形態について説明する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0034】
図6は、本実施形態の電池パック104を示す正面断面図である。本実施形態では、監視装置40が、第1実施形態の場合よりも下方に設置されている。それにより、親機アンテナ46は、右端の組電池20よりも右方において、組電池20の上面よりも上方ではなく下方に設置されている。そのため、親機アンテナ46が発信した直接波は、少なくとも左端及びその周辺の子機アンテナ36には届かず、また、当該子機アンテナ36が発信した直接波は、親機アンテナ46には届かない。
【0035】
そのため、筐体10内に、電波Wを反射させる反射部50が設けられている。これにより、親機アンテナ46から発信された電波Wにおける反射部50で反射した反射波が、左端及びその周辺の子機アンテナ36に届く。また、左端及びその周辺の子機アンテナ36から発信された電波における反射部50で反射した反射波も、親機アンテナ46に届く。
【0036】
具体的には、本実施形態では、導電体製の筐体10の天井面における所定部以外の部分に吸収部60が設置されており、その所定部が反射部50を構成している。そして、親機アンテナ46から発信された電波Wにおけるこの一の反射部50でのみ反射した1回反射波が、左端及びその周辺の子機アンテナ36に届く。また、左端及びその周辺の子機アンテナ36から発信された電波におけるこの一の反射部50でのみ反射した1回反射波が、親機アンテナ46に届く。
【0037】
本実施形態よれば、反射部50があるため、親機アンテナ46と子機アンテナ36との間に導電体等の障害物がある場合にも無線通信が可能になる。そのため、筐体10内における各アンテナ46,36の配置の自由度が上がり、それに伴い、監視装置40及び取得装置30の配置の自由度が上がる。
【0038】
また、1回反射波が相手方のアンテナ36,46に届くため、2回反射波やそれ以上の反射波が相手方のアンテナ36,46に届く場合に比べて、強い電波を相手方のアンテナ36,46に送信できる。そのため、通信が安定する。
【0039】
また、導電体製の筐体10の天井面13における所定部以外の部分に吸収部60を設置し、その所定部を反射部50とすることにより、導電体製の筐体10の内面を利用して、簡単に筐体10内に反射部50を設けることができる。
【0040】
[第5実施形態]
次に第5実施形態について説明する。本実施形態については、第1実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0041】
図7は、第5実施形態の電池パック105を示す正面断面図である。筐体10は、上方に開口した箱型の本体部10aと、本体部10aの上端部にその開口を塞ぐように取り付けられる天板部10bとを有する。本体部10aは、金属等の導電体製である。他方、天板部10bは、樹脂等の非導電体製である。その非導電体製の天板部10bの下面に、吸収部60が設置されている。それにより、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36は、導電体製の本体部10a及び吸収部60により3次元的に囲まれている。なお、「3次元的に囲む」の定義は、前述のとおりであり、多少の隙間があってもよい。
【0042】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。導電体製の本体部10aでは、各アンテナ46,36が発信した電波Wが筐体10の外部に漏洩するのを、内面での反射により防止することができると共に、筐体10の外部の電波Woが筐体10の内部に侵入するのを、外面での反射により防止できる。また、非導電体製の天板部10bでは、天板部10b自体は電波を透過させるが、その下面にある吸収部60による電波W,Woの吸収により、各アンテナ46,36が発信した電波Wが筐体10の外部に漏洩するのを防止できると共に、筐体10の外部の電波Woが筐体10の内部に侵入するのを防止できる。このように、筐体10における非導電体の部分(天板部10b)に、吸収部60を設置することにより、本来なら電波シールド性を有しない非導電体製の部分(天板部10b)でも、筐体10の内部の電波Wの外部への漏洩と、筐体10の外部の電波Woの内部への侵入とを抑制できる。
【0043】
特に本実施形態では、親機アンテナ46及び各子機アンテナ36が、導電体製の本体部10a及び吸収部60により3次元的に囲まれているため、上記の効果をより顕著に得ることができる。
【0044】
[第6実施形態]
次に第6実施形態について説明する。本実施形態については、第5実施形態をベースにこれと異なる点を中心に説明する。
【0045】
図8は、第6実施形態の電池パック106を示す正面断面図である。筐体10の非導電体製の天板部10bの上面又は肉厚内部に、吸収部60が設置されている。なお、図では、筐体10の上面に吸収部60が設置されている。
【0046】
本実施形態によれば、筐体10の内部の各アンテナ46,36から発信された電波Wは、非導電体製の天板部10bを透過する。そのため、吸収部60は、必ずしも天板部10bの内面側(下面)に設置する必要はなく、このように天板部10bの外面側(上面)や肉厚内部に設置した場合でも、アンテナ46,36から発信された電波Wは、非導電体製の天板部10bを透過して、吸収部60に吸収される。そのため、吸収部60の配置の自由度が上がる。
【0047】
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、次のように変更して実施できる。例えば、各実施形態において、各子機アンテナ36の上側に、すなわち筐体10の天井面13等に吸収部60を設置するのに代えて又は加えて、各子機アンテナ36の下側に、すなわち、少なくとも取得装置30の上面33に吸収部60を設置してもよい。また例えば、各実施形態において、子機アンテナ36を取得装置30から上方にではなく側方に突出するように設置してもよい。そして、上記と同じく、各子機アンテナ36の上側に吸収部60を設置するのに代えて又は加えて、各子機アンテナ36の下側に、すなわち、少なくとも組電池20の上面23に吸収部60を設置してもよい。
【0048】
また例えば、図1等に示す第1~第3実施形態において、筐体10の全体を導電体製にするのに代えて、筐体10の一部又は全部を樹脂等の非導電体製にしてもよい。また、その場合において、吸収部60を、筐体10の内面ではなく、筐体10における非導電体製の部分の外面や肉厚内部に設けてもよい。
【0049】
なお、このように筐体10を非導電体製にした場合、その内面に吸収部60が無くても、筐体10の内面で電波Wが反射することはない。しかし、電波Wが筐体10の非導電体製の部分を透過して筐体10の外部の導電体で反射して筐体10の内部のアンテナ46,36に重畳するのを、筐体10やその内側に吸収部60を設置することにより、抑制することができる。
【0050】
また例えば、図6に示す第4実施形態においても、筐体10の全体を導電体製にするのに代えて、筐体10の一部又は全部を樹脂等の非導電体製にしてもよい。なお、この第4実施形態において、筐体10の天板部を非導電体製にした場合、筐体10の天井面13における吸収部60がない部分が反射部50を構成することはない。そのため、この場合には、当該部分に金属等の導電体を取り付けることにより、当該部分に反射部50を設置する必要がある。
【0051】
また例えば、図7図8に示す第5,第6実施形態において、本体部10aを導電体製ではなく、樹脂等の非導電体製にしてもよい。また例えば、各実施形態において、その実施形態では吸収部60が無い部分に吸収部60を追加で設置してもよい。また例えば、各実施形態において、その実施形態では吸収部60が有る部分の一部から、吸収部60を省いてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…筐体、20…組電池、30…取得装置、40…監視装置、60…吸収部、101~106…電池パック、W…電波。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8