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特許7444332分散液及び複合体、並びにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】分散液及び複合体、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 5/14 20060101AFI20240228BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08B5/14
B01J13/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023511046
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013379
(87)【国際公開番号】W WO2022210141
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2021059274
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐古 尚裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏明
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059525(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/196175(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/131721(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085090(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/074340(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/012629(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0092876(KR,A)
【文献】TYAGI, P. et al.,Carbohydrate Polymers,2019年,Vol.206,pp.281-288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 5/14
B01J 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバー、及び硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルを1:99~99:1の範囲内の質量比で含む、分散液。
【請求項2】
前記分散液の分散媒が、比誘電率が38以上である液体を、前記分散媒の総体積を基準として75~100体積%の量で含有する、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記セルロースナノファイバーと前記セルロースナノクリスタルの質量比が50:50~99:1の範囲内である、請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバー、及び硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルを含み、前記セルロースナノファイバー及び前記セルロースナノクリスタルが1:99~99:1の範囲内の質量比で混合されている、複合体。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーと前記セルロースナノクリスタルの質量比が50:50~99:1の範囲内である、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記複合体が、前記複合体の総質量を基準として0.09~5質量%の量で無機微粒子をさらに含む、請求項4又は5に記載の複合体。
【請求項7】
前記セルロースナノファイバー又は前記セルロースナノクリスタルの少なくとも1つと、前記セルロースナノファイバー又は前記セルロースナノクリスタルの少なくとも1つとの間に、架橋が形成されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質をさらに含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
前記セルロースナノファイバー又は前記セルロースナノクリスタルの少なくとも1つと、前記樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質との間に、架橋が形成されている、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
前記架橋が、ウレタン結合を含む、請求項7又は9に記載の複合体。
【請求項11】
前記セルロースナノファイバー及び前記セルロースナノクリスタルを支持する紙基材をさらに含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の分散液の調製方法であって、硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバーの分散液と硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルの分散液とを、せん断力を加えながら混合することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液及び複合体、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境意識の高まりから、バイオマス由来材料の実用化を目指した検討が世界中で行われている。木質(木材チップなど)などに由来するセルロース繊維をナノサイズにまで解繊することによって得られるセルロースナノファイバー(以下、適宜「CNF」とも称する)、及びセルロース繊維の非晶質部を酸で加水分解することによって得られるセルロースナノクリスタル(以下、適宜「CNC」とも称する)は、環境適合型の新材料として注目されている。例えば、特許文献1には、硫酸エステル化CNF及びその製造方法が記載され、非特許文献1~3には、CNF及びCNCを含む複合体膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-41255号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Raphael Bardetら、「Substitution of nanoclay in high gas barrier films of cellulose nanofibrils with cellulose nanocrystals and thermal treatment」、Cellulose 2015、22、1227-1241
【文献】Xiuxuan Sunら、「Nanocellulose films with combined cellulose nanofibers and nanocrystals:tailored thermal,optical and mechanical properties」、Cellulose 2018、25、1103-1115
【文献】Pedro Claroら、「Curaua and eucalyptus nanofiber films by continuous casting:mixture of cellulose nanocrystals and nanofibrils」、Cellulose 2019、26、2453-2470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1~3に記載されるようなCNF及びCNCを含む複合体は、CNF及びCNCを含む分散液を塗布及び/又はろ過し、結果物を乾燥させることによって製造される。複合体の製造コストの低減の観点から、分散液を乾燥して分散媒を除去して乾燥体を得て、これを輸送及び/又は保管し、乾燥体に分散媒を添加して再度分散液を得てこれを複合体の製造に使用することが有利である。そのため、分散液は、乾燥及び再分散を経てもその物性(具体的には粘度)の変化が小さいことが望ましい。また、分散液は、長いポットライフ(可使時間)を有することが望ましい。さらに、CNF及びCNCを含む複合体は包装材料又は容器材料として使用される場合、より高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、乾燥及び再分散を経てもその物性が維持されるとともに、長いポットライフを有する、CNF及びCNCの分散液を提供する。また、本発明は、より高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有する、CNF及びCNCの複合体を提供する。さらに、本発明は、このような分散液及び複合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に従えば、硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバー、及び硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルを含む、分散液が提供される。
【0008】
本発明の一態様に従えば、硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバー、及び硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルを含む、複合体が提供される。
【0009】
本発明の一態様に従えば、上記の態様の分散液の調製方法であって、硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバーの分散液と硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルの分散液とを、せん断力を加えながら混合することを含む、方法が提供される。
【0010】
本発明の一態様に従えば、上記の態様の複合体の製造方法であって、
(a)硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバー又は硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルの一方、及び液体を含む第1層を形成することと、
(b)第1層上に、硫酸エステル基を有するセルロースナノファイバー又は硫酸エステル基を有するセルロースナノクリスタルの他方を含む分散液を供給して、第1層上に第2層を形成することと、
(c)第1層及び第2層から液体を除去することと、
を含む、方法が提供される。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2021-059274号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分散液は、乾燥及び再分散を経てもその物性が維持されるとともに、長いポットライフを有する。また、本発明の複合体は、より高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、硫酸エステル化CNFの一例を示す図である。
図2図2は、硫酸エステル化CNCの一例を示す図である。
図3図3は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図5図5は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図6図6は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図7図7は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図8図8は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図9図9は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図10図10は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図11図11は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図12図12は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
図13図13は、一実施形態に係る複合体を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照して実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。なお、説明の都合上、図面中の各部の寸法比率及び形状が誇張され、実際の寸法比率及び形状とは異なる場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0014】
(1)分散液
実施形態に係る分散液は、硫酸エステル基を有するCNF(硫酸エステル化CNFともいう)及び硫酸エステル基を有するCNC(硫酸エステル化CNCともいう)を分散質として含む。
【0015】
CNFは、セルロースから構成される繊維である。セルロースは、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合した多糖類であり、(C10で示される。CNFは、通常、4nm~100nmの範囲内の繊維幅(繊維径(投影面積円相当径))、及び0.5μm~100μmの範囲内の繊維長を有する。繊維幅及び繊維長は、例えば、原子間力顕微鏡(SPM-9700HT、株式会社島津製作所製)を用いて、任意に選択した50本のCNFの繊維幅及び繊維長を計測し、それぞれ加算平均を計算することにより求めることができる。
【0016】
CNCは、セルロースから構成される針状結晶である。CNCは、通常、4nm~100nmの範囲内の長さの短軸、及び50nm以上0.5μm未満の範囲内の長さの長軸を有する。短軸及び長軸の長さは、例えば、原子間力顕微鏡(SPM-9700HT、株式会社島津製作所製)を用いて、任意に選択した50個のCNCの長軸及び短軸の長さを計測し、それぞれ加算平均を計算することにより求めることができる。
【0017】
硫酸エステル化CNFは、CNFを構成するセルロース中のOH基の少なくとも1つが、硫酸エステル基に置換されているCNFである。同様に、硫酸エステル化CNCは、CNCを構成するセルロース中のOH基の少なくとも1つが、硫酸エステル基に置換されているCNCである。ここで、硫酸エステル基は、式(1):
【化1】
で示される硫酸エステル基(式中、Mは1価~3価の陽イオンを示す)であってよい。なお、Mが2価又は3価の陽イオンである場合、Mは2個又は3個の-OSO にイオン結合する。
【0018】
1価~3価の陽イオンとしては、水素イオン、金属イオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。金属イオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、その他の金属イオンが挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウムなどが挙げられる。遷移金属としては、鉄、ニッケル、パラジウム、銅、銀などが挙げられる。その他の金属としては、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。アンモニウムイオンとしては、NH だけでなく、NH の1つ以上の水素原子が有機基に置き換わっている各種アミン由来のアンモニウムイオン(例えば、第四級アンモニウムカチオン、アルカノールアミンイオン、ピリジニウムイオン)も挙げられる。陽イオンは、列挙した陽イオンのいずれか1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0019】
硫酸エステルCNF及び硫酸エステル化CNCの一例は、それぞれ、図1及び図2で表される。
【0020】
硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCは、いずれも表面に硫酸エステル基を有するため、互いに大きな静電反発力が働く。そのため、実施形態に係る分散液は、易分散性及び分散安定性が高い。また、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCは、互いに同様の表面状態を有するため、互いに高い親和性を有する。そのため、実施形態に係る分散液において、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCが均一に混合され、CNFリッチな相とCNCリッチな相へのミクロ相分離が起こりにくい。これらに起因して、実施形態に係る分散液は、乾燥及び再分散を経てもその物性が維持されるとともに、長いポットライフを有する。さらに、実施形態に係る分散液を用いて、CNFとCNCが均一に混合された複合体を製造することができ、このような複合体は高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有することができる。
【0021】
硫酸エステル化CNF又は硫酸エステル化CNCの少なくともいずれか一方は、硫酸エステル基に加えて、その他の置換基を有してもよい。CNF又はCNCを構成するセルロース中のOH基の少なくとも1つが、その他の置換基により置換されてよい。その他の置換基は、例えば、アニオン性置換基及びその塩、エステル基、エーテル基、アシル基、アルデヒド基、アルキル基、アルキレン基、アリール基であってよく、又はこれらの2種以上を含んでもよい。分散性の向上の観点から、その他の置換基は、アニオン性置換基若しくはその塩、又はアシル基であってよい。アニオン性置換基としては、カルボキシ基、リン酸エステル基、亜リン酸エステル基、ザンテート基が挙げられる。分散性の向上の観点から、アニオン性置換基の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、又はカルシウム塩であってよい。また、分散性の向上の観点から、アシル基は、アセチル基であってよい。
【0022】
硫酸エステル化CNFにおける硫酸エステル化修飾率は、用途などに応じて任意の適切な値に設定することができる。硫酸エステル化CNFにおける硫酸エステル化修飾率は、硫酸エステル化CNF中の硫黄含有率(質量%)で表すことができる。硫酸エステル化CNF中の硫黄含有率(質量%)は、限定されないが、通常0.05質量%~30質量%、好ましくは0.1重量%~25重量%、より好ましくは0.5重量%~22重量%である。硫黄含有率が30重量%以下である硫酸エステル化CNFは、十分な結晶化度及び耐熱性を有することができる。硫黄含有率が0.05重量%以上である硫酸エステル化CNFは、効率的な製造が可能である。なぜなら、このようなCNFは、その十分な量の硫酸エステル基に起因して互いに静電的に反発し、このことは、製造過程において後述するように硫酸エステル化パルプを解繊して硫酸エステル化CNFを得るために要するエネルギーを減少させるためである。
【0023】
硫酸エステル化CNCにおける硫酸エステル化修飾率は、用途などに応じて任意の適切な値に設定することができる。硫酸エステル化CNCにおける硫酸エステル化修飾率は、硫酸エステル化CNC中の硫黄含有率(質量%)で表すことができ、通常、0.05質量%~15質量%の範囲内であるが、これに限定されない。
【0024】
硫酸エステル化CNF及び硫酸エステルCNCの硫黄含有率(質量%)は、例えば燃焼吸収-イオンクロマトグラフィー(IC)法により、以下のようにして求めることができる。
・測定装置:日本ダイオネクス株式会社製のICS-1500
・測定条件:磁性ボードに試料を秤量し、酸素雰囲気下(流量:1.5L/分)、環状炉(1350℃)で燃焼させ、発生したガス成分を3%過酸化水素水(20mL)に吸収させて吸収液を得る。得られた吸収液を純水で希釈して100mLにし、希釈液をイオンクロマトグラフィーに供する。測定結果から、試料の硫酸イオン濃度(質量%)を算出し、下記式:
硫黄含有率(質量%)=硫酸イオン濃度(質量%)×32/96
により、硫黄含有率を計算する。
【0025】
硫酸エステル化CNFは、例えば、後述するように、原料パルプを硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化パルプを解繊することにより製造することができる。このようにして得られた硫酸エステル化CNFは、結晶部分と非晶質部分を有する。硫酸エステル化CNFの結晶化度は、その原料(綿、木材など)に依存する。硫酸エステル化CNFは、通常、20%~99%であり、好ましくは30%~95%、より好ましくは40%~90%、さらに好ましくは50%~85%の結晶化度を有する。結晶化度が20%以上である硫酸エステル化CNFは、十分な耐熱性及び剛直性を有することができる。99%を超える結晶化度を有する硫酸エステル化CNFは、十分な繊維長を有するように製造することが難しい傾向がある。
【0026】
硫酸エステル化CNCは、原料パルプの非晶質部分を硫酸で加水分解することによって得ることができる。硫酸エステル化CNCの結晶化度は、通常、85~100%、特に90%以上である。
【0027】
硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCの結晶化度は、X線回折パターンにおけるセルロースの結晶由来のピーク面積を、非晶質由来のハローの面積と結晶由来のピーク面積の合計で除することにより、算出することができる。
【0028】
実施形態に係る分散液に含まれる硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCの質量比は、1:99~99:1の範囲内であってよい。それにより、後述する実施例で示されるように、分散液を用いて製造される複合体の破断強度及び酸素ガスバリア性が一層向上する。
【0029】
実施形態に係る分散液は、分散媒をさらに含む。分散媒は、極性媒体、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、又はこれらの混合物であってよい。特に、分散媒は、比誘電率が38以上である液体を、分散媒の総体積を基準として50~100体積%、好ましくは75~100体積%の範囲内の量で含有してよい。特に、分散媒は、比誘電率が38以上である液体を、分散媒の総体積を基準として80~100体積%の範囲内の量で含有してよい。それにより、後述する実施例で示されるように、分散液のポットライフがより長くなる。
【0030】
実施形態に係る分散液は、任意選択的に、分散質として添加物をさらに含んでもよい。添加物は、無機添加物又は有機添加物であってよい。
【0031】
無機添加物は、シリカ、マイカ、タルク、クレー、カーボン、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、酸化物(例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄)、セラミックス(例えばフェライト)、又はこれらの混合物の微粒子などの無機微粒子であってよい。無機微粒子は、分散質の総重量を基準として、0.09~5質量%の量で含有されてよい。それにより、後述する実施例で示されるように、分散液を用いて製造される複合体の破断強度が一層向上する。
【0032】
有機添加物として、有機微粒子、及び機能性化合物が挙げられる。有機微粒子としては、樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の微粒子、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、又はこれらの混合物の微粒子が挙げられる。機能性化合物としては、色素、UV吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤が挙げられる。
【0033】
実施形態に係る分散液は、必要に応じて、凍結乾燥、スプレードライなどの任意の方法で乾燥させることができる。乾燥体に分散媒を添加して混合することにより、再度分散液を得ることができる。
【0034】
(2)分散液の調製方法
上記のような硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む分散液の調製方法の例を説明する。実施形態に係る硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む分散液の調製方法は、硫酸エステル化CNF分散液と硫酸エステル化CNC分散液を混合することを含む。
【0035】
硫酸エステル化CNF分散液は、任意の方法で調製してよい。例えば、無水酢酸又はプロピオン酸無水物の少なくとも一方、ジメチルスルホキシド、及び硫酸を含む溶液と、原料パルプとを混合して、硫酸エステル化パルプを得る。次いで、硫酸エステル化パルプを上述した分散媒と併せて撹拌する。撹拌は、例えば超音波処理により行ってよい。それにより、硫酸エステル化パルプが解繊されて、硫酸エステル化CNF分散液が得られる。
【0036】
硫酸エステル化CNC分散液は、任意の方法で調製してよい。例えば、原料パルプ中のセルロースの非晶質部分を硫酸で加水分解し、得られた固形分を洗浄し、適当な分散媒と併せて撹拌することにより、硫酸エステル化CNC分散液を得ることができる。
【0037】
硫酸エステル化CNF分散液と硫酸エステル化CNC分散液を併せて混合する。ここに、上述した添加物をさらに加えてもよい。混合は、せん断力を加えながら行ってよい。それにより、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCが良好に混合される。このように良好に混合された分散液を用いて製造される複合体は、後述する実施例で示されるように、一層高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有することができる。混合には、例えば、撹拌機、三本ロール機、二軸混錬機、3軸遊星混錬機、ディスパー、ペイントシェイカー、ビーズミル、カッターミキサー、プラネタリーミキサーなどの装置を使用してよい。
【0038】
混合は、任意の条件で行ってよく、例えば、20℃~150℃で、5分~1時間混合してよい。
【0039】
(3)複合体
実施形態に係る複合体は、硫酸エステル化CNF、及び硫酸エステル化CNCを含む。一実施形態において、複合体は、図3に模式的に示されるように、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCが混合されている混合複合体である。別の実施形態において、複合体は、図4に模式的に示されるように、硫酸エステル化CNFを含有する、少なくとも1層のCNF層と、硫酸エステル化CNCを含有する、少なくとも1層のCNC層と、を含む積層複合体である。以下、各実施形態を説明する。
【0040】
(3-1)混合複合体
硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCは、上で詳細に説明したため、ここでは詳細な説明は省略する。硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCは、いずれも表面に硫酸エステル基を有し、同様の表面状態を有することから、互いに高い親和性を有する。そのため、混合複合体において、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCは、相分離することなく均一に混合された状態であることが可能である。それにより、混合複合体は、高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有することができる。
【0041】
混合複合体に含まれる硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCの質量比は、1:99~99:1の範囲内であってよい。それにより、後述する実施例で示されるように、混合複合体の破断強度及び酸素ガスバリア性が一層向上する。
【0042】
混合複合体は、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCに混合された添加物をさらに含んでよい。添加物は、無機添加物又は有機添加物であってよい。
【0043】
混合複合体は、図5に示すように、無機添加物として無機微粒子を含んでよい。無機微粒子の例として、シリカ、マイカ、タルク、クレー、カーボン、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)、酸化物(例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄)、セラミックス(例えばフェライト)、又はこれらの混合物の微粒子が挙げられる。混合複合体は、混合複合体の総質量を基準として0.09~5質量%の範囲内の量で、無機微粒子を含んでよく、それにより、混合複合体の破断強度が一層向上する。
【0044】
混合複合体は、図6に示すように、有機添加物として樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含んでよい。樹脂及びゴムとしては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質は、混合複合体の破断強度を一層向上させることができる。それに加えて又はそれに代えて、混合複合体は、有機添加物として、機能性化合物を含んでもよい。機能性化合物としては、色素、UV吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤が挙げられる。
【0045】
混合複合体は、図7に示すように、架橋構造を有してもよい。具体的には、硫酸エステル化CNFの少なくとも1つと、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、又は樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の少なくとも1つとの間に架橋が形成されてよい。それに加えて又はそれに代えて、硫酸エステル化CNCの少なくとも1つと、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、又は樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の少なくとも1つとの間に、架橋が形成されてよい。架橋は、セルロースのヒドロキシ基と、セルロースの別のヒドロキシ基、又は樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の反応性部位(例えば、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、メトキシ基、カルボニル基、アルケン部位、エーテル部位)とが、縮合反応又は付加反応により結合することにより形成され得る。結合の種類は、特に限定されないが、例えばウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、尿素結合が挙げられる。特に、ウレタン結合を含む架橋は、混合複合体の酸素ガスバリア性を向上させることができる。架橋構造を有する混合複合体は、図8に示すように、上述した無機微粒子を含んでもよい。
【0046】
架橋の存在は、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴分光法、元素分析、ゲル浸透クロマトグラフィー、示差走査熱量測定などの任意の方法により確認することができる。架橋を形成する化学結合の種類は、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴分光法などの任意の方法により同定することができる。
【0047】
混合複合体は、図9に示されるように、基材に支持されてもよい。すなわち、一実施形態に係る複合体は、上述した硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む混合複合体と、これを支持する基材とを含んでよい。基材は、ろ紙、洋紙、和紙、パルプシート、クラフト紙、段ボール原紙などの、セルロースを主成分とする紙基材であってよい。紙基材は、タルクなどの無機微粒子、蛍光剤、ポリエチレンなどの樹脂などを含有してもよい。
【0048】
紙基材の主成分であるセルロースのOH基は、硫酸エステル基と非常に強い水素結合を形成する。そのため、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む混合複合体と紙基材は、十分な強度で接着し得る。また、紙基材とそれに支持された混合複合体とを含む複合体は、紙基材単体よりも高いガスバリア性及び高い破断強度を有し得る。したがって、このような複合体は、包装材料、梱包材料(例えば段ボール)、容器材料などの紙製品の、向上された機能を有する代替品として使用することができる。
【0049】
(3-2)積層複合体
積層複合体において、少なくとも1層のCNF層と少なくとも1層のCNC層は、互いに隣接している。少なくとも1層のCNF層と少なくとも1層のCNC層は、交互に積層されていてよい。例えば、一実施形態において、積層複合体は、図10に示すように、1層のCNF層1と、その上に設けられた1層のCNC層3を有する。別の実施形態において、積層複合体は、図11に示すように、2層のCNF層1と、それらの間に設けられた1層のCNC層3を有する。さらに別の実施形態において、積層複合体は、図12に示すように、2層のCNC層3と、それらの間に設けられた1層のCNF層1を有する。
【0050】
硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCは、上で詳細に説明したため、ここでは詳細な説明は省略する。硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCは、いずれも表面に硫酸エステル基を有し、同様の表面状態を有することから、互いに高い親和性を有する。そのため、CNF層とCNC層の間の接着強度が高く、それゆえに混合複合体は高い破断強度及び酸素ガスバリア性を有することができる。
【0051】
CNF層又はCNC層の少なくともいずれか一層は、添加物をさらに含んでよい。添加物は、上述した無機添加物又は有機添加物であってよい。CNF層又はCNC層の少なくともいずれか一層は、その層の総質量を基準として0.09~5質量%の範囲内の量で、無機微粒子を含んでよい。それにより、積層複合体の破断強度が一層向上する。また、無機微粒子を含有する層とその層に隣接している層との間の界面は、無機微粒子の存在により凹凸を有し、これは、アンカー効果によりこれら互いに隣接する層の間の接着強度を一層向上させる。
【0052】
CNF層又はCNC層の少なくともいずれか一層は、樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質をさらに含んでよい。それにより、積層複合体の破断強度が一層向上する。樹脂及びゴムとしては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴムが挙げられる。
【0053】
CNF層又はCNC層の少なくともいずれか1層は、架橋構造を有してもよい。CNF層において、硫酸エステル化CNFの少なくとも1つと、硫酸エステル化CNF、又は樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の少なくとも1つとの間に、架橋が形成されてよい。それに加えて又はそれに代えて、CNC層において、硫酸エステル化CNCの少なくとも1つと、硫酸エステル化CNC、又は樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の少なくとも1つとの間に、架橋が形成されてよい。架橋は、セルロースのヒドロキシ基と、セルロースの別のヒドロキシ基、又は樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の反応性部位(例えば、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボキシ基、メトキシ基、カルボニル基、アルケン部位、エーテル部位)とが、縮合反応又は付加反応により結合することにより形成され得る。結合の種類は、特に限定されないが、例えばウレタン結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、尿素結合が挙げられる。特に、ウレタン結合を含む架橋構造は、積層複合体の酸素ガスバリア性を向上させることができる。
【0054】
架橋の存在は、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴分光法、元素分析、ゲル浸透クロマトグラフィー、示差走査熱量測定などの任意の方法により確認することができる。架橋を形成する化学結合の種類は、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴分光法などの任意の方法により同定することができる。
【0055】
積層複合体は、基材に支持されてもよい。すなわち、一実施形態に係る複合体は、図13に示すように、少なくとも1層のCNF層1及び少なくとも1層のCNC層3を含む積層複合体10と、これを支持する基材5とを含んでよい。基材5は、ろ紙、洋紙、和紙、パルプシート、クラフト紙、段ボール原紙などの、セルロースを主成分とする紙基材であってよい。紙基材は、タルクなどの無機微粒子、蛍光剤、ポリエチレンなどの樹脂などを含んでもよい。
【0056】
紙基材の主成分であるセルロースのOH基は、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCの硫酸エステル基と非常に強い水素結合を形成する。そのため、積層複合体は、紙基材に十分な強度で接着し得る。また、紙基材とそれに支持された積層複合体とを含む複合体は、紙基材単体よりも高いガスバリア性及び高い破断強度を有し得る。したがって、このような複合体は、包装材料、梱包材料(例えば段ボール)、容器材料などの紙製品の、向上された機能を有する代替品として使用することができる。
【0057】
(4)複合体の製造方法
(4-1)混合複合体の製造方法
上述のような混合複合体は、上述の硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む分散液を乾燥させて、分散媒を除去することにより製造することができる。
【0058】
混合複合体が、樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む場合、混合複合体は、樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質の微粒子をさらに含む分散液を乾燥することにより、製造することができる。乾燥時には、分散液を加熱及び/又は加圧してもよい。乾燥後の乾燥体を加熱及び/又は加圧してもよい。あるいは、樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を含む混合複合体は、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む分散液を乾燥して、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCの混合粉末を得、これに樹脂及びゴムからなる群から選択される少なくとも1種の物質を加えて混合し、混合物を加熱及び/又は加圧することによって、製造することもできる。
【0059】
混合複合体が架橋構造を有する場合、混合複合体は、上述の硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNCを含む分散液に、架橋剤を加えて架橋反応させた後、分散液を乾燥することにより、製造することができる。
【0060】
混合複合体は、用途に応じて所望の形状に成形してよい。
【0061】
分散液は、上述した基材、特に紙基材上で乾燥させてもよい。それにより、混合複合体とそれを支持する基材とを含む複合体が製造される。紙基材上の分散液は、迅速に乾燥することができるため、このような複合体は短時間で製造することができる。
【0062】
(4-2)積層複合体の製造方法
上記のような積層複合体の製造方法の例を説明する。積層複合体の製造方法は、(a)硫酸エステル化CNF又は硫酸エステル化CNCの一方、及び液体を含む第1層を形成することと、(b)第1層上に、硫酸エステル化CNF又は硫酸エステル化CNCの他方を含む分散液を供給して、第1層上に第2層を形成することと、(c)第1層及び第2層から液体を除去することと、を含む。
【0063】
ステップ(a)において、硫酸エステル化CNF又は硫酸エステル化CNCの一方を含む分散液の層を形成して、第1層を形成する。第1層の含液率は、0質量%超であってよく、特に5質量%以上であってよい。それにより、後述の実施例で示されるように、第1層とその上に形成される第2層と間の接着性が向上する。これは、第1層と第2層の界面において、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCが所定の以上の深さまで混ざり合い、絡まり合うためであると考えられる。また、第1層の含液率は、30質量%以下、特に20質量%以下であってよい。第1層の含液率は、分散液の層を形成した後、この層を乾燥して分散媒を減少させることにより、調整することができる。
【0064】
ステップ(b)において、第1層の上に、硫酸エステル化CNF又は硫酸エステル化CNCの他方を含む分散液を供給して、第1層上に第2層を形成する。
【0065】
ステップ(a)及びステップ(b)を交互に繰り返して、第1層及び第2層を合計3層以上形成してもよい。この場合、ステップ(b)において、第2層を乾燥して、第2層の含液率を調整してもよい。乾燥後の第2層の含液率は、0質量%超、特に5質量%以上であってよい。それにより、第2層とその上に形成される第1層と間の接着性が向上する。また、乾燥後の第2層の含液率は、30質量%以下、特に20質量%以下であってもよい。
【0066】
次いで、ステップ(c)において、第1層及び第2層を乾燥して、第1層及び第2層に含まれる分散媒を除去する。乾燥方法としては、自然乾燥、減圧乾燥、温風乾燥などの任意の方法を利用することができる。こうして、上述のような積層混合体が得られる。
【0067】
なお、ステップ(a)において、上述した基材、特に紙基材上に、第1層を形成してもよい。それにより、積層複合体とそれを支持する基材とを含む複合体が製造される。紙基材上の分散液は、迅速に乾燥することができるため、このような複合体は短時間で製造することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。
【実施例
【0069】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(1)試料A~Xの調製
試料A:水中の硫酸エステル化CNF分散液
ジメチルスルホキシド300g、無水酢酸33.3g、及び濃度98質量%の硫酸4.3gを、1Lフラスコ中で、スターラーチップで撹拌して混合した。続いて、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)(Cariboo Pulp and Paper Company製「CARIBOO」)10gを添加し、室温で4時間撹拌して、NBKPを硫酸エステル化した。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応混合物のpHを7.0にした。続いて、反応混合物をナイロンメッシュ(アズワン株式会社製「PA-11μ」)でろ過し、同時に蒸留水でリンスした。それにより、硫酸エステル化パルプを得た。硫酸エステル化パルプを1Lフラスコに移し、固形分濃度が1%となるように蒸留水を加え、超音波処理を行った。それにより、固形分濃度1質量%の、水中の硫酸エステル化CNF分散液(試料A)を得た。
【0071】
試料B:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりにDMFを用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、DMF中の硫酸エステル化CNF分散液(試料B)を得た。
【0072】
試料C:エチレングリコール中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりにエチレングリコールを用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、エチレングリコール中の硫酸エステル化CNF分散液(試料C)を得た。
【0073】
試料D:水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=80:20)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりに水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=80:20)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNF分散液(試料D)を得た。
【0074】
試料E:水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=75:25)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりに水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=75:25)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNF分散液(試料E)を得た。
【0075】
試料F:エチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=80:20)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりにエチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=80:20)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、エチレングリコールとエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNF分散液(試料F)を得た。
【0076】
試料G:エチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=75:25)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりにエチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=75:25)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、エチレングリコールとエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNF分散液(試料G)を得た。
【0077】
試料H:ホルムアミド中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりにホルムアミドを用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、ホルムアミド中の硫酸エステル化CNF分散液(試料H)を得た。
【0078】
試料I:ホルムアミドとエチレングリコールの混合物(ホルムアミド:エチレングリコール(体積比)=50:50)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりにホルムアミドとエチレングリコールの混合物(ホルムアミド:エチレングリコール(体積比)=50:50)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、ホルムアミドとエチレングリコールの混合物(ホルムアミド:エチレングリコール(体積比)=50:50)中の硫酸エステル化CNF分散液(試料I)を得た。
【0079】
試料J:水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=50:50)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりに蒸留水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=50:50)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエチレングリコールの混合物中の硫酸エステル化CNF分散液(試料J)を得た。
【0080】
試料K:水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=80:20)中の硫酸エステル化CNF分散液
蒸留水の代わりに蒸留水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=80:20)を用いたこと以外は試料Aと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエチレングリコールの混合物中の硫酸エステル化CNF分散液(試料K)を得た。
【0081】
試料L:水中のTEMPO酸化CNF分散液
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシド(TEMPO)0.25mmol及び臭化ナトリウム20mmolを水に溶解させて、500mLの水溶液を得た。この水溶液に、絶対乾燥状態(すなわち、含水率0%)のNBKP(Cariboo Pulp and Paper Company製「CARIBOO」)10gを加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。混合物の温度を20℃にした後、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)64mmolを添加して酸化反応を開始させた。反応中、反応系の温度を20℃に保ち、3N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加することによりpHを10に維持した。3時間反応させた後、結果物をガラスフィルターでろ過し、ろ物を十分に水洗した。それにより、酸化処理されたパルプを得た。
【0082】
酸化処理されたパルプに、固形分濃度が1質量%となるように蒸留水を加えてスラリーを得、超高圧ホモジナイザーを用いてこのスラリーを140MPaで3回処理した。それにより、透明なゲル状の、水中のTEMPO酸化CNF分散液(試料L)を得た。
【0083】
試料M:水中のリン酸エステル化CNF分散液
尿素10g、リン酸二水素ナトリウム二水和物5.53g、及びリン酸水素二ナトリウム4.13gを、水10.9gに溶解させて、リン酸化試薬を調製した。乾燥状態のNBKP(Cariboo Pulp and Paper Company製「CARIBOO」)の抄上げシートを、カッターミル及びピンミルで処理し、綿状繊維を得た。絶乾質量10gの綿状繊維にリン酸化試薬をまんべんなくスプレーし、手で練り合わせて含浸パルプを得た。140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機で含浸パルプを80分間加熱処理した。それにより、リン酸化パルプを得た。
【0084】
10gのリン酸化パルプに1Lのイオン交換水を加えて、均一に分散するまで撹拌した後、分散液をろ過脱水した。得られたシートと1Lのイオン交換水を均一に分散するまで撹拌し、分散液をろ過脱水した。得られたシートをもう一回同様に処理した。次いで、得られたシートと1Lのイオン交換水を撹拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12~13のパルプスラリーを得た。このパルプスラリーを脱水して、シートを得た。シートと1Lのイオン交換水を均一に分散するまで撹拌し、分散液をろ過脱水した。得られたシートをさらに二回、同様に処理した。得られたシートとイオン交換水を混合して0.5質量%のスラリーを得た。このスラリーを、解繊処理装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックス-11S」)を用いて、6900回転/分の条件で180分間解繊処理した。イオン交換水を添加してスラリーの固形分濃度を1質量%に調整した。それにより、固形分濃度1質量%の、水中のリン酸エステル化CNF分散液(試料M)を得た。
【0085】
試料N:水中の硫酸エステル化CNC分散液
2Lフラスコ中で58%硫酸800mLを50℃に加熱した。絶対乾燥状態のNBKP(Cariboo Pulp and Paper Company製「CARIBOO」)100gをフラスコに投入し、3時間撹拌した。結果物を、遠心分離機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「CT18R」)で、20,000Gで10分間処理した。続いて、上澄み液をデカンテーションで除去し、蒸留水400mLを添加してペレットを懸濁させた。同様の遠心分離処理、デカンテーション、蒸留水の添加、及び懸濁をさらに二回行った。それにより、水中の硫酸エステル化CNC分散液(試料N)を得た。
【0086】
試料O:DMF中の硫酸エステル化CNC分散液
試料Nを、凍結乾燥機(アズワン製「FDU-12AS」)で乾燥し、CNC粉体を得た。固形分濃度が1質量%になるようにCNC粉体にDMFを添加し、Primix製のホモディスパー2.5型で2分間処理した。それにより、固形分濃度1質量%の、DMF中のCNC散液(試料O)を得た。
【0087】
試料P:エチレングリコール中のCNC分散液
DMFの代わりにエチレングリコールを用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、エチレングリコール中のCNC分散液(試料P)を得た。
【0088】
試料Q:水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=80:20)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりに水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=80:20)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料Q)を得た。
【0089】
試料R:水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=75:25)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりに水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=75:25)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料R)を得た。
【0090】
試料S:エチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=80:20)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりにエチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=80:20)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、エチレングリコールとエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料S)を得た。
【0091】
試料T:エチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=75:25)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりにエチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=75:25)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、エチレングリコールとエタノールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料T)を得た。
【0092】
試料U:ホルムアミド中のCNC分散液
DMFの代わりにホルムアミドを用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、ホルムアミド中のCNC分散液(試料U)を得た。
【0093】
試料V:ホルムアミドとエチレングリコールの混合物(ホルムアミド:エチレングリコール(体積比)=50:50)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりにホルムアミドとエチレングリコールの混合物(ホルムアミド:エチレングリコール(体積比)=50:50)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、ホルムアミドとエチレングリコールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料V)を得た。
【0094】
試料W:水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=50:50)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりに水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=50:50)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエチレングリコールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料W)を得た。
【0095】
試料X:水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=80:20)中の硫酸エステル化CNC分散液
DMFの代わりに水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=80:20)を用いたこと以外は試料Oと同様にして、固形分濃度1質量%の、水とエチレングリコールの混合物中の硫酸エステル化CNC分散液(試料X)を得た。
【0096】
(2)分散液の調製及び複合体の作製
実施例1
300mLのポリプロピレン製ビーカー中で、75mLの試料A及び75mLの試料NをPrimix製のホモディスパー2.5型で5分間混合して、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水(比誘電率80.4)中で分散した分散液を得た。
【0097】
この分散液の全量を、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、室温下で2週間自然乾燥させて、膜を形成した。PTFE容器から膜を取り出し、試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断して、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を作製した。複合体の被試験部の厚さは25μm、幅は10mm、長さは100mmであった。
【0098】
実施例2
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、0.75mLの試料A及び149.25mLの試料Nを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=0.5:99.5(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=0.5:99.5(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0099】
実施例3
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、1.5mLの試料A及び148.5mLの試料Nを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=1:99(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=1:99(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0100】
実施例4
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、37.5mLの試料A及び112.5mLの試料Nを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=25:75(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=25:75(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0101】
実施例5
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、112.5mLの試料A及び37.5mLの試料Nを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=75:25(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=75:25(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0102】
実施例6
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、148.5mLの試料A及び1.5mLの試料Nを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=99:1(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=99:1(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0103】
実施例7
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、149.25mLの試料A及び0.75mLの試料Nを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=99.5:0.5(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=99.5:0.5(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0104】
実施例8
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、75mLの試料B及び75mLの試料Oを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))がDMF(比誘電率38)中で分散した分散液を得た。この分散液を用いて、自然乾燥の代わりに、真空乾燥機(ヤマト科学製「APD200」)で、減圧下、150℃で5時間乾燥を行ったこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0105】
実施例9
75mLの試料B及び75mLの試料Oに代えて、75mLの試料C及び75mLの試料Pを使用したこと以外は実施例8と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))がエチレングリコール(比誘電率38.7)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0106】
実施例10
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、75mLの試料D及び75mLの試料Qを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水(比誘電率80.4)とエタノール(比誘電率25.3)の混合物(水:エタノール(体積比)=80:20)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0107】
実施例11
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、75mLの試料E及び75mLの試料Rを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水とエタノールの混合物(水:エタノール(体積比)=75:25)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0108】
実施例12
75mLの試料B及び75mLの試料Oに代えて、75mLの試料F及び75mLの試料Sを使用したこと以外は実施例8と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))がエチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=80:20)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0109】
実施例13
75mLの試料B及び75mLの試料Oに代えて、75mLの試料G及び75mLの試料Tを使用したこと以外は実施例8と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))がエチレングリコールとエタノールの混合物(エチレングリコール:エタノール(体積比)=75:25)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0110】
実施例14
75mLの試料A及び75mLの試料Nに代えて、75mLの試料H及び75mLの試料Uを使用したこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))がホルムアミド(比誘電率110)中で分散した分散液を得た。この分散液を用いて、自然乾燥の代わりに、真空乾燥機(ヤマト科学製「APD200」)で、減圧下、150℃で10時間乾燥を行ったこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0111】
実施例15
75mLの試料H及び75mLの試料Uに代えて、75mLの試料I及び75mLの試料Vを使用したこと以外は実施例14と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))がホルムアミドとエチレングリコールの混合物(ホルムアミド:エチレングリコール(体積比)=50:50)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0112】
実施例16
75mLの試料H及び75mLの試料Uに代えて、75mLの試料J及び75mLの試料Wを使用したこと以外は実施例14と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=50:50)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0113】
実施例17
75mLの試料H及び75mLの試料Uに代えて、75mLの試料K及び75mLの試料Xを使用したこと以外は実施例14と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水とエチレングリコールの混合物(水:エチレングリコール(体積比)=80:20)中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0114】
実施例18
300mLのポリプロピレン製ビーカー中で、150mLの試料A、150mLの試料N、及び0.0015gのシリカ微粒子(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「HS-208」)をPrimix製のホモディスパー2.5型で5分間混合して、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:0.05(質量比))が水中で分散した分散液を得た。この分散液の半量を用いて、実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:0.05(質量比))を含むダンベル型の複合体を作製した。
【0115】
実施例19
0.003gのシリカ微粒子を用いたこと以外は実施例18と同様にして、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:0.1(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:0.1(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0116】
実施例20
0.075gのシリカ微粒子を用いたこと以外は実施例18と同様にして、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:2.5(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:2.5(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0117】
実施例21
0.15gのシリカ微粒子を用いたこと以外は実施例18と同様にして、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC=50:50:5.0(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:5.0(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0118】
実施例22
0.18gのシリカ微粒子を用いたこと以外は実施例18と同様にして、硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:6.0(質量比))が水中で分散した分散液、及び硫酸エステル化CNF、硫酸エステル化CNC、及びシリカ微粒子(CNF:CNC:シリカ=50:50:6.0(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0119】
実施例23
375mLの試料A及び375mLの試料Nを、マイクロフルイダイザー(Microfluidics製「M-110EH」)を用いて150MPaで3回処理して混合した。それにより、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水中で分散した分散液を得た。150mLのこの分散液を用いて、実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を作製した。
【0120】
実施例24
75mLの試料A及び75mLの試料Nを、500mLのポリプロピレン製のボトルに入れて密閉し、ボトルを80℃のウォーターバスに24時間静置した。試料A及び試料Nは、熱対流により混合された。それにより、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水中で分散した分散液を得た。この分散液の全量を用いて、実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を作製した。
【0121】
比較例1
試料Aに代えて試料Lを用いたこと以外は実施例1と同様にして、TEMPO酸化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水中で分散した分散液、及びTEMPO酸化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0122】
比較例2
試料Aに代えて試料Mを用いたこと以外は実施例1と同様にして、リン酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水中で分散した分散液、及びリン酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含むダンベル型の複合体を得た。
【0123】
実施例25
実施例1と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液を、凍結乾燥機(アズワン製「FDU-12AS」)で乾燥させて、乾燥粉体を得た。乾燥粉体3gとポリウレタンペレット(BASF製「エラストラン」)97gとを併せて、三本ロール圧延装置(株式会社井元製作所製、1983型)を用いて100℃で4回圧延した。得られた膜を試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断して、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))、並びにポリウレタン樹脂を含むダンベル型の複合体を作製した。
【0124】
実施例26
実施例1と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液4.68mLと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)1.5gと、蒸留水100mLとを、ビーカー中で24時間撹拌して、分散液を得た。得られた分散液を用いて、実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))、並びにポリビニルアルコールを含むダンベル型の複合体を作製した。
【0125】
実施例27
150mLの試料A及び150mLの試料Nを用いたこと以外は実施例1と同様にして、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))が水中で分散した分散液300mLを得た。この分散液と、固形分濃度50質量%の天然ゴムラテックス(ケニス株式会社製)194gとを、常温で混合した。ここにラジカル発生剤(日油株式会社製「パーヘキサ25B-40」)3gを加え、混合物をテフロン(登録商標)のトレイに入れて80℃で3日間乾燥させた。結果物を、三本ロール圧延装置(株式会社井元製作所製、1983型)を用いて100℃で4回圧延した。得られた膜を試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断して、硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))、並びに天然ゴムを含むダンベル型の複合体を作製した。
【0126】
実施例28
実施例1と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液4.68mLと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)1.5gと、蒸留水100mLとを、ビーカー中で24時間撹拌して、分散液を得た。得られた分散液に、1Nの塩酸0.01g及び37質量%のホルムアルデヒド水溶液0.3gを加えた。それにより、アセタール結合を介した架橋構造が形成された。架橋反応後の分散液を用いて、実施例1と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0127】
実施例29
実施例9と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液150gに、ジフェニルメタンジイソシアネート41gを加え、50℃で3時間撹拌した。それにより、CNF、CNC、及びエチレングリコールのOH基がジフェニルメタンジイソシアネートのNCO基と反応して、ウレタン結合が形成された。その結果、CNF、CNC、及びウレタン樹脂がウレタン結合を介して架橋されている架橋体が得られた。反応後の分散液を、三本ロール圧延装置(株式会社井元製作所製、1983型)を用いて100℃で4回圧延した。得られた膜を試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断して、ダンベル型の複合体を作製した。
【0128】
実施例30
実施例1と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液4.68mLと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)1.5gと、蒸留水100mLと、ジフェニルメタンジイソシアネート0.05gとを、50℃で24時間撹拌した。それにより、ウレタン結合を介した架橋構造が形成された。架橋反応後の分散液を用いて、実施例1と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0129】
実施例31
実施例16と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液150gに、ジフェニルメタンジイソシアネート20.5gを加え、50℃で3時間撹拌した。それにより、CNF、CNC、及びエチレングリコールのOH基がジフェニルメタンジイソシアネートのNCO基と反応して、ウレタン結合が形成された。その結果、CNF、CNC、及びウレタン樹脂がウレタン結合を介して架橋されている架橋体が得られた。反応後の分散液を、三本ロール圧延装置(株式会社井元製作所製、1983型)を用いて100℃で4回圧延した。得られた膜を試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断して、ダンベル型の複合体を作製した。
【0130】
実施例32
75mLの試料Aを、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に75mLの試料Nをさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0131】
実施例33
50mLの試料Aを、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に50mLの試料Nをさらに流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。このPTFE容器に50mLの試料Aをさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0132】
実施例34
50mLの試料Nを、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に50mLの試料Aをさらに流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。このPTFE容器に50mLの試料Nをさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0133】
実施例35
500mLの試料A及び0.0025gのシリカ微粒子(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「HS-208」)をPrimix製のホモディスパー2.5型で5分間混合して、CNF及びシリカ微粒子が水中で分散した分散液を得た。また、500mLの試料N及び0.0025gのシリカ微粒子(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製「HS-208」)をPrimix製のホモディスパー2.5型で5分間混合して、CNC及びシリカ微粒子が水中で分散した分散液を得た。
【0134】
CNF及びシリカ微粒子の分散液75mLを、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に、CNC及びシリカ微粒子の分散液75mLをさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0135】
実施例36
試料A及び試料Nに混合するシリカ微粒子の量をそれぞれ0.005gとしたこと以外は実施例35と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0136】
実施例37
試料A及び試料Nに混合するシリカ微粒子の量をそれぞれ0.125gとしたこと以外は実施例35と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0137】
実施例38
試料A及び試料Nに混合するシリカ微粒子の量をそれぞれ0.25gとしたこと以外は実施例35と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0138】
実施例39
試料A及び試料Nに混合するシリカ微粒子の量をそれぞれ0.30gとしたこと以外は実施例35と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0139】
実施例40
試料Aに混合するシリカ微粒子の量を0.005gとし、試料Nにはシリカ微粒子を混合しなかったこと以外は実施例35と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0140】
実施例41
試料Aにはシリカ微粒子を混合せず、試料Nに混合するシリカ微粒子の量を0.005gとしなかったこと以外は実施例35と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0141】
実施例42
2.34mLの試料Aと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)0.75gと、蒸留水100mLとを、ビーカー中で24時間撹拌して、CNFとポリビニルアルコールを含む分散液を得た。
【0142】
得られた分散液を、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に75mLの試料Nをさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0143】
実施例43
2.34mLの試料Nと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)0.75gと、蒸留水100mLとを、ビーカー中で24時間撹拌して、CNCとポリビニルアルコールを含む分散液を得た。
【0144】
75mLの試料Aを、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に、上記のCNCとポリビニルアルコールを含む分散液をさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0145】
実施例44
実施例42と同様にして、CNFとポリビニルアルコールを含む分散液を調製した。また、実施例43と同様にして、CNCとポリビニルアルコールを含む分散液を調製した。
【0146】
CNFとポリビニルアルコールを含む分散液を、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に、上記のCNCとポリビニルアルコールを含む分散液をさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0147】
実施例45
2.34mLの試料Aと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)0.75gと、蒸留水100mLとを、ビーカー中で24時間撹拌して、CNFとポリビニルアルコールを含む分散液を得た。得られた分散液に、1Nの塩酸0.01g及び37質量%のホルムアルデヒド水溶液0.3gを加えた。それにより、アセタール結合を介した架橋構造が形成された。
【0148】
2.34mLの試料Nと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)0.75gと、蒸留水100mLとを、ビーカー中で24時間撹拌して、CNCとポリビニルアルコールを含む分散液を得た。得られた分散液に、1Nの塩酸0.01g及び37質量%のホルムアルデヒド水溶液0.3gを加えた。それにより、アセタール結合を介した架橋構造が形成された。
【0149】
架橋反応後のCNFとポリビニルアルコールを含む分散液を、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に、架橋反応後のCNCとポリビニルアルコールを含む分散液をさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0150】
実施例46
2.34mLの試料Aと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)0.75gと、蒸留水100mLと、ジフェニルメタンジイソシアネート0.025gとを、50℃で3時間撹拌した。それにより、ウレタン結合を介した架橋構造が形成された。
【0151】
2.34mLの試料Nと、ポリビニルアルコール微粒子(クラレ製「クラレポバール」)0.75gと、蒸留水100mLと、ジフェニルメタンジイソシアネート0.025gとを、50℃で3時間撹拌した。それにより、ウレタン結合を介した架橋構造が形成された。
【0152】
架橋反応後のCNFとポリビニルアルコールを含む分散液を、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器に流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。このPTFE容器に、架橋反応後のCNCとポリビニルアルコールを含む分散液をさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器中に形成された膜を取り出し、実施例1と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0153】
実施例47
試料Aを含液率が20質量%になるまで自然乾燥する代わりに、含液率が5質量%になるまで自然乾燥したこと以外は実施例32と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0154】
実施例48
試料Aを含液率が20質量%になるまで自然乾燥する代わりに、105℃で3時間乾燥して含液率を0質量%としたこと以外は実施例32と同様にして、ダンベル型の複合体を作製した。
【0155】
実施例49
紙基材(定性ろ紙No.1、株式会社アドバンテック製)を19.5cm×19.5cmのサイズの正方形に切り、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器内に置いた。このPTFE容器に、実施例1と同様にして調製したCNF及びCNCの分散液の全量を流し込み、室温下で2週間自然乾燥させて、膜を形成した。PTFE容器から紙基材及び膜を取り出し、試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断した。それにより、紙基材、及び硫酸エステル化CNF及び硫酸エステル化CNC(CNF:CNC=50:50(質量比))を含む膜からなるダンベル型の複合体を得た。
【0156】
実施例50
紙基材として段ボール原紙(レンゴー株式会社製「LCC120」)を用いたこと以外は実施例49と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0157】
実施例51
紙基材(定性ろ紙No.1、株式会社アドバンテック製)を19.5cm×19.5cmのサイズの正方形に切り、内寸20cm×20cm×5cmの角型PTFE容器内に置いた。このPTFE容器に75mLの試料Aを流し込み、含液率が20質量%になるまで自然乾燥した。含液率は質量変化によりモニタリングした。PTFE容器に75mLの試料Nをさらに流し込み、2週間自然乾燥した。PTFE容器から紙基材及び膜を取り出し、試料裁断機(ダンベル社製「SDL200」)で裁断した。それにより、紙基材、CNF層、及びCNC層からなるダンベル型の複合体を得た。
【0158】
実施例52
紙基材として段ボール原紙(レンゴー株式会社製「LCC120」)を用いたこと以外は実施例51と同様にしてダンベル型の複合体を作製した。
【0159】
表1、2は、実施例1~52及び比較例1、2における各種条件を簡単に表している。
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
(3)分散液の乾燥再分散性の評価
実施例1~24及び比較例1、2の分散液の初期粘度を、B型粘度計(東機産業製「TVB10」)で3回測定して、平均を求めた。
【0163】
続いて、実施例1~7、18~24及び比較例1、2の分散液各100gを-18℃で凍結させ、凍結乾燥機(東京理化製「FDU1110」)で乾燥させた。また、実施例8~17の各分散液を、遠心分離機(サーモフィッシャー製「Heraeus Megafuge 8R centrifuge」)で、10,000Gで5分間処理し、上澄みを除去し、蒸留水を添加した。この操作を繰り返して、分散媒を水に置換した。その後、分散液各100gを-18℃で凍結させ、凍結乾燥機(東京理化器械製「FDU1110」)で乾燥させた。
【0164】
初期粘度を測定したときと同じ組成になるように、各乾燥体に分散媒を加え、ディスパー(Primix製のホモディスパー2.5型)で2分間処理して、分散液を得た。得られた分散液の粘度を、B型粘度計(東機産業製「TVB10」)で3回測定し、平均を求めた。
【0165】
乾燥及び再分散後の粘度の変化率を求め、以下の基準に基づいて、実施例1~20及び比較例1、2の各分散液の乾燥再分散性を評価した。結果を表3中に示す。
〇:乾燥再分散後の粘度変化率が10%未満
△:乾燥再分散後の粘度変化率が10%以上、且つ30%未満
×:乾燥再分散後の粘度変化率が30%以上
【0166】
(4)分散液のポットライフの評価
実施例1~24及び比較例1、2の分散液の初期粘度を、B型粘度計(東機産業製「TVB10」)で3回測定して、平均を求めた。各分散液を室温で保管し、1か月毎に分散液の粘度をB型粘度計(東機産業製「TVB10」)で3回測定して、平均を求めた。
【0167】
保管後の分散液の粘度の変化率を求め、以下の基準に基づいて、実施例1~24及び比較例1、2の各分散液のポットライフを評価した。結果を表3中に示す。
〇:3か月後の粘度変化率が10%未満
△:2か月後の粘度変化率が10%未満、且つ3か月後の粘度変化率が10%超
×:2か月後の粘度変化率が10%超
【0168】
(5)複合体の破断強度の評価
実施例1~52及び比較例1、2のダンベル型の複合体の破断強度を、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製「RTF-2410」)を用いて、JIS C2151、ASTM D882に準じて3回測定し、平均を求めた。破断強度測定において、グリップ間隔は50mm、引張速度は200mm/分とした。
【0169】
以下の基準に基づいて、実施例1~52及び比較例1、2の複合体の破断強度を評価した。結果を表3中に示す。
◎:破断強度が140MPa以上
〇:破断強度が120MPa以上、且つ140MPa未満
△:破断強度が100MPa以上、且つ120MPa未満
×:破断強度が100MPa未満
【0170】
(6)複合体の酸素ガスバリア性の評価
実施例1~52及び比較例1、2の複合体の酸素ガス透過率を、酸素ガス透過率計(MOCON製「OX-TRAN 2/22」)を用いて、JIS K7126-2(温湿度条件:23℃、50%)に準じて、温度23℃、湿度50%の条件下で3回測定し、平均を求めた。
【0171】
以下の基準に基づいて、実施例1~52及び比較例1、2の複合体の酸素ガスバリア性を評価した。結果を表3中に示す。
◎:酸素ガス透過率が0.5ml/m/day/atm未満
〇:酸素ガス透過率が0.5ml/m/day/atm以上、且つ2.5ml/m/day/atm未満
△:酸素ガス透過率が2.5ml/m/day/atm以上、且つ4.5ml/m/day/atm未満
×:酸素ガス透過率が4.5ml/m/day/atm以上
【0172】
(7)複合体の接着性の評価
実施例32~52の複合体を5cm×5cmに切断し、両面テープ(ニチバン製「ナイスタック」)で平滑なアクリル板に貼り付け1時間養生した。続いてJIS K5600-5-6に従いクロスカット試験を行った。具体的には、カッターナイフで複合体に2mm間隔で切込みを形成し、10×10のグリッドを形成した。複合体にセロハンテープを貼り、次いで、セロハンテープの端をつかんで45°の方向に迅速に引いて、セロハンテープを剥がした。複合体の表面を目視で観察し、下層又は基材からの膜剥がれの有無を確認した。
【0173】
以下の基準に基づき、実施例32~52の複合体の接着性を評価した。結果を表3中に示す。
◎:膜剥がれが観察されたマスの数が3個未満
〇:膜剥がれが観察されたマスの数が3個以上、7個未満
△:膜剥がれが観察されたマスの数が7個以上、11個未満
×:膜剥がれが観察されたマスの数が11個以上
【0174】
【表3】
【0175】
実施例1~24の分散液は、比較例1、2の分散液よりも良好な乾燥再分散性及び長いポットライフを示した。また、実施例1~48の複合体は、比較例1、2の複合体よりも高い破断強度及び高い酸素ガスバリア性を示した。このことから、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCの組み合わせが、良好な乾燥再分散性、長いポットライフ、高い破断強度、及び高い酸素ガスバリア性をもたらすことが示された。
【0176】
実施例1~7の複合体の評価結果から、硫酸エステル化CNFと硫酸エステル化CNCの質量比が1:99~99:1の範囲内であることにより、より高い破断強度及びより高い酸素ガスバリア性がもたらされることが示された。
【0177】
実施例1、8~17の分散液の評価結果から、分散液の分散媒が、水、DMF、エチレングリコール、ホルムアミドのような比誘電率が38以上である液体を、分散媒の総体積を基準として80~100体積%の範囲内の量で含有することにより、より長いポットライフがもたらされることが示された。
【0178】
実施例1、18~22の複合体の評価結果から、複合体が、複合体の総質量を基準として0.09~5質量%の範囲内の量で、シリカのような無機微粒子を含むことにより、より高い破断強度がもたらされることが示された。
【0179】
実施例1、23、24の複合体の評価結果から、ディスパー及びマイクロフルイダイザーのような手段を用い、せん断力を利用して分散液を調製することにより、より高い破断強度及びより高い酸素ガスバリア性を有する複合体を製造することができることが示された。
【0180】
実施例1、9、25~31の複合体の評価結果から、ポリウレタン、PVAのような樹脂又は天然ゴムのようなゴムの添加が、複合体の破断強度を向上させることが示された。また、複合体は架橋構造を有してよく、特にウレタン結合を介した架橋が複合体の酸素ガスバリア性を向上させることが示された。
【0181】
実施例32~48のような積層された複数の層を有する複合体も、高い破断強度及び高い酸素ガスバリア性を示した。
【0182】
実施例32、35~41の複合体の評価結果から、複合体の複数の層のうち少なくとも1層が、その層の総質量を基準として0.09~5質量%の範囲内の量で、無機微粒子を含むことにより、より高い破断強度及がもたらされるとともに、層間の接着性を向上させることが示された。
【0183】
実施例32、42~46の複合体の評価結果から、樹脂又はゴムの添加が、複合体の破断強度を向上させることが示された。また、複合体は架橋構造を有してよく、特にウレタン結合を介した架橋が複合体の酸素ガスバリア性を向上させることが示された。
【0184】
実施例32、47、48の複合体の評価結果から、積層された上層及び下層を有する複合体の製造において、液体を含む下層(特に、0質量%超且つ30質量%以下、又は5質量%超且つ25質量%以下の量で液体を含む下層)上に、上層を形成するための分散液を供給し、その後上層及び下層の液体を除去することにより、下層中の液体を完全に除去した後に上層を形成する場合と比べて、上層と下層の間の接着性が良好となることが示された。
【0185】
実施例49~52の複合体の評価結果から、ろ紙や段ボールのようなバイオマス由来の紙基材と、紙基材上に支持されたCNC及びCNFを含む複合体は、高い破断強度、ガスバリア性、及び接着性を有することが示された。
【0186】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1
図2
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図4
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図7
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図10
図11
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図13