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  • 特許-跨線橋用作業足場の設置構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】跨線橋用作業足場の設置構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20240228BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E04G3/24 302H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023207890
(22)【出願日】2023-12-08
【審査請求日】2023-12-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年4月3日 実施(谷井跨線橋(岡山県浅口市鴨方町小坂西3791-3))
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517386631
【氏名又は名称】株式会社IKEMOTO
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】池元 博之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 健
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-110110(JP,A)
【文献】特開2014-159234(JP,A)
【文献】特開2019-031876(JP,A)
【文献】特開2004-294318(JP,A)
【文献】特開2001-172920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
E04G 3/00- 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
跨線橋を構成する橋梁に設置する作業足場の設置構造であって、
足場部分を構成する、足場部と、
前記足場部を、橋桁に固定する、固定部と、
前記足場部を、前記跨線橋を構成する部材の何れかに吊設する、吊設部を少なくとも備え、
前記固定部は、
前記橋桁のウェブへと磁着させる、磁着部と、
前記磁着部と連結される長手部材からなり、前記橋桁の上フランジと下フランジの間の空間に配置される、支柱部と、
を少なくとも有し、
前記足場部は、
前記支柱部の長手方向の途上高さに位置する足場板を少なくとも有することを特徴とする、
跨線橋用作業足場の設置構造。
【請求項2】
前記支柱部の下端を、前記下フランジに直接または間接的に接触させてあることを特徴とする、
請求項1に記載の跨線橋用作業足場の設置構造。
【請求項3】
前記支柱部の長さが、前記橋桁の上フランジと下フランジの間の距離と略等長であることを特徴とする、
請求項1に記載の跨線橋用作業足場の設置構造。
【請求項4】
前記磁着部を、前記支柱の長手方向に間隔をあけて二箇所設けてあることを特徴とする、
請求項1に記載の跨線橋用作業足場の設置構造。
【請求項5】
前記支柱部において、少なくとも当該支柱部の表面をFRPで覆ってあることを特徴とする、
請求項1に記載の跨線橋用作業足場の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跨線橋を構成する橋梁に作業足場を設置するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
跨線橋などの橋梁の保守点検を行う場合に使用される作業足場として、以下の特許文献1に記載の作業足場などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-172920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
跨線橋は、新幹線や在来線などの鉄道を跨ぐように構築されるため、作業足場の設置時には、特に以下の点に配慮する必要がある。
(1)作業効率について
鉄道が運行していない夜間の限られた時間内で作業足場の設置作業を行う場合があるため、作業足場をより短時間に構築可能とすること。
(2)安全性について
鉄道の線路上方に位置する、き電線等との接触を防止すべく、十分な離隔を確保し、作業足場に電気絶縁性を付与しておくことが好ましいこと。
【0005】
よって、本発明は、跨線橋等の橋梁に設置する作業足場において、設置作業の効率性に優れ、かつ事故防止に寄与する手段の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願発明は、跨線橋を構成する橋梁に設置する作業足場の設置構造であって、足場部分を構成する、足場部と、前記足場部を、橋桁に固定する、固定部と、前記足場部を、前記跨線橋を構成する部材の何れかに吊設する、吊設部を少なくとも備え、前記固定部は、前記橋桁のウェブへと磁着させる、磁着部と、前記磁着部と連結される長手部材からなり、前記橋桁の上フランジと下フランジの間の空間に配置される、支柱部と、を少なくとも有し、前記足場部は、前記支柱部の長手方向の途上高さに位置する足場板を少なくとも有することを特徴とするものである。
また、本願発明は、前記支柱部の下端を、前記下フランジに直接または間接的に接触させておいてもよい。
また、本願発明は、前記支柱部の長さが、前記橋桁の上フランジと下フランジの間の距離と略等長に構成してもよい。
また、本願発明は、前記磁着部を、前記支柱の長手方向に間隔をあけて二箇所設けておいてもよい。
また、本願発明は、前記支柱部において、少なくとも当該支柱部の表面をFRPで覆うように構成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、跨線橋の橋梁に設置する作業足場として、設置作業の効率性に優れ、かつ事故防止に寄与した作業足場を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る跨線橋用作業足場の設置構造を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例
【0010】
<1>全体構成(図1
本実施例に係る跨線橋用作業足場の設置構造(以下、単に「本構造」ともいう。)は、大別して、跨線橋の橋梁を構成する橋桁10と、足場部分を構成する足場部20と、足場部20を橋桁10に固定する固定部30と、足場部20を橋梁の構成部材の何れかに吊設する吊設部40を少なくとも備えている。
以下、各構成要素の詳細について説明する。
【0011】
<2>橋桁
橋桁10は、橋梁の構成部材の一部である。
本発明において、橋桁10は、橋梁の長手方向に伸びる主桁や、主桁間に配置する横桁の何れをも含む。
本発明では、橋桁10に使用される部材として、ウェブ11および一対のフランジ(上フランジ12、下フランジ13)を有する形鋼(H形鋼またはC形鋼を含む)を想定している。
本実施例では、H形鋼からなる主桁を橋桁10として使用している。
【0012】
<3>足場部
足場部20は、足場部分を構成する部材である。
本発明において、足場部20の形状や構造は特段限定せず、足場として使用される種々の形状および構造を採用することができる。
本実施例では、足場部20は、固定部30に取付可能なブラケット21と、ブラケット21の上部に取り付ける足場板22と、ブラケット21の外縁から立設させるアサガオ23と、アサガオ23の上部とブラケット21の内縁側とを繋ぐ控え材24とを少なくとも含んで構成している。
【0013】
<3.1>足場板の位置
本発明では、足場板22は、後述する支柱部32の長手方向の途上高さに位置させるものとする。これは、鉄道に設けたき電線等との接触を防止する観点から、橋桁10の下フランジ13よりも下方に足場部20を設けないように要求された場合に対応するためである。
【0014】
<3.2>電気絶縁性の付与
足場部20を構成する部材のうち少なくとも下方側に位置する部材には、電気絶縁性を付与しておくことが好ましい。
これは、跨線橋の下方に位置する鉄道に設けたき電線との接触等による感電事故を防止するためである。
電気絶縁性を付与する方法としては、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製の単管部材を用いる方法や、鋼管の周囲に電気絶縁層(FRP、ゴム、またはその他の電気絶縁性部材からなるテープ材や筒材など)を設ける方法などが考えられる。
【0015】
<4>固定部
固定部30は、足場部20を橋桁10に固定するための部材であり、固定部30単体で、足場構築用の治具(固定治具)として使用することもできる。
固定部30は、磁着部31と、支柱部32とを少なくとも有して構成する。
以下、各部の詳細について説明する。
【0016】
<4.1>磁着部
磁着部31は、橋桁10を構成するウェブ11へと磁着させることで、固定部30を橋桁10に固定するための部材である。
【0017】
<4.1.1>磁着部31の形状・構造
本発明において、磁着部31の形状・構造は特段限定せず、足場部20を橋桁10に強固に固定可能とするために十分な磁力を備えていればよい。
本発明における磁着部31として使用可能な製品の一例としては、桜井技研興業株式会社の強力マグネット足場(https://www.sakuraigiken.co.jp/?page_id=621)などを用いることができる。
【0018】
<4.1.2>磁着部の配置個数
本発明において、固定部30における磁着部31の数は特段限定せず、磁力の強さや足場の安定性等を考慮して適宜決定することができる。
なお、固定部30に対し、磁着部31の数が多すぎると、ある磁着部31を外す際に、既に外してあるその他の磁着部31が再磁着する恐れが生じ、作業の効率性が悪化することが考えられる。
そこで、本実施例では、足場の安定性の維持と、磁着部31の脱着作業の効率性の悪化の抑制の両立を目的として、磁着部31を、支柱部32の長手方向に、間隔を設けて二箇所配置した構成としている。
【0019】
<4.2>支柱部
支柱部32は、足場部20を橋桁10に固定するために、両者の間に介在させる部材である。
支柱部32は、単管などの長手部材を用いることができる。この長手部材の上下単の近傍にそれぞれ磁着部31を直接または間接的に連結して使用する。
【0020】
<4.2.1>電気絶縁性の付与
支柱部32は、前記した足場本体と同様、電気絶縁性を付与しておくことが好ましい。
絶縁性を付与する方法の例は、前記した<3.1>に記載の通りである。
本実施例では、支柱部32にFRP製の単管を用いている。
【0021】
<4.2.2>支柱部の収納
本発明では、磁着部31を介して固定部30を橋桁10に取り付けた状態において、支柱部32が、上フランジ12および下フランジ13で囲まれた空間(収納空間14)に収納された状態とするものとする。
これは、万が一、磁着部31が橋桁10から外れて固定部30が落下しかけた際に、支柱を下フランジ13に接触させることで、固定部30の落下を阻止または最小限に留めるためである。
また、本発明では、予め支柱部32の下端を、下フランジ13に直接または間接的に接触させておいてもよい。
【0022】
<4.2.3>支柱部32の長さ
本発明において、支柱部32の長さは特段限定しないが、例えば橋桁10を構成する形鋼のフランジ間距離と略等長に構成することができる。
本実施例においても、支柱部32の長さは、H鋼からなる橋桁10の上フランジ12と下フランジ13の間の離隔距離と略等長としている。
当該構成によれば、橋桁10に対する固定部30を取り付ける際に、支柱部32が上フランジ12および下フランジ13に干渉しないように位置を調整しながら作業を行うことになり、自然に固定部30の取付高さが定まり、作業効率の向上に寄与する。
また、固定部30がウェブ11に取り付けた状態で、既に支柱の下端が下フランジ13にほぼ当接した状態になるため、仮に磁着部31が橋桁10から外れた場合にも、固定部30および足場部20の移動を抑制することができる。
【0023】
<5>吊設部
吊設部40は、固定部30とは別に、足場部20と橋梁との間を連結しておくための部材である。
吊設部40には、チェーンや単管など、種々の部材を用いることができる。
固定部30に加えてさらに吊設部40を設けることで、作業足場の安定性をより高めつつ、仮に磁着部31が橋桁10から外れた場合にも、本構造に係る作業足場を、吊り足場として成立させた状態を維持することができる。
【0024】
<5.1>吊設部の数・吊設位置(図1
本発明において、吊設部40の数や吊設位置は特段限定せず、吊り足場として安定性を高める観点で、適宜設計することができる。
本実施例では、上フランジ12とウェブ11との境界付近から、足場部20の内縁との間をループ状に繋ぐチェーンからなる吊設部40(第一の吊設部40a)と、上フランジ12とウェブ11との境界付近から、足場部20の外縁との間を繋ぐチェーンからなる吊設部40(第二の吊設部40b)と、橋梁を構成する地覆や高欄から、足場部20の外縁との間を繋ぐチェーンからなる吊設部40(第三の吊設部40c)と、からなる三種類の吊設部40を設けている。
【0025】
<6>その他の部材
その他、本構造においては、固定部30を橋桁10に設置した際に、支柱部32の下部近傍とウェブ11との間に生じる隙間を埋めるように配置する当て木50などを設けてもよい。
【0026】
<7>構築手順(図1
本発明において、本発明に係る跨線橋用作業足場の設置構造を構築する手順は特段限定しないが、例えば以下の手順を採用することができる。
何れの手順においても、初回の作業足場は、高所作業車などから構築作業を行い、二回目以降は構築済みの作業足場から構築作業を行うなどすれば良い。
【0027】
(1)手順例1
橋桁10のウェブ11に、磁着部31でもって固定部30を磁着させ、残る足場部材(ブラケット21、足場板22、アサガオ23、控え材24など)と、各吊設部40を設置して、作業足場を構築する。
【0028】
(2)手順例2
固定部30と足場部20の一部または全部を、予め地上で組み立ててユニット化しておき、このユニットごと橋桁10のウェブ11へと固定し、残る足場部20の構成部材や吊設部40を適宜設置して、作業足場を構築する。
【0029】
(3)手順例3
複数の固定部30を、水平繋ぎ材やブラケット21等を介して予め地上で組み立ててユニット化しておき、このユニットごと橋桁10のウェブ11へと固定し、残る足場部20の構成部材や吊設部40を適宜設置して、作業足場を構築する。
【符号の説明】
【0030】
10:橋桁
11:ウェブ
12:上フランジ
13:下フランジ
14:収納空間
20:足場部
21:ブラケット
22:足場板
23:アサガオ
24:控え材
30:固定部
31:磁着部
32:支柱部
40:吊設部
40a:第一の吊設部
40b:第二の吊設部
40c:第三の吊設部
50:当て木
【要約】
【課題】跨線橋を構成する橋梁に設置する作業足場において、設置作業の効率性に優れ、かつ事故防止に寄与する手段を提供すること。
【解決手段】足場部分を構成する足場部20と、足場部20を橋桁10に固定する固定部30と、を少なくとも備える。固定部30は、橋桁10のウェブ11へと磁着させる磁着部31と、磁着部31と連結される長手部材からなり、橋桁10の上フランジ12と下フランジ13の間の空間(収納空間14)に配置される支柱部32と、を少なくとも有する。足場部20は、支柱部32の長手方向の途上高さに位置する足場板22を少なくとも有する。本構造によれば、仮に磁着部31がウェブ11から外れた場合にも、支柱部32が下フランジ13に当接するため、足場の落下を防止することができる。また、さらに吊設部40によって吊り足場として成立可能な構造としておくと、より安全性に優れる作業足場を提供することができる。その他、固定部30に対し、足場部20を構成する部材の一部または全部を予め取り付けてユニット化し、このユニットを橋桁10に設置して作業足場を構築してもよい。
【選択図】図1
図1