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特許7444184水処理システム、水処理方法および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】水処理システム、水処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20240228BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20240228BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240228BHJP
【FI】
G05B11/36 Z
G05B13/04
C02F1/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022025013
(22)【出願日】2022-02-21
(65)【公開番号】P2023121593
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 康弘
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-503639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0207271(US,A1)
【文献】横山 雄ほか,プラント運転の自動化を実現するソリューションと上下水道統合プラットフォーム TOSWACS,東芝レビュー ,日本,株式会社東芝,2019年01月, VOL.74 NO.1,pp.40-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/36
G05B 13/04
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理プロセスを実行する各水処理デバイスと、前記各水処理デバイスの最適化運転のための制御を実行する制御装置と、エッジコンピュータと、を含む設備システムと、
前記各水処理デバイスを仮想化した仮想システムを用いて、前記水処理プロセスの制御内容を決定し、前記設備システムの前記制御装置を介して、前記制御内容に基づき前記設備システムの前記水処理プロセスを制御する管理装置を含む管理システムと、を有し、
前記設備システムの前記エッジコンピュータは、
前記各水処理デバイスの運転状況に関するデバイス情報に基づき、設計段階で定められた仕様の範囲内である第1条件にしたがって制御内容を決定し、前記第1条件にしたがった制御内容を前記設備システムの前記制御装置に指示し、
前記管理システムの管理装置は、
前記仮想システムを用いて、前記設計段階で定められた仕様の範囲外であって前記設備システムの外部から指定された第2条件にしたがって制御内容を決定し、前記第2条件にしたがった制御内容前記エッジコンピュータを介して前記設備システムの前記制御装置に指示し、
前記設備システムの前記制御装置は、
前記エッジコンピュータから指示された前記第1条件にしたがった制御内容、または前記管理装置から前記エッジコンピュータを介して指示された前記第2条件にしたがった制御内容を用いて、制御ロジックを更新し、
更新後の制御ロジックに基づいて、前記各水処理デバイスの最適化運転のための制御を実行する、
水処理システム。
【請求項2】
前記水処理システムは、
それぞれが前記各水処理デバイスと前記制御装置を有する複数の設備システムを有し、
前記複数の設備システムの各制御装置は、
属する前記設備システム内の前記各水処理デバイスの運転状況に関するデバイス情報を用いて、属する前記設備システム内の前記水処理プロセスの最適化を実行する制御部、
を有する請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記管理システムの前記管理装置は、
前記複数の設備システムそれぞれの前記各制御装置から、前記水処理プロセスの運転状況に関するプロセス情報を取得し、
前記複数の設備システムそれぞれの前記プロセス情報に基づき、前記複数の設備システム全体を最適化する制御内容を生成し、
前記複数の設備システムの各制御装置に、前記制御内容を出力する、制御部を有し、
前記複数の設備システムの各制御装置は、
前記管理装置から出力された前記制御内容にしたがって、属する前記設備システム内の前記水処理プロセスの最適化を実行する、
請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記設備システムは、
前記各水処理デバイスごとに前記制御装置を有し、
前記管理システムの前記管理装置は、
各制御装置を介して、前記各水処理デバイスの運転制御を実行する制御部、
を有する請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、
前記水処理プロセスの運転状況に関するプロセス情報を前記制御装置から取得し、
前記仮想システムと前記プロセス情報とを用いて、前記水処理プロセスのシミュレーションを実行し、
前記制御装置を介して、前記シミュレーションの結果に基づいた前記水処理プロセスの制御を実行する、
制御部を有する請求項1に記載の水処理システム。
【請求項6】
水処理プロセスを実行する各水処理デバイスと、前記各水処理デバイスの最適化運転のための制御を実行する制御装置と、エッジコンピュータと、を含む設備システム、および、前記各水処理デバイスを仮想化した仮想システムを用いて、前記水処理プロセスの制御内容を決定し、前記設備システムの前記制御装置を介して、前記制御内容に基づき前記設備システムの前記水処理プロセスを制御する管理装置を含む管理システム、有する水処理システムが実行する水処理方法において、
前記設備システムの前記エッジコンピュータは、
前記各水処理デバイスの運転状況に関するデバイス情報に基づき、設計段階で定められた仕様の範囲内である第1条件にしたがって制御内容を決定し、前記第1条件にしたがった制御内容を前記設備システムの前記制御装置に指示し、
前記管理システムの管理装置は、
前記仮想システムを用いて、前記設計段階で定められた仕様の範囲外であって前記設備システムの外部から指定された第2条件にしたがって制御内容を決定し、前記第2条件にしたがった制御内容前記エッジコンピュータを介して前記設備システムの前記制御装置に指示し、
前記設備システムの前記制御装置は、
前記エッジコンピュータから指示された前記第1条件にしたがった制御内容、または前記管理装置から前記エッジコンピュータを介して指示された前記第2条件にしたがった制御内容を用いて、制御ロジックを更新し、
更新後の制御ロジックに基づいて、前記各水処理デバイスの最適化運転のための制御を実行する、
水処理方法。
【請求項7】
水処理プロセスを実行する各水処理デバイスと、前記各水処理デバイスの最適化運転のための制御を実行する制御装置と、前記各水処理デバイスの運転状況に関するデバイス情報に基づき、設計段階で定められた仕様の範囲内である第1条件にしたがって制御内容を決定し、前記第1条件にしたがった制御内容を前記制御装置に指示し、前記制御装置に制御ロジックを更新させるエッジコンピュータと、を含む、設備システム内の前記各水処理デバイスを仮想化した仮想システムを生成し、
前記仮想システムを用いて前記水処理プロセスの制御内容を決定し、
前記設備システム内で水処理プロセスを実行する各水処理デバイスの制御を実行する制御装置を介して、前記制御内容に基づき前記設備システムの前記水処理プロセスを制御する、制御部を有し、
前記制御部は、
前記仮想システムを用いて、前記設計段階で定められた仕様の範囲外であって前記設備システムの外部から指定された第2条件にしたがって制御内容を決定し、前記第2条件にしたがった制御内容前記エッジコンピュータを介して前記設備システムの前記制御装置に指示し、前記制御装置に制御ロジックを更新させる、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム、水処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場などで用いられる水処理システムは、非処理対象である水に対して直接的に作用を及ぼす4種類の機能を有するシステム(レベル0)の組み合わせによって構成される。なお、4種類の機能を実行する各デバイスは、物理的に水を濾過する処理を実行するデバイス(Membrane)、化学的に水を酸化または消毒する処理を実行するデバイス(UV/Cl/Ozone)、水を搬送制御する配管、ポンプ、バルブなどのデバイス(Mechanical Components)、水質、水量、水温、水圧等の制御に必要な計測装置及びソフトウェアを含むデバイス(Control H&S)である。
【0003】
このような水処理システムでは、各デバイスより上位に位置するPLC(Programmable Logic Controller)を用いた制御単位のロジックにより、PLCから下位に位置する上記各デバイスへ各種命令を実行することで、安全操業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-025943号公報
【文献】特開2020-065964号公報
【文献】特開2019-010614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の水処理システムでは、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を用いた運転制御が実現されている。例えば、AIを用いた運転制御では、レベル0のシステムである各末端のデバイスから徐々に上位のシステムへ、構成的かつ入出力データとしても段階的に纏められ、最終的には、AIエンジン(機械学習モデル)が人間の思考を模して、最適化した解を導出し、その解にしたがって、各デバイスへと命令が送信される。
【0006】
しかしながら、上記水処理システムは、レベル1、レベル2以下で構成されたシステムであり、PLCによるシーケンス制御で制御され、そのシーケンス制御としてPID(P:比例、I:積分、D:微分)制御が一般的に用いられている。この場合、システムが遭遇する負荷に対応した運転値の付与、運転の中断やトラブル回避の指令を実行することはできるが、一方で、AIを活用した自動化運転を考慮した設計ではないことから、最適な自動化運転が実現されているとは言い難い。
【0007】
本発明は、水処理システムの最適な自動化運転を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面にかかる水処理システムは、水処理プロセスを実行する各水処理デバイスと、前記各水処理デバイスの制御を実行する制御装置と、を含む設備システムと、前記各水処理デバイスを仮想化した仮想システムを用いて、前記水処理プロセスの制御内容を決定し、前記設備システムの前記制御装置を介して、前記制御内容に基づき前記設備システムの前記水処理プロセスを制御する管理装置を含む管理システムと、を有する。
【0009】
本発明の一側面にかかる水処理システムは、設備システムと管理システムとを含む水処理システムが実行する水処理方法において、前記設備システムの制御装置が、水処理プロセスを実行する各水処理デバイスの運転制御を実行し、前記管理システムの管理装置が、前記各水処理デバイスを仮想化した仮想システムを用いて、前記水処理プロセスの制御内容を決定し、前記設備システムの前記制御装置を介して、前記制御内容に基づき前記設備システムの前記水処理プロセスを制御する。
【0010】
本発明の一側面にかかる情報処理装置は、設備システム内で水処理プロセスを実行する各水処理デバイスを仮想化した仮想システムを生成し、前記仮想システムを用いて前記水処理プロセスの制御内容を決定し、前記設備システム内で水処理プロセスを実行する各水処理デバイスの制御を実行する制御装置を介して、前記制御内容に基づき前記設備システムの前記水処理プロセスを制御する、制御部を有する。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、水処理システムの最適な自動化運転を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1にかかる水処理システムの全体構成を説明する図である。
図2】参考技術の水処理システムのアーキテクチャを説明する図である。
図3】実施形態1にかかる水処理システムの機能構成を示す機能ブロック図である。
図4】設備システムが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図5】管理システムにより実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施形態2にかかる水処理システムのアーキテクチャを説明する図である。
図7】実施形態3にかかる水処理システムのアーキテクチャを説明する図である。
図8】ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本願の開示する水処理システム、水処理方法および情報処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。各実施形態は、矛盾のない範囲内で適宜組み合わせることができる。
【0014】
<実施形態1>
<全体構成(アーキテクチャ)>
図1は、実施形態1にかかる水処理システムの全体構成を説明する図である。図1に示す水処理システム1は、高度な水処理を実行して、下水や雨水などの排水から飲料水を生成するシステムの一例である。この水処理システム1は、大きく2つのカテゴリーに分類して構成されている。1つは、Plant-Level-System and Softwareに該当する管理システム5であり、もう一つは、実設備(実システム)を構成するEdge Device/Node Levelに該当する設備システム2である。
【0015】
設備システム2は、水処理プロセスを実行する各水処理デバイスを有し、管理システム5とネットワークNを介して接続される。なお、ネットワークNには、専用線、LAN(Local Area Network)、VLAN(Virtual Local Area Network)、インターネットなどの様々なネットワークを採用することができる。
【0016】
設備システム2は、水処理デバイス群20、PLC30、エッジコンピュータ40を有する。水処理デバイス群20は、ノードレベルのエッジデバイスを有する。ここで、ノードレベルのエッジデバイスには、Membranes20a、UV/Cl/Ozone20b、Mechanical components20c、Control H&S20d、Filtration Systems20e、Disinfection Systems20f、Testing and Analysis20g、Advanced Testing20hが含まれる。なお、これらのデバイスは、モジュール化されており、デバイスごとに制御が可能である。
【0017】
Membranes20aは、物理的に水を濾過する処理を実行するデバイスである。UV/Cl/Ozone20bは、化学的に水を促進酸化または消毒する処理を実行するデバイスである。Mechanical components20cは、水を搬送制御する配管、ポンプ、バルブなどのデバイスである。Control H&S20dは、水質、水量、水圧、水温等の制御に必要な計測装置及びソフトウェアを含むデバイスである。
【0018】
Filtration Systems20eは、上記20aから20dの各デバイスの任意組み合わせにより構成され、水に対して濾過を実行するデバイス(システム)である。Disinfection Systems20fは、20aから20dの各デバイスの任意組み合わせにより構成され、水に対して紫外線や熱などを用いて消毒を実行するデバイス(システム)である。Testing and Analysis20gは、Filtration Systems20eやDisinfection System20fが、物理的または化学的な水処理を施すデバイス(システム)またはこれら水処理プロセスであるのに対して、pH、電気伝導率、濁度、水温、紫外線吸光光度、COD(Chemical Oxygen Demand)、窒素(アンモニア性窒素、硝酸性窒素、全窒素)などの一般的な検査および分析を実行するデバイスである。Testing and Analysis20gは、機械的プロセス管理(例えば、ポンプのオンオフ、バルブの開閉)や、運転の品質管理(例えば水量、水圧、水質)に関わる計測およびアナログまたはデジタル信号の発信及び伝送機能を具備している。Advanced Testing20hは、Filtration System20eまたはDisinfection Systems20f若しくはその両方により濾過または消毒若しくはその両方の処理を施された水に対して、PCR(Polymerase Chain Reaction)、TOC(Total Organic Carbon)、ATP(Adenosine Tri-Phosphate)などの高度な検査および分析を実行するデバイスである。Advanced Testing20hは、運転の品質管理のうち人体に安全な水質を管理に関わる計測およびアナログまたはデジタル信号の発信及び伝送機能を具備している。
【0019】
PLC30は、レベル0、レベル1、レベル2以下の各デバイスに対して上述したシーケンス制御を実施するコンピュータの一例である。また、PLC30は、より上位に位置するエッジコンピュータ40からの指示にしたがって、各水処理デバイスへ各種命令を実行する。
【0020】
エッジコンピュータ40は、設備システム2内における水処理プロセスの運転制御を実行する。例えば、エッジコンピュータ40は、PLC30から、水処理プロセスの制御状況、制御内容、制御結果、処理状況などのデータを受信し、当該データを用いたシミュレーションや当該データを用いた機械学習モデルによる予測を実行し、水処理プロセスの状態予測の結果などを取得する。そして、エッジコンピュータ40は、水処理プロセスの状態予測の結果を用いて、水処理プロセスの改善、品質向上、コスト削減、生産量の調整などを行うために、PLC30に対して制御内容を通知する。
【0021】
管理システム5は、設備システム2全体を制御することで、水処理プロセスを制御するコンピュータの一例であり、プラントレベルのシステムとソフトウェアを有する。この管理システム5は、管理装置50を有し、管理装置50には、実設備のレベルで構成されたシステムを模した仮想モジュール(仮想システム)を生成するデジタルツイン50aと、デジタルツイン50aを動作させ、実設備である設備システム2を制御するAIエンジン50bが含まれる。なお、管理システム5は、メモリやプロセッサを有する物理マシンやクラウドコンピューティングなどにより実現することができる。管理装置50は、物理マシンで実現することもでき、仮想技術を用いた仮想マシンやコンテナなどで実現することもできる。
【0022】
デジタルツイン50aは、物理空間にある設備システム2および各装置から各種情報を収集し、収集された各種情報を用いて仮想空間で物理空間を再現する。すなわち、デジタルツイン50aは、実設備である設備システム2と同じ変動をシミュレートする仮想システムを仮想的に構成する。デジタルツイン50aがシミュレートする仮想システムは、それぞれの水処理デバイスの要素やそれを組み合せた仮想末端デバイスや仮想モジュールによって構成される。仮想モジュールは、実設備である設備システム2の各水処理デバイスに対応した仮想水処理デバイスによって構成される。
【0023】
また、仮想システム上では、事前に収集した実設備のデータや実設備から逐次送られてくるデータに基づき、仮想末端デバイスや仮想モジュールに対して、入出力の因果関係を直接的または間接的に算出することができるパラメータを設定、更新することができる。このパラメータの設定、更新は、後述するAIエンジン50bによって実行される。
【0024】
なお、デジタルツイン50aは、モジュールの各仮想水処理デバイスや、仮想的にモジュールを自由に組み合わせて、仮想システムを形成することもできる。
【0025】
AIエンジン50bは、デジタルツイン50a上の仮想システムを、実設備を模した構成だけではなく、個々の仮想水処理デバイスから成るモジュールと仮想モジュールを照合させることで、さまざまな環境に最適な仮想運転条件を導出し、且つ入出力値を算出することができる。そして、AIエンジン50bは、最適な仮想運転条件や入出力値を管理者等に出力したり、エッジコンピュータ40に通知してパラメータ更新を実行したりする。
【0026】
また、AIエンジン50bは、デジタルツイン50aにより実現される仮想システム上において、突発的な変動に対して仮想システム上でシミュレートし、最適なシステム上の構成を特定する。そして、AIエンジン50bは、システム上の最適な構成への変更を管理者等に出力したり、エッジコンピュータ40がシミュレーション等に使用するパラメータを更新したりする。
【0027】
また、AIエンジン50bは、深層学習などを用いた機械学習モデルなどを利用することもできる。なお、管理装置50は、クラウドシステムで実現されてもよく、モジュール内に配置されていてもよい。管理装置50は、仮想システムの構成を表す模式図や、実システムの構成を表す模式図、各水処理デバイス、各モジュール、各仮想水処理デバイス、各水処理モジュールの入出力値やパラメータを表示する機能を有していてもよい。
【0028】
(参考技術の説明、問題点)
ここで、一般的に利用されている水処理システムを参考技術として説明する。図2は、参考技術の水処理システム200のアーキテクチャを説明する図である。図2に示すように、浄水場などの水処理システム200は、レベル0の装置およびシステム、レベル0およびレベル1の高度水処理浄化システム、レベル1およびレベル2の制御システム、レベル3およびレベル3.5のプラントレベルのシステムとソフトウェアから構成される。
【0029】
このような水処理システム200は、被処理水や設置環境、処理の目的に応じたシステム全体の制御を行うために、これらレベル0のシステムを組み合わせ、Filtration Systems、Disinfection Systemsなどのレベル1およびレベル2のシステムとしてモジュール化した構成で構築される。
【0030】
また、水処理システム200では、これらモジュール化したレベル0のシステムまたは、レベル0およびレベル1のシステムに対して、それぞれ、検査および解析(Testing and Analysis)が行われる。さらに上位のシステムとなるレベル1およびレベル2のシステムは、センサーアレイ(Sensor Array)とネットワークインフラとデータの送受信を制御するサーバなどを有し、これらにより、モジュール化されたレベル0のシステムまたは、レベル0およびレベル1のシステムで実行された検査データや分析データを受信する。
【0031】
さらに、レベル1およびレベル2のシステムには、レベル1およびレベル2の機能が一体化されたPLCと、PLCから収集伝達された情報を纏めてシステム全体を人的に操作するためのHMI(Human Machine Interface)が含まれる。
【0032】
近年では、HMIを介した人間による制御をさらに進化させ、さらに上位のレベル3およびレベル3.5のシステムとして、ML(Machine Learning:機械学習)を用いた人工知能(AI)エンジンを搭載したシステムを導入することによってさらなる安定した水処理システムの稼働を実現している。この場合、レベル1およびレベル2のシステムからレベル3およびレベル3.5のシステムへのインタフェース間には、Data Historianが設けられる。Data Historianを介することで、人間の経験に頼ってきた制御を、AIに学習させることにより、人間に代わってAIが水処理システム全体の制御を行うことが実現されている。
【0033】
上述したように、参考技術である水処理システム200は、各末端のデバイス(レベル0のシステム)から、徐々に上位のシステムへ、構成的かつ入出力データとしても段階的に纏められる。水処理システム200は、最終的に、AIエンジンが人間の思考を模して、最適化した解を導出し、その解を用いて、各デバイス(レベル0のシステム)へと命令を送るというシステムである。
【0034】
しかしながら、このような水処理システム200は、レベル1やレベル2以下のシステムで構成されている。また、AIを活用した自動化運転という発想でこれらシステムは設計されていない。MLによるAIの発達以前は、コンピュータまたは人間が管理しきれるように、複雑なシステムを段階的にまとめ上げて階層的なシステムとなっている。すなわち、人間やデータ解析によって状態の把握や管理できるよう末端のレベル0のデバイスの信号や挙動を受信して、管理すべき項目を絞り込み、フィードバック等による制御方策を提案してきた。しかしながら、MLを用いてAIによる最適化を、水処理システム全体で実施するためには、階層毎の制御ループの最適化を図る必要があり、各デバイスを総括的に制御し、全体最適化に至っていないのが現状である。
【0035】
さらに、階層化しているが故に、低レベルのシステム、すなわちレベル0のデバイスの組み合わせを、デバイスの増設や階層間をまたいだ入れ替え等を考慮した水処理システム全体の最適化には程遠い。さらに複数の水処理システムの連携という観点からも、各デバイスのデータ流用が難しいことから、他施設での運転実績をAIにより学習や解析させるためのデータの蓄積が十分とは言えないものである。水処理システム(施設)における運転支援装置として、シミュレータを用いたものが提案されているが、あくまで実際の設備を模したシミュレータであり、実際の設備が全体最適されたものとは言い難い。
【0036】
そこで、近年利用されている水処理システム200の問題点を鑑み、実施形態1では、機械学習、シミュレーション、仮想化技術などを用いて、エッジコンピュータ40に対して実設備の外部から水処理プロセスを制御することで、水処理システムの最適な自動化運転を実現することができる水処理システム1を説明する。
【0037】
<水処理システム1の機能構成>
図3は、実施形態1にかかる水処理システム1の機能構成を示す機能ブロック図である。図3に示すように、水処理システム1は、設備システム2と管理システム5を有する。
【0038】
(設備システム2の構成)
設備システム2は、水処理プロセスを実行するシステムであり、水処理デバイス群20、PLC30、エッジコンピュータ40を有する。この設備システム2は、階層化された機能的システム構成ではなく、個々の水処理デバイス及びエッジコンピュータ40を含んだ最低限の運転制御を行うモジュールを成している。このモジュールは、管理システム5(Plant-Level-System and Software)から直接制御可能なように、配置され、組み合わされた構成とすることもできる。
【0039】
水処理デバイス群20は、濾過、消毒、配管、計測などを含む水処理プロセスを実行する各水処理デバイスを有する。例えば、水処理デバイス群20は、Membranes UF-RO20a、UVAOP Ozone20b、Mechanical components20c、Control H&S20dなどを有する。なお、個々の水処理デバイスは、モジュール内で、並列に組み合わせたり、直列に組み合わせたり、複数配置したりなど自由に配置することができる。さらに、モジュールは、水処理デバイスだけでなく、サンプリングや水質や性能を分析し解析できる解析デバイスを含んでいてもよい。
【0040】
PLC30は、水処理デバイス群20内の各デバイスへ各種命令やシーケンス制御を実行する装置の一例である。例えば、PLC30は、水処理システム1の設計段階や運転開始段階など初期段階で予め定められた、PIDなどの制御を含むロジック(制御ロジック)にしたがって、各水処理デバイスに対して、水温の変更、バルブの開閉制御、水量の制御などの水処理プロセスに関する各種制御を実行し、その結果(デバイス情報)をエッジコンピュータ40に送信する。
【0041】
また、PLC30は、より上位に位置するエッジコンピュータ40からの指示にしたがって、ロジック等の修正、追加、変更、削除を実行する。そして、PLC30は、更新後のロジック等にしたがって、水温の変更、バルブの開閉制御、水量の制御などの各種制御を実行する。
【0042】
エッジコンピュータ40は、水処理プロセスの制御単位で実行された各水処理デバイスの運転の結果に基づき、設備システム2内における水処理プロセスの運転制御を実行する装置の一例である。このエッジコンピュータ40は、通信部41、記憶部42、制御部43を有する。
【0043】
通信部41は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部41は、水処理デバイス群20内の各水処理デバイスから、状態や制御結果などの水処理プロセスに関するデータを受信し、管理装置50から、各種データを受信する。また、通信部41は、PLC30に対して、制御命令等を含む各種データを送信し、管理装置50に対して、水処理プロセスに関する各種データやPLC30の制御に関する各種データを送信する。
【0044】
記憶部42は、各種データや制御部43が実行するプログラムなどを記憶する処理部の一例であり、例えばメモリやハードディスクなどにより実現される。
【0045】
制御部43は、エッジコンピュータ40全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。具体的には、制御部43は、属する設備システム2内の各水処理デバイスの運転状況に関するデバイス情報を用いて、属する設備システム2内の水処理プロセスの最適化を実行する。
【0046】
例えば、デバイス情報の一例としては、水処理デバイスごとに正常運転中か否かを示す情報、水処理デバイスごとに現在の設定値(例えば水量、温度、バルブの開閉度など)による処理の内容、水処理デバイスごとにPLC30から指示された制御内容などを含む情報が挙げられる。
【0047】
そして、制御部43は、各デバイス情報に基づき、設備システム2内の水処理プロセスに関連する第1条件を生成する。その後、制御部43は、第1条件にしたがって、PLC30に対して、処理の実行や処理の変更などを出力する。なお、第1条件の例としては、設備システム2の設計段階においてクライアントの条件等にしたがった仕様の範囲であって、水質、消毒時間、生産量などのように設備システム2内で制御可能な運転条件が含まれる。
【0048】
具体例を挙げると、制御部43は、各水処理デバイスから、水処理プロセスの状況、各水処理デバイスの運転状況などを取得する。また、制御部43は、PLC30から、PLC30によるロジック等の実行結果などを取得する。そして、制御部43は、取得した各データを用いて、シミュレーションの実行や機械学習モデルによる予測を実行し、水処理プロセスの状態、危険度、コストなど予め指定した項目の予測結果を取得する。その後、制御部43は、予測結果にしたがって、PLC30に制御内容の変更等を実行する。
【0049】
より詳細には、制御部43は、生産量が減少すると予測された場合に生産量を増量させるためにバルブの開度を大きくしたり、数時間後に異常高温のアラーム出力が予測された温度調整デバイスを起動させたりする。
【0050】
すなわち、制御部43(エッジコンピュータ40)は、設備システム2内の設計時に予め定めた仕様の範囲内で、生産量の維持、コスト削減や安定運転を行うために、水処理システム1の最適化運転のための制御を実行することができる。
【0051】
また、制御部43は、管理システム5(Plant-Level-System and Software)からの指示にしたがって、属する設備システム2内の水処理プロセスの最適化を実行することで、PLC30が有するロジック等の変更や追加等を実行することもできる。例えば、制御部43は、生産量を増量させるために水量を増加するロジック等を追加したり、既存のロジック等に設定されている温度異常の閾値を管理システム5側で新たに設定された新閾値に変更したり、コスト削減のために一部のロジック等を削減したりする。
【0052】
すなわち、制御部43(エッジコンピュータ40)は、管理システム5(Plant-Level-System and Software)の指示に従って、設備システム2内の設計時に予め定めた仕様の範囲を超えて、水処理システム1の最適化運転のための制御を実行することもできる。もっとも、あくまで一例であり、管理システム5(Plant-Level-System and Software)からの指示が、設備システム2内の設計時に予め定めた仕様の範囲内であってもよい。
【0053】
(管理システム5の構成)
図3に示すように、管理システム5は、物理マシンもしくは仮想マシンで実現される管理装置50を有する。管理装置50は、通信部51、記憶部52、制御部53を有する。
【0054】
通信部51は、他の装置との間の通信を制御する処理部であり、例えば通信インタフェースなどにより実現される。例えば、通信部51は、エッジコンピュータ40から、PLC30による制御内容や設備システム2内で発生する各種データを受信する。また、通信部51は、エッジコンピュータ40に対して、制御部53により生成された各種データを送信する。
【0055】
記憶部52は、各種データや制御部53が実行するプログラムなどを記憶する処理部の一例であり、例えばメモリやプロセッサにより実現される。
【0056】
制御部53は、管理装置50全体を司る処理部であり、例えばプロセッサなどにより実現される。具体的には、制御部53は、仮想処理部53aと制御管理部53bを有し、エッジコンピュータ40を介して、設備システム2内における水処理プロセスの運転制御を実行する。
【0057】
仮想処理部53aは、設備システム2内における水処理プロセスの運転状況に関するデータをエッジコンピュータ40から取得し、仮想化技術を用いて仮想化した各水処理デバイスと取得されたデータとを用いて水処理プロセスのシミュレーションを実行する処理部である。すなわち、仮想処理部53aは、図1のデジタルツイン50aに対応し、実設備である設備システム2と同じ変動をシミュレートする仮想システムを仮想的に構成する。
【0058】
制御管理部53bは、エッジコンピュータ40を介して、設備システム2内における前処理プロセスの制御を実行する処理部である。具体的には、制御管理部53bは、図1のAIエンジン50bに対応し、設備システム2の仕様変更、要求変更、生成される水総量の需要変更などが発生した場合に、仮想処理部53aによるシミュレーションを実行する。そして、制御管理部53bは、シミュレーション結果に基づき、PLC30で現在実行されているロジック等の変更等を実行する。
【0059】
例えば、制御管理部53bは、設備システム2のエッジコンピュータ40から、水処理プロセスの運転状況に関するプロセス情報を取得し、取得されたプロセス情報に基づき、設備システム2全体を最適化する制御内容を生成する。そして、制御管理部53bは、設備システム2のエッジコンピュータ40に、制御内容を出力する。なお、プロセス情報の例としては、エッジコンピュータ40がPLC30へ指示した制御内容、その制御内容により実行された水処理プロセスの実行状況、仮想処理部53a(デジタルツイン50a)により実行されたシミュレーションの内容等が含まれる。
【0060】
制御管理部53bは、最適化の一例として、訓練済みの機械学習モデルなどを用いて、設備システム2内の水処理プロセスに関する各種予測を実行することができる。例えば、制御管理部53bは、仮想処理部53a(デジタルツイン50a)により取得、生成、シミュレーションされた各種データを用いて、水処理プロセスに関連する第2条件を生成する。そして、制御管理部53bは、第2条件にしたがって、エッジコンピュータ40に制御内容を通知する。この結果、エッジコンピュータ40が、PLC30を介して制御内容の変更等を実行する。
【0061】
なお、第2条件としては、設備システム2の外部から指定等された情報にしたがった運転内容等が含まれる。例えば、制御管理部53bは、設備システム2の仕様範囲外であって、クライアントの仕様変更が発生した場合やコスト等などを含めたクライアントへの改善提案などを行う場合に、仮想処理部53a(デジタルツイン50a)を用いてシミュレーションを実行する。その後、クライアント等によりシミュレーション結果が許可されると、制御管理部53bは、シミュレーションの結果にしたがってロジック等の変更の指示や変更後のロジック等を、エッジコンピュータ40に出力する。
【0062】
<処理の流れ>
次に、設備システム2で実行される処理の流れの一例と管理システム5で実行される処理の流れの一例とについて説明する。
【0063】
(設備システム2の処理)
図4は、設備システム2が実行する処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すように、予め定めた制御タイミングに到達すると(S101:Yes)、PLC30が、設定済みのロジック等に基づき水処理プロセスの制御を実行する(S102)。すると、エッジコンピュータ40が、PLC30による制御結果を取得し(S103)、PLC30による制御結果に基づき、異常検出や正常値からの離脱などの発生を検出して、制御変更か否かを判定する(S104)。
【0064】
ここで、エッジコンピュータ40は、制御変更が必要と判定すると(S104:Yes)、シミュレーション等を実行し(S105)、対応策として実行する制御内容を決定する(S106)。
【0065】
そして、エッジコンピュータ40は、制御内容をPLC30に通知し(S107)、PLC30は、通知された制御内容に基づき、設定されているロジック等の変更などを行って、水処理プロセスの制御を実行する(S108)。
【0066】
(管理システム5の処理)
図5は、管理システム5により実行される処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すように、管理システム5は、エッジコンピュータ40を介して、設備システム2から、水処理プロセスに関する状態や処理結果などのデータを取得すると(S201:Yes)、取得データを蓄積する(S202)。
【0067】
そして、管理システム5は、需要変更、設定変更、要求変更、異常事態などを含む制御変更が発生すると(S203:Yes)、取得データを用いた、仮想処理部53a(デジタルツイン50a)により生成された水処理プロセスの仮想システムによるシミュレーションを実行する(S204)。
【0068】
その後、管理システム5は、シミュレーション結果と設計変更等を対応付けたテーブルなどを用いて、設備システム2の水処理プロセスの改善や設計変更を行うための制御内容を決定する(S205)。
【0069】
そして、管理システム5は、設備システム2のエッジコンピュータ40に、制御内容を通知する(S206)。この結果、エッジコンピュータ40がPLC30のロジック変更等を実行し、PLC30が新たなロジック等で処理を実行することで、水処理プロセスの変更等が実行される。なお、管理システム5は、シミュレーション等により生成された制御内容を、管理装置、ディスプレイ等に出力することもできる。
【0070】
<効果>
上述したように、実施形態1にかかる水処理システム1は、需要に応じたデバイスの増設要求に対して、モジュール増設を柔軟に実施できる。水処理システム1は、水処理デバイスの構成に依存せず、様々な水処理施設で利用されている個々の水処理デバイスから収集したデータを互いに流用することができるので、最適な制御を実現できる。
【0071】
水処理システム1は、エッジコンピュータ40を活用しモジュールレベルでの管理を行うことにより、稼働するモジュールまたは組み合わせを経験などによらず瞬時に算出し、自動的に提案することができる。水処理システム1は、環境変動の少ない設備において、突発的な環境変動に対する対処方法を、仮想システム上でシミュレートすることで、実設備での試験を行わずに入出力値を推定することができる。
【0072】
<実施形態2>
ところで、実施形態1では、設備システム2内において、1つのエッジコンピュータ40がPLC30を介して、水処理デバイス群20全体を制御する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、水処理デバイス群20内の各水処理デバイスに対してエッジコンピュータを設置し、水処理デバイス個々に対して、管理システム5が制御することもできる。そこで、実施形態2では、管理システム5が実設備における各水処理デバイスや構成されるモジュールに対して直接制御する例を説明する。
【0073】
図6は、実施形態2にかかる水処理システム1のアーキテクチャを説明する図である。図6に示すように、実施形態2にかかる水処理システム1は、実施形態1と同様、設備システム2と管理システム5を有する。
【0074】
実施形態1と異なる点は、設備システム2内のPLC30、水処理デバイス群20のデバイスA、デバイスB、デバイスCのそれぞれに対して、エッジコンピュータ40a、40b、40c、40dが設けられている点である。なお、エッジコンピュータ40a、40b、40c、40dは、実施形態1で説明したエッジコンピュータ40と同様の機能を有する。
【0075】
例えば、管理システム5は、各エッジコンピュータ40a、40b、40c、40dから、PLC30または各水処理デバイスの状態、制御状況、制御結果などのデータを取得する。そして、管理システム5は、仮想システムやAI(機械学習モデル)などを用いて、各水処理デバイスの運転に関する制御内容を生成する。そして、管理システム5は、生成した制御内容を、各エッジコンピュータ40a、40b、40c、40dに対して通知する。
【0076】
この結果、各エッジコンピュータ40a、40b、40c、40dが、PLCやデバイスごとに、管理システム5から通知された制御内容にしたがった制御を実行する。このように、管理システム5(AIエンジン50b)が最小単位の水処理デバイスをモジュール単位で直接制御することで、より最適な制御を高速で行うことができる。
【0077】
また、管理システム5は、処理システム全体最適化となる解が得ることができるので、モジュールを構成する各エッジコンピュータによる水処理デバイス単位で最適運転を図り、モジュールの組み合わせを図ることができる。また、管理システム5は、水処理デバイスに直接命令を送ることができるので、水処理デバイスへの操作速度が向上する。また、水処理デバイス間の組み合わせの自由度の向上、パラメータ組み合わせの自由度の向上、末端デバイス間における因果関係の考察が可能となる。管理システム5は、想定外の変動に対する対応策を迅速かつ適切に導出できる。
【0078】
<実施形態3>
ところで、実施形態1や実施形態2では、1つの管理システム5で1つの水処理システム(設備システム2)を管理制御する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1つの管理システム5が、水処理デバイスを複数組み合わせた統合システムを1つの水処理デバイスとして管理することで、水処理システム全体を俯瞰的に制御することができる。
【0079】
図7は、実施形態3にかかる水処理システム1のアーキテクチャを説明する図である。図7に示すように、実施形態3にかかる水処理システム1は、管理システム5と複数の設備システム2a、2b、2c、2dとを有する。
【0080】
ここで、管理システム5は、実施形態1で説明した管理システム5と同様の機能を有し、設備システム2a、2b、2c、2dそれぞれは、実施形態1で説明した設備システム2と同様の機能を有する。
【0081】
また、設備システム2aは、水処理デバイス群20a、PLC30a、エッジコンピュータ40aを有し、設備システム2bは、水処理デバイス群20b、PLC30b、エッジコンピュータ40bを有する。また、設備システム2cは、水処理デバイス群20c、PLC30c、エッジコンピュータ40cを有し、設備システム2dは、水処理デバイス群20d、PLC30d、エッジコンピュータ40dを有する。
【0082】
なお、水処理デバイス群20a、20b、20c、20dは、実施形態1で説明した水処理デバイス群20と同様の構成を有する。PLC30a、30b、30c、30dは、実施形態1で説明したPLC30と同様の機能を有する。エッジコンピュータ40a、40b、40c、40dは、実施形態1で説明したエッジコンピュータ40と同様の機能を有する。
【0083】
このような構成において、管理システム5は、1つの水処理システムからだけではなく、複数の水処理システムからデータを収集する。例えば、管理システム5は、各設備システム2a、2b、2c、2dから、水処理プロセスに関する各種データを取得する。そして、管理システム5は、複数の設備システムそれぞれの水処理プロセスの運転状況等に基づき、複数の設備システムの統合的な運転指標に関する制御内容を生成する。その後、管理システム5は、制御内容にしたがって、各設備システムの各エッジコンピュータが実行する水処理プロセスの運転制御を実行する。
【0084】
例えば、各設備システム2が同じ地域に設置される水処理システムを想定する。この状態で、管理システム5は、システム全体の生産量の増量が指示された場合であっても、生産量に余裕がある設備システム2bの稼働率を向上させる制御内容に変更することができる。この結果、管理システム5は、水処理システム全体の負荷を分散させて生産量を増大させることができるので、いずれかの水処理システムの停止に伴うリスク回避を行うことができる。
【0085】
また、上記状態で、管理システム5は、設備システム2aの生産量の増量が指示された場合であっても、運用コストが最も小さい設備システム2cの稼働率を向上させる制御内容に変更することができる。この結果、管理システム5は、水処理システム全体のコスト削減を実行しつつ、生産量の増量を実現することができる。
【0086】
また、管理システム5は、各設備システム2の運用状況、設備投資、コストなどを収集して統合的に管理することができる。この結果、管理システム5は、ある設備システムの運用負荷が異様に高い場合に、他の設備システムを利用することを、クライアントに提案することもできる。
【0087】
また、管理システム5は、クライアントの要求を満たす設備システム2aと設備システム2bとを製造して、水処理プロセスを実行する。その後、管理システム5は、クライアントの要求変更に伴い、新たな設備システムを生成する必要が生じた場合でも、同じ構成を有する設備システム2dの使用を提案することで、新たなシステム生成のコストを削減しつつ、クライアントの要求に対応することができる。
【0088】
上述したように、実施形態3にかかる水処理システム1では、個々の水処理システム(設備システム)によらず、複数の水処理システムから収集したデータを相互に流用し、最適化することができる。
【0089】
<実施形態4>
さて、これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0090】
(数値等)
上記実施形態で説明した水処理デバイスの数、設備システムの数、制御内容の具体例などは、あくまで一例であり、任意に変更することができる。また、実施形態で説明したフローチャートも、矛盾のない範囲内で処理の順序を変更することができる。
【0091】
(システム)
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、水処理システム1は、管理システム5(Plant-Level-System and Software)により算出された最適化した仮想システム構成を、実設備が自動的に模すように構成されていてもよい。
【0092】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散および統合して構成することができる。
【0093】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0094】
(ハードウェア)
次に、実施形態で説明したコンピュータのハードウェア構成例を説明する。なお、管理装置50とエッジコンピュータ40は同様のハードウェア構成とするので、ここでは、情報処理装置100として説明する。図8は、ハードウェア構成例を説明する図である。図8に示すように、情報処理装置100は、通信装置100a、HDD(Hard Disk Drive)100b、メモリ100c、プロセッサ100dを有する。また、図8に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0095】
通信装置100aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD100bは、図3に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0096】
プロセッサ100dは、図3に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100b等から読み出してメモリ100cに展開することで、図3等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、管理装置50を例にして説明すると、このプロセスは、管理装置50が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ100dは、仮想処理部53a、制御管理部53b等と同様の機能を有するプログラムをHDD100b等から読み出す。そして、プロセッサ100dは、仮想処理部53a、制御管理部53b等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0097】
このように、情報処理装置100は、プログラムを読み出して実行することで水処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置100は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置100によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0098】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 水処理システム
2 設備システム
5 管理システム
20 水処理デバイス群
30 PLC
40 エッジコンピュータ
41 通信部
42 記憶部
43 制御部
50 管理装置
51 通信部
52 記憶部
53 制御部
53a 仮想処理部
53b 制御管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8