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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B25J3/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020067075
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021160061
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高西 淳夫
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-198865(JP,A)
【文献】特開平10-217159(JP,A)
【文献】特開2006-167845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の遠隔操作により所定の部位が動作可能となる機構を有する被操作体と、前記操作者の身体の動作状況を検出する動作検出装置と、前記操作者に刺激を提示するように動作する刺激提示装置と、前記被操作体及び前記刺激提示装置の動作制御を行う制御装置とを備えた遠隔操作システムにおいて、
前記被操作体は、人体の腕部、体幹部、及び脚部に対応する部位を含む人体模擬形状をなし、前記脚部に対応する部位には、起立状態で所定の接地面に接地する足部が設けられ、
前記刺激提示装置は、前記足部の接地により前記足部が受ける反力となる接地圧の複数の作用部位に対応する前記操作者の足裏の複数の部位に、前記各作用部位の接地圧の大きさに応じた足裏力覚情報として圧力刺激を付与することで、前記操作者が前記接地面の傾斜や凹凸による前記被操作体の不安定な状態と同様な状態になるように動作制御され、
前記被操作体は、前記圧力刺激の提示後に、前記動作検出装置の検出結果から、前記操作者が安定した姿勢を採るために腕部や体幹部を動かしながらバランスを保持する動作を模倣するように、これら腕部や体幹部に対応する部位が動作制御されることを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
操作者の遠隔操作により所定の部位が動作可能となる機構を有する被操作体と、前記操作者の身体の動作状況を検出する動作検出装置と、前記操作者に刺激を提示するように動作する刺激提示装置と、前記被操作体及び前記刺激提示装置の動作制御を行う制御装置とを備えた遠隔操作システムにおいて、
前記被操作体は、人体の腕部、体幹部、及び脚部に対応する部位を含む人体模擬形状をなし、前記脚部に対応する部位には、起立状態で所定の接地面に接地する足部が設けられ、当該足部は、前記足部の接地により受ける反力となる接地圧を検出可能な接地圧検出部を含み、
前記刺激提示装置は、前記足部における前記接地圧の複数の作用部位に対応する前記操作者の足裏の複数の部位に対する押圧力の変化により、足裏力覚情報として当該足裏に圧力刺激を提示可能に設けられ、
前記制御装置は、前記接地圧検出部での検出結果により、前記接地圧に基づく前記押圧力で前記足裏の複数の部位を押圧するように前記刺激提示装置を動作制御する足裏押圧制御部と、前記圧力刺激を受けた後での前記操作者による腕部や体幹部の動作に追従させるように、前記動作検出装置の検出結果に基づいて前記被操作体での対応部位の動作制御を行うスレーブ側動作制御部とを備え
前記足裏押圧制御部では、前記操作者が前記接地面の傾斜や凹凸による前記被操作体の不安定な状態と同様な状態になるように前記刺激提示装置を動作制御し、
前記スレーブ側動作制御部では、前記圧力刺激の提示後に、前記操作者が安定した姿勢を採るために腕部や体幹部を動かしながらバランスを保持する動作を模倣するように前記被操作体を動作制御することを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項3】
前記足裏押圧制御部は、予め設定された前記操作者及び前記被操作体の重量差を考慮したスケーリングにより、前記足裏への目標押圧力を調整するスケーリング変換器と、当該目標押圧力で前記操作者の足裏を押圧するように前記刺激提示装置に動作指令するコントローラとを備えたことを特徴とする請求項2記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記スレーブ側動作制御部は、予め設定された前記操作者及び前記被操作体の体格差や重量差を考慮したスケーリングにより、前記操作者の動作量を前記被操作体の目標動作量に変換するスケーリング変換器と、前記目標動作量での動作を前記被操作体に実現させるように前記被操作体に動作指令するコントローラとを備えたことを特徴とする請求項2記載の遠隔操作システム。
【請求項5】
前記接地圧検出部は、前記足部の複数箇所に設けられ、
前記刺激提示装置は、前記接地圧検出部に対応した前記操作者の足裏の各部位を押圧可能となる複数箇所にそれぞれ配置された押圧機構を含むことを特徴とする請求項2記載の遠隔操作システム。
【請求項6】
前記押圧機構は、前記足裏押圧制御部での駆動制御により、前記押圧力を計測しながら所望の前記押圧力が得られるように昇降動作する与圧部を備えたことを特徴とする請求項5記載の遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタースレーブ方式の遠隔操作システムに係り、更に詳しくは、2足歩行型のロボット等の被操作体から離れた操作者が、被操作体の接地状況を感覚的に把握しながら、操作者の動作に追従させて被操作体を遠隔操作する遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、人間の動作に連動するロボットの操作システムが種々開発されている。例えば、特許文献1には、操作者の動作をそのままトレースして2足歩行型のロボットを直感的に動作させるマスタースレーブ方式の遠隔操作装置が開示されている。この遠隔操作装置により操作されるロボットは、当該操作に基づいて指定された足先位置に、その足先を移動させる際に、全身バランスを考慮した姿勢修正がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-97539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1のような従来の遠隔操作ロボットにあっては、次のような不都合を生じる。すなわち、作業時に予期せぬ接触や路面の凹凸等によりロボットが不安定になる場合、ロボット自身の動作制御により、自立的な安定動作を行うように作用する。ところが、人間のように、視覚、足裏感覚、前庭感覚、全身の体性感覚といった莫大な情報の高速処理ができないため、ロボットが予期しない接地状況によっては、人間よりも起立姿勢の安定性が低くなる。従って、予期しない不安定な接地環境下においては、人間に比べてロボットの方が転倒の可能性が高くなる。また、各種の接地状況に対応してロボットの起立姿勢を維持するように、ロボットを動作制御するためには、様々なデータを事前に取得し、ロボットに学習させることもあり得る。ところが、様々なケースに応じた膨大な学習用のデータが必要となり、精度向上に時間がかかり、硬さ、摩擦、形状等が様々な接地環境への対応には一定の限界がある。
【0005】
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、被操作体の起立姿勢を維持する自律制御のみでは得られ難い臨機応変で安定した高速動作を被操作体にさせることができる遠隔操作システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、操作者の遠隔操作により所定の部位が動作可能となる機構を有する被操作体と、前記操作者の身体の動作状況を検出する動作検出装置と、前記操作者に刺激を提示するように動作する刺激提示装置と、前記被操作体及び前記刺激提示装置の動作制御を行う制御装置とを備えた遠隔操作システムにおいて、前記被操作体は、人体の腕部、体幹部、及び脚部に対応する部位を含む人体模擬形状をなし、前記脚部に対応する部位には、起立状態で所定の接地面に接地する足部が設けられ、前記刺激提示装置は、前記足部の接地により前記足部が受ける反力となる接地圧の作用部位に対応する前記操作者の足裏の部位に、前記接地圧の大きさに応じた足裏力覚情報として圧力刺激を付与するように動作制御され、前記被操作体は、前記圧力刺激の提示後に、前記動作検出装置の検出結果から、前記操作者の腕部や体幹部の動作に追従するように、これら腕部や体幹部に対応する部位が動作制御される、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボット等の被操作体が操作者とは離れた環境から受ける接地情報が感覚的に操作者に提示され、当該感覚に対する操作者の反応動作を利用することで、被操作体の起立姿勢を維持する自律制御のみでは得られ難い臨機応変で安定した高速動作を被操作体にさせることが可能になる。すなわち、先ず、刺激提示装置により、2足歩行型のロボット等の被操作体の接地状況が操作者の足裏に足裏感覚情報として感覚的に提示される。これにより、被操作体が凹凸面や傾斜地等に接地して起立状態のバランスが崩れた際に、操作者は、自身の足裏に提示された足裏感覚情報を通じて、自身がバランスを保持するように動作することで、当該バランス保持動作を被操作体に模倣させることができる。つまり、操作者自身の運動によるバランス保持動作を被操作体の転倒回避動作として適用させることにより、被操作体は、従来の転倒防止のための自律制御に比べ、臨機応変に、安定した高速動作が可能となる。ここで、操作者側及び被操作者側の双方で単に取得されたデータをそのまま相互に伝送するのみならず、操作者及び被操作体の体格差や重量差を考慮したスケーリングによる調整を行うことも可能である。これにより、操作者は、あたかも自身が被操作体の起立場所にいるかのように、被操作体の接地状況をより正確に認識でき、操作者のバランス保持動作が被操作体のバランス保持動作により有用となるように、被操作体を操作可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る遠隔操作システムを表す概念図である。
図2】前記遠隔操作システムの動作制御に係る概略構成を表すブロック図である。
図3】前記遠隔操作システムを構成するロボットの左右の足部の概略底面図である。
図4】前記遠隔操作システムを構成する刺激提示装置の概略斜視図である。
図5】(A)、(B)は、前記刺激提示装置を構成する押圧機構をそれぞれ別の角度から見た概略拡大斜視図である。
図6】前記押圧機構の与圧部の概略拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1には、本実施形態に係る遠隔操作システムを表す概念図が示されており、図2には、前記遠隔操作システムの動作制御に係る概略構成を表すブロック図が示されている。これらの図において、前記遠隔操作システム10は、操作者Hの遠隔操作により所定の部位が動作可能となる機構を有する被操作体としてのロボット11と、操作者Hの身体の動作状況を検出する動作検出装置12と、操作者Hに刺激を提示するように動作する刺激提示装置13と、ロボット11及び刺激提示装置13の動作制御を行う制御装置14とを備えている。
【0011】
なお、以下のロボット11及び操作者H等に関する説明で、位置若しくは方向を示す「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、特に明記しない限り、ロボット11や操作者Hを正面から見た状態における「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を意味する。
【0012】
前記ロボット11は、特に限定されるものではないが、図1に示されるように、公知の構造からなる複数の可動部を有する多自由度の2足歩行型の人体模擬形状をなし、本実施形態では、人間よりも小さいスケールのアミューズメント用のロボットが用いられる。前記可動部としては、人体の腕部に対応する左右の腕部16と、これら腕部16に繋がるとともに、人体の体幹部に対応する中央の体幹部17と、体幹部17の下側部分に繋がるとともに、人体の脚部に対応する左右の脚部18とを含んで構成されている。
【0013】
前記各腕部16は、体幹部17の上側部分に対し、肩関節部分16Aを介して前後方向及び左右方向に回転可能に接続されている。また、これら左右の腕部16は、その途中部分で、人体の上腕部及び前腕部のような一方向の屈伸動作を可能にする肘関節部分16Bを有する。肩関節部分16A及び肘関節部分16Bには、それらの回転動作をさせるための駆動力を付与するサーボモータ等の腕駆動装置20及び肘駆動装置21(図2参照)が設けられている。
【0014】
前記体幹部17は、各腕部16が繋がる上部領域17Aと、各脚部18が繋がる下部領域17Bとの間を前後方向及び左右方向に相対回転可能に接続する接続部17Cを有する。接続部17Cには、前記相対回転動作をさせるための駆動力を付与するサーボモータ等の体幹駆動装置22(図2参照)が設けられている。
【0015】
前記左右の脚部18の先端側には、起立状態のロボット11が地面、床面、或いは路面(以下、「接地面」と称する)に接触(接地)する部分となるプレート状の足部18Aがそれぞれ設けられている。当該足部18Aは、接地により受ける接地面からの反力となる接地圧を検出可能な接地圧検出部24(図2参照)を有する。本実施形態において、接地圧検出部24は圧力センサからなり、各足部18Aの6箇所に埋設されている。つまり、本実施形態では、図3に示されるように、接地圧検出部24が、人体の足の親指に対応する領域A内の1箇所と、同母指球に対応する領域B内の1箇所と、同小指球に対応する領域C内の1箇所と、同踵に対応する領域D内の左右2箇所と、同小指球と同踵の間の領域E内の1箇所とに設けられている。なお、接地圧検出部24は、本実施形態での設置部分や設置数に限らず、種々の配置態様が可能であり、足部18Aの所定部位が受ける接地圧を検出できるものであれば、様々な構造のセンサ類等の機器やシステムを採用することができる。
【0016】
なお、その他のロボット11の構成については、本発明の本質に直接関係しないため、詳細な説明を省略する。
【0017】
前記動作検出装置12は、図1及び図2に示されるように、操作者Hの左右それぞれの腕部の位置情報及び姿勢情報を検出する腕動作検出部26と、操作者Hの体幹部の姿勢情報を検出する体幹動作検出部27とを含んで構成される。
【0018】
前記腕動作検出部26は、操作者Hの各腕部の先端側部分における直交3軸方向の3次元位置からなる位置情報と、同先端側部分における前後方向及び左右方向の回転角度からなる姿勢情報とを少なくとも計測可能なモーションセンサ及びその付属機器からなる。
【0019】
前記体幹動作検出部27は、操作者の体幹部における前後方向及び左右方向の回転角度からなる姿勢情報を少なくとも計測可能な公知のモーションセンサ及びその付属機器からなる。
【0020】
なお、前記動作検出装置12としては、前述した位置情報や姿勢情報を取得可能な限りにおいて、種々のセンサ、検出器、或いは検出システム等を採用することができる。
【0021】
前記刺激提示装置13は、足部18Aの接地によりロボット11が受ける反力となる接地圧の作用部位に対応する操作者Hの足裏の部位に、前記接地圧の大きさに応じた足裏力覚情報として、操作者Hの足裏に対する圧力刺激の提示を可能に構成されている。つまり、この刺激提示装置13は、ロボット11の足部18Aに取り付けられた各接地圧検出部24の設置位置、つまり、前記領域A~E内における前記6箇所に対応する操作者Hの足裏の部位を押圧可能に動作する。
【0022】
前記刺激提示装置13は、左右両足用として同一の構造のものが一対設けられ、それらの構成に関する以下の説明においては、一方について説明を行い、同一構造をなす他方についての説明は省略する。
【0023】
この刺激提示装置13は、図4に示されるように、接地面に設置され、中空部分を有する外枠29と、外枠29内の中空部分に配置され、操作者Hの足裏を押圧する押圧ユニット30とを備えている。
【0024】
前記外枠29には、押圧ユニット30の上方位置で、平面視方形状の外形を有するプレート32が固定されている。このプレート32の中央部分には、その上下方向に貫通する方形状の角穴32Aが形成されている。当該角穴32Aは、操作者Hの足を挿通可能となるように、また、その内部空間を通じて上方から押圧ユニット30の上端側の全ての部分を臨めるようなサイズ及び配置となっている。
【0025】
前記押圧ユニット30は、図3の接地圧検出部24に対応した操作者Hの足裏の部位を押圧可能となる6箇所にそれぞれ配置された押圧機構34と、外枠29に固定され、押圧機構34の下端側を固定支持するベース板35とからなる。
【0026】
前記各押圧機構34は、それぞれほぼ同一の形状及び構造をなし、図5の各図にも示されるように、ベース板35に取り付けられる中空の下部カバー37と、下部カバー37の内部に配置されるモータ等の押圧駆動装置38と、下部カバー37の上側に固定された中空の上部カバー39と、上部カバー39の内部で同図中上下方向に延びるように配置されるとともに、押圧駆動装置38の回転軸に軸継手40を介して接続されるねじ軸41と、ねじ軸41に噛合するナット42と、当該ナット42に一体的に固定されるとともに、上部カバー39に対して同図中上下方向に移動可能に設けられたスライダー43と、スライダー43の同図中上端側に固定された与圧部44とを備えている。
【0027】
前記ねじ軸41は、押圧駆動装置38の駆動によってその中心軸回りに正逆方向に回転可能となっており、ナット42との間でボールねじを構成する。従って、押圧駆動装置38の駆動により、ねじ軸41が正逆方向に回転すると、ねじ軸41に係合するナット42がねじ軸41に沿って前記上下方向に移動し、ナット42に一体化されたスライダー43とともに与圧部44が昇降することになる。
【0028】
前記与圧部44は、図6に示されるように、その同図中上端側の円筒部分が操作者の足裏に接触する接触部44Aとして機能する。また、与圧部44の内部には、操作者Hの足裏が接触部44Aに接触した状態で、その反力を押圧力として検出する圧力センサからなる足裏押圧力検出部46が配置されている。この与圧部44は、後述する制御装置14での押圧駆動装置38の駆動制御により、足裏押圧力検出部46での押圧力の計測結果を考慮しながら所望の押圧力が得られるように、昇降動作によって前述の通り上下方向に変位する。
【0029】
なお、前記押圧ユニット30としては、本実施形態の態様に限定されるものではなく、制御装置14での押圧駆動装置38の駆動制御により、操作者Hの足裏の所望の部位に対して所望の押圧力が得られるように動作可能である限り、種々の構造や機構を備えた様々な態様の装置を採用することができる。
【0030】
前記制御装置14は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成される。
【0031】
この制御装置14は、図1に示されるように、動作検出装置12によって検出された操作者Hの動作情報に基づいて、ロボット11の腕部16及び体幹部17の動作を制御するロボット動作制御部48(スレーブ側動作制御部)と、接地圧検出部24からの検出結果により、ロボット11の接地圧に基づく押圧力で操作者Hの足裏の所望部位を押圧するように刺激提示装置13を動作制御する足裏押圧制御部49とを備えている。
【0032】
前記ロボット動作制御部48では、操作者Hの各腕部及び各体幹部の動きをロボット11に模倣させるように、対応するロボット11の腕部16及び体幹部17の動作制御を行うようになっている。すなわち、ここでは、刺激提示装置13で圧力刺激を受けた後で、操作者Hがバランスを保持するために行われるその腕部や体幹部の動作に追従させるように、動作検出装置12の検出結果に基づいてロボット11の対応部位の動作制御を行うようになっている。
【0033】
このロボット動作制御部48は、図2に示されるように、予め指定された操作者H及びロボット11の体格差や重量差を考慮したスケーリングにより、操作者Hの動作量をロボット11の目標動作量に変換するスケーリング変換器51と、当該目標動作量での動作をロボット11に実現させるように、対応するロボット11の各駆動装置20、21、22に駆動指令するコントローラ52とを含んでいる。
【0034】
前記スケーリング変換器51では、ロボット11及び操作者Hの各腕部の長さの差に応じて、ロボット11の腕部16の目標動作位置を調整する位置スケーリングが行われる。この位置スケーリングでは、腕動作検出部26の検出結果で特定される操作者Hの腕部の先端側部位における直交3軸方向における変位量について、操作者Hとロボット11のそれぞれ腕部の長さの比率に応じて補正される。そして、当該補正後の位置が、ロボット11の腕部16の目標動作位置とされる。更に、コントローラ52から、腕駆動装置20と肘駆動装置21に駆動指令され、ロボット11の腕部16の先端側が目標動作位置に到達するように移動制御される。
【0035】
なお、前記スケーリング変換器51では、腕動作検出部26の検出結果から、操作者Hの腕部の動作速度を求め、ロボット11及び操作者Hの体格差及び/又は重量差に応じて、ロボット11の動作速度を調整する速度スケーリングを行っても良い。例えば、本実施形態で想定するアミューズメント用のロボット11のように、ロボット11が操作者Hよりも小さいサイズであるような場合、人間の動作速度と同じ速度でロボット11を動作させると、ロボット11の安定性が低下するため、ロボット11を人間と同じように動作させるには、それらの体格差や重量差に応じてロボット11の動作を人間よりも早める必要がある。そこで、この速度スケーリングでは、ロボット11及び操作者Hの重量差や腕部の長さの差に対応した所定の係数を乗じる等により、操作者Hの腕部の動作速度に対してロボット11の腕部16の動作速度が補正される。そして、当該補正後の速度が、ロボット11の腕部16の目標動作速度とされる。更に、コントローラ52から、腕駆動装置20と肘駆動装置21に駆動指令され、ロボット11の腕部16を目標動作速度で所定時間動作するように制御される。また、ここでは、同様にして、ロボット11及び操作者Hの重量差及び体幹部の長さの差に応じて、体幹動作検出部27の検出結果から求めた操作者Hの体幹部の動作速度が補正され、当該補正された目標動作速度でロボット11の体幹部17が所定時間動作するように、体幹駆動装置22に駆動指令され、体幹部17の動作が制御される。
【0036】
前記足裏押圧制御部49は、予め指定された操作者H及びロボット11の重量差を考慮したスケーリングにより、押圧ユニット30による操作者Hの足裏への目標押圧力を調整するスケーリング変換器53と、当該目標押圧力で操作者Hの足裏を押圧するように、対応する部位の押圧駆動装置38に駆動指令するコントローラ54とを備えている。
【0037】
前記スケーリング変換器53では、人間がロボット11と同じサイズであるとした場合に、あたかも自身がロボット11の起立現場にいるように、ロボット11が接地面から受けている接地圧を操作者Hに体感させるためのスケーリング処理が行われる。つまり、ここでは、ロボット11の重量に対する操作者Hの体重の比率である重量比率に応じて、接地圧検出部24での検出結果を変換し、操作者Hの足裏への目標押圧力を決定する。ここでの目標押圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、接地圧検出部24での計測値に前記重量比率を乗じることで求められる。
【0038】
前記コントローラ54では、次のようにして、押圧駆動装置38に対する指令処理がなされる。すなわち、スケーリング変換器53で求めた目標押圧力が得られるように、各押圧機構34の足裏押圧検出部46で検出された現時点の足裏に対する押圧力に対する差分を補填するべく、現時点からの与圧部44の変位量が求められる。そして、当該変位量で与圧部44を昇降させるように押圧駆動装置38に対する駆動指令がなされる。
【0039】
なお、人体の足裏皮膚弾性率やボールねじ機構の減速比等を考慮して、押圧駆動装置38に対する駆動指令を行うことにより、更に高精度なスケーリング処理を行うことができる。すなわち、ここでは、足裏皮膚弾性率及び減速比に対応する係数を目標押圧力に乗じた上で、当該目標押圧力を調整し、当該調整後の目標押圧力にて押圧駆動装置38に対する駆動指令を行うことを例示できる。
【0040】
また、前記制御装置14を構成するロボット動作制御部48、足裏押圧制御部49、各スケーリング変換器51、53、各コントローラ52,54は、ロボット11や刺激提示装置13とは別の場所に一体的に設けられていても良いし、適宜分離した状態で、ロボット11や刺激提示装置13とは別の場所、或いは、それらと一体的に設けられていても良い。
【0041】
次に、前記遠隔操作システム10でのロボット11及び刺激提示装置13の動作制御について説明する。
【0042】
先ず、初期設定として、直立姿勢のロボット11を平坦な面に接地させて起立させた状態とし、操作者Hも起立姿勢で左右の両足を刺激提示装置13に置く。すなわち、操作者Hの両足をプレート32の角穴32Aに通して左右の押圧ユニット30の上に乗せ、全ての与圧部44に左右の足裏を接触させる。その状態において、接地圧検出部24及び足裏押圧力検出部46の検出結果に基づき、与圧部44が上下移動可能となる所定の初期位置にセットされる。
【0043】
そして、ロボット11の移動過程で、その接地面の傾斜や凹凸等の外乱に応じて、ロボット11の足部18Aに作用する接地圧が初期状態に比べ部分的に増減すると、当該増減した足部18Aの部位に対応する位置の与圧部44により、当該足部18Aの部位が受けた接地圧の大きさに応じて操作者Hの足裏への押圧力を増減させ、当該足裏に新たな圧力刺激が提示される。その結果、操作者Hは、ロボット11と同様に足裏が不安定な状態となり、自身が安定した姿勢を採るように、自身の腕部や体幹部を動かしながらバランスを取る。その結果、動作検出装置12で動作状態が検出された自身の腕部や体幹部の動作に合わせるように、ロボット11の腕部16や体幹部17が動作制御される。
【0044】
なお、本発明においては、前記ロボット11に限らず、人体の腕部、体幹部、及び脚部に対応する部位を含む他の可動体を被操作体として適用することもできる。また、当該被操作体は、現実空間に存在する物体のみならず、画像提示により仮想的に存在するキャラクターやシミュレーションロボットであっても良い。この場合には、足裏押圧力検出部46の代わりに、被操作体の接地面からの接地圧を任意に設定する態様が採用される。
【0045】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 遠隔操作システム
11 ロボット(被操作体)
12 動作検出装置
13 刺激提示装置
14 制御装置
16 腕部
17 体幹部
18 脚部
18A 足部
24 接地圧検出部
48 ロボット動作制御部(スレーブ側動作制御部)
49 足裏押圧制御部
51 スケーリング変換器
52 コントローラ
53 スケーリング変換器
54 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6