(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電源装置セット、電源装置及び電池カートリッジ
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240228BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240228BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
H02J9/06
H01M10/6563
H01M12/06
(21)【出願番号】P 2024504554
(86)(22)【出願日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2023031886
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523425153
【氏名又は名称】チョン ジンウ
(73)【特許権者】
【識別番号】523425946
【氏名又は名称】西村 正男
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】西村 正男
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特許第7244155(JP,B1)
【文献】特開2019-185990(JP,A)
【文献】特許第7233788(JP,B1)
【文献】特表2017-535029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00 -11/00
H01M 10/52 -10/667
H01M 12/00 -16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、
前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、
を有する電池カートリッジと、
前記電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を有する電源装置と、
を具備
し、
前記回路部は、
前記電池側端子部を一時的にショートさせ、
前記電池側端子部を一時的にショートさせたときの電流A、ショートさせてから所定時間後の回復電圧V、P(W)=AxVを検出し、
Pに基づき前記電池アセンブリの電池容量を判断する
パワーメータを有する
電源装置セット。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置セットであって、
前記電源装置は、前記パワーメータが測定した電池容量を表示する残量表示器を有する
電源装置セット。
【請求項3】
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、
前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、
を有する電池カートリッジと、
前記電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を有する電源装置と、
を具備し、
前記筐体は、2個の前記電池カートリッジである第1の電池カートリッジ及び第2の電池カートリッジを収容可能であり、
前記電源装置は、前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジの前記電池側端子部をそれぞれ着脱可能に接続可能な2個の前記電源装置側端子部を有し、
前記電圧出力端子部は、第1のメイン電圧出力端子及び第2のメイン電圧出力端子を有し、
前記回路部は、
前記第1の電池カートリッジからのDC電圧を前記第1のメイン電圧出力端子に出力し、同時に、前記第2の電池カートリッジからのDC電圧を前記第2のメイン電圧出力端子に出力する同時出力モードと、
前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジのDC電圧を前記第1のメイン電圧出力端子に出力し、前記第2のメイン電圧出力端子に出力しない片側出力モードと、
の間で切り替える切替スイッチを有する
電源装置セット。
【請求項4】
請求項3に記載の電源装置セットであって、
前記回路部は、
前記第1の電池カートリッジと、前記切替スイッチによる前記第2の電池カートリッジからの経路の接続点との間に設けられ、前記切替スイッチから前記第1の電池カートリッジへの逆流を防止する第1のダイオードと、
前記第2の電池カートリッジと、前記切替スイッチとの間に設けられ、前記切替スイッチから前記第2の電池カートリッジへの逆流を防止する第2のダイオードと、
を有する
電源装置セット。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電源装置セットであって、
前記回路部は、前記第1のメイン電圧出力端子又は前記第2のメイン電圧出力端子から出力されるDC電圧より低いDC電圧及び高いDC電圧を入力し、前記第1のメイン電圧出力端子又は前記第2のメイン電圧出力端子に対して、前記第1のメイン電圧出力端子又は前記第2のメイン電圧出力端子から出力されるDC電圧を基準として所定範囲のDC電圧を出力するレギュレータを有する
電源装置セット。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の電源装置セットであって、
前記第1のメイン電圧出力端子及び前記第2のメイン電圧出力端子は、それぞれ12VのDC電圧を出力する
電源装置セット。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の電源装置セットであって、
前記電圧出力端子部は、さらに、サブ電圧出力端子を有し、
前記同時出力モード及び前記片側出力モードの何れでも、前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジからのDC電圧が前記サブ電圧出力端子に出力される
電源装置セット。
【請求項8】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源装置セットであって、
前記電池アセンブリは、
直列接続された複数の空気電池セルを有する第1の直列電池群と、
直列接続された複数の空気電池セルを有し、前記第1の直列電池群に並列接続される第2の直列電池群と、
を有し、
前記電池側端子部は、
前記第1の直列電池群の正極に接続される第1の電池側ピンと、
前記第2の直列電池群の正極に接続される第2の電池側ピンと、
前記第1の直列電池群の負極及び前記第2の直列電池群の負極に並列に接続される第3の電池側ピンと、
を有し、
前記電源装置側端子部は、
前記第1の電池側ピンと着脱可能に接続可能な第1のケース側ピンと、
前記第2の電池側ピンと着脱可能に接続可能であり、前記第1のケース側ピンと接続される第2のケース側ピンと、
前記第3の電池側ピンと着脱可能に接続可能であり、グラウンド接続される第3のケース側ピンと、
を有する
電源装置セット。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源装置セットであって、
前記電源装置は、
前記複数の空気電池セルに外部から空気を供給するための吸気口と、
前記吸気口から供給され前記複数の空気電池セルを通過した空気が到達するチャンバと、
前記回路部に接続され、前記チャンバ内の空気を吸気して排出するファンと、
前記ファンから排出された空気を排気する排気口と、
前記回路部に接続され、前記チャンバに設けられた温度センサと、
を有し、
前記回路部は、前記温度センサの検出値に基づき、前記ファンのファンスピードを制御するファンコントローラを有する
電源装置セット。
【請求項10】
請求項9に記載の電源装置セットであって、
前記複数の空気電池セルから前記ファンまでの距離は、前記ファンの内径以上である
電源装置セット。
【請求項11】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源装置セットであって、
前記空気電池セルは、
酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入部と、
前記酸素導入部の前記酸素導入面と逆の面に積層された正極集電層と、
前記正極集電層に積層され、負極活物質としての金属を含む負極活物質層及び負極と、を有し、
前記電池カートリッジが前記電源装置の前記筐体に収容されたとき、前記負極活物質層及び負極が最上に位置する電源装置セット。
【請求項12】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源装置セットであって、
前記回路部は、前記筐体の一面から露出し、前記電源装置側端子部を介して接続された前記電池カートリッジと前記電圧出力端子部との電気的接続を可逆的にオンオフ可能なメインスイッチを有する
を具備する電源装置セット。
【請求項13】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電源装置セットであって、
前記空気電池セルは、空気亜鉛電池セルである
電源装置セット。
【請求項14】
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、を有する電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を具備
し、
前記回路部は、
前記電池側端子部を一時的にショートさせ、
前記電池側端子部を一時的にショートさせたときの電流A、ショートさせてから所定時間後の回復電圧V、P(W)=AxVを検出し、
Pに基づき前記電池アセンブリの電池容量を判断する
パワーメータを有する
電源装置。
【請求項15】
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、を有する電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を具備し、
前記筐体は、2個の前記電池カートリッジである第1の電池カートリッジ及び第2の電池カートリッジを収容可能であり、
前記電源装置は、前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジの前記電池側端子部をそれぞれ着脱可能に接続可能な2個の前記電源装置側端子部を有し、
前記電圧出力端子部は、第1のメイン電圧出力端子及び第2のメイン電圧出力端子を有し、
前記回路部は、
前記第1の電池カートリッジからのDC電圧を前記第1のメイン電圧出力端子に出力し、同時に、前記第2の電池カートリッジからのDC電圧を前記第2のメイン電圧出力端子に出力する同時出力モードと、
前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジのDC電圧を前記第1のメイン電圧出力端子に出力し、前記第2のメイン電圧出力端子に出力しない片側出力モードと、
の間で切り替える切替スイッチを有する
電源装置。
【請求項16】
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、
前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、
を有する電池カートリッジであって、
前記電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を有する電源装置
であって、
前記回路部は、
前記電池側端子部を一時的にショートさせ、
前記電池側端子部を一時的にショートさせたときの電流A、ショートさせてから所定時間後の回復電圧V、P(W)=AxVを検出し、
Pに基づき前記電池アセンブリの電池容量を判断する
パワーメータを有する
電源装置に着脱可能に収容可能である
電池カートリッジ。
【請求項17】
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、
前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、
を有する電池カートリッジであって、
前記電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を有する電源装置であって、
前記筐体は、2個の前記電池カートリッジである第1の電池カートリッジ及び第2の電池カートリッジを収容可能であり、
前記電源装置は、前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジの前記電池側端子部をそれぞれ着脱可能に接続可能な2個の前記電源装置側端子部を有し、
前記電圧出力端子部は、第1のメイン電圧出力端子及び第2のメイン電圧出力端子を有し、
前記回路部は、
前記第1の電池カートリッジからのDC電圧を前記第1のメイン電圧出力端子に出力し、同時に、前記第2の電池カートリッジからのDC電圧を前記第2のメイン電圧出力端子に出力する同時出力モードと、
前記第1の電池カートリッジ及び前記第2の電池カートリッジのDC電圧を前記第1のメイン電圧出力端子に出力し、前記第2のメイン電圧出力端子に出力しない片側出力モードと、
の間で切り替える切替スイッチを有する
電源装置に着脱可能に収容可能である
電池カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置と、電源装置に収容される電池カートリッジと、電源装置及び電池カートリッジを有する電源装置セットと、に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に充電する場合、外部電源から給電された充電器を設置して、電子機器のバッテリーを充電させることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、災害等で外部電源が使用できない場合、充電器から電子機器への給電はできなくなる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、特に災害時での電子機器の充電に適した電源装置と、電源装置に収容される電池カートリッジと、電源装置及び電池カートリッジを有する電源装置セットとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る電源装置セットは、
複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、
前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、
を有する電池カートリッジと、
前記電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、
前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、
前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、
前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、
を有する電源装置と、
を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特に災害時での電子機器の充電に適した電源装置と、電源装置に収容される電池カートリッジと、電源装置及び電池カートリッジを有する電源装置セットとを提供することができる。
【0008】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電源装置セットを示す。
【
図7】空気亜鉛電池を放電試験した結果である放電カーブの一例を示す。
【
図11】ファンと電池カートリッジの配置を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
【0011】
1.電源装置セット
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係る電源装置セットを示す。
【0013】
電源装置セット1は、2個の電池カートリッジ10と、電源装置20とを有する。
【0014】
2個の電池カートリッジ10は、同一の電池カートリッジである。以下、2個以上の部品の区別の必要が無い場合は、1個の部品のみを説明する。電池カートリッジ10は、電池側端子部101を有する。電池側端子部101は、3ピンコネクタであり、例えば雌型である。
【0015】
電源装置20は、筐体200と、内部に2個の電源装置側端子部201とを有する。切替スイッチ202、2個のランプ203、メインスイッチ204、2個の残量表示器205、電圧出力端子部206は、筐体200の前面211に露出して設けられる。
【0016】
筐体200は、2個の電池カートリッジ10を着脱可能に収容可能である。電池カートリッジ10は、電源装置20用の燃料として、消耗後交換が可能である。2個の電池カートリッジ10を筐体200に収容したときに、2個の電源装置側端子部201に、2個の電池カートリッジ10の電池側端子部101が着脱可能に接続される。電源装置側端子部201は、3ピンコネクタであり、例えば雄型である。
【0017】
電圧出力端子部206は、外部の電子機器(不図示)の端子を接続可能であり、電池カートリッジ10から電源装置側端子部201を介して出力されるDC電圧を電子機器に出力可能である。電圧出力端子部206は、第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208、サブ電圧出力端子209を有する。
【0018】
第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208は、車両のシガーソケットと同様のスペックであり、外部の電子機器(不図示)の端子を着脱可能であり、それぞれ12VのDC電圧を電子機器に出力する。
【0019】
メインスイッチ204は、2個の電源装置側端子部201を介して接続された2個の電池カートリッジ10と電圧出力端子部206との電気的接続を可逆的にオンオフ可能である。メインスイッチ204がユーザによりオンに操作されると、2個の電池カートリッジ10の電池容量(残量)が、それぞれ、2個の残量表示器205に表示される。残量表示器205は発光色の違い(例えば、緑、黄、赤)により電池容量を表示すればよい。
【0020】
切替スイッチ202は、同時出力モードと片側出力モードとの間で、電圧出力モードを切り替えるためのスイッチである。同時出力モードは、第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208から、2個の電子機器に同時に給電が可能である。一方、片側出力モードは、第1のメイン電圧出力端子207から給電が可能であり、第2のメイン電圧出力端子208からは給電が出来ない。これにより、1個の電子機器に対して、2倍の時間の給電が可能となる。
【0021】
2個のランプ203は、それぞれ、第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208が電源供給可能な状態か否かを示す。同時出力モードでは、第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208の両方に対応する2個のランプ203が点灯する。一方、片側出力モードでは、第1のメイン電圧出力端子207に対応する1個のランプ203が点灯し、第2のメイン電圧出力端子208に対応する1個のランプ203は滅灯する。
【0022】
サブ電圧出力端子209は例えば5VのDC電圧を出力可能なUSB-A端子でよく、電子機器(スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス、小型LEDランプ、懐中電灯等)を充電可能である。
【0023】
2.電池カートリッジ
【0024】
【0025】
(A)は電池カートリッジ10の斜視図である。(B)は電池カートリッジ10に含まれる電池アセンブリ102の斜視図である。(C)は電池カートリッジ10の側面図である。
【0026】
(A)に示す様に、電池カートリッジ10は、電池アセンブリ102と、電池アセンブリ102に接続された電池側端子部101と、包装容器103と、グリップ104とを有する。
【0027】
(B)に示す様に、電池アセンブリ102は、複数(本例では24個)の空気電池セル100を有する。空気電池セル100は、一次電池である空気電池(金属空気電池とも呼ばれる)を、例えばABS樹脂からなるカバー部によりカバーしたものである。
【0028】
(C)に示す様に、空気電池セル100は、酸素導入部110と、正極集電層120と、負極活物質層及び負極130とを有する。
【0029】
酸素導入部110は、空気に露出されることが可能な酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入する。
【0030】
正極集電層120は、酸素導入部110から導入された酸素と反応する電解質を含む。具体的には、酸素導入部110は、MEA(Membrane Electrode Assembly)であり、触媒層、電解質膜及びガス拡散層が積層された燃料電池用膜電極接合体である。正極集電層120は、正極として機能する酸素導入部110と、負極として機能する負極活物質層及び負極130との間でキャリアを輸送する電解質を含む。負極活物質層130は、電解質として、典型的には水酸化カリウムを含むが、塩化アンモニウム又は水酸化ナトリウム等を含んでもよい。
【0031】
負極活物質層及び負極130は、正極集電層120に積層され、負極活物質としての金属を含む。負極130は、メッシュ状でよい。負極活物質層130は、金属として、典型的には亜鉛を含むが、錫、アルミニウム、マグネシウム又はリチウム等を含んでもよい。負極活物質層130が亜鉛を含む場合、空気電池セル100は、空気亜鉛電池セルであると言える。
【0032】
電池アセンブリ102は、6段に積層された空気電池セル100のセットが2x2に配置されて構成される。電池カートリッジ10が電源装置20の筐体200に収容されたとき、負極活物質層及び負極130が最上層に位置し、酸素導入部110が最下層に位置する。相対的に重い負極活物質層及び負極130が最上に位置することで、酸素導入部110と正極集電層120との接続性能が向上する。逆に、酸素導入部110が最上層に位置すると、酸素導入部110と正極集電層120との間に隙間が発生し、発電効率が低下するおそれがある。
【0033】
包装容器103は、例えば紙箱であり、電池アセンブリ102(24個の空気電池セル100)を一体的に包装する。包装容器103は、1対の対向する側面に、空気通路となる開口105を有する。開口105からは、空気電池セル100の酸素導入部110と、正極集電層120と、負極活物質層及び負極130との積層面が露出する。一方の面の開口105から空気が導入され、空気電池セル100の酸素導入部110に空気中の酸素が導入される。他方の面の開口105からは空気が排出される。包装容器103の内層側の一部に、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等からなるスポンジフレームを設けてもよい。これにより、電池アセンブリ102及び電池側端子部101を容易に収納できる。
【0034】
グリップ104は、包装容器103に設置され、電池カートリッジ10を筐体200に着脱するために使用される。
【0035】
3.電源装置セットの構造
【0036】
【0037】
(A)は電源装置セット1(電源装置20)の背面図である。(B)は電源装置セット1を上面から見た内部構成図である。(C)は電源装置セット1(電源装置20)の前面図である。
【0038】
電源装置20は、筐体200内に、1以上の吸気口215と、排気口216と、ファン217と、チャンバ218と、隔壁219と、温度センサ220とを有する。
【0039】
筐体200の前面211に対向する背面212は、背面212の全面が開放可能なドアとして構成され、2個の電池カートリッジ10を着脱するための電池交換口として機能する。
【0040】
隔壁219は、前面211及び背面212に対して直交する面上に設けられ、筐体200の収容空間を2等分する。2個の電池カートリッジ10を、隔壁219により区画された空間にそれぞれ収容することが可能である。
【0041】
1以上(本例では4個)の吸気口215は、背面212に設けられる。2個の電池カートリッジ10が筐体200に収容されたとき、4個の吸気口215に、それぞれ6段に積層された空気電池セル100のセットの積層面が対向する。4個の吸気口215にはフィルタが設けられる。4個の吸気口215は、複数の空気電池セル100に外部から空気を供給する。
【0042】
チャンバ218は、2個の電池カートリッジ10とファン217との間の空間である。チャンバ218には、吸気口215から供給され複数の空気電池セル100を通過した空気が到達する。
【0043】
温度センサ220は、チャンバ218に設けられる。具体的には、温度センサ220は、チャンバ218の中心、例えば、ファン217の軸心に対向して設けられる。温度センサ220は、チャンバ218内の空気の温度を計測する。温度センサ220は、例えば、サーモカプルである。
【0044】
ファン217は、ブロアファンである。ファン217の吸気口の軸方向は、筐体200の背面212から前面211に向かう方向に一致し、2個の電池カートリッジ10側を向く。ファン217の吸気口と逆側の面は、筐体200の前面211に対向する。ファン217の軸心は、筐体200の前面211の中心に略一致する。ファン217の吹出口は、筐体200の排気口216に隣接する。排気口216は、筐体200の一側面213の前面211寄りに設けられる。ファン217は、チャンバ218内の空気を吸気して排出する。具体的には、ファン217の作動によりチャンバ218に負圧が形成され、1以上の吸気口215から流入する空気が円滑にチャンバ218内に流入し、ファン217を経て排気口216から排出される。
【0045】
メインスイッチ204がオンになるとモータが動作しファン217が回転する。これにより、空気は、複数の吸気口215から流入し、複数の吸気口215に対向する複数の空気電池セル100の各積層境界に流入し、各空気電池セル100からチャンバ218に流入し、ファン217により排気口216を介して筐体200から排出される。これにより、空気が、2個の電池カートリッジ10内を効果的に流通するので、空気電池セル100の化学反応のための酸素の量を酸素導入面上に十分供給でき、同時に、複数の空気電池セル100の反応熱冷却性能が向上し、温度上昇が抑制される。
【0046】
空気電池セル100は、内部の物質の化学反応によって発電するので熱が発生する。この熱が適切な範囲を超え、熱暴走すると空気電池セル100の性能は急激に劣化する。特に夏場に外部気温が高いと、空気電池セル100の内部は熱が暴走して性能の低下に大きな影響を及ぼす。本実施形態の構造によれば、これを抑制するために空気電池セル100を効果的に冷却し、同時に、回路部(後述)に対する高温の影響を抑制することができる。
【0047】
4.電源装置の回路部
【0048】
【0049】
電源装置20は、回路部300を有する。回路部300は、2個の電池カートリッジ10に接続された電源装置側端子部201から、電圧出力端子部206(第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208、サブ電圧出力端子209)にDC電圧を出力する。
【0050】
(1)電池カートリッジ及び端子部
【0051】
電池カートリッジ10の電池アセンブリ102は、第1の直列電池群BT1~BT2と、第2の直列電池群BT3~BT4と、を有する。第1の直列電池群BT1~BT2は、6段に積層され直列に接続された空気電池セル100の2セットBT1及びBT2が直列に接続されてなる、直列に接続された12個の空気電池セル100を有する。第2の直列電池群BT3~BT4は、6段に積層され直列に接続された空気電池セル100の2セットBT3及びBT4が直列に接続されてなる、直列に接続された12個の空気電池セル100を有する。第1の直列電池群BT1~BT2と、第2の直列電池群BT3~BT4とは並列接続される。電池アセンブリ102は、合計24個の空気電池セル100を有する。
【0052】
空気電池セル100は、例えば、負荷電圧DC1.1Vかつ公称電圧(開放電圧)DC1.4Vである。第1の直列電池群BT1~BT2と、第2の直列電池群BT3~BT4との直列セル数は12個である。このため、1個の電池カートリッジ10の電池アセンブリ102の開回路電圧(Open Circuit Voltage、OCV)は1.4x12=16.8Vである。
【0053】
電池カートリッジ10の電池側端子部101は、第1の電池側ピンM1と、第2の電池側ピンM2と、第3の電池側ピンM3とを有する。第1の電池側ピンM1は、第1の直列電池群BT1~BT2の正極に接続される。第2の電池側ピンM2は、第2の直列電池群BT3~BT4の正極に接続される。第3の電池側ピンM3は、第1の直列電池群BT1~BT2の負極及び第2の直列電池群BT3~BT4の負極に並列に接続される。
【0054】
電源装置側端子部201は、第1のケース側ピンF1と、第2のケース側ピンF2と、第3のケース側ピンF3とを有する。第1のケース側ピンF1は、第1の電池側ピンM1と着脱可能に接続可能である。第2のケース側ピンF2は、第2の電池側ピンM2と着脱可能に接続可能であり、第1のケース側ピンF1と接続される。第3のケース側ピンF3は、第3の電池側ピンM3と着脱可能に接続可能であり、グラウンド接続される。
【0055】
電池カートリッジ10内で、並列接続された第1の直列電池群BT1~BT2及び第2の直列電池群BT3~BT4の正極は、互いに接続せず、それぞれ並列的に第1の電池側ピンM1と、第2の電池側ピンM2に接続される。このため、電源装置20内で、第2のケース側ピンF2を第1のケース側ピンF1と接続することで、第1の直列電池群BT1~BT2及び第2の直列電池群BT3~BT4の電流を一本化している。第1の直列電池群BT1~BT2及び第2の直列電池群BT3~BT4の正極同士を隔離することで、電池カートリッジ10の保存中に、第1の直列電池群BT1~BT2及び第2の直列電池群BT3~BT4の間での電気的な移動による電池アセンブリ102の自己劣化を防止する。
【0056】
(2)パワーメータ
【0057】
2個のパワーメータ301は、メインスイッチ204を介して、2個の電源装置側端子部201にそれぞれ1対1で接続される。パワーメータ301は、電源装置側端子部201を介して接続された電池アセンブリ102の電池容量(残量)を測定する。パワーメータ301の動作原理等を以下に説明する。
【0058】
【0059】
図5に示す様に、空気亜鉛電池は、放電時終止電圧まで電圧の変動が少ないので、電圧変化に基づき電池残量を測定することができない。
【0060】
【0061】
図6に示す様に、リチウムイオン電池は、放電時電圧が減って行くので、電圧低下量を微分して電池残量を算出することが可能である。空気亜鉛電池(
図5)は、この方法(電圧低下量を微分する)により電池残量を算出することが出来ない。そこで、本実施形態では、以下の方法で、空気亜鉛電池である電池アセンブリ102の電池残量を測定することを図る。
【0062】
まず、測定の原理を説明する。電池カートリッジ10の出力端子である電池側端子部101を一時的に(即ち、極めて短い所定時間長さ)電子的にショートさせる。この一時的なショート時間は数ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)である。このため、消費電力への影響は殆どなく、また電子的なショートなので、負荷装置への影響もなく電池カートリッジ10の劣化を防止できる。電池側端子部101を一時的にショートさせたときの電流A、ショートさせてから所定時間(例えば、1秒)後の回復電圧V、P(W)=AxV、の3種類のデータを検出する。
【0063】
検出データであるA、V、P(W)は、電池容量が減ることによって変化する。具体的には、空気亜鉛電池の電池残量が減少するに従って、電流Aが徐々に減少すると考えられる。加えて、電圧の回復に必要な時間が徐々に長くなり、その結果として、同一時間後の回復電圧Vが徐々に減少すると考えられる。このため、空気亜鉛電池の電池残量が減少するに従って、P(W)=AxVの値が徐々に減少すると考えられる。
【0064】
そこで、予め、3種類のデータ(A、V、P)の統計値と検出インターバルをプログラムしてマイコン制御回路に埋め込んでおく。この統計値は、予め、数十個の電池カートリッジ10を測定し、例えば、その平均値P(W)を基準とする。具体的には、少なくともP(W)と電池残量とのペアのデータを、例えばテーブル化して、パワーメータ301のマイコン(不図示)に記録しておく。あるいは、3種類のデータ(A、V、P)と電池残量とのペアのデータを、例えばテーブル化して、パワーメータ301のマイコンに記録しておく。
【0065】
パワーメータ301のマイコンは、定期的に、電池側端子部101を一時的にショートさせ、3種類のデータ(A、V、P)を検出し、この変化値を基準として電池アセンブリ102の残量をテーブルから読み込む。
【0066】
図7は、空気亜鉛電池を3Aで放電試験した結果である放電カーブの一例を示す。
【0067】
同図において縦軸は電圧(DCV)、横軸は経過時間を示す。電池容量は630Whである。3Aの定電流負荷で電圧変化が少ないことがわかる。
【0068】
【0069】
図8に示す様に、電圧(DCV)は減っていないが、ショートさせたときの電流A、回復電圧V、P(W)=AxVの値は減少する。経過時間別電池容量が減ることによって電池残量の測定が可能となる。
【0070】
【0071】
パワーメータ301の基本原理回路において、マイコン制御回路は図示を省略する。BT1は、電池カートリッジ10である。R1は、SHUNT抵抗である。M1は、電圧メータである。M2は、電流メータである。Q1は、MOSFET(電界効果トランジスタ)である。S1は、短絡スイッチとしての電子スイッチである。V1は、Q1のゲート電源である。
【0072】
この基本原理回路における動作原理を説明する。まず、電子スイッチ(S1)を数ナノ秒間オンする。すると、MOSFET(Q1)は電池カートリッジ10(BT1)を電子的にショートさせる。数ナノ秒後に電子スイッチ(S1)をオフすると、同時に、電圧が回復し始める。電流メータ(M2)で、このときのショート電流値を、SHUNT抵抗(R1)から検出する。電圧メータ(M1)で、ショートさせてから所定時間後(例えば、1秒)の回復電圧を検出する。なお、電子スイッチ(S1)のショート時間、回復電圧測定の遅延時間(例えば、1秒)、SHUNT抵抗値及び検出間隙等は、測定最適化のために変更可能である。
【0073】
残量表示器205は、マイコン制御回路に組み込まれてよい。残量表示器205は、パワーメータが測定した電池容量を表字する。残量表示方法は、%等の数値によるデジタル表示でもよい。あるいは、残量に応じたアナログ表示でもよい。アナログ表示の例として、緑色ランプは50~100%を示し、黄色ランプは20~50%を示し、赤色ランプは20%以下を示すようにランプ色で表示してもよい。
【0074】
(3)切替スイッチ
【0075】
以下、同一部品が複数ある場合にそれぞれを区別する場合には、「第1の」、「第2の」と区別して称呼し、参照符号に「A」、「B」を付けて区別する。例えば、2個の電池カートリッジ10を、第1の電池カートリッジ10A、第2の電池カートリッジ10Bと区別する。
【0076】
【0077】
切替スイッチ202は、(a)同時出力モードと(b)片側出力モードとの間で、電圧出力モードを切り替えるためのスイッチである。
【0078】
(a)同時出力モードは、一方の第1の電池カートリッジ10AからのDC電圧を第1のメイン電圧出力端子207に出力し、同時に、第2の電池カートリッジ10BからのDC電圧を第2のメイン電圧出力端子208に出力する。これにより、第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208から、2個の電子機器に同時に給電が可能となる。
【0079】
(b)片側出力モードは、第1の電池カートリッジ10A及び第2の電池カートリッジ10BのDC電圧を第1のメイン電圧出力端子207に出力し、第2のメイン電圧出力端子208に出力しない。言い換えれば、切替スイッチ202は、(b)片側出力モードでは、第2のメイン電圧出力端子208を切り離す。これにより、1個の電子機器に対して、2倍の時間の給電が可能となる。
【0080】
第1のランプ203Aは、切替スイッチ202に対して、第1のメイン電圧出力端子207と並列に接続される。第2のランプ203Bは、切替スイッチ202に対して、第2のメイン電圧出力端子208と並列に接続される。第1のランプ203Aは、第1のメイン電圧出力端子207が電源供給可能な状態か否かを示す。
【0081】
第2のランプ203Bは、第2のメイン電圧出力端子208が電源供給可能な状態か否かを示す。同時出力モードでは、第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208の両方に対応する第1のランプ203A及び第2のランプ203Bが点灯する。一方、片側出力モードでは、第1のメイン電圧出力端子207に対応する第1のランプ203Aが点灯し、第2のメイン電圧出力端子208に対応する第2のランプ203Bは滅灯する。
【0082】
(4)ファン及びチャンバ
【0083】
図11は、ファンと電池カートリッジの配置を模式的に示す。
【0084】
(A)は筐体200内での空気流路を示す。(B)は2個の電池カートリッジ10に対するファン217の配置を示す。
【0085】
仮にチャンバ218が無い(ファン軸方向のチャンバ218の幅が極めて短い)場合、ファン217が2個の電池カートリッジ10の極めて近傍にあり(密着し)、ファン217の吸気口の内径や面積に比べて吸気のデッドゾーンが大きくなる。例えば、電池カートリッジ10の空気通路面とファン214を密着すると、通気有効面積は全体の約20%しか使えなくなり、約80%はデッドゾーンとなってしまう。
【0086】
そこで、電池カートリッジ10とファン214の間にチャンバ218を設置することで、空気通路面全体に均質な負圧が生成され、酸素供給及び冷却条件が最適になる。ファン軸方向のチャンバ218の幅、即ち、2個の電池カートリッジ10とファン217との距離は、ファン217の吸気口の内径以上、少なくとも内径程度である。
【0087】
回路部300は、ファンコントローラ302を有する。ファンコントローラ302には、モータMを含むファン217と、サーモカプル等の温度センサ220が接続される。空気が複数の空気電池セル100を通過するとき、空気は、複数の空気電池セル100に酸素を供給し、且つ、複数の空気電池セル100から発生する熱をチャンバ218に輸送し、ファン217を通じて外部に排出する。このため、チャンバ218には、複数の空気電池セル100により暖められた空気が到達する。温度センサ220は、複数の空気電池セル100を通過した空気が到達するチャンバ218に設けられ、チャンバ218内の空気の温度を計測する。ファンコントローラ302は、温度センサ220の検出値に基づき、ファン217のファンスピードを制御する。
【0088】
夏場など室温が高い場合、空気電池セル100が過熱すると電池容量が急激に減るおそれがある。冬場など室温が低い場合、空気電池セル100が過冷却すると出力が落ちるおそれがある。空気電池セル100が発電するのに適した温度は、30~50度である。
【0089】
温度センサ220の検出値が例えば零下~30度である場合、ファンコントローラ302は、ファンスピードを弱に制御する。これにより、空気電池セル100の発電のために必要な酸素だけを供給し、空気電池セル100からの空気の排出を抑えて、空気電池セル100の温度を上昇させる。ファンスピードを弱に制御することで、正常温度に到達するまでの到達時間を短縮し、同時に、ファン217の消費電力を極力抑えることができる。
【0090】
温度センサ220の検出値が例えば30~50度である場合、ファンコントローラ302は、ファンスピードを中に制御する。30~50度は、空気電池セル100が発電するのに適した温度である。空気電池セル100の発電のために必要な酸素を供給し、且つ、空気電池セル100から空気を適切に排出する。これにより、空気の温度が30~50度の範囲を超えて上昇したり低下したりすることを防止し、空気の温度を適切に維持する。
【0091】
温度センサ220の検出値が例えば50度より高い場合、ファンコントローラ302は、ファンスピードを強に制御する。これにより、空気電池セル100の発電のために必要な酸素を供給し、且つ、空気電池セル100からの空気の排出を促進し、空気電池セル100中の熱暴走による化学反応を抑えることができる。
【0092】
(5)逆流防止機能
【0093】
2個の電池カートリッジ10には、メインスイッチ204を介して、2個のレギュレータ303がそれぞれ接続される。第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208からは、それぞれDC電圧(12V)が出力される。一方、上述のように、1個の電池カートリッジ10の開回路電圧(OCV)は、16.8Vである。レギュレータ303は、電池カートリッジ10から最大16.8VのDC電圧を入力し、第1のメイン電圧出力端子207又は第2のメイン電圧出力端子208に12V±10%のDC電圧を出力する。レギュレータ303は、電池カートリッジ10の電圧の変化に応じて、9V~17Vの電圧を入力可能である。即ち、レギュレータ303は、第1のメイン電圧出力端子207又は第2のメイン電圧出力端子208から出力されるDC電圧(12V)より低いDC電圧(9V)及び高いDC電圧(17V)を入力し、第1のメイン電圧出力端子207又は第2のメイン電圧出力端子208に対して、第1のメイン電圧出力端子207又は第2のメイン電圧出力端子208から出力されるDC電圧(12V)を基準として所定範囲(±10%)のDC電圧を出力する。
【0094】
2個のレギュレータ303の下流には、それぞれ、ダイオード304が設けられる。ダイオード304は、例えば、ショットキーダイオードである。
【0095】
具体的には、第1のダイオード304Aは、第1の電池カートリッジ10Aと、切替スイッチ202による第2の電池カートリッジ10Bからの経路の接続点305との間に設けられる。第1のダイオード304Aは、切替スイッチ202から第1の電池カートリッジ10Aへの逆流を防止する。第2のダイオード304Bは、第2の電池カートリッジ10Bと、切替スイッチ202との間に設けられ、切替スイッチ202から第2の電池カートリッジ10Bへの逆流を防止する。
【0096】
【0097】
(A)に示す様に、同時出力モードでは、第1の電池カートリッジ10Aから第1のメイン電圧出力端子207までの回路と、第2の電池カートリッジ10Bから第2のメイン電圧出力端子208までの回路とが独立していれば、ダイオード304が無くても逆流は生じない。
【0098】
一方、(B)に示す様に、片側出力モードでは、出力を1か所(第1のメイン電圧出力端子207)に集中すると、ダイオード304が無ければ、第1の電池カートリッジ10Aと第2の電池カートリッジ10Bとの間で、電圧が高い方から低い方に逆流現象が起こるおそれがある。その結果、電気の供給状態が不安定になるおそれがある。
【0099】
そこで、(C)に示す様に、切替スイッチ202による接続点305より上流にダイオード304を設けることで、逆流を防止し、第1の電池カートリッジ10A及び第2の電池カートリッジ10Bからそれぞれ順方向の電流を流すことができる。
【0100】
(6)USB充電機能
【0101】
サブ電圧出力端子209は例えば5VのDC電圧を出力可能なUSB-A端子でよく、電子機器(スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス、小型LEDランプ、懐中電灯等)を充電可能である。サブ電圧出力端子209には、同時出力モード及び片側出力モードの何れでも、電池カートリッジ10からのDC電圧が出力される。
【0102】
回路部300は、充電コントローラ回路310を有する。充電コントローラ回路310は、サブ電圧出力端子209(USB-Aコネクタ)に接続される電子機器(不図示)との充電規格(BC1.2等の多様な規格)を有する。充電コントローラ回路310は、例えば、iOS(登録商標)及びAndroid(登録商標)等の種々のファームウェアに対応するインターフェースが可能とした回路を有する。充電コントローラ回路310は、様々な製品である電子機器(不図示)とインターフェースを通じてハンドシェイクを行い、充電を開始する。例えば、充電コントローラ回路310は、サブ電圧出力端子209(USB-Aコネクタ)に様々な種類(Lightning、Micro-B、Type-C等)の接続ケーブルを介して接続された電子機器(不図示)を認識し、充電を開始する。充電器300内の充電コントローラ回路310自体が種々のファームウェアに対応するインターフェースが可能であるため、別体のインターフェースモジュールを要することなく、サブ電圧出力端子209に様々な製品である電子機器を直接接続し、直接充電することが可能である。
【0103】
5.結語
【0104】
「国立研究開発法人国立成育医療研究センター」著による「医療機器が必要な子どものための災害対策マニュアル~電源確保を中心に~」(2019年3月31日初版)によれば、災害時に備え外部バッテリーを複数準備しておくこと、災害時には停電時の電源確保で車両のシガーソケットから電源を取れること、車から供給される電気は直流(DC)12Vであることが記載されている(5~7頁)(2023年8月21日閲覧)。
(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/cooperation/shinsai_manual.pdf)
【0105】
本実施形態に係る電源装置セット1は、電源装置20に2個の電池カートリッジ10を着脱可能に装着して使用する。このため、1個の電源装置20と、予備に複数の電池カートリッジ10を備蓄しておけば、着脱式でない電源装置を複数備蓄する場合に比べて、場所を取らずに且つ費用を抑えて、多数の燃料(電池カートリッジ10)を備蓄することが出来る。このため、電源装置セット1は、非常用電源装置又は無停電電源装置として大変有用である。
【0106】
本実施形態に係る電源装置20は、直流(DC12V)電源を出力する2個の第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208と、USB対応の直流(DC5V)電源を出力するサブ電圧出力端子209とを有する。電源装置20は、主に災害時の非常用電源として必要とされる、在宅治療向けの人工呼吸器、加温加湿器および痰の吸引器等の医療機器向けに外部電源バッテリーの補助として使用できる出力仕様に準拠している。
【0107】
DC12V電源を出力する2個の第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208は、車両のシガーソケット端子と同様の電源供給仕様とした。人工呼吸器や、特に医療ケア児が人工呼吸器とともに利用する加温加湿器について、車両のバッテリーを外部電源バッテリーとして非常用に使用可能な電源と認められている。電源装置20の第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208は、車両のシガーソケットと同様のスペックである。このため、電源装置20は、室内等で車両のバッテリーが使えない場合の補助電源機能として使用する事が可能である。
【0108】
電源装置20は、電源を出力する2個の第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208が設けられる。これにより、ユーザの選択により、異なる医療機器向け(例えば、人工呼吸器と加温加湿器又は痰の吸引器等)に、各々から非常用電源を同時に供給したり、あるいは、第1のメイン電圧出力端子207だけを利用して長時間の停電対策(3日間=72時間)として1つの医療機器に対して非常用電源を2倍まで供給することが出来る。特に、成人に比べて医療ケア児は、人工呼吸器とともに加温加湿器を利用するケースが多い。
【0109】
また、1個のDC5V電源を出力するサブ電圧出力端子209は、モバイル電子機器(スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス、小型LEDランプ、懐中電灯等)の充電用として利用できる。電池カートリッジ10の電圧がDC9V以下に低下し、第1のメイン電圧出力端子207及び第2のメイン電圧出力端子208から医療機器向けに電源供給する事が出来なくなることがある。この場合でも、電池容量がDC5Vを維持する範囲で、電池カートリッジ10の電池残量を有効に活用する事が可能である。
【0110】
電池カートリッジ10に利用される空気電池セル100(空気亜鉛電池)は、正極に空気中の酸素、負極に亜鉛を使用する燃料電池の一種で、電池セル単位当たりの放電時の公称電圧は1.4Vである。電源装置20には、DC12V電源を出力する2個の第1のメイン電圧出力端子207、第2のメイン電圧出力端子208に対して2個の電池カートリッジ10が燃料電池として挿入され、簡単に着脱できる仕様とした。また1個の電池カートリッジ10は、12個の空気電池セル100が直列接続され、合計24個の空気電池セル100を並列接続して構成されている。
【0111】
空気亜鉛電池は空気中の酸素と亜鉛の化学反応により電気を生成するメカニズムを有し、放電中は平坦な安定した作動電圧(DC12V)を示し、放電終止電圧(EDV)に至るまで継続する特徴がある。しかし電池容量を把握するためには、一般的なリチウムイオン電池の作動電圧の変化(放電容量が増えると、電池残量が減り、電池電圧は低くなる)を計測して電池容量を推定する方法が使えない。更に、電池カートリッジ10に装着された24個全ての空気電池セル100を定量化する必要がある。本実施形態では、パワーメータ301が定期的に電池側端子部101を一時的にショートさせたときの検出値から、電池残量を測定することができる。
【0112】
特に電源装置セット1を医療機器(人工呼吸器、加温加湿器、痰の吸引器等)に利用する場合、電池カートリッジ10の残量が無くなると生命に関わるため、電池カートリッジ10の残量を定期的に知ることはユーザのニーズが高い。空気電池は爆発と火災の恐れが一切ないため、保管時や災害時の使用中の安全性が高い。
【0113】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0114】
電源装置セット1
電池カートリッジ10
電源装置20
【要約】
電源装置セットは、複数の空気電池セルを有する電池アセンブリと、前記電池アセンブリに接続された電池側端子部と、を有する電池カートリッジと、前記電池カートリッジを着脱可能に収容可能な筐体と、前記電池カートリッジを前記筐体に収容したときに前記電池側端子部が着脱可能に接続される電源装置側端子部と、前記筐体から露出し、電子機器の端子を接続可能であり前記電池カートリッジから前記電源装置側端子部を介して出力されるDC電圧を前記電子機器に出力可能な電圧出力端子部と、前記電源装置側端子部から前記電圧出力端子部に前記DC電圧を出力する回路部と、を有する電源装置と、を具備する。