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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】廃熱再利用装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 3/04 20060101AFI20240228BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240228BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F26B3/04
B01J20/34 F
B01J20/26 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020075436
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021173439
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】堀部 明彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 寛
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-105072(JP,U)
【文献】特開2019-184170(JP,A)
【文献】特開2009-179308(JP,A)
【文献】特開2010-216758(JP,A)
【文献】特開2016-043278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 3/04
B01J 20/34
B01J 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃熱を排出している設備に載せ可能な乾燥庫と、
前記乾燥庫に収納可能なトレイと、を備えており、
前記乾燥庫は、前記設備から排出される前記廃熱を集め可能な廃熱回収部を有する略筒状に構成されており、
前記トレイは、除湿後の粒状のデシカント剤を水平方向に沿って載せ可能なメッシュ状に構成されており、
前記廃熱回収部から前記廃熱を集めると、集めた前記廃熱によって前記乾燥庫の内部に生じる上昇気流が前記メッシュ状の前記トレイを通過し、
前記廃熱回収部は、前記乾燥庫の下側に形成されている下部開口であり、
前記下部開口は、熱伝導率の高い材料から成る底壁で覆われている廃熱再利用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃熱再利用装置であって、
前記トレイは、前記乾燥庫からスライドにより引き出し可能である廃熱再利用装置。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載の廃熱再利用装置であって、
前記乾燥庫に形成されている左右の側壁の下側には、前記乾燥庫の内部と外部とを連通可能なスリットが形成されている廃熱再利用装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の廃熱再利用装置であって、
前記トレイは、高さ方向に沿って所定の間隔を隔てて複数段に重ねられている廃熱再利用装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の廃熱再利用装置であって、
前記乾燥庫には、前記上昇気流の流速を速めるファンと、前記廃熱回収部から集められた前記廃熱によって動作可能な熱電素子と、を備えており、
前記熱電素子は、前記ファンを駆動させるモータの電源となっている廃熱再利用装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の廃熱再利用装置であって、
前記乾燥庫には、前記上昇気流の流速を速めるファンと、光によって動作可能な太陽光パネルと、を備えており、
前記太陽光パネルは、前記ファンを駆動させるモータの電源となっている廃熱再利用装置。
【請求項7】
請求項5~6のいずれかに記載の廃熱再利用装置であって、
前記ファンは、前記トレイの下方に備えられており、
前記乾燥庫には、前記ファンの上方に防風板を備えている廃熱再利用装置。
【請求項8】
請求項7に記載の廃熱再利用装置であって、
前記乾燥庫には、前記防風板の上方に整流器を備えている廃熱再利用装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の廃熱再利用装置であって、
前記デシカント剤は、高分子デシカント剤である廃熱再利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱再利用装置に関し、詳しくは、粒状のデシカント剤を再生する廃熱再利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中から湿気を取り除くために、例えば、粒状のデシカント剤を使用して除湿する技術が既に知られている。ここで、下記特許文献1には、除湿後(使用済み)のデシカント剤を加熱する技術が開示されている。これにより、除湿後のデシカント剤を再生できる。そのため、除湿後のデシカント剤を廃棄することなく繰り返し使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4753102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、デシカント剤を加熱する加熱装置および加熱装置を制御する制御装置が必要となっていた。そのため、これら加熱装置および制御装置を動作させるための外部電源(電力の供給源)が必要となっていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、粒状のデシカント剤を再生する廃熱再利用装置において、外部電源を不要とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると、廃熱再利用装置は、廃熱を放出している設備に載せ可能な乾燥庫と、乾燥庫に収納可能なトレイとを備えている。乾燥庫は、設備から排出される廃熱を集め可能な廃熱回収部を有する略筒状に構成されている。トレイは、除湿後の粒状のデシカント剤を水平方向に沿って載せ可能なメッシュ状に構成されている。廃熱回収部から廃熱を集めると、集めた廃熱によって乾燥庫の内部に生じる上昇気流がメッシュ状のトレイを通過する。
【0007】
そのため、このトレイに載せた除湿後の粒状のデシカント剤が乾燥し始める。したがって、設備から排出される廃熱を利用して、除湿後の粒状のデシカント剤を再生できる。このように再生できると、廃熱を利用して再生するため、外部電源を不要にできる。
【0008】
本開示の他の特徴によると、トレイは、高さ方向に沿って所定の間隔を隔てて複数段に重ねられている。
【0009】
そのため、トレイの平面視サイズがコンパクトでも、一度に多くのデシカント剤を再生できる。
【0010】
また、本開示の他の特徴によると、乾燥庫には、上昇気流の流速を速めるファンと、廃熱回収部から集められた廃熱によって動作可能な熱電素子とを備えている。熱電素子は、ファンを駆動させるモータの電源となっている。
【0011】
そのため、上昇気流は、ファンによって流速が速められる。したがって、外部電源を不要のまま、吸湿した粒状のデシカント剤を確実に乾燥(再生)させることができる。
【0012】
また、本開示の他の特徴によると、乾燥庫には、上昇気流の流速を速めるファンと、光によって動作可能な太陽光パネルとを備えている。太陽光パネルは、ファンを駆動させるモータの電源となっている。
【0013】
そのため、上昇気流は、ファンによって流速が速められる。したがって、外部電源を不要のまま、吸湿した粒状のデシカント剤を確実に乾燥(再生)させることができる。
【0014】
また、本開示の他の特徴によると、ファンは、トレイの下方に備えられている。乾燥庫には、ファンの上方に防風板を備えている。
【0015】
そのため、ファンによって速度が速められた上昇気流は、防風板によって跳ね返って渦を巻く。したがって、廃熱再利用装置の平面視において、上昇気流を分散させることができる。結果として、粒状のデシカント剤がトレイの何処に載せられていても(隅であろうが、中央であろうが)均一に乾燥させることができるため、この粒状のデシカント剤の再生に偏り(むら)が生じることを防止できる。
【0016】
また、本開示の他の特徴によると、乾燥庫には、防風板の上方に整流器を備えている。
【0017】
そのため、廃熱再利用装置の平面視において、上昇気流をより分散させることができる。したがって、粒状のデシカント剤がトレイの何処に載せられていてもより均一に乾燥させることができるため、この粒状のデシカント剤の再生により偏り(むら)が生じることを防止できる。
【0018】
また、本開示の他の特徴によると、デシカント剤は、高分子デシカント剤である。
【0019】
そのため、比較的に低温(例えば、「40~80度」)でデシカント剤の再生ができるため、低温の廃熱を捨てることなく有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る廃熱再利用装置の全体構成を示す縦断面の模式図である。
図2図1の廃熱再利用装置の使用状態を説明する縦断面の模式図である。
図3】デシカント剤の収着割合の変化値を説明する図である。
図4】デシカント剤の体積膨張について説明する図である。
図5】廃熱再利用装置の乾燥庫のスリットの高さについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、図1~5を用いて説明する。まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る廃熱再利用装置1の概略構成を説明する。また、以下の説明にあたって、上、下、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、左、右の方向を示している。なお、前、後とは、上述した図における、紙面の手前、奥の方向を示している。
【0022】
この廃熱再利用装置1は、主として、廃熱を排出している設備である研削盤3の全体カバー30に載せ可能な乾燥庫10と、乾燥庫10に収納可能なトレイ群23とを備えている。以下に、これら乾燥庫10とトレイ群23とを個別に説明する。
【0023】
なお、研削盤3において、工作物(図示しない)を砥石(図示しない)で研削するときの研削熱が工作物に供給するクーラントに伝わり、クーラントが工作物の周囲に飛散して全体カバー30に研削熱が伝わる。また、砥石を回転駆動するモータ(図示しない)の廃熱が全体カバー30に伝わる。廃熱を排出している設備として、研削盤3に限らず、洗浄装置、熱処理装置のような工場設備があり、これらの工場設備にも廃熱再利用装置1を適用できる。
【0024】
はじめに、乾燥庫10を説明する。この乾燥庫10は、前後左右の四方が側壁11によって囲まれた略四角筒状となっており、作業者(図示しない)が所望する設備(研削盤3)に載せ可能に持ち運び可能に構成されている。そのため、この乾燥庫10の上側は、上部開口12となっている。また、この乾燥庫10の下側は、下部開口13となっている。この下部開口13が、特許請求の範囲に記載の「廃熱回収部」に相当する。左右の側壁11の内面の上寄りには、左右に対向する支持部11aが上下(高さ方向)に沿って3対形成されている。
【0025】
そのため、この3対の支持部11aに後述する3枚のトレイ24を橋渡して載せる(支持する)ことができる。また、この載せた3枚のトレイ24を前後方向に沿ってスライドさせることもできる。この3対の支持部11aは、互いが上下(高さ方向)に沿って所定の間隔(例えば、「40mm」)を隔てて形成されている。この所定の間隔とは、3枚のトレイ24のスライドに差し支えることがないようにスムーズにスライドさせることができる間隔である。
【0026】
また、この左右の側壁11の下側には、乾燥庫10の内部10aと外部10bとを連通可能なスリット11bが形成されている。このスリット11bの高さは、「20mm」に形成されている。また、この前の側壁11には、開閉可能な扉(図示しない)が形成されている。そのため、この扉を開けると乾燥庫10の内部10aと外部10bとの間で3枚のトレイ24をスライドさせて出し入れできる。
【0027】
また、この上部開口12は、排出口14aを有する天井壁14で覆われている。そのため、この乾燥庫10の上端は、排出口14aを介して乾燥庫10の内部10aと外部10bとが連通している。また、この下部開口13は、底壁15で覆われている。そのため、この乾燥庫10の下端は、スリット11bを介して乾燥庫10の内部10aと外部10bとが連通している。
【0028】
この底壁15は、熱伝導率の高い材料、例えば、銅板から構成されている。この底壁15の内面の中央には、架台16を介して下段のトレイ24の下方にファン17が備えられている。このファン17は、後述する上昇気流40の流速を速めるものである。また、この底壁15の内面の架台16の傍には、熱電素子18が備えられている。この熱電素子18は、ファン17にケーブルおよび昇圧回路(いずれも図示しない)を介して電気的に接続されている。
【0029】
この熱電素子18の下面18aは、底壁15の内面に接触した状態となっている。この熱電素子18は、その下面18aと上面18bとの温度差により所定の起電力が生じるものである。そのため、この熱電素子18は、ファン17を駆動させるモータ(図示しない)の電源となっている。また、この左右の側壁11の下寄りには、内面を橋渡すように防錆性の高い金属製(例えば、ステンレス製)の格子状の網板19が備えられている。この金属製により、デシカント剤27の放湿時における錆を防止できる。
【0030】
この網板19の中央は、防風板20となっている。すなわち、図1からも明らかなように、ファン17の上方は、防風板20によって覆われている。また、乾燥庫10の内部10aには、ファン17と下のトレイ24との間に位置するように整流器21が備えられている。この整流器21は、上下方向に沿う風路22aを有する細管状の筒材22を複数束ねたものである。
【0031】
この整流器21は、廃熱再利用装置1(乾燥庫10)の平面視において、乾燥庫10の内部10aの全てを覆うように備えられている。そのため、この平面視において、後述する上昇気流40を分散させることができる。なお、この乾燥庫10の高さは、「300mm」となっている。また、この乾燥庫10は、平面視において、一辺が「300mm」の正方形となっている。また、この3枚のトレイ24の高さは、「20mm」となっている。また、この整流器21の高さは、「25mm」となっている。乾燥庫10は、このように構成されている。
【0032】
次に、トレイ群23を説明する。このトレイ群23は、防錆性の高い素材である金属製(例えば、ステンレス製)の3枚のトレイ24から構成されている。この金属製により、デシカント剤27の放湿時における錆を防止できる。これら3枚のトレイ24は、後述する粒状のデシカント剤27を水平方向に沿って重なることがないように平積み状態で載せ可能なメッシュ状に構成されている。そのため、この3枚のトレイ24に粒状のデシカント剤27を載せても、この載せた粒状のデシカント剤27が3枚のトレイ24から抜け落ちることを防止できる。
【0033】
このデシカント剤27は、粒形が「2.59mm」であり、再生温度が40~80度で放湿、再利用可能な高分子デシカント剤であり、例えば、日本エクスラン工業株式会社製のポリアクリル酸系材料から成るものである。この3枚のトレイ24は、上述した乾燥庫10の3対の支持部11aに載せられている。そのため、この3枚のトレイ24は、上下(高さ方向)に沿って所定の間隔を隔てて3段(上段、中段、下段)に重ねられている。トレイ群23は、このように構成されている。
【0034】
続いて、廃熱再利用装置1の動作を説明する(図2参照)。なお、この説明にあたって、予め、作業者は、3枚のトレイ24を引き出して除湿後の粒状のデシカント剤27を水平方向に沿って重なることがないように平積み状態(一層程度の状態)で載せておく。まず、作業者は、廃熱再利用装置1を研削盤3の全体カバー30に載せる作業を行う。この研削盤3の全体カバー30からは、「45度」の廃熱が排出されている。
【0035】
そのため、この廃熱によって底壁15が暖められる。すなわち、この底壁15によって研削盤3の全体カバー30から排出される廃熱が集められる。したがって、廃熱再利用装置1の乾燥庫10の内部10aの空気も暖められる。なお、既に説明したように、底壁15は、熱伝導率の高い銅板から構成されている。そのため、乾燥庫10の内部10aの空気の暖めに偏り(むら)が生じることを抑制できる。
【0036】
このように乾燥庫10の内部10aの空気が暖められると、この乾燥庫10のスリット11bと上部開口12とによる煙突効果により、暖められた内部10aの空気が上昇していく。すなわち、乾燥庫10の外部10bからスリット11bを介して大気が取り込まれ、この取り込まれた大気が乾燥庫10の排出口14aから排出されるといった乾燥庫10の内部10aにおいて上昇気流40が発生する。
【0037】
煙突効果により上昇気流40の発生が十分でない場合は、必要に応じて熱電素子18とファン17を追加しても良い。熱電素子18とファン17とを追加した場合、熱電素子18の下面18aと上面18bとの温度差により熱電素子18に所定の起電力が生じる(動作可能となる)ため、モータが動作してファン17が駆動する。そのため、この上昇気流40は、ファン17によって流速が速められ、この流速が速められた上昇気流40は防風板20に跳ね返って渦を巻いた後にさらに上昇する。その後、この渦を巻いた後に上昇した上昇気流40は、メッシュ状の3枚のトレイ24を通過する。
【0038】
したがって、この3枚のトレイ24に載せていた除湿後の粒状のデシカント剤27が乾燥(放湿)し始める。このとき、上昇気流40は、整流器21の風路22aを通過する。そのため、粒状のデシカント剤27が均一に乾燥し始める。やがて、この乾燥が始まってから所定の時間(例えば、「40分」)が経過すると、このデシカント剤27の乾燥が終了する。この所定の時間は、予め、タイマーによって計測された時間である。次に、作業者は、乾燥庫10の扉を開けて、乾燥が終了した粒状のデシカント剤27が載せられた3枚のトレイ24をスライドさせて引き出す作業を行う。
【0039】
最後に、作業者は、この3枚のトレイ24から粒状のデシカント剤27を回収する作業を行う。このようにして研削盤3から排出される廃熱を利用して、除湿後の粒状のデシカント剤27を再生できる。このデシカント剤27の再生において、研削盤3の全体カバー30から排出された「45度」の廃熱が、乾燥庫10の排出口14aから排出される大気が「30度」となっている。
【0040】
そのため、研削盤3の近傍において、潜熱による冷却効果(空調費用の削減効果)も得ることができる。すなわち、廃熱再利用装置1を冷却装置としても使用できる。なお、再生後のデシカント剤27は、例えば、乾燥箱、除湿保管設備、室内等の乾燥に使用されている。また、デシカント剤27の乾燥が終了すると、熱電素子18の下面18aと上面18bとの温度差が無くなるため、熱電素子18に生じていた起電力も消失する。そのため、ファン17のモータの動作も停止する。
【0041】
また、図3では、デシカント剤27の収着割合の変化値を説明している。このデシカント剤27の初期条件は、温度が「30度」であり、相対湿度が「75%」で収着させている。この図3の縦軸は、絶乾状態のデシカント剤27の質量に対するデシカント剤27から放湿(脱水)された水分質量(放湿量)である。すなわち、収着割合の変化値(Δmw/Δm0)を示している。このΔmwとは、脱着水分量のことである。このΔm0とは、絶乾時におけるデシカント剤27の質量のことである。また、この図3の横軸は、時間(秒)である。この図3から明らかなように、「40度以上」でなくて、35度以上であればデシカント剤27は放湿(乾燥)できる。高温で乾燥させた方が、デシカント剤27を確実に乾燥(再生)させることができる。
【0042】
また、図4では、絶乾状態のデシカント剤27と、収着状態のデシカント剤27の粒径と体積倍率との比較を示している。この図4から明らかなように、収着したデシカント剤27は、その体積が膨張する。すなわち、乾燥中において、デシカント剤27の体積は大きく減少する。そのため、デシカント剤27を縦詰めした状態で乾燥させると、乾燥中にデシカント剤27がトレイ24の下方に堆積する。
【0043】
したがって、トレイ24の上方に隙間ができてしまい、この隙間に上昇気流40が逃げてしまいデシカント剤27の再生が困難となる。結果として、デシカント剤27をトレイ24に平積みして乾燥させるのが好ましい。また、デシカント剤27を縦詰めした状態で乾燥させると、上昇気流40の妨げとなる。
【0044】
また、図5では、乾燥庫10のスリット11bの高さの違いによる上昇気流40の流速の代表値と測定された上昇気流40の流速の範囲とを示している。この図5からも明らかなように、スリット11bの高さが「10mm」の場合、上昇気流40の流速の代表値は、「0.25m/s」であり、測定された上昇気流40の流速の範囲は、「0.21~0.28m/s」である。また、スリット11bの高さが20mmの場合、上昇気流40の流速の代表値は、「0.31m/s」であり、測定された上昇気流40の流速の範囲は、「0.25~0.37m/s」である。そのため、乾燥庫10のスリット11bの高さを「20mm」に形成している。
【0045】
本発明の実施形態に係る廃熱再利用装置1は、上述したように構成されている。この構成によれば、乾燥庫10の内部10aの空気が暖められると、この乾燥庫10の上部開口12とスリット11bとによる煙突効果により、暖められた内部10aの空気が上昇していく。すなわち、この乾燥庫10の内部10aに上昇気流40が発生する。このとき、この上昇気流40は、メッシュ状の3枚のトレイ24を通過する。そのため、この3枚のトレイ24に載せた除湿後の粒状のデシカント剤27が乾燥し始める。したがって、研削盤3の全体カバー30から排出される廃熱を利用して、除湿後の粒状のデシカント剤27を再生できる。このように再生できると、デシカント剤27の再生に必要なランニングコストを抑えることができる。また、廃熱を利用して再生するため、外部電源を不要にできる。また、廃熱を利用できるため、二酸化炭素の排出量の削減に換算できる。
【0046】
また、この構成によれば、3枚のトレイ24は、上下に沿って所定の間隔を隔てて3段に重ねられている。そのため、3枚のトレイ24の平面視サイズがコンパクトでも、一度に多くのデシカント剤27を再生できる。
【0047】
また、この構成によれば、乾燥庫10の底壁15の内面の中央には、架台16を介してファン17が備えられている。また、この底壁15の内面の架台16の傍には、熱電素子18が備えられている。この熱電素子18は、ファン17を駆動させるモータ(図示しない)の電源となっている。そのため、上昇気流40は、ファン17によって流速が速められる。したがって、外部電源を不要のまま、吸湿した粒状のデシカント剤27を確実に乾燥(再生)させることができる。
【0048】
また、この構成によれば、ファン17の上方は、防風板20によって覆われている。そのため、ファン17によって速度が速められた上昇気流40は、防風板20によって跳ね返って渦を巻く。したがって、廃熱再利用装置1の平面視において、上昇気流40を分散させることができる。結果として、粒状のデシカント剤27が3枚のトレイ24の何処に載せられていても(隅であろうが、中央であろうが)均一に乾燥させることができるため、この粒状のデシカント剤27の再生に偏り(むら)が生じることを防止できる。
【0049】
また、この構成によれば、乾燥庫10の内部10aには、防風板20の上方(ファン17と下段のトレイ24との間)に整流器21が備えられている。そのため、廃熱再利用装置1の平面視において、上昇気流40をより分散させることができる。したがって、粒状のデシカント剤27が3枚のトレイ24の何処に載せられていてもより均一に乾燥させることができるため、この粒状のデシカント剤27の再生により偏り(むら)が生じることを防止できる。
【0050】
また、この構成によれば、デシカント剤27は、再生温度が「40~80度」の高分子デシカント剤である。比較的に低温(例えば、「40~80度」)でデシカント剤27の再生ができるため、低温の廃熱を捨てることなく有効利用できる。
【0051】
なお、本発明の実施形態に係る廃熱再利用装置1にあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更しても構わない。実施形態で説明した数値は、これに限ることなく、発明が成立するのであれば、この数値は幾らであっても構わない。また、廃熱再利用装置1を載せる設備は、研削盤3に限ることなく、廃熱を排出している設備であれば、どのような設備(例えば、各種の工作機械等)であっても構わない。
【0052】
また、底壁15は、銅板に限ることなく、熱伝導率の高い素材であれば、どのような板材(例えば、アルミ板)であっても構わない。また、ファン17は、下段のトレイ24の下方に備えられることなく、上段のトレイ24の上方に備えられていても構わない。また、乾燥庫10に熱電素子18を備えることなく、乾燥庫10に各種の電池、室内灯の光によって発電する太陽光パネル等を備えていても構わない。その場合でも、上昇気流40は、ファン17によって流速が速められる。したがって、外部電源を不要のまま、吸湿した粒状のデシカント剤27を確実に乾燥(再生)させることができる。
【0053】
また、タイマーに基づいてデシカント剤27の乾燥の終了を判断することなく、乾燥庫10の内部10aの湿度を計測しておき、この計測した湿度に基づいてデシカント剤27の乾燥の終了を判断しても構わない。なぜなら、デシカント剤27の乾燥が始まると、乾燥庫10の内部10aの湿度が上昇していき、デシカント剤27の乾燥が終了すると、乾燥庫10の内部10aの湿度が上昇の前の湿度に戻るからである。
【0054】
また、トレイ24は、3段に重ねられることなく、何段(1段~複数段)であっても構わない。ただし、トレイ24は、複数段であっても、5段程度までが好ましい。なぜなら、下段のトレイ24に載せたデシカント剤27から放湿された水分が上段のトレイ24のデシカント剤27で再収着されることを防止するためである。また、十分にデシカント剤27を十分に加熱する観点からも、トレイ24は、5段程度までが好ましい。
【0055】
また、デシカント剤27を大量に再生すると、大規模な冷却装置となる。そのため、工場内といった広い空間でも冷却できる。また、乾燥庫10は、作業者が持ち運び可能に構成されているため、廃熱再利用装置1の設置の自由度を高めることができる。また、廃熱再利用装置1を研削盤3の全体カバー30に載せて使用することなく、例えば、廃熱再利用装置1を乾燥室と隣接して設置した固定設備として使用しても構わない。また、乾燥庫10は、略四角筒状に限ることなく、略筒状であれば、どのような略筒状(例えば、六角筒状)であっても構わない。
【符号の説明】
【0056】
1 廃熱再利用装置
3 研削盤(設備)
10 乾燥庫
10a 内部
13 下部開口(廃熱回収部)
24 トレイ
27 デシカント剤
40 上昇気流
図1
図2
図3
図4
図5