(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240228BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61B6/03 577
A61B6/03 560J
A61N5/10 F
A61N5/10 H
A61N5/10 M
(21)【出願番号】P 2019186737
(22)【出願日】2019-10-10
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
(72)【発明者】
【氏名】谷沢 昭行
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 京佳
(72)【発明者】
【氏名】森 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡屋 慶子
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-192702(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037904(WO,A1)
【文献】特開2013-111156(JP,A)
【文献】特開2008-228966(JP,A)
【文献】特開2012-024145(JP,A)
【文献】特開2011-125431(JP,A)
【文献】特開2016-209012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
A61B 6/00
A61B 6/04
A61B 8/00
A61B 5/00
A61B 5/055
A61N 5/10
G16H 20/40
G16H 30/00
G06T 1/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を撮影した第1画像と、過去の放射線治療において収集され、前記過去の放射線治療において使用された画像であって、前記放射線治療における位置合わせに利用された有効領域が指定された比較用画像とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記第1画像内に含まれる前記有効領域に類似する位置決め領域を決定する位置決め領域決定部と、
を備え
、
前記比較用画像は、前記過去の放射線治療において用いられた1つの透視画像が所定の大きさに分割された分割画像のうち一部が前記有効領域として指定されたものを、複数含み、
前記位置決め領域決定部は、複数の前記比較用画像のそれぞれについて、前記第1画像内で前記有効領域と類似する箇所を抽出し、複数の前記比較用画像のそれぞれについて抽出した箇所を結合して前記位置決め領域を決定する、
医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第1画像に写された前記患者の向きが、前記比較用画像に表された患者の向きに合うように前記第1画像の向きを補正する患者向き補正部、
をさらに備え、
前記比較部は、前記患者向き補正部により向きが補正された前記第1画像と前記比較用画像とを比較する、
請求項1
に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記比較用画像は複数用意され、それぞれの前記比較用画像が前記過去の放射線治療において治療した治療部位ごとに複数の画像群にまとめられており、
前記比較部は、前記患者の治療部位に応じて、前記第1画像と比較する前記比較用画像の画像群を選択する、
請求項1
または請求項
2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第1画像から前記放射線治療において照射する放射線の飛程の情報を取得し、前記第1画像内で取得した前記飛程を含む所定の範囲を抽出する飛程範囲抽出部、
をさらに備え、
前記位置決め領域決定部は、前記飛程を含む所定の範囲内で、前記第1画像内に含まれる前記有効領域に類似する第2の位置決め領域を決定する、
請求項1から請求項
3のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第1画像に前記第2の位置決め領域の範囲を強調させて重畳した確認画像を生成する確認画像生成部、
をさらに備える、
請求項
4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記第1画像は、DRR(Digitally Reconstructed Radiograph)画像である、
請求項1から請求項
5のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータを、
患者を撮影した第1画像と、過去の放射線治療において収集され、前記過去の放射線治療において使用させた画像であって、前記放射線治療における位置合わせに利用された有効領域が指定された比較用画像とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記第1画像内に含まれる前記有効領域に類似する位置決め領域を決定する位置決め領域決定部と、
を備え
、
前記比較用画像は、前記過去の放射線治療において用いられた1つの透視画像が所定の大きさに分割された分割画像のうち一部が前記有効領域として指定されたものを、複数含み、
前記位置決め領域決定部は、複数の前記比較用画像のそれぞれについて、前記第1画像内で前記有効領域と類似する箇所を抽出し、複数の前記比較用画像のそれぞれについて抽出した箇所を結合して前記位置決め領域を決定する医用画像処理装置として機能させるための医用画像処理プログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項
6のうちいずれか1項に記載の医用画像処理装置と、
前記第1画像を取得する第1画像取得部と、
照射した放射線を検出器によって検出して画像化する撮影装置から、前記第1画像の撮影時刻とは異なる時刻に前記患者に照射した前記放射線に応じた第2画像を取得する第2画像取得部と、
前記第1画像と前記第2画像とを用い、前記位置決め領域に基づいて、放射線治療を行う際の前記患者の位置を決める位置決め部と、
を備える医用装置。
【請求項9】
前記第1画像に前記位置決め領域を重畳した画像を表示装置に表示させる表示制御部、
をさらに備える、
請求項
8に記載の医用装置。
【請求項10】
請求項
8または請求項
9に記載の医用装置と、
前記患者の治療部位に治療ビームを照射する照射部と、
前記位置決め部によって決められた位置に合うように前記患者が固定された寝台の位置の移動量を制御する寝台制御部と、
を備える治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、放射線を患者の体内にある病巣に対して照射することによって、その病巣を破壊する治療方法である。放射線は、患者の体内の正常な組織に照射してしまうと正常な組織にまで影響を与える場合があるため、放射線治療では、病巣の位置に正確に放射線を照射する必要がある。このため、放射線治療を行う際には、まず、治療計画の段階において、例えば、予めコンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)が行われ、患者の体内にある病巣の位置が3次元的に把握される。そして、把握した病巣の位置に基づいて、放射線を照射する方向や照射する放射線の強度が計画される。その後、治療の段階において、患者の位置を治療計画の段階の患者の位置に合わせて、治療計画の段階で計画した照射方向や照射強度に従って放射線が病巣に照射される。
【0003】
従来から、放射線治療で患者の位置を合わせる位置決めにおいて、有効な関心領域を利用して位置決め精度を向上させる方式を採用した放射線治療システムに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。従来の技術では、画像全体で位置決めした結果と、治療計画において入力されている関心領域に関する特徴量によって位置決めした結果と、を統合して患者の位置決めをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、位置決めに有効な領域であっても、治療計画において入力されていない領域は、位置決めをする際の領域として利用することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、高精度に患者の位置決めをすることができる医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用画像処理装置は、比較部と位置決め領域決定部とを持つ。比較部は、患者を撮影した第1画像と、過去の放射線治療において収集され、前記過去の放射線治療において使用させた画像であって、前記放射線治療における位置合わせに利用された有効領域が指定された比較用画像とを比較する。位置決め領域決定部は、前記比較部による比較結果に基づいて、前記第1画像内に含まれる前記有効領域に類似する位置決め領域を決定する。前記比較用画像は、前記過去の放射線治療において用いられた1つの透視画像が所定の大きさに分割された分割画像のうち一部が前記有効領域として指定されたものを、複数含む。前記位置決め領域決定部は、複数の前記比較用画像のそれぞれについて、前記第1画像内で前記有効領域と類似する箇所を抽出し、複数の前記比較用画像のそれぞれについて抽出した箇所を結合して前記位置決め領域を決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高精度に患者の位置決めをすることができる医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態の医用装置および医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図3】第1の実施形態の医用画像処理装置が参照する比較用画像の一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態の医用画像処理装置が参照する比較用画像の別の一例を示す図。
【
図5】第1の実施形態の治療システムにおける動作の流れを示すフローチャート。
【
図6】第1の実施形態の医用画像処理装置が備える比較部および位置決め領域決定部の動作の一例を模式的に示す図。
【
図7】第2の実施形態の医用装置および医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図8】第2の実施形態の医用画像処理装置が備える患者向き補正部による画像の向きの補正の考え方を示す図。
【
図9】第2の実施形態の医用画像処理装置が備える患者向き補正部による画像の向き補正の処理の一例を模式的に示す図。
【
図10】第2の実施形態の治療システムにおける動作の流れを示すフローチャート。
【
図11】第3の実施形態の医用装置および医用画像処理装置の概略構成を示すブロック図。
【
図12】第3の実施形態の医用画像処理装置が備える確認画像生成部が生成する確認画像の一例を示す図。
【
図13】第3の実施形態の医用画像処理装置が備える確認画像生成部が生成する確認画像の別の一例を示す図。
【
図14】第3の実施形態の治療システムにおける動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、医用装置、および治療システムを、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムの概略構成を示すブロック図である。治療システム1は、例えば、治療台10と、寝台制御部11と、2つの放射線源20(放射線源20-1および放射線源20-2)と、2つの放射線検出器30(放射線検出器30-1および放射線検出器30-2)と、治療ビーム照射門40と、第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、表示制御部80と、表示装置81と、医用画像処理装置100と、比較用画像データベース(DB)110とを備える。
【0012】
なお、
図1に示したそれぞれの符号に続いて付与した「-」とそれに続く数字は、対応関係を識別するためのものである。例えば、放射線源20と放射線検出器30との対応関係では、放射線源20-1と放射線検出器30-1とが対応して1つの組となっていることを示し、放射線源20-2と放射線検出器30-2とが対応してもう1つの組となっていることを示している。なお、以下の説明において複数ある同じ構成要素を区別せずに表す場合には、「-」とそれに続く数字を示さずに表す。
【0013】
治療台10は、放射線による治療を受ける被検体(患者)Pを固定する寝台である。寝台制御部11は、治療台10に固定された患者Pに治療ビームを照射する方向を変えるために、治療台10に設けられた並進機構および回転機構を制御する。寝台制御部11は、例えば、治療台10の並進機構および回転機構のそれぞれを3軸方向、つまり、6軸方向に制御する。
【0014】
放射線源20-1は、患者Pの体内を透視するための放射線r-1を予め定められた角度から照射する。放射線源20-2は、患者Pの体内を透視するための放射線r-2を、放射線源20-1と異なる予め定められた角度から照射する。放射線r-1および放射線r-2は、例えば、X線である。
図1には、治療台10上に固定された患者Pに対して、2方向からX線撮影を行う場合を示している。なお、
図1においては、放射線源20による放射線rの照射を制御する制御部の図示を省略している。
【0015】
放射線検出器30-1は、放射線源20-1から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線r-1を検出し、検出した放射線r-1のエネルギーの大きさに応じた患者Pの体内のX線透視画像を生成する。放射線検出器30-2は、放射線源20-2から照射されて患者Pの体内を通過して到達した放射線r-2を検出し、検出した放射線r-2のエネルギーの大きさに応じた患者Pの体内のX線透視画像を生成する。放射線検出器30では、2次元のアレイ状にX線検出器が配置され、それぞれのX線検出器に到達した放射線rのエネルギーの大きさをデジタル値で表したデジタル画像を、X線透視画像として生成する。放射線検出器30は、例えば、フラット・パネル・ディテクタ(Flat Panel Detector:FPD)や、イメージインテンシファイアや、カラーイメージインテンシファイアである。以下の説明においては、それぞれの放射線検出器30が、FPDであるもとする。放射線検出器30(FPD)は、生成したそれぞれのX線透視画像を医用画像処理装置100に出力する。なお、
図1においては、放射線検出器30によるX線透視画像の生成を制御する制御部の図示を省略している。
【0016】
治療システム1では、放射線源20と放射線検出器30との組が、特許請求の範囲における「撮影装置」の一例である。
図1には、異なる2つ方向から患者PのX線透視画像を撮影する撮影装置を示している。なお、
図1に示した治療システム1では、2組の放射線源20と放射線検出器30、つまり、2つの撮影装置を備える構成を示したが、治療システム1が備える撮影装置の数は、2つに限定されない。例えば、治療システム1において、3つ以上の撮影装置(3組以上の放射線源20と放射線検出器30との組)を備えてもよい。また、治療システム1において、1つの撮影装置(1組の放射線源20と放射線検出器30との組)のみを備えてもよい。
【0017】
治療ビーム照射門40は、患者Pの体内の治療する対象の部位である病巣を破壊するための放射線を治療ビームBとして照射する。治療ビームBは、例えば、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線などである。治療ビームBは、治療ビーム照射門40から直線的に患者P(より具体的には、患者Pの体内の病巣)に照射される。治療ビーム照射門40における治療ビームBの照射は、例えば、治療ビーム照射制御部(不図示)によって制御される。治療システム1では、治療ビーム照射門40が、特許請求の範囲における「照射部」の一例である。
【0018】
なお、
図1に示した治療システム1では、固定された1つの治療ビーム照射門40を備える構成を示したが、これに限定されず、治療システム1は、複数の治療ビーム照射門を備えてもよい。例えば、治療システム1では、患者Pに水平方向から治療ビームを照射する治療ビーム照射門をさらに備えてもよい。また、治療システム1では、1つの治療ビーム照射門が患者Pの周辺を回転することによって、様々な方向から治療ビームを患者Pに照射する構成であってもよい。例えば、
図1に示した治療ビーム照射門40が、
図1に示した水平方向Yの回転軸に対して360度回転することができる構成であってもよい。このような構成の治療システム1は、回転ガントリ型治療システムとよばれる。なお、回転ガントリ型治療システムでは、治療ビーム照射門40の回転軸と同じ軸に対して、放射線源20および放射線検出器30も、同時に360度回転する。
【0019】
治療システム1では、第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、表示制御部80と、医用画像処理装置100とを合わせたものが、特許請求の範囲における「医用装置」の一例である。なお、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサと、プログラム(ソフトウェア)を記憶した記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)とを備え、プロセッサがプログラムを実行することによりそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。また、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)などによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。また、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどの治療システム1に備えた記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が治療システム1に備えたドライブ装置に装着されることで、治療システム1に備えた記憶装置にインストールされてもよい。また、プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワークを介して予めダウンロードされて、治療システム1に備えた記憶装置にインストールされてもよい。
【0020】
第1画像取得部50は、治療対象の患者Pの体内を透視可能な3次元ボリューム画像を取得する。3次元ボリューム画像は、例えば、CT装置や、コーンビーム(Cone-Beam:CB)CT装置、磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置、超音波診断装置などの撮影装置によって患者Pを撮影して取得した3次元の画像である。3次元ボリューム画像は、例えば、放射線治療における治療計画の段階など、放射線治療を行う前の計画段階において患者Pを撮影したCT画像に対して、治療部位の位置や、治療部位に治療ビームBを照射させる向き(照射方向)、照射する治療ビームBの強度(照射強度)などが事前に定められているものである。3次元ボリューム画像は、例えば、CT画像から仮想的にX線透視画像を再構成したデジタル再構成X線写真(Digitally Reconstructed Radiograph:DRR)画像であってもよい。以下の説明においては、第1画像取得部50がCT画像を取得するものとする。第1画像取得部50は、取得したCT画像を、位置決め部70および医用画像処理装置100に出力する。なお、CT画像には、放射線治療を行う際の関心領域(Region Of Interest:ROI)が含まれていてもよい。第1画像取得部50が取得する3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)やDRR画像は、特許請求の範囲における「第1画像」の一例である。
【0021】
医用画像処理装置100は、比較用画像データベース110に収集された比較用画像を参照し、第1画像取得部50により出力されたCT画像に対して、患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定する。なお、医用画像処理装置100は、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)を介して比較用画像データベース110に収集されている比較用画像を取得し、取得した比較用画像を参照してCT画像に対して位置決め領域を決定してもよい。医用画像処理装置100は、決定した位置決め領域の情報を位置決め部70に出力する。また、医用画像処理装置100は、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、決定した位置決め領域の情報とを、表示制御部80に出力する。医用画像処理装置100の構成および処理に関する詳細については後述する。
【0022】
比較用画像データベース110は、過去の放射線治療において患者の位置合わせに利用された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)から生成された比較用画像が収集されている。比較用画像データベース110には、過去の放射線治療において治療した治療部位ごとに、複数の比較用画像が収集されている。言い換えれば、比較用画像データベース110には、治療部位ごとの比較用画像の画像群が収集されている。比較用画像データベース110に収集されている比較用画像は、3次元の画像であっても、2次元の画像であってもよい。比較用画像データベース110に収集された比較用画像の構成に関する詳細については後述する。
【0023】
第2画像取得部60は、治療システム1が設置された治療室において治療台10に固定された現在の患者Pの体内のX線透視画像を取得する。第2画像取得部60は、それぞれの放射線検出器30によって治療台10に現在固定されている患者Pの体内のX線透視画像を取得する。つまり、第2画像取得部60は、第1画像取得部50が取得したCT画像とは異なる時刻に撮影した患者PのX線透視画像を取得する。なお、第2画像取得部60と放射線検出器30のそれぞれとは、LANやWANによって接続される構成であってもよい。第2画像取得部60は、取得したX線透視画像を、位置決め部70に出力する。X線透視画像は、特許請求の範囲における「第2画像」の一例である。
【0024】
位置決め部70は、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、第2画像取得部60により出力されたX線透視画像とを、医用画像処理装置100により出力された位置決め領域の情報に基づいて照合し、放射線治療を行うのに好適な患者Pの位置を決定する。そして、位置決め部70は、治療台10に固定されている患者Pの現在の位置を、放射線治療を行うのに好適な位置に移動させるための治療台10の移動量を求める。言い換えれば、位置決め部70は、患者Pの現在の位置を、計画段階においてCT画像に対して事前に定めた照射方向から治療部位に治療ビームBを照射させるために必要な治療台10の移動量を求める。位置決め部70は、求めた移動量の情報を寝台制御部11に出力し、治療台10に設けられた並進機構および回転機構によって患者Pの位置を移動させる。
【0025】
表示制御部80は、医用画像処理装置100により出力されたCT画像に、医用画像処理装置100が決定した位置決め領域を重畳した画像を表示装置81に表示させる。これにより、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)などの表示装置81に、CT画像内の位置決め領域の範囲が表示され、治療システム1を利用する放射線治療の実施者(医師など)が、決定された位置決め領域を目視で確認することができる。なお、治療システム1は、例えば、放射線治療の実施者(医師など)によって操作される操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを備え、医用画像処理装置100が決定した位置決め領域を手動で調整することができる構成にしてもよい。なお、治療システム1において「医用装置」は、上述したよう第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、表示制御部80と、医用画像処理装置100とに加えて、操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを含めた構成であってもよい。また、治療システム1において「医用装置」は、さらに、表示装置81と一体になった構成であってもよい。
【0026】
次に、治療システム1を構成する第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置の構成について説明する。
図2は、第1の実施形態の医用装置および医用画像処理装置100の概略構成を示すブロック図である。
図2には、医用装置を構成する第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、医用画像処理装置100とのそれぞれの接続関係を示している。また、
図2には、医用画像処理装置100を含む医用装置に関係する比較用画像データベース110および寝台制御部11との接続関係も併せて示している。なお、
図2では、医用装置を構成する表示制御部80とその他の構成要素(より具体的には、医用画像処理装置100)との接続関係は、
図1により容易に理解することができるため省略している。
【0027】
比較用画像データベース110に収集されている比較用画像は、分割画像と有効領域画像とが組になっている。
図2では、比較用画像データベース110内に、比較用画像Ci-1~比較用画像Ci-nの複数の比較用画像Ciが収集されている状態を示している。また、
図2では、分割画像Di-1と有効領域画像Ei-1との組が比較用画像Ci-1を構成し、分割画像Di-2と有効領域画像Ei-2との組が比較用画像Ci-2を構成し、分割画像Di-nと有効領域画像Ei-nとの組が比較用画像Ci-nを構成している。なお、比較用画像Ciの符号に続いて付与した「-」とそれに続く数字は、対応関係を識別するためのものである。なお、以下の説明においてそれぞれの画像を区別せずに表す場合には、「-」とそれに続く数字を示さずに表す。
【0028】
分割画像は、過去の放射線治療において患者の位置合わせに利用された1つの3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)から所定の大きさの範囲を切り出して分割したパッチ画像である。過去の放射線治療において患者の位置合わせに利用されたCT画像などには、そのときの放射線治療において患者の位置を合わせる(治療部位に治療ビームBを照射させる向きに患者を向かせる)際に着目した着目領域が含まれている。この着目領域は、過去の放射線において患者の位置合わせをする際に利用された実績のある領域である。分割画像は、この着目領域の特徴的な形状を含む所定の範囲を切り出した画像である。ここで、着目領域は、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が、過去の放射線治療において患者の位置合わせを行う際に着目する領域として指定した、例えば、患者の体内の骨などの像が写された領域である。なお、分割画像に含まれる着目領域は、現在の治療対象の患者Pに対して指定された領域であることに限定されるものではない。例えば、分割画像に含まれる着目領域は、過去に放射線治療において、例えば、放射線治療の実施者(医師など)がそのときの患者の位置合わせをするために指定した領域である。言い換えれば、分割画像に含まれる着目領域は、同じ治療部位の放射線治療を行うために指定された領域ではあるものの、不特定の複数の患者に対して指定された領域である。
【0029】
有効領域画像は、対応する分割画像に含まれる着目領域のうち、これから行う放射線治療において患者の位置合わせを行う際に有効に利用することができる着目領域を、有効領域として示した画像である。このため、有効領域画像は、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が過去の放射線治療において指定した着目領域のうち、一部の着目領域のみが有効領域として示されていてもよい。
【0030】
ここで、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciの一例について説明する。
図3は、第1の実施形態の医用画像処理装置100が参照する比較用画像Ciの一例を示す図である。
図3には、患者Pの顔の範囲内に治療ビームBを照射する治療部位がある疾患に対応した比較用画像Ciの一例を示している。なお、
図3に示したCT画像は、患者の頭部の骨(頭蓋骨)のイメージ図である。
【0031】
図3に示した比較用画像Ciの一例では、患者の頭部の骨(頭蓋骨(イメージ図))に対応する5つの分割画像(分割画像Di-11~分割画像Di-15)と、5つの有効領域画像(有効領域画像Ei-11~有効領域画像Ei-15)とが組になっている。なお、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciは、上述したように3次元の画像であっても、2次元の画像であってもよいが、
図3では、説明を容易にするため、2次元の比較用画像Ciの一例を示している。
【0032】
上述したように、それぞれの分割画像Diは、過去の放射線治療において患者の位置合わせに利用された1つの3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)から、特徴的な形状を含む着目領域を所定の範囲で切り出した画像である。
図3には、頭蓋骨の外周の曲線部分や、目や鼻の部分を特徴的な形状として含む分割画像Diの一例を示している。また、上述したように、それぞれの有効領域画像Eiは、対応する分割画像Diに含まれる特徴的な形状が、放射線治療において患者の位置合わせを行う際に有効に利用することができる有効領域として示されている。
図3には、頭蓋骨の骨の部分を、有効領域Eaとしている有効領域画像Eiの一例を示している。なお、有効領域画像Eiにおける有効領域Eaは、
図3に示したような骨の部分のみではなく、例えば、骨がある部分と骨のない部分との境界の形状(
図3では、頭蓋骨の骨と、外周の曲線や目、鼻の境界部分の形状)を、有効領域としてもよい。このように、医用画像処理装置100に収集されている比較用画像Ciは、分割画像Diと有効領域画像Eiとが対になった画像の組である。このため、分割画像Diと有効領域画像Eiとには、組であることを表すための同じ情報(例えば、同じ識別情報(ID))が付与されていてもよい。
【0033】
なお、上述したように、有効領域画像Eiに示される有効領域Eaは、分割画像Diに含まれる着目領域の一部のみであってもよい。
図3に示した一例では、例えば、有効領域画像Ei-13や有効領域画像Ei-14が、分割画像Diに含まれる着目領域の一部のみが有効領域Eaとして示された有効領域画像Eiの一例である。有効領域画像Ei-13や有効領域画像Ei-14では、顎の部分の骨を有効領域Eaから除外している。これは、患者の顎の部分は、撮影するときの口の開き方によって形状が変化する関節部分を含み、患者の位置合わせには必ずしも有効な部位とはならないことが考えられるからである。なお、例えば、放射線治療の治療部位が骨とともに動くような疾患である場合など、関節部分の骨も有効領域であると考えられる場合には、関節部分の骨も有効領域として有効領域画像Eiに示されてもよい。このことから、比較用画像Ciは、上述したように、治療部位ごとに収集する分割画像Diと有効領域画像Eiとの構成や数が異なる。なお、例えば、分割画像Diに、患者を固定するための固定治具が写されている場合もある。この場合、有効領域画像Eiでは、治療部位の違いによらずに、固定治具を有効領域から除外する。これは、固定治具は現在の患者の姿勢を固定する治具であり、過去の放射線治療のときと同じ姿勢に固定することはできないと考える方が適切であるからである。
【0034】
このように、比較用画像データベース110には、過去の放射線治療において患者の位置合わせに利用された1つの3次元ボリューム画像から特徴的な形状を含む着目領域を所定の範囲で切り出した分割画像Diと、この分割画像Diに対応する有効領域画像Eiとの画像の組が、治療部位ごとにまとめられて収集されている。
図4は、第1の実施形態の医用画像処理装置が参照する比較用画像の別の一例を示す図である。
図4には、患者の腰の範囲内に治療ビームBを照射する治療部位がある疾患に対応した比較用画像Ciの一例を示している。なお、
図4に示したCT画像は、被写体をより認識しやすくするため、背景の色を白色にしている。
【0035】
図4に示した比較用画像Ciの一例では、患者の骨盤の骨に対応する2つの分割画像(分割画像Di-21および分割画像Di-22)と、2つの有効領域画像(有効領域画像Ei-21および有効領域画像Ei-22)とが組になっている。また、
図4に示した比較用画像Ciの一例では、患者の足の骨に対応する2つの分割画像(分割画像Di-23および分割画像Di-24)と、2つの有効領域画像(有効領域画像Ei-23および有効領域画像Ei-24)とが組になっている。また、
図4に示した比較用画像Ciの一例では、患者の尾てい骨に対応する1つの分割画像Di-25と、1つの有効領域画像Ei-25とが組になっている。また、
図4には、患者の体以外の部分の比較用画像Ciの一例として、治療台10の構造部分に対応する1つの分割画像Di-26と、1つの有効領域画像Ei-26とが組になっている。なお、
図4においても、説明を容易にするため、2次元の比較用画像Ciの一例を示している。
【0036】
図4に示した一例では、分割画像Di-21と分割画像Di-23とは、同じ分割画像Diである。また、
図4に示した一例では、分割画像Di-22と分割画像Di-24とは、同じ分割画像Diである。しかし、対応するそれぞれの有効領域画像Eiには、異なる有効領域Eaが示されている。これは、放射線治療による治療部位の違いや、上述したように形状が変化する関節部分を含んでいるか否かなど、種々の条件に応じて有効領域画像Eiを選択するようにするためである。
図4に示した分割画像Di-21と分割画像Di-23とのそれぞれに対応する有効領域画像Ei-21と有効領域画像Ei-23とは、有効領域Eaが骨盤の骨であるか足の骨であるかの違いに従って異なる有効領域画像Eiとして生成されている。同様に、
図4に示した分割画像Di-22と分割画像Di-24とのそれぞれに対応する有効領域画像Ei-22と有効領域画像Ei-24とも、有効領域Eaが骨盤の骨であるか足の骨であるかの違いに従って異なる有効領域画像Eiとして生成されている。これは、骨盤と足の骨との位置や角度の関係は、治療する際の患者の姿勢や撮影する際の患者の姿勢などによって、必ず同じ関係になるとは限らないからである。
【0037】
なお、
図4に示した患者の尾てい骨に対応する分割画像Di-25と有効領域画像Ei-25との組は、例えば、有効領域Eaが骨盤の骨である場合や足の骨である場合のいずれの場合においても、同時に利用することができる。
【0038】
また、
図4には、有効領域Eaから除外する患者の体以外の構造の部分の一例として、治療台10の一部が分割画像Di-26に含まれる場合の一例を示している。上述したように、患者の体以外の部分は、治療部位の違いによらずに有効領域Eaから除外する。このため、分割画像Di-26に対応する有効領域画像Ei-26には、有効領域Eaが示されていない。このように、有効領域から除外する部分が分割画像Diに写されている場合でも、有効領域画像Eiに有効領域Eaとして示さないことによって、患者の位置合わせを行う際に利用しない領域(言い換えれば、無効領域)を除外することができる。
【0039】
図2に戻り、医用画像処理装置100は、比較部101と位置決め領域決定部102とを備える。
【0040】
比較部101は、第1画像取得部50により出力された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)と、比較用画像データベース110に収集されたそれぞれの比較用画像Ci(より具体的には、分割画像Di)とを比較する。このとき、比較部101は、治療部位に対応する比較用画像Ciの画像群を選択し、選択した画像群に含まれる分割画像DiとCT画像とを比較する。比較部101が比較する比較用画像Ciの画像群を選択するための情報は、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを操作して治療部位の情報を入力してもよいし、CT画像に治療部位の情報が含まれていてもよい。比較部101は、例えば、CT画像と比較用画像Ciとのそれぞれの画像を構成する画素における輝度の二乗誤差を計算することにより、CT画像と比較用画像Ciとを比較する。なお、比較部101におけるCT画像と比較用画像Ciとの比較の方法は、二乗誤差を計算する方法に限定されない。比較部101は、CT画像と比較用画像Ciとを比較した結果、CT画像内のいずれかの位置に類似する分割画像Di(例えば、CT画像との類似度が所定値以上の分割画像Di)を選択する。比較部101は、比較した結果を表す情報を位置決め領域決定部102に出力する。比較部101は、比較結果の情報として、選択した分割画像Diを表す情報(例えば、分割画像Diに付与した識別情報(ID))と、分割画像Diが類似するCT画像内の位置の情報とを、位置決め領域決定部102に出力する。また、比較部101は、CT画像と分割画像Diとの類似度の情報を、比較結果の情報に含めて位置決め領域決定部102に出力してもよい。なお、CT画像に類似する分割画像Diが複数ある場合、比較部101は、それぞれの分割画像Diに対応する比較結果の情報を位置決め領域決定部102に出力する。
【0041】
位置決め領域決定部102は、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて、CT画像内に含まれる有効領域の範囲を位置決め領域として決定する。位置決め領域決定部102は、比較部101が選択した分割画像Diに対応する有効領域画像Eiに示された有効領域Eaを抽出し、抽出した有効領域EaをCT画像内に割り当てることによって、CT画像内に含まれる有効領域Eaの範囲を位置決め領域として決定する。なお、比較部101により出力された比較結果の情報に複数の分割画像Diに類似することが示されている場合、位置決め領域決定部102は、それぞれの分割画像Diに対応する有効領域画像Eiに示された有効領域Eaの範囲を結合し、結合した有効領域Eaの範囲をCT画像における位置決め領域の範囲として決定する。このとき、それぞれの有効領域画像Eiに示しされた有効領域Eaに重複する範囲がある場合、位置決め領域決定部102は、いずれか1つの有効領域画像Eiに示された有効領域Eaのみを用いて位置決め領域を決定してもよい。また、位置決め領域決定部102は、重複するそれぞれの有効領域Eaの範囲を平均して位置決め領域を決定してもよい。また、位置決め領域決定部102は、比較部101により出力された比較結果の情報に含まれる類似度の情報に基づいて、重複するそれぞれの有効領域Eaの範囲を加重平均して位置決め領域を決定してもよい。また、位置決め領域決定部102は、重複するそれぞれの有効領域Eaの範囲の最頻値を採用して位置決め領域を決定してもよい。位置決め領域決定部102は、決定したCT画像内の位置決め領域の範囲を表す情報を、位置決め部70に出力する。また、位置決め領域決定部102は、CT画像と、決定したCT画像内の位置決め領域とを、表示制御部80に出力する。
【0042】
このような構成によって、医用画像処理装置100では、比較部101によってCT画像と分割画像Diとを比較し、位置決め領域決定部102によってCT画像内の位置決め領域を決定する。これにより、医用画像処理装置100では、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを操作して患者Pの位置合わせを行う際に着目する領域を指定することなく、過去の放射線治療において同じ治療部位を治療した患者の位置合わせに利用した着目領域と同様の位置決め領域を、自動で設定することができる。このことにより、医用画像処理装置100を含む医用装置では、位置決め部70によって決定した位置に、放射線治療において治療を行う患者Pの方向を向けさせる、つまり、治療ビームBを照射するために好適な方向に患者Pを向けさせることができる。
【0043】
次に、治療システム1の動作の概略について説明する。
図5は、第1の実施形態の治療システム1における動作の流れを示すフローチャートである。なお、以下の説明においては、事前にCT装置によって患者Pの撮影がされており、CT画像(3次元ボリューム画像)が用意されているものとする。また、治療システム1には、これから放射線治療を行う患者Pの治療部位の情報が入力されているものとする。つまり、医用画像処理装置100(より具体的には、比較部101)は、比較用画像データベース110に収集されているいずれの比較用画像Ciの画像群を選択するのかがすでに入力されているものとする。
【0044】
治療システム1が動作を開始すると、第1画像取得部50は、CT画像を取得する(ステップS100)。そして、第1画像取得部50は、取得したCT画像を、位置決め部70および医用画像処理装置100が備える比較部101に出力する。
【0045】
続いて、比較部101は、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、比較用画像データベース110に収集された治療部位のそれぞれの分割画像Diとを比較する(ステップS101)。そして、比較部101は、比較結果の情報を位置決め領域決定部102に出力する。
【0046】
続いて、位置決め領域決定部102は、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて、CT画像に対する位置決め領域を決定する(ステップS102)。そして、位置決め領域決定部102は、CT画像に対して決定した位置決め領域の範囲を表す情報を、位置決め部70に出力する。
【0047】
ここで、比較部101によるCT画像と分割画像Diとの比較(ステップS101)と、位置決め領域決定部102によるCT画像に対する位置決め領域の決定(ステップS102)の処理の動作例について説明する。
図6は、第1の実施形態の医用画像処理装置100が備える比較部101および位置決め領域決定部102の動作の一例を模式的に示す図である。
図6の上側には、比較用画像データベース110に比較用画像Ciが収集されている状態を示している。また、
図6の下側の左側には、比較部101によるCT画像と分割画像Diとの比較の動作例を模式的に示している。また、
図6の下側の中央および右側には、位置決め領域決定部102によるCT画像に対する位置決め領域の決定(CT画像への有効領域の割り当て)の動作例を模式的に示している。以下の説明においては、
図6の上側に示したように、
図3に示したような患者の頭部の骨(頭蓋骨(イメージ図))に対応する比較用画像Ciが比較用画像データベース110に収集されているものとする。
【0048】
ステップS101において、比較部101は、まず、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciの画像群を選択する。そして、比較部101は、第1画像取得部50により出力されたCT画像内で、選択した画像群に含まれるそれぞれの分割画像Diに類似する位置を探索する。比較部101における分割画像Diに類似する位置の探索では、分割画像DiをCT画像内で順次移動させながら、それぞれの位置で分割画像DiとCT画像との類似度を求め、求めた類似度が所定値以上の位置を、分割画像Diに類似するCT画像内の位置とする。
図6の下側の左側に示した動作例では、CT画像内で分割画像Di-15を走査(ラスタスキャン)するように順次移動させ、それぞれの位置で分割画像Di-15とCT画像との類似度を求めることにより、分割画像Di-15に類似するCT画像内の位置の探索している状態を示している。比較部101は、このような分割画像Diに類似する位置の探索を、選択した画像群に含まれる全ての分割画像Diに対して行い、類似するCT画像内の位置が得られた(類似度が所定値以上の位置がある)分割画像Diを表す情報と、得られたCT画像内の位置の情報とを対応付け、比較結果の情報として位置決め領域決定部102に出力する。
【0049】
なお、ステップS101において比較部101がCT画像と分割画像Diとを比較する方法は、
図6の下側の左側に示したような、選択した分割画像DiをCT画像内で順次移動させながら類似度を求める方法に限定されない。例えば、CT画像から分割画像Diと同じ大きさの範囲をラスタスキャンするように順次切り出し、切り出した範囲の画像と選択した画像群に含まれるそれぞれの分割画像Diとを比較する方法であってもよい。言い換えれば、分割画像Diに類似するCT画像内の位置を探索する
図6の下側の左側に示した動作例とは逆に、CT画像内の所定の位置に類似する分割画像Diを探索する方法であってもよい。
【0050】
その後、ステップS102において、位置決め領域決定部102は、まず、比較部101により出力された比較結果の情報に示されている分割画像Diに対応する有効領域画像Eiを、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciの画像群の中から選択して取得する。そして、位置決め領域決定部102は、取得したそれぞれの有効領域画像Eiに示された有効領域を抽出してCT画像内に割り当てる。
図6の下側の中央に示した動作例では、比較部101により出力された比較結果の情報に示されている分割画像Di-11~分割画像Di-15のそれぞれに対応する有効領域画像Ei-11~有効領域画像Ei-15を取得して、それぞれの有効領域画像Eiに示された有効領域EaをCT画像内に割り当てている状態を示している。位置決め領域決定部102は、このようにCT画像内に割り当てた有効領域Eaの範囲を位置決め領域として決定し、決定した位置決め領域の範囲を表す情報を、位置決め部70に出力する。
【0051】
なお、
図3や
図6では、患者の頭部の骨(頭蓋骨(イメージ図))に対応する5つの比較用画像Ciが比較用画像データベース110に収集されている場合を示したが、上述したように、比較用画像データベース110には、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が、過去の放射線治療において患者の位置合わせを行う際に着目する領域として指定した有効領域を示す比較用画像Ciが収集される。このため、例えば、比較用画像データベース110に収集された比較用画像Ciの数が増えてくるなどによって、
図6の下側の右側に示したように、有効領域Eaが、CT画像内に写されている患者Pの頭蓋骨の全体に割り当てられる可能性もある。この場合、位置決め領域決定部102は、CT画像内に写されている患者Pの頭蓋骨の全体の範囲を位置決め領域として決定し、頭蓋骨の全体の範囲が位置決め領域の範囲であることを表す情報を、位置決め部70に出力することになる。
【0052】
図5に戻り、続いて、第2画像取得部60は、それぞれの放射線検出器30により出力された現在の患者Pの体内のX線透視画像を取得する(ステップS103)。そして、第2画像取得部60は、取得したX線透視画像を、位置決め部70に出力する。
【0053】
続いて、位置決め部70は、位置決め領域決定部102により出力された位置決め領域の範囲を表す情報に基づいて、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、第2画像取得部60により出力されたX線透視画像とを照合し、患者Pの位置を決定する(ステップS104)。さらに、位置決め部70は、決定した患者Pの位置に治療台10を移動させるための移動量を求める。そして、位置決め部70は、求めた治療台10の移動量の情報を寝台制御部11に出力する。
【0054】
続いて、寝台制御部11は、位置決め部70により出力された移動量の情報に基づいて治療台10を移動させる(ステップS105)。これにより、治療台10に固定されている現在の患者Pの位置が、放射線治療を行うのに好適な位置に移動される。
【0055】
上述したように、医用画像処理装置100では、比較用画像データベース110に収集された比較用画像Ciを参照して、第1画像取得部50により出力されたCT画像に対して患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定し、決定した位置決め領域の範囲を表す情報を位置決め部70に出力する。より具体的には、医用画像処理装置100では、比較部101が、第1画像取得部50により出力されたCT画像と比較用画像データベース110に収集された比較用画像Ciを構成する分割画像Diとを比較する。そして、医用画像処理装置100では、位置決め領域決定部102が、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて、CT画像内に比較用画像Ciを構成する有効領域画像Eiが示す有効領域Eaを割り当てて患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定し、決定した位置決め領域の範囲を表す情報を位置決め部70に出力する。これにより、医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1では、例えば、放射線治療の計画段階において撮影したCT画像に患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域が定められていない場合でも、放射線治療を行う治療段階において、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が位置決め領域を指定することなく、自動で位置決め領域を設定することができる。言い換えれば、医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1では、過去の放射線において患者の位置合わせをする際に利用された実績のある位置決め領域を自動で設定することができる。
【0056】
また、医用画像処理装置100を含む医用装置では、位置決め部70が、位置決め領域決定部102により出力された位置決め領域の範囲を表す情報に基づいて、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、第2画像取得部60により出力されたX線透視画像とを照合し、患者Pの位置を決定する。そして、位置決め部70は、決定した患者Pの位置に基づいて治療台10の移動量を求め、求めた治療台10の移動量の情報を寝台制御部11に出力する。これにより、医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1では、治療台10に固定されている患者Pの現在の位置を、放射線治療を行うのに好適な位置に移動させることができる。このように、医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1では、放射線治療における患者Pの位置決めを、高精度に行うことができる。
【0057】
なお、上述した説明では、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciが、過去の放射線治療において患者の位置合わせに利用された1つの3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)から所定の大きさの範囲を切り出して分割したパッチ画像である場合について説明した。言い換えれば、分割画像Diが3次元のパッチ画像である場合について説明した。しかし、分割画像Diは、3次元のパッチ画像に限定されない。例えば、分割画像Diは、1つの3次元ボリューム画像から所定の角度の全体の範囲を切り出した2次元のパッチ画像や、1枚の2次元の画像そのものであってもよい。この場合、比較部101は、同様に、CT画像との類似度が所定値以上の2次元の分割画像Diを選択し、選択した2次元の分割画像Diを表す情報(例えば、分割画像Diに付与した識別情報(ID))を、比較結果の情報として位置決め領域決定部102に出力する。なお、比較部101は、最も類似度が高い1枚の2次元の分割画像Diを選択し、選択した最も類似度が高い1枚の2次元の分割画像Diに付与した識別情報(ID)を、比較結果の情報として位置決め領域決定部102に出力してもよい。この場合、位置決め領域決定部102は、比較部101が選択した2次元の分割画像Diに対応する2次元の有効領域画像Eiに示された有効領域Eaの範囲をそのまま、決定したCT画像内の位置決め領域の範囲を表す情報として位置決め部70に出力してもよい。
【0058】
なお、治療システム1では、放射線源20と放射線検出器30との位置が固定されているため、放射線源20と放射線検出器30との組によって構成される撮影装置が撮影する方向(治療室の固定座標系に対する相対方向)が固定されている。しかし、治療システム1では、
図1に示したように、異なる2つ方向から患者PのX線透視画像を撮影する。つまり、治療システム1において撮影する患者PのX線透視画像は、3次元の画像である。このため、位置決め部70が患者Pの位置を決定するために行うCT画像とX線透視画像との照合は、3次元の画像同士の照合となる。この場合、位置決め部70は、例えば、CT画像を並進および回転のパラメータで移動させることにより、CT画像とX線透視画像との間の誤差が最も小さくなる位置を、放射線治療を行うのに好適な患者Pの位置に決定する。このとき、位置決め部70は、位置決め領域決定部102により出力された位置決め領域の範囲を表す情報に基づいて、CT画像内の有効領域Eaと有効領域Ea以外の領域とで誤差の重みを変えて、有効領域Eaを患者Pの位置の決定に用いてもよい。また、位置決め部70は、CT画像とX線透視画像とのそれぞれの画像の相互情報量などを用いて、放射線治療を行うのに好適な患者Pの位置を決定してもよい。
【0059】
また、上述したように、治療システム1では、位置決め部70が患者Pの位置を決定する際に照合する画像がCT画像とX線透視画像である場合、つまり、異なる撮影装置(モダリティ)によって撮影された画像である場合について説明した。しかし、位置決め部70が患者Pの位置を決定する際に照合する画像が、同じ撮影装置(モダリティ)によって撮影された画像であることも考えられる。この場合、位置決め部70は、それぞれの画像を構成する画素の残差二乗和や、残差の絶対値の和、正規化相互相関などを用いて、画像間の誤差が最も小さくなる位置を、放射線治療を行うのに好適な患者Pの位置を決定してもよい。
【0060】
また、上述したように、治療システム1では、位置決め部70が、CT画像とX線透視画像との3次元の画像同士を照合して患者Pの位置を決定する場合について説明した。しかし、位置決め部70が患者Pの位置を決定する際に照合する画像が、異なる次元の画像であることも考えられる。例えば、治療システム1において放射線源20と放射線検出器30との組が1組である場合、X線透視画像は2次元の画像となる。この場合、位置決め部70は、CT画像とX線透視画像との間の誤差を計算する際に、CT画像をX線透視画像のジオメトリ情報に従って2次元の画像に射影することにより、2次元の画像同士で照合を行ってもよい。この場合、位置決め部70は、位置決め領域決定部102により出力された位置決め領域の範囲(つまり、有効領域Eaの範囲)も同様にジオメトリ情報に従って2次元の画像に射影する。これにより、位置決め部70は、上述した3次元の画像同士を照合する場合と同様に、CT画像内の有効領域Eaと有効領域Ea以外の領域とで誤差の重みを変えて、有効領域Eaを患者Pの位置の決定に用いることができる。このとき、位置決め部70は、2次元の画像に射影したCT画像と2次元のX線透視画像とを照合する際の類似尺度も、上述した3次元の画像同士を照合する場合の類似尺度と同様のものを使用することができる。「ジオメトリ情報」とは、治療システム1が設置された3次元空間内において3次元座標を定義した場合において、放射線源20と放射線検出器30との位置を3軸の座標値で表すことができる情報である。このジオメトリ情報を用いることによって、所定の3次元座標内の任意の位置に位置する患者Pの位置を、放射線源20から照射された放射線rが患者Pの体内を通過して放射線検出器30に到達したときの位置から求めることができる。なお、ジオメトリ情報は、治療システム1を設置するときに設計された放射線源20および放射線検出器30の設置位置から得ることができる。また、ジオメトリ情報は、3次元計測器などによって計測した放射線源20および放射線検出器30の設置位置から得ることもできる。
【0061】
なお、位置決め部70は、CT画像を移動させてCT画像の位置をX線透視画像の位置に合わせることにより、放射線治療を行うのに好適な患者Pの位置を決定する。しかしながら、実際の放射線治療では、放射線治療の計画段階においてCT画像に対して事前に定めた照射方向から患者Pの治療部位に治療ビームBを照射させる。このため、位置決め部70が求める治療台10の移動量は、CT画像の位置をX線透視画像の位置に合わせるために移動したCT画像の移動量および方向から逆算して求めるものである。言い換えれば、位置決め部70が求める治療台10の移動量は、それぞれの放射線検出器30が、計画段階において撮影したCT画像と同じX線透視画像を撮影することができるように、治療台10に固定されている患者Pを移動させるために必要な移動量である。
【0062】
上記説明したように、医用画像処理装置100は、患者Pを撮影した第1画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))と、過去の放射線治療において使用された画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))であって、放射線治療における位置合わせに利用された有効領域Eaが指定された比較用画像Ciとを比較する比較部101と、比較部101による比較結果に基づいて、第1画像内に含まれる有効領域Eaに類似する位置決め領域を決定する位置決め領域決定部102と、を備える。
【0063】
また、上記説明したように、医用画像処理装置100において、比較用画像Ciは、過去の放射線治療において収集され、過去の放射線治療において用いられた1つの透視画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))が所定の大きさに分割された分割画像Diのうち一部が有効領域Eaとして指定されたものを、複数含み、位置決め領域決定部102は、複数の比較用画像Ciのそれぞれについて、第1画像内で有効領域Eaと類似する箇所を抽出し、複数の比較用画像Ciのそれぞれについて抽出した箇所を結合して位置決め領域を決定してもよい。
【0064】
また、上記説明したように、医用画像処理装置100において、比較用画像Ciは複数用意され、それぞれの比較用画像Ciが過去の放射線治療において治療した治療部位ごとに複数の画像群にまとめられており、比較部101は、患者Pの治療部位に応じて、第1画像と比較する比較用画像Ciの画像群を選択してもよい。
【0065】
また、上記説明したように、医用画像処理装置100において、第1画像は、DRR画像であってもよい。
【0066】
また、上記説明したように、医用装置は、患者Pを撮影した第1画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))を取得する第1画像取得部50と、照射した放射線rを放射線検出器30によって検出して画像化する撮影装置から、第1画像の取得時とは異なる時刻に患者Pに照射した放射線rに応じた第2画像(X線透視画像)を取得する第2画像取得部60と、医用画像処理装置100と、第1画像とX線透視画像とを用い、位置決め領域に基づいて、放射線治療を行う際の患者Pの位置を決める位置決め部70と、を備えてもよい。
【0067】
また、上記説明したように、医用装置は、第1画像に位置決め領域を重畳した画像を表示装置81に表示させる表示制御部80、をさらに備えてもよい。
【0068】
また、上記説明したように、治療システム1は、医用装置と、患者Pの治療部位に治療ビームBを照射する治療ビーム照射門40と、位置決め部70によって決められた位置に合うように患者Pが固定された治療台10の位置の移動量を制御する寝台制御部11と、を備えてもよい。
【0069】
また、医用画像処理装置100は、CPU、GPUなどのプロセッサや、LSI、ASIC、FPGAなどのハードウェア、専用のLSIなどによって実現され、ROMやRAM、HDD、フラッシュメモリなどの記憶装置を備え、患者Pを撮影した第1画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))と、過去の放射線治療において使用させた画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))であって、放射線治療における位置合わせに利用された有効領域Eaが指定された比較用画像Ciとを比較する比較部101と、比較部101による比較結果に基づいて、第1画像内に含まれる有効領域Eaに類似する位置決め領域を決定する位置決め領域決定部102と、を備える医用画像処理装置100として前記プロセッサを機能させるための医用画像処理プログラムが前記記憶装置に記憶された装置であってもよい。
【0070】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムの構成は、
図1に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1の構成において、医用画像処理装置100が第2の実施形態の医用画像処理装置(以下、「医用画像処理装置200」という)に代わった構成である。以下の説明においては、医用画像処理装置200を含む医用装置を備えた治療システムを、「治療システム2」という。
【0071】
なお、以下の説明においては、医用画像処理装置200を含む医用装置を備えた治療システム2の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明を省略する。そして、以下の説明においては、第1の実施形態の医用画像処理装置100と異なる構成要素である医用画像処理装置200の構成、動作、および処理についてのみを説明する。
【0072】
治療システム2では、第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、表示制御部80と、医用画像処理装置200とを合わせたものが、特許請求の範囲における「医用装置」の一例である。なお、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサと、プログラム(ソフトウェア)を記憶した記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)とを備え、プロセッサがプログラムを実行することによりそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。また、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)などによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。また、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、HDD、フラッシュメモリなどの治療システム2に備えた記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が治療システム2に備えたドライブ装置に装着されることで、治療システム2に備えた記憶装置にインストールされてもよい。また、プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワークを介して予めダウンロードされて、治療システム2に備えた記憶装置にインストールされてもよい。
【0073】
医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、比較用画像データベース110に収集された比較用画像を参照し、第1画像取得部50により出力されたCT画像に対して、患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定する。医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、決定した位置決め領域の情報を位置決め部70に出力する。また、医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、決定した位置決め領域の情報とを、表示制御部80に出力する。
【0074】
図7は、第2の実施形態の医用装置および医用画像処理装置200の概略構成を示すブロック図である。
図7には、
図2に示した第1の実施形態の医用装置および医用画像処理装置100の概略構成と同様に、医用装置を構成する第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、医用画像処理装置200とのそれぞれの接続関係を示している。また、
図7には、
図2に示した第1の実施形態の医用装置および医用画像処理装置100の概略構成と同様に、医用画像処理装置200を含む医用装置に関係する比較用画像データベース110および寝台制御部11との接続関係も併せて示している。なお、
図7でも、
図2に示した第1の実施形態の医用装置および医用画像処理装置100の概略構成と同様に、医用装置を構成する表示制御部80とその他の構成要素(より具体的には、医用画像処理装置200)との接続関係は省略している。
【0075】
医用画像処理装置200は、比較部101と、位置決め領域決定部102と、患者向き補正部203とを備える。医用画像処理装置200は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に患者向き補正部203が追加された構成である。
【0076】
比較部101は、第1画像取得部50により出力された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)の代わりに、患者向き補正部203により出力された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)と、比較用画像データベース110に収集されたそれぞれの比較用画像Ci(より具体的には、分割画像Di)とを比較する。比較部101の動作や処理は、分割画像Diと比較するCT画像が異なるのみで、第1の実施形態の医用画像処理装置100が備える比較部101と同様である。また、位置決め領域決定部102は、第1の実施形態の医用画像処理装置100が備える位置決め領域決定部102と同様である。従って、比較部101および位置決め領域決定部102の動作や処理に関する詳細な説明を省略する。
【0077】
患者向き補正部203は、第1画像取得部50により出力された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)の向きを補正する。患者向き補正部203は、CT画像に写された患者Pの像の向きが、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciに表された患者Pの像の向きに合うように、第1画像取得部50により出力されたCT画像の向きを補正する。患者向き補正部203は、例えば、画像の対称性の評価や、CT画像に写されている被写体像のパターンマッチングなどの処理をすることによって、CT画像の向きを補正する。なお、患者向き補正部203におけるCT画像の向きの補正方法は、画像の対称性の評価や被写体像のパターンマッチングによる方法に限定されない。患者向き補正部203は、向きを補正した後のCT画像を比較部101に出力する。
【0078】
(画像の対称性の評価によるCT画像の向きの補正方法の一例)
ここで、患者向き補正部203における画像の対称性の評価によるCT画像の向きの補正方法の一例について説明する。患者向き補正部203は、人体は左右対称に近い形状であるものとしてCT画像の向きを補正する。言い換えれば、患者向き補正部203は、患者Pの体軸方向の傾きが0度に近いほどCT画像に写された患者Pの像が左右対称になると考えて、CT画像の向きを補正する。このため、患者向き補正部203は、CT画像に写された患者Pの像の対称性を評価し、評価結果に基づいてCT画像の向きを補正する。この方法は、比較用画像Ciに写されている患者Pの向きが左右対称である場合に採用することができる。
【0079】
図8は、第2の実施形態の医用画像処理装置200が備える患者向き補正部203における画像の対称性の評価によるCT画像の向きの補正の考え方を示す図である。
図8には、CT画像に写された患者Pの頭部の骨(頭蓋骨)の顎の部分の向きとCT画像の左右対称度合いの一例を示している。なお、
図8に示したCT画像は、被写体をより認識しやすくするため、背景の色を白色にしている。
図8の左側には、患者Pの頭部の骨の向きが左右対称ではない場合の一例を示し、
図8の右側には、患者Pの頭部の骨の向きが左右対称である場合の一例を示している。なお、以下の説明においては、比較用画像データベース110に収集されている比較用画像Ciに写されている患者Pの像は、画像の上側が患者Pの前方であるものとする。
【0080】
CT画像の左右対称度合いは、例えば、患者Pの中心線CLを基準として左右に同じ距離だけ離れている位置にある画素の値(画素値)を評価する(比較する)ことによって求めることができる。これは、患者Pの向きが左右対称であれば、中心線CLを基準として左右に同じ距離だけ離れている位置にあるそれぞれの画素の画素値は、近い値になるからである。言い換えれば、中心線CLを基準として左右に同じ距離だけ離れている位置にあるそれぞれの画素の画素値の差が小さいほど、CT画像に写されている患者Pの像は左右対称であると言えるからである。例えば、
図8の左側のCT画像では、写されている患者Pの頭部の骨の向きが左右対称ではないため、中心線CLの左側に位置する画素PL1の画素値と、中心線CLの右側に位置する画素PR1の画素値との差が大きい。また、同様に、
図8の左側のCT画像では、中心線CLの左側に位置する画素PL2の画素値と、中心線CLの右側に位置する画素PR2の画素値との差も大きい。
【0081】
このため、患者向き補正部203は、中心線CLを基準として左右に同じ距離だけ離れている位置にあるそれぞれの画素の画素値の差が所定値以下の小さな値となるようにCT画像の全体を回転させて、CT画像の向きを補正する。これにより、例えば、
図8の右側のCT画像のように、写されている患者Pの頭部の骨の向きが左右対称となる。
図8の右側のCT画像では、写されている患者Pの頭部の骨の向きが左右対称であるため、中心線CLの左側に位置する画素PL1の画素値と、中心線CLの右側に位置する画素PR1の画素値との差は小さい。また、同様に、
図8の右側のCT画像では、中心線CLの左側に位置する画素PL2の画素値と、中心線CLの右側に位置する画素PR2の画素値との差も小さい。
【0082】
このように、患者向き補正部203は、CT画像に写されている患者Pの像において中心線CLを基準として左右に同じ距離だけ離れている位置にあるそれぞれの画素の画素値を比較することによって、CT画像の向きを補正する。以下に、この場合における患者向き補正部203の処理の一例について説明する。
【0083】
図9は、第2の実施形態の医用画像処理装置200が備える患者向き補正部203によるCT画像の向き補正の処理の一例を模式的に示す図である。
図9には、患者向き補正部203によるCT画像の向き補正処理の手順の流れを順に示している。なお、
図9に示したそれぞれの画像は、被写体をより認識しやすくするため、背景の色を白色にしている。
【0084】
(手順P-1):患者向き補正部203は、第1画像取得部50により出力されたCT画像を取得する。
図9の手順P-1には、患者向き補正部203が、患者Pの頭部の骨(頭蓋骨)の顎の部分の向きが左右対称ではない補正前のCT画像(3次元ボリューム画像)を取得した状態を示している。
【0085】
(手順P-2):患者向き補正部203は、取得したCT画像から、CT画像に写された患者Pの像の対称性(左右対称度合い)を評価するための1枚の画像を抽出する。この対称性を評価するための1枚の画像は、例えば、CT画像の中心位置を切り出すことによって抽出することができる。以下、患者向き補正部203がCT画像の中心位置を切り出すことによって抽出した1枚の画像を、「切り出し画像」という。
図9の手順P-2には、患者向き補正部203が抽出した切り出し画像の一例を示している。
【0086】
(手順P-3):患者向き補正部203は、切り出し画像を所定の角度の範囲内で回転させながら、対称性を評価する評価処理をする。
図9の手順P-3には、-40度~40度の角度の範囲内で切り出し画像を回転させながら評価処理をしている状態を示している。患者向き補正部203は、手順P-3における評価処理によって、最も左右対称であると考えられる(左右対称度合いが高い)角度を判定する。言い換えれば、CT画像の向きを補正するための角度を判定する。
【0087】
(手順P-4):患者向き補正部203は、手順P-3における評価処理によって判定した角度にCT画像の全体を回転させて、CT画像の向きを補正する。
図9の手順P-4には、手順P-1において取得したCT画像(3次元ボリューム画像)の全体を手順P-3において判定した角度に回転させた補正後のCT画像の一例を示している。
【0088】
患者向き補正部203は、このような手順の流れで、第1画像取得部50により出力されたCT画像(補正前)の向きを補正し、補正した後のCT画像(補正後)を比較部101に出力する。これにより、医用画像処理装置200では、比較部101が、患者向き補正部203により向きが補正されたCT画像と分割画像Diとを比較し、位置決め領域決定部102が、患者向き補正部203により向きが補正されたCT画像に対して位置決め領域を決定する。
【0089】
なお、
図9に示した患者向き補正部203によるCT画像の向き補正処理の手順の流れでは、CT画像から切り出し画像を1枚切り出してCT画像の向きを補正する角度を判定する場合を示した。しかし、CT画像の向きを補正する角度を判定するためにCT画像から切り出す切り出し画像の枚数は、1枚に限定されるものではなく、複数枚の切り出し画像をCT画像から切り出して、CT画像の向きを補正する角度を判定してもよい。この場合、それぞれの切り出し画像に対する評価処理によって判定した角度を統合することによって、より高精度にCT画像の向きを補正することができる。
【0090】
ここで、
図9に示した手順P-3における評価処理(左右対称度合いの評価方法)について説明する。
図8に示したように、CT画像に写されている患者Pの像の中心線CLを基準として左右に同じ距離だけ離れている位置にあるそれぞれの画素の画素値を比較することによってCT画像の左右対称度合いを評価する場合、基準とする中心線CLを定める必要がある。しかしながら、放射線治療の計画段階においてCT画像に写される患者Pは、必ずしもCT画像の中心位置に写されるとは限らない。このため、評価処理をする前に、患者Pの中心位置を推定したり、位置不変性のある評価値を用いたりすることによって、患者Pの中心位置を定める必要がある。
【0091】
患者Pの中心位置を推定する方法としては、例えば、患者Pの中心付近の画像パターンを予め機械学習させておいた識別器を用いる方法がある。この方法の場合、補正前のCT画像を構成するそれぞれの画素の位置から切り出した画像パターンを識別器に入力し、識別器の出力が最大となった位置を、患者Pの中心位置として推定することができる。これにより、患者向き補正部203は、推定した中心位置に基づいて定めた中心線CLを基準としてそれぞれの画素の画素値を比較して、CT画像に写された患者Pの像の対称性(左右対称度合い)を評価することができる。
【0092】
位置不変性のある評価値を用いる方法としては、例えば、CT画像に対してフーリエ変換を行い、周波数空間の振幅値を利用する方法がある。この方法の場合、位置不変性のある評価値を用いる方法としては、例えば、CT画像に対してフーリエ変換を行い、その結果を利用する方法がある。この方法の場合、フーリエ変換して得られた周波数空間の振幅値を位置不変性のある評価値として用いて、患者Pの中心位置を定めることができる。例えば、画像I(x,y)のフーリエ変換をF(u,v)とすると、画像I(x,y)が画像の中心で線対称であった場合には、フーリエ変換F(u,v)も中心で線対称となる。このことから、振幅値は、下式(1)で表される。
【0093】
【0094】
上式(1)で表される振幅値は、画像が平行移動した場合においても、周波数領域で位相がずれるのみで振幅は変化しないため常に成り立つ。このことから、患者向き補正部203は、周波数領域の振幅値の対称性を評価することによって、CT画像内の患者Pが写されている位置によらずに、CT画像に写された患者Pの像の対称性(左右対称度合い)を評価することができる。
【0095】
(被写体像のパターンマッチングによるCT画像の向きの補正方法の一例)
次に、患者向き補正部203における被写体像のパターンマッチングによるCT画像の向きの補正方法の一例について説明する。被写体像のパターンマッチングによってCT画像の向きを補正する場合、予め患者の向きを揃えた画像を複数枚用意する。ここで、用意する画像は、不特定の複数の患者の画像であってもよい。また、予め用意したそれぞれの画像を学習画像として画像パターンを学習した識別器を準備する。ここで準備する識別器には、正解の画像パターンと非正解の画像パターンとの2クラスの学習をさせる。このとき、例えば、学習画像をランダムに移動や回転をさせて任意の画像パターンを生成する。そして、初期値からのずれ量が少ない画像パターンを正解の画像パターンとして識別器を学習させる。一方、初期値からのずれ量が多い画像パターンを非正解の画像パターンとして識別器を学習させる。
【0096】
患者向き補正部203は、患者Pの向きを推定する際に、第1画像取得部50により出力されたCT画像の位置や向きを変えながら画像パターンを切り出して識別器に入力し、識別器の判定結果に基づいて、CT画像に写されている患者Pの向きを推定する。そして、患者向き補正部203は、識別器の判定結果が正解の画像パターンである場合に、この画像パターンをCT画像から切り出した位置や向きに、CT画像の向きを補正する。
【0097】
このように、患者向き補正部203は、予め画像パターンを学習した識別器を用いてパターンマッチングすることによって、CT画像の向きを補正する。
【0098】
次に、治療システム2の動作の概略について説明する。
図10は、第2の実施形態の治療システム2おける動作の流れを示すフローチャートである。
図10に示した治療システム2のフローチャートでは、
図5に示した第1の実施形態の治療システム1のフローチャートにおけるステップS101とステップS102との間に、ステップS200が挿入されている。言い換えれば、治療システム2では、ステップS200以外の処理は、第1の実施形態の治療システム1の処理と同様である。
【0099】
治療システム2が動作を開始すると、第1画像取得部50は、CT画像を取得する(ステップS100)。そして、第1画像取得部50は、取得したCT画像を、位置決め部70および医用画像処理装置200が備える患者向き補正部203に出力する。
【0100】
続いて、患者向き補正部203は、第1画像取得部50により出力されたCT画像の向きを補正する(ステップS200)。そして、患者向き補正部203は、補正後のCT画像を比較部101に出力する。
【0101】
以降、
図5に示した第1の実施形態の治療システム1のフローチャートと同様に、比較部101が、患者向き補正部203により出力された補正後のCT画像と分割画像Diとを比較し(ステップS101)、位置決め領域決定部102が補正後のCT画像に対する位置決め領域を決定する(ステップS102)。そして、
図5に示した第1の実施形態の治療システム1のフローチャートと同様に、第2画像取得部60がX線透視画像を取得し(ステップS103)、位置決め部70が患者Pの位置を決定して治療台10の移動量を求め(ステップS104)、寝台制御部11が位置決め部70により出力された移動量の情報に基づいて治療台10を移動させる(ステップS105)。これにより、治療台10に固定されている現在の患者Pの位置が、放射線治療を行うのに好適な位置に移動される。
【0102】
上述したように、医用画像処理装置200では、患者向き補正部203によってCT画像の向きを補正した後、比較部101によって補正後のCT画像と分割画像Diとを比較し、位置決め領域決定部102によってCT画像内の位置決め領域を決定する。これにより、医用画像処理装置200でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを操作して患者Pの位置合わせを行う際に着目する領域を指定することなく、過去の放射線治療において同じ治療部位を治療した患者の位置合わせに利用した着目領域と同様の位置決め領域を、自動で設定することができる。しかも、医用画像処理装置200では、患者向き補正部203によって3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)CT画像に写された患者Pの像の向きが、分割画像Diに表された患者Pの像の向きに合うように補正しているため、第1の実施形態の医用画像処理装置100よりもより高精度に位置決め領域を設定することができる。このことにより、医用画像処理装置200を含む医用装置では、位置決め部70によって決定した位置に、放射線治療において治療を行う患者Pの方向を向けさせる、つまり、治療ビームBを照射するために好適な方向に患者Pを向けさせることができる。このように、医用画像処理装置200を含む医用装置を備えた治療システム2では、放射線治療における患者Pの位置決めを、高精度に行うことができる。
【0103】
なお、上述した説明では、患者向き補正部203が、CT画像の全体を回転させてCT画像の向きを補正する場合について説明した。しかし、患者向き補正部203によるCT画像の補正は、CT画像の全体に限定されない。例えば、患者向き補正部203は、CT画像に写されている被写体像のみ、つまり、患者Pのみの向きを補正してもよい。
【0104】
上記説明したように、医用画像処理装置200において、第1画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))に写された患者Pの向きが、比較用画像Ciに表された患者Pの向きに合うように第1画像の向きを補正する患者向き補正部203、をさらに備え、比較部101は、患者向き補正部203により向きが補正された第1画像と比較用画像Ciとを比較してもよい。
【0105】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムの構成は、
図1に示した第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1の構成において、医用画像処理装置100が第3の実施形態の医用画像処理装置(以下、「医用画像処理装置300」という)に代わった構成である。以下の説明においては、医用画像処理装置300を含む医用装置を備えた治療システムを、「治療システム3」という。
【0106】
なお、以下の説明においては、医用画像処理装置300を含む医用装置を備えた治療システム3の構成要素において、第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1の構成要素と同様の構成要素には、同一の符号を付与し、それぞれの構成要素に関する詳細な説明を省略する。そして、以下の説明においては、第1の実施形態の医用画像処理装置100と異なる構成要素である医用画像処理装置300の構成、動作、および処理についてのみを説明する。
【0107】
治療システム3では、第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、表示制御部80と、医用画像処理装置300とを合わせたものが、特許請求の範囲における「医用装置」の一例である。なお、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、例えば、CPUなどのハードウェアプロセッサと、プログラム(ソフトウェア)を記憶した記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)とを備え、プロセッサがプログラムを実行することによりそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。また、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)などによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。また、医用装置に備えた構成要素の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによってそれぞれの構成要素の機能が実現されてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、HDD、フラッシュメモリなどの治療システム3に備えた記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が治療システム3に備えたドライブ装置に装着されることで、治療システム3に備えた記憶装置にインストールされてもよい。また、プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワークを介して予めダウンロードされて、治療システム3に備えた記憶装置にインストールされてもよい。
【0108】
医用画像処理装置300は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、比較用画像データベース110に収集された比較用画像を参照し、第1画像取得部50により出力されたCT画像に対して、患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定する。このとき、医用画像処理装置300は、放射線治療において照射させる治療ビームBの飛程を考慮して、患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定する。医用画像処理装置300は、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、決定した位置決め領域の情報を位置決め部70に出力する。また、医用画像処理装置300は、治療ビームBの飛程を考慮した場合により優先的に患者Pの位置合わせに利用する着目領域を確認するための画像を生成して表示制御部80に出力する。
【0109】
図11は、第3の実施形態の医用装置および医用画像処理装置300の概略構成を示すブロック図である。
図11には、医用装置を構成する第1画像取得部50と、第2画像取得部60と、位置決め部70と、表示制御部80と、医用画像処理装置300とのそれぞれの接続関係を示している。また、
図11には、
図2に示した第1の実施形態の医用装置および医用画像処理装置100の概略構成と同様に、医用画像処理装置300を含む医用装置に関係する比較用画像データベース110および寝台制御部11との接続関係も併せて示している。なお、
図11では、医用装置を構成する第2画像取得部60とその他の構成要素(より具体的には、放射線検出器30)との接続関係、および表示制御部80とその他の構成要素(より具体的には、表示装置81)との接続関係は省略している。
【0110】
医用画像処理装置300は、比較部101と、位置決め領域決定部302と、飛程範囲抽出部304と、確認画像生成部305とを備える。医用画像処理装置300は、第1の実施形態の医用画像処理装置100に備えた位置決め領域決定部102が位置決め領域決定部302に代わり、飛程範囲抽出部304と確認画像生成部305とが追加された構成である。
【0111】
飛程範囲抽出部304は、第1画像取得部50により出力された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)、および治療計画情報(治療計画の段階において事前に定めた情報)から治療ビームBの到達距離である飛程の情報を取得し、患者Pの位置合わせにおいて飛程を考慮した場合に優先的に利用する所定の範囲を抽出する。飛程範囲抽出部304は、例えば、CT画像に対して事前に定めた治療部位の位置、治療ビームBの照射方向、および照射強度などの情報に基づいて、治療ビームBの飛程の情報を取得する。飛程範囲抽出部304は、取得した治療ビームBの飛程の情報に基づいて、治療ビームBを中心とした周囲の所定距離の範囲を、治療ビームBの飛程まで抽出する。以下の説明においては、飛程範囲抽出部304が抽出する飛程の範囲を、「飛程範囲」という。例えば、治療ビームBの飛程が1つの経路であるとすると、飛程範囲抽出部304は、治療ビームBを中心とした飛程までの長さの円柱の範囲を、飛程範囲として抽出する。飛程範囲抽出部304は、抽出した飛程範囲の情報を、位置決め領域決定部302に出力する。
【0112】
位置決め領域決定部302は、第1の実施形態の医用画像処理装置100が備える位置決め領域決定部102と同様に、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて、CT画像内に含まれる有効領域の範囲を位置決め領域として決定する。さらに、位置決め領域決定部302は、飛程範囲抽出部304により出力された飛程範囲の情報に基づいて、決定した位置決め領域の範囲内で患者Pの位置合わせに優先的に利用する有効領域の範囲を優先位置決め領域として決定する。言い換えれば、位置決め領域決定部302は、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて決定した有効領域のうち、治療ビームBにおける飛程までの経路上に存在する、患者Pの位置合わせにおいて有効な領域の範囲を優先位置決め領域として決定する。このとき、位置決め領域決定部302は、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて決定した有効領域から飛程範囲内の有効領域を選択し、選択した有効領域の範囲を優先位置決め領域として決定する。ここで決定される優先位置決め領域は、位置決め領域のうち、治療部位から治療ビーム照射門40の側、つまり、手前側に存在する有効領域の範囲となる。言い換えれば、優先位置決め領域は、治療ビームBの飛程よりも奥側、つまり治療ビームBが届かない位置にあるため、患者Pの位置合わせにおいて必ずしも合わせる必要がない有効領域を除いた範囲となる。
【0113】
なお、位置決め領域決定部302における優先位置決め領域の決定方法は、上述したように、位置決め領域を決定した後に、飛程範囲内に含まれる有効領域の範囲を選択し、選択した有効領域の範囲を優先位置決め領域として決定する方法に限定されない。例えば、位置決め領域決定部302は、有効領域の範囲を位置決め領域として決定するときの方法と同様の考え方で、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて、飛程範囲抽出部304により出力された飛程範囲内に含まれる有効領域の範囲を優先位置決め領域として決定してもよい。または、飛程範囲内に絞って比較部101における比較結果の情報を計算してもよい。これにより、比較部101における計算時間を短縮する効果が期待できる。
【0114】
位置決め領域決定部302は、決定したCT画像内の位置決め領域の範囲を表す情報、および決定した優先位置決め領域の範囲を表す情報を、位置決め部70に出力する。
【0115】
これにより、位置決め部70は、位置決め領域決定部302により出力された優先位置決め領域の範囲を表す情報に基づいて、より高精度に放射線治療を行うのにより好適な患者Pの位置を決定することができる。例えば、X線透視画像では、治療部位の手前側にある骨も奥側にある骨も同様に撮影される。つまり、X線透視画像では、奥行き方向の骨の位置を判別することが容易ではない状態で撮影される。このような状態のX線透視画像であっても、位置決め部70は、優先位置決め領域の範囲を表す情報に基づいて、X線透視画像において治療ビームBの飛程よりも奥側の骨の有効領域を患者Pの位置合わせに利用する有効領域から除いて、患者Pの位置を決定することができる。
【0116】
なお、位置決め領域決定部302は、決定したCT画像内の優先位置決め領域の範囲を表す情報のみを、位置決め部70に出力してもよい。この場合、位置決め部70は、位置決め領域決定部302により出力された優先位置決め領域の範囲を表す情報を、第1の実施形態の医用画像処理装置100が備える位置決め領域決定部102により出力された位置決め領域の範囲を表す情報として用いることにより、放射線治療を行うのにより好適な患者Pの位置を決定することができる。さらに、この場合には、位置決め領域決定部302は優先位置決め領域のみを決定すればよいため、位置決め領域を決定する処理の高速化を図ったり、処理の負荷を抑えたりすることができる。
【0117】
また、位置決め領域決定部302は、決定したCT画像内の優先位置決め領域を、確認画像生成部305に出力する。
【0118】
確認画像生成部305は、第1画像取得部50により出力された3次元ボリューム画像(例えば、CT画像)内に、位置決め領域決定部302により出力された優先位置決め領域を強調させて重畳した確認画像を生成する。確認画像生成部305は、生成した確認画像を表示制御部80に出力する。これにより、表示制御部80は、確認画像生成部305により出力された確認画像を、表示装置81に表示させる。
【0119】
なお、医用画像処理装置300において位置決め領域決定部302は、第1の実施形態の医用画像処理装置100が備える位置決め領域決定部102と同様に、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、決定したCT画像内の位置決め領域の情報および優先位置決め領域の情報とを、表示制御部80に出力してもよい。この場合、表示制御部80は、確認画像を生成して表示装置81に表示させる構成にすることもできるようになる。この構成の場合、医用画像処理装置300は、確認画像生成部305を備えない構成にすることもできる。
【0120】
(確認画像の一例)
ここで、確認画像生成部305が生成する確認画像の一例について説明する。
図12は、第3の実施形態の医用画像処理装置300が備える確認画像生成部305が生成する確認画像の一例を示す図である。
図12には、CT画像に写された患者Pの頭部の骨(頭蓋骨)の範囲の中に、位置決め領域決定部302が決定した優先位置決め領域の範囲を表す画像の一例を示している。なお、
図12に示したCT画像は、被写体をより認識しやすくするため、背景の色を白色にしている。
【0121】
確認画像生成部305は、CT画像内の優先位置決め領域の領域を強調する(目立たせる)ことにより、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が、患者Pの位置合わせにおいて飛程を考慮した場合に優先的に利用する着目領域を目視で確認することができる確認画像を生成する。例えば、確認画像生成部305は、優先位置決め領域の領域を他の位置決め領域とは異なる色にすることによって強調する部分を目立たせた確認画像を生成する。
【0122】
図12には、CT画像内に写されている患者Pの頭蓋骨の全体に有効領域Eaが割り当てられた場合(例えば、
図6の下側の右側を参照)において、患者Pの顔の正面から治療ビームBを所定の範囲に照射する(つまり、スキャニング照射する)ときに位置合わせに利用する優先位置決め領域PEaを強調させている(目立たせている)確認画像(CT画像)の一例を示している。
図12に示した確認画像(CT画像)の一例では、治療部位から治療ビーム照射門40の側(手前側)の優先位置決め領域PEaの色を、治療部位から奥側の有効領域Eaと異なる色(例えば、有効領域Eaを青色、優先位置決め領域PEaを赤色など)にすることによって強調させている(目立たせている)。確認画像生成部305は、このような確認画像を生成して表示制御部80に出力することにより、表示制御部80が確認画像を表示装置81に表示させる。これにより、例えば、放射線治療の実施者(医師など)は、有効領域Ea内の優先位置決め領域PEaをより明確に、目視で確認することができる。
【0123】
なお、CT画像に有効領域Eaや優先位置決め領域PEaを示した確認画像は、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを操作することによって回転させることもできる。これにより、例えば、放射線治療の実施者(医師など)は、確認画像を回転させて様々な角度から有効領域Eaおよび優先位置決め領域PEaを確認することができる。
【0124】
(確認画像の別の一例)
図13は、第3の実施形態の医用画像処理装置300が備える確認画像生成部305が生成する確認画像の別の一例を示す図である。
図13には、CT画像から再構成されたそれぞれのDRR画像に写された患者Pの頭部の骨(頭蓋骨)の範囲の中に、位置決め領域決定部302が決定した優先位置決め領域PEaの範囲を表す画像の一例を示している。なお、
図13に示したDRR画像は、被写体をより認識しやすくするため、背景の色を白色にしている。
【0125】
例えば、放射線治療の実施者(医師など)が患者Pの位置合わせにおいて確認する画像は、2つの放射線検出器30のそれぞれにより出力された、治療台10に現在固定されている患者Pの体内のX線透視画像であることも考えられる。この場合、確認画像生成部305は、例えば、2つの放射線源20のそれぞれに対応して再構成したそれぞれのDRR画像を生成し、生成したそれぞれのDRR画像上に優先位置決め領域PEaを示した確認画像を生成する。この場合も、確認画像生成部305は、例えば、それぞれのDRR画像内の優先位置決め領域PEaの領域を有効領域Eaとは異なる色にすることによって、それぞれのDRR画像において強調する部分を目立たせた確認画像を生成する。
【0126】
図13には、CT画像内に写されている患者Pの頭蓋骨の全体に有効領域Eaが割り当てられた場合において再構成したそれぞれのDRR画像に、患者Pの顔の正面から治療ビームBを所定の範囲にスキャニング照射するときに位置合わせに利用する優先位置決め領域PEaを強調させている(目立たせている)確認画像(DRR画像)の一例を示している。
図13の左側のDRR画像は、例えば、治療システム1において放射線源20-1と放射線検出器30-1との組によって構成される撮影装置が撮影するX線透視画像に対応する確認画像(DRR画像)の一例である。また、
図13の右側のDRR画像は、例えば、治療システム1において放射線源20-2と放射線検出器30-2との組によって構成される撮影装置が撮影するX線透視画像に対応する確認画像(DRR画像)の一例である。
図13に示したそれぞれの確認画像(DRR画像)の一例では、治療部位から治療ビーム照射門40の側(手前側)の優先位置決め領域PEaの色を、治療部位から奥側の有効領域Eaと異なる色(例えば、有効領域Eaを青色、優先位置決め領域PEaを赤色など)にすることによって強調させている(目立たせている)。確認画像生成部305は、このようなそれぞれの確認画像を生成して表示制御部80に出力することにより、表示制御部80がそれぞれの確認画像を表示装置81に表示させる。これにより、例えば、放射線治療の実施者(医師など)は、治療台10に現在固定されている患者Pの体内のX線透視画像と、対応するそれぞれの確認画像(DRR画像)を比較して、確認画像(DRR画像)に示された有効領域Ea内の優先位置決め領域PEaをより明確に、目視で確認することができる。また、確認画像(DRR画像)は、CT画像内の優先位置決め領域PEaのみに基づいて作成してもよい。これにより、優先位置決め領域PEaを明確にしつつ、従来の放射線治療と同様に、X線透視画像とDRR画像とのモノクロの画像同士の比較を行うことができる。
【0127】
次に、治療システム3の動作の概略について説明する。
図14は、第3の実施形態の治療システムにおける動作の流れを示すフローチャートである。
図14に示した治療システム3のフローチャートには、
図5に示した第1の実施形態の治療システム1のフローチャートにおける処理と同様の処理を含んでいる。従って、以下の説明においては、治療システム3の動作において、第1の実施形態の治療システム1における処理と同様の処理に関する詳細な説明を省略する。
【0128】
治療システム3が動作を開始すると、第1画像取得部50は、CT画像を取得する(ステップS100)。そして、第1画像取得部50は、取得したCT画像を、位置決め部70および医用画像処理装置300が備える比較部101、飛程範囲抽出部304、および確認画像生成部305に出力する。
【0129】
続いて、飛程範囲抽出部304は、第1画像取得部50により出力されたCT画像から治療ビームBの飛程の情報を取得し、飛程範囲を抽出する(ステップS300)。そして、飛程範囲抽出部304は、抽出した飛程範囲の情報を位置決め領域決定部302に出力する。
【0130】
続いて、比較部101は、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、比較用画像データベース110に収集された治療部位のそれぞれの分割画像Diとを比較する(ステップS101)。そして、比較部101は、比較結果の情報を位置決め領域決定部102に出力する。なお、比較部101におけるステップS101の処理は、飛程範囲抽出部304におけるステップS300の処理と同時(並列)に実行されてもよい。また、比較部101におけるステップS101の処理と、飛程範囲抽出部304におけるステップS300の処理とは、逆の順番で実行されてもよい。
【0131】
続いて、位置決め領域決定部302は、比較部101により出力された比較結果の情報に基づいて、CT画像に対する位置決め領域を決定する。さらに、位置決め領域決定部302は、飛程範囲抽出部304により出力された飛程範囲の情報に基づいて、飛程範囲の優先位置決め領域を決定する(ステップS302)。そして、位置決め領域決定部302は、CT画像に対して決定した位置決め領域の範囲を表す情報および優先位置決め領域の範囲を表す情報を、位置決め部70に出力する。
【0132】
続いて、第2画像取得部60は、それぞれの放射線検出器30により出力された現在の患者Pの体内のX線透視画像を取得する(ステップS103)。そして、第2画像取得部60は、取得したX線透視画像を、位置決め部70に出力する。
【0133】
続いて、確認画像生成部305は、第1画像取得部50により出力されたCT画像内に、位置決め領域決定部302により出力された優先位置決め領域を強調させて重畳した確認画像を生成する(ステップS303)。そして、確認画像生成部305は、生成した確認画像を表示制御部80に出力する。これにより、表示制御部80は、確認画像生成部305により出力された確認画像を、表示装置81に表示させる。
【0134】
続いて、位置決め部70は、位置決め領域決定部302により出力された優先位置決め領域の範囲を表す情報に基づいて、第1画像取得部50により出力されたCT画像と、第2画像取得部60により出力されたX線透視画像とを照合し、患者Pの位置を決定する(ステップS304)。さらに、位置決め部70は、決定した患者Pの位置に治療台10を移動させるための移動量を求める。そして、位置決め部70は、求めた治療台10の移動量の情報を寝台制御部11に出力する。なお、位置決め部70におけるステップS304の処理は、確認画像生成部305におけるステップS303の処理と同時(並列)に実行されてもよい。
【0135】
続いて、寝台制御部11は、位置決め部70により出力された移動量の情報に基づいて治療台10を移動させる(ステップS105)。これにより、治療台10に固定されている現在の患者Pの位置が、優先位置決め領域に基づいて決定された、放射線治療を行うのに好適な位置に移動される。
【0136】
上述したように、医用画像処理装置300でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、比較用画像データベース110に収集された比較用画像Ciを参照して、第1画像取得部50により出力されたCT画像に対して患者Pの位置合わせに利用するための位置決め領域を決定する。さらに、医用画像処理装置300では、CT画像から治療ビームBの飛程の情報を取得して飛程範囲を抽出し、決定した位置決め領域内の優先位置決め領域を決定する。そして、医用画像処理装置300では、決定した位置決め領域の範囲を表す情報と優先位置決め領域の範囲を表す情報とを、位置決め部70に出力する。これにより、医用画像処理装置300でも、第1の実施形態の医用画像処理装置100と同様に、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が操作部(不図示)などのユーザーインターフェースを操作して患者Pの位置合わせを行う際に着目する領域を指定することなく、過去の放射線治療において同じ治療部位を治療した患者の位置合わせに利用した着目領域と同様の位置決め領域を、自動で設定することができる。しかも、医用画像処理装置300では、飛程範囲抽出部304が、CT画像から飛程範囲を抽出し、位置決め領域決定部302が、患者Pの位置合わせにおいてより優先的に利用する飛程を考慮した優先位置決め領域を決定するため、第1の実施形態の医用画像処理装置100よりもより有効な位置決め領域(放射線治療において重点的に位置合わせをする必要がある優先位置決め領域)を設定することができる。
このことにより、医用画像処理装置300を含む医用装置では、位置決め部70によって決定した位置に、放射線治療において治療を行う患者Pの方向を向けさせる、つまり、治療ビームBを照射するためにより好適な方向に患者Pを向けさせることができる。このように、医用画像処理装置300を含む医用装置を備えた治療システム3では、放射線治療における患者Pの位置決めを、より高精度に行うことができる。
【0137】
さらに、医用画像処理装置300では、確認画像生成部305が、CT画像に優先位置決め領域を強調させて重畳した確認画像を生成する。このことにより、医用画像処理装置300を含む医用装置では、患者Pの位置合わせにおいて飛程を考慮した場合に優先的に利用する着目領域を、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が、より明確に目視で確認することができる。
【0138】
なお、上述した説明では、第1の実施形態の医用画像処理装置100を医用画像処理装置300に代える構成について説明した。言い換えれば、第1の実施形態の医用画像処理装置100を含む医用装置を備えた治療システム1に医用画像処理装置300を適用する構成について説明した。しかし、医用画像処理装置300は、上述した第1の実施形態の医用画像処理装置100に代える構成に限定されない。例えば、医用画像処理装置300は、第2の実施形態の医用画像処理装置200に代える構成であってもよい。この場合、医用画像処理装置300が備える飛程範囲抽出部304は、患者向き補正部203により向きが補正されたCT画像から治療ビームBの飛程の情報を取得して飛程範囲を抽出し、確認画像生成部305は、患者向き補正部203により向きが補正されたCT画像内に、飛程範囲抽出部304により出力された優先位置決め領域を示した確認画像を生成する。
【0139】
上記説明したように、医用画像処理装置300において、第1画像(3次元ボリューム画像(例えば、CT画像))から放射線治療において照射する放射線rの飛程の情報を取得し、第1画像内で取得した飛程を含む所定の飛程範囲を抽出する飛程範囲抽出部304、をさらに備え、位置決め領域決定部302は、飛程を含む所定の飛程範囲内で、第1画像内に含まれる有効領域Eaに類似する第2の位置決め領域(優先位置決め領域)を決定してもよい。
【0140】
また、上記説明したように、医用画像処理装置300において、第1画像に優先位置決め領域の範囲を強調させて重畳した確認画像を生成する確認画像生成部305、をさらに備えてもよい。
【0141】
上記に述べたとおり、各実施形態の医用画像処理装置では、比較部と位置決め領域決定部との構成によって、比較用画像データベースに収集された比較用画像を参照して、3次元ボリューム画像に対して患者の位置合わせに利用するための位置決め領域を決定する。これにより、各実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置では、医用画像処理装置により出力された位置決め領域に基づいて3次元ボリューム画像とX線透視画像とを照合し、放射線治療を行うのに好適な位置に治療台を移動させるための移動量を求めることができる。そして、各実施形態の医用画像処理装置を含む医用装置を備えた治療システムでは、放射線治療をする際に、高精度に患者の位置決めをすることができる。
【0142】
なお、上述したそれぞれの実施形態では、比較用画像データベースに収集されている比較用画像(分割画像や有効領域画像)が、3次元の画像である場合について説明した。この場合の有効領域画像に示される有効領域は、上述したように、例えば、放射線治療の実施者(医師など)が、過去の放射線治療において3次元ボリューム画像に対して指定した着目領域である。しかし、治療システムには、例えば、放射線治療の実施者(医師など)がDRR画像に対して着目領域を指定する構成のものある。この場合の比較用画像は、2次元の画像となる。そして、有効領域画像に示される有効領域も2次元の領域となる。しかし、指定された着目領域が2次元の領域である場合でも、DRR画像の元となる画像の撮影条件、例えば、撮影装置が画像を撮影したときの撮影方向などがわかれば、2次元の着目領域に基づいて3次元の有効領域を構成して有効領域画像に示すことができる。これにより、上述したそれぞれの実施形態の医用画像処理装置は、上述したそれぞれの実施形態と同様に位置決め領域を決定し、放射線治療を行うのに好適な位置に治療台を移動させるための移動量を求めることができる。なお、DRR画像の視点を増やす、言い換えれば、DRR画像の元となる画像を撮影する撮影方向を増やしてDRR画像の枚数を増やすことによって、2次元の着目領域に基づいて3次元の有効領域を構成する際の精度が向上する。このため、1つの3次元の分割画像に対して2次元の有効領域が示された複数の有効領域画像を組にして比較用画像を構成し、比較用画像データベースに収集しておくこともできる。言い換えれば、比較用画像データベースには、上述したそれぞれの実施形態で説明した3次元の分割画像と3次元の有効領域画像とを組にした分割画像のみではなく、3次元の分割画像と2次元の有効領域画像とを組にした分割画像を収集しておくこともできる。
【0143】
上記実施形態で説明した医用画像処理装置において用いられる医用画像処理プログラムは、コンピュータを、患者を撮影した第1画像と、過去の放射線治療において使用させた画像であって、放射線治療における位置合わせに利用された有効領域が指定された比較用画像とを比較する比較部と、比較部による比較結果に基づいて、第1画像内に含まれる有効領域に類似する位置決め領域を決定する位置決め領域決定部と、を備える医用画像処理装置として機能させるための医用画像処理プログラムである。
【0144】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、患者(P)を撮影した3次元ボリューム画像(CT画像)と、過去の放射線治療において使用された3次元ボリューム画像(CT画像)であって、放射線治療における位置合わせに利用された有効領域(Ea)が指定された比較用画像(Ci)とを比較する比較部(101)と、比較部(101)による比較結果に基づいて、3次元ボリューム画像(CT画像)内に含まれる有効領域(Ea)に類似する位置決め領域を決定する位置決め領域決定部(102)と、を持つことにより、高精度に患者(P)の位置決めをすることができる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0146】
1,2・・・治療システム
10・・・治療台
11・・・寝台制御部
20,20-1,20-2・・・放射線源
30,30-1,30-2・・・放射線検出器
40・・・治療ビーム照射門
50・・・第1画像取得部
60・・・第2画像取得部
70・・・位置決め部
80・・・表示制御部
81・・・表示装置
100,200,300・・・医用画像処理装置
101・・・比較部
102,302・・・位置決め領域決定部
110・・・比較用画像データベース
203・・・患者向き補正部
304・・・飛程範囲抽出部
305・・・確認画像生成部