(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】放電装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 9/04 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H02M9/04
(21)【出願番号】P 2020079724
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和貴
(72)【発明者】
【氏名】覚前 安夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】江 偉華
(72)【発明者】
【氏名】日下 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】伊東 淳一
(72)【発明者】
【氏名】須貝 太一
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-536890(JP,A)
【文献】特開2019-201508(JP,A)
【文献】再公表特許第98/008296(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1放電用電極(211)及び第2放電用電極(212)と、上記第1放電用電極及び上記第2放電用電極の少なくとも一方の内側面に配された誘電体層(22)と、を備えたパルス放電負荷(2)と、
上記パルス放電負荷にパルス電圧を周期的に出力するパルスパワー電源回路部(3)と、を有する放電装置(1)であって、
上記パルスパワー電源回路部(3)は、電気エネルギーを蓄積することができるエネルギー蓄積部(31)と、該エネルギー蓄積部に接続された複数の半導体素子(Di、SW1、SW2、SW3、SW4)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、コンデンサ(Cm)とインダクタ(Lm)とを有し、
上記複数の半導体素子のうちの少なくとも2つは、スイッチング素子(SW1、SW2)であり、
上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部への電気エネルギーの蓄積と、上記エネルギー蓄積部から上記パルス放電負荷への電気エネルギーの供給とを行うことができるよう構成されて
おり、
上記パルスパワー電源回路部は、互いに接続された複数段の回路ユニット(4)と、1段目の上記回路ユニットに接続された直流電源(5)とを有し、
上記回路ユニットは、上記エネルギー蓄積部と、複数の上記半導体素子の素子直列体(32)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、上記コンデンサと上記インダクタとを互いに直列接続してなり、
上記素子直列体は、ダイオード(Di)と放電スイッチ(SW1)と充電スイッチ(SW2)とがこの順にて直列に接続されてなり、上記ダイオードのアノードに上記放電スイッチが接続されており、
上記各回路ユニットにおいて、上記エネルギー蓄積部の第1端子が、上記ダイオードのカソードに接続され、上記エネルギー蓄積部の第2端子が、上記放電スイッチと上記充電スイッチとの間の接続点に接続され、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第1端子(311)は、k段目の上記回路ユニットにおける上記ダイオードのアノードに接続され、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第2端子(312)は、k段目の上記回路ユニットの上記充電スイッチにおける上記放電スイッチ側と反対側に接続され、
kは2以上の自然数であり、
1段目の上記回路ユニットにおける上記ダイオードのアノードに、上記直流電源の正極が接続され、
最終段の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第1端子が、上記パルス放電負荷の上記第1放電用電極に接続されている、放電装置。
【請求項2】
上記パルスパワー電源回路部は、上記エネルギー蓄積部を複数有し、上記スイッチング素子のオンオフの切り替えによって、上記複数のエネルギー蓄積部を互いに直列接続した直列状態と、上記複数のエネルギー蓄積部を互いに並列接続した並列状態とを切り替えることができるよう構成されており、上記直列状態にて、上記パルス放電負荷へのパルス電圧の出力を行うよう構成されている、請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
上記パルスパワー電源回路部は、互いに直列接続された第1付属スイッチ(SW3)と第2付属スイッチ(SW4)との直列体である付属スイッチ直列体(43)を有し、最終段の上記回路ユニットは、上記エネルギー蓄積部に上記付属スイッチ直列体を並列接続してあり、上記付属スイッチ直列体における上記第1付属スイッチと上記第2付属スイッチとの接続点(43M)が、上記パルス放電負荷の上記第1放電用電極に接続されている、請求項
1又は2に記載の放電装置。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか一項に記載の放電装置を制御する方法であって、
複数の上記放電スイッチをオフの状態としつつ上記複数の充電スイッチをオンの状態とすることにより、上記エネルギー蓄積部における上記コンデンサに電気エネルギーを蓄積し、
上記複数の上記放電スイッチと上記複数の充電スイッチとが共にオンの状態とすることにより、上記エネルギー蓄積部における上記インダクタに電気エネルギーを蓄積し、
複数の上記放電スイッチをオンの状態としつつ上記複数の充電スイッチをオフの状態とすることにより、上記エネルギー蓄積部の電気エネルギーを上記パルス放電負荷に出力する、放電装置の制御方法。
【請求項5】
第1放電用電極(211)及び第2放電用電極(212)と、上記第1放電用電極及び上記第2放電用電極の少なくとも一方の内側面に配された誘電体層(22)と、を備えたパルス放電負荷(2)と、
上記パルス放電負荷にパルス電圧を周期的に出力するパルスパワー電源回路部(3)と、を有する放電装置(1)であって、
上記パルスパワー電源回路部(3)は、電気エネルギーを蓄積することができるエネルギー蓄積部(31)と、該エネルギー蓄積部に接続された複数の半導体素子(Di、SW1、SW2、SW3、SW4)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、コンデンサ(Cm)とインダクタ(Lm)とを有し、
上記複数の半導体素子のうちの少なくとも2つは、スイッチング素子(SW1、SW2)であり、
上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部への電気エネルギーの蓄積と、上記エネルギー蓄積部から上記パルス放電負荷への電気エネルギーの供給とを行うことができるよう構成されて
おり、
上記パルスパワー電源回路部(3)は、上記半導体素子として、上記スイッチング素子を3個以上有し、
該エネルギー蓄積部は、コンデンサ(Cm)とインダクタ(Lm)とによって構成され、
上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部と上記パルス放電負荷との間において電気エネルギーを可逆的に移動させることができるよう構成されている、放電装置。
【請求項6】
上記パルスパワー電源回路部は、上記エネルギー蓄積部を複数有し、上記スイッチング素子のオンオフの切り替えによって、上記複数のエネルギー蓄積部を互いに直列接続した直列状態と、上記複数のエネルギー蓄積部を互いに並列接続した並列状態とを切り替えることができるよう構成されており、上記直列状態にて、上記パルス放電負荷へのパルス電圧の出力を行うよう構成されている、請求項
5に記載の放電装置。
【請求項7】
上記パルスパワー電源回路部は、互いに接続された複数段の回路ユニット(4)と、1段目の上記回路ユニットに接続された直流電源(5)とを有し、
上記回路ユニットは、上記エネルギー蓄積部と、複数の上記半導体素子の素子直列体(
32)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、上記コンデンサと上記インダクタとを互いに直列接続してなり、
上記素子直列体は、回生スイッチ(SW0)と放電スイッチ(SW1)と充電スイッチ(SW2)とがこの順にて直列に接続されてなり、上記回生スイッチと上記充電スイッチとの間に上記放電スイッチが接続されており、
上記各回路ユニットにおいて、上記エネルギー蓄積部の第1端子が、上記回生スイッチに接続され、上記エネルギー蓄積部の第2端子が、上記放電スイッチと上記充電スイッチとの間の接続点に接続され、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第1端子(311)は、k段目の上記回路ユニットにおける上記回生スイッチと上記放電スイッチとの間の接続点(32P)に接続され、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第2端子(312)は、k段目の上記回路ユニットの上記充電スイッチにおける上記放電スイッチ側と反対側に接続され、
kは2以上の自然数であり、
1段目の上記回路ユニットにおける上記回生スイッチと上記放電スイッチとの間の接続点に、上記直流電源の正極が接続され、
最終段の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第1端子が、上記パルス放電負荷の上記第1放電用電極に接続されている、請求項
5又は6に記載の放電装置。
【請求項8】
上記パルスパワー電源回路部は、互いに直列接続された第1付属スイッチ(SW3)と第2付属スイッチ(SW4)との直列体である付属スイッチ直列体(43)を有し、最終段の上記回路ユニットは、上記エネルギー蓄積部に上記付属スイッチ直列体を並列接続してあり、上記付属スイッチ直列体における上記第1付属スイッチと上記第2付属スイッチとの接続点(43M)が、上記パルス放電負荷の上記第1放電用電極に接続されている、請求項
7に記載の放電装置。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載の放電装置を制御する方法であって、
複数の上記放電スイッチをオフの状態としつつ上記複数の充電スイッチをオンの状態とすることにより、上記エネルギー蓄積部における上記コンデンサに電気エネルギーを蓄積し、
上記複数の上記放電スイッチと上記複数の充電スイッチとが共にオンの状態とすることにより、上記エネルギー蓄積部における上記インダクタに電気エネルギーを蓄積し、
複数の上記放電スイッチをオンの状態としつつ上記複数の充電スイッチをオフの状態とすることにより、上記エネルギー蓄積部の電気エネルギーを上記パルス放電負荷に出力する、放電装置の制御方法。
【請求項10】
k段目の上記回路ユニットにおける上記放電スイッチ及び上記充電スイッチは、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記インダクタを一次コイルとするトランス(12)を介して供給される電力によって動作する駆動制御回路(11)に接続され、該駆動制御回路からの駆動信号に基づいて動作するよう構成されている、請求項
1~3、7及び8のいずれか一項に記載の放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マルクス回路を用いたプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置が開示されている。このプラズマ処理装置のパルス発生回路は、複数段に接続されたインパルス回路を有する。パルス発生回路は、各段のインパルス回路におけるコンデンサに、それぞれ電荷を蓄積する。その後、ギャップスイッチが短絡することで、複数のコンデンサが直列接続され、これらに蓄積された電荷が放出され、各インパルス回路がパルス電圧を出力する。そして、これら複数のパルス電圧が重畳された高電圧のパルス電圧が、パルス発生回路から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記パルス発生回路においては、各段のインパルス回路に蓄積される電気エネルギーに限界がある。つまり、上記パルス発生回路は、ギャップスイッチを用いており、スイッチのオンオフタイミングを能動的に細かく制御することが困難である。それゆえ、各インパルス回路に蓄積される電気エネルギーを大きくし難い。その結果、高出力化を図るためには、パルス発生回路の大型化を招くこととなる。すなわち、装置の大型化を招くことなく、高出力化を図ることが困難である。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を招くことなく、高出力化を図ることができる放電装置及びその制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1放電用電極(211)及び第2放電用電極(212)と、上記第1放電用電極及び上記第2放電用電極の少なくとも一方の内側面に配された誘電体層(22)と、を備えたパルス放電負荷(2)と、
上記パルス放電負荷にパルス電圧を周期的に出力するパルスパワー電源回路部(3)と、を有する放電装置(1)であって、
上記パルスパワー電源回路部(3)は、電気エネルギーを蓄積することができるエネルギー蓄積部(31)と、該エネルギー蓄積部に接続された複数の半導体素子(Di、SW1、SW2、SW3、SW4)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、コンデンサ(Cm)とインダクタ(Lm)とを有し、
上記複数の半導体素子のうちの少なくとも2つは、スイッチング素子(SW1、SW2)であり、
上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部への電気エネルギーの蓄積と、上記エネルギー蓄積部から上記パルス放電負荷への電気エネルギーの供給とを行うことができるよう構成されており、
上記パルスパワー電源回路部は、互いに接続された複数段の回路ユニット(4)と、1段目の上記回路ユニットに接続された直流電源(5)とを有し、
上記回路ユニットは、上記エネルギー蓄積部と、複数の上記半導体素子の素子直列体(32)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、上記コンデンサと上記インダクタとを互いに直列接続してなり、
上記素子直列体は、ダイオード(Di)と放電スイッチ(SW1)と充電スイッチ(SW2)とがこの順にて直列に接続されてなり、上記ダイオードのアノードに上記放電スイッチが接続されており、
上記各回路ユニットにおいて、上記エネルギー蓄積部の第1端子が、上記ダイオードのカソードに接続され、上記エネルギー蓄積部の第2端子が、上記放電スイッチと上記充電スイッチとの間の接続点に接続され、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第1端子(311)は、k段目の上記回路ユニットにおける上記ダイオードのアノードに接続され、
(k-1)段目の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第2端子(312)は、k段目の上記回路ユニットの上記充電スイッチにおける上記放電スイッチ側と反対側に接続され、
kは2以上の自然数であり、
1段目の上記回路ユニットにおける上記ダイオードのアノードに、上記直流電源の正極が接続され、
最終段の上記回路ユニットにおける上記エネルギー蓄積部の第1端子が、上記パルス放電負荷の上記第1放電用電極に接続されている、放電装置にある。
本発明の他の態様は、第1放電用電極(211)及び第2放電用電極(212)と、上記第1放電用電極及び上記第2放電用電極の少なくとも一方の内側面に配された誘電体層(22)と、を備えたパルス放電負荷(2)と、
上記パルス放電負荷にパルス電圧を周期的に出力するパルスパワー電源回路部(3)と、を有する放電装置(1)であって、
上記パルスパワー電源回路部(3)は、電気エネルギーを蓄積することができるエネルギー蓄積部(31)と、該エネルギー蓄積部に接続された複数の半導体素子(Di、SW1、SW2、SW3、SW4)とを有し、
上記エネルギー蓄積部は、コンデンサ(Cm)とインダクタ(Lm)とを有し、
上記複数の半導体素子のうちの少なくとも2つは、スイッチング素子(SW1、SW2)であり、
上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部への電気エネルギーの蓄積と、上記エネルギー蓄積部から上記パルス放電負荷への電気エネルギーの供給とを行うことができるよう構成されており、
上記パルスパワー電源回路部(3)は、上記半導体素子として、上記スイッチング素子を3個以上有し、
該エネルギー蓄積部は、コンデンサ(Cm)とインダクタ(Lm)とによって構成され、
上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部と上記パルス放電負荷との間において電気エネルギーを可逆的に移動させることができるよう構成されている、放電装置にある。
【発明の効果】
【0007】
上記放電装置においては、半導体素子である上記スイッチング素子のオンオフ制御によって、上記エネルギー蓄積部への電気エネルギーの蓄積を行うことができる。これにより、エネルギー蓄積部におけるコンデンサのみならずインダクタにも、電気エネルギーを蓄積することができる。すなわち、所望のタイミングにて、複数のスイッチング素子をオンオフできるため、後述するように、コンデンサのみならず、インダクタにも電気エネルギーを蓄積することができる。それゆえ、エネルギー蓄積部からパルス放電負荷への出力電圧を大きくすることができる。その結果、装置の大型化を招くことなく、パルスパワー電源回路部からパルス放電負荷への高出力化を図ることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、装置の大型化を招くことなく、高出力化を図ることができる放電装置及びその制御方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1における、パルス放電負荷の説明図。
【
図3】実施形態1における、放電スイッチ及び充電スイッチの駆動信号のタイミングチャートを示す線図。
【
図4】実施形態1における、コンデンサに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図5】実施形態1における、インダクタに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図6】実施形態1における、パルス放電負荷へ出力する状態を示す回路説明図。
【
図7】実施形態1における、パルス放電負荷への出力波形を示す線図。
【
図9】実施形態2における、コンデンサに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図10】実施形態2における、インダクタに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図11】実施形態2における、パルス放電負荷へ出力する状態を示す回路説明図。
【
図13】実施形態3における、コンデンサに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図14】実施形態3における、パルス放電負荷から電荷を引き抜く状態を示す回路説明図。
【
図15】実施形態3における、インダクタに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図16】実施形態3における、パルス放電負荷へ出力する状態を示す回路説明図。
【
図18】実施形態4における、コンデンサに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図19】実施形態4における、インダクタに電気エネルギーを蓄積する状態を示す回路説明図。
【
図20】実施形態4における、パルス放電負荷へ出力する状態を示す回路説明図。
【
図21】実施形態4における、パルス放電負荷からエネルギー蓄積部へ電気エネルギーを回収する状態を示す回路説明図。
【
図23】実施形態5における、パルスパワー電源回路部の一部の回路図。
【
図24】実施形態5における、駆動制御回路のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
放電装置及びその制御方法に係る実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
本形態の放電装置1は、
図1に示すごとく、パルス放電負荷2と、パルスパワー電源回路部3とを有する。
【0011】
パルス放電負荷2は、
図2に示すごとく、第1放電用電極211及び第2放電用電極212と、誘電体層22とを備えている。誘電体層22は、第1放電用電極211及び第2放電用電極212の少なくとも一方の内側面に配されている。本形態においては、誘電体層22は、第1放電用電極211及び第2放電用電極212の双方の内側面に配されている。
【0012】
パルスパワー電源回路部3は、パルス放電負荷2にパルス電圧を周期的に出力する。
図1に示すごとく、パルスパワー電源回路部3は、電気エネルギーを蓄積することができるエネルギー蓄積部31と、エネルギー蓄積部31に接続された複数の半導体素子(Di、SW1、SW2)とを有する。
【0013】
エネルギー蓄積部31は、コンデンサCmとインダクタLmとを有する。
複数の半導体素子のうちの少なくとも2つは、スイッチング素子SW1、SW2である。
放電装置1は、スイッチング素子SW1、SW2のオンオフ制御によって、エネルギー蓄積部31への電気エネルギーの蓄積と、エネルギー蓄積部31からパルス放電負荷2への電気エネルギーの供給とを行うことができるよう構成されている。
【0014】
本形態において、パルスパワー電源回路部3は、半導体素子として、ダイオードDiと2つのスイッチング素子SW1、SW2とを直列接続した、素子直列体32を有する。一方のスイッチング素子SW1は、ダイオードDiのアノードに接続されている。他方のスイッチング素子SW2は、スイッチング素子SW1におけるダイオードDiと反対側に接続されている。ダイオードDiのアノードに接続されているスイッチング素子SW1を、適宜、放電スイッチSW1という。スイッチング素子SW1におけるダイオードDiと反対側に接続されているスイッチング素子SW2を、適宜、充電スイッチSW2という。
【0015】
エネルギー蓄積部31は、コンデンサCmとインダクタLmとを互いに直列接続してなる。エネルギー蓄積部31は、素子直列体32におけるダイオードDiと放電スイッチSW1との直列部分に対して、並列接続されている。すなわち、エネルギー蓄積部31の第1端子311が、ダイオードDiのカソードに接続されている。また、エネルギー蓄積部31の第2端子312が、放電スイッチSW1と充電スイッチSW2との間の接続点32Mに接続されている。
【0016】
素子直列体32には、直流電源5が接続されている。直流電源5の正極は、ダイオードDiのアノードに接続されている。直流電源5の負極は、充電スイッチSW2における接続点32Mと反対側の端子に接続されていると共に、パルス放電負荷2の第2放電用電極212に接続されている。また、直流電源5の負極は、接地されている。エネルギー蓄積部31の第1端子311は、パルス放電負荷2の第1放電用電極211に接続されている。
【0017】
また、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2は、図示を省略する駆動制御回路からの信号によって、適宜オンオフさせることができる。放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2としては、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタの略)、MOSFET(MOS型電界効果トランジスタの略)等を用いることができる。
図1においては、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2として、MOSFETを用いた例を示している。
【0018】
また、半導体素子としては、例えば、炭化珪素(SiC)にて形成したものや、シリコン(Si)にて形成したものを用いることができる。また、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2には、還流ダイオードがそれぞれ並列接続されている。還流ダイオードは、半導体素子に内蔵されたボディダイオードにて構成することもできる。
【0019】
放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2を適宜オンオフすることで、エネルギー蓄積部31への電気エネルギーの蓄積と、エネルギー蓄積部31からパルス放電負荷2への電気エネルギーの供給とが行われる。パルスパワー電源回路部3の動作につき、
図3~
図7を用いて説明する。なお、
図4~
図6においては、オンとオフとの区別がつきやすいように、各スイッチの記号を、
図1に対して変更した。また、
図4~
図6に示す破線矢印は、電流経路を表す。後述する
図9~
図11、
図13~
図16、
図18~
図21に示す破線矢印も同様である。
【0020】
本形態においては、
図3に示すような駆動信号s1、s2を、放電スイッチSW1と充電スイッチSW2とに送る。ここで、s1は放電スイッチSW1をオンする駆動信号を示し、s2は充電スイッチSW2をオンする駆動信号を示す。駆動信号は、駆動制御回路から、各スイッチのゲート端子等に入力される。また、駆動信号の制御は、例えば、ECU(電子制御ユニットの略)からの指令によって行われる。
【0021】
例えば、放電装置1の起動時においては、まず、
図4に示すごとく、放電スイッチSW1をオフ、充電スイッチSW2をオンの状態とする。これにより、
図4に示す電流経路が形成されて、直流電源5の電圧がエネルギー蓄積部31に印加される。そして、エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmに、電荷が蓄積され、印加電圧分の電気エネルギーが蓄積される。
【0022】
次いで、
図5に示すごとく、充電スイッチSW2をオンにしたまま、放電スイッチSW1をオンにする。これにより、コンデンサCmに蓄積されていた電荷が放電され、インダクタLmに電流が急激に流れる。このときの電流の時間変化によって、インダクタLmに電気エネルギーが蓄積される。ただし、この放電スイッチSW1と充電スイッチSW2との同時オンの状態は、
図3のΔtに示すように、極めて短時間とする。同時オンの状態は、例えば、100ns程度とすることができる。この同時オンの時間Δtとしては、コンデンサCmの容量、インダクタLmのインダクタンス等によって変わる適切な値を設定することとなる。
【0023】
次いで、
図6に示すごとく、放電スイッチSW1をオンにしたまま、充電スイッチSW2をオフにする。この瞬間に、エネルギー蓄積部31に蓄積されていた電気エネルギーが、パルス放電負荷2へ放出される。すなわち、エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCm及びインダクタLmに蓄積されていた電気エネルギーが、パルス放電負荷2へ出力される。また、この電気エネルギーに応じた電圧が、直流電源5の電圧に重畳して、パルス放電負荷2に印加される。
【0024】
ここで、インダクタLmに蓄積されていた電気エネルギーは、交流電圧となって出力される。一方、直流電源5の電気エネルギーとコンデンサCmに蓄積されていた電気エネルギーは、直流電圧として、出力される。それゆえ、直流電源5による出力電圧と、エネルギー蓄積部31による出力電圧とが重畳して、パルス放電負荷2に印加される電圧は、例えば、
図7に示すように、振幅の中心がオフセットされた交流電圧となる。このオフセット量は、直流電源5の出力電圧分に相当する。そして、その交流電圧のピーク値は、極めて高い値とすることができる。これにより、パルス放電負荷2には、高出力のパルス電圧が印加されることになる。
【0025】
パルス放電負荷2は、誘電体バリア放電を生じさせる構造を有する。
図2に示すごとく、パルス放電負荷2は、互いに対向配置された第1放電用電極211と第2放電用電極212とを有する。そして、第1放電用電極211の内側面と第2放電用電極212の内側面とに、それぞれ誘電体層22を設けている。一対の誘電体層22の間に、放電ギャップ23が形成されている。この放電ギャップ23に放電を生じさせることで、例えば、プラズマを発生させることができる。また、例えば、放電ギャップ23に酸素を含む気体を供給しつつ、放電ギャップ23にプラズマを生じさせることによって、オゾンを発生させることができる。
【0026】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
上記放電装置1においては、半導体素子である放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2のオンオフ制御によって、エネルギー蓄積部31への電気エネルギーの蓄積を行うことができる。これにより、エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmのみならずインダクタLmにも、電気エネルギーを蓄積することができる。
【0027】
すなわち、所望のタイミングにて、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2をオンオフできるため、上述のように、コンデンサCmのみならず、インダクタLmにも電気エネルギーを蓄積することができる。具体的には、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2が共にオンの状態(
図5参照)を、放電の前に極めて短時間にて実現する。これにより、インダクタLmにも電気エネルギーを充分に蓄積することができる。
【0028】
それゆえ、エネルギー蓄積部31からパルス放電負荷2への出力電圧を大きくすることができる。その結果、装置の大型化を招くことなく、パルスパワー電源回路部3からパルス放電負荷2への高出力化を図ることができる。すなわち、コンデンサCmを大型化する等の手段を用いなくても、パルスパワー電源回路部3の出力電圧を高めることができる。
【0029】
なお、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2が共にオンの状態(
図5参照)の時間Δtは、上述のように適切な値が存在する。そして、当該適切な値に対して上記時間Δtが長すぎると、パルスパワー電源回路部3に大電流が流れて、回路の損傷を招くおそれがある。一方、放電スイッチSW1をオンに切り替える前に充電スイッチSW2をオフに切り替えてしまうと、同時オンの状態が形成されなくなり、インダクタLmへの電気エネルギーの蓄積が実質的に行われなくなる。
【0030】
したがって、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2のオンオフ切り替えタイミングは、極めて重要である。しかも、上述のように、適切な同時オンの時間Δtは、極めて短時間であるため、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2のオンオフ切り替えの精度が重要となる。その点において、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2が半導体素子からなるため、所望のタイミングでの能動的かつ高精度のオンオフ切り替えが可能となる。それゆえ、エネルギー蓄積部31に蓄積できる電気エネルギーを大きくすることができる。その結果、装置の大型化を招くことなく、パルスパワー電源回路部3からパルス放電負荷2への高出力化を図ることができる。
【0031】
比較のために、上述の特許文献1に開示されたパルス発生回路について言及する。当該パルス発生装置は、ギャップスイッチを用いるため、スイッチのオンオフタイミングを能動的に細かく制御することが困難である。すなわち、ギャップスイッチは、ギャップ間の電圧が火花発生電圧を超えたときに短絡して、コンデンサが直列に接続されて、放電負荷にパルス電圧が印加される。それゆえ、ギャップスイッチにおけるギャップ間の電圧の上昇は、コンデンサへの電荷の蓄積によって生じる。そのため、このギャップ間の電圧上昇のタイミングを制御することは困難である。つまり、ギャップスイッチのオンオフタイミングを制御することは、極めて困難である。
【0032】
これに対して、本形態の放電装置1においては、上述のように、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2を所望のタイミングにて高精度に行うことができる。そのため、エネルギー蓄積部31に蓄積できる電気エネルギーを大きくすることができ、パルスパワー電源回路部3からパルス放電負荷2への出力の高出力化を図ることができる。
【0033】
以上のごとく、本形態によれば、装置の大型化を招くことなく、高出力化を図ることができる放電装置及びその制御方法を提供することができる。
【0034】
(実施形態2)
本形態は、
図8~
図12に示すごとく、パルスパワー電源回路部3がエネルギー蓄積部31を複数有する形態である。
スイッチング素子のオンオフの切り替えによって、直列状態と並列状態とを切り替えることができるよう構成されている。直列状態は、
図11に示すごとく、複数のエネルギー蓄積部31を互いに直列接続した状態である。並列状態は、
図9に示すごとく、複数のエネルギー蓄積部31を互いに並列接続した状態である。
【0035】
直列状態にて、パルス放電負荷2へのパルス電圧の出力を行う。並列状態にて、エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmへの電気エネルギーの蓄積を行う。すなわち、パルスパワー電源回路部3はマルクス回路を構成している。
【0036】
図8に示すごとく、パルスパワー電源回路部3は、互いに接続された複数段の回路ユニット4と、1段目の回路ユニット4Aに接続された直流電源5とを有する。各回路ユニット4は、エネルギー蓄積部31と素子直列体32とを有する。素子直列体32は、複数の半導体素子が直列接続されてなる。
【0037】
エネルギー蓄積部31は、コンデンサCmとインダクタLmとを互いに直列接続してなる。素子直列体32は、ダイオードDiと放電スイッチSW1と充電スイッチSW2とがこの順にて直列に接続されてなる。ダイオードDiのアノードに放電スイッチSW1が接続されている。
【0038】
各回路ユニット4において、エネルギー蓄積部31の第1端子311が、ダイオードDiのカソードに接続されている。また、エネルギー蓄積部31の第2端子312が、放電スイッチSW1と充電スイッチSW2との間の接続点32Mに接続されている。
すなわち、実施形態1に示したパルスパワー電源回路部3のうち直流電源5を除いた部分が、本形態における1段分の回路ユニット4に相当する。
【0039】
(k-1)段目の回路ユニット4におけるエネルギー蓄積部31の第1端子311は、k段目の回路ユニット4におけるダイオードDiのアノードに接続されている。(k-1)段目の回路ユニット4におけるエネルギー蓄積部31の第2端子312は、k段目の回路ユニット4における充電スイッチSW2における接続点32Mと反対側に接続されている。kは2以上の自然数である。
【0040】
1段目の回路ユニット4AにおけるダイオードDiのアノードに、直流電源5の正極が接続されている。最終段の回路ユニット4Zにおけるエネルギー蓄積部31の第1端子311が、パルス放電負荷2の第1放電用電極211に接続されている。
図8においては、パルスパワー電源回路部3が3段以上の回路ユニット4を接続してなる構成を示したが、2段の回路ユニット4にてパルスパワー電源回路部3を構成することもできる。
【0041】
次に、本形態の放電装置1の制御方法につき説明する。
上述の構成において、
図9に示すごとく、複数の放電スイッチSW1をオフの状態としつつ複数の充電スイッチSW2をオンの状態とする。すなわち、並列状態を形成する。これにより、エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmに電気エネルギーを蓄積する。
【0042】
次いで、
図10に示すごとく、複数の放電スイッチSW1と複数の充電スイッチSW2とが共にオンの状態とする。これにより、エネルギー蓄積部31におけるインダクタLmに電気エネルギーを蓄積する。
【0043】
次いで、
図11に示すごとく、複数の放電スイッチSW1をオンの状態としつつ複数の充電スイッチSW2をオフの状態とする。すなわち、直列状態を形成する。これにより、エネルギー蓄積部31の電気エネルギーをパルス放電負荷2に出力する。
【0044】
本形態において、パルスパワー電源回路部3が備える複数段の回路ユニット4のすべての放電スイッチSW1が、互いに同期してオンオフされる。また、パルスパワー電源回路部3が備える複数段の回路ユニット4のすべての充電スイッチSW2も、互いに同期してオンオフされる。
【0045】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0046】
本形態においては、パルスパワー電源回路部3が、エネルギー蓄積部31を複数有し、直列状態と並列状態とを切り替えることができる。そして直列状態にて、パルス放電負荷2へのパルス電圧の出力を行う。それゆえ、より高い出力電圧を、パルス放電負荷2へ供給することができる。
【0047】
すなわち、マルクス回路を構成するパルスパワー電源回路部3は、パルス放電負荷2に対して、複数段のエネルギー蓄積部31に蓄積された電気エネルギーを、重畳して供給することができる。また、個々のエネルギー蓄積部31に蓄積できる電気エネルギーも、実施形態1と同様に大きくできる。それゆえ、パルス放電負荷2に、より高い出力電圧を供給することができる。
【0048】
また、パルスパワー電源回路部3は、互いに接続された複数段の回路ユニット4を有し、
図8に示すようなマルクス回路を形成している。これにより、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2を適宜オンオフ制御することで、容易かつ効率的に、並列状態(
図9参照)、同時オンの状態(
図10参照)、直列状態(
図11参照)を切り替えることができる。その結果、パルス放電負荷2に、より高い出力電圧を供給することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施形態3)
本形態は、
図12~
図16に示すごとく、最終段の回路ユニット4に、付属スイッチ直列体43を接続した形態である。
本形態の放電装置1におけるパルスパワー電源回路部3は、
図12に示すごとく、付属スイッチ直列体43を有する。付属スイッチ直列体43は、互いに直列接続された第1付属スイッチSW3と第2付属スイッチSW4との直列体である。
【0050】
最終段の回路ユニット4は、エネルギー蓄積部31に付属スイッチ直列体43を並列接続してある。付属スイッチ直列体43における第1付属スイッチSW3と第2付属スイッチSW4との接続点43Mが、パルス放電負荷2の第1放電用電極211に接続されている。
【0051】
本形態において、第1付属スイッチSW3及び第2付属スイッチSW4はいずれも半導体素子である。すなわち、第1付属スイッチSW3及び第2付属スイッチSW4は、放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2と同様に、例えば、MOSFET、IGBT等にて構成することができる。
【0052】
本形態の放電装置1は、例えば、放電スイッチSW1、充電スイッチSW2、第1付属スイッチSW3、第2付属スイッチSW4を次のように制御することができる。
まず、
図13に示すごとく、パルスパワー電源回路部3を並列状態とすることにより、各回路ユニット4のエネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmに、電気エネルギーを蓄積する。
【0053】
次に、
図14に示すごとく、充電スイッチSW2をオンにしたまま第2付属スイッチSW4をオンに切り替える。そうすると、第2付属スイッチSW4及び各段の回路ユニット4における充電スイッチSW2を含む短絡回路が形成される。これにより、パルス放電負荷2の誘電体層22に残っていた電荷が引き抜かれ、短絡回路における抵抗成分において、熱となって放出される。そして、パルス放電負荷2の電極間電圧は、略ゼロとなる。
なお、
図14の状態は、
図13に示す並列状態とする前に行うこともできる。つまり、エネルギー蓄積部31のコンデンサCmへの充電前に、パルス放電負荷2における電荷の引き抜きを行うこともできる。
【0054】
次いで、
図15に示すごとく、充電スイッチSW2をオンにしたまま、放電スイッチSW1をオンに切り替える。すなわち、複数の放電スイッチSW1と複数の充電スイッチSW2とが共にオンの状態とする。これにより、エネルギー蓄積部31におけるインダクタLmに電気エネルギーを蓄積する。
【0055】
次いで、
図16に示すごとく、複数の放電スイッチSW1をオンの状態としつつ複数の充電スイッチSW2をオフの状態とする。すなわち、直列状態を形成する。このとき、第1付属スイッチSW3はオンの状態とする。これにより、エネルギー蓄積部31の電気エネルギーをパルス放電負荷2に出力する。
その他は、実施形態1と同様である。
【0056】
本形態においては、例えば前回の放電後にパルス放電負荷2の容量成分に残っていた電荷を引き抜くことができ、パルス放電負荷2の電極間電圧を略ゼロに低下させることができる。すなわち、次の放電の前に、パルス放電負荷2の電極間電圧を充分に低下させ、パルスパワー電源回路部3の出力電圧との電圧差を大きくすることができる。その結果、パルス放電負荷2における放電をより生じさせやすくなる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0057】
(実施形態4)
本形態は、
図17~
図21に示すごとく、スイッチング素子SW0、SW1、SW2のオンオフ制御によって、エネルギー蓄積部31とパルス放電負荷2との間において電気エネルギーを可逆的に移動させることができるよう構成されている、放電装置1の形態である。
【0058】
図17に示すごとく、パルスパワー電源回路部3は、半導体素子として、スイッチング素子SW0、SW1、SW2を3個以上有する。エネルギー蓄積部31は、コンデンサCmとインダクタLmとによって構成されている。そして、スイッチング素子のオンオフ制御によって、エネルギー蓄積部31とパルス放電負荷2との間において電気エネルギーを可逆的に移動させることができるよう構成されている。
【0059】
本形態の放電装置1は、実施形態2の放電装置(
図8参照)に対して、素子直列体320の構成を一部変更したものでもある。すなわち、本形態の放電装置1は、実施形態2の放電装置における素子直列体32の一部を構成するダイオードDiを、スイッチング素子SW0に置き換えたものに相当する。
【0060】
パルスパワー電源回路部3は、エネルギー蓄積部31を複数有する。そして、
図18~
図21に示すごとく、スイッチング素子SW0、SW1、SW2のオンオフの切り替えによって、直列状態と並列状態とを切り替えることができるよう構成されている。
図20に示すごとく、直列状態にて、パルス放電負荷2へのパルス電圧の出力を行うよう構成されている。
【0061】
パルスパワー電源回路部3は、互いに接続された複数段の回路ユニット4と、1段目の回路ユニット4に接続された直流電源5とを有する。回路ユニット4は、エネルギー蓄積部31と、素子直列体320とを有する。エネルギー蓄積部31は、コンデンサCmとインダクタLmとを互いに直列接続してなる。
【0062】
素子直列体320は、回生スイッチSW0と放電スイッチSW1と充電スイッチSW2とがこの順にて直列に接続されてなる。回生スイッチSW0と充電スイッチSW2との間に放電スイッチSW1が接続されている。
各回路ユニット4において、エネルギー蓄積部31の第1端子311が、回生スイッチSW0に接続されている。エネルギー蓄積部31の第2端子312が、放電スイッチSW1と充電スイッチSW2との間の接続点32Mに接続されている。
【0063】
(k-1)段目の回路ユニット4におけるエネルギー蓄積部31の第1端子311は、k段目の回路ユニット4における回生スイッチSW0と放電スイッチSW1との間の接続点32Pに接続されている。(k-1)段目の回路ユニット4におけるエネルギー蓄積部31の第2端子312は、k段目の回路ユニット4の充電スイッチSW2における放電スイッチSW1側と反対側に接続されている。kは2以上の自然数である。
【0064】
1段目の回路ユニット4における回生スイッチSW0と放電スイッチSW1との間の接続点32Pに、直流電源5の正極が接続されている。最終段の回路ユニット4Zにおけるエネルギー蓄積部31の第1端子311が、パルス放電負荷2の第1放電用電極211に接続されている。
【0065】
次に、本形態の放電装置1の制御方法につき説明する。
まず、エネルギー蓄積部31への充電と、パルス放電負荷2への出力について、簡潔に説明する。
上述の構成の放電装置1において、
図18に示すごとく、複数の放電スイッチSW1をオフの状態としつつ複数の充電スイッチSW2をオンの状態とする。また、複数の回生スイッチSW0をオンの状態とする。これにより、エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmに電気エネルギーを蓄積する。
【0066】
その後、
図19に示すごとく、複数の放電スイッチSW1と複数の充電スイッチSW2とが共にオンの状態とする。これにより、エネルギー蓄積部31におけるインダクタLmに電気エネルギーを蓄積する。
次いで、
図20に示すごとく、複数の放電スイッチSW1をオンの状態としつつ複数の充電スイッチSW2をオフの状態とする。また、複数の回生スイッチSW0をオフの状態とする。これにより、エネルギー蓄積部31の電気エネルギーをパルス放電負荷2に出力する。
【0067】
上述した、
図18~
図20に示す、エネルギー蓄積部31への充電と、パルス放電負荷2への出力については、実質的に、実施形態2における制御方法と同様である。また、本形態において、
図18に示すコンデンサCmへの充電は、パルス放電負荷2の誘電体層22に一定程度以上の電荷が蓄積されていない状態から行う場合においては、直流電源5から各コンデンサCmへの充電が行われる。
【0068】
しかし、例えば、前回の放電の後にパルス放電負荷2に一定程度の電荷が残っている場合には、この電荷をエネルギー蓄積部31のコンデンサCmに回収することが、本形態においては可能となる。
【0069】
すなわち、
図21に示すように、各回路ユニット4において、回生スイッチSW0をオン、放電スイッチSW1をオフ、充電スイッチSW2をオンとする。ただし、1段目の回路ユニット4における回生スイッチSW0については、オフとしておく。これにより、パルス放電負荷2と、複数のエネルギー蓄積部31とが、並列接続された状態となる。そして、パルス放電負荷2から各エネルギー蓄積部31のコンデンサCmに電流が流れる。すなわち、パルス放電負荷2の誘電体層22の容量成分から電荷が引き抜かれ、マルクス回路の各エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmに、電荷が回収される。つまり、電気エネルギーが各エネルギー蓄積部31におけるコンデンサCmに回収される。
【0070】
その後、1段目の回路ユニット4Aにおける回生スイッチSW0をオンとして、
図18の状態とする。これにより、各コンデンサCmには、パルス放電負荷2から回収した電荷に加えて、直流電源5からの電荷も充電される。なお、回生時において、1段目も含めてすべての回路ユニット4における回生スイッチSW0をオンの状態として、上述の回生と充電とを同時に行うこともできる。
その後、
図19に示すごとく、回生スイッチSW0と放電スイッチSW1と充電スイッチSW2とを同時オンの状態とすることで、上述と同様に、各エネルギー蓄積部31において、インダクタLmへも電気エネルギーが蓄積される。このとき、回生スイッチSW0は、オンの状態とする。
【0071】
次いで、
図20に示すごとく、パルスパワー電源回路部3を直列状態とすることにより、エネルギー蓄積部31の電気エネルギーをパルス放電負荷2に出力する。このとき、回生スイッチSW0は、オフの状態とする。
その他は、実施形態2と同様である。
【0072】
本形態においては、パルスパワー電源回路部3は、エネルギー蓄積部31とパルス放電負荷2との間において電気エネルギーを可逆的に移動させることができるよう構成されている。これにより、パルス放電負荷2が放電を実行した後において、誘電体層22に電荷が残った場合にも、この電荷による電気エネルギーをパルスパワー電源回路部3のエネルギー蓄積部31に回収して、蓄積することができる。
【0073】
これにより、パルス放電負荷2における当該放電の次の放電時に、エネルギー蓄積部31に蓄積された電気エネルギーを、パルス放電負荷2に供給することができる。それゆえ、パルス放電負荷2に繰り返し供給する電気エネルギーを節約することができる。その結果、エネルギー効率に優れた放電装置1を得ることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施形態5)
本形態は、
図22に示すごとく、実施形態4に示したパルスパワー電源回路部3における最終段の回路ユニット4に、付属スイッチ直列体43を接続した形態である。
付属スイッチ直列体43に関する事項については、実施形態3と同様である。
その他は、実施形態4と同様である。
【0075】
本形態においては、実施形態4に示した作用効果と、実施形態3に示した作用効果との双方を得ることができる。
【0076】
(実施形態6)
本形態は、
図23、
図24に示すごとく、2段目以降の回路ユニット4における放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2が、下記の駆動制御回路11からの駆動信号によって駆動するよう構成された形態である。
【0077】
すなわち、
図23に示すごとく、k段目の回路ユニット4における放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2は、(k-1)段目の回路ユニット4におけるインダクタLmを一次コイルとするトランス12を介して供給される電力によって動作する駆動制御回路11に接続されている。そして、当該駆動制御回路11からの駆動信号に基づいて、k段目の回路ユニット4が動作するよう構成されている。
【0078】
駆動制御回路11は、
図24に示すごとく、整流回路111と定電圧回路112と、ゲートドライブユニット113とを有する。トランス12の二次コイルから供給された電流は、整流回路111において整流され、定電圧回路112によって一定の電圧にてゲートドライブユニット113に供給される。そして、ゲートドライブユニット113は、ECUからの指令に基づいて、所定のタイミングにて放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2のゲート端子へ、駆動信号を出力する。
【0079】
なお、1段目の回路ユニット4における放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2は、パルスパワー電源回路部3から独立した他の駆動制御回路を用いて駆動制御することができる(図示略)。
その他は、実施形態2と同様である。
【0080】
本形態においては、2段目以降の回路ユニット4における放電スイッチSW1及び充電スイッチSW2を駆動するための電力を、前段の回路ユニット4におけるインダクタLmに流れるパルス電流を利用して得ることができる。それゆえ、パルスパワー電源回路部3の電力効率を向上させることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0081】
なお、本形態を、例えば、実施形態3、実施形態4、実施形態5等に適用した場合、駆動制御回路11からの駆動信号は、例えば、第1付属スイッチSW3及び第2付属スイッチSW4、或いは回生スイッチSW0に出力するよう構成することもできる。
【0082】
上述した実施形態4(
図17参照)の放電装置は、回路ユニット4を1段のみとした構成に変形することもできる。この場合の形態は、実施形態1(
図1参照)に示したパルスパワー電源回路部3において、ダイオードDiを回生スイッチSW0に置き換えた構成とすることができる。
【0083】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 放電装置
2 パルス放電負荷
211 第1放電用電極
212 第2放電用電極
22 誘電体層
3 パルスパワー電源回路部
31 エネルギー蓄積部
Cm コンデンサ
Lm インダクタ