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  • 特許-冷却装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20240228BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20240228BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F25B15/00 B
F25B15/00 A
F25B27/02 K
C09K5/04 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019221464
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021092328
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519437227
【氏名又は名称】サーマルガジェット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519437238
【氏名又は名称】小佐野 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 亮
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第201289254(CN,Y)
【文献】国際公開第2009/157004(WO,A1)
【文献】実用新案登録第2548789(JP,Y2)
【文献】特開2003-262422(JP,A)
【文献】実開昭57-072069(JP,U)
【文献】特表2012-516800(JP,A)
【文献】特開2017-096580(JP,A)
【文献】特開昭58-024767(JP,A)
【文献】特開昭56-070833(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108362033(CN,A)
【文献】国際公開第2008/155543(WO,A2)
【文献】特表2009-520073(JP,A)
【文献】特開昭58-123070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00 - 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生器、凝縮器、気化器及び吸収器が連結された循環経路を備え、
前記循環経路は、その内部に、冷媒、吸収媒体及び圧力平衡ガスが充填された冷却装置であって、
前記冷媒は、二酸化炭素であり、
前記吸収媒体は、イオン液体又はアミンであり、
前記圧力平衡ガスは、水素又はヘリウムであり、
前記凝縮器は、二酸化炭素を液化し得る温度及び圧力で制御され
前記発生器における加熱は、冷却対象物の排熱を利用することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記凝縮器の温度は、-56.6~50.0℃であり、前記凝縮器の圧力は、0.52~7.40MPaであることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記アミンは、モノエタノールアミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、精留器を備えないことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍サイクルを利用した冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収式冷凍サイクルを用いた冷却装置としては、発生器、精留器、凝縮器、冷却器、吸収器等を順次接続して構成され、その内部に、冷媒としてアンモニア、吸収媒体として水、圧力平衡ガスとして水素ガスまたはヘリウムガスが充填され、冷却器を流れるアンモニア液が圧力平衡ガスに拡散して蒸発することで、冷却器が冷却されるようになされた装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この吸収式冷凍サイクルにおいては、冷却器が、蒸発管の内部にガス管を配設した二重管構造となされ、これら蒸発管とガス管との隙間が、ガス流通部およびアンモニア液流通部を有する仕切板によって全長に亘って複数の蒸発室に仕切られるとともに、これら各蒸発室の上流側のガス管の位置にガス供給孔が穿孔されている。
【0003】
ところが、このような冷却装置における吸収式冷凍サイクルは、アンモニアを冷媒とし、水素ガスまたはヘリウムガスを圧力平衡ガスとして用いるものであるため、冷媒が漏れ出た場合にはアンモニアの強烈な刺激臭が拡散してしまうといったおそれがあり、使用を敬遠するユーザーも存在している。
【0004】
また、アンモニアに代えて水を冷媒として用い、臭化リチウムを吸収媒体として用いた吸収式冷凍サイクルも開発されているが、このような技術においては、臭化リチウムの結晶化、水の凍結、腐食、低作動圧に起因する空気の侵入等の課題を有する技術であった。
【0005】
そのため、上記のようなアンモニアや水を冷媒とした吸収式冷凍サイクルに代えて、二酸化炭素を冷媒として用い、アミン、アミド、ケトン、カルボン酸エステル、アルコール、エーテル、スルホン、スルホキシド、リン酸エステル等を吸収媒体として用いた冷却方法が開発されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第2548789号
【文献】特開昭58-24767号公報
【文献】特開昭58-123070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の二酸化炭素を冷媒とした技術においては、例えば、特許文献3の第3ページ右上欄第15行に記載されているように、冷媒として用いる二酸化炭素は、吸収媒体への溶解度が極めて低いため、液相を形成するのではなく、気体を溶媒中に吸収させて用いている。そのため、このような従来技術においては、吸収式冷凍サイクルの冷媒が十分ではないといった問題を有していた。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、安全性が高く、取扱い性に優れた二酸化炭素を冷媒とするとともに、この二酸化炭素を高圧環境下で液化することにより、吸収式冷凍サイクルを適切に実施し得る冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の冷却装置は、
発生器、凝縮器、気化器及び吸収器が連結された循環経路を備え、
前記循環経路は、その内部に、冷媒、吸収媒体及び圧力平衡ガスが充填された冷却装置であって、
前記冷媒は、二酸化炭素であり、
前記吸収媒体は、イオン液体又はアミンであり、
前記圧力平衡ガスは、水素又はヘリウムであり、
前記凝縮器は、二酸化炭素を液化し得る温度及び圧力で制御されることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の冷却装置においては、凝縮器の温度は、-56.6~50.0℃であり、かつ、凝縮器の圧力は、0.52~7.40MPaであることが好ましい。
【0011】
このような特徴を備えた本発明によれば、冷却装置の循環経路、特に凝縮器における温度及び圧力を二酸化炭素が液化し得るものとすることにより、二酸化炭素を冷媒とした吸収式冷凍サイクルを適切に実施することができる。
【0012】
さらに、本発明の冷却装置においては、前記アミンは、モノエタノールアミンであることが好ましい。また、本発明の冷却装置においては、前記発生器における加熱は、冷却対象物の排熱を利用することが好ましい。
【0013】
また、本発明の冷却装置においては、従来のアンモニアを冷媒とし、水を吸収媒体とした構成や、水を冷媒とし、臭化リチウムを吸収媒体とした構成においては必須な精留器を備えないことを特徴としいる。
【0014】
このような特徴を備えた本発明によれば、吸収媒体のイオン液体及びアミンが極めて気化しづらいため、冷媒の二酸化炭素と容易に分離することができる。そのため、本発明の冷却装置では、従来の吸収式冷凍サイクルにおいて吸収媒体を回収するために用いられていた精留器のような構成要素を必要としない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷却装置によれば、安全性が高く、取扱い性に優れた二酸化炭素を冷媒とするとともに、この二酸化炭素を高圧環境下で液化することにより、吸収式冷凍サイクルを適切に実施し得る冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の冷却装置における吸収式冷凍サイクルの一例を示す概念図である。
図2】本発明の冷却装置における吸収式冷凍サイクルにおいて高熱伝導性部材を備えた例を示す概念図である。
図3】本発明の冷却装置の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決するために、吸収式冷凍サイクルにおける冷媒及び吸収媒体の組み合わせについて鋭意研究を行った結果、二酸化炭素とイオン液体又はアミンとの組み合わせを採用するとともに、凝縮器における二酸化炭素の液化を高圧環境下で行うことにより、これまでの吸収式冷凍サイクルにおける冷媒として、二酸化炭素を用いることが可能であることを見出し、本発明の冷却装置を発明するに至った。
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る冷却装置について図面を用いて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の冷却装置は、図1に示すように、吸収器1、発生器2、凝縮器3、気化器4から構成されており、これらが順次連結されるとともに、気化器4が吸収器1へ再びと連結されることにより、循環経路が形成されている。なお、これらの構成要素は溶接等により気密的に連結されていることが好ましい。そして、この循環経路の内部には、冷媒である二酸化炭素、吸収媒体であるイオン液体又はアミン、及び、圧力平衡ガスである水素ガス又はヘリウムガスが充填されている。
【0020】
また、本発明の冷却装置においては、気体である二酸化炭素を液化(凝縮)させるために、従来技術のアンモニアガスの凝縮と比べて、非常に高い圧力環境下を必要としている。そのため、本発明の冷却装置、特に二酸化炭素の液化を行う凝縮器3は、非常に高い圧力に対応できる構造を有することが必須である。
【0021】
さらに、本発明の冷却装置においては、冷却対象のサーバー等の排熱あるいは太陽光の照射エネルギーを利用することにより、発生器におけるイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液からの二酸化炭素の分離を行うことができるといった効果も奏する。
【0022】
以下、各構成について詳述する。
<吸収器>
本発明における吸収器1は、吸収媒体であるイオン液体又はアミンを貯留する受液槽5を備えており、この受液槽5は、上流側の気化器4に連結され、気化された気体の二酸化炭素(冷媒)と圧力平衡ガスとの混合ガスが送られてくる経路(混合ガス搬送経路6)と、下流側の発生器2に連結され、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を送り出す経路(冷媒・吸収媒体搬送経路7)と、受液槽5から気化器4に連結され、圧力平衡ガスを送り返す経路(圧力平衡ガス搬送経路8)とに連結されている。なお、この混合ガス搬送経路6は、図面中においては簡略化した構成として示されているが、吸収器1における二酸化炭素の供給タイミングを制御するためにらせん状の形状としてもよい。また、この冷媒・吸収媒体搬送経路7は、図面においては、吸収器1において生成されたイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液が発生器2に送り込まれる構成を示しているが、発生器2で二酸化炭素が放出されたイオン液体又はアミンが吸収器1に戻される経路をさらに備えていてもよい。
【0023】
この吸収器1においては、混合ガス搬送経路6を通して送られてきた気体の二酸化炭素と圧力平衡ガスとの混合ガスを、受液槽5に液相として貯留されているイオン液体又はアミンに接触させることにより、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を調製する。このようにして調製されたイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液は、冷媒・吸収媒体搬送経路7を通して吸収器1から発生器2に送られる。
【0024】
受液槽5に液相として貯留されているイオン液体としては、例えば、広栄化学工業株式会社製のIL-Pシリーズ、IL-Aシリーズ、IL-IMシリーズ、IL-APシリーズ、IL-OHシリーズ、OL-MAシリーズ、IL-Sシリーズ等が挙げられる。
【0025】
また、受液槽5に液相として貯留されているアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジグリコールアミン、イソプロピルアミン、ジエチレントリアミン、モルホリン、エチレンジアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、ピペラジン、等が挙げられ、これらの中でも、安定的にアミン・二酸化炭素溶液を調製できることから、モノエタノールアミンが好ましい。
【0026】
一方、受液槽5の気相においては、冷媒である二酸化炭素を吸収媒体であるイオン液体又はアミンと反応させるため、圧力平衡ガスのみが残留することになる。この分離された圧力平衡ガスは、圧力平衡ガス搬送経路8を通して気化器4の気化ノズルの下流側に送られ、気化された気体の二酸化炭素との混合ガス調製に用いられる。なお、本発明における圧力平衡ガスとしては、水素又はヘリウムのいずれかを用いることができる。
【0027】
<発生器>
本発明における発生器2は、前述の上流側の吸収器1に連結され、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液が送られてくる経路(冷媒・吸収媒体搬送経路7)と、下流側の凝縮器3に連結され、発生した気体の二酸化炭素を送り出す経路(冷媒ガス搬送経路9)とに連結されている。また、本発明における発生器2は、冷媒・吸収媒体搬送経路7を介して上流側の吸収器1から送られてきたイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を外部から加熱する加熱手段10を備えてもよい。この発生器2における加熱手段10としては、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を加熱してイオン液体又はアミンから二酸化炭素を分離できるものであれば特に限定されるものではないが、本発明の冷却装置を適用する冷却対象物、例えばサーバー等の排熱あるいは太陽光の照射エネルギーを用いることができる。
【0028】
また、本発明の冷却装置においては、上記のように吸収器1の受液槽5における二酸化炭素のイオン液体又はアミンへの反応は発熱反応であるため、この反応熱を加熱手段10として用いることもできる。この場合、受液槽5で生じる反応熱を発生器2へ伝達する手段としては、図2において斜線で示したような構成で配置される熱伝導部材11を利用することもできる。図2は、本発明の冷却装置における吸収式冷凍サイクルにおいて熱伝導部材を備えた例を示す概念図である。このような熱伝導部材は、熱伝導性の非常に高い材質製の部材であるが、一般にヒートパイプと呼ばれる部材を本発明における熱伝導部材として用いることもできる。本発明におけるヒートパイプとは、内壁に毛細管構造を備えた密閉容器内に真空封入された作動液の蒸発及び凝縮による相変化を利用して熱を搬送させる部材である。
【0029】
本発明における発生器2において、上記のような構成の冷媒・吸収媒体搬送経路7を通して送られてきたイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液は、加熱手段10や熱伝導部材11によって、イオン液体又はアミンと気体である二酸化炭素とに分離される。このような加熱により、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液は、イオン液体又はアミンと、気体の二酸化炭素とに分離され、気体の二酸化炭素のみが下流側の凝縮器3に送られる。一方、分離されたイオン液体又はアミンは、前述の吸収器1の受液槽5に戻され、再びイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液の調製に用いられる。
【0030】
<凝縮器>
本発明における凝縮器3は、前述の上流側の発生器2に連結され、発生した気体の二酸化炭素が送り出される経路(冷媒ガス搬送経路9)と、下流側の気化器4に連結され、気体の二酸化炭素を液化する経路(凝縮経路12)とに連結されている。また、本発明における凝縮器3は、二酸化炭素を液化させるため、非常に高い圧力に対応した構造を有することが必須である。本発明における凝縮器3においては、発生器2から送られてきた気体の二酸化炭素を加圧及び冷却することにより、液体の二酸化炭素に凝縮(液化)させる。また、本発明においては、凝縮器3の凝縮経路12は、下流側に向かって水平より2~3°傾斜した構成であることが好ましい。このような構成によれば、液化された二酸化炭素が気化器4の気化ノズルの直前に貯留される。
【0031】
二酸化炭素の凝縮は、従来のアンモニアガスの凝縮に比べて高い圧力下において低い温度とすることが必要となるため、本発明の冷却装置における凝縮器3は、従来のアンモニアガスの凝縮に用いられていたものよりも高い圧力に対応できるような構造を有するとともに、経路を極めて長くした構成、材質を熱伝導性の優れたものとした構成、周囲に複数枚の放熱用フィンを備えた構成等を備えることが好ましい。
【0032】
また、本発明の冷却装置においては、気体の二酸化炭素を良好に凝縮(液化)させるために、凝縮器の温度は-56.6~50.0、好ましくは5.0~50.0℃、より好ましくは20.0~31.1℃とする。また、凝縮器の圧力は0.52~10.0MPa、好ましくは1.0~7.4MPa、より好ましくは1.0~5.5MPaとする。温度が-56.6℃未満又は圧力が0.52MPa未満であると、二酸化炭素が液体とならず、本発明の凝縮器では良好に循環しなくなってしまう。一方、温度が50℃超であると、臨界点を超えてしまう。また、圧力が10.0MPa超であると、装置の耐久性の観点から実用的ではない。
【0033】
<気化器>
本発明における気化器4は、前述の上流側の凝縮器3に連結され、気体の二酸化炭素が液化される経路(凝縮経路12)と、下流側の吸収器1に連結され、気化された気体の二酸化炭素(冷媒)と圧力平衡ガスとの混合ガスが送り出される経路(混合ガス搬送経路6)と、前述の受液槽5に連結され、圧力平衡ガスが送り返される経路(圧力平衡ガス搬送経路8)とに連結されている。受液槽5において生成された圧力平衡ガスは、圧力平衡ガス搬送経路8を通して、凝縮経路12の出口領域に設けられた気化ノズルに到達し、次いで、混合ガス搬送経路6を通って、受液槽5へと送られることによって、気化器4と吸収器1との間を循環している。
【0034】
上流側の凝縮器3において液化された液体二酸化炭素は、凝縮経路12の出口領域に設けられた気化ノズルを通過することによって、気体の二酸化炭素に気化される。そして、気化された二酸化炭素は、上記のように循環している圧力平衡ガス中に混合される。この液体二酸化炭素の気化においては、気化熱が奪われるため、この領域近傍が冷却される。本発明の冷却装置においては、この冷却効果を利用することにより、近接する冷却対象物を冷却することができる。
【0035】
このようにして冷却対象物の冷却に用いられた気体の二酸化炭素は、混合ガス搬送経路6に送り出される。この混合ガス搬送経路6には、圧力平衡ガス搬送経路8から圧力平衡ガスが供給されているため、送り出された二酸化炭素は、この圧力平衡ガスとの混合ガスとなり、混合ガス搬送経路6を循環していく。図3は本発明の冷却装置の一実施形態を示す斜視図である。本発明における混合ガス搬送経路6は、図3に示されているように、直線的な経路であってもよいが、吸収器1における二酸化炭素の供給タイミングを制御するためにらせん状の形状としてもよい。
【0036】
次に、上記のような構成の本発明の冷却装置の動作について説明する。
本発明の冷却装置においては、まず、上流側の混合ガス搬送経路6を通って送られてきた二酸化炭素を、吸収器1の受液槽5に貯留されたイオン液体又はアミンに反応させ、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を調製する。この吸収器1で調製されたイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液は、冷媒・吸収媒体搬送経路7を通して吸収器1から発生器2に送られる。このイオン液体又はアミンと二酸化炭素との反応は発熱反応であるため、発生器2に到達するまでに十分放熱させて溶液温度を低下させておく必要がある。一方、この受液槽5において気相に残留した圧力平衡ガスは、次のイオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液の調製に利用されるため、圧力平衡ガス搬送経路8を通して気化ノズルの出口近傍へと送り返される。
【0037】
そして、発生器2においては、外部の加熱手段10又は上記の熱伝導部材11によって、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を加熱する。この加熱により、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液は、気体の二酸化炭素と、イオン液体又はアミンの溶液に分離される。分離された気体の二酸化炭素は、冷媒ガス搬送経路9を通して凝縮器3に送られ、一方、液体のイオン液体又はアミンは、図示していない経路を通して吸収器1の分離槽5に戻される。
【0038】
次いで、凝縮器3に送られてきた気体の二酸化炭素を非常に高い圧力下で冷却し、二酸化炭素の液化を行う。冷却効率を向上させる手段としては、凝縮経路12を極めて長くすることや、凝集経路12の材質を熱伝導性の高い材質とすることや、凝集経路12の周囲に複数枚の放熱用フィンを備えることが挙げられる。凝縮器3に設けられた凝集経路12は、下流側に向かって水平より2~3°傾斜した構造を有しているため、冷却されて液化された二酸化炭素は、凝縮経路12の出口領域に設けられた気化器4の気化ノズルの直前に貯留される。
【0039】
次に、貯留された液体の二酸化炭素を、気化ノズルを通過させることにより気化し、気化器4と吸収器1との間で循環させている圧力平衡ガス中に混合させる。本発明の冷却装置においては、この二酸化炭素の気化において発生する気化熱を利用して、近接する冷却対象物を冷却する。
【0040】
上記のようにして冷却に用いられた気体の二酸化炭素は、吸収器1に送られ、再びイオン液体又はアミンと接触させることにより、イオン液体・二酸化炭素溶液又はアミン・二酸化炭素溶液を調製し、継続的に冷却サイクルが繰り返される。
【符号の説明】
【0041】
1 吸収器
2 発生器
3 凝縮器
4 気化器
5 受液槽
6 混合ガス搬送経路
7 冷媒・吸収媒体搬送経路
8 圧力平衡ガス搬送経路
9 冷媒ガス搬送経路
10 加熱手段
11 高熱伝導性部材
12 凝縮経路
図1
図2
図3