(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】位置特定システム、振動発生器、及び位置特定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 9/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
G01V9/00 K
(21)【出願番号】P 2022564920
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044161
(87)【国際公開番号】W WO2022113252
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩野 忠行
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-052030(JP,A)
【文献】特開2016-085085(JP,A)
【文献】特開平5-215864(JP,A)
【文献】特開2019-211349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0124735(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 - 99/00
G01H 1/00 - 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を含む振動を発生させる振動発生部と、
前記振動を検知する光ファイバと、
前記振動に含まれる前記位置情報を含む光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記通信部の場所から前記光ファイバが振動を検知した場所までの前記光ファイバの距離を特定する距離特定部と、
前記光信号に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定し、前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶する位置特定部と、
を備える、位置特定システム。
【請求項2】
前記振動発生部は、前記位置情報に相当する周波数の振動を発生させ、
前記位置特定部は、前記光信号に基づいて、前記振動の周波数を特定し、特定した周波数に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定する、
請求項1に記載の位置特定システム。
【請求項3】
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を同時に発生させる、
請求項2に記載の位置特定システム。
【請求項4】
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を異なるタイミングで発生させる、
請求項2に記載の位置特定システム。
【請求項5】
前記振動発生部は、複数箇所で前記振動を発生させ、
前記距離特定部は、前記複数箇所の各々における前記距離を特定し、
前記位置特定部は、前記複数箇所の各々における前記位置情報を特定し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報との対応付けに基づいて、前記光ファイバの敷設ルートを特定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の位置特定システム。
【請求項6】
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を含む振動を光ファイバに与える振動発生部と、
を備える、振動発生器。
【請求項7】
前記振動発生部は、前記位置情報に相当する周波数の振動を前記光ファイバに与える、
請求項6に記載の振動発生器。
【請求項8】
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を同時に前記光ファイバに与える、
請求項7に記載の振動発生器。
【請求項9】
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を異なるタイミングで前記光ファイバに与える、
請求項7に記載の振動発生器。
【請求項10】
位置特定システムが行う位置特定方法であって、
位置情報を取得するステップと、
前記位置情報を含む振動を発生させる振動発生ステップと、
光ファイバにより前記振動を検知するステップと、
通信部により前記振動に含まれる前記位置情報を含む光信号を受信するステップと、
前記光信号に基づいて、前記通信部の場所から前記光ファイバが振動を検知した場所までの前記光ファイバの距離を特定する距離特定ステップと、
前記光信号に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定し、前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶する位置特定ステップと、
を含む、位置特定方法。
【請求項11】
前記振動発生ステップでは、前記位置情報に相当する周波数の振動を発生させ、
前記位置特定ステップでは、前記光信号に基づいて、前記振動の周波数を特定し、特定した周波数に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定する、
請求項10に記載の位置特定方法。
【請求項12】
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生ステップでは、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を同時に発生させる、
請求項11に記載の位置特定方法。
【請求項13】
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生ステップでは、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を異なるタイミングで発生させる、
請求項11に記載の位置特定方法。
【請求項14】
前記振動発生ステップでは、複数箇所で前記振動を発生させ、
前記距離特定ステップでは、前記複数箇所の各々における前記距離を特定し、
前記位置特定ステップでは、前記複数箇所の各々における前記位置情報を特定し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報との対応付けに基づいて、前記光ファイバの敷設ルートを特定する、
請求項10から13のいずれか1項に記載の位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位置特定システム、振動発生器、及び位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバセンシング技術は、光ファイバ周辺で発生した事象の影響(例えば、音、振動、及び温度)を光ファイバが検知し、検知した影響に基づいて、センシング機器(例えば、DFOS:Distributed Fiber Optical Sensor)が、発生した事象を特定できるという特徴がある。
【0003】
しかし、既設の光ファイバを利用する場合、センシング機器の場所から、光ファイバが音、振動、又は温度を検知した場所までの光ファイバの距離は特定できるものの、光ファイバが音、振動、又は温度を検知した地図上の位置は特定できない。そのため、事象が発生した地図上の位置を特定できない。このことから、既設の光ファイバの敷設位置の位置情報を把握する必要がある。
【0004】
以下、
図1を参照して、既設の光ファイバの敷設位置の位置情報を特定するための、関連技術に係る位置特定システムの例について説明する。
図1に示される位置特定システムでは、振動を発生させる機能及びGPS(Global Positioning System)機能を備える振動発生器300を用いる。振動発生器300は、ユーザに携帯されるか、又は、車両等の移動体に搭載されることで、移動可能に構成されている。
【0005】
振動発生器300は、任意の場所で光ファイバ100に振動を与える。
センシング機器200は、光ファイバ100にパルス光を入射し、そのパルス光が光ファイバ100を伝送されることに伴い発生した後方散乱光を、光信号として受信する。このとき、光信号には、光ファイバ100が検知した振動が重畳されている。
【0006】
センシング機器200は、振動が重畳された光信号を受信すると、その振動を振動発生器300が与えた時間の振動発生器300の緯度及び経度を表す位置情報を、ネットワーク400経由で、振動発生器300から取得する。そのため、センシング機器200は、予め振動発生器300と時間同期を取っておく。
【0007】
また、センシング機器200は、光ファイバ100にパルス光を入射した時刻と、光ファイバ100から、振動が重畳された光信号を受信した時刻と、の時間差に基づいて、センシング機器200の場所から光ファイバ100が振動を検知した場所までの光ファイバ100の距離を特定することが可能である。
【0008】
センシング機器200は、センシング機器200の場所から光ファイバ100が振動を検知した場所までの光ファイバ100の距離と、その振動を振動発生器300が与えた時間の振動発生器300の位置情報と、を対応付けて記憶する。その結果、センシング機器200は、光ファイバ100の敷設位置の位置情報を把握できる。
【0009】
上記の作業を、振動発生器300を移動させながら、複数箇所で予め実施することにより、センシング機器200は、光ファイバ100の各距離に対応する位置情報を把握できる。これにより、センシング機器200は、既設の光ファイバ100の周辺で発生した事象の影響(例えば、音、振動、及び温度)を光ファイバ100が検知した位置を、正確に把握することが可能になると共に、その位置を地図上に表示することも可能となる。
【0010】
その他の関連技術として、特許文献1には、光ファイバの経路上のマンホールの蓋に対して打撃を加えたときの光ファイバからの散乱光の時間変化を測定することで、マンホールの光ファイバ長(光ファイバの端部からの長さ)で表された位置を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、
図1に示される関連技術は、光ファイバ100の敷設位置の位置情報を把握することは可能である。
しかし、
図1に示される関連技術においては、センシング機器200は、振動発生器300と時間同期を取る必要があるため、時間同期を取るための仕組みや時間が必要であるという問題があった。
【0013】
また、
図1に示される関連技術においては、センシング機器200と振動発生器300との間で、位置情報や時間同期のための情報を伝送するネットワーク400が必要である。しかし、ネットワーク400は、リアルタイムな位置特定のためにリアルタイム性が要求され、そのようなネットワーク環境を確保することが困難であるという問題もあった。
【0014】
また、特許文献1に示される関連技術は、そもそも、マンホールの光ファイバ長で表された位置を特定する技術であり、光ファイバの敷設位置の位置情報を特定する技術ではない。
【0015】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、光ファイバの敷設位置の位置情報を容易に特定できる位置特定システム、振動発生器、及び位置特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様による位置特定システムは、
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を含む振動を発生させる振動発生部と、
前記振動を検知する光ファイバと、
前記振動に含まれる前記位置情報を含む光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記通信部の場所から前記光ファイバが振動を検知した場所までの前記光ファイバの距離を特定する距離特定部と、
前記光信号に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定し、前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶する位置特定部と、
を備える。
【0017】
一態様による振動発生器は、
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を含む振動を光ファイバに与える振動発生部と、
を備える。
【0018】
一態様による位置特定方法は、
位置特定システムが行う位置特定方法であって、
位置情報を取得するステップと、
前記位置情報を含む振動を発生させる振動発生ステップと、
光ファイバにより前記振動を検知するステップと、
通信部により前記振動に含まれる前記位置情報を含む光信号を受信するステップと、
前記光信号に基づいて、前記通信部の場所から前記光ファイバが振動を検知した場所までの前記光ファイバの距離を特定する距離特定ステップと、
前記光信号に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定し、前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶する位置特定ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0019】
上述の態様によれば、光ファイバの敷設位置の位置情報を容易に特定できる位置特定システム、振動発生器、及び位置特定方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】関連技術に係る位置特定システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る位置特定システムの構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態に係る位置特定部が特定した、振動発生器の現在位置の緯度及び経度に相当する2つの周波数の例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る位置特定部が特定した光ファイバの敷設ルートの例を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る位置特定システムの動作の流れの例を示すフロー図である。
【
図8】実施の形態に係るセンシング機器を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0022】
<実施の形態>
図2は、本実施の形態に係る位置特定システムの構成例を示している。
図2に示されるように、本実施の形態に係る位置特定システムは、光ファイバ10、センシング機器20、及び振動発生器30を備えている。また、センシング機器20は、通信部21、距離特定部22、及び位置特定部23を備え、振動発生器30は、位置情報取得部31及び振動発生部32を備えている。
【0023】
光ファイバ10は、一端がセンシング機器20内の通信部21に接続されている。本実施の形態では、光ファイバ10は、通信及びセンシング兼用の既設の光ファイバであるものとする。ただし、光ファイバ10は、センシング専用の光ファイバでも良いし、新設の光ファイバでも良い。なお、光ファイバ10が通信及びセンシング兼用の光ファイバである場合には、通信部21の前段で不図示のフィルタによりセンシング用の光信号を分波し、センシング用の光信号のみを通信部21で受信できるようにする。
【0024】
振動発生器30は、任意の方法で移動可能に構成されている。例えば、振動発生器30は、ユーザに携帯されるか、又は、車両等の移動体に搭載されることで、移動可能であるが、振動発生器30の移動方法は特に限定されない。
【0025】
位置情報取得部31は、例えば、GPS機能を備えており、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度を表す位置情報を取得する。
振動発生部32は、位置情報取得部31が取得した位置情報を含む振動を発生させる。
【0026】
以下、振動発生部32について、詳細に説明する。
振動発生部32は、位置情報取得部31が取得した振動発生器30の現在位置の位置情報に基づいて、発生させる振動の周波数を変化させるという特徴を有している。例えば、振動発生部32は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、からなる2つの周波数の振動を、同時に発生させたり、異なるタイミングで発生させたりする。
【0027】
振動発生部32は、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度に相当する2つの周波数の振動を光ファイバ10に与える。センシング機器20は、後述のように、光ファイバ10に与えられた2つの周波数の振動を特定することで、振動発生器30の現在位置の位置情報を特定することが可能となる。
【0028】
ここで、緯度に相当する第1の周波数及び経度に相当する第2の周波数は、互いに重複しない周波数とする。また、第1の周波数及び第2の周波数は、センシング機器20で識別可能な周波数とする。
【0029】
また、振動発生部32は、地上に敷設された光ファイバ10に対しては、地上で振動を与え、また、地中に埋設された光ファイバ10に対しては、地上から地中に向けて振動を与える。
【0030】
国土数値情報では、緯度及び経度を座標系として使用しており、東経をX、北緯をYとして、東経及び北緯を0.1秒単位で表現する。座標系の原点は、東経0、北緯0である。一例として、東経が130度30分30秒で、北緯が48度30分30秒である場合、国土数値情報データファイルでのX座標及びY座標の座標値は、それぞれ、以下の通りとなる。
X座標=4698300{=(130度×60分×60秒+30分×60秒+30秒)×10}
Y座標=1746300{=(48度×60分×60秒+30分×60秒+30秒)×10}
【0031】
センシング機器20は、例えば、DFOSで実現することができる。
通信部21は、光ファイバ10にパルス光を入射し、そのパルス光が光ファイバ10を伝送されることに伴い発生した後方散乱光を、光信号として受信する。
【0032】
光ファイバ10の近傍で振動発生部32が振動を発生させると、その振動は光ファイバ10に与えられる。その結果、光ファイバ10を伝送される光信号は、特性(例えば、波長)が変化する。そのため、光ファイバ10は、振動発生部32が発生させた振動を検知することが可能である。
【0033】
このとき、振動発生部32は、上述のように、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度に相当する2つの周波数の振動を発生させている。言い換えれば、振動発生部32は、振動発生器30の現在位置の位置情報を含む振動を発生させている。そのため、通信部21が受信した光信号は、振動発生器30の現在位置の位置情報を含むことになる。
【0034】
そのため、位置特定部23は、通信部21が受信した光信号の周波数特性を分析することにより、2つの周波数を特定することが可能となる。その結果、位置特定部23は、2つの周波数に相当する振動発生器30の現在位置、すなわち、その振動を光ファイバ10が検知した位置の緯度及び経度を特定することが可能となる。
【0035】
また、距離特定部22は、通信部21が光ファイバ10にパルス光を入射した時刻と、通信部21が、光ファイバ10から、振動に含まれる位置情報を含む光信号を受信した時刻と、の時間差に基づいて、センシング機器20(通信部21)の場所から光ファイバ10が振動を検知した場所までの光ファイバ10の距離を特定することが可能である。
【0036】
そのため、位置特定部23は、センシング機器20の場所から光ファイバ10が振動を検知した場所までの光ファイバ10の距離と、その振動に含まれる位置情報と、を対応付けて記憶する。これにより、位置特定部23は、光ファイバ10の敷設位置の位置情報を特定することが可能となる。
【0037】
以下、本実施の形態に係る位置特定システムの動作を、具体例を挙げて説明する。
例えば、光ファイバ10の距離1km付近で、振動発生部32が振動を発生させたとする。このときに、通信部21が受信した光信号の振動特性の例を、
図3に示す。
図3において、横軸は光ファイバ10の距離を示し、縦軸は振動強度を示している。
【0038】
図3の例では、光ファイバ10の距離1km付近で、振動強度にピークが発生している。そのため、位置特定部23は、光ファイバ10の距離1km付近で発生した光信号の周波数特性を分析することにより、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度に相当する2つの周波数を特定する。
【0039】
ここで、振動発生部32を移動させながら、複数箇所で振動発生部32が振動を発生させ、複数箇所の各々にて、距離特定部22が、光ファイバ10の距離を特定し、位置特定部23が、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度に相当する2つの周波数を特定したとする。この場合に位置特定部23が特定した、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度に相当する2つの周波数の例を、
図4に示す。
図4において、横軸は光ファイバ10の距離を示し、縦軸は緯度及び経度に相当する2つの周波数を示している。
【0040】
図4の例では、緯度に相当する第1の周波数には、規定値以上の周波数を割り当て、また、経度に相当する第2の周波数には、規定値未満の周波数を割り当てている。これによ、第1の周波数と第2の周波数とが、互いに重複しない周波数になっている。そのため、振動発生部32において、第1の周波数及び第2の周波数からなる2つの周波数の振動を同時に発生させても、位置特定部23は、2つの周波数を特定することが可能となる。
【0041】
また、位置特定部23は、複数箇所の各々における光ファイバ10の距離と位置情報とを対応付けて記憶する。これにより、位置特定部23は、この対応付けに基づいて、光ファイバ10の敷設ルートも特定できる。位置特定部23が特定した光ファイバ10の敷設ルートの例を、
図5に示す。
【0042】
図5の例では、光ファイバ10が振動を検知した位置を符号Xで表している。位置特定部23は、光ファイバ10が振動を検知した位置を地図上にプロットし、プロットした位置に基づいて、光ファイバ10の敷設ルートを特定すれば良い。
【0043】
続いて、
図6を参照して、本実施の形態に係る位置特定システムの動作の流れの例について説明する。
図6に示されるように、まず、位置情報取得部31は、任意の箇所にて、振動発生器30の現在位置の緯度及び経度を表す位置情報を取得する(ステップS11)。続いて、振動発生部32は、位置情報取得部31が取得した位置情報を含む振動を発生させ、その振動を光ファイバ10に与える(ステップS12)。
【0044】
続いて、光ファイバ10は、位置情報を含む振動を検知する(ステップS13)。これにより、光ファイバ10を伝送される光信号は、振動に含まれる位置情報を含むことになり、この光信号を通信部21が受信する(ステップS14)。
【0045】
続いて、距離特定部22は、通信部21が受信した光信号に基づいて、センシング機器20(通信部21)の場所から光ファイバ10が振動を検知した場所までの光ファイバ10の距離を特定する(ステップS15)。
【0046】
その後、位置特定部23は、通信部21が受信した光信号に基づいて、振動発生器30の現在位置の位置情報を特定し(ステップS16)、特定した位置情報と、距離特定部22が特定した光ファイバ10の距離と、を対応付けて記憶する(ステップS17)。
【0047】
なお、
図6の動作は、複数箇所の各々にて行っても良い。この場合、位置特定部23は、複数箇所の各々における光ファイバ10の距離と振動発生器30の位置情報とを対応付けて記憶することになる。そのため、位置特定部23は、この対応付けに基づいて、光ファイバ10の敷設ルートを特定しても良い。
【0048】
上述したように本実施の形態によれば、位置情報取得部31は、振動発生器30の現在位置の位置情報を取得し、振動発生部32は、位置情報取得部31が取得した位置情報を含む振動を発生させて、その振動を光ファイバ10に与える。
【0049】
これにより、センシング機器20側では、光ファイバ10に与えられた振動を検知することによって、光ファイバ10が振動を検知した位置の位置情報を取得できる。このとき、センシング機器20は、振動発生器30との間で時間同期を取る必要はない。また、センシング機器20は、振動発生器30との間でネットワーク経由で情報を伝送する必要がないため、ネットワーク環境も不要である。よって、センシング機器20は、光ファイバ10の敷設位置の位置情報を容易に把握できる。
【0050】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態では、振動発生器30は、光ファイバ10に対し、現在位置の位置情報に相当する周波数の振動を与えていたが、これには限定されない。振動発生器30は、光ファイバ10に対し、現在位置の位置情報に相当する振幅の振動を与えても良い。又は、振動発生器30は、光ファイバ10に対し、現在位置の位置情報に相当する、振動の発生及び停止等の振幅状態の組み合わせパターンの振動を、与えても良い。振動位置の検出においても、振幅強度に限定せず、外来振動と区別するために、前述の振動パターンを用いても良い。
【0051】
また、上述した実施の形態では、位置特定部23は、複数箇所の各々における光ファイバ10の距離と振動発生器30の位置情報との対応付けに基づいて、光ファイバ10の敷設ルートを特定していたが、これには限定されない。光ファイバ10は、敷設するときに、
図7に示されるように、余剰分が発生することがある。そこで、位置特定部23は、複数箇所の各々における光ファイバ10の距離と振動発生器30の位置情報との対応付けに基づいて、光ファイバ10の余剰分の有無を特定しても良い。例えば、
図7の例の位置P1及び位置P2では、位置情報はほぼ同じになるものの、光ファイバ10の距離は異なることになる。そのため、位置特定部23は、光ファイバ10に余剰分があると特定する。
【0052】
また、上述した実施の形態では、振動発生器30が、現在位置の位置情報を含む振動を光ファイバ10に与えているが、これには限定されない。振動発生器30の代わりに音発生器を設け、音発生器が、位置情報を含む音を光ファイバ10に与えても良い。例えば、架空に敷設された光ファイバ10に対しては、振動を与えるよりも、音を与える方が容易である。
【0053】
<実施の形態に係る
センシング機器のハードウェア構成>
図8は、上述した実施の形態に係るセンシング機器20を実現するコンピュータ50のハードウェア構成例を示している。
【0054】
図8に示されるように、コンピュータ50は、プロセッサ501、メモリ502、ストレージ503、入出力インタフェース(入出力I/F)504、及び通信インタフェース(通信I/F)505等を備える。プロセッサ501、メモリ502、ストレージ503、入出力インタフェース504、及び通信インタフェース505は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0055】
プロセッサ501は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ502は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ503は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ503は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0056】
ストレージ503は、センシング機器20が備える構成要素の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ501は、これら各プログラムを実行することで、センシング機器20が備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ501は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ502上に読み出してから実行しても良いし、メモリ502上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ502やストレージ503は、センシング機器20が備える構成要素が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0057】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(コンピュータ50を含む)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-ROM)、CD-R(CD-Recordable)、CD-R/W(CD-ReWritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAMを含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0058】
入出力インタフェース504は、表示装置5041、入力装置5042、音出力装置5043等と接続される。表示装置5041は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ501により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置5042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置5041及び入力装置5042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置5043は、スピーカのような、プロセッサ501により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0059】
通信インタフェース505は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース505は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
なお、上述した実施の形態に係る振動発生器30も、
図8に示されるハードウェア構成のコンピュータ50によって実現することが可能である。
【0060】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0061】
また、上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を含む振動を発生させる振動発生部と、
前記振動を検知する光ファイバと、
前記振動に含まれる前記位置情報を含む光信号を受信する通信部と、
前記光信号に基づいて、前記通信部の場所から前記光ファイバが振動を検知した場所までの前記光ファイバの距離を特定する距離特定部と、
前記光信号に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定し、前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶する位置特定部と、
を備える、位置特定システム。
(付記2)
前記振動発生部は、前記位置情報に相当する周波数の振動を発生させ、
前記位置特定部は、前記光信号に基づいて、前記振動の周波数を特定し、特定した周波数に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定する、
付記1に記載の位置特定システム。
(付記3)
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を同時に発生させる、
付記2に記載の位置特定システム。
(付記4)
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を異なるタイミングで発生させる、
付記2に記載の位置特定システム。
(付記5)
前記振動発生部は、複数箇所で前記振動を発生させ、
前記距離特定部は、前記複数箇所の各々における前記距離を特定し、
前記位置特定部は、前記複数箇所の各々における前記位置情報を特定し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報との対応付けに基づいて、前記光ファイバの敷設ルートを特定する、
付記1から4のいずれか1項に記載の位置特定システム。
(付記6)
位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報を含む振動を光ファイバに与える振動発生部と、
を備える、振動発生器。
(付記7)
前記振動発生部は、前記位置情報に相当する周波数の振動を前記光ファイバに与える、
付記6に記載の振動発生器。
(付記8)
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を同時に前記光ファイバに与える、
付記7に記載の振動発生器。
(付記9)
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生部は、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を異なるタイミングで前記光ファイバに与える、
付記7に記載の振動発生器。
(付記10)
位置特定システムが行う位置特定方法であって、
位置情報を取得するステップと、
前記位置情報を含む振動を発生させる振動発生ステップと、
光ファイバにより前記振動を検知するステップと、
通信部により前記振動に含まれる前記位置情報を含む光信号を受信するステップと、
前記光信号に基づいて、前記通信部の場所から前記光ファイバが振動を検知した場所までの前記光ファイバの距離を特定する距離特定ステップと、
前記光信号に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定し、前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶する位置特定ステップと、
を含む、位置特定方法。
(付記11)
前記振動発生ステップでは、前記位置情報に相当する周波数の振動を発生させ、
前記位置特定ステップでは、前記光信号に基づいて、前記振動の周波数を特定し、特定した周波数に基づいて、前記光信号に含まれる前記位置情報を特定する、
付記10に記載の位置特定方法。
(付記12)
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生ステップでは、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を同時に発生させる、
付記11に記載の位置特定方法。
(付記13)
前記位置情報は、緯度及び経度を表しており、
前記振動発生ステップでは、緯度に相当する第1の周波数の振動と、経度に相当する第2の周波数の振動と、を異なるタイミングで発生させる、
付記11に記載の位置特定方法。
(付記14)
前記振動発生ステップでは、複数箇所で前記振動を発生させ、
前記距離特定ステップでは、前記複数箇所の各々における前記距離を特定し、
前記位置特定ステップでは、前記複数箇所の各々における前記位置情報を特定し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報とを対応付けて記憶し、前記複数箇所の各々における前記距離と前記位置情報との対応付けに基づいて、前記光ファイバの敷設ルートを特定する、
付記10から13のいずれか1項に記載の位置特定方法。
【符号の説明】
【0062】
10 光ファイバ
20 センシング機器
21 通信部
22 距離特定部
23 位置特定部
30 振動発生器
31 位置情報取得部
32 振動発生部
50 コンピュータ
501 プロセッサ
502 メモリ
503 ストレージ
504 入出力インタフェース
5041 表示装置
5042 入力装置
5043 音出力装置
505 通信インタフェース