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特許7444176画像処理システム及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】画像処理システム及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/126 20140101AFI20240228BHJP
   H04N 19/117 20140101ALI20240228BHJP
   H04N 19/136 20140101ALI20240228BHJP
   H04N 19/167 20140101ALI20240228BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20240228BHJP
【FI】
H04N19/126
H04N19/117
H04N19/136
H04N19/167
H04N19/176
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021566650
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050895
(87)【国際公開番号】W WO2021130918
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中尾 鷹詔
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智規
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187769(JP,A)
【文献】特開2010-220042(JP,A)
【文献】CHOI, Hyomin and BAJIC, Ivan V.,HIGH EFFICIENCY COMPRESSION FOR OBJECT DETECTION,2018 IEEE Internatilnal Conference on Acoustics, Speech and Signal Processing,米国,IEEE,2018年09月13日,pp.1792-1796,<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8462653>,<DOI: 10.1109/ICASSP.2018.8462653>
【文献】SUZUKI, Satoshi et al.,IMAGE PRE-TRANSFORMATION FOR RECOGNITION-AWARE IMAGE COMPRESSION,2019 IEEE International Conference on Image Processing,米国,IEEE,2019年08月26日,pp.2686-2690,<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8803275>,<DOI: 10.1109/ICIP.2019.8803275>
【文献】GALTERI, Leonardo et al.,Video Compression for Object Detection Algorithms,2018 24th International Conference on Pattern Recognition,米国,IEEE,2018年11月29日,pp.3007-3012,<URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/8546064>,<DOI: 10.1109/ICPR.2018.8546064>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像データを認識処理した際の、該第1の画像データの各領域の認識結果への影響度合いを算出し、第の画像データを圧縮処理する際の処理ブロックごとに集計する算出部と、
各処理ブロックの集計結果の値に応じて、第2の画像データを圧縮処理する際の各処理ブロックの量子化値を決定し、決定した量子化値のうち、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの量子化値を、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの間の対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に応じて特定される処理ブロックに対して適用することで、決定した量子化値を修正する決定部と、
各処理ブロックの修正後の量子化値を用いて、前記第2の画像データのデータサイズを削減するための処理を実行する実行部と
を有する画像処理システム。
【請求項2】
第1の画像データを認識処理した際の、該第1の画像データの各領域の認識結果への影響度合いを算出し、第の画像データを加工処理する際の処理ブロックごとに集計する算出部と、
各処理ブロックの集計結果の値に応じて、第2の画像データを加工処理する際の各処理ブロックの加工処理の方法を決定し、決定した加工処理の方法のうち、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの加工処理の方法を、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの間の対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に応じて特定される処理ブロックに対して適用することで、決定した加工処理の方法を修正する決定部と、
各処理ブロックの修正後の加工処理の方法を用いて、前記第2の画像データのデータサイズを削減するための処理を実行する実行部と
を有する画像処理システム。
【請求項3】
前記算出部は、
BP法、GBP法または選択的BP法のいずれかを用いて、前記画像データの各領域の認識結果への影響度合いを算出する、請求項1または2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
第1の画像データを認識処理した際の、該第1の画像データの各領域の認識結果への影響度合いを算出し、第の画像データを圧縮処理する際の処理ブロックごとに集計し、
各処理ブロックの集計結果の値に応じて、第2の画像データを圧縮処理する際の各処理ブロックの量子化値を決定し、決定した量子化値のうち、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの量子化値を、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの間の対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に応じて特定される処理ブロックに対して適用することで、決定した量子化値を修正し、
各処理ブロックの修正後の量子化値を用いて、前記第2の画像データのデータサイズを削減するための処理を実行する、
処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項5】
第1の画像データを認識処理した際の、該第1の画像データの各領域の認識結果への影響度合いを算出し、第の画像データを加工処理する際の処理ブロックごとに集計し、
各処理ブロックの集計結果の値に応じて、第2の画像データを加工処理する際の各処理ブロックの加工処理の方法を決定し、決定した加工処理の方法のうち、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの加工処理の方法を、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの間の対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に応じて特定される処理ブロックに対して適用することで、決定した加工処理の方法を修正し、
各処理ブロックの修正後の加工処理の方法を用いて、前記第2の画像データのデータサイズを削減するための処理を実行する、
処理をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像データを記録または伝送する場合、圧縮処理によりデータサイズを削減することで、記録コストや伝送コストの削減を実現している。
【0003】
一方で、近年、AI(Artificial Intelligence)による画像認識処理に利用することを目的として、画像データを記録または伝送するケースが増えてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-49976号公報
【文献】特開2001-28692号公報
【文献】特開2001-333281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧縮処理は、推論時にAIが注目した特徴部分に基づいて行われているわけではない(人間の概念で把握できる形状や性質に基づいて行われている)。つまり、推論時にAIが真に注目した特徴部分(必ずしも人間の概念で境界分けすることができない特徴部分)を解析して行われているわけでない。
【0006】
このため、従来の圧縮処理では、データサイズを十分に削減できない場合があった。あるいは、従来の圧縮処理では、画像認識処理において重要な領域の画質が劣化し、復号した際に、十分な認識精度が得られない場合があった。
【0007】
一つの側面では、画像認識処理に適したデータサイズ削減処理を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様によれば、画像処理システムは、
第1の画像データを認識処理した際の、該第1の画像データの各領域の認識結果への影響度合いを算出し、第の画像データを圧縮処理する際の処理ブロックごとに集計する算出部と、
各処理ブロックの集計結果の値に応じて、第2の画像データを圧縮処理する際の各処理ブロックの量子化値を決定し、決定した量子化値のうち、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの量子化値を、前記第1の画像データと前記第2の画像データとの間の対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に応じて特定される処理ブロックに対して適用することで、決定した量子化値を修正する決定部と、
各処理ブロックの修正後の量子化値を用いて、前記第2の画像データのデータサイズを削減するための処理を実行する実行部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
画像認識処理に適したデータサイズ削減処理を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第1の図である。
図2図2は、画像認識装置または画像圧縮装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、画像認識装置の機能構成の一例を示す図である。
図4図4は、画像認識装置による処理の第1の具体例を示す図である。
図5図5は、画像認識装置による処理の第2の具体例を示す図である。
図6図6は、画像圧縮装置の機能構成の一例を示す第1の図である。
図7図7は、画像圧縮装置による処理の具体例を示す第1の図である。
図8図8は、画像処理システムによるデータサイズ削減処理の流れを示す第1のフローチャートの一例である。
図9図9は、画像圧縮装置の機能構成の一例を示す第2の図である。
図10図10は、画像圧縮装置による処理の第2の具体例を示す図である。
図11図11は、画像処理システムによるデータサイズ削減処理の流れを示す第2のフローチャートの一例である。
図12図12は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第2の図である。
図13図13は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第3の図である。
図14図14は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0012】
[第1の実施形態]
<画像処理システムのシステム構成>
はじめに、第1の実施形態に係る画像処理システムのシステム構成について説明する。図1は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第1の図である。図1に示すように、画像処理システム100は、撮像装置110、画像認識装置120、画像圧縮装置130、ストレージ装置140を有する。
【0013】
撮像装置110は、所定のフレーム周期で撮影を行い、画像データを画像認識装置120に送信する。
【0014】
画像認識装置120は、撮像装置110より送信される画像データについて、フレーム単位で認識処理し、認識結果をフレーム単位の画像データと対応付けて画像圧縮装置130に送信する。
【0015】
また、画像認識装置120は、画像データを認識処理した際、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを示すマップをフレーム単位で生成し、画像圧縮装置130に送信する。
【0016】
画像圧縮装置130は、画像認識装置120より送信された画像データをフレーム単位で圧縮処理し、圧縮データを生成する。画像圧縮装置130は、画像データを圧縮処理する際、画像認識装置120より送信されたマップを参照し、マップに応じた圧縮レベルで画像データを圧縮処理する。また、画像圧縮装置130は、生成した圧縮データをストレージ装置140に送信する。
【0017】
ストレージ装置140は、画像圧縮装置130より送信された圧縮データを格納する。
【0018】
<画像認識装置及び画像圧縮装置のハードウェア構成>
次に、画像認識装置120及び画像圧縮装置130のハードウェア構成について説明する。なお、画像認識装置120と画像圧縮装置130とは、同様のハードウェア構成を有するため、ここでは、両装置の説明をまとめて図2を用いて行う。
【0019】
図2は、画像認識装置または画像圧縮装置のハードウェア構成の一例を示す図である。画像認識装置120または画像圧縮装置130は、プロセッサ201、メモリ202、補助記憶装置203、I/F(Interface)装置204、通信装置205、ドライブ装置206を有する。なお、画像認識装置120または画像圧縮装置130の各ハードウェアは、バス207を介して相互に接続されている。
【0020】
プロセッサ201は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ201は、各種プログラム(例えば、後述する画像認識プログラムまたは画像圧縮プログラム等)をメモリ202上に読み出して実行する。
【0021】
メモリ202は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ201とメモリ202とは、いわゆるコンピュータを形成し、プロセッサ201が、メモリ202上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する(各種機能の詳細は後述する)。
【0022】
補助記憶装置203は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ201によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0023】
I/F装置204は、外部装置の一例である操作装置210、表示装置220と、画像認識装置120または画像圧縮装置130とを接続する接続デバイスである。I/F装置204は、画像認識装置120または画像圧縮装置130に対する操作を、操作装置210を介して受け付ける。また、I/F装置204は、画像認識装置120または画像圧縮装置130による処理の結果を出力し、表示装置220を介して表示する。
【0024】
通信装置205は、他の装置と通信するための通信デバイスである。画像認識装置120の場合、通信装置205を介して撮像装置110及び画像圧縮装置130と通信する。また、画像圧縮装置130の場合、通信装置205を介して画像認識装置120及びストレージ装置140と通信する。
【0025】
ドライブ装置206は記録媒体230をセットするためのデバイスである。ここでいう記録媒体230には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記録媒体230には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0026】
なお、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記録媒体230がドライブ装置206にセットされ、該記録媒体230に記録された各種プログラムがドライブ装置206により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置203にインストールされる各種プログラムは、通信装置205を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0027】
<画像認識装置の機能構成>
次に、画像認識装置120の機能構成について説明する。図3は、画像認識装置の機能構成の一例を示す図である。上述したように、画像認識装置120には、画像認識プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、画像認識装置120は、入力部310、CNN部320、マップ生成部330、出力部340として機能する。
【0028】
入力部310は、撮像装置110より送信された画像データをフレーム単位で取得し、CNN部320及び出力部340に通知する。
【0029】
CNN部320は、CNN(Convolutional Neural Network)を用いて、取得された画像データについてフレーム単位で認識処理する。また、CNN部320は、認識結果を出力部340に通知する。
【0030】
また、CNN部320は、画像データを認識処理した際に取得されるCNN部構造情報をマップ生成部330に通知する。
【0031】
マップ生成部330は算出部の一例である。マップ生成部330は、CNN部320が画像データをフレーム単位で認識処理した際に取得されるCNN部構造情報を解析し、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを示すマップを生成し、出力部340に通知する。
【0032】
出力部340は、入力部310より通知された画像データ、CNN部320より通知された認識結果、マップ生成部330より通知されたマップを、相互に対応付けてフレーム単位で画像圧縮装置130に送信する。
【0033】
<画像認識装置による処理の第1の具体例>
次に、画像認識装置120による処理の第1の具体例について説明する。図4は、画像認識装置による処理の第1の具体例を示す図である。
【0034】
図4に示すように、撮像装置110から送信された画像データに含まれる複数のフレームのうち、所定フレームの画像データ400がCNN部320に入力されると、画像データ400は、CNN部320によって順伝播処理される。これにより、CNN部320の出力層からは、画像データ400に含まれる対象オブジェクト401についての認識結果が出力される。なお、ここでは、CNN部320より出力されるラベルを正解ラベルとする。
【0035】
また、図4に示すように、マップ生成部330は、例えば、重要特徴マップ生成部410と集計部411とを有する。重要特徴マップ生成部410は、BP(Back Propagation)法、GBP(Guided Back Propagation)法または選択的BP法等を用いることで、CNN部構造情報に基づいて"重要特徴マップ"を生成する。重要特徴マップとは、認識処理した際に反応した特徴部分(画像データの各領域の認識結果への影響度合い)を可視化したマップである。
【0036】
なお、BP法は、認識結果として正解ラベルが出力される画像データについて認識処理することで得た分類確率から各ラベルの誤差を計算し、入力層まで逆伝播して得られる勾配の大小を画像化することで、特徴部分を可視化する方法である。また、GBP法は、勾配情報の正値のみを特徴部分として画像化することで、特徴部分を可視化する方法である。
【0037】
更に、選択的BP法は、正解ラベルの誤差のみを最大にしたうえで、BP法またはGBP法を用いて処理を行う方法である。選択的BP法の場合、可視化される特徴部分は、正解ラベルのスコアのみに影響を与える特徴部分となる。
【0038】
図4の例は、選択的BP法により重要特徴マップ420を生成した様子を示している。重要特徴マップ生成部410では、生成した重要特徴マップ420を、集計部411に通知する。
【0039】
なお、図4では、マップ生成部330に重要特徴マップ生成部410を配し、重要特徴マップ420を生成する場合について説明したが、マップ生成部330が生成するマップは、重要特徴マップ420に限定されない。例えば、Grad-CAM法を用いて、ヒートマップを生成してもよい。
【0040】
集計部411は、重要特徴マップ(あるいはヒートマップ)を用いて、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを所定の処理ブロック単位で集計することで、処理ブロックごとの認識結果への影響度合いを示すマップ430を生成する。なお、処理ブロックとは、例えば、画像圧縮装置130において圧縮処理する際に用いられる処理ブロックを指すものとする。
【0041】
このように、第1の具体例では、CNN部320が認識結果を出力する際に、画像データにおいて重要な処理ブロックを示すマップを、(人間の概念で把握できる形状や性質に基づくのではなく)CNN部320による認識処理に基づいて生成する。
【0042】
<画像認識装置による処理の第2の具体例>
次に、画像認識装置120による処理の第2の具体例について説明する。図5は、画像認識装置による処理の第2の具体例を示す図である。
【0043】
図5に示すように、撮像装置110から送信された画像データに含まれる複数のフレームのうち、所定フレームの画像データ500が入力部310に入力されると、画像データ500は、所定の量子化値502を用いて画像圧縮部560によって圧縮処理される。
【0044】
圧縮処理された画像データ500は、画像復号部570によって復号処理された後、CNN部320に入力され、CNN部320によって順伝播処理される。これにより、CNN部320の出力層からは、画像データ500に含まれる対象オブジェクト501についての認識結果が出力される。なお、ここでは、CNN部320の出力層から、正解ラベルの認識結果として低いスコアが出力されるものとする。
【0045】
この場合、マップ生成部330では、正解ラベルの認識結果として高いスコアが出力されるように、画像データ500を変更し、認識結果のスコアが最大となる画像データを用いてマップを生成する。
【0046】
具体的には、図5に示すように、マップ生成部330は、例えば、リファイン画像生成部510と、重要特徴指標マップ生成部520と、集計部540とを有する。
【0047】
更に、リファイン画像生成部510は、画像リファイナ部511、画像誤差演算部512、推論部513、スコア誤差演算部514を有する。
【0048】
画像リファイナ部511は、例えば、画像データの生成モデルとしてCNNを用いて、画像データ500からリファイン画像データを生成する。
【0049】
なお、画像リファイナ部511は、生成したリファイン画像データを用いて推論部513が認識処理した際に、正解ラベルのスコアが最大となるように、画像データ500を変更する。また、画像リファイナ部511は、例えば、画像データ500からの変更量(リファイン画像データと画像データ500との差分)が小さくなるように、リファイン画像データを生成する。これにより、画像リファイナ部511によれば、視覚的に変更前の画像データ(画像データ500)に近い画像データ(リファイン画像データ)を得ることができる。
【0050】
具体的には、画像リファイナ部511では、
・生成したリファイン画像データを用いて認識処理した際のスコアと、正解ラベルのスコアを最大にしたスコアとの誤差(スコア誤差)と、
・生成したリファイン画像データと画像データ500との差分である画像差分値と、
を最小化するようにCNNの学習を行う。
【0051】
画像誤差演算部512は、画像データ500と、CNNの学習中に画像リファイナ部511より出力されるリファイン画像データとの差分を算出し、画像差分値を、画像リファイナ部511に入力する。画像誤差演算部512では、例えば、画素ごとの差分(L1差分)やSSIM(Structural Similarity)演算を行うことにより、画像差分値を算出し、画像リファイナ部511に入力する。
【0052】
推論部513は、画像リファイナ部511により生成されたリファイン画像データを入力として認識処理し、認識結果のラベルのスコアを出力する、学習済みのCNNを有する。なお、推論部513により出力されたスコアは、スコア誤差演算部514に通知される。
【0053】
スコア誤差演算部514は、推論部513により通知されたスコアと、正解ラベルのスコアを最大にしたスコアとの誤差を算出し、画像リファイナ部511にスコア誤差を通知する。スコア誤差演算部514により通知されたスコア誤差は、画像リファイナ部511においてCNNの学習に用いられる。
【0054】
なお、画像リファイナ部511が有するCNNの学習中に画像リファイナ部511から出力されるリファイン画像は、リファイン画像格納部515に格納される。画像リファイナ部511が有するCNNの学習は、
・予め定められた学習回数分(例えば、最大学習回数=N回分)、あるいは、
・正解ラベルのスコアが所定の閾値を超えるまで、あるいは、
・正解ラベルのスコアが所定の閾値を超え、かつ、画像差分値が所定の閾値より小さくなるまで、
行われ、推論部513より出力される正解ラベルのスコアが最大化した際のリファイン画像データを、以下では、"スコア最大化リファイン画像データ"と称す。
【0055】
続いて、重要特徴指標マップ生成部520の詳細について説明する。図5に示すように、重要特徴指標マップ生成部520は、重要特徴マップ生成部521、劣化尺度マップ生成部522、重畳部523を有する。
【0056】
重要特徴マップ生成部521は、スコア最大化リファイン画像データを入力として認識処理した際の推論部構造情報を、推論部513より取得する。また、重要特徴マップ生成部521は、BP法、GBP法または選択的BP法を用いることで、推論部構造情報に基づいて重要特徴マップを生成する。
【0057】
劣化尺度マップ生成部522は、画像データ500とスコア最大化リファイン画像データとに基づいて、"劣化尺度マップ"を生成する。劣化尺度マップとは、画像データ500からスコア最大化リファイン画像データに変更した際の変更部分と各変更部分の変更度合いとを示したマップである。
【0058】
重畳部523は、重要特徴マップ生成部521において生成された重要特徴マップと、劣化尺度マップ生成部522において生成された劣化尺度マップとを重畳することで、重要特徴指標マップ530を生成する。重要特徴指標マップ530は、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを可視化したマップである。
【0059】
集計部540は、重要特徴指標マップ530を用いて、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを所定の処理ブロック単位で集計することで、処理ブロックごとの認識結果への影響度合いを示すマップ550を生成する。なお、上述したように、処理ブロックとは、例えば、画像圧縮装置130において圧縮処理する際に用いられる処理ブロックを指すものとする。
【0060】
このように、第2の具体例では、CNN部320が認識結果を出力する際に、画像データにおいて重要な処理ブロックを示すマップを、(人間の概念で把握できる形状や性質に基づくのではなく)CNN部320による認識処理に基づいて生成する。更に、第2の具体例では、
・CNN部320が認識結果を劣化させる劣化部分を表す劣化尺度マップと、
・CNN部320が認識結果を出力する際に、画像データにおいて重要な特徴部分を表す重要特徴マップと、
を適用することで、劣化尺度マップと重要特徴マップのいずれか一方のみを用いる場合と比較して、より精度の高いマップ550を生成する。
【0061】
なお、上記説明では、画像データ500に対して、マップ550を1回生成するものとして説明した。しかしながら、マップ550を生成する回数は1回に限定されない。例えば、生成したマップ550に基づいて画像圧縮装置130が量子化値502を決定し、決定した量子化値502を用いて、再度、同じ処理を行うことで、マップ550を生成するようにしてもよい。また、これらの処理は複数回繰り返してもよい。これにより、生成されるマップ550の精度を向上させることができる。
【0062】
<画像圧縮装置の機能構成>
次に、画像圧縮装置130の機能構成について説明する。図6は、画像圧縮装置の機能構成の一例を示す第1の図である。上述したように、画像圧縮装置130には、画像圧縮プログラムがインストールされており、当該プログラムが実行されることで、画像圧縮装置130は、決定部610、符号化部620として機能する。
【0063】
決定部610は実行部の一例である。図6に示すように、決定部610は、更に、量子化値決定部611を有する。
【0064】
量子化値決定部611は、画像認識装置120より送信されたマップ(例えば、マップ430、550)に基づいて、各処理ブロックの量子化値612を決定し、符号化部620に通知する。
【0065】
例えば、量子化値決定部611は、マップ430に基づいて認識結果への影響度に応じた量子化値612を決定する。また、例えば、量子化値決定部611は、マップ530に基づいて認識結果への影響度に応じた量子化値612を決定する、あるいは、量子化値502を補正する。なお、量子化値502による圧縮処理で認識精度の低下が生じていた場合、マップ530は、認識精度の低下の原因となる劣化部分を示すため、量子化値502を、マップ530で示される認識結果への影響度に基づいて補正することで、認識精度が向上する。
【0066】
このように、量子化値決定部611では、処理ブロックごとの認識結果への影響度合いに基づいて、量子化値を決定する処理(画像データのデータサイズを削減するための処理)を実行する。
【0067】
符号化部620は圧縮部の一例である。符号化部620は、差分部621、直交変換部622、量子化部623、エントロピ符号化部624、逆量子化部625、逆直交変換部626を有する。また、符号化部620は、加算部627、バッファ部628、ループ内フィルタ部629、フレームバッファ部630、画面内予測部631、画面間予測部632を有する。
【0068】
差分部621は、画像データ(例えば、画像データ400、500)と予測画像データとの差分を算出し、予測残差信号を出力する。
【0069】
直交変換部622は、差分部621により出力された予測残差信号に対して、直交変換処理を実行する。
【0070】
量子化部623は、直交変換処理された予測残差信号を量子化し、量子化信号を生成する。量子化部623では、決定部610により処理ブロックごとに決定された量子化値612を用いて量子化信号を生成する。
【0071】
エントロピ符号化部624は、量子化信号に対してエントロピ符号化処理を行うことで、圧縮データを生成する。
【0072】
逆量子化部625は、量子化信号を逆量子化する。逆直交変換部626は、逆量子化された量子化信号に対して、逆直交変換処理を実行する。
【0073】
加算部627は、逆直交変換部626より出力された信号と、予測画像とを加算することで、参照画像データを生成する。バッファ部628は、加算部627により生成された参照画像データを格納する。
【0074】
ループ内フィルタ部629は、バッファ部628に格納された参照画像データに対してフィルタ処理を行う。ループ内フィルタ部629には、
・デブロッキングフィルタ(Deblocking filter:DB)、
・サンプルアダプティブオフセットフィルタ(Sample Adaptive Offset filter:SAO)、
・適応ループフィルタ(Adaptive loop filter:ALF)、
が含まれる。
【0075】
フレームバッファ部630は、ループ内フィルタ部629によりフィルタ処理が行われた参照画像データをフレーム単位で格納する。
【0076】
画面内予測部631は、参照画像データに基づいて画面内予測を行い、予測画像データを生成する。画面間予測部632は、入力された画像データ(例えば、画像データ400、500)と参照画像データとを用いてフレーム間で動き補償を行い、予測画像データを生成する。
【0077】
なお、画面内予測部631または画面間予測部632により生成された予測画像データは、差分部621及び加算部627に出力される。
【0078】
なお、上記説明では、符号化部620が、MPEG-2、MPEG-4、H.264、HEVCなどの既存の動画符号化方式を用いて圧縮処理を行うものとした。しかしながら、符号化部620による圧縮処理は、これらの動画符号化方式に限定されず、量子化により圧縮率を制御する任意の符号化方式を用いて行われてもよい。
【0079】
<画像圧縮装置の処理の具体例>
次に、画像圧縮装置130の処理(ここでは、量子化値決定部611の処理)の具体例について説明する。図7は、画像圧縮装置による処理の具体例を示す第1の図である。
【0080】
図7に示すように、マップ生成部330において生成されたマップ430(あるいはマップ550)が送信されると、量子化値決定部611では、各処理ブロックの集計結果の値に基づいて、各処理ブロックの量子化値612を決定する。
【0081】
図7の例は、領域701に含まれる各処理ブロックと、領域702に含まれる各処理ブロックとで、異なる量子化値を決定した様子を示している。なお、図7の場合は、領域701に含まれる各処理ブロックの量子化値の方が、領域702に含まれる各ブロックの量子化値よりも大きい値が設定されている。
【0082】
この結果、画像データ400のうち、領域701に含まれる各処理ブロックについては高い圧縮レベルで圧縮処理され、領域702に含まれる各処理ブロックについては低い圧縮レベルで圧縮処理されることになる。つまり、画像圧縮装置130によれば、
・認識処理において重要な領域(認識結果への影響度合いが大きい領域)については画質の劣化を小さくし、
・認識処理において重要でない領域(認識結果への影響度合いが小さい領域)については画質の劣化を大きくすることができる。
【0083】
<画像処理システムによるデータサイズ削減処理の流れ>
次に、画像処理システム100によるデータサイズ削減処理の流れについて説明する。図8は、画像処理システムによるデータサイズ削減処理の流れを示す第1のフローチャートの一例である。
【0084】
ステップS801において、入力部310は画像データをフレーム単位で取得する。
【0085】
ステップS802において、CNN部320は、フレーム単位で取得した画像データについて認識処理する。
【0086】
ステップS803において、マップ生成部330は、CNN部320による認識処理の結果、画像データにおいて対象オブジェクトが抽出されたか否かを判定する。ステップS803において、対象オブジェクトが抽出されたと判定した場合には(ステップS803においてYesの場合には)、ステップS804に進む。
【0087】
ステップS804において、マップ生成部330は、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを、処理ブロック単位で集計したマップを生成する。
【0088】
ステップS805において、決定部610は、生成されたマップに基づいて、各処理ブロックの量子化値を決定する。
【0089】
一方、ステップS803において、対象オブジェクトが抽出されなかったと判定した場合には(ステップS803においてNoの場合には)、ステップS806に進む。
【0090】
ステップS806において、決定部610は、画像データを圧縮処理する際に用いる各処理ブロックの量子化値を、所定の量子化値に決定する。
【0091】
ステップS807において、符号化部620は、決定された各処理ブロックの量子化値を用いて圧縮処理し、圧縮データを生成する。
【0092】
ステップS808において、符号化部620は、圧縮データをストレージ装置140に格納する。
【0093】
ステップS809において、入力部310は次の画像データがあるか否かを判定する。ステップS810において、次の画像データがある場合にはデータサイズ削減処理を継続すると判定し(ステップS809においてNoと判定し)、ステップS801に戻る。
【0094】
一方、ステップS809において、次の画像データがない場合にはデータサイズ削減処理を終了すると判定し(ステップS809においてYesと判定し)、データサイズ削減処理を終了する。
【0095】
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態に係る画像処理システムは、画像データを認識処理した際、画像データの各領域の認識結果への影響度合いを、処理ブロックごとに集計したマップを生成する。また、第1の実施形態に係る画像処理システムは、生成したマップ(処理ブロックごとに集計した、認識結果への影響度合いを示すマップ)に基づいて量子化値を決定する。
【0096】
これにより、第1の実施形態に係る画像処理システムによれば、認識処理において重要な処理ブロックについては画質の劣化を小さくし、認識処理において重要でない処理ブロックについては画質の劣化を大きくすることができる。
【0097】
この結果、第1の実施形態によれば、画像認識処理に適したデータサイズ削減処理を実現できる。
【0098】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、画像データ400が認識処理された際に生成されたマップに基づき決定した量子化値を、画像データ400の圧縮処理に用いるものとして説明した。しかしながら、マップの生成及び量子化値の決定には時間がかかることも考えられる。
【0099】
そこで、第2の実施形態では、画像データ400が認識処理された際に生成されたマップに基づき決定した量子化値を、画像データ400より後に取得した画像データの圧縮処理に用いる場合について説明する。なお、以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0100】
<画像圧縮装置の機能構成>
はじめに、第2の実施形態に係る画像圧縮装置130の機能構成について説明する。図9は、画像圧縮装置の機能構成の一例を示す第2の図である。図6との相違点は、決定部910の機能構成である。
【0101】
図9に示すように、決定部910は、量子化値決定部611と位置修正部911とを有する。このうち、量子化値決定部611の機能は、図6の量子化値決定部611の機能と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0102】
なお、量子化値決定部611が画像認識装置120より取得するマップは、例えば、時刻t1に入力部310が取得した画像データ400(第1の画像データ)を、CNN部320が認識処理した際に生成されたマップであるとする。
【0103】
位置修正部911は、例えば、画像データ900(第2の画像データ)について圧縮処理する際、画像認識装置120により、画像データ900が認識処理された際の認識結果を取得する。なお、画像データ900は、符号化部620が時刻t2(時刻t1より後の時刻)において入力部310により取得された画像データである。また、位置修正部911が取得する認識結果には、対象オブジェクトの位置情報が含まれているものとする。
【0104】
また、位置修正部911は、量子化値決定部611により決定された各処理ブロックの量子化値を、画像データ900に含まれる対象オブジェクトの位置情報に基づいて修正し、修正後の量子化値912を符号化部620に通知する。
【0105】
具体的には、位置修正部911は、まず、
・時刻t1において入力部310により取得された画像データ400が認識処理された際の認識結果に含まれる位置情報と、
・時刻t2において入力部310により取得された画像データ900が認識処理された際の認識結果に含まれる位置情報と、
に基づいて、時刻t1と時刻t2との間における対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量を算出する。
【0106】
続いて、位置修正部911は、量子化値決定部611より通知された各処理ブロックの量子化値を、算出した対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に基づいて修正する。例えば、量子化値決定部611より通知された各処理ブロックの量子化値が、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックと、対象オブジェクトに含まれない処理ブロックとで異なる量子化値であったとする。
【0107】
この場合、位置修正部911では、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの量子化値を、算出した対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に応じて特定される処理ブロックに対して適用する。また、位置修正部911では、対象オブジェクトに含まれる処理ブロックの量子化値が適用された処理ブロック以外の処理ブロックの量子化値として、対象オブジェクトに含まれない処理ブロックの量子化値を適用する。
【0108】
<画像圧縮装置の処理の具体例>
次に、画像圧縮装置130の処理の具体例について説明する。図10は、画像圧縮装置の処理の具体例を示す第2の図である。
【0109】
図10に示すように、マップ生成部330において生成された、画像データ400についてのマップ430が送信されると、量子化値決定部611では、マップ430の各処理ブロックの集計結果の値に基づいて、各処理ブロックの量子化値612を決定する。
【0110】
図10の例は、対象オブジェクト以外の領域701に含まれる各処理ブロックの量子化値と、対象オブジェクトの領域702に含まれる各処理ブロックの量子化値とで、異なる値が決定された場合を示している。
【0111】
ここで、位置修正部911は、画像データ900が認識処理された際の認識結果を取得する。そして、位置修正部911は、既に取得している、画像データ400が認識処理された際の認識結果と比較することで、画像データ400が取得されてから画像データ900が取得されるまでの間の、対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量を算出する。
【0112】
更に、位置修正部911は、算出した変化量に基づいて、各処理ブロックの量子化値612を修正し、各処理ブロックの量子化値912を得る。図10の例は、画像データ400が取得されてから画像データ900が取得されるまでの間に、対象オブジェクトが、右下の位置に移動した様子を示している(領域702→領域702'参照)。
【0113】
このため、領域702'に含まれる処理ブロックには、領域702に含まれる処理ブロックにおいて決定された量子化値が適用され、領域701'に含まれる処理ブロックには、領域701に含まれる処理ブロックにおいて決定された量子化値が適用される。
【0114】
<画像処理システムによる画像圧縮処理の流れ>
次に、画像処理システム100による画像圧縮処理の流れについて説明する。図11は、画像処理システムによる画像圧縮処理の流れを示す第2のフローチャートの一例である。図8に示した第1のフローチャートとの相違点は、ステップS1101である。
【0115】
ステップS1101において、位置修正部911は、決定された各処理ブロックの量子化値を、対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に基づいて修正する。
【0116】
以上の説明から明らかなように、第2の実施形態に係る画像処理システムは、画像データを認識処理した際、第1の画像データの各領域の認識結果への影響度合いを、処理ブロック単位で集計したマップを生成する。また、第2の実施形態に係る画像処理システムは、生成したマップ(処理ブロックごとに集計した、認識結果への影響度合いを示すマップ)に基づいて量子化値を決定する。また、第2の実施形態に係る画像処理システムは、第1の画像データが取得されてから第2の画像データが取得されるまでの間の対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量に基づいて、決定した量子化値を修正する。更に、第2の実施形態に係る画像処理システムは、修正後の量子化値を用いて第2の画像データを圧縮処理することで、第2の画像データのデータサイズを削減する。
【0117】
これにより、第2の実施形態に係る画像処理システムによれば、認識処理において重要な処理ブロックが移動した場合でも、当該処理ブロックについては画質の劣化を小さくし、当該処理ブロック以外の処理ブロックについては画質の劣化を大きくすることができる。
【0118】
この結果、第2の実施形態によれば、画像認識処理に適したデータサイズ削減処理を実現できる。
【0119】
[第3の実施形態]
上記第1及び第2の実施形態では、認識処理において重要な処理ブロックと重要でない処理ブロックとで圧縮レベルを変えて圧縮処理することで、データサイズを削減する場合について説明した。これに対して、第3の実施形態では、対象オブジェクトと背景とを分けて圧縮処理することで、圧縮データを効率的に格納する。以下、第3の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0120】
<画像処理システムのシステム構成及び圧縮データの格納方法の具体例>
図12は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第2の図である。図12を用いて、第3の実施形態に係る画像処理システム1200のシステム構成及び圧縮データの格納方法の具体例について説明する。
【0121】
図1に示したシステム構成との相違点は、図12の場合、画像圧縮装置130が差分画像生成部1220を有する点である。また、図12の場合、高速ストレージ装置1230第1のストレージ装置)と、低コストストレージ装置1240(第2のストレージ装置)とを含む点である。また、図12の場合、高速ストレージ装置1230には、不図示の情報処理装置の解析処理部1251及び復元処理部1252が接続されている点である。更に、図12の場合、低コストストレージ装置1240には、不図示の情報処理装置の庫外管理部及び廃棄処理部1253が接続されている点である。
【0122】
図12に示すように、画像認識装置120では、対象オブジェクト401が含まれる画像データ400について認識処理し、認識結果を画像データ400とともに画像圧縮装置130に送信する。
【0123】
また、画像認識装置120では、画像データ400の取得前後に取得された画像データであって、対象オブジェクトが含まれない画像データ1210について認識処理し、認識結果を画像データとともに画像圧縮装置130に送信する。
【0124】
画像圧縮装置130は、差分画像生成部1220を有し、対象オブジェクトが含まれる画像データ400と対象オブジェクトが含まれない画像データ1210との差分を算出し、差分画像データ402(対象オブジェクトの画像データ)を符号化部620に入力する。
【0125】
なお、差分画像データ402は、対象オブジェクトが含まれる画像データ400において、対象オブジェクトの領域以外の領域がゼロ値の第1の差分画像データである。
【0126】
また、差分画像生成部1220は、対象オブジェクトが含まれる画像データ400と差分画像データ402(対象オブジェクトの画像データ)との差分を算出し、差分画像データ1211(背景の画像データ)を生成する。なお、差分画像データ1211は、対象オブジェクトが含まれない画像データ1210において、対象オブジェクトの領域に対応する領域がゼロ値の第2の差分画像データである。更に、差分画像生成部1220は、生成した差分画像データ1211を符号化部620に入力する。
【0127】
符号化部620では、画像データ400が認識処理された際に生成されたマップに基づいて決定部610が決定した量子化値を用いて、差分画像データ402を圧縮処理し、圧縮データ(第1の圧縮データ)を高速ストレージ装置1230に格納する。
【0128】
また、符号化部620では、予め決定された量子化値(高圧縮用の量子化値)を用いて、差分画像データ1211を圧縮処理し、圧縮データ(第2の圧縮データ)を低コストストレージ装置1240に格納する。
【0129】
これにより、高速ストレージ装置1230には、対象オブジェクトの圧縮データが格納される。対象オブジェクトの圧縮データは、対象オブジェクトのうち、認識処理において重要な処理ブロックについては画質の劣化を小さくし、認識処理において重要でない処理ブロックについては画質の劣化を大きくした圧縮データである。
【0130】
また、低コストストレージ装置1240には、背景の圧縮データが格納される。背景の圧縮データは、背景の画像データを高圧縮処理した圧縮データである。
【0131】
この結果、解析処理部1251では、高速ストレージ装置1230より圧縮データを読み出すことで、認識処理において重要な処理ブロックについて画質の劣化を小さくした対象オブジェクトの画像データを解析することができる。
【0132】
また、復元処理部1252では、高速ストレージ装置1230及び低コストストレージ装置1240より圧縮データを読み出すことで、
・認識処理において重要な処理ブロックについては画質の劣化を小さくした対象オブジェクトの画像データと、
・画質の劣化が大きい背景の画像データと
を組み合わせた画像データを復元することができる。つまり、ユーザが、対象オブジェクトと背景とを含む全体の画像データを確認したい場合に、当該全体の画像データをユーザに提供することができる。
【0133】
更に、庫外管理部及び廃棄処理部1253では、低コストストレージ装置1240より圧縮データを読み出すことで、背景の圧縮データについて、庫外管理処理または廃棄処理を行うことができる。
【0134】
以上の説明から明らかなように、第3の実施形態に係る画像処理システム1200では、対象オブジェクトと背景とを分けて圧縮処理する。これにより、第3の実施形態に係る画像処理システムによれば、圧縮データを効率的に格納することができる。
【0135】
[第4の実施形態]
上記第1乃至第3の実施形態では、撮像装置110より送信される画像データと、画像認識装置120が認識処理する画像データとが同じデータサイズであるとして説明した。
【0136】
しかしながら、撮像装置110より送信される画像データの画像サイズが、画像認識装置120で認識処理可能な画像サイズを超えている場合もありうる。このような場合、撮像装置110より送信された画像データは縮小処理または切り出し処理が行われたうえで、画像認識装置120に入力される。
【0137】
第4の実施形態では、このようにしてストレージ装置に格納された圧縮データであっても、復元した際に、元の画像サイズの画像データを視認可能な画像処理システムについて説明する。
【0138】
<画像処理システムのシステム構成>
図13は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第3の図である。図13を用いて第4の実施形態に係る画像処理システム1300のシステム構成について説明する。
【0139】
図13に示すように、画像処理システム1300は、撮像装置110、縮小または切り出し装置1310、画像認識装置120、画像圧縮装置130、復号装置1320、拡大またはマージ装置1330を有する。更に、画像処理システム1300は、差分装置1340、画像圧縮装置1350、復号装置1360、加算装置1370を有する。
【0140】
かかるシステム構成のもと、撮像装置110により画像データ1311が送信されると、縮小または切り出し装置1310では、画像認識装置120において認識処理可能な画像サイズとなるよう、画像データ1311に対して縮小処理または切り出し処理を行う。
【0141】
縮小または切り出し装置1310では、縮小処理または切り出し処理を行うことで生成した画像データ1312を、画像認識装置120に送信する。なお、図13に示すように、画像データ1312の画像サイズは、画像データ1311の画像サイズよりも小さいものとする。
【0142】
画像認識装置120は、縮小または切り出し装置1310より送信された画像データ1312について認識処理するとともに、認識結果への影響度合いを処理ブロックごとに集計したマップを生成する。また、画像認識装置120は、画像データ及びマップを画像圧縮装置130に送信する。
【0143】
画像圧縮装置130は、画像認識装置120より送信された画像データについて、マップに応じた量子化値を用いて圧縮処理し、圧縮データを高速ストレージ装置1380に格納する。
【0144】
復号装置1320は、高速ストレージ装置1380から圧縮データを読み出し、復号することで復号データ1321を生成する。復号装置1320は、生成した復号データ1321を拡大またはマージ装置1330に送信する。
【0145】
拡大またはマージ装置1330は、復号装置1320より送信された復号データ1321に対して、拡大処理またはマージ処理を行うことで、復号データ1331を生成する。
【0146】
差分装置1340は、復号データ1331と、画像データ1311との差分を算出し、差分データを生成する。また、差分装置1340は、生成した差分データを画像圧縮装置1350に送信する。
【0147】
画像圧縮装置1350は、差分装置1340より送信された差分データについて圧縮処理し、圧縮データを高速ストレージ装置1390に格納する。
【0148】
このように、画像処理システム1300では、画像データ1311を、
・画像圧縮装置130により生成された圧縮データ、及び、
・画像圧縮装置1350により生成された圧縮データ、
として、高速ストレージ装置1380及び高速ストレージ装置1390に格納する。
【0149】
ここで、画像処理システム1300では、画像圧縮装置130により生成された圧縮データと、画像圧縮装置1350により生成された圧縮データとに基づいて、以下の手順により、画像データ1311を復元する。
【0150】
まず、復号装置1320は、高速ストレージ装置1380より圧縮データを読み出して復号し、復号データ1321を生成する。続いて、拡大またはマージ装置1330は、復号データ1321に対して拡大処理またはマージ処理を行うことで、復号データ1331を生成し、加算装置1370に送信する。
【0151】
一方、復号装置1360は、高速ストレージ装置1390より圧縮データを読み出して復号し、復号データ1361を生成する。また、復号装置1360は、生成した復号データ1361を加算装置1370に送信する。
【0152】
加算装置1370では、拡大またはマージ装置1330より送信された復号データ1331と、復号装置1360より送信された復号データ1361とを加算することで、画像データ1311を復元する。
【0153】
このように、画像処理システム1300によれば、撮像装置110より送信される画像データを縮小または切り出して圧縮処理した場合であっても、元の画像サイズの画像データを復元することができる。
【0154】
[第5の実施形態]
上記第1乃至第4の実施形態では、画像圧縮装置130が、画像認識装置120により生成されたマップに応じた量子化値で圧縮処理するものとして説明した。しかしながら、画像圧縮装置130によっては、量子化値を変更できない場合もある。
【0155】
第5の実施形態では、このような場合であっても、認識結果への影響度合いに応じた加工処理を行うことで、画像認識処理に適したデータサイズ削減処理を実現する。以下、第5の実施形態について、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0156】
<画像処理システムのシステム構成>
図14は、画像処理システムのシステム構成の一例を示す第4の図である。図14を用いて第5の実施形態に係る画像処理システム1400のシステム構成について説明する。
【0157】
図14に示すように、画像処理システム1400は、撮像装置110、画像認識装置120、画像加工装置1410、画像圧縮装置130を有する。
【0158】
撮像装置110により画像データが送信されると、画像認識装置120では、画像データについて認識処理するとともに、認識結果への影響度合いを処理ブロックごとに集計したマップを生成する。また、画像認識装置120は、画像データ及びマップを画像加工装置1410に送信する。
【0159】
画像加工装置1410は実行部として機能する装置であり、画像圧縮装置130による圧縮処理によって、データサイズ削減処理を実現可能なデータ(加工データ)に、画像データを加工する。
【0160】
具体的には、画像加工装置1410は、画像データのデータサイズを削減するための処理として、
・画像データの各処理ブロックのうち、マップにおいて集計結果の値が低い処理ブロックを無効化する、
・画像データの各処理ブロックのうち、マップにおいて集計結果の値が低い処理ブロックについて、高周波成分を除去する、
・画像データの各処理ブロックのうち、マップにおいて集計結果の値が低い処理ブロックについて、色成分を除去する、
等の加工処理を行う。なお、画像加工装置1410において行われるこれらの加工処理は一例であり、これらのいずれかの加工処理が行われてもよいし、他の加工処理が行われてもよい(加工処理の方法は任意である)。また、マップにおける各処理ブロックの集計結果の値と、加工処理の方法との関係は、予め定められているものとする。
【0161】
画像加工装置1410では、画像データを加工処理することで生成した加工データを画像圧縮装置130に送信する。
【0162】
画像圧縮装置130では、画像加工装置1410から送信された加工データについて、予め定められた量子化値を用いて圧縮処理し、圧縮データを生成する。また、画像圧縮装置130では、生成した圧縮データをストレージ装置140に格納する。
【0163】
このように、画像処理システム1400によれば、画像圧縮装置130が、圧縮処理の際に量子化値を変更できない場合であっても、認識結果への影響度合いに応じた圧縮データを生成することができる。
【0164】
[その他の実施形態]
上記第2の実施形態では、認識結果に含まれる位置情報に基づいて対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量を算出するものとして説明した。しかしながら、対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量の算出方法はこれに限定されず、任意のトラッキングアルゴリズムを用いて、対象オブジェクトの位置及びサイズの変化量を算出してもよい。
【0165】
また、上記第5の実施形態では、画像圧縮装置130が、圧縮処理の際に量子化値を変更できない場合に、画像加工装置1410を設けるものとして説明した。しかしながら、画像圧縮装置130が、圧縮処理の際に量子化値を変更できる場合であっても、画像加工装置1410を設け、加工処理を行うようにしてもよい。
【0166】
また、上記各実施形態では、CNN部320が認識処理することで、対象オブジェクトの有無を判定するものとして説明した。しかしながら、対象オブジェクトの有無の判定方法はこれに限定されず、CNN部320の前に抽出部等を設け、当該抽出部等が画像データから対象オブジェクトを抽出する処理を行うことで、対象オブジェクトの有無を判定するようにしてもよい。
【0167】
また、上記各実施形態では、対象オブジェクトが含まれない画像データについても、圧縮処理してストレージ装置に格納するものとして説明した。しかしながら、対象オブジェクトが含まれない画像データについては、ストレージ装置への格納を行わないようにしてもよい。
【0168】
また、上記各実施形態では、画像認識装置120と画像圧縮装置130とを別体として示したが、画像認識装置120と画像圧縮装置130は、一体の装置であってもよい。この場合、当該一体化した装置にインストールされた画像処理プログラム(画像認識プログラム+画像圧縮プログラム)が実行されることで、当該一体化した装置は、入力部310~出力部340及び決定部610~符号化部620として機能する。
【0169】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0170】
100 :画像処理システム
110 :撮像装置
120 :画像認識装置
130 :画像圧縮装置
140 :ストレージ装置
310 :入力部
320 :CNN部
330 :マップ生成部
340 :出力部
410 :重要特徴マップ生成部
510 :リファイン画像生成部
520 :重要特徴指標マップ生成部
610 :決定部
611 :量子化値決定部
911 :位置修正部
1200 :画像処理システム
1220 :差分画像生成部
1230 :高速ストレージ装置
1240 :低コストストレージ装置
1310 :縮小または切り出し装置
1320 :復号装置
1330 :拡大またはマージ装置
1340 :差分装置
1350 :画像圧縮装置
1360 :復号装置
1370 :加算装置
図1
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