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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】通信制御システム及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/10 20220101AFI20240228BHJP
【FI】
H04L47/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022530570
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2021021719
(87)【国際公開番号】W WO2021251370
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2020100139
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小石 高裕
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-080832(JP,A)
【文献】特開平06-209926(JP,A)
【文献】特開昭64-044680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信装置から第2通信装置に画像フレームデータを送信する通信制御システムであって、
前記第2通信装置は、
前記第1通信装置からの画像フレームデータを受信する受信バッファと、
前記受信バッファの残量を反映したタイミングでACKフレームを前記第1通信装置に返信する返信手段と、
を備え、
前記第1通信装置は、
前記第2通信装置の前記返信手段からの前記ACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から前記第2通信装置の前記受信バッファの残量を推定する推定手段と、
画像フレームから画像診断に必要な箇所を指定する領域指定手段と、
前記画像フレーム内の前記指定された画像診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量が少なくなるにつれて圧縮率が高くなるように画像圧縮を行う変更手段と、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に画像フレームデータを送信する送信手段と、
を備える、通信制御システム。
【請求項2】
前記変更手段は、前記推定された受信バッファの残量が閾値以下の場合、当該必要な箇所以外の不要領域を切り捨てる切り捨て処理を行う、請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記返信手段は、前記受信バッファの残量が少なくなるにつれて、段階的により遅くなるタイミングでACKフレームを返信する、請求項1又は2に記載の通信制御システム。
【請求項4】
前記変更手段は、前記指定された画像診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量が少なくなるにつれて、段階的に圧縮率が高くなるように画像を圧縮する、請求項1~3のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項5】
前記変更手段は、前記指定された画像診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量が閾値を超える場合、画像フレームの画像圧縮を行わない、請求項1~4のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項6】
前記変更手段は、前記指定された画像診断に必要な箇所について、画像フレームの画像圧縮を行わない、請求項1~5のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項7】
前記変更手段は、前記推定された受信バッファの残量が閾値を超える場合は、当該必要な箇所以外について、前記画像フレームデータを非圧縮画像データに設定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項8】
前記推定手段は、前記送信手段からの画像フレームデータの送信時刻と、当該画像フレームデータに対するACKフレームの受信時刻とを比較して、ACK受信時間を算出して、当該算出されたACK受信時間から前記受信バッファの残量を推定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の通信制御システム。
【請求項9】
第1通信装置から第2通信装置に画像フレームデータを送信する通信制御方法であって、
前記第2通信装置において、
前記第1通信装置からの画像フレームデータを受信バッファで受信し、
前記受信バッファの残量を反映したタイミングでACKフレームを前記第1通信装置に返信し、
前記第1通信装置において、
前記第2通信装置からの前記ACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から前記第2通信装置の前記受信バッファの残量を推定し、
画像フレームから画像診断に必要な箇所を指定し、
前記画像フレーム内の前記指定された画像診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量が少なくなるにつれて、圧縮率が高くなるように画像圧縮を行い、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に画像フレームデータを送信する、通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御システム及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信制御システムでは、第1通信装置(送信側)から第2通信装置(受信側)に画像フレームデータを送信し、当該画像フレームデータに対するACKフレームを第2通信装置から第1通信装置に返信する。ACKフレームは、受信したフレームに対応した番号を付けられ、送信側に返信される。これにより、送信側は、受信側での受信が失敗したことを知ることができ、場合によっては、当該画像フレームデータについて、再送を行うことができる。
【0003】
特許文献1には、撮影装置から送信された画像処理結果および/または画像データを、ディープラーニング処理などを用いて解析することができるデータ管理サーバが開示されている。また、特許文献2には、選択画像から画像受信装置20で認識認証処理を行うのに好適な領域を算出して抽出(トリミング)する画像データ量削減部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-200680号公報
【文献】特開2014-022970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなコンピュータシステムでは、受信バッファの残量に応じて、送信側で適切に画像圧縮を行うことはできない。
【0006】
本発明の目的は、受信バッファの残量に応じて、送信側で適切に画像圧縮を実行可能な通信制御システム、及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様にかかる通信制御システムは、
第1通信装置から第2通信装置に画像フレームデータを送信する通信制御システムであって、
前記第2通信装置は、
前記第1通信装置からの画像フレームデータを受信する受信バッファと、
前記受信バッファの残量を反映したタイミングでACKフレームを前記第1通信装置に返信する返信部と、
を備え、
前記第1通信装置は、
前記第2通信装置の前記返信部からの前記ACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から前記第2通信装置の前記受信バッファの残量を推定する推定部と、
画像フレームから診断に必要な箇所を指定する領域指定部と、
前記画像フレーム内の前記指定された診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量に応じて、異なる画像圧縮を行う変更部と、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に画像フレームデータを送信する送信部と、
を備える。
【0008】
本発明の第2の態様にかかる通信制御方法は、
第1通信装置から第2通信装置に画像フレームデータを送信する通信制御方法であって、
前記第2通信装置において、
前記第1通信装置からの画像フレームデータを受信バッファで受信し、
前記受信バッファの残量を反映したタイミングでACKフレームを前記第1通信装置に返信し、
前記第1通信装置において、
前記第2通信装置からの前記ACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から前記第2通信装置の前記受信バッファの残量を推定し、
画像フレームから診断に必要な箇所を指定し、
前記画像フレーム内の前記指定された診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量に応じて、異なる画像圧縮を行い、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に画像フレームデータを送信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受信バッファの残量に応じて、送信側で適切に画像フレームデータを圧縮でき、結果として、受信バッファの溢れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる通信制御システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる通信制御方法を示すフローチャートである。
図3】実施の形態2にかかる画像診断システムの構成を示す概略図である。
図4】実施の形態2にかかる送信側通信装置の構成を示すブロック図である。
図5】送信パケットフレームフォーマットの一例を示す図である。
図6】実施の形態2にかかる受信側通信装置の構成を示すブロック図である。
図7】受信バッファの使用率に応じた送信遅延時間を示すテーブルである。
図8】受信パケットフレームフォーマットの一例を示す図である。
図9】受信バッファの残量に応じた、画像処理例を示す図である。
図10】推定された受信バッファ使用率に応じた圧縮率を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる通信制御システムの構成を示すブロック図である。
通信制御システム1は、第1通信装置10と、第1通信装置10とネットワーク(有線及び無線を含む)を介して接続された第2通信装置20を備える。第1通信装置10は、第2通信装置20に画像フレームデータを送信すると、第2通信装置20は、受信したフレームに対応してACKフレームを第1通信装置10に返信する。
【0012】
第2通信装置20は、第1通信装置10からの画像フレームデータを受信する受信バッファ22と、受信バッファ22の残量(又は使用率)を反映したタイミングでACKフレームを第1通信装置10に返信する返信部21と、を備える。
【0013】
第1通信装置10は、推定部11、領域指定部12、変更部13および送信部14を含む。推定部11は、第2通信装置20の返信部21からACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から第2通信装置20の受信バッファ22の残量(又は使用率)を推定する。領域指定部12は、画像フレームから診断に必要な1つ以上の箇所を指定する。変更部13は、前記画像フレーム内の前記指定された診断に必要な箇所以外について、推定された受信バッファの残量(又は使用率)に応じて、異なる画像圧縮を行う。送信部14は、第1通信装置10から第2通信装置20に画像フレームデータを送信する。
【0014】
図2は、実施の形態1にかかる通信制御方法を示すフローチャートである。
通信制御システム1は、第1通信装置10から第2通信装置20に画像フレームデータを送信し、当該画像フレームデータに対するACKフレームを第2通信装置20から第1通信装置10に返信する。まず、第2通信装置20は、第1通信装置10からの画像フレームデータを受信バッファ22で受信する(ステップS101)。第2通信装置20は、受信バッファ22の残量(又は使用率)に応じて、適切なタイミングでACKフレームを第1通信装置10に返信する(ステップS102)。例えば、受信バッファの残量が少なくなる(受信バッファの使用率が高くなる)につれて、より遅くなるタイミングでACKフレームを返信することができる。
【0015】
第1通信装置10は、第2通信装置20からのACKフレームの受信時間から、受信バッファの残量(又は使用率)を推定する(ステップS103)。画像フレーム内の、診断に必要な箇所を指定する(ステップS104)。第1通信装置10は、診断に必要な箇所以外について、受信バッファの推定された残量(又は使用率)に応じて、異なる画像圧縮を行う(ステップS105)。第1通信装置10は、第2通信装置20に画像フレームデータを送信する(ステップS106)。その後、処理は、ステップS101に戻る。
【0016】
これにより、本実施形態の通信制御システムによれば、受信バッファの残量(又は使用率)に応じて、適切に画像フレームデータを圧縮して送信でき、結果として、受信バッファの溢れを抑制することができる。
【0017】
実施の形態2
本発明は、カメラで撮影した非圧縮(RAW)画像を遠隔に伝送して診断する画像診断システムに関する。これまでの画像診断システムでは、主に2つの問題がある。第1の問題点は、画像診断システムにおいて画像受信バッファが溢れ出した場合も画像診断動作を継続するため、バッファから溢れ出したカメラ画像データを廃棄している点にある。
【0018】
その理由は、以下のとおりである。通常、画像診断システムは、例えばベルトコンベアを流れている製品の外観チェックなど、連続的かつ高速に診断処理を行うように設計されている。このため、受信バッファがデータで埋め尽くされていても、後続の製品をチェックするための画像データが次々と送られてくる。このため、入りきらないデータは廃棄してでも動作を継続する必要があるからである。
【0019】
第2の問題点は、上記のような画像診断システムにおいては、多くの場合、情報的に欠落のないRAW画像を利用している点にある。
【0020】
その理由は、一般的に画像診断のエビデンスとして、加工されていないRAW画像を使用しており、画像診断結果に誤りが発生した際、画像診断アルゴリズムの誤りを判断するためには、加工されていない画像を用いての確認が必要であるからである。
【0021】
図3は、実施の形態2にかかる画像診断システムの構成を示す概略図である。
画像診断システム1aにおいて、カメラを備えた画像撮影部10aは、ベルトコンベアなどの搬送装置70により順次運ばれる製品を撮影し、撮影画像50を、ネットワークを介して、画像診断部20aに送信する。画像診断部20aは、高精度な画像解析プログラムを搭載し、撮影画像50から製品の特徴量を検出し、その製品の不良を識別することができる。
【0022】
画像診断システム1aは、通常はRAW画像を使用して診断を行う一方、受信バッファの状況に応じて、画像データ量を診断に影響なきよう適切に削減する。それにより、受信バッファの残量が少ない状況であっても、画像データを廃棄することなく画像診断システムに確実に伝送し、画像欠落による不良検出率の悪化を防止する。
【0023】
本実施形態にかかる画像診断システム1aは、例えば、画像撮影部(カメラ)10aと画像診断部(ホスト)20との間でやり取りされるACKパケットを用いて、伝送路の輻輳状況をリアルタイムに監視し、輻輳状況に応じて色のクラスタリングによる色情報の削減と減色の程度を適応的に変更する。これにより、ホスト側の受信バッファ溢れによる検査画像の欠落を防ぎ、画像診断システムの不良品検出率の低下を解決する。なお、本実施形態にかかる画像診断システム1aは、実施の形態1にかかる通信制御システム1の一例である。
【0024】
図4は、実施の形態2にかかる送信側通信装置の構成を示すブロック図である。
送信側通信装置100は、上記の画像撮影部10a内の機能ブロックを示す。送信側通信装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、およびメモリを含む情報処理装置によって実現することができる。送信側通信装置100は、図4に示すように、フレーム入力バッファ101、領域指定部107、画像処理部102、エンコーダ103、Etherフレーム生成部104、ACK受信時間測定部105、画質制御部106、MAC/PHY111、およびMAC/PHY112を含む。なお、送信側通信装置100のMAC/PHY111、およびMAC/PHY112は、イーサネット(登録商標)リンクなどのリンクを介して、受信側通信装置側のMAC/PHY211、およびMAC/PHY212と接続されている。
【0025】
フレーム入力バッファ101は、ビデオカメラ等のカメラからの画像フレームを一時的に格納するバッファである。領域指定部107は、フレーム入力バッファ101からの画像フレームを受け取り、当該画像フレーム内で、後続する画像診断に必要となり得る箇所を判断し、その箇所の領域を指定することができる。また、領域指定部107は、画像診断部20aに比べて低精度な画像解析プログラムを搭載し、画質制御部106からの制御信号を受信して、画像診断に必要な箇所と、不要な箇所を判断することができる。領域指定部107は、ディープラーニングなどの推論AI(artificial intelligence)の画像解析プログラムを搭載している。領域指定部107は、診断に必要となり得る画像フレーム内の1つ、又は複数の特徴部(例えば、特徴部A、B、C)を抽出することができる。領域指定部107は、必要な部分と不要な部分を判別した画像を画像処理部102に送信する。特徴部A、B、Cは、この順で優先順位付けされている場合、受信バッファの残量が少なくなるにつれて、領域指定部107は、優先順位の高いものを選択的に指定してもよい。
【0026】
画像処理部102は、画質制御部106からの制御信号を受信して、領域指定部107からの診断に必要な箇所が指定されたフレームに対して、診断に不要な箇所を切り取ったり、減色処理を行ったりするなどの各種画像処理を実行することができる。画質制御部106からの制御信号は、例えば、受信バッファの残量に応じた制御信号を示すものである(詳細は後続する)。
【0027】
エンコーダ103は、画質制御部106からの制御信号を受信して、減色処理又は切り出し処理を施された後のデータに対して、適切な圧縮率でエンコードを行う。画質制御部106からの制御信号は、受信バッファの残量に応じた制御信号を示すものである(詳細は後続する)。なお、実施の形態1の変更部13の具体例が、画像処理部102又はエンコーダ103であり得る。
【0028】
Etherフレーム生成部104は、減色処理、切り出し処理及びエンコードなどの各種画像処理が施されたフレームからEtherフレームを生成し、MAC/PHY112を介して、受信側通信装置200に送信する。また、Etherフレーム生成部104は、Etherフレーム送信時に、Etherフレームの送信時刻をACK受信時間測定部105に通知する。
【0029】
通常、送信側通信装置100及び受信側通信装置200を備える画像診断システムは、検査対象の細かな欠陥を検出するため、画像診断のエビデンスとしてRAW画像を使用し、保管する。このため、図4に示す送信側通信装置100における画像処理部102及びエンコーダ103は圧縮動作を行わず、RAW画像をEtherフレーム生成部104へ送り、ホスト(受信側通信装置200)へと送信する。
【0030】
図5は、送信パケットフレームフォーマットを示す。送信パケットフレーム1000は、送信先MAC1010、送信元MAC1020、ヘッダ1030、フレームデータ1040、およびFCS(Frame Check Sequence)1050を含む。この場合、送信パケットフレーム1000のヘッダ1030には、圧縮率を示すコード(例:0)がEtherフレーム生成部104により埋め込まれる。なお、FCSは、通信途上でデータに誤りが生じていないか調べるため、送信時にデータに付加される誤り検出符号である。なお、図5では、圧縮率として、RAW(非圧縮を示す)、低圧縮、中圧縮、及び高圧縮を示しているが、これらに限定されない。圧縮率は、より細かく設定してもよい。
【0031】
図6は、実施の形態2にかかる受信側通信装置の構成を示すブロック図である。
受信側通信装置200は、画像診断部20a内の1つの機能ブロックである。受信側通信装置200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、メモリを含む、情報処理装置などにより実現され得る。当該情報処理装置が画像診断等を行ってもよい。受信側通信装置200は、Etherフレーム分解部202、フレーム出力バッファ203、デコードレート制御部204、デコーダ205、およびACKフレーム生成部206を含む。
【0032】
図6で示す受信側通信装置200では、受信側通信装置200のEtherフレーム分解部202は、MAC/PHY212を介して、送信側通信装置100からフレームを受信する。Etherフレーム分解部202が受信したパケットの内容を解釈する。また、デコードレート制御部204は、パケットのデコードレートを判定する。今受信パケットの圧縮率は0なので、デコードレート制御部204は、デコーダ205に非圧縮の設定を行い、デコーダ205はデコード動作を行わずにフレーム出力バッファ203(本明細書では受信バッファとも呼ばれる)の受信データを処理して検査画像を再構成する。ACKフレーム生成部206は、フレーム出力バッファ203の使用率に応じたタイミングで、受信したフレームに対するACKフレームを生成し、MAC/PHY211を介して送信側通信装置100に返信する。
【0033】
フレーム出力バッファ203の残量(又は使用率)に応じたタイミングの例としては、例えば、残量が閾値未満(又は使用率が閾値以上)の場合は、ACKフレームを返信するタイミングを遅らせてもよい。より具体的には、受信バッファの使用率(例えば、95%、90、85、80・・・0%)に応じて、返信タイミングを段階的に遅らせてもよい(図7では、送信遅延時間(ms)は、T>T>T>T>T>・・・>Tとなるように設定することができる)。なお、ここでいう送信遅延時間は、ACKフレーム生成部206が受信バッファの使用率を考慮して、ACKフレームを生成してから、送信するまでの遅延時間である。
【0034】
図8は、ACKフレーム2000の一例を示す。ACKフレーム2000は、送信先MAC2010、送信元MAC2020、ヘッダ2030、ACK2040、およびFCS2050を含む。ACKフレーム2000にはそのヘッダ2030に、受け取った圧縮率を示すコード(0)がACKフレーム生成部206により埋め込まれる。
【0035】
再び図4に戻って送信側通信装置100についての説明を継続する。
送信側通信装置100は、受信側通信装置200からACKパケットを順次受信する。
送信側通信装置100では、ACK受信時間測定部105は、Etherフレーム生成部104からのタイミング通知が示す送信時刻とACKパケットの受信時刻(到着時刻)を比較し、その差であるACK受信時間を算出する。ACK受信時間測定部105は、算出された受信時間に基づいて、受信側通信装置200のフレーム出力バッファ203(受信バッファとも呼ばれる)の空き具合を推定する。すなわち、ACK受信時間測定部105は、ACK受信時間が短ければ、受信バッファの空き容量が大きく、逆に、ACK受信時間が長くなると、受信バッファの空き容量(残量)が少ないものと推定することができる。ACK受信時間測定部105は、受信バッファの空き容量に関する推定結果を、画質制御部106に提供する。
【0036】
画質制御部106は、推定された受信バッファの空き容量に応じて、領域指定部107、画像処理部102およびエンコーダ103に対する制御信号を生成する。具体的には、画質制御部106は、この受信時間から推定された受信バッファの空き容量に基づいて、領域指定部107の領域指定法を決定する。領域指定部107は、推論AIを有する。一般的に、推論を行うためには多数の学習データを元にして、ネットワークと呼ばれる関数を生成する必要がある。精度の良いネットワークを生成するためには、精度が高い(教師として間違いがない)学習データに対して大量の演算を行うことが求められるので、リソースの大きいホスト(画像診断部20a)にて学習を行い、これによって生成されたネットワークをエッジ(画像撮影部10aに含まれる送信側通信装置100の領域指定部107)にフィードバックする。これにより、画像診断システムは、精度の高い学習データを収集し、更に精度の高い学習データで学習し、というようなフィードバックループを形成することを意図している。
【0037】
また、画質制御部106が、この受信時間から推定された受信バッファの空き容量に基づいて、画像処理部102の切り出し処理、減色処理(クラスタリング)、及びエンコーダ103の圧縮率を決定する。領域指定部107により診断に必要とされた箇所については、画質制御部106は画像処理部102に対して、切り出し処理無し、カラークラスタリング無し、を選択する。さらに、領域指定部107により診断に必要とされた箇所については、画質制御部106はエンコーダ103に対して、非圧縮を選択する。また、推定された受信バッファの空き容量に十分な余裕がある場合には、領域指定部107により診断に必要とされた箇所以外についても、画質制御部106は画像処理部102に対して、切り出し処理無し、カラークラスタリング無し、を選択してもよい。また。推定された受信バッファの空き容量に十分な余裕がある場合には、領域指定部107により診断に必要とされた箇所以外についても、画質制御部106はエンコーダ103に対して、非圧縮を選択してもよい。
【0038】
次に、伝送路に輻輳が発生している状態を想定する。伝送路に輻輳が発生している状態では、フレーム出力バッファ203に空き容量が足りない状態となり得る。この状態を検出した、ACKフレーム生成部206は、ACKパケットを一定時間待った後に送信する。例えば、図7を用いて前述したように、受信バッファの使用率(例えば、95、90、85、80・・・0)に応じて、返信タイミングを段階的に遅らせてもよい。ACK受信時間測定部105は、ACKパケットを受け取り、フレームの送信時刻とACK受信時刻との差からACK受信時間を測定する。これにより、ACK受信時間測定部105は、その受信時間から受信バッファがどの程度埋まっているかを推定し、推定される空きバッファの量を、画質制御部106に通知する。一般的に、カラー情報が多いほどこの情報を元とした画像検査処理の不良検出率は向上し、またエビデンスとしても有効となり得る。そのため、送信側通信装置100は、できる限り、受信側通信装置200にRAWデータを送ることが好ましい。しかし、伝送路の輻輳状態になったことを示す通知を受けた場合、画質制御部106は、領域指定部107により診断に必要とされた箇所以外について、推定された受信バッファの使用率に基づいて、領域指定部107、画像処理部102およびエンコーダ103に対して、適切に制御を行う。
【0039】
画質制御部106は、バッファ溢れが発生しないよう画像処理部102に対して、カラークラスタリングによる減色処理を設定する。画質制御部106は、画像をフレーム出力バッファ203が受信可能なサイズ、例えばフルカラーから3色ないし1色等に減色するように設定することができる。画像処理部102は、画質制御部106の指示に基づいて、減色処理を行う。
【0040】
図9は、受信バッファの残量に応じた、画像処理例を示す図である。画質制御部106は、領域指定部107により判断された診断に不要な領域に対して、受信バッファの残量に応じて、以下のような異なる画像処理を実行するように、画像処理部102又はエンコーダ103を制御する。例えば、受信バッファの残量が閾値(図9では30%)以下の場合、不要領域を切り捨てるように処理することができる。また、受信バッファの残量が閾値(図9では70%)未満で、かつ閾値(図9では30%)を超える場合、不要領域に対して、1色での塗りつぶしのような減色処理を実行してもよい。さらに、受信バッファの残量が閾値(図9では70%)以上の場合、不要領域を低解像度に圧縮するように適切な圧縮率で圧縮処理を行ってもよい。なお、図9で示した閾値や画像処理例は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。また、診断に必要な領域については、画像処理を行わず、非圧縮データのままとしている。
【0041】
また、画質制御部106は、エンコーダ103に対して、適切な圧縮率を決定する。図10は、推定された受信バッファの残量に応じた圧縮率を示すテーブルである。圧縮率は、受信バッファの残量が少なくなる(使用率が高くなる)につれて、高くなるように設定されている(a<b<c<d<e・・)。また、画質制御部106は、不要領域に対して、受信バッファの残量が閾値以上(例えば、90%)の場合は、すなわち、受信バッファに十分な空き容量がある場合、画像フレームを圧縮しないように設定してもよい。画質制御部106は、送信側通信装置100が画像フレームを送信した当初など推定された受信バッファの残量が閾値以上の(受信バッファの使用率が閾値未満である)場合は、不要領域に対しても、非圧縮画像データ(RAWデータ)に決定することができる。なお、図5および図8に示すように、画質制御部106が設定する圧縮率の例としては、非圧縮(RAWデータ)低圧縮、中圧縮、および高圧縮の少なくとも4段階の圧縮率を含んでもよいが、これに限定されない。
【0042】
エンコーダ103は、適切なサイズまで画像データを、非可逆または可逆的手法を用いて画像データサイズを圧縮する。その場合、送信パケットフレーム1000のヘッダ1030には、設定された圧縮率を示すコード(例:1、2又は3)がEtherフレーム生成部104により埋め込まれる。
【0043】
領域指定部107は、例えば、画像の中で必要な箇所をA,B,Cを検出し、それらが、A>B>Cと優先順位がついている場合、受信バッファの残量が少ない場合、Aのみを診断に必要な箇所と判断し、受信バッファの残量が中の場合、A,Bを診断に必要な箇所と判断し、受信バッファの残量が多い(十分に余裕がある)場合、A,B、Cを診断に必要な箇所と判断してもよい。
【0044】
なお、本実施形態にかかる画像診断システムは、診断に必要な箇所は画素が圧縮されていないことを想定しているため、学習データの観点で見ると、学習に必要な箇所には歪みの無いきれい(精度の高い)なデータとみなすことができる。これを用いることで、精度の高いネットワークを生成することができ、上述したような、正のフィードバックループを形成することで、運用しながら性能をアップデートする仕組みを実現する。例えば、学習に際し誤りを含んだ正しくない歪んだデータが混じると、これを教師として学習したネットワークは精度が落ちる。バッファの状態を見ながらバッファ溢れをおこしデータを壊すことなく正しいデータで再学習のループを作ることで、このような問題を解決することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態による画像診断システムはホスト(受信側通信装置)側の処理の停滞等により、伝送路に輻輳が発生した状態であっても、受信バッファ溢れを起こすことを抑制し、撮影画像を伝送することが可能となる。これにより画像欠落による不良品検出率の低下を防ぐことができる。なお、減色画像や圧縮画像から検出される不良品率は、RAW画像から検出される不良品検出率と同等、または低下することが想定されるが、少なくとも全品検査が可能となる。また画像サイズから不良品混在のタイミングを想定することが容易となる点で、これまでの画像診断システムと比較し優位性がある。
【0046】
第1の効果は、画像診断システムにおける不良検出率の向上である。その理由は、診断装置に画像受信バッファ溢れをおこすことなく、診断側に診断に必要な画像データを伝送することで、連続した画像に対する診断を漏れなく行うことができるからである。
【0047】
第2の効果は、画像診断システムの不良検出の信頼性の向上である。その理由は、例えばこれまでのシステムでは100枚中1枚の画像が欠落した場合、どの検査対象の1枚が欠落したかがわからず、残りの99枚の良品がどの製品に紐づいているかわからないため、他の良品に対してもその診断の信頼性が低下していた。受信バッファ溢れをおこすことなく、全数検査が実現されることで、検査対象と画像が全数対応することとなり、良/不良の診断に信頼がおけるようになるからである。
【0048】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0050】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0051】
この出願は、2020年6月9日に出願された日本出願特願2020-100139を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0052】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
第1通信装置から第2通信装置に画像フレームデータを送信する通信制御システムであって、
前記第2通信装置は、
前記第1通信装置からの画像フレームデータを受信する受信バッファと、
前記受信バッファの残量を反映したタイミングでACKフレームを前記第1通信装置に返信する返信部と、
を備え、
前記第1通信装置は、
前記第2通信装置の前記返信部からの前記ACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から前記第2通信装置の前記受信バッファの残量を推定する推定部と、
画像フレームから診断に必要な箇所を指定する領域指定部と、
前記画像フレーム内の前記指定された診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量に応じて、異なる画像圧縮を行う変更部と、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に画像フレームデータを送信する送信部と、
を備える、通信制御システム。
(付記2)
前記変更部は、前記推定された受信バッファの残量が閾値以下の場合、当該必要な箇所以外について、切り捨て処理を行う、付記1に記載の通信制御システム。
(付記3)
前記返信部は、前記受信バッファの残量が少なくなるにつれて、段階的により遅くなるタイミングでACKフレームを返信する、付記1又は2に記載の通信制御システム。
(付記4)
前記変更部は、前記指定された診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量が少なくなるにつれて、段階的に圧縮率が高くなるように画像を圧縮する、付記1~3のいずれか一項に記載の通信制御システム。
(付記5)
前記変更部は、前記指定された診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量が閾値を超える場合、画像フレームの画像圧縮を行わない、付記1~4のいずれか一項に記載の通信制御システム。
(付記6)
前記変更部は、前記指定された診断に必要な箇所について、画像フレームの画像圧縮を行わない、付記1~5のいずれか一項に記載の通信制御システム。
(付記7)
前記変更部は、前記推定された受信バッファの残量が閾値を超える場合は、当該必要な箇所以外について、前記画像フレームデータを非圧縮画像データに設定する、付記1~6のいずれか一項に記載の通信制御システム。
(付記8)
前記推定部は、前記送信部からの画像フレームデータの送信時刻と、当該画像フレームデータに対するACKフレームの受信時刻とを比較して、ACK受信時間を算出して、当該算出されたACK受信時間から前記受信バッファの残量を推定する、付記1~7のいずれか一項に記載の通信制御システム。
(付記9)
第1通信装置から第2通信装置に画像フレームデータを送信する通信制御方法であって、
前記第2通信装置において、
前記第1通信装置からの画像フレームデータを受信バッファで受信し、
前記受信バッファの残量を反映したタイミングでACKフレームを前記第1通信装置に返信し、
前記第1通信装置において、
前記第2通信装置からの前記ACKフレームを受信し、当該ACKフレームの受信時間から前記第2通信装置の前記受信バッファの残量を推定し、
画像フレームから診断に必要な箇所を指定し、
前記画像フレーム内の前記指定された診断に必要な箇所以外について、前記推定された受信バッファの残量に応じて、異なる画像圧縮を行い、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に画像フレームデータを送信する、通信制御方法。
【符号の説明】
【0053】
1 通信制御システム
1a 画像診断システム
10 第1通信装置
10a 画像撮影部
11 推定部
12 領域指定部
13 変更部
14 送信部
20 第2通信装置
20a 画像診断部
21 返信部
22 受信バッファ
30 画像ストレージ
50 画像
70 搬送装置
100 送信側通信装置
101 フレーム入力バッファ
102 画像処理部
103 エンコーダ
104 Etherフレーム生成部
105 ACK受信時間測定部
106 画質制御部
107 領域指定部
111 MAC/PHY
112 MAC/PHY
200 受信側通信装置
202 Etherフレーム分解部
203 フレーム出力バッファ
204 デコードレート制御部
205 デコーダ
206 ACKフレーム生成部
211 MAC/PHY
212 MAC/PHY
1000 送信パケットフレーム
2000 受信パケットフレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10