(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】紫外線防御効果を有する水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20240228BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240228BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240228BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/44
A61K8/46
A61K8/49
A61K8/55
A61K8/81
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021531420
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 IB2018001594
(87)【国際公開番号】W WO2020128556
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】岸田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】Youth-Awakening Lipstick, MINTEL GNPD [ONLINE], 2010.05,[検索日 2022.08.24],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra> (Database accession no.1332480)
【文献】Suncare Milk SPF 50,MINTEL GNPD,[ONLINE], 2018.06,[検索日 2023.06.22],インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.5767235)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/06
A61K 8/37
A61K 8/41
A61K 8/44
A61K 8/46
A61K 8/49
A61K 8/55
A61K 8/81
A61Q 19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧的に許容される媒体中に、(a)水相、(b)アニオン界面活性剤、(c)油溶性紫外線吸収剤
(ただし、(c)成分はメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを含まない)、(d)水溶性紫外線吸収剤、並びに、(e)(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸又はその塩、ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含むクロスポリマーを含有する、水中油型乳化化粧料であって、
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーを更に含有する、水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(f)非イオン界面活性剤及び(g)炭素数12~24の高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の成分を更に含有する、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
前記(b)アニオン界面活性剤、前記(f)非イオン界面活性剤及び前記(g)炭素数12~24の高級アルコールの総含有量が前記水中油型乳化化粧料の全質量基準で1~5質量%である、請求項2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
(h)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを更に含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
日焼け止め化粧料組成物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料のケラチン物質への塗布を含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための化粧方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料の皮膚への塗布を含む、皮膚をケア及び/又はメークアップするための化粧方法。
【請求項8】
ケラチン物質への紫外線の影響を予防及び/又は低減するために使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項9】
皮膚への紫外線の影響を予防及び/又は低減するために使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項10】
皮膚を日焼けによる損傷、日焼け及び/又は光老化から保護するために使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線防御効果を有する水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線吸収剤を含有する日焼け止め化粧料としては、新鮮で軽い感覚を与えものが消費者に好まれることから、水中油型エマルジョンタイプの化粧料が広く適用されている。
【0003】
一般に、日焼け止め化粧料に高い紫外線防御効果を付与するには多量の紫外線吸収剤が必要とされる。しかし、紫外線吸収剤はべたつき感などの不快感をもたらすことがあるとともに、高極性であるがゆえにエマルジョンを不安定にさせることがある。また、結晶性の高い紫外線吸収剤を溶解させるのに、高極性の油剤を配合させることも必要となる。このため、高い紫外線防御効果を保持しつつ、紫外線吸収剤の含有量を減少させた日焼け止め化粧料を創出する試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日焼け止め化粧料において、高い紫外線防御効果を保持しながら、紫外線吸収剤の含有量を減少させるためのアプローチの一つとして、油溶性紫外線吸収剤と水溶性紫外線吸収剤を組み合わせる方法が知られている。しかし、水溶性紫外線吸収剤は製剤の乳化状態に影響を及ぼす電解質であるがゆえに、安定性の低下をもたらす。国際公開第2007/122822号及び特開2018-8907号明細書には、油溶性紫外線吸収剤と水溶性紫外線吸収剤を含有し、特定の界面活性剤と高級アルコールを配合することで、安定な乳化状態を実現するとともに、紫外線吸収剤に起因するべたつき感が抑えられた水中油型乳化化粧料が開示されている。しかし、重くクリーミーな感覚をもたらす界面活性剤を相当量配合する必要があるため、塗布時の新鮮な水感に乏しいという問題点がある。
【0005】
そこで、高い紫外線防御効果を有しながら、安定性が向上しており、ケラチン物質、特に皮膚への塗布時に新鮮な水感を与えることのできる、水中油型乳化化粧料を提供する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、この技術的課題にこたえることにある。高い紫外線防御効果を保持しながら、塗布時に新鮮な水感を与えることのできる、安定性に優れた水中油型乳化化粧料を提供することにある。本発明者らは、特定のクロスポリマーを水中油型乳化化粧料に配合することで、界面活性剤の総量が少量であっても、油相(油溶性紫外線吸収剤、油剤等)を安定して分散させるとともに、この水中油型乳化化粧料が高い紫外線防御効果を保持しながら、塗布時に新鮮な水感を与えることができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生理学的に許容される媒体中に、(a)水相、(b)アニオン界面活性剤、(c)油溶性紫外線吸収剤、(d)水溶性紫外線吸収剤、並びに、(e)(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸又はその塩、ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含むクロスポリマーを含有する水中油型乳化化粧料を提供する。「水中油型乳化化粧料」は、以下「水中油型乳剤」又は「水中油型乳化組成物」又は「水中油型乳剤の形態の化粧品組成物」とも呼ばれることがある。なお、「(a)水相」を、単に「(a)成分」と呼ぶ場合があり、他の構成についても同様に略称する。また、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、他の類似の骨格においても同様である。
「質量%」は、以下「重量%」とも呼ばれ得る。
「化粧的又は生理学的に許容される」という用語は、ケラチン物質、特に皮膚と適合することを意味し、色、匂い、心地よい感触を有し、許容できない不快感(刺痛、つっぱり感)を引き起こさない。
【0008】
本発明はまた、水中油型乳化化粧料のケラチン物質、特に皮膚への塗布を含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための化粧方法に関する。本発明はまた、ケラチン物質、特に皮膚への紫外線の影響を予防及び/又は低減するために、特に皮膚を日焼けによる損傷、日焼け及び/又は光老化から保護するために使用するための、水中油型乳化化粧料に関する。
【0009】
本発明の水中油型乳化化粧料は、(f)非イオン界面活性剤及び(g)炭素数12~24の高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の成分を更に含有するとよい。(f)成分及び/又は(g)成分を含有することで、水中油型乳化化粧料における乳化状態の安定性がより向上する。
【0010】
本発明の水中油型乳化化粧料において、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び炭素数12~24の高級アルコールの総含有量は、全質量基準で1~5質量%であるとよく、2~4.8質量%であることが好ましい。アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び炭素数12~24の高級アルコールを上記の範囲内で含有する水中油型乳化化粧料は、塗布時により新鮮な水感を与えることができる。
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料は、(h)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを更に含有するとよい。(h)成分を含有することで、紫外線防御効果がより向上する。
【0012】
本発明の水中油型乳化化粧料は、高い紫外線防御効果を有することから、日焼け止め化粧料組成物であるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い紫外線防御効果と優れた安定性を有し、ケラチン物質、特に皮膚への塗布時に新鮮な水感を与えることのできる、水中油型乳化化粧料を提供することができる。また、本発明の水中油型乳化化粧料は、塗布後のべたつき感がない点においても有利である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
水相
本発明の水中油型乳化化粧料は、(a)水相を含有する。水相は、水のみを含むものであってもよく、水に可溶な溶媒を更に含むものであってもよい。
【0016】
水としては、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水を用いることができる。
【0017】
水に可溶な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、フェノキシエタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、及びそれらの混合物が挙げられる。水に可溶な溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
(a)水相の含有量は、水中油型乳剤の全質量基準で40~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。なお、本明細書において「全質量基準」とは、水中油型乳化化粧料の全質量を基準とするという意味である。
【0019】
アニオン界面活性剤
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、(b)アニオン界面活性剤を含有する。
【0020】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩(例えば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等、ステアリン酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸塩等)、N-アシルサルコシン塩(例えば、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミリストイルサルコシン酸ナトリウム等)、N-アシルグルタミン酸塩(例えば、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム等)等のカルボン酸型アニオン界面活性剤;ジアルキルスルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等)、アルカンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N-メチル-N-アシルタウリン塩(例えば、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム等)等のスルホン酸型アニオン界面活性剤;アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等)等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩(例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸カリウム等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩(例えば、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等)等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、乳化状態の安定性が向上することから、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩、セチルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩が好ましい。アニオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
(b)成分の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で0.6~2質量%であることが好ましく、0.7~1.8質量%であることがより好ましい。
【0022】
油溶性紫外線吸収剤
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、(c)油溶性紫外線吸収剤を含有する。
【0023】
油溶性紫外線吸収剤としては、例えば、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エトキシエチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、トリメトキシケイ皮酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル等のケイヒ酸系紫外線吸収剤;パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸ホモメンチル(ホモサレート)等のサリチル酸系紫外線吸収剤;ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル;ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン;エチルヘキシルトリアゾン;ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル;t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、及びそれらの混合物が挙げられる。油溶性紫外線吸収剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用すると、より高い紫外線防御作用を発揮するので好ましい。具体的には、ケイヒ酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル及びビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンからなる群より選択される2種以上の紫外線吸収剤を組み合わせて使用することが好ましい。
【0024】
(c)成分の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で10~20質量%であることが好ましく、11~16質量%であることがより好ましい。
【0025】
水溶性紫外線吸収剤
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、(d)水溶性紫外線吸収剤を含有する。
【0026】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、生体安全性に優れ、良好な紫外線防御効果が得られることから、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸が好ましく、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸がより好ましい。
【0027】
(d)成分の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~3質量%であることがより好ましい。
【0028】
クロスポリマー
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、(e)(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸又はその塩、ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含むクロスポリマーを含有する。
【0029】
構成単位である(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸としては、例えば、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。また、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸の塩としては、アンモニウム塩が好ましい。
【0030】
構成単位であるジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0031】
構成単位である(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル鎖長としては、例えば、炭素数6~22のアルキル基を例示することができる。本実施形態に係る水中油型乳化化粧料においては、炭素数10~16のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。中でも、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、ラウリル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
【0033】
アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートのアルキル鎖長としては、例えば、炭素数6~22のアルキル基を例示することができる。本実施形態に係る水中油型乳化化粧料においては、炭素数10~16のアルキル基を有するアルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。中でも、ラウリルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ミリスチルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、パルミチルポリオキシエチレン(メタ)アクリレート等がより好ましく、ラウリルテトラオキシエチレン(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、酸化エチレンの平均付加モル数は、1~30であることが好ましい。
【0034】
(e)成分において、(メタ)アクリル酸エステルは2種以上を含んでいてもよく、アルキル(メタ)アクリレート及びアルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましい。
【0035】
(e)成分として好ましくは、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸又はその塩、ジメチル(メタ)アクリルアミド、C6-22アルキル(メタ)アクリレート及びC6-22アルキルポリオキシエチレン(メタ)アクリレートを構成単位として含むクロスポリマーである。具体的な(e)成分としては、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸アンモニウム/ジメチル(メタ)アクリルアミド/ラウリル(メタ)アクリレート/ラウリルテトラオキシエチレン(メタ)アクリレート クロスポリマー(POLYACRYLATE CROSSPOLYMER-6)が挙げられる。なお、POLYACRYLATE CROSSPOLYMER-6は、SEPIMAX ZEN(SEPPIC社製)として市販されているものを利用できる。
【0036】
(e)成分の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で0.01~1.5質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
【0037】
追加成分
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、(f)非イオン界面活性剤、(g)炭素数12~24の高級アルコール及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の成分を更に含有してもよい。
【0038】
非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル等)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド(例えば、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ココグリコシド等)、脂肪酸ポリエチレングリコール(例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アルキルグルコシドが好ましい。非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
炭素数12~24の高級アルコール
炭素数12~24の高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の直鎖脂肪族モノオール;ラノリンアルコール、イソステアリルアルコール等の分岐鎖脂肪族モノオール、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、直鎖脂肪族モノオールが好ましい。炭素数12~24の高級アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
(b)成分、(f)成分及び(g)成分の総含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で1~5質量%であることが好ましく、2~4.8質量%であることがより好ましい。この特定の範囲は、有利に塗布時により新鮮な水感を付与する。
【0041】
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、(h)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを更に含有してもよい。
【0042】
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールは、水に不溶性であるため、水相中に分散させて配合させるのがよい。例えば、BASF社から「チノソルブM(TINOSORB M)」という商品名で市販されているメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの水分散物を使用することができる(INCI名:メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(及び)水(及び)デシルグルコシド(及び)プロピレングリコール(及び)キサンタンガム)。これは超微粒子技術を用いた有機紫外線フィルターであり、微小色素かつ紫外線吸収剤として作用する。
【0043】
(h)成分の含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で0.5~10質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。また、(h)成分として、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの水分散物を使用する場合、その含有量は、水中油型乳化化粧料の全質量基準で、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。
【0044】
追加のゲル化剤又は増粘剤
特定の実施形態において、水中油型乳化化粧料は、(e)成分以外の増粘剤を更に含有してもよい。
【0045】
(e)成分以外の増粘剤としては、例えば、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー等のアクリロイルアルキルタウリン又はその塩を構成単位として含むポリマー;キサンタンガム、及びそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)コポリマーが好ましく、(e)成分以外の増粘剤としてこれらの成分を含有すると、塗布時により新鮮な水感を付与することができる。
【0046】
特定の実施形態において、水中油型乳化化粧料は、油剤を更に含有してもよい。なお、本明細書における油剤には、(c)油溶性紫外線吸収剤及び(g)炭素数12~24の高級アルコールは含まれない。
【0047】
油剤としては、例えば、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール、ジ(カプリル/カプリン酸)ブチレングリコール、炭酸ジカプリリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸アルキル等のエステル油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリメチルフェニルシロキサン(ジフェニルジメチコン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン油、及びそれらの混合物が挙げられる。油剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、上記成分に加えて、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効及び/又は活性成分、安定化剤、粉体、色素、香料等の添加成分を各種の効果の付与のために適宜配合することができる。
【0049】
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、非限定的な例として、以下の工程によって製造することができる。
1)(c)油溶性紫外線吸収剤、並びに必要に応じて(f)非イオン界面活性剤、(g)炭素数12~24の高級アルコール及び油剤等を混合、加熱攪拌して油系混合物を得る。
2)(a)水相、(d)水溶性紫外線吸収剤及び必要に応じてその他の成分を混合、攪拌して水系混合物を得る。
3)(a)水相に、(b)アニオン界面活性剤、(e)クロスポリマー、及び必要に応じて(e)成分以外の増粘剤等を添加して加熱攪拌した後、さらに1)で得られた油系混合物を添加して加熱攪拌する。
4)3)で得られた混合物に2)で得られた水系混合物及び必要に応じてその他の成分を添加して冷却攪拌する。
【0050】
本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、塗布時に新鮮な水感を付与するとともに、塗布後のべたつきがない水中油型乳化化粧料であることから、皮膚化粧料として好適に使用することができ、好ましくは頭皮を除く皮膚、より好ましくは顔、身体、手足等のいずれかに塗布して使用することができる。本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は、例えば、ローション、乳液、美容液、クリーム、化粧下地等として利用することができる。当該水中油型乳化化粧料は、スキンケア組成物又はメークアップ組成物として使用することができる。また、本実施形態に係る水中油型乳化化粧料は高い紫外線防御効果を有していることから、日焼け止め用化粧料とすることが好ましい。
本発明はまた、水中油型乳化化粧料のケラチン物質、特に皮膚への塗布を含む、ケラチン物質をケア及び/又はメークアップするための化粧方法に関する。
本発明の水中油型乳化化粧料はまた、ケラチン物質、特に皮膚への紫外線の影響を予防及び/又は低減するために、特に皮膚を日焼けによる損傷、日焼け及び/又は光老化から保護するために使用される。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0052】
(1)水中油型乳化化粧料の調製
表1に示す組成に基づき、以下の方法により、含有する成分及びその含有量が異なる水中油型乳化化粧料を調製した(実施例1~8及び比較例1~6)。
(c)油溶性紫外線吸収剤、(f)非イオン界面活性剤、(g)炭素数12~24の高級アルコール及び油剤を混合し、80℃で溶解させたもの(混合物A)、並びに(a)水相(水)、(d)水溶性紫外線吸収剤、無機紫外線吸収剤及びpH調整剤(トロメタミン)を混合し、室温で溶解させたもの(混合物B)をそれぞれ調製した。
(a)水相(水及びフェノキシエタノール)、(b)アニオン界面活性剤、(e)クロスポリマー、(e)成分以外の増粘剤及びキレート剤(EDTA二ナトリウム)を、撹拌機を用いて80℃で混合した後、上記調製した混合物Aを添加して攪拌した。得られた混合物を自然冷却し、60℃で上記調製した混合物Bを添加して攪拌した。この混合物をさらに自然冷却して50℃で(a)水相(ブチレングリコール及びプロパンジオール)、(h)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの水分散体を加え攪拌した。さらに自然冷却して40℃でその他の成分を添加して攪拌することで水中油型乳化化粧料を得た。各原料の含有量(単位:質量%)は、表1に示すとおりである。
【0053】
(2)安定性評価
(2-1:50℃での1か月保管)
透明容器に上記調製した各水中油型乳化化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃で1か月保管した。保管後、油相と水相の分離の有無を観察した。油相と水相の分離が観察されなかったものをY、油相と水相の分離が観察されたものをNと評価した。
(2-2:40℃及び-10℃でのサイクル試験)
透明容器に上記調製した各水中油型乳化化粧料を収容し、蓋をして密閉したうえで、40℃で12時間の保管、-10℃で12時間の保管を交互に繰り返して、合計1か月保管した。油相と水相の分離が観察されなかったものをY、油相と水相の分離が観察されたものをNと評価した。
【0054】
(3)紫外線防御効果
上記調製した各化粧料をPMMAプレートの上に1.3mg/cm2の塗布量で均一に塗布し、乾燥させた。その後、SPFアナライザー(UV-2000S;Labosphere社製)を用いて、in vitro SPF値を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
A:in vitro SPF値が50以上
B:in vitro SPF値が30以上50未満
C:in vitro SPF値が30未満
【0055】
(4)官能評価
上記調製した各化粧料の塗布時における新鮮な水感、及び塗布後のべたつき感のなさについて、本発明者らが所属する組織の化粧品専門評価パネルによる肌への単回使用試験において、以下の基準にて評価した。
(新鮮な水感)
A:強く認められる
B:認められる
C:あまり認められない
D:認められない
(べたつき感のなさ)
A:べたつきを全く感じない
B:べたつきをほとんど感じない
C:べたつきをやや感じる
D:べたつきを感じる
【0056】
【0057】
表1に示す結果より、(a)水相、(c)油溶性紫外線吸収剤及び(d)水溶性紫外線吸収剤を含む水中油型乳化化粧料において、(b)アニオン界面活性剤と(e)(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸又はその塩、ジアルキル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸エステルを構成単位として含むクロスポリマーを組み合わせることで(本発明の実施例)、他の比較例と比較して、紫外線防御効果と塗布後の最適な感覚刺激特性を有する安定な組成物を与えることが示された。