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特許7444397擁壁ブロック、擁壁部材及び擁壁ブロックの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】擁壁ブロック、擁壁部材及び擁壁ブロックの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/02 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
E02D29/02 305
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020171190
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2021063426
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019188857
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】荻野 啓
(72)【発明者】
【氏名】峰地 慎一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 章司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 圭
(72)【発明者】
【氏名】木村 直行
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祥剛
(72)【発明者】
【氏名】山口 正剛
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-040683(JP,A)
【文献】特開2000-179053(JP,A)
【文献】特表2016-515173(JP,A)
【文献】特開2001-131994(JP,A)
【文献】特開平10-046613(JP,A)
【文献】特開2019-078065(JP,A)
【文献】特開2001-214461(JP,A)
【文献】実開昭61-089047(JP,U)
【文献】特開2014-088732(JP,A)
【文献】特開平11-323972(JP,A)
【文献】特開2006-118353(JP,A)
【文献】特開2012-046980(JP,A)
【文献】特開2004-238984(JP,A)
【文献】特開2006-083697(JP,A)
【文献】特開2001-173137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底版と、
前記底版から立ち上がる竪壁と、
前記底版の上側で且つ前記竪壁の背面側に位置し、前記底版及び前記竪壁に接合された控え部材と、を備え、
前記底版及び前記竪壁はコンクリート製であり、
前記控え部材は、鋼材で構成され
前記底版と前記竪壁は、分離された別体の部材によって構成されており、
前記竪壁の前面側に配置された前側調整部と、前記竪壁の背面側に配置された背面側調整部と、を含み、前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を変えられる調整手段が設けられ、
前記前側調整部は、前記竪壁の前面側で且つ前記底版の上側に配置された調整用部材と、前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度が調整されるように前記調整用部材からの突出量を変更可能な部材と、を含む擁壁ブロック。
【請求項2】
底版と、
前記底版から立ち上がる竪壁と、
前記底版の上側で且つ前記竪壁の背面側に位置し、前記底版及び前記竪壁に接合された控え部材と、を備え、
前記底版及び前記竪壁はコンクリート製であり、
前記控え部材は、鋼材で構成され、
前記底版と前記竪壁は、分離された別体の部材によって構成されており、
前記竪壁の前面側に配置された前側調整部と、前記竪壁の背面側に配置された背面側調整部と、を含み、前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を変えられる調整手段が設けられ、
前記背面側調整部は、前記控え部材に固定されたナットと、前記ナットに螺合され且つ前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度が調整されるように突出量を変更可能なボルトと、を含む擁壁ブロック。
【請求項3】
前記底版と前記竪壁との間に調整板が配置されることによって、前記底版と前記竪壁及び前記控え部材との間に隙間が形成され、
前記隙間はモルタルによって塞がれている請求項1又は2に記載の擁壁ブロック。
【請求項4】
前記底版の上面には凹部が形成されており、
前記竪壁及び前記控え部材は、前記凹部に載置され、
前記モルタルは前記凹部内を埋めている請求項3に記載の擁壁ブロック。
【請求項5】
前記控え部材は、上下方向に延びる側縁と横方向に延びる底縁とを有する平板状の本体部と、前記側縁から左右両側に張り出し前記竪壁に固定される側板と、前記底縁から左右両側に張り出し前記底版に固定される底板と、を備えている請求項1からの何れか1項に記載の擁壁ブロック。
【請求項6】
前記控え部材は、前記本体部と前記底板とに接合されたリブを備えている請求項に記載の擁壁ブロック。
【請求項7】
前記竪壁には、頭付きスタッド部材が固定されており、
前記側板は、前記頭付きスタッド部材を介して前記竪壁に結合されている請求項又はに記載の擁壁ブロック。
【請求項8】
前記竪壁には、アンカーボルトが固定され、
前記控え部材は、前記側板に挿通されたアンカーボルトにナットを締め付けることによって前記竪壁に接合されている請求項又はに記載の擁壁ブロック。
【請求項9】
前記控え部材を被覆する被覆部材が設けられている請求項1からの何れか1項に記載の擁壁ブロック。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の擁壁ブロックに用いられる擁壁部材であって、
コンクリート製の竪壁と、
鋼材で構成され、前記竪壁の背面に接合された控え部材と、を備えている擁壁部材。
【請求項11】
コンクリート製の竪壁と、鋼材で構成され前記竪壁に接合された控え部材と、を備えた擁壁部材を擁壁ブロックの据え付け現場に搬入するとともに、底版を前記据え付け現場に搬入する搬入工程と、
前記底版を所定の場所に載置する設置工程と、
前記所定の場所に載置された前記底版に、前記擁壁部材の前記控え部材を接合する接合工程と、
前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を調整する調整工程と、を含み、
前記調整工程では、前記竪壁の前面側で且つ前記底版の上側に配置された調整用部材と、前記調整用部材に対する突出量を変更可能な部材と、を用い、前記調整用部材に対する前記部材の突出量を変更することにより、前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度を調整する擁壁ブロックの施工方法。
【請求項12】
コンクリート製の竪壁と、鋼材で構成され前記竪壁に接合された控え部材と、を備えた擁壁部材を擁壁ブロックの据え付け現場に搬入するとともに、底版を前記据え付け現場に搬入する搬入工程と、
前記底版を所定の場所に載置する設置工程と、
前記所定の場所に載置された前記底版に、前記擁壁部材の前記控え部材を接合する接合工程と、
前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を調整する調整工程と、を含み、
前記調整工程では、前記控え部材に固定されたナットと、前記ナットに螺合されて突出量を変更可能なボルトと、を用い、前記ボルトの突出量を調整することにより、前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度を調整する擁壁ブロックの施工方法。
【請求項13】
前記所定の場所に載置された前記底版の凹部に調整板を配置するとともに、前記調整板の上に前記竪壁が位置するように前記擁壁部材を前記底版に載置する載置工程をさらに含む請求項11又は12に記載の擁壁ブロックの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁ブロック、擁壁部材及び擁壁ブロックの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、宅地造成工事等により地面に高低差が生じる場所で擁壁を形成するに使用される擁壁ブロックが知られている。擁壁ブロックは、底版と、底版の端部から立ち上がる竪壁とを有するプレキャストコンクリート製のL型ブロックによって構成されている。この種の擁壁ブロックとして、例えば下記特許文献1及び2に開示されているように、竪壁の背面側に補強用の控え壁が構成された擁壁ブロックも知られている。控え壁は、竪壁及び底版と同様にプレキャストコンクリート製であり、竪壁及び底版と一体的に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-515173号公報
【文献】登録実用新案第3015645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に開示された、プレキャストコンクリート製の控え壁が竪壁及び底版と一体的に形成された擁壁ブロックは、控え壁が大きなものとなるため、重量が重くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、控え壁が形成される場合において擁壁ブロックの軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る擁壁ブロックは、底版と、前記底版から立ち上がる竪壁と、前記底版の上側で且つ前記竪壁の背面側に位置し、前記底版及び前記竪壁に接合された控え部材と、を備える。前記底版及び前記竪壁はコンクリート製であり、前記控え部材は、鋼材で構成され、前記底版と前記竪壁は、分離された別体の部材によって構成されており、前記竪壁の前面側に配置された前側調整部と、前記竪壁の背面側に配置された背面側調整部と、を含み、前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を変えられる調整手段が設けられ、前記前側調整部は、前記竪壁の前面側で且つ前記底版の上側に配置された調整用部材と、前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度が調整されるように前記調整用部材からの突出量を変更可能な部材と、を含む
【0007】
本発明では、底版及び竪壁に接合された控え部材が鋼材で構成されているため、控え部材がコンクリートで作成された擁壁ブロックに比べ、擁壁ブロックとしての強度を維持しつつ軽量化を図ることができる。また、控え部材が鋼材で構成されているため、コンクリート製の控え部材に比べ、控え部材の薄型化及び小型化を図ることもできる。
【0008】
また、前記底版と前記竪壁、分離された別体の部材によって構成されているため、擁壁ブロックの据え付け現場に擁壁ブロックを運搬する際に、底版と竪壁とを別個に運搬することができる。したがって、例えば20トン以上の重量となる擁壁ブロックに好適である。また、前面側の調整部及び背面側の調整部を用いて、重量物である竪壁の立設角度の調整を行うことができる。
また、本発明に係る擁壁ブロックは、底版と、前記底版から立ち上がる竪壁と、前記底版の上側で且つ前記竪壁の背面側に位置し、前記底版及び前記竪壁に接合された控え部材と、を備え、前記底版及び前記竪壁はコンクリート製であり、前記控え部材は、鋼材で構成され、前記底版と前記竪壁は、分離された別体の部材によって構成されており、前記竪壁の前面側に配置された前側調整部と、前記竪壁の背面側に配置された背面側調整部と、を含み、前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を変えられる調整手段が設けられ、前記背面側調整部は、前記控え部材に固定されたナットと、前記ナットに螺合され且つ前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度が調整されるように突出量を変更可能なボルトと、を含む。
【0009】
前記底版と前記竪壁との間に調整板が配置されることによって、前記底版と前記竪壁及び前記控え部材との間に隙間が形成されてもよい。この場合、前記隙間はモルタルによって塞がれていてもよい。
【0010】
この態様では、底版と竪壁との間に隙間が形成されるため、竪壁に控え部材が接合された構成の擁壁部材の鉛直度を調整する作業が煩雑になることを抑制することができる。すなわち、擁壁部材を底版に載置したときに、竪壁が控え部材と反対側にわずかに傾斜していたとしても、擁壁部材を控え部材側に起立させて、竪壁の鉛直度を調整することが可能となる。このとき、控え部材の先端が下がるように竪壁の姿勢が変わるとしても、底版の上面と竪壁の下面との間に隙間が形成されているため、控え部材と底版との干渉が生じ難い。したがって、竪壁の鉛直度を調整する作業が煩雑になることを抑制することができる。また、控え部材と底版との隙間をモルタルで塞いで、控え部材と底版とを密着させることができる。
【0011】
前記底版の上面には凹部が形成されていてもよい。前記竪壁及び前記控え部材は、前記凹部に載置され、前記モルタルは前記凹部内を埋めていてもよい。
【0012】
この態様では、竪壁の下端及び控え部材の下端が、凹部内において調整板とともにモルタルに埋設された構成となる。モルタルが凹部内に配置された構成であるため、モルタルを底版と竪壁との間の隙間に注入する際に型枠を用意する必要がない。したがって、モルタル注入時の作業の手間が煩雑になることを抑制することができる。
【0015】
前記控え部材は、上下方向に延びる側縁と横方向に延びる底縁とを有する平板状の本体部と、前記側縁から左右両側に張り出し前記竪壁に固定される側板と、前記底縁から左右両側に張り出し前記底版に固定される底板と、を備えていてもよい。
【0016】
この態様では、控え部材の本体部の側縁から左右両側に張り出した側板を介して控え部材を竪壁に接合することができるとともに、本体部の底縁から左右両側に張り出した底板を介して控え部材を底版に接合することができる。本体部が平板状に構成されるとともにこの本体部に側板及び底板が接合された構成であるため、控え部材の軽量化を図りながら、控え部材と竪壁との接合強度及び控え部材と底版との接合強度を確保することができる。なお、控え部材が鋼材で構成されているため、側板及び底板は、本体部に溶接によって固定することができる。
【0017】
前記控え部材は、前記本体部と前記底板とに接合されたリブを備えていてもよい。この態様では、竪壁に背面側からかかる力によって、本体部が底板から引き離される方向に本体部に力が加わった場合において、その力に対抗する本体部と底板との接合強度を高めることができる。
【0018】
前記竪壁には、頭付きスタッド部材が固定されていてもよい。この場合、前記側板は、前記頭付きスタッド部材を介して前記竪壁に結合されていてもよい。
【0019】
この態様では、控え部材が頭付きスタッド部材を介して竪壁に固定される。頭付きスタッド部材は竪壁に埋設されているため、竪壁及び控え部材の強度計算において、竪壁及び控え部材を一体化した剛体として扱うことが可能となる。また、施工時のばらつきが生じ難い。
【0020】
前記竪壁には、アンカーボルトが固定されてもよい。この場合、前記控え部材は、前記側板に挿通されたアンカーボルトにナットを締め付けることによって前記竪壁に接合されていてもよい。この態様では、竪壁を作成した後に控え部材を竪壁に固定することができる。
【0025】
前記控え部材を被覆する被覆部材が設けられていてもよい。この態様では、鋼材で構成された控え部材を保護することができる。
【0026】
本発明は、前記擁壁ブロックに用いられる擁壁部材であって、コンクリート製の竪壁と、鋼材で構成され、前記竪壁の背面に接合された控え部材と、を備えている擁壁部材である。
【0028】
本発明は、コンクリート製の竪壁と、鋼材で構成され前記竪壁に接合された控え部材と、を備えた擁壁部材を擁壁ブロックの据え付け現場に搬入するとともに、底版を前記据え付け現場に搬入する搬入工程と、前記底版を所定の場所に載置する設置工程と、前記所定の場所に載置された前記底版に、前記擁壁部材の前記控え部材を接合する接合工程と、前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を調整する調整工程と、を含み、前記調整工程では、前記竪壁の前面側で且つ前記底版の上側に配置された調整用部材と、前記調整用部材に対する突出量を変更可能な部材と、を用い、前記調整用部材に対する前記部材の突出量を変更することにより、前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度を調整する擁壁ブロックの施工方法である。
また本発明は、コンクリート製の竪壁と、鋼材で構成され前記竪壁に接合された控え部材と、を備えた擁壁部材を擁壁ブロックの据え付け現場に搬入するとともに、底版を前記据え付け現場に搬入する搬入工程と、前記底版を所定の場所に載置する設置工程と、前記所定の場所に載置された前記底版に、前記擁壁部材の前記控え部材を接合する接合工程と、前記底版に対する前記竪壁の立設角度及び高さ位置の少なくとも一方を調整する調整工程と、を含み、前記調整工程では、前記控え部材に固定されたナットと、前記ナットに螺合されて突出量を変更可能なボルトと、を用い、前記ボルトの突出量を調整することにより、前記立設角度及び前記高さ位置のうち少なくとも前記立設角度を調整する擁壁ブロックの施工方法である。
【0029】
前記擁壁ブロックの施工方法において、前記所定の場所に載置された前記底版の凹部に調整板を配置するとともに、前記調整板の上に前記竪壁が位置するように前記擁壁部材を前記底版に載置する載置工程をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、擁壁ブロックの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】(a)実施形態に係る擁壁ブロックの断面図であり、(b)擁壁ブロックの背面図である。
図2】擁壁ブロックの底版の上面図である。
図3】控え部材の斜視図である。
図4】控え部材周辺を拡大して示めす擁壁ブロックの断面図である。
図5】擁壁ブロックの据え付け現場において、基礎工を施工する工程を説明するための図である。
図6】基礎工の上に底版を載置する工程を説明するための図である。
図7】擁壁部材を据え付け現場に搬入する工程を説明するための図である。
図8】(a)(b)擁壁部材を底版に載置する工程を説明するための図である。
図9】底版の凹部に無収縮モルタルを注入する工程を説明するための図である。
図10】被覆部材を備えた擁壁ブロックの断面図である。
図11】控え部材がアンカーボルトによって竪壁に固定される構成の擁壁ブロックの断面図である。
図12】竪壁及び底版が一体構成の擁壁ブロックの断面図である。
図13】控え部材が頭付きスタッド部材によって底版及び竪壁に固定された構成の擁壁ブロックの断面図である。
図14】調整用部材が底版に固定される場合の図である。
図15】(a)(b)底版に固定された調整用部材を用いて竪壁の立設角度を調整する工程を説明するための図である。
図16】竪壁の上側部位と下側部位とが別体の構成である擁壁ブロックの断面図である。
図17】竪壁の下側部位と底版とが一体的に構成されたコンクリート部材に控え部材が固定された構成の擁壁部材の断面図である。
図18】擁壁部材を所定の場所に設置する工程を説明するための図である。
図19】設置された擁壁部材の下側部位の上に上側部位を載置する工程を説明するための図である。
図20】竪壁の下側部位に上側部位を固定する工程を説明するための図である。
図21】被覆部材を固定する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
図1(a)(b)に示すように、本実施形態に係る擁壁ブロック10は、底版12と竪壁14とが分割された構造のブロックである。擁壁ブロック10は、宅地造成工事等で地面に高低差が生じる場所で擁壁を形成するために用いられる。
【0035】
擁壁ブロック10は、基礎工の上に載置される底版12と、底版12の上に載置される竪壁14と、底版12及び竪壁14に接合される控え部材16と、を備えている。底版12は竪壁14の配置位置から図1(a)における右側に延びるように構成されているので、竪壁14に対して図1(a)の右側が背面側となり、左側は前面側となる。控え部材16は竪壁14の背面側に位置しており、この背面側には、図外の砕石や土砂が積み上げられる。なお、図1(a)に示す底版12は、竪壁14の左側にはほとんど延出されていないが、竪壁14に対して図1(a)の左側に延出されていてもよい。
【0036】
底版12は、図2に示すように、上面視で矩形状に形成されるとともに、上面が水平に拡がる部分である基側部12aと、上面が傾斜した部分である先側部12bとを有する。なお、底版12は、この構成に限られるものではなく、例えば、全体に亘って上面が水平に形成されていてもよい。
【0037】
基側部12aの上面には凹部20が形成されている。凹部20は、基側部12aの上面よりも低い位置で底版12の底面と平行に延びる底面20aと、底面20aの周囲から立ち上がる側面20bと、によって基側部12aの上面から凹むように構成されている。凹部20は、竪壁14及び控え部材16が載置される部位を含むように形成されており、底版12の幅方向に延びる矩形状の竪壁用部位20cと、竪壁用部位20cから底版12の長手方向に延びる矩形状の控え部位20dと、を含む。本実施形態では、4つの控え部材16が設けられているため、控え部位20dも4つ形成されている。
【0038】
竪壁用部位20cには、薄い平板からなる調整板24が配置されている。この調整板24は、竪壁14の高さ調整のため、あるいは底版12と竪壁14との間に隙間を形成するために用いられる。
【0039】
底版12には、複数のアンカーボルト26が固定されている。各アンカーボルト26は、底版12に控え部材16を固定するために用いられるものであり、複数のアンカーボルト26は、底版12に埋設されるとともに、各控え部位20dから上に向けて突出するように配置されている。
【0040】
竪壁14は、底版12とは別体に構成されており、底版12と同じ幅を有している。竪壁14は、底版12の上面から立ち上がるように配置されている。竪壁14は、厚みが一定の下側部と、下側部から徐々に厚みが小さくなる中間部と、中間部の上端の厚みと同じ厚みで、厚みが一定の上側部と、を有する。ただし、竪壁14はこのような構成に限られるものではなく、高さ方向の全体に亘って厚みが一定に形成されていてもよく、あるいは、下端から上端に亘って厚みが次第に小さくなく形状に形成されていてもよい。その他、擁壁として用いるのに適切な構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0041】
竪壁14には、排水パイプ30が埋め込まれている。排水パイプ30は、竪壁14の背面側に積み上げられた砕石等を通して流れ落ちてくる雨水等を前面側に排出するものである。
【0042】
控え部材16は、控え壁を構成する部材であり、竪壁14の背面に接合されるとともに底版12の上面に接合される。控え部材16は、底版12の長手方向において、底版12の長さの半分以下の長さを有していてもよい。また、控え部材16は、高さ方向において、竪壁14の高さの半分以下の高さを有していてもよい。
【0043】
控え部材16は、鋼板を組み合わせた構成であり、鋼材によって構成されている。すなわち、控え部材16は、鋼鉄製であってもよく、ステンレス鋼等の特殊鋼製であってもよい。なお、控え部材16には、メッキ処理が施されていてもよい。
【0044】
控え部材16は、図3に示すように、平板状の本体部16aと、本体部16aに接合された平板状の側板16bと、本体部16aに接合された平板状の底板16cと、を備えている。
【0045】
本体部16aは、台形状の平板によって形成されているが、これに限られるものではなく、本体部16aの形状は長方形状であってもよく、あるいは三角形状に形成されていてもよい。すなわち、本体部16aは、少なくとも、上下方向に延びる前側の側縁と、側縁の下端から横方向に延びる底縁と、を有する。図例では、本体部16aは台形状に形成されているため、本体部16aは、前側の側縁から後ろ側に離間した位置で上下に延び且つ前側の側縁よりも短い後ろ側の側縁と、前後の側縁の上端同士を接続する上縁と、をさらに有する。
【0046】
側板16bは、本体部16aにおける前側の側縁から左右両側に張り出した矩形状の平板材からなり、本体部16aに垂直な姿勢で本体部16aに溶接されている。側板16bは、竪壁14の背面に沿うように配置される(図4参照)。
【0047】
底板16cは、本体部16aの底縁から左右両側に張り出した矩形状の平板材からなり、本体部16aに垂直で且つ水平方向に延びる姿勢で本体部16aの底縁に溶接されている。底板16cは、底版12の上面に沿うように配置される(図4参照)。
【0048】
控え部材16は、補強用のリブ16dをさらに備えている。リブ16dは、垂直姿勢の平板状の部材によって構成されており、本体部16aと底板16cとに接続されている。リブ16dは、本体部16aの左右両側に設けられている。リブ16dが設けられることにより、本体部16aが底板16cから離れる方向に力が作用した場合において、その力に対抗する接合強度を高めることができる。
【0049】
図4に示すように、控え部材16には、頭付きスタッド部材32が側板16bから前側に突き出るように固定されている。頭付きスタッド部材32は、竪壁14に埋め込まれていて、竪壁14に一体化している。これにより、控え部材16は、竪壁14に接合されている。
【0050】
控え部材16は、竪壁14を製造するときに竪壁14に固定される。つまり、控え部材16がセットされた型枠にコンクリートを流し込み、コンクリート中に頭付きスタッド部材32が埋まった状態でコンクリートを硬化させることにより、控え部材16は竪壁14に接合された状態となる。したがって、プレキャストコンクリートからなる竪壁14には、控え部材16が固定されている。
【0051】
なお、本実施形態では、控え部材16は、側板16bが竪壁14の背面に沿って配置された状態となっているが、これに限られない。例えば、側板16bが頭付きスタッド部材32とともに竪壁14に埋め込まれていてもよい。
【0052】
底板16cには、底版12に固定されたアンカーボルト26を挿通させる挿通孔が形成されている。挿通孔に挿通されたアンカーボルト26の雄ネジ部にナット34を螺合することにより、底板16cは底版12に固定される。
【0053】
竪壁14は、底版12の凹部20における竪壁用部位20cにおいて調整板24を介して載置され、控え部材16は、凹部20における控え部位20dに配置されている。竪壁14の下面と凹部20の底面20aとの間に調整板24が介装されているので、竪壁14の下面と底版12に形成された凹部20の底面20aとの間に隙間が形成されるとともに、底板16cの下面と凹部20の底面20aとの間にも隙間が形成されている。
【0054】
調整板24は凹部20の深さよりも薄い板材によって構成されているため、竪壁14の下面及び底板16cの下面は、凹部20内に入り込んでいる。このため、竪壁14の下端は、凹部20の側面20bに当接可能である。したがって、凹部20は、土圧を受ける竪壁14に対して剪断抵抗を付与することが可能となっている。
【0055】
凹部20の内側は、無収縮モルタル36によって塞がれている。このため、竪壁14と凹部20の底面20aとの間の隙間及び控え部材16と凹部20の底面20aとの間の隙間は、無収縮モルタル36によって塞がれている。したがって、これらの隙間は露出しない。
【0056】
本実施形態では、底版12に対する竪壁14の立設角度を調整できるようにすべく、調整手段40が設けられている。調整手段40は、竪壁14の前面側に配置された前側調整部40aと、竪壁14の背面側に配置された背面側調整部40bと、を含む。
【0057】
前側調整部40aは、竪壁14に直接力を作用させて竪壁14の立設角度を調整するものであり、竪壁14の前面側に配置された調整用部材40cと、調整用部材40cに固定されたナットと、ナットに螺合され調整用部材40cに形成された挿通孔を貫通するボルト40dと、を含む。調整用部材40cは、竪壁14の前面における下端部に固定された金属製の部材によって構成されている。調整用部材38からのボルト40dの突出量を変えることにより、竪壁14の立設角度を変更することができる。
【0058】
なお、図4に示す例では、調整用部材40cが竪壁14に固定され、前側調整部40aのボルト40dが調整用部材40cから下向きに突出する構成となっている。この構成に代え、例えば、調整用部材40cが底版12に固定されるとともに、ボルト40dが調整用部材40cから竪壁14に向けて水平方向に突出する構成であってもよい。この場合は、ボルト40dの突出量に応じて、調整用部材40cの姿勢を変えることなく竪壁14の立設角度を調整することができる。
【0059】
背面側調整部40bは、控え部材16に力を作用させることによって竪壁14の立設角度を調整するものであり、底板16cに固定されたナットと、ナットに螺合され底板16cに形成された挿通孔を上から下に貫通するボルトと、を含む。底板16cからのボルトの下向き突出量を変えることにより、底板16cの高さ位置を変更することができる。また、前側調整部40aのボルト40cの下向き突出量と背面側調整部40bのボルトの下向き突出量を変えることにより、底版12に対する竪壁14の立設角度を調整することができる。例えば、背面側調整部40bのボルトの下向き突出量を相対的に大きくすることにより、竪壁14を前側に向けて傾けることができ、前側調整部40aのボルト40cの下向き突出量を相対的に大きくすることにより、竪壁14を背面側に向けて傾けることができる。
【0060】
ここで、擁壁ブロック10の施工方法について、図5図9を参照しつつ説明する。まず、擁壁ブロック10の据え付け現場において、基礎工45を施工する(図5)。基礎工45は、例えば、砕石からなる層の上面をコンクリートで固めることによってレベル出しされている。
【0061】
工場内において予め製造された底版12を、据え付け現場に搬入する(底版搬入工程)。すなわち、底版12は、アンカーボルト26が固定されたプレキャストコンクリート製である。そして、図6に示すように、搬入された底版12を基礎工45の上に載置する(設置工程)。底版12を吊り上げて現場に搬入するには、底版12に固定された図略の吊り金具が用いられる。
【0062】
一方、竪壁14は予め控え部材16が固定された状態で据え付け現場に搬入される。すなわち、竪壁14に控え部材16が固定された構成の擁壁部材47を、工場において予め製造しておき、図7に示すように、この擁壁部材47を据え付け現場に搬入する(擁壁部材搬入工程)。擁壁部材47を吊り上げて現場に搬入するには、竪壁14に形成された吊り孔14aが用いられる。なお、擁壁部材47には、前側調整部40a及び背面側調整部40bも取り付けられている。
【0063】
次に、底版12の凹部20に調整板24を配置するとともに、調整板24の上に竪壁14が位置するように擁壁部材47を底版12に載置する(図8(a)(b)、載置工程)。載置工程では、底版12に固定されたアンカーボルト26の先端が控え部材16の底板16cに形成された挿通孔に挿通されるように擁壁部材47を位置決めし、この位置で、擁壁部材47を上から下ろす。これにより、竪壁14が凹部20の竪壁用部位20cに配置されるとともに、控え部材16が凹部20の控え部位20dに配置される。このとき、竪壁14と凹部20の底面20aとの間に隙間が形成されるとともに、控え部材16と凹部20の底面20aとの間にも隙間が形成される。
【0064】
続いて、調整手段40を操作することによって、底版12に対する竪壁14の立設角度又は竪壁14の高さ位置を調整する(調整工程)。具体的に、前側調整部40aのボルト40d及び背面側調整部40bのボルトを操作することにより、竪壁14の立設角度及び高さを調整する。これにより、複数の擁壁ブロック10を連設する場合において、隣接する擁壁ブロック10同士の竪壁14の前面を揃えることができる。
【0065】
調整作業が終われば、底版12のアンカーボルト26にナットを螺合することにより、底版12に控え部材16を接合する(接合工程)。ただし、このときは、まだ仮締めである。その後、凹部20に無収縮モルタル36を注入して(図9)、凹部20内を塞ぐ。これにより、竪壁14及び控え部材16の下側の隙間が塞がれる。その後、無収縮モルタル36が硬化した後、アンカーボルト26のナットを本締めする。これで、擁壁ブロック10の施工が完了する。なお、擁壁ブロック10の背面側には、砕石で構成される層や止水コンクリートで構成される層が設けられる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、控え部材16が鋼材で構成されているため、控え部材16がコンクリートで作成された擁壁ブロックに比べ、擁壁ブロック10としての強度を維持しつつ軽量化を図ることができる。また、コンクリート製の控え部材に比べ、控え部材16の薄型化及び小型化を図ることもできる。
【0067】
また本実施形態では、底版12と竪壁14が、分離された別体の部材によって構成されているため、擁壁ブロック10の据え付け現場に擁壁ブロック10を運搬する際に、底版12と竪壁14を別個に運搬することができる。したがって、例えば20トン以上の重量となる擁壁ブロック10に好適である。
【0068】
また本実施形態では、底版12と竪壁14との間に隙間が形成されるため、擁壁部材47の鉛直度を調整する作業が煩雑になることを抑制することができる。すなわち、擁壁部材47を底版12に載置したときに、竪壁14が控え部材16と反対側(前側)にわずかに傾斜していたとしても、擁壁部材47を控え部材16側(背面側)に起立させて、竪壁14の鉛直度を調整することが可能となる。このとき、控え部材16の先端が下がるように竪壁14の姿勢が変わるが、底版12の上面と竪壁14の下面との間に隙間が形成されているため、控え部材16と底版12との干渉が生じ難い。したがって、竪壁14の鉛直度を調整する作業が煩雑になることを抑制することができる。また、控え部材16と底版12との隙間をモルタル36で塞いで、控え部材16と底版12とを密着させることができる。
【0069】
また本実施形態では、竪壁14の下端及び控え部材16の下端が、凹部20内において調整板24とともに無収縮モルタル36に埋設された構成となっている。モルタル36が凹部20内に満たされる構成であるため、モルタル36を底版12と竪壁14との間の隙間に注入する際に型枠を用意する必要がない。したがって、モルタル36注入時の作業の手間が煩雑になることを抑制することができる。
【0070】
また本実施形態では、前面側に位置する前側調整部40a及び背面側に位置する背面側調整部40bを用いて、重量物である竪壁14の立設角度の調整を行うことができる。
【0071】
また本実施形態では、控え部材16の本体部16aの側縁から左右両側に張り出した側板16bを介して控え部材16を竪壁14に接合することができるとともに、本体部16aの底縁から左右両側に張り出した底板16cを介して控え部材16を底版12に接合することができる。本体部16aが板材で構成されるとともにこの本体部16aに側板16b及び底板16cが接合された構成であるため、控え部材16の軽量化を図りながら、控え部材16と竪壁14との接合強度及び控え部材16と底版12との接合強度を確保することができる。
【0072】
また控え部材16が、鋼材で作成されているので、異なる大きさの擁壁ブロック10に対して、共通化した控え部材16を取り付ける一方で、控え部材16を取り付ける枚数を異ならせることによって、強度を調整することも可能である。例えば、背の低い竪壁14を有するタイプでは、2枚の控え部材16を接合する一方で、背の高い竪壁14を有するタイプでは、4枚の控え部材16を接合する構成としてもよい。
【0073】
また本実施形態では、控え部材16が本体部16aと底板16cとに接続されたリブ16dを備えている。このため、竪壁14に背面側からかかる土圧によって、本体部16aが底板16cから引き離される方向に本体部16aに力が加わった場合に、その力に対抗する本体部16aと底板16cとの接合強度を高めることができる。
【0074】
また本実施形態では、控え部材16が頭付きスタッド部材32を介して竪壁14に固定される。頭付きスタッド部材32は竪壁14に埋設されているため、竪壁14及び控え部材16の強度計算に際し、竪壁14及び控え部材16を一体化した剛体として扱うことが可能となる。また、施工時のばらつきが生じ難い。
【0075】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、図10に示すように、控え部材16を被覆する被覆部材50が設けられていてもよい。これにより、控え部材16が露出しない構成となるため、控え部材16を保護することができる。被覆部材50は、コンクリートによって構成されていてもよく、あるいは樹脂等によって構成されていてもよい。被覆部材50は、擁壁ブロック10の施工後に施工され、竪壁14及び底版12を一部覆っている。
【0076】
前記実施形態では、控え部材16に頭付きスタッド部材32が固定されているがこれに限られない。例えば、図11に示すように、頭付きスタッド部材32が省略される一方で、竪壁14にアンカーボルト52が固定されていてもよい。この場合、側板16bにもアンカーボルト52を挿通させる挿通孔が形成され、この挿通孔に挿通されたアンカーボルト52にナット54を螺合することにより、控え部材16を竪壁14に固定することができる。この場合、アンカーボルト52は、竪壁14の製造時に竪壁14に固定されてもよく、あるいは、擁壁ブロック10の据え付け現場において竪壁14に固定されてもよい。
【0077】
前記実施形態では、竪壁14と底版12とが分離された別体の部材によって構成されているが、これに限られるものではなく、図12に示すように、竪壁14と底版12とが一体の1つのコンクリートブロックによって構成されていてもよい。この構成では、工場内において、竪壁14及び底版12を有するコンクリートブロックに控え部材16を接合して、擁壁ブロック10を作成しておくことができる。また、竪壁14及び底版12を有するコンクリートブロックを現場に据え付けた後で、控え部材16を接合することもできる。また、底版12に対する竪壁14の立設角度を調整する作業は不要となる。このため、調整用部材38及び調整手段40は省略される。図例では、控え部材16がアンカーボルト26,52によって底版12及び竪壁14に固定される構成を示しているが、図13に示すように、控え部材16が頭付きスタッド部材32によって底版12及び竪壁14に固定される構成であってもよい。
【0078】
前記実施形態では、控え部材16がリブ16dを有する構成としたが、リブ16dを省略してもよい。
【0079】
前記実施形態では、底版12の上面に凹部20が形成された構成としたが、凹部20が形成されていない構成としてもよい。この場合、調整板24が省略されて、擁壁部材47が直接底版12の上に載置されてもよい。この場合、無収縮モルタル36も不要となる。
【0080】
前記実施形態では、擁壁部材47に前側調整部40a及び背面側調整部40bが固定された構成としたが、これに限られない。例えば、前側調整部40aは底版12に固定されていてもよい。この場合、図14に示すように、前側調整部40aの調整用部材40cは底版12に固定される。調整用部材40cは例えばH型鋼で作成され得る。調整用部材40cは、擁壁部材47を底版12に載置する工程の前に底版12に固定される。なお、擁壁部材47を底版12に載置した後で調整用部材40cを底版12に固定してもよい。
【0081】
そして、擁壁部材47を底版12上に載置した後、図15(a)(b)に示すように、前側調整部40aのボルト40dを操作して竪壁14に埋設されたインサートナット56への螺合量を調整するとともに、背面側調整部40bのボルトを操作することにより、底版12に対する竪壁14の立設角度を調整する。
【0082】
図13に示す擁壁ブロック10は、底版12及び竪壁14を一体的に有する1つのコンクリートブロックによって構成されている。そして、控え部材16は、頭付きスタッド部材32を用いて底版12及び竪壁14に結合されている。これに対し、図16に示す擁壁ブロック10では、竪壁14が下側部位14bと上側部位14cとに分割されている。つまり、竪壁14は、下側部位14bと、下側部位14bと別体に形成された上側部位14cとを有し、竪壁14の下側部位14bは、底版12と一体的に形成されている。すなわち、擁壁ブロック10は、下側部位14bと底版12とが一体的に構成されたコンクリート部材58(図17)を有し、上側部位14cは、このコンクリート部材58に結合されている。そして、このコンクリート部材58に控え部材16が固定されている。すなわち、控え部材16には、側板16b及び底板16cにそれぞれ頭付きスタッド部材32が固定されており、控え部材16は、これらの頭付きスタッド部材32を介してコンクリート部材58に結合されている。なお、下側部位14bと上側部位14cとの分割線14dは、最も上に位置する頭付きスタッド部材32の固定位置よりも上側に設定されていればよい。
【0083】
上側部位14cの下端面には、鉄筋の機械式継手59を構成する筒部材59a(図19)が埋設されている。一方、下側部位14bの上端面には、鉄筋の機械式継手59を構成する鉄筋59b(図17)が突出している。そして、この下側部位14bの鉄筋59bを上側部位14cの筒部材59aに挿入し、そこにモルタルを充填するとともに上側部位14c及び下側部位14b間にモルタルが充填されることにより、上側部位14cが下側部位14bに結合されている。なお、上側部位14cと下側部位14bとの結合は、鉄筋同士を重ねて結合する重ね継手による結合であってもよく、あるいはこれ以外の結合方法を採用することもできる。また、上側部位14bに鉄筋59bを突出させ、下側部位14cに筒部材59aを埋設してもよい。
【0084】
ここで、図16に示す擁壁ブロック10の施工方法について説明する。この擁壁ブロック10を施工するには、底版12に竪壁14の下側部位14bが一体的に形成されたコンクリート部材58に控え部材16が固定された構成の擁壁部材60(図17)を用意する。この擁壁部材60を作成するには、竪壁14の下側部位14b及び底版12を有するコンクリート部材58を成形する際に、控え部材16に固定された頭付きスタッド部材32がコンクリート部材58に埋設されるように、コンクリート部材58を成形する。
【0085】
そして、この擁壁部材60を据え付け現場に搬入し(搬入工程)、図18に示すように、擁壁部材60を所定の場所に設置する(設置工程)。続いて、図19に示すように、竪壁14の上側部位14cを据え付け現場に搬入するとともに、この上側部位14cを、設置された擁壁部材60の下側部位14bの上に載置する(載置工程)。このとき、下側部位14bの上端面から突出している鉄筋59bを上側部位14cの下端面に埋設された筒部材59aに挿入する。
【0086】
続いて、竪壁14の下側部位14bに竪壁14の上側部位14cを固定する(固定工程)。この固定工程では、図20に示すように、仮固定材62を用いる。仮固定材62は、L型アングル又はH型鋼からなり、この仮固定材62を下側部位14bと上側部位14cとに跨がるように、竪壁14の前面及び背面に配置する。このとき、図略のボルトを仮固定材62に形成された貫通孔に挿通するとともに、竪壁14に設けられたナットに締結することにより、仮固定材62を竪壁14に固定する。そして、上側部位14cと下側部位14bとの間の隙間にモルタルを充填する。モルタルが固化した後は、仮固定材62を撤去する。
【0087】
続いて、図21に示すように、控え部材16を被覆部材50で被覆できるように、型枠64を控え部材16に固定する。このとき、被覆部材50内に水抜きパイプ66が配置されるように、水抜きパイプ66を固定しておく。そして、型枠64内にコンクリートを流し込み、被覆部材50を形成する。コンクリートが固まれば、型枠64を取り外し、必要に応じて、図略の土粒子止めフィルターを配設するとともに図略の止水コンクリートを打設する。
【符号の説明】
【0088】
10 :擁壁ブロック
12 :底版
14 :竪壁
14b :下側部位
14c :上側部位
16 :控え部材
16a :本体部
16b :側板
16c :底板
16d :リブ
20 :凹部
24 :調整板
26 :アンカーボルト
32 :頭付きスタッド部材
36 :無収縮モルタル
40 :調整手段
40a :前側調整部
40b :背面側調整部
47 :擁壁部材
50 :被覆部材
52 :アンカーボルト
54 :ナット
58 :コンクリート部材
60 :擁壁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21