(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】光干渉断層装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240228BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
(21)【出願番号】P 2019026592
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 順一朗
(72)【発明者】
【氏名】山成 正宏
(72)【発明者】
【氏名】加茂 考史
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522066(JP,A)
【文献】特開2012-250041(JP,A)
【文献】特表2010-533301(JP,A)
【文献】特表2016-504589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/16
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引型の光源と、
前記光源からの光を被検体に照射すると共に、前記被検体からの反射光又は散乱光を導く測定光学系と、
前記光源からの光を導いて参照光とする参照光学系と、
前記測定光学系により導かれた前記反射光又は散乱光と前記参照光学系により導かれた前記参照光とを合波した干渉光を受光し、受光した前記干渉光を干渉信号に変換する受光素子と、
前記光源からの光から等周波数間隔でサンプルクロック信号を生成するサンプルクロック信号生成部と、
前記サンプルクロック信号生成部から入力される前記サンプルクロック信号のタイミングに基づいて、前記受光素子から入力される前記干渉信号をサンプリングする信号処理部と、
前記信号処理部でサンプリングした前記干渉信号から前記被検体の断層情報を生成する演算部と、を備えており、
前記サンプルクロック信号生成部から前記信号処理部へ入力される前記サンプルクロック信号と、前記受光素子から前記信号処理部へ入力される前記干渉信号との少なくとも一方を、所定の遅延量だけ遅延させる遅延回路をさらに備えており、
前記信号処理部は、前記光源から出力される光の波長が1周期変化する間に、
前記光源からの光の全波長領域のうちの第1の部分である第1の波長領域において前記干渉信号をサンプリングすると共に、前記第1の
部分と異なる
前記光源からの光の全波長領域のうちの第2の部分である第2の波長領域において前記干渉信号をサンプリングし、
前記信号処理部は、前記光源からの光を前記被検体に入射したときに、その入射位置における前記被検体の深さ方向の測定範囲全体を含む断層情報
を取得し、
前記信号処理部は、前記第1の波長領域において前記干渉信号をサンプリングすることで第1の断層情報を取得し、前記第2の波長領域において前記干渉信号をサンプリングすることで第2の断層情報を取得し、
前記遅延回路は、前記第1の波長領域において前記干渉信号をサンプリングするときの第1の遅延量と、前記第2の波長領域において前記干渉信号をサンプリングするときの第2の遅延量とが異なるように構成されている、光干渉断層装置。
【請求項2】
前記遅延回路は、遅延量を前記第1の遅延量と前記第2の遅延量とに切替える切替部を有している、請求項1に記載の光干渉断層装置。
【請求項3】
前記遅延回路は、
前記第1の遅延量に設定された第1の回路と、
前記第2の遅延量に設定された第2の回路と、を備えており、
前記切替部は、前記サンプルクロック信号と前記干渉信号の一方の信号が前記第1の回路を介して前記信号処理部に入力する第1の状態と、前記サンプルクロック信号と前記干渉信号の前記一方の信号が前記第2の回路を介して前記信号処理部に入力する第2の状態とに切替えるスイッチと、を備えている、請求項2に記載の光干渉断層装置。
【請求項4】
前記第1の波長領域は、前記第2の波長領域と重複しない、請求項1に記載の光干渉断層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、光干渉断層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉を用いて被検体の内部の断層情報を生成する光干渉断層装置が開発されている。この種の光干渉断層装置の中には、波長掃引型の光源を用いたフーリエドメイン方式(いわゆる、SS-OCT方式)のものがある。SS-OCT方式では、光源の非線形性による干渉信号の歪みを抑えるため、等周波数間隔で干渉信号をサンプリングすることが好ましい。サンプリングを等周波数間隔で行うために、等周波数間隔で生成されるサンプルクロック信号を用いる方法(K-clock)が知られている。等周波数間隔で生成されるサンプルクロック信号で規定されるタイミングで干渉信号をサンプリングすることによって、干渉信号を等周波数間隔でサンプリングすることができる。例えば、特許文献1には、サンプルクロック信号生成装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
K-clock技術を用いた光干渉断層装置では、干渉信号は、サンプルクロック信号(以下、K-clock信号ともいう)のタイミングでサンプリングされる。干渉信号に対して同時刻に生成されたK-clock信号によってサンプリングを行うことで、干渉信号の歪みは適切に抑制される。しかしながら、干渉信号に対して異なる時刻に生成されたK-clock信号では、干渉信号の歪みを適切に抑制することはできない。したがって、K-clock信号と干渉信号は、信号処理部(サンプリング回路)に同時に入力される必要がある。通常、干渉信号が生成されてから信号処理部に入力するまでの時間と、K-clock信号が生成されてから信号処理部に入力するまでの時間とは異なる。このため、K-clock信号の入力タイミングと干渉信号の入力タイミングとを時間的に一致させるために、遅延している信号の遅延量分だけ他方の信号を遅延させる遅延回路が必要となる。しかしながら、信号が電気回路を通過するためにかかる時間は、周波数毎に異なる。このため、異なる波長領域において干渉信号をサンプリングしようとすると、K-clock信号と干渉信号との時間的なずれ量(遅延量)が異なり、各波長領域において適切に干渉信号をサンプリングすることができないという問題があった。本明細書は、異なる波長領域において干渉信号をサンプリングする際に、波長領域毎に適切なタイミングで干渉信号をサンプリングする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する光干渉断層装置は、波長掃引型の光源と、光源からの光を被検体に照射すると共に、被検体からの反射光又は散乱光を導く測定光学系と、光源からの光を導いて参照光とする参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光又は散乱光と参照光学系により導かれた参照光とを合波した干渉光を受光し、受光した前記干渉光を干渉信号に変換する受光素子と、光源からの光から等周波数間隔でサンプルクロック信号を生成するサンプルクロック信号生成部と、サンプルクロック信号生成部から入力されるサンプルクロック信号のタイミングに基づいて、受光素子から入力される干渉信号をサンプリングする信号処理部と、信号処理部でサンプリングした干渉信号から被検体の断層情報を生成する演算部と、を備えている。光干渉断層装置は、サンプルクロック信号生成部から信号処理部へ入力されるサンプルクロック信号と、受光素子から信号処理部へ入力される干渉信号との少なくとも一方を、所定の遅延量だけ遅延させる遅延回路をさらに備えている。信号処理部は、光源からの光の全波長領域のうち第1の波長領域において干渉信号をサンプリングすると共に、光源からの光の全波長領域のうち第1の波長領域と異なる第2の波長領域において干渉信号をサンプリングする。遅延回路は、第1の波長領域において干渉信号をサンプリングするときの第1の遅延量と、第2の波長領域において干渉信号をサンプリングするときの第2の遅延量とが異なるように構成されている。
【0006】
上記の光干渉断層装置では、遅延回路を備えることによって、サンプルクロック信号が信号処理部に入力されるタイミングと干渉信号が信号処理部に入力されるタイミングとを時間的に一致させることができる。また、遅延回路は、第1の波長領域において干渉信号をサンプリングするときの第1の遅延量と、第2の波長領域において干渉信号をサンプリングするときの第2の遅延量とが異なるように構成されている。これによって、異なる波長領域において干渉信号をサンプリングしても、各波長領域に合わせて遅延量を設定することができる。このため、異なる波長領域において干渉信号をサンプリングしても、波長領域毎にサンプルクロック信号の入力タイミングと干渉信号の入力タイミングとを時間的に一致させることができ、干渉信号の歪みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1~3に係る光干渉断層装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図2】実施例1~3に係る光干渉断層装置の制御系を示すブロック図。
【
図4】実施例1のサンプリング回路と遅延回路と演算部の構成を示すブロック図。
【
図5】光源装置から出力される光の波長が1周期変化する間に、干渉信号を複数回サンプリングするタイミングを説明するための図(サンプリングする波長領域が独立している場合)。
【
図7】干渉信号波形を処理する手順を説明するための図。
【
図9】光源装置から出力される光の波長が1周期変化する間に、干渉信号を複数回サンプリングするタイミングを説明するための図(サンプリングする波長領域が部分的に重複している場合)。
【
図10】実施例3のサンプリング回路と遅延回路と演算部の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1)本明細書が開示する光干渉断層装置では、遅延回路は、遅延量を第1の遅延量と第2の遅延量とに切替える切替部を有していてもよい。このような構成によると、波長領域に合わせて遅延量を変更することができる。すなわち、第1の波長領域に合わせた第1の遅延量と第2の波長領域に合わせた第2の遅延量にそれぞれ変更することができ、各波長領域に合わせて容易に遅延量を設定できる。
【0010】
(特徴2)本明細書が開示する光干渉断層装置では、遅延回路は、第1の遅延量に設定された第1の回路と、第2の遅延量に設定された第2の回路と、を備えていてもよい。切替部は、サンプルクロック信号と干渉信号の一方の信号が第1の回路を介して信号処理部に入力する第1の状態と、サンプルクロック信号と干渉信号の一方の信号が第2の回路を介して信号処理部に入力する第2の状態とに切替えるスイッチと、を備えていてもよい。このような構成によると、各波長領域に合わせて、サンプルクロック信号と干渉信号の一方が通過する回路を切替えることができる。すなわち、第1の波長領域に合わせた第1の遅延量に設定された回路と、第2の波長領域に合わせた第2の遅延量に設定された第2の回路とに切換えることができ、各波長領域に合わせて容易に遅延量を設定できる。
【実施例】
【0011】
(実施例1)
以下、実施例に係る光干渉断層装置1について説明する。
図1に示すように、光干渉断層装置1は、光源装置12と、被検眼100を検査するための測定部10と、K-clock発生装置80を備えている。光源装置12から出射される光は、ビームスプリッタ18に照射され、ビームスプリッタ18で測定部10に導かれる光とK-clock発生装置80に導かれる光に分岐される。
【0012】
測定部10は、被検眼100から反射される反射光又は被検眼100からの散乱光(以下、被検眼100からの反射光と散乱光をまとめて「反射光」と称する)と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の光干渉断層装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0013】
干渉光学系14は、光源装置12からの光を被検眼100の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源装置12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されている。
【0014】
光源装置12は、波長掃引型の光源装置であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源装置12から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。
【0015】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構40と、ガルバノスキャナ46と、ホットミラー48によって構成されている。光源装置12から出射された光は、ビームスプリッタ18を介して測定部10に導かれる。測定部10に導かれた光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、焦点調整機構40、ガルバノスキャナ46、及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ガルバノスキャナ46、焦点調整機構40、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28、及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。
【0016】
0点調整機構30は、コーナキューブ32と、コーナキューブ32をミラー28、34に対して進退動させる第2駆動装置56(
図2に図示)を備えている。第2駆動装置56がコーナキューブ32を
図1の矢印Aの方向に駆動することで、光源装置12から被検眼100までの光路長(すなわち、測定光学系の物体光路長)が変化する。
図3に示すように、光源装置12から被検眼100の検出面(
図3では角膜表面)までの物体光路長(詳細には、光源装置12~検出面+検出面~受光素子26)と、光源装置12から参照ミラー22までの参照光路長(詳細には、光源12~参照ミラー22+参照ミラー22~受光素子26)とに光路差ΔZが存在する場合、光路差ΔZが大きくなるほど、検出面から反射される反射光と参照光とを合成した干渉光の強度は弱くなる。逆に、光路差ΔZが小さいほど、干渉光の強度は強くなる。本実施例では、0点調整機構30により物体光路長を変化させることで、参照光路長と物体光路長とが一致する位置(いわゆる、0点)を角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。
【0017】
焦点調整機構40は、光源装置12側に配置される凸レンズ42と、被検眼100側に配置される凸レンズ44と、凸レンズ42に対して凸レンズ44を光軸方向に進退動させる第3駆動装置58(
図2に図示)を備えている。凸レンズ42と凸レンズ44は、光軸上に配置され、入射する平行光の焦点の位置を変化させる。第3駆動装置58が凸レンズ44を
図1の矢印Bの方向に駆動することで、被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の深さ方向に変化し、被検眼100に照射される光の焦点の位置が調整される。
【0018】
ガルバノスキャナ46は、ガルバノミラー46aと、ガルバノミラー46aを傾動させる第4駆動装置60(
図2参照)を備えている。第4駆動装置60がガルバノミラー46aを傾動することで、被検眼100への測定光の照射位置が走査される。
【0019】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と、参照ミラー22によって構成されている。ビームスプリッタ18で測定部10に導かれる光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、位置が固定されている。このため、本実施例の光干渉断層装置1では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
【0020】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26は、干渉光を受光すると、それに応じた干渉信号を出力する。干渉信号は、制御装置64に入力される。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0021】
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、光源装置12からの光を反射する一方で、観察光を透過する。このため、本実施例の光干渉断層装置1では、干渉光学系14による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の光干渉断層装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0022】
K-clock発生装置80は、等周波数間隔(光の周波数の変化に対して均等な間隔)にて干渉信号のサンプリングを行うために、ビームスプリッタ18から分岐された光からサンプルクロック(K-clock)信号を光学的に生成する。そして、生成されたK-clock信号は、制御装置64に向けて出力される。これにより、干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。なお、K-clock発生装置80は、「サンプルクロック信号生成部」の一例である。
【0023】
また、本実施例の光干渉断層装置1では、被検眼100に対して測定部10の位置を調整するための位置調整機構16(
図2に図示)と、その位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(
図2に図示)を備えている。第1駆動装置54が、検査者の操作部材の操作に応じて位置調整機構16を駆動することで、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。
【0024】
次に、本実施例の光干渉断層装置1の制御系の構成を説明する。
図2に示すように、光干渉断層装置1は制御装置64によって制御される。制御装置64は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。制御装置64には、光源装置12と、第1~第4駆動装置54~60と、モニタ62と、観察光学系50が接続されている。制御装置64は、光源装置12のオン/オフを制御し、第1~第4駆動装置54~60を制御することで位置調整機構16、0点調整機構30、焦点調整機構40、ガルバノスキャナ46を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。
【0025】
また、制御装置64には、受光素子26と、K-clock発生装置80が接続されている。制御装置64には、受光素子26で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力される。また、制御装置64には、K-clock発生装置80で生成されたK-clock信号が入力される。制御装置64は、受光素子26からの干渉信号をK-clock信号に基づいてサンプリングする。そして、制御装置64は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。
【0026】
ここで、制御装置64において干渉信号をサンプリングする構成についてさらに説明する。
図4に示すように、制御装置64には、サンプリング回路66と、遅延回路68と、演算部70が設けられている。
【0027】
サンプリング回路66は、干渉信号とK-clock信号が入力され、K-clock信号で規定されるタイミングで干渉信号をサンプリングする。サンプリング回路66には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。サンプリング回路66は、被検眼100内部の断層情報を複数回に亘って取得するために、干渉信号を複数回に亘ってサンプリングする。すなわち、1回のサンプリングによって複数個の干渉信号(データ)を取得し、取得した複数個の干渉信号は、1個の断層情報(すなわち、1走査線上の断層情報)を構成する。したがって、サンプリング回路66が複数回のサンプリングを行うことで、複数個の干渉信号によって構成される断層情報が複数個取得される。上述したように、光源装置12は波長掃引型の光源装置であるため、光源装置12から出力される光の波長は周期的に掃引される。光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する毎に1回ずつ干渉信号をサンプリングすると(すなわち、1周期毎に1個の断層情報を取得するように構成すると)、複数回に亘る測定に要する時間が長くなってしまう。本実施例では、サンプリング回路66は、光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する毎に、異なる波長領域において複数回に亘って干渉信号をサンプリングする。これによって、複数回に亘る測定に要する時間が長くなることを抑制している。例えば、
図5に示すように、光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する間に干渉信号を8回サンプリングすると、同じ波長領域で8回サンプリングする場合と比較して、測定に要する時間を大幅に短縮することができる。なお、サンプリング回路66は、「信号処理部」の一例である。
【0028】
以下の説明では、光源装置12から出力される光の波長が最も大きくなる時間から次に最も大きくなる時間までを1周期とし、1周期のうち最初にサンプリングする波長領域(
図5の時間t1からt2の間の波長領域)を第1の波長領域とし、第1の波長領域の次にサンプリングする波長領域(
図5の時間t3からt4の間の波長領域)を第2の波長領域とする。
図5の例では、光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する間に干渉信号を8回サンプリングするため(すなわち、8個の断層情報を取得するため)、1周期の間に第1の波長領域から第8の波長領域のそれぞれにおいて複数個の干渉信号を取得することになる。以下では、説明を容易にするために、第1の波長領域におけるサンプリングと第2の波長領域におけるサンプリングのみについて説明するが、第3の波長領域から第8の波長領域におけるサンプリングにおいても同様に行われる。なお、本実施例では、光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する間に干渉信号を8回サンプリングしているが、光の波長が1周期変化する間に干渉信号をサンプリングする回数は限定されるものではなく、8回より少なくてもよいし、8回より多くてもよい。
【0029】
遅延回路68は、干渉信号とK-clock信号が同時にサンプリング回路66に入力されるように、K-clock信号を遅延させる。サンプリング回路66ではK-clock信号に基づいて干渉信号をサンプリングするため、K-clock信号と干渉信号はサンプリング回路66に同時に入力される必要がある。しかしながら、受光素子26において干渉信号が生成されてから制御装置64に入力されるまでの時間と、K-clock発生装置80においてK-clock信号が生成されてから制御装置64に入力されるまでの時間との間にずれが生じる。遅延回路68は、制御装置64に干渉信号が入力される時間とK-clock信号が入力される時間との間の時間差分だけ、干渉信号とK-clock信号のうち早いタイミングで入力されるほう(本実施例では、K-clock信号)を遅延させる。本来であれば制御装置64に先に入力されるK-clock信号が遅延回路68で遅延されることによって、K-clock信号と干渉信号がサンプリング回路66に同時に入力される。その結果、サンプリング回路66は、適切なタイミングで干渉信号(データ)を取得することができる。なお、本実施例では、K-clock信号のほうが干渉信号より早く制御装置64に入力するため、K-clock信号を遅延回路68によって遅延させているが、このような構成に限定されない。例えば、K-clock信号より干渉信号のほうが早く制御装置64に入力する場合には、干渉信号を遅延回路によって遅延させてもよい。
【0030】
遅延回路68の構成について説明する。
図6に示すように、遅延回路68は、公知の遅延回路であって、抵抗R1、R2、R3と、可変コンデンサC1と、オペアンプOpAmpを備えている。遅延回路68は、K-clock信号が入力され、可変コンデンサC1の容量に応じた時間だけK-clock信号を遅延させて出力する。可変コンデンサC1は、印加される電圧(以下、コンデンサ調整電圧ともいう)に対応してその容量が変化する。したがって、可変コンデンサC1に印加する電圧を変更すると、可変コンデンサC1の容量が変更される。すなわち、遅延回路68は、可変コンデンサC1に印加する電圧を変更して可変コンデンサC1の容量を変更することによって、遅延回路68を通過するK-clock信号の遅延時間(以下、遅延量ともいう)を変更できる。
【0031】
上述したように、サンプリング回路66は、光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する間に干渉信号を複数回(本実施例では、8回)サンプリングする。
図5に示す第1の波長領域と第2の波長領域では、それぞれ光の波長及び掃引速度が異なる。したがって、第1の波長領域で生じる干渉信号及びK-clock信号の周波数と、第2の波長領域で生じる干渉信号及びK-clock信号の周波数は、それぞれの波長領域毎に異なる。しかしながら、電気信号が電気回路を通過する時間は周波数毎に異なるため、異なる波長領域では波長領域毎に信号(K-clock信号)が通過する時間が異なる。したがって、サンプリングする波長領域毎に、遅延回路68においてK-clock信号の遅延量が異なるように設定する必要がある。本実施例では、遅延回路68が可変コンデンサC1を備えていることによって、サンプリングする波長領域毎に遅延回路68の遅延量を変更することができる。これによって、遅延回路68は、サンプリングする波長領域毎にK-clock信号を適切に遅延させることができる。
【0032】
具体的には、サンプリングする波長領域毎に対応するコンデンサ調整電圧が、可変コンデンサC1に印加される。波長領域とコンデンサ調整電圧との間の対応関係は、予め制御装置64のメモリ(図示省略)に記憶されている。可変コンデンサC1に印加されるコンデンサ調整電圧を変更することによって、可変コンデンサC1の容量が変更され、遅延回路68を通過する信号(K-clock信号)の遅延時間を変更することができる。例えば、第1の波長領域においてサンプリングする場合には、可変コンデンサC1に第1の波長領域に対応したコンデンサ調整電圧が印加される。これによって、遅延回路68は、第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT1だけK-clock信号を遅延するように設定される。同様にして、第2の波長領域においてサンプリングする場合には、可変コンデンサC1に第2の波長領域に対応したコンデンサ調整電圧が印加され、遅延回路68は、第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT2だけK-clock信号を遅延するように設定される。
【0033】
演算部70には、サンプリング回路66と遅延回路68が接続されている(
図4参照)。演算部70は、サンプリング回路66にサンプリングを開始させるトリガー信号を出力する。サンプリング回路66は、トリガー信号が入力すると、予め設定された時間のあいだK-clock信号で規定されるタイミングで干渉信号を取得する。また、演算部70は、遅延回路68の可変コンデンサC1に印加するコンデンサ調整電圧を制御する。演算部70には、サンプリング回路66においてサンプリングされた干渉信号が入力される。上述したように、受光素子26から出力される干渉信号は、
図7に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号は被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波により生成される。演算部70は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換して、その干渉信号から被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)による干渉信号成分を分離する(
図7の下段のグラフ参照)。これにより、演算部70は、被検眼100の各部の位置を特定することができる。
【0034】
次に、干渉信号をサンプリングする際の制御装置64の動作について説明する。まず、演算部70は、次にサンプリングする波長領域を判定する。すなわち、演算部70は、直前にサンプリングを行った波長領域から、次にサンプリングを行う波長領域を判定する。例えば、直前にサンプリングを行った波長領域が第8の波長領域であれば、次にサンプリングする波長領域が第1の波長領域であると判定する。
【0035】
なお、初めてのサンプリングを行う場合は、直前にサンプリングが行われていないため、演算部70は、トリガー信号に基づいて、最初にサンプリングする波長領域を特定する。ここで、最初にサンプリングする特定の波長領域が第1の波長領域である場合を例に、トリガー信号を生成する手順を説明する。まず、トリガー信号を生成するために、演算部70は、第1の波長領域の範囲内の特定の波長を検出する。特定の波長の検出方法は、特に限定されるものではなく、例えば、FBG(ファイバブラッググレーティング)やエタロン等を用いて検出することができる。演算部70は、検出した波長に基づいて、第1の波長領域におけるサンプリングを開始させるトリガー信号を生成する。例えば、FBGを用いて、第1の波長領域におけるサンプリングの開始タイミングである
図5の時間t1に対応する波長を検出し、演算部70は、検出された波長に基づいてトリガー信号を生成する。これによって、演算部70は、第1の波長領域におけるサンプリングの開始タイミング(すなわち、時間t1)に設定されるトリガー信号を生成できる。なお、本実施例では、特定の波長領域におけるサンプリングを開始させるトリガー信号を生成するために、当該特定の波長領域(例えば、第1の波長領域)の範囲内の特定の波長(例えば、時間t1に対応する波長)を検出しているが、このような構成に限定されない。例えば、特定の波長領域(例えば、第1の波長領域)におけるサンプリングを開始させるトリガー信号を生成するために、当該特定の波長領域(例えば、第1の波長領域)の範囲外の特定の波長を検出してもよい。すなわち、特定の波長領域(例えば、第1の波長領域)の範囲外の特定の波長を検出して、その波長が検出された時間から所定時間経過した時間(例えば、時間t1)にサンプリングを開始させるトリガー信号を生成してもよい。演算部70は、トリガー信号に基づいて、最初にサンプリングする波長領域(例えば、第1の波長領域)を特定する。なお、演算部70は、トリガー信号を生成するための検出した波長に基づいて、最初にサンプリングする波長領域(例えば、第1の波長領域)を特定してもよい。
【0036】
次いで、演算部70は、判定した波長領域に対応するコンデンサ調整電圧をメモリ(図示省略)から読み出し、対応するコンデンサ調整電圧を可変コンデンサC1に出力する。例えば、演算部70によってサンプリングする波長領域が第1の波長領域と判定された場合、第1の波長領域に対応するコンデンサ調整電圧が可変コンデンサC1に印加される。これによって、遅延回路68は、第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT1だけK-clock信号を遅延させるように設定される。
【0037】
遅延回路68の遅延時間(例えば、ΔT1)が設定されると、受光素子26から出力される干渉信号と、K-clock発生装置80で生成され、かつ、遅延回路68によって遅延時間ΔT1を与えられたK-clock信号が、サンプリング回路66に入力される(
図4参照)。すなわち、K-clock信号は、遅延回路68を通過する間に時間ΔT1だけ遅延される。一方、干渉信号は遅延回路68を通過することなくサンプリング回路66に入力される。これによって、K-clock信号と干渉信号を同時にサンプリング回路66に入力することができる。すなわち、K-clock信号と干渉信号が同期されてサンプリング回路66に入力する。
【0038】
演算部70は、光源装置12から出力される光の波長が次にサンプリングを行う波長領域の開始時の波長となったときに、トリガー信号をサンプリング回路66に出力する。サンプリング回路66に干渉信号とK-clock信号が入力する状態で、演算部70からサンプリング回路66にトリガー信号が入力されると、サンプリング回路66は、K-clock信号で規定されたタイミングで干渉信号を取得する。干渉信号の取得は、予め設定された時間(例えば、t1~t2)だけ行われる。これによって、当該波長領域(例えば、第1の波長領域)における複数個の干渉信号が取得される。取得された複数個の干渉信号は、サンプリング回路66から演算部70に入力される。
【0039】
当該波長領域における干渉信号のサンプリングが終了すると、同様の手順で、次の波長領域において干渉信号のサンプリングを行う。例えば、第1の波長領域におけるサンプリングが終了すると、演算部70は、次にサンプリングする波長領域が第2の波長領域であると判定する。そして、演算部70は、第2の波長領域に対応するコンデンサ調整電圧が可変コンデンサC1に印加されるように制御する。これによって、遅延回路68は、遅延時間の設定が変更され、第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT2に設定される。K-clock信号は、遅延回路68を通過することによって時間ΔT2だけ遅延してサンプリング回路66に入力される。一方、干渉信号は遅延回路68を通過することなくサンプリング回路66に入力される。これによって、第2の波長領域においても、K-clock信号と干渉信号が同期され、サンプリング回路66に入力される。この状態で演算部70からトリガー信号がサンプリング回路66に入力されると、サンプリング回路66は、K-clock信号に基づき干渉信号を取得する。干渉信号の取得は、所定時間(t3~t4)の間行われる。取得された複数個の干渉信号は、サンプリング回路66から演算部70に入力される。このように、サンプリングする波長領域毎に遅延回路68の遅延量を変更することによって、波長領域毎にK-clock信号を適切に遅延させることができる。これによって、波長領域毎にK-clock信号と干渉信号がサンプリング回路66に入力されるタイミングを同期させることができ、干渉信号の歪みを抑制することができる。
【0040】
なお、本実施例では、遅延回路68が可変コンデンサC1を備えていたが、このような構成に限定されない。遅延回路の遅延量を所望の遅延量に変更できるように構成されていればよい。例えば、
図6に示す例において抵抗R1を、抵抗値を変更可能な可変抵抗器とし、抵抗R1の抵抗値を変更することによって、遅延回路の遅延量を変更してもよい。
【0041】
(実施例2)
上記の実施例1では、可変コンデンサC1の容量を変更することによって、遅延回路68の遅延量を変更していたが、このような構成に限定されない。サンプリングする波長領域毎にK-clock信号を適切な遅延量分だけ遅延できればよい。例えば、
図8に示すように、遅延回路168は、遅延量の異なる複数の回路を有しており、接続される回路を切替えることによって遅延回路168の遅延量を変更してもよい。なお、本実施例では、遅延回路168の構成が実施例1の遅延回路68と相違しており、その他の構成については略同一となっている。そこで、実施例1と同様の構成については、その説明を省略する。なお、説明の簡略化のため、実施例2では、光源装置12から出力される光の波長が1周期変化する間に干渉信号を4回サンプリングし、第1の波長領域と第4の波長領域は同一の波長領域を有しており、第2の波長領域と第3の波長領域は同一の波長領域を有しているものとする。したがって、実施例2では、遅延回路168は、サンプリングする波長領域に応じて2つの遅延時間を設定可能となっている。
【0042】
図8に示すように、遅延回路168は、第1の回路170と、第2の回路172と、スイッチ174a、174bを備えている。第1の回路170は、抵抗R4、R5、R6と、コンデンサC2と、オペアンプOpAmpを備えている。コンデンサC2の容量と、抵抗R4、R5、R6の抵抗値は、それぞれ固定されている。第1の回路170は、コンデンサC2の容量と抵抗R4の抵抗値に応じた時間だけK-clock信号を遅延させる。本実施例では、コンデンサC2の容量と抵抗R4の抵抗値は、第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT1だけK-clock信号を遅延するように設定されている。
【0043】
第2の回路172は、抵抗R7、R8、R9と、コンデンサC3と、オペアンプOpAmpを備えている。コンデンサC3の容量と、抵抗R7、R8、R9の抵抗値は、それぞれ固定されている。第2の回路172は、コンデンサC3の容量と抵抗R7の抵抗値に応じた時間だけK-clock信号を遅延させる。本実施例では、コンデンサC3の容量と抵抗R7の抵抗値は、第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT2だけK-clock信号を遅延するように設定されている。
【0044】
スイッチ174a、174bは、遅延回路168の経路を第1の回路170と第2の回路172のいずれか一方に切替える。すなわち、スイッチ174a、174bによって遅延回路168の経路が第1の回路170に接続されると、遅延回路168に入力されたK-clock信号は、第1の回路170を通過する。すると、遅延回路168に入力されたK-clock信号は、第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT1だけ遅延される。一方、スイッチ174a、174bによって遅延回路168の経路が第2の回路172に接続されると、遅延回路168に入力されたK-clock信号は、第2の回路172を通過する。すると、遅延回路168に入力されたK-clock信号は、第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT2だけ遅延される。
【0045】
次に、本実施例において干渉信号をサンプリングする際の制御装置64の動作について説明する。演算部70は、次にサンプリングする波長領域を判定すると、2つの回路170、172のうち判定した波長領域に対応する回路に接続されるように、スイッチ174a、174bを切替える。例えば、演算部70によってサンプリングする波長領域が第1の波長領域と判定された場合、演算部70は、第1の波長領域に対応する第1の回路170に接続するように、スイッチ174a、174bを切替える。これによって、遅延回路168に入力されたK-clock信号は第1の回路170を通過し、第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT1だけ遅延されてサンプリング回路66に入力する。
【0046】
第1の波長領域におけるサンプリングが終了すると、演算部70は、次にサンプリングする波長領域を判定し、2つの回路170、172のうち判定した波長領域に対応する回路に接続されるように、スイッチ174a、174bを切替える。すなわち、演算部70は、第2の波長領域に対応する第2の回路172に接続するように、スイッチ174a、174bを切替える。これによって、遅延回路168に入力されたK-clock信号は第2の回路172を通過し、第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT2だけ遅延されてサンプリング回路66に入力される。このように、遅延回路168が複数の回路170、172を備え、スイッチ174a、174bによって接続される回路を切替えることによって、遅延回路168は、サンプリングする波長領域毎にK-clock信号を適切に遅延させることができる。
【0047】
なお、本実施例では、遅延回路168が2つの回路170、172を備えていたが、このような構成に限定されない。サンプリングする波長領域毎にK-clock信号を適切に遅延できるように構成されていればよく、遅延回路が備える回路の数は、光源装置12から出力される光の波長の1周期(すなわち、周波数の1周期)においてサンプリングする波長領域の数と同一であってもよい。例えば、
図5の例では、光の波長が1周期変化する間に干渉信号を8回サンプリングするため、サンプリングする波長領域は4つとなる。このため、遅延回路は、サンプリングする波長領域に対応する遅延時間に設定された4つの回路と、遅延回路の経路を4つの回路のいずれかに接続するように切替えるスイッチを備えていてもよい。
【0048】
(実施例3)
上記の実施例では、サンプリングする波長領域が重複することなく独立していたが(
図5参照)、サンプリングする波長領域は部分的に重複していてもよい。例えば、
図9に示すように、光源装置12から出力される光は、時間t5からt7の間に第1の波長領域となり、時間t6からt8の間に第2の波長領域となり、第1の波長領域と第2の波長領域において、時間t6からt7の間で重複していてもよい。以下に、サンプリングする波長領域が部分的に重複する場合において、K-clock信号を遅延させる構成について説明する。なお、本実施例では、制御装置64内のサンプリング回路と遅延回路と演算部との構成が実施例1、2と相違しており、その他の構成については略同一となっている。そこで、実施例1、2と同様の構成については、その説明を省略する。
【0049】
まず、説明を容易にするために、第1の波長領域におけるサンプリングと第2の波長領域におけるサンプリングのみを行うときの制御装置64の構成について説明する。
図10に示すように、制御装置64には、第1のサンプリング回路266aと、第2のサンプリング回路266bと、第1の遅延回路268aと、第2の遅延回路268bと、演算部270が設けられている。
【0050】
第1のサンプリング回路266aと第2のサンプリング回路266bには、干渉信号がそれぞれ入力される。すなわち、干渉信号は、分岐されて第1のサンプリング回路266aと第2のサンプリング回路266bにそれぞれ入力される。
【0051】
第1の遅延回路268aと第2の遅延回路268bには、K-clock信号がそれぞれ入力される。すなわち、K-clock信号は、分岐されて第1の遅延回路268aと第2の遅延回路268bにそれぞれ入力される。第1の遅延回路268aは、第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT3だけK-clock信号を遅延できるように構成されている。第2の遅延回路268bは、第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT4だけK-clock信号を遅延できるように構成されている。なお、第1の遅延回路268a及び第2の遅延回路268bは、実施例1の遅延回路68のように遅延量が変更できるように構成されていてもよいし、実施例2の遅延回路168のように遅延量の異なる複数の回路を備え、複数の回路から接続する経路を切替えることができるように構成されていてもよい。
【0052】
次に、干渉信号をサンプリングする際の制御装置64の動作について説明する。例えば、演算部270によってサンプリングする波長領域が第1の波長領域であると判定されると、演算部270は、遅延量が第1の波長領域に対応する遅延時間ΔT3となるように、第1の遅延回路268aの遅延量を設定する。制御装置64に入力された干渉信号は、第1のサンプリング回路266aと第2のサンプリング回路266bにそれぞれ入力される。また、制御装置64に入力されたK-clock信号は、第1の遅延回路268aと第2の遅延回路268bにそれぞれ入力される。第1の遅延回路268aは、時間ΔT3だけK-clock信号を遅延するように設定されているため、第1の遅延回路268aに入力されたK-clock信号は遅延時間ΔT3だけ遅延されて第1のサンプリング回路266aに入力される。すなわち、第1のサンプリング回路266aには、第1の波長領域において干渉信号とK-clock信号が同期されて入力される。演算部270は、トリガー信号を第1のサンプリング回路266aに出力する。第1のサンプリング回路266aは、演算部270から出力されるトリガー信号に基づいて干渉信号を取得する。これによって、第1の波長領域における干渉信号のサンプリングが、第1のサンプリング回路266aで実行される。
【0053】
次いで、演算部70によってサンプリングする波長領域が第2の波長領域であると判定されると、演算部270は、遅延量が第2の波長領域に対応する遅延時間ΔT4となるように、第2の遅延回路268bの遅延量を設定する。これによって、第2の遅延回路268bに入力されたK-clock信号は遅延時間ΔT4だけ遅延されて第2のサンプリング回路266bに入力される。すなわち、第2のサンプリング回路266bには、第2の波長領域において干渉信号とK-clock信号が同期されて入力される。演算部270は、トリガー信号を第2のサンプリング回路266bに出力する。第2のサンプリング回路266bは、演算部270から出力されるトリガー信号に基づいて干渉信号を取得する。これによって、第2の波長領域における干渉信号のサンプリングが、第2のサンプリング回路266bで実行される。
【0054】
上述の説明から明らかなように、第1の波長領域と第2の波長領域は、時間t6からt7の間、波長領域が重複しているが、制御装置64には、2つのサンプリング回路266a、266bと、2つの遅延回路268a、268bが設けられている。このため、第1の波長領域におけるサンプリングと第2の波長領域におけるサンプリングを異なるサンプリング回路266a、266bで行うことができる。これによって、部分的に重複する時間t6からt7の間の波長領域においても、第1の波長領域のサンプリングと第2の波長領域のサンプリングをそれぞれ適切に行うことができる。また、第1の遅延回路268aの遅延量と第2の遅延回路268bの遅延量をそれぞれ適切に設定することによって、第1の波長領域のサンプリングと第2の波長領域のサンプリングをそれぞれ適切に行うことができる。
【0055】
なお、
図9に示す第3の波長領域のサンプリングと第4の波長領域のサンプリングは、上記と同様に第3及び第4のサンプリング回路と第3及び第4の遅延回路を用いて実行することができる。あるいは、第1の遅延回路268aと第2の遅延回路268bが、実施例1の遅延回路68のように遅延量を変更できるように構成した場合は、
図10に示す制御回路によって第1の波長領域~第4の波長領域におけるサンプリングを実行することができる。すなわち、第1の波長領域のサンプリングは第1のサンプリング回路266aで実行し、第2の波長領域のサンプリングは第2のサンプリング回路266bで実行する。第3の波長領域のサンプリングを実行する際は、第1の遅延回路268aの遅延量をΔT5に設定し、第1のサンプリング回路266aで実行する。そして、第4の波長領域のサンプリングを実行する際は、第2の遅延回路268bの遅延量をΔT6に設定し、第2のサンプリング回路266bで実行する。このようにサンプリングを実行することで、少ないサンプリング回路で、
図9に示すような複数領域におけるサンプリングを実行することができる。
【0056】
なお、上記の実施例1~3では、光干渉断層装置1を用いて被検眼100内部の断層情報を生成したが、このような構成に限定されない。光干渉断層装置1を用いて被検眼100内部以外の組織等の断層情報を生成してもよく、例えば、血管や皮膚組織等の断層情報を生成してもよい。
【0057】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
1:光干渉断層装置
10:測定部
12:光源装置
14:干渉光学系
16:位置調整機構
22:参照ミラー
26:受光素子
40:焦点調整機構
46:ガルバノスキャナ
50:観察光学系
64:制御装置
66、266:サンプリング回路
68、168、268:遅延回路
70、270:演算部
80:K-clock発生装置
100:被検眼