(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ゼラチン短繊維、その製造方法、それを含む細胞凝集体、細胞凝集体の製造方法及び作製キット
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240228BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20240228BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20240228BHJP
C12N 11/02 20060101ALI20240228BHJP
D01F 4/00 20060101ALI20240228BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12N5/07
C12N5/02
C12N11/02
D01F4/00 Z
C07K14/78
(21)【出願番号】P 2021504318
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024851
(87)【国際公開番号】W WO2020262469
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2019121518
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390018153
【氏名又は名称】日本毛織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599029420
【氏名又は名称】田畑 泰彦
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田畑 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】延谷 公昭
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021498(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235745(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/079292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00 - 3/10
C12N 5/00 - 5/28
D01F 4/00 - 4/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを主成分とするゼラチン短繊維であって、
水に分散させた際の平均繊維径が
15μm以上400μm以下であり、かつ平均繊維長が50μm以上400μm以下であり、
細胞とともに細胞凝集体を形成する
ために細胞とともに液体培地中での浮遊培養に用いることを特徴とするゼラチン短繊維。
【請求項2】
前記ゼラチン短繊維は、架橋されている請求項1に記載のゼラチン短繊維。
【請求項3】
前記平均繊維径をDとした場合、その標準偏差は0.6D以下であり、かつ、前記平均繊維長をLとした場合、その標準偏差は0.6L以下である請求項1又は2に記載のゼラチン短繊維。
【請求項4】
前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長/平均繊維径で表されるアスペクト比が3以上である請求項1~3のいずれかに記載のゼラチン短繊維。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のゼラチン短繊維の製造方法であって、
ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、
前記ノズル吐出口の後方に位置し、前記ノズル吐出口とは非接触状態の流体噴射口から前方に向けて圧力流体を噴射し、
前記押し出された紡糸液を前記圧力流体に随伴させて繊維形成させ、前記繊維形成した繊維を集積させてゼラチン長繊維不織布とし、
前記ゼラチン長繊維不織布を切断することでゼラチン短繊維を得ることを特徴とするゼラチン短繊維の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のゼラチン短繊維の製造方法であって、
ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸し、
得られたゼラチンフィラメント糸を切断することでゼラチン短繊維を得ることを特徴とするゼラチン短繊維の製造方法。
【請求項7】
前記加熱紡糸筒は鉛直方向に向いている請求項6に記載のゼラチン短繊維の製造方法。
【請求項8】
前記ゼラチン長繊維不織
布を架橋した後に、切断する請求項
5に記載のゼラチン短繊維の製造方法。
【請求項9】
前記ゼラチンフィラメント糸を架橋した後に、切断する請求項
6又は7に記載のゼラチン短繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載のゼラチン短繊維と細胞が凝集された細胞凝集体であり、前記ゼラチン短繊維が前記細胞凝集体の表面に突出していないことを特徴とする細胞凝集体。
【請求項11】
前記細胞凝集体の平均径が0.6mm以上である請求項
10に記載の細胞凝集体。
【請求項12】
前記細胞凝集体において、細胞数/ゼラチン短繊維の質量は1x10
4細胞/mg以上1x10
6細胞/mg以下である請求項
10又は
11に記載の細胞凝集体。
【請求項13】
請求項1~4のいずれかに記載のゼラチン短繊維及び細胞を
液体培地中で
浮遊培養することで、細胞とゼラチン繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が表面に突出していない細胞凝集体を形成することを特徴する細胞凝集体の製造方法。
【請求項14】
前記培地において、ゼラチン短繊維の濃度(ゼラチン短繊維の質量/培地の体積)は0.01mg/mL以上1mg/mL以下である請求項
13に記載の細胞凝集体の製造方法。
【請求項15】
前記培地において、細胞の播種量とゼラチン短繊維の添加量の比(細胞の播種量/ゼラチン短繊維の添加量)は1x10
4細胞/mg以上1x10
6細胞/mg以下である請求項
13又は
14に記載の細胞凝集体の製造方法。
【請求項16】
請求項1~4のいずれかに記載のゼラチン短繊維、細胞及び
液体培地を含み、
細胞とゼラチン短繊維が凝集された細胞凝集体を形成する
ために細胞の浮遊培養に用いることを特徴とする細胞凝集体の作製キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養の足場材料として用いることができ、細胞とともに細胞凝集体を形成することができるゼラチン短繊維、その製造方法、それを含む細胞凝集体、細胞凝集体の製造方法及び作製キットに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞凝集体培養等の3次元細胞培養を行う際に、一般的に3次元の足場材料を用いており、足場内部に細胞を入り込ませるために、足場表面に細胞を付着させることで細胞の移動や増殖で足場内部までに細胞を浸潤させたり、或いは培地中に分散させた細胞を加圧や吸引により強制的に足場内部へ送り込む等の方法が行われている。しかし、いずれの場合も、足場内部まで細胞を均一に分散させることは困難であった。
【0003】
そこで、短繊維足場材料を用いて細胞凝集体を作製することが提案されている。例えば、特許文献1では、細胞を直径が10~100μm、かつ長さが0.5~5mmである繊維と一緒に培養することで細胞凝集体を得ることが記載されている。特許文献2及び3には、平均長が10~500μm、かつ平均直径が200nm~4μmであり、表面にポリマーブラシが形成されている短繊維足場材料を用いて細胞凝集塊を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2010-535605号公報
【文献】特許第5846550号
【文献】特開2018-42469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、依然として、短繊維足場材料と細胞との共培養で細胞凝集体を作製する際の細胞凝集体の形成性や、長期間培養で得られた細胞凝集体の細胞活性を改良することが求められている。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、細胞との共培養で細胞凝集体を作製する際の細胞凝集体の形成性が良好であり、長期間培養で得られた細胞凝集体の細胞活性を高めることができるゼラチン短繊維、その製造方法、それを含む細胞凝集体、細胞凝集体の製造方法及び作製キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゼラチンを主成分とするゼラチン短繊維であって、水に分散させた際の平均繊維径が5μm以上400μm以下であり、かつ平均繊維長が50μm以上400μm以下であり、細胞とともに細胞凝集体を形成するのに用いることを特徴とするゼラチン短繊維に関する。
【0008】
本発明は、また、前記のゼラチン短繊維の製造方法であって、ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、前記ノズル吐出口の後方に位置し、前記ノズル吐出口とは非接触状態の流体噴射口から前方に向けて圧力流体を噴射し、前記押し出された紡糸液を前記圧力流体に随伴させて繊維形成させ、前記繊維形成した繊維を集積させて不織布とし、前記ゼラチン長繊維不織布を切断することでゼラチン短繊維を得ることを特徴とするゼラチン短繊維の製造方法に関する。
【0009】
本発明は、また、前記のゼラチン短繊維の製造方法であって、ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸し、得られたゼラチンフィラメント糸を切断することでゼラチン短繊維を得ることを特徴とするゼラチン短繊維の製造方法に関する。
【0010】
本発明は、また、前記のゼラチン短繊維と細胞が凝集された細胞凝集体であり、前記ゼラチン短繊維が前記細胞凝集体の表面に突出していないことを特徴とする細胞凝集体に関する。
【0011】
本発明は、また、前記のゼラチン短繊維及び細胞を培地中で培養することで、細胞及びゼラチン繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が表面に突出していない細胞凝集体を形成することを特徴とする細胞凝集体の製造方法に関する。
【0012】
本発明は、また、前記のゼラチン短繊維、細胞及び培地を含み、細胞とゼラチン短繊維が凝集された細胞凝集体を形成するのに用いることを特徴とする細胞凝集体の作製キットに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、細胞との共培養で細胞凝集体を作製する際の細胞凝集体の形成性が良好であり、長期間培養で得られた細胞凝集体の細胞活性を向上し得るゼラチン短繊維を提供することができる。
また、本発明のゼラチン短繊維の製造方法によれば、コンタミ等がなく、衛生的にかつ効率よく、ゼラチン短繊維を得ることができる。
また、本発明は、形成性が良好であり、細胞活性が高い細胞凝集体を提供することができる。
また、本発明の細胞凝集体の製造方法又は作製キットによれば、細胞凝集体を良好に形成することができ、長期間培養後においても細胞活性が高い細胞凝集体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の一実施例で得られたゼラチン短繊維の水分散液を倒立顕微鏡で観察した画像(10倍)である。
【
図2】
図2の(a)~(d)は実施例A1において、細胞とゼラチン短繊維の凝集状態を倒立顕微鏡で観察した画像(4倍)である。
【
図3】
図3は実施例1で得られた細胞凝集体の3次元画像である。
【
図4】
図4の(a)~(d)は比較例A1において、細胞の凝集状態を倒立顕微鏡で観察した画像(4倍)である。
【
図5】
図5の(a)~(d)は比較例A2において、細胞とゼラチン短繊維の凝集状態を倒立顕微鏡で観察した画像(4倍)である。
【
図6】
図6は本発明の一実施例で使用するゼラチン長繊維不織布製造装置の模式的説明図である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は本発明の1以上の実施形態で用いるフィラメント製造装置の模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1以上の実施形態のゼラチン短繊維は、ゼラチンを主成分とする。本発明において、主成分とは、ゼラチンを90質量%以上含むことを意味する。本発明の1以上の実施形態のゼラチン短繊維は、ゼラチンを90質量%以上、他の成分を10質量%以下含んでもよく、ゼラチンを95質量%以上、他の成分を5質量%以下含んでもよく、実質的に100質量%のゼラチンで構成されてもよい。本発明のゼラチン短繊維は、安全性が高く、生体吸収性に優れるゼラチンを主成分とすることから、該ゼラチン短繊維を用いて形成した細胞凝集体(3次元細胞凝集体)は、生体に移植して再生治療用、細胞研究及び創薬研究に必要となる三次元細胞組織体、オルガネラ等として好適に用いることができる。また、本発明のゼラチン短繊維は、親水性が高いゼラチンを主成分とすることから、表面に親水性を有するポリマーブラシを形成しなくても、培地中での分散性及び細胞との親和性が高く、培地中での細胞との共培養で細胞凝集体を形成しやすい。
【0016】
他の成分は、必要に応じて、他の生体適合性ポリマー、架橋剤、薬剤、可塑剤、他の添加剤等であってもよい。他の生体適合性ポリマーは、特に限定されないが、細胞等の生体と接着性を有する生体適合性ポリマーを好適に用いることができる。このような生体適合性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、天然高分子や合成高分子を用いることができる。天然高分子としては、例えばタンパク質や多糖類等が挙げられる。タンパク質としては、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、ラミニン、フィブリン等が挙げられる。多糖類としては、例えばキトサン、アルギン酸カルシウム、ジェランガム、アガロース、グァーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガム、タマリンドガム、ダイユータンガム等の天然高分子を用いてもよく、カルボキシメチルセルロース等の天然高分子の誘導体を用いてもよい。合成高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール等が挙げられる。上述した他の生体適合ポリマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0017】
前記ゼラチンの原材料となるコラーゲンが由来する動物の種類や部位は特に限定されない。コラーゲンは、例えば脊髄動物由来でもよく、魚由来でもよい。また、真皮、靭帯、腱、骨、軟骨等の様々な器官や組織由来のコラーゲンを適宜用いることができる。また、コラーゲンからゼラチンを調製する方法も特に限定されず、例えば酸処理、アルカリ処理、及び酵素処理等が挙げられる。前記ゼラチンの分子量も特に限定されず、様々な分子量のものを適宜選択して用いることができる。また、ゼラチン短繊維は、1種のゼラチンで構成されてもよく、2種以上のゼラチンを含んでもよい。
【0018】
前記ゼラチンは、適度な柔軟性及び硬さを有し、細胞集合体を形成する効果が高い観点から、ゼリー強度が100g以上400g以下であることが好ましく、より好ましくは150g以上360g以下である。本発明において、ゼリー強度は、JIS K 6503に準じて測定する。前記ゼラチンは、市販品であってもよい。
【0019】
前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径が5μm以上400μm以下であり、平均繊維長が50μm以上400μm以下である。前記ゼラチン短繊維が細胞接着性を有し、ハイドロゲルとなり得るゼラチンを主成分とするとともに、平均繊維径と平均繊維長が上述した範囲内であることで、該ゼラチン短繊維を細胞とともに培地中で培養した場合、培地中で均一に分散して膨潤したゼラチン短繊維の表面に細胞が接着しやすく、細胞間にゼラチン短繊維が配置される。それゆえ、細胞とゼラチン繊維が凝集された細胞凝集体が形成しやすい上、細胞に栄養や酸素が供給されやすく、長期間培養後においても細胞活性が高い大きなサイズの細胞凝集体を得ることができる。
【0020】
前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径が5μm以上であることで、細胞間にゼラチン短繊維が配置されやすく、細胞同士又はゼラチン短繊維同士が密集することが抑制され、細胞へ栄養や酸素が供給されやすい。前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径が10μm以上であることが好ましく、より好ましくは15μm以上である。また、前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径が400μm以下であることで、細胞凝集体における細胞の分布が偏ることが抑制される。前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径が200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、90μm以下であることがさらに好ましく、60μm以下であることが特に好ましい。具体的には、前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径が、上述した下限値及び上限値の任意の組み合わせの範囲内であってもよく、例えば、15μm以上90μm以下であることが好ましく、15μm以上60μm以下であることがより好ましい。前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維径をDとした場合、その標準偏差が0.6D以下であることが好ましく、0.5D以下であることがより好ましく、0.4D以下であることがさらに好ましく、0.3D以下であることがさらにより好ましく、0.2D以下であることが特に好ましい。
【0021】
前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長が50μm以上であることで、細胞間にゼラチン短繊維が配置されやすく、細胞同士又はゼラチン短繊維同士が密集することが抑制され、細胞へ栄養や酸素が供給されやすい。前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長が80μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、120μm以上であることがさらに好ましく、150μm以上であることが特に好ましい。また、前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長が400μm以下であることで、該ゼラチン短繊維が培地中に分散しやすく、該ゼラチン短繊維が絡まず、細胞と凝集しやすいことから、長期間培養した場合でも、細胞活性が高い繊維凝集体を得ることができる。前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長が380μm以下であることが好ましく、360μm以下であることがより好ましく、330μm以下であることがさらに好ましく、300m以下であることが特に好ましい。具体的には、前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長が、上述した下限値及び上限値の任意の組み合わせの範囲内であってもよく、例えば、120μm以上330μm以下であることが好ましく、150μm以上300μm以下であることがより好ましい。前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長をLとした場合、その標準偏差が0.6L以下でることが好ましく、0.5L以下であることがより好ましく、0.4L以下であることがさらに好ましい。
【0022】
前記ゼラチン短繊維は、特に限定されないが、水に分散させた際の平均繊維長/平均繊維径で表されるアスペクト比が3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。アスペクト比が上述した範囲内であると、ゼラチン短繊維による細胞凝集体形成促進効果を向上させるとともに、細胞活性をより高めることができる。アスペクト比の上限は、特に限定されず、例えば、40以下であってもよく、20以下であってもよい。アスペクト比は、特に限定されず、具体的には、上述した下限値及び上限値の任意の組み合わせの範囲内であってもよく、例えば、3以上40以下であることが好ましく、4以上40以下であることがより好ましく、5以上40以下であることがさらに好ましく、5以上20以下であることが特に好ましい。
【0023】
本発明において、ゼラチン短繊維の水に分散させた際の平均繊維径及び平均繊維長は、下記のように測定することができる。ゼラチン短繊維5gを蒸留水100mLに分散させ、3分間以上放置した後の水分散液(懸濁液)を倒立顕微鏡で観察して撮影し、撮影した写真から任意に選択した400本の繊維の繊維径と繊維長を計測し、400本の繊維の繊維径と繊維長の平均をそれぞれ算出し、平均繊維径及び平均繊維長とする。ゼラチン短繊維の質量が5g未満の場合は、ゼラチン短繊維の質量1gあたりに蒸留水が20mLになるようにした以外は、上記と同様にして平均繊維径及び平均繊維長を測定することができる。ゼラチン短繊維の水分散液中の繊維の本数が400本未満の場合は、水分散液中の全ての繊維の繊維径と繊維長を計測し、それらの繊維径と繊維長の平均をそれぞれ算出すればよい。なお、本明細書において、特に指摘がない場合、各種操作は、室温(15~25℃)で行うことを意味する。
【0024】
前記ゼラチン短繊維は、耐水性を高め、培地中での細胞との共培養において形態を維持しやすく、効果的に細胞凝集体を形成する観点から、架橋されていることが好ましい。架橋は、架橋剤等の化合物を用いた化学架橋であってもよく、生体安全性の観点から、生体安全性を有する架橋剤を用いる架橋、又は架橋剤を用いない架橋であることが好ましい。架橋剤を用いない架橋としては、例えば、熱架橋、電子線架橋、γ線等の放射線架橋、紫外線架橋等が挙げられ、簡便に所望の架橋効果を得やすい観点から、熱架橋であることが好ましく、熱脱水架橋であることがより好ましい。熱脱水架橋は、例えば、100℃以上160℃以下で、24時間以上96時間以下行ってもよい。また、熱脱水架橋は、例えば、1kPa以下の真空下で行ってもよい。
【0025】
前記ゼラチン短繊維は、特に限定されないが、ゼラチン長繊維不織布、或いは、湿式紡糸又は乾式紡糸によって形成されたフィラメント状の繊維や繊維束を切断することで得ることができる。
【0026】
本発明の1以上の実施形態において、ゼラチン長繊維不織布を用いる場合、夾雑物の発生を抑制し、製品汚染を防ぐ観点から、前記ゼラチン長繊維不織布は、ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から押し出し、ノズル吐出口の後方に位置し、前記ノズル吐出口とは非接触状態の流体噴射口から前方に向けて圧力流体を噴射し、前記押し出された紡糸液を前記圧力流体に随伴させて乾式でダイレクトに繊維化し、得られたゼラチン長繊維を集積させてゼラチン長繊維不織布にすることで作製することが好ましい。圧力流体噴射口は、ノズル吐出口とは独立にかつ非接触状態で後方に配置されているため、紡糸液が混入することはない。このため、ゼラチン長繊維不織布にコンタミが混入することを防止できる。
【0027】
まず、ゼラチン単独、或いは、必要に応じてゼラチンと上述した他の成分として用いることができる他の生体適合ポリマーを水に溶解して紡糸液を調製する。溶解温度(水の温度)は20℃以上90℃以下が好ましく、40℃以上90℃以下であることがより好ましい。必要に応じて、ゼラチンを水に溶解した後、フィルトレーションして異物やごみなどを除去してもよい。また、必要に応じて、その後、減圧脱泡又は真空脱泡して溶解空気を除去してもよい。効率よく気体(気泡)を除去する観点から、減圧脱泡時の真空度は5kPa以上30kPa以下であることが好ましい。ゼラチンが水溶性であることで、紡糸液として水溶液の状態で紡糸でき、生体に対する安全性が高くなる。水としては、例えば、純水、蒸留水、超純水等を適宜用いることができる。なお、他の成分として、他の生体適合性水溶性高分子を用いる場合、ゼラチンと同時に水に溶解することで、紡糸液を調製することができる。
【0028】
前記ゼラチンを含む紡糸液(ゼラチン水溶液)の温度は20℃以上90℃以下であることが好ましく、40℃以上90℃以下であることがより好ましい。前記の範囲であればゼラチンは安定したゾル状態を維持できる。また、前記ゼラチン水溶液のゼラチン濃度は、ゼラチン水溶液を100質量%とした時、30質量%以上55質量%以下であることが好ましい。さらに好ましい濃度は32質量%以上50質量%以下である。前記の濃度であれば安定したゾル状態を維持できる。前記ゼラチン水溶液(紡糸液)の粘度は500mPa・s以上3000mPa・s以下が好ましい。ゼラチン水溶液の粘度が上述した範囲であれば安定した紡糸ができる。
【0029】
前記ゼラチンを含む紡糸液を紡糸機のノズルから吐出し、前記ノズル周囲から圧力流体を供給し、前記吐出したゼラチン水溶液を前記圧力流体に随伴させて繊維形成させ、得られたゼラチン長繊維を集積してゼラチン長繊維不織布とする。
【0030】
前記圧力流体の温度は、20℃以上120℃以下であることが好ましく、80℃以上120℃以下であることがより好ましい。圧力流体の流速及び周囲雰囲気の温度にもよるが、前記の温度範囲であれば安定した紡糸ができる。圧力流体は空気を使用することが好ましく、圧力は0.1MPa以上1MPa以下であることが好ましい。前記の範囲であれば、ノズル吐出口から空気中に押し出された紡糸液を吹き飛ばして繊維化できる。
【0031】
前記ゼラチン長繊維不織布は紡糸後に繊維を集積(堆積)させる時に繊維同士が、水分を含んだ状態で積層されるため、溶着したり互いに絡んで一体化されている。繊維を堆積させる際の捕集距離を変えることで、容易に不織布密度を変えることができる。ゼラチン長繊維不織布において、ゼラチン長繊維の繊維長は数メートル~数千メートルであってもよい。
【0032】
前記ゼラチン長繊維不織布において、水で膨潤した際のゼラチン長繊維の平均繊維径は、5μm以上400μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましい。ノズル径(内径)等適宜を調整することで、所望の平均繊維径を有するゼラチン長繊維不織布を得ることができる。
【0033】
前記ゼラチン長繊維不織布は、架橋することが好ましい。これにより形態安定性及び耐水性を高めることができ、ゼラチン長繊維不織布を切断してゼラチン短繊維を得る工程の作業性が良好になる。架橋は、架橋剤等の化合物を用いた化学架橋であってもよいが、生体安全性の観点から、生体安全性を有する架橋剤を用いる架橋、架橋剤を用いない架橋であることが好ましい。架橋剤を用いない架橋としては、例えば、熱架橋、電子線架橋、γ線等の放射線架橋、紫外線架橋等が挙げられる。電子線照射、γ線等の放射線照射の場合は、滅菌と架橋を同時にすることもできる。簡便に所望の架橋効果を得やすい観点から、熱架橋であることが好ましく、熱脱水架橋であることがより好ましい。熱脱水架橋は、例えば、100℃以上160℃以下で、24時間以上96時間以下行ってもよい。また、熱脱水架橋は、例えば、1kPa以下の真空下で行ってもよい。前記ゼラチン長繊維不織布は、架橋する前に乾燥してもよい。乾燥は、室温における風乾でもよく、真空凍結乾燥でもよい。
【0034】
次に、前記ゼラチン長繊維不織布を切断してゼラチン短繊維を得る。操作が簡便である観点から、水中で切断することが好ましい。また、切断効率を高める観点から、前記ゼラチン長繊維不織布を、例えば、5~10mm角等の所定のサイズに切断してから、切断したゼラチン長繊維不織布を水中でミキサーを用いてさらに切断(粉砕)することで、ゼラチン短繊維を得ることが好ましい。得られたゼラチン短繊維は、2本以上の繊維が交点を有する枝分かれ形状のゼラチン短繊維を含んでもよいが、個々の繊維は互いに分離した形状であることが好ましい。水としては、例えば、純水、蒸留水、超純水等を用いることができる。ミキサーとしては、繊維にダメージを与えず、繊維の長さを短くすることができるものであればよく、特に限定されない。粉砕は、特に限定されないが、例えば、フリッチュ社製のP-11メッサーミル等の超高速回転型ミキサーの場合、回転数2000rpm以上14000rpm以下の条件下で5秒以上10分以下行うことができる。
【0035】
図6は本発明の一実施例で使用する不織布製造装置の模式的説明図である。不織布製造装置10において、加温槽1に入れたゼラチンを含む紡糸液2をノズル吐出口3から空気中に押し出す。加温槽1にはコンプレッサー4により、所定の圧力をかけておく。12は保温容器である。
また、ノズル吐出口3の後方に位置し、ノズル吐出口3とは非接触状態の流体噴射口5から前方に向けて圧力流体7を噴射させる。流体噴射口5にはコンプレッサー6から圧力流体(例えば圧空)が供給される。流体噴射口5とノズル吐出口3との距離は5~30mmが好ましい。
押し出された紡糸液は圧力流体7に随伴されてゼラチン長繊維8となり、巻き取りロール11上で堆積されてゼラチン長繊維不織布9となる。この時、堆積された長繊維は水分を含んでいたり、完全には固化していないので、繊維交点の少なくとも一部において接している繊維が互いに溶着する。なお、巻き取りロール以外でもネット等で長繊維を捕集し堆積してゼラチン長繊維不織布にしてもよい。
【0036】
本発明の1以上の実施形態において、ゼラチン短繊維は、ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸し、得られたゼラチンフィラメント糸を切断することでも得ることができる。
【0037】
まず、ゼラチンを含む紡糸液を調製する。紡糸液は、ゼラチン長繊維不織布の製造に用いるものと同様のものを用いることができる。簡単に言うと、例えば、ゼラチン単独、或いは、必要に応じてゼラチンと上述した他の成分として用いることができる他の生体適合ポリマーを水に溶解した後、減圧脱泡して溶解空気を除去することで紡糸液を得ることができる。溶解した後、フィルトレーションして異物やごみなどを除去してもよい。溶解温度は40℃以上90℃以下が好ましい。減圧脱泡時の真空度は5kPa以上30kPa以下であることが好ましい。
【0038】
次に、前記ゼラチンを含む紡糸液を紡糸機のノズル吐出口から空気中に押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸する。前記加熱紡糸筒は、温度が120℃以上180℃以下に保持されており、かつ押し出し物の加熱紡糸筒中における滞留時間は5秒以上とするのが好ましい。これにより、押し出し物から急激に水分が除去され、糸条が形成される。
【0039】
前記加熱紡糸筒は、特に限定されないが、例えば内径が200mmステンレス管にヒーターを巻きつけた長さ2mの紡糸筒を用いることができる。前記加熱紡糸筒24は、複数の区画に区分けられてもよく、それぞれの区画において温度制御を行ってもよい。前記加熱紡糸筒は鉛直方向に向いていることが好ましい。そして、加熱紡糸筒を出た位置では、ゼラチン中空糸は中空状体であり、ここでカットすることで、得られるゼラチンフィラメントは中空糸となる。加熱紡糸筒を出た位置で中空になる理由は、加熱紡糸筒内で急激に水分が除去されるためと思われる。カットせずに、巻き取ることで、中空がつぶれて断面が扁平になった扁平糸を得ることができる。
【0040】
前記ゼラチンフィラメントにおいて、水で膨潤した際の平均繊維径は、5μm以上400μm以下であることが好ましく、10μm以上200μm以下であることがより好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましい。ノズル径(内径)等適宜を調整することで、所望の平均繊維径を有するゼラチンフィラメントを得ることができる。なお、前記ゼラチンフィラメントが扁平糸の場合、個々の繊維において、繊維径は、長径と短径の平均値である。
【0041】
前記ゼラチンフィラメントは、架橋することが好ましい。これにより形態安定性及び耐水性を高めることができ、前記ゼラチンフィラメントを切断してゼラチン短繊維を得る工程の作業性が良好になる。架橋は、ゼラチン長繊維不織布の製造方法について説明したのと同様に行うことができる。簡便に所望の架橋効果を得やすい観点から、熱架橋であることが好ましく、熱脱水架橋であることがより好ましい。熱脱水架橋は、例えば、100℃以上160℃以下で、24時間以上96時間以下行ってもよい。また、熱脱水架橋は、例えば、10kPa以下の真空下で行ってもよい。前記ゼラチンフィラメントは、架橋する前に乾燥してもよい。乾燥は、室温における風乾でもよく、真空凍結乾燥でもよい。
【0042】
次に、前記ゼラチンフィラメントを切断してゼラチン短繊維を得る。操作が簡便である観点から、水中で切断することが好ましい。また、切断効率を高める観点から、前記ゼラチンフィラメントを、例えば、繊維長が5~10mmになるように切断し、その後、水中でミキサーを用いてさらに切断(粉砕)することで、ゼラチン短繊維を得ることが好ましい。水としては、例えば、純水、蒸留水、超純水等を用いることができる。ミキサーとしては、繊維にダメージを与えず、繊維の長さを短くすることができるものであればよく、特に限定されない。粉砕は、特に限定されないが、例えば、フリッチュ社製のP-11メッサーミル等の超高速回転型ミキサーの場合、回転数2000rpm以上14000rpm以下の条件下で5秒以上10分以下行うことができる。
【0043】
図7(a)及び(b)は、本発明の1以上の実施形態で用いるフィラメント製造装置20の模式的説明図である。シリンジ21に入れたゼラチンを含む紡糸液22をノズル23から空気中に押し出す。具体的には、シリンジ21の末端より0.1MPaの加圧空気を送ってノゾル23から紡糸液22を押し出すことができる。ノズル23は通常の丸断面でよい。ノズル23の下には加熱紡糸筒24が直結している。加熱紡糸筒24は24a-24dの4区画からなり、それぞれの区画で温度制御が可能となっている。
図7(a)に示すように、ゼラチンフィラメント25を、ガイドロール26を通過して巻き取り機27に巻き取ることで、扁平糸が得られる。
図7(b)に示すように、加熱紡糸筒24を出た下部で自重落下するゼラチンフィラメント25をカットすることで、所定長さの中空糸が得られる。
【0044】
前記ゼラチン短繊維は、エチレンオキサイドガス滅菌、蒸気滅菌、電子線照射やγ線等の放射線照射により滅菌してもよい。
【0045】
前記ゼラチン短繊維及び細胞を培地中で培養(浮遊培養)することで、細胞とゼラチン繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が細胞凝集体の表面に突出していない3次元の塊状の細胞凝集体を形成することができる。本発明において、「ゼラチン短繊維が細胞凝集体の表面に突出していない」とは、ゼラチン短繊維が3次元の塊状の細胞凝集体の内部に存在する、すなわち、細胞凝集体の表面は細胞で被覆されていることを意味する。上述したとおり、細胞接着性を有し、ハイドロゲルとなり得るゼラチンを主成分とするとともに、平均繊維径と平均繊維長が上述した範囲内であるゼラチン短繊維を細胞と培地中で共培養することで、培地中で均一に分散して膨潤したゼラチン短繊維の表面に細胞が接着しやすく、細胞間にゼラチン短繊維が配置されることで、細胞とゼラチン短繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が細胞凝集体の表面に突出していない細胞凝集体を形成しやすい。また、細胞に栄養や酸素が供給されやすく、長期間培養することで得られた大きなサイズの細胞凝集体も、細胞活性が高くなる。
図3に、本発明の1例の細胞凝集体の3次元画像を示している。
図3において、白い部分が細胞であり、黒い部分がゼラチン短繊維である。
図3から分かるように、細胞とゼラチン短繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が細胞凝集体の表面に突出していない3次元の塊状の細胞凝集体を形成しており、細胞間にゼラチン短繊維が配置されており、細胞がゼラチン短繊維を被覆している。
【0046】
本発明の1以上の実施形態において、前記ゼラチン短繊維は、細胞接着因子、細胞誘導因子、細胞に栄養やエネルギを与える物質等でコーティングされてもよい。これにより、細胞凝集体の形成速度を高めることができる。細胞接着因子としては、特に限定されないが、例えば、フィブロネクチン等が挙げられる。細胞に栄養やエネルギを与える物質としては、特に限定されないが、例えば、ATP、ピルビン酸等が挙げられる。また、本発明の1以上の実施形態において、前記ゼラチン短繊維を細胞誘導因子、成長因子等の生理活性物質を含む溶液に浸して、これらの成分を含ませてもよい。繊維凝集体の形成過程において、ゼラチン短繊維から、これらの生理活性物質が徐々に放出されることで、大きい細胞凝集体でも、均一に分化することができる。
【0047】
前記細胞凝集体は、細胞の種類や細胞凝集体の用途等に応じて、サイズを決めることができるが、例えば、移植した部位において機能しやすい観点から、例えば、平均径が200μm以上であることが好ましく、400μm以上であることがより好ましい。本発明において、細胞凝集体の平均径は、細胞凝集体の長径及び短径の平均を意味し、細胞凝集体の長径は、細胞凝集体の外周における任意の二点を結んだ直線の内、最も長い直線すなわち長軸の長さを意味し、細胞凝集体の短径は、細胞凝集体の外周における任意の二点を結び、かつ前記長軸に直交する直線の内、最も短い直線すなわち短軸の長さを意味する。
【0048】
本発明の1以上の実施形態において、細胞は、動物細胞であればよく、その由来は特に限定されない。動物としては、ヒトでもよく、ヒト以外の動物でもよい。ヒト以外の動物としては、例えば、サル、チンパンジー等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター等の齧歯類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の有蹄類等が挙げられる。また、本発明の1以上の実施形態において、細胞は、個々の細胞、細胞株、初代培養等培養で得られる細胞等を含む。前記細胞としては、特に限定されないが、例えば、体細胞、幹細胞、前駆細胞、生殖細胞等が挙げられる。
【0049】
体細胞は、生体を構成する体細胞や体細胞から派生した癌細胞を含む。生体を構成する体細胞としては、特に限定されず、例えば、線維芽細胞、筋細胞、内皮細胞、骨芽細胞、内皮細胞、膀胱細胞、肺細胞、骨細胞、神経細胞、肝細胞、軟骨細胞、上皮細胞、中皮細胞等が挙げられる。癌細胞としては、特に限定されず、例えば、乳癌細胞、腎癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、肝癌細胞、子宮頸癌細胞、食道上皮癌、膵癌、大腸癌、膀胱癌等が挙げられる。
【0050】
幹細胞は、様々な特殊化した細胞型へ分化する可能性がある細胞である。幹細胞としては、特に限定されず、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性癌腫細胞(EC)、胚性生殖幹細胞(EG)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、成体幹細胞、胚盤胞由来幹細胞、生殖隆起由来幹細胞、奇形腫由来幹細胞、オンコスタチン非依存性幹細胞(OISC)、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、羊水由来間葉系幹細胞、皮膚由来間葉系幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞等が挙げられる。
【0051】
前駆細胞は、前記幹細胞から発生し生体を構成する最終分化細胞へ分化することができる細胞である。
【0052】
生殖細胞としては、精子、精細胞、卵子、卵細胞等が挙げられる。
【0053】
上述した細胞は、1種を単独で用いてもよく、目的等に応じて2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記培地(液体培地)としては、特に限定されず、細胞の種類に応じて、細胞の生存増殖に必要な成分を含むものを適宜用いることができる。前記培地は、血清、抗生物質及び成長因子等を含んでもよい。血清は、例えば、ウシ血清、ウシ胎児血清、ウマ血清、ヒト血清等を適宜用いることができる。抗生物質は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、アンフォテリシン、アンピシリン、ミノマイシン、カナマイシン等を適宜用いることができる。成長因子は、細胞増殖因子、分化誘導因子、細胞接着因子等を適宜用いることができる
【0055】
前記培地において、細胞の播種密度(細胞の播種量/培地の体積)は、特に限定されないが、例えば、1,000細胞/mL以上100,000細胞/mL以下であることが好ましく、2,000細胞/mL以上50,000細胞/mL以下であることがより好ましく、4,000細胞/mL以上25,000細胞/mL以下であることがさらに好ましい。細胞の播種量が上述した範囲内であると、ゼラチン短繊維と共培養することで得られた細胞とゼラチン短繊維が凝集した細胞凝集体を効果的に形成することができ、得られた細胞凝集体の細胞活性を高めることができる。
【0056】
前記培地において、ゼラチン短繊維の濃度(ゼラチン短繊維の質量/培地の体積)は、特に限定されないが、例えば、0.01mg/mL以上1mg/mL以下であることが好ましく、0.02mg/mL以上0.5mg/mL以下であることがより好ましく、0.04mg/mL以上0.25mg/mL以下であることがさらに好ましい。ゼラチン短繊維の濃度が上述した範囲内であると、ゼラチン短繊維の培地中での分散性が高く、細胞と共培養することで得られた細胞とゼラチン短繊維が凝集した細胞凝集体の細胞活性を高めることができる。
【0057】
前記培地において、前記細胞の播種量とゼラチン短繊維の添加量の比(細胞の播種量/ゼラチン短繊維の添加量)は、特に限定されないが、例えば、1,000細胞/mg以上1x106細胞/mg以下であることが好ましく、10,000細胞/mg以上8x105細胞/mg以下であることがより好ましく、20,000細胞/mg以上6x105細胞/mg以下であることがさらに好ましい。細胞の播種量とゼラチン短繊維の添加量の比が上述した範囲であると、細胞とゼラチン短繊維が凝集した細胞凝集体を効果的に形成することができ、得られた細胞凝集体の細胞活性を高めることができる。
【0058】
培養は、細胞凝集体を形成することができる低接着性条件で行えばよい。例えば、培養基材として、接着防止面を有し、底が細くなっていることが好ましい。細胞が培養基材に接着することを防ぎ、細胞とゼラチン短繊維が凝集した細胞凝集体を形成しやすい。ポリスチレン又はポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標)とも称される)用いた細胞培養容器等の培養基材を用いてもよく、寒天、アガロース、ポリビニルアルコール等で表面をコーティングした細胞培養容器等の培養基材を用いてもよい。細胞培養容器は、U底(丸底とも称される)やV底等の底が細くなっている、ディッシュ、プレート、チューブ及びフラスコ等を用いることができる。
【0059】
細胞とゼラチン短繊維の共培養は、例えば、27℃以上40℃以下で行ってもよく、31℃以上37℃以下であってもよい。二酸化炭素は、2%以上10%以下の範囲であってもよい。
【0060】
培養時間は、細胞凝集体を形成するよう、細胞種類、細胞数等に応じて適宜決めればよいが、例えば、1~8日継続して培養してもよく、2~7日継続して行ってもよく、3~6日継続して行ってもよい。培養は、静置状態で行ってもよく、流動状態で行ってもよい。流動状態の培養としては、撹拌又は振とうさせながら培養する懸濁培養で行ってもよい。培地は、2~3日毎に交換してもよい。
【0061】
上述したゼラチン短繊維、細胞及び培地を含むキットは、細胞凝集体の作製キットとして用いることができ、具体的には、細胞及びゼラチン短繊維が凝集された細胞凝集体を形成するのに用いることができる。前記作製キットは、細胞培養容器等の培養基材を含んでもよい。
【0062】
前記細胞凝集体は、例えば、ヒト又はヒト以外の動物の組織の増大、修復又は再生等の細胞治療に用いることができる。組織としては、特に限定されず、例えば、骨、軟骨、腱、半月、筋肉及び脂肪等の結合組織等が挙げられる。
【0063】
前記細胞凝集体は、ゼラチン短繊維を含むことにより、強度が高くなり、それゆえ、細胞治療に用いる際のハンドリング性が良好になる。また、前記細胞凝集体は、ゼラチン短繊維を含むことにより、強度が高くなり、それゆえ、優れた形態維持性を有することになり、例えば、注射やカテーテル等により目的の箇所に注入でき、定着率も向上し得る。
【0064】
前記細胞凝集体は、サイズが大きく、かつ少ない細胞数で高い細胞活性を発揮する観点から、細胞の個数と繊維の質量の比(細胞の個数/繊維の質量)は、10,000細胞/mg以上1x106細胞/mg以下であることが好ましく、20,000細胞/mg以上6x105細胞/mg以下であることがより好ましい。
【0065】
前記細胞凝集体は、ゼラチン短繊維を含むことにより、凍結による細胞損傷を防ぐことができ、具体的には、凍結による細胞活性の低減を抑制することができる。
【0066】
前記ゼラチン短繊維は、上述したように細胞凝集体の足場材として好適に用いることができる以外に、例えば、大量浮遊培養用のマイクロキャリア、バイオ3Dプリンターの添加材、三次元培養時の異種細胞の接着助剤、細胞シートの極性選択培養足場材、細胞活性の向上材、細胞注射用足場材、播種効率向上添加材、細胞凍結時の凍結細胞保護材等として用いることができる。
【0067】
本発明は、特に限定されないが、好ましくは以下の態様を含む。
[1] ゼラチンを主成分とするゼラチン短繊維であって、
水に分散させた際の平均繊維径が5μm以上400μm以下であり、かつ平均繊維長が50μm以上400μm以下であり、
細胞とともに細胞凝集体を形成するのに用いることを特徴とするゼラチン短繊維。
[2] 前記ゼラチン短繊維は、架橋されている、[1]に記載のゼラチン短繊維。
[3] 前記平均繊維径をDとした場合、その標準偏差は0.6D以下であり、かつ、前記平均繊維長をLとした場合、その標準偏差は0.6L以下である、[1]又は[2]に記載のゼラチン短繊維。
[4] 前記ゼラチン短繊維は、水に分散させた際の平均繊維長/平均繊維径で表されるアスペクト比が3以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のゼラチン短繊維。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のゼラチン短繊維の製造方法であって、
ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、
前記ノズル吐出口の後方に位置し、前記ノズル吐出口とは非接触状態の流体噴射口から前方に向けて圧力流体を噴射し、
前記押し出された紡糸液を前記圧力流体に随伴させて繊維形成させ、前記繊維形成した繊維を集積させてゼラチン長繊維不織布とし、
前記ゼラチン長繊維不織布を切断することでゼラチン短繊維を得ることを特徴とするゼラチン短繊維の製造方法。
[6] [1]~[4]のいずれかに記載のゼラチン短繊維の製造方法であって、
ゼラチンを含む紡糸液をノズル吐出口から空気中に押し出し、加熱紡糸筒を通過させて乾式紡糸し、
得られたゼラチンフィラメント糸を切断することでゼラチン短繊維を得ることを特徴とするゼラチン短繊維の製造方法。
[7] 前記加熱紡糸筒は鉛直方向に向いている、[6]に記載のゼラチン短繊維の製造方法。
[8] 前記ゼラチン長繊維不織布又は前記ゼラチンフィラメント糸を架橋した後に、切断する、[5]~[7]のいずれかに記載のゼラチン短繊維の製造方法。
[9] [1]~[4]のいずれかに記載のゼラチン短繊維と細胞が凝集された細胞凝集体であり、前記ゼラチン短繊維が前記細胞凝集体の表面に突出していないことを特徴とする細胞凝集体。
[10] 前記細胞凝集体の平均径が0.6mm以上である、[9]に記載の細胞凝集体。
[11] 前記細胞凝集体において、細胞数/ゼラチン短繊維の質量は1x104細胞/mg以上1x106細胞/mg以下である、[9]又は[10]に記載の細胞凝集体。
[12] [1]~[4]のいずれかに記載のゼラチン短繊維及び細胞を培地中で培養することで、細胞とゼラチン繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が表面に突出していない細胞凝集体を形成することを特徴する細胞凝集体の製造方法。
[13] 前記培地において、ゼラチン短繊維の濃度(ゼラチン短繊維の質量/培地の体積)は0.01mg/mL以上1mg/mL以下である、[12]に記載の細胞凝集体の製造方法。
[14] 前記培地において、細胞の播種量とゼラチン短繊維の添加量の比(細胞の播種量/ゼラチン短繊維の添加量)は1x104細胞/mg以上1x106細胞/mg以下である、[12]又は[13]に記載の細胞凝集体の製造方法。
[15] [1]~[4]のいずれかに記載のゼラチン短繊維、細胞及び培地を含み、
細胞とゼラチン短繊維が凝集された細胞凝集体を形成するのに用いることを特徴とする細胞凝集体の作製キット。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
測定方法は下記のとおりである。
<平均繊維径及び平均繊維長>
ゼラチン短繊維5gを100mLの蒸留水中に分散させ、3分間放置した後の水分散液をデジタルマイクロスコープ(Zeiss社製、品名「AxioCAM ERc5」)を搭載した倒立顕微鏡(Olympus社製「CKX53」、4倍)で観察して撮影した。次に、コンピュータソフトウェア(PhotoRuler,The Genus Incybe)を使用して、撮影した写真から任意に選択した繊維400本の繊維径と繊維長を計測し、400本の繊維の繊維径と繊維長の平均をそれぞれ算出し、平均繊維径及び平均繊維長とした。
【0070】
(実施例1)
<ゼラチン長繊維不織布の作製>
ゼラチンとして新田ゼラチン社製(ゼリー強度262g、原料:アルカリ処理牛骨)を使用し、ゼラチン:水=3:5の質量比(ゼラチン濃度37.5質量%)とし、温度60℃で溶解した。ゼラチン水溶液の60℃における粘度は960~970mPa・sであった。このゼラチン水溶液を紡糸液とし、
図6に示す不織布製造装置を使用してゼラチン長繊維不織布を製造した。紡糸液の温度は60℃、ノズル直径(内径)250μm、吐出圧0.2MPa、ノズル高さ5mm、エアー圧力0.375MPa、エアー温度100℃、流体噴射口5とノズル吐出口3との距離は5mm、捕集距離50cmとし、巻き取りローラ11でゼラチン長繊維不織布9を巻き取った。
次いで、ゼラチン長繊維不織布を室温(20℃)で一晩風乾し、その後、真空下(1kPa)、140℃で48時間熱架橋させた。
【0071】
<ゼラチン短繊維の作製>
得られたゼラチン長繊維不織布を5~10mm角に切断し、切断したゼラチン長繊維不織布5gに蒸留水を100mL加えて、超高速回転型ミキサー(フリッチュ社製の「P-11メッサーミル」)を用いて2000rpmで3分間撹拌することで、ゼラチン長繊維不織布を切断してゼラチン短繊維の水分散液を得た。得られたゼラチン短繊維の水分散液(懸濁液)を用いて、上述したとおり、ゼラチン短繊維の平均繊維径と平均繊維長を測定したところ、平均繊維径が40μm(標準偏差5μm)であり、平均繊維長が230μm(標準偏差120μm)であり、アスペクト比は5.75であった。
図1に、ゼラチン短繊維の水分散液をデジタルマイクロスコープ(Zeiss社製、品名「AxioCAM ERc5」)を搭載した倒立顕微鏡(Olympus社製「CKX53」、10倍)で観察して撮影した写真を示した。
次に、繊維懸濁液を-30℃の冷凍庫で凍結させた後、真空凍結乾燥を行い、乾燥したゼラチン短繊維を得た。
【0072】
(比較例1)
得られたゼラチン長繊維不織布を5~10mm角に切断し、切断したゼラチン長繊維不織布5gに蒸留水を100mL加えて、超高速回転型ミキサー(フリッチュ社製の「P-11メッサーミル」)を用いて2000rpmで1分間撹拌することで、ゼラチン短繊維の水分散液における平均繊維長が828μm(標準偏差0.57μm)になるようにした以外は、実施例1と同様にして乾燥したゼラチン短繊維を得た。
【0073】
(実施例A1)
<細胞凝集体の作製>
U底の96ウェルプレートの各ウェルに培地(MEMα、10%牛胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)200μLと、実施例1で得られたゼラチン短繊維0.02mg(乾燥時の質量)を添加した後、そこへマウス線維芽細胞MC3T3-E1細胞を1ウェル当たりの細胞数が2×104細胞となるように播種した。その後、96ウェルプレートを37℃、5%のCO2の条件でインキュベートした。
なお、U底の96ウェルプレートは、細胞が接着するのを防ぐために非接着コートを行ったものを用いた。具体的には、各ウェルにポリビニルアルコール1質量(w/v)%水溶液を200μL加えて37℃で一晩インキュベートした後、ポリビニルアルコール水溶液を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄したU底の96ウェルプレートを用いた。
【0074】
<凝集状態の観察>
細胞とゼラチン短繊維の凝集状態を倒立顕微鏡(オリンパス社製「CKX53」)で観察し、顕微鏡カメラ(カールツァイスマイクロスコピー社製の「Axicam ERc 5S」)で画像を記録した。0日目(播種直後)、1日目(播種から24時間後)、2日目(播種から48時間後)、及び3日目(播種から72時間後)の画像を、それぞれ、
図2のa~dに示した。得られた画像から、細胞凝集体の長径及び短径を計測し、平均径(=(長径+短径)/2)を算出した。細胞凝集体の長径は、細胞凝集体の外周における任意の二点を結んだ直線の内、最も長い直線すなわち長軸の長さを意味し、細胞凝集体の短径は、細胞凝集体の外周における任意の二点を結び、かつ前記長軸に直交する直線の内、最も短い直線すなわち短軸の長さを意味する。その結果を下記表1に示した。また、3日目(播種から72時間後)の細胞凝集体の3次元化画像を
図3に示した。
【0075】
<細胞凝集体の形態維持性>
細胞及びゼラチン短繊維を共培養して3日目に、注射針17G(Φ1.1mm)を付けた1mLのシリンジを用いて細胞凝集体と培地を吸って吐き出すことを5回繰り返した後、細胞凝集体の長径及び短径を計測し、平均径(=(長径+短径)/2)を算出した。その結果を下記表1に示した。
【0076】
<細胞凝集体の細胞活性>
3日目に得られた細胞凝集体の細胞活性としてのATP量を、ATP測定キット(「塊の」ATP測定試薬、東洋ビーネット)を用いて製造者の説明書にしたがって測定した。簡単に言うと、細胞凝集体に100μLの試薬を加えて10分間静置したのち、プレートリーダー(SpectraMax i3、Molecular Devices)で発光強度を測定した。ゼラチン短繊維を添加せずに形成して得られた細胞凝集体を対照サンプルとして、その発光強度を1とし、それぞれの発光強度比を算出し、ATP相対発光強度とした。
また、得られた細胞凝集体にトリプシンを加えて凝集体を解離し、細胞懸濁液とした。血球計算板を用いて細胞数を計数した。ATP相対発光強度を細胞数で割って、細胞凝集体の細胞一個当たりのATP相対発光強度を算出した。その結果を下記表2に示した。また、細胞凝集体の細胞数/ゼラチン短繊維の質量を算出し、その結果を表2に示した。
【0077】
<凍結保存後の細胞凝集体の細胞活性>
3日目に得られた細胞凝集体を細胞凍結容器(ミスターフロスティー、Nalgene社製)を用いて1分間1℃で緩慢凍結し、-80℃で7日凍結保存した後、37℃で解凍した後の細胞凝集体の細胞活性を上述したとおりに測定し、その結果を下記表2に示した。
【0078】
(比較例A1)
ゼラチン短繊維を添加しない以外は、実施例A1と同様にして、細胞凝集体を作製し、凝集状態を観察し、細胞凝集体の細胞活性を測定した。その結果を
図4、表1及び2に示した。
図4のa~dは、それぞれ、0日目(播種直後)、1日目(播種から24時間後)、2日目(播種から48時間後)、及び3日目(播種から72時間後)の画像である。
【0079】
(比較例A2)
実施例1で得られたゼラチン短繊維の代わりに比較例1で得られたゼラチン短繊維を用いた以外は、実施例A1と同様にして、細胞凝集体を作製し、凝集状態を観察した。なお、後述するように、比較例2では、細胞凝集体を形成していなかったため、細胞とゼラチン短繊維の塊の細胞活性を測定した。その結果を
図5、表1及び2に示した。
図5のa~dは、それぞれ、0日目(播種直後)、1日目(播種から24時間後)、2日目(播種から48時間後)、及び3日目(播種から72時間後)の画像である。
【0080】
【0081】
【0082】
図2、
図4、
図5及び表1から分かるように、実施例のゼラチン短繊維を用いた実施例A1では、細胞とゼラチン短繊維が凝集し、ゼラチン短繊維が表面に突出していない細胞凝集体が形成されたが、平均繊維長が400μmを超える比較例のゼラチン短繊維を用いた比較例A2では、3日間培養しても細胞凝集体を形成することができなかった。一方、ゼラチン短繊維を用いず細胞のみを培養した比較例A1では、培養1日目から細胞凝集体を形成するものの、培養2日目から細胞凝集体の大きさが減少していた。また、表2から分かるように、ゼラチン短繊維を添加することで細胞が増殖しており、細胞凝集体の細胞活性が高いのに対し、ゼラチン短繊維を添加していない場合、細胞は増殖しておらず、細胞凝集体の細胞活性も悪かった。
【0083】
(実施例A2)
1ウェル当たりの細胞数を1×104細胞に変更した以外は、実施例A1と同様にして、細胞凝集体を作製し、凝集状態を観察し、8日目の細胞凝集体の細胞活性を測定した。その結果を表3及び表4に示した。
【0084】
(実施例A3)
実施例1で得られたゼラチン短繊維の添加量を0.04mg(乾燥時の質量)及び1ウェル当たりの細胞数を1×104細胞に変更した以外は、実施例A1と同様にして、細胞凝集体を作製し、凝集状態を観察し、8日目細胞凝集体の細胞活性を測定した。その結果を表3及び表4に示した。
【0085】
(比較例A3)
ゼラチン短繊維を添加せず1ウェル当たりの細胞数を1×104細胞に変更した以外は、実施例A1と同様にして、細胞凝集体を作製し、凝集状態を観察し、8日目細胞凝集体の細胞活性を測定した。その結果表3及び表4に示した。
【0086】
【0087】
【0088】
表3及び表4から分かるように、実施例のゼラチン短繊維を用いた実施例A2及びA3では、ゼラチン短繊維を添加することで細胞が増殖しており、細胞凝集体の細胞活性が高いのに対し、ゼラチン短繊維を添加していない比較例A3では、細胞は増殖しておらず、細胞凝集体の細胞活性も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のゼラチン短繊維は、細胞と共培養することで細胞凝集体を形成するのに用いることができる。また、本発明の細胞凝集体は、ヒト又はヒト以外の動物の組織の増大、修復又は再生に用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 加温槽
2、22 紡糸液
3 ノズル吐出口
4,6 コンプレッサー
5 流体噴射口
7 圧力流体
8 ゼラチン長繊維
9 ゼラチン長繊維不織布
10 不織布製造装置
11 巻き取りロール
12 保温容器
20 フィラメント製造装置
21 シリンジ
23 ノズル(吐出口)
24 加熱紡糸筒
25 ゼラチンフィラメント
26 ガイドロール
27 巻き取り機