(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】行動履歴データを用いた行動分析システム及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0202 20230101AFI20240228BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240228BHJP
【FI】
G06Q30/0202
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019101978
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2018109546
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597062650
【氏名又は名称】技研商事インターナショナル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 芳典
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211969(JP,A)
【文献】特開2015-046152(JP,A)
【文献】宍倉 剛 Tsuyoshi Shishikura,ビッグデータの「初動」3原則 まだ間に合う全社最適への体制作り,日経コンピュータ no.831 NIKKEI COMPUTER,日本,日経BP社 Nikkei Business Publications,Inc.,2013年04月04日,40-41頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の購入に基づく売上データの実績データから一般ユーザの売上データの実績データを予測する行動分析システムであって、
前記顧客の
住所データを含む個人データを記憶する顧客個人データ記憶部と、
前記顧客の
売上データと購入店舗の位置データを含む実績データを記憶する顧客実績データ記憶部と、
前記顧客の行動履歴データと前記一般ユーザの
位置情報を含む行動履歴データを記憶する行動履歴データ記憶部と、
前記一般ユーザの行動履歴データの中から前記顧客の個人データ
の住所データ又は前記顧客の実績データ
の購入店舗の位置データに該当する
位置情報を有する行動履歴データを前記顧客の行動履歴データとして抽出する抽出手段と、
前記顧客の行動履歴データと前記顧客の実績データを用いて、前記顧客の
行動履歴データを当該実績データ
の売上金額に応じてグループ化
し、当該グループの売上金額を教師データ
とし、当該グループ内の前記顧客の行動履歴データ
を学習対象データ
として生成する教師データ・学習対象データ生成手段と、
前
記教師データと
前記学習対象データを用いて学習を行い、実績データ
の売上金額に応じた行動パターンの分析モデルを生成する学習手段と、
前記分析モデルに前記一般ユーザの行動履歴データを入力して前記一般ユーザの
売上データの実績データを予測する予測手段と、を実現する制御部とを有することを特徴とする行動分析システム。
【請求項2】
一般ユーザの行動履歴データは、時系列の位置情報による履歴データであることを特徴とする請求項1記載の行動分析システム。
【請求項3】
制御部は、行動履歴データを意味付けした情報に変換して行動パターン情報を生成する行動パターン情報生成手段を実現するものであり、
教師データ・学習対象データ生成手段と、学習手段と、予測手段が、行動履歴データの代わりに行動パターン情報を用いて処理を実行することを特徴とする請求項
1又は2記載の行動分析システム。
【請求項4】
抽出手段は、顧客の実績データ
の購入店舗の位置データと一般ユーザの行動履歴データ
の位置情報とを照合すると共に、前記顧客の個人情報
の住所データと前記一般ユーザの行動履歴データ
の位置情報とを照合して、前記顧客の行動履歴データを抽出することを特徴とする請求項1記載の行動分析システム。
【請求項5】
顧客の購入に基づく売上データの実績データから一般ユーザの売上データの実績データを予測する行動分析システムで実行される処理プログラムであって、
前記一般ユーザの行動履歴データの中から前記顧客の個人データ
の住所データ又は前記顧客の実績データ
の購入店舗の位置データに該当する
位置情報を有する行動履歴データ
を前記顧客の行動履歴データと
して抽出する抽出手段と、
前記顧客の行動履歴データと前記顧客の実績データを用いて、前記顧客の
行動履歴データを当該実績データ
の売上金額に応じてグループ化
し、当該グループの売上金額を教師データ
とし、当該グループ内の前記顧客の行動履歴データ
を学習対象データ
として生成する教師データ・学習対象データ生成手段と、
前
記教師データと
前記学習対象データを用いて学習を行い、実績データ
の売上金額に応じた行動パターンの分析モデルを生成する学習手段と、
前記分析モデルに前記一般ユーザの行動履歴データを入力して前記一般ユーザの
売上データの実績データを予測する予測手段と、を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
一般ユーザの行動履歴データは、時系列の位置情報による履歴データであることを特徴とする請求項
5記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報等の行動履歴データを用いてユーザの行動分析を行うシステムに係り、特に、店舗における顧客の売上を基にした教師データを用いて、大量のユーザの位置情報に基づく行動履歴のデータを分析して売上予測を行うことができる行動履歴データを用いた行動分析システム及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来の売上を予測する方法は、販売された商品の動向から売上を予測するものがあった。
また、ネットワークを用いたオンラインショッピングでは、購入者のアクセス履歴から売上を予測するものがあった。
【0003】
[関連技術]
尚、関連する先行技術文献として、特許第5061999号公報「解析装置、解析方法及び解析プログラム」(特許文献1)、特許第5802716号公報「情報処理システム、プログラム及び照合方法」(特許文献2)、特許第5855039号公報「販促システム、販促品配布方法及びプログラム」(特許文献3)がある。
【0004】
特許文献1には、ネットワークのアクセスを解析してアクセス履歴を分析し、主成分分析して複数のクラスに分類して販売計画に利用する解析装置が記載されている。
特許文献2には、当事者の行動履歴と無線端末の移動履歴とを照合して対応関係を生成し、それに当事者の属性情報を統合して統合情報を生成する情報処理システムが記載されている。
特許文献3には、会員アプリで取得されたユーザの行動履歴に基づいて販促品の配布対象者条件で特定されるユーザに販促品を配布する情報を提供する販促システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5061999号公報
【文献】特許第5802716号公報
【文献】特許第5855039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の売上予測方法では、店舗の顧客以外の一般ユーザの売上予測を導き出せず、一般ユーザの行動履歴のデータを有効活用できていないという問題点があった。
【0007】
また、特許文献1~3には、店舗における顧客の売上とその顧客の位置情報を用いた行動履歴データを結び付けて、それを教師データとして学習させ、予測される売上に対する行動パターンの分析モデルを生成し、一般ユーザの位置情報の行動履歴データを当該分析モデルに入力して分析し、一般ユーザの売上を予測することは記載されていない。
【0008】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、店舗の顧客の売上を基に一般ユーザの位置情報の行動履歴データから一般ユーザの売上を予測できる行動履歴データを用いた行動分析システム及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、顧客の購入に基づく売上データの実績データから一般ユーザの売上データの実績データを予測する行動分析システムであって、顧客の住所データを含む個人データを記憶する顧客個人データ記憶部と、顧客の売上データと購入店舗の位置データを含む実績データを記憶する顧客実績データ記憶部と、顧客の行動履歴データと一般ユーザの位置情報を含む行動履歴データを記憶する行動履歴データ記憶部と、一般ユーザの行動履歴データの中から顧客の個人データの住所データ又は顧客の実績データの購入店舗の位置データに該当する位置情報を有する行動履歴データを顧客の行動履歴データとして抽出する抽出手段と、顧客の行動履歴データと顧客の実績データを用いて、顧客の行動履歴データを当該実績データの売上金額に応じてグループ化し、当該グループの売上金額を教師データとし、当該グループ内の顧客の行動履歴データを学習対象データとして生成する教師データ・学習対象データ生成手段と、教師データと学習対象データを用いて学習を行い、実績データの売上金額に応じた行動パターンの分析モデルを生成する学習手段と、分析モデルに一般ユーザの行動履歴データを入力して一般ユーザの売上データの実績データを予測する予測手段と、を実現する制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記行動分析システムにおいて、一般ユーザの行動履歴データが、時系列の位置情報による履歴データであることを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記行動分析システムにおいて、制御部が、行動履歴データを意味付けした情報に変換して行動パターン情報を生成する行動パターン情報生成手段を実現するものであり、教師データ・学習対象データ生成手段と、学習手段と、予測手段が、行動履歴データの代わりに行動パターン情報を用いて処理を実行することを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記行動分析システムにおいて、抽出手段が、顧客の実績データの購入店舗の位置データと一般ユーザの行動履歴データの位置情報とを照合すると共に、顧客の個人情報の住所データと一般ユーザの行動履歴データの位置情報とを照合して、顧客の行動履歴データを抽出することを特徴とする。
【0016】
本発明は、顧客の購入に基づく売上データの実績データから一般ユーザの売上データの実績データを予測する行動分析システムで実行される処理プログラムであって、一般ユーザの行動履歴データの中から顧客の個人データの住所データ又は顧客の実績データの購入店舗の位置データに該当する位置情報を有する行動履歴データを顧客の行動履歴データとして抽出する抽出手段と、顧客の行動履歴データと顧客の実績データを用いて、顧客の行動履歴データを当該実績データの売上金額に応じてグループ化し、当該グループの売上金額を教師データとし、当該グループ内の顧客の行動履歴データを学習対象データとして生成する教師データ・学習対象データ生成手段と、教師データと学習対象データを用いて学習を行い、実績データの売上金額に応じた行動パターンの分析モデルを生成する学習手段と、分析モデルに一般ユーザの行動履歴データを入力して一般ユーザの売上データの実績データを予測する予測手段と、を機能させることを特徴とする。
また、本発明は、上記プログラムにおいて、一般ユーザの行動履歴データが、時系列の位置情報による履歴データであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、抽出手段が、一般ユーザの行動履歴データの中から顧客の個人データの住所データ又は顧客の実績データの購入店舗の位置データに該当する位置情報を有する行動履歴データを顧客の行動履歴データとして抽出し、教師データ・学習対象データ生成手段が、顧客の行動履歴データと顧客の実績データを用いて、顧客の行動履歴データを当該実績データの売上金額に応じてグループ化し、当該グループの売上金額を教師データとし、当該グループ内の顧客の行動履歴データを学習対象データとして生成し、学習手段が、教師データと学習対象データを用いて学習を行い、実績データの売上金額に応じた行動パターンの分析モデルを生成し、予測手段が、分析モデルに一般ユーザの行動履歴データを入力して一般ユーザの売上データの実績データを予測する行動分析システムとしているので、顧客の購入に基づく売上データの実績データから一般ユーザに対する売上データの実績データを予測でき、一般ユーザの行動履歴のデータを有効に活用できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】一般ユーザの行動履歴座標情報を示す概略図である。
【
図4】一般ユーザの行動パターン情報の概略図である。
【
図5】顧客と一般ユーザのマッチング処理を示すフローチャートである。
【
図7】行動パターンモデル生成の概略を示す図である。
【
図8】一般ユーザの売上予測の概略を示す図である。
【
図10】スマホ決済データの集計データを示す図である。
【
図12】ネット購入データの集計データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る位置情報を用いた行動分析システム(本システム)は、店舗における顧客の売上とその顧客の位置情報に基づく行動履歴データを結び付けて教師データと学習対象データを生成し、その教師データ及び学習対象データをAI(Artificial Intelligence)に深層学習させて、期待される売上に対する行動パターンの分析モデルを生成し、一般ユーザの行動履歴データを分析モデルに入力して分析し、店舗の顧客以外の一般ユーザの売上を予測するものであり、店舗の顧客のデータから一般ユーザに対する売上を予測でき、一般ユーザの行動履歴のデータを有効に活用できるものである。
【0020】
また、本システムは、ネットにおける顧客の売上とその顧客のネット閲覧情報に基づく行動(ネット閲覧)履歴データを結び付けて教師データと学習対象データを生成し、その教師データ及び学習対象データをAIに深層学習させて、期待される売上に対する行動パターンの分析モデルを生成し、一般ユーザのネット閲覧履歴データを分析モデルに入力して分析し、ネット購入していない一般ユーザの売上を予測するものであり、ネット購入の顧客のデータから一般ユーザに対する売上を予測でき、一般ユーザのネット閲覧履歴のデータを有効に活用できるものである。
【0021】
[本システム:
図1]
本システムについて
図1を参照しながら説明する。
図1は、本システムの概略図である。
本システムは、AI学習機能を有するコンピュータであり、
図1に示すように、制御部11と、記憶装置12と、インタフェース部13とを有している。
尚、後述する記憶装置12内の各記憶部を、ネットワークを介して外部に設けるようにしてもよい。
【0022】
[記憶装置12]
記憶装置12は、制御部11で動作する処理プログラムを記憶している。
また、記憶装置12は、店舗のID-POS(Point of Sales)データから得られたら顧客IDに対する顧客の売上データを記憶する顧客売上データ記憶部121と、顧客IDに対して、顧客の氏名、性別、年齢、住所等の個人データを記憶する顧客個人データ記憶部122とを有している。売上データは、顧客IDに対して、顧客の購入店舗、購入商品、購入金額、購入日時等の購入履歴データと、特定期間における購入金額の合計である売上金額が含まれる。
【0023】
[顧客情報:
図2]
顧客売上データ記憶部121と顧客個人データ記憶部122とを統合した概念が
図2である。
図2は、店舗の顧客情報を示す概念図である。
図2に示すように、顧客IDに対して性別、年齢、住所のデータを記憶するのが顧客個人データ記憶部122であり、顧客IDに対して売上金額、購入履歴のデータを記憶するのが顧客売上データ記憶部121である。
【0024】
更に、記憶装置12は、一般ユーザ(単に「ユーザ」と呼ぶことがある)の行動履歴データを記憶する行動履歴データ記憶部123も有している。
行動履歴データは、一般ユーザの位置情報を取得できる通信業者、ユーザ向けのアプリ提供会社等から提供されるものである。
行動履歴データを構成する位置情報は、座標データ、地図上のメッシュエリアデータ、行政界データ、郵便番号データ等が想定される。
【0025】
一般ユーザの行動履歴データは、ユーザIDに対する位置情報と日時情報であり、365日24時間60分のデータが行動履歴データ記憶部123に記憶される。行動履歴データは、分単位より短い間隔で取得されるものであってもよい。
尚、一般ユーザの中に顧客が含まれている。
【0026】
[一般ユーザの行動履歴座標情報:
図3]
図3に行動履歴データ記憶部123の内容である一般ユーザの行動履歴座標情報を示す。
図3は、一般ユーザの行動履歴座標情報を示す概略図である。
図3において、一般ユーザIDに対応して時系列に行動履歴の座標データを記憶している。
図3では、座標データが左から右に向かって時系列的に並んでいる状態を示している。
図3のデータは、位置情報を取得する通信業者等から提供される一般ユーザの座標データの位置情報を時系列に記憶するもので、後述する顧客と一般ユーザのマッチング処理に利用される。
【0027】
[インタフェース部13]
インタフェース部13は、ネットワークに接続するインタフェースで、外部から記憶装置12に記憶される顧客売上データ、顧客個人データ、一般ユーザの行動履歴データを読み込み、分析結果を外部に出力する。
【0028】
尚、ここでは、本システムに指示を入力し、分析結果を表示させる端末装置がネットワークを介してインタフェース部13に接続することを想定しているが、インタフェース部13に入力部と表示部を接続するようにしてもよい。
【0029】
[制御部11]
制御部11は、記憶装置12から処理プログラムを読み込み、以下に説明する処理を実行する機能実現手段を実現するものである。
制御部11は、ネットワークを介して本システムに接続する端末装置からの指示で処理を開始し、処理した結果(一般ユーザの売上予測等)を端末装置に表示出力するようになっている。
【0030】
[機能実現手段]
制御部11は、処理プログラムの実行により、一般ユーザの行動パターン情報生成手段と、顧客の行動履歴データ抽出処理手段、教師データ・学習対象データ生成処理手段、行動パターンモデル生成処理手段、一般ユーザの売上予測演算処理手段等を実現するものである。
尚、請求項では、顧客の行動履歴データ抽出処理手段を「抽出手段」と、教師データ・学習対象データ生成処理手段を「教師データ・学習対象データ生成手段」と、行動パターンモデル生成処理手段を「学習手段」と、一般ユーザの売上予測演算処理手段を「予測手段」と呼ぶようにしている。
【0031】
[一般ユーザの行動パターン情報生成手段]
一般ユーザの行動パターン情報生成手段は、
図3に示した一般ユーザの行動履歴座標情報について座標データを意味のある位置情報に変換して、一般ユーザの行動パターン情報を生成する。
【0032】
[一般ユーザの行動パターン情報:
図4]
具体的には、
図4に示す一般ユーザの行動パターン情報を生成する。
図4は、一般ユーザの行動パターン情報の概略図である。
一般ユーザの行動パターン情報生成手段は、座標データを地図データに展開して地図データで特定される意味のある位置情報、例えば、小売店+コンビニ+店番号のような位置コード(AB10,AC20,…)に変換する。
図4に示すように、この位置コードが時系列に配置されたものが一般ユーザの行動パターンの情報となる。
図4のデータは、一般ユーザの売上予測を得るために、後述する行動パターンモデルに入力するものである。
【0033】
[顧客の行動履歴データ抽出処理手段]
顧客の行動履歴データ抽出処理手段は、顧客個人データ記憶部122から顧客の住所データを読み込み、顧客売上データ記憶部121から顧客の購入店舗と購入日時のデータを読み込み、住所データと店舗データ(店舗の位置データ)を座標データに変換して、それらのデータを基に行動履歴データ記憶部123のユーザの行動履歴データ(
図3の一般ユーザの行動履歴座標情報)を検索し、顧客に該当するユーザを結び付けて特定し、特定したユーザの行動履歴データを顧客の行動履歴データとして抽出する。
【0034】
上記顧客の行動履歴データ抽出処理を更に詳しく説明する。
まず、店舗の位置を示す座標データを行動履歴データ記憶部123のユーザの行動履歴データ(座標データ)の中から検索し、該当する一般ユーザを抽出する。
そして、顧客の店舗訪問日時に一致する、抽出した一般ユーザを絞り込み、店舗訪問が複数回ある場合には、その複数回についても位置情報のマッチングを行う。
【0035】
尚、訪問回数が少ない場合には、顧客に対して一般ユーザが複数残って絞り込めないことがあるので、その場合は更に、顧客の個人情報の住所を座標データに変換し、その住所の座標データに一致する、絞り込んだ一般ユーザを顧客として特定するようにする。
また、顧客の住所の座標データで一般ユーザを絞り込み、その後に店舗の位置の座標データと顧客の訪問日時で、絞り込んだ一般ユーザの座標データと日時を検索し、一致する一般ユーザを顧客として特定するようにしてもよい。
【0036】
つまり、本システムでは、顧客の行動履歴データ抽出処理手段が、顧客の実績データ(店舗訪問の日時のデータ)と一般ユーザの行動履歴データとを照合すると共に、顧客の個人情報(顧客の住所データ)と一般ユーザの行動履歴データとを照合して、顧客の行動履歴データを抽出するものである。
【0037】
[顧客と一般ユーザのマッチング処理:
図5]
上記の顧客の行動履歴データの抽出処理について
図5を参照しながら説明する。
図5は、顧客と一般ユーザのマッチング処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、顧客売上データ記憶部121から購入履歴である店舗の住所から店舗の座標データを取得し、行動履歴データ記憶部123における行動履歴(
図3の一般ユーザの行動履歴座標情報)をその座標データで検索し、その座標データを有する一般ユーザIDを抽出する(S1)。
【0038】
次に、抽出した一般ユーザについて、
図2に示した顧客の購入履歴と住所の情報から、顧客IDと一般ユーザIDを結び付ける処理(マッチング処理)を行う(S2)。
具体的には、顧客売上データにおける特定顧客の購入店舗の座標データと購入日時データに一致する、抽出した一般ユーザの行動履歴データにおける座標データと日時データを検索する。そして、一致する場合で、該当する一般ユーザが複数いる場合には、顧客個人データ記憶部122の特定顧客の住所の座標データに一致する一般ユーザを選択して絞り込み、特定顧客の顧客IDと一般ユーザIDとの関連付けを行う。
店舗の座標データで絞り込み、次に住所の座標データで絞り込むようにしたが、住所の座標データで絞り込んで店舗の座標データで絞り込むようにしてもよい。
【0039】
[教師データ・学習対象データ生成処理手段]
教師データ・学習対象データ生成処理手段は、顧客の行動履歴データ抽出処理手段によって顧客と結び付けられた行動履歴データと顧客売上データ、顧客個人データとを組み合わせて、教師データと学習対象データを生成する。
ここで、行動履歴データを座標データではなく、
図4に示した、位置情報を意味あるデータ(位置コード)に変換して、それを学習対象データに用いるようにする。
【0040】
[顧客の行動パターンデータ:
図6]
教師データとして利用される前段階の顧客の行動パターンデータについて
図6を参照しながら説明する。
図6は、顧客の行動パターンデータの概略図である。
図6では、顧客IDと一般ユーザIDとが結び付けられ、更に売上金額、位置コードの行動パターンを記憶する。
この顧客の行動パターンデータを基にして教師データと学習対象データを生成する。
【0041】
具体的には、売上金額が同じ顧客IDを抽出し、売上金額に応じた行動パターンデータのグループを生成する。
そのグループ内の売上金額を「教師データ」とし、そのグループ内の行動パターンデータを「学習対象データ」とするものである。
グループは、同じ売上金額に限定せず、特定の売上金額に幅を持たせたものとしてもよい。
【0042】
[行動パターンモデル生成処理手段]
行動パターンモデル生成処理手段は、教師データ・学習対象データ生成処理手段で生成された教師データと学習対象データをAIに学習させ、顧客一人の売上金額に応じた行動パターンのモデル(分析モデル)を生成する。つまり、売上に応じて行動パターンモデルが生成される。
ここで、行動パターンモデル生成処理手段は、請求項では「学習手段」と記載している。
また、行動パターンモデル生成処理手段が、AIの学習ではなく、AIを用いない機械学習を行わせてもよい。
【0043】
[行動パターンモデル生成の概略:
図7]
次に、行動パターンモデル生成の概略について
図7を参照しながら説明する。
図7は、行動パターンモデル生成の概略を示す図である。
図7では、「0~20教師データ」(売上が0円以上20万円未満の教師データ)、「20~40教師データ」(売上が20万円以上40万円未満の教師データ)、「40~60教師データ」(売上が40万円以上60万円未満の教師データ)、「60~80教師データ」(売上が60万円以上80万円未満の教師データ)、「80~教師データ」(売上が80万円以上の教師データ)の教師データを用いている。
図7の例では、売上金額に幅を持たせており、店舗で扱う商品内容に応じて売上金額の設定は任意である。
【0044】
それぞれの教師データに対応する学習対象データをAIモデルに入力して深層学習させて、教師データと学習対象データに対応した売上モデル(行動パターンモデル)を生成する。
つまり、売上モデルは、教師データに対応する学習対象データが売上モデルに入力された場合に、当該教師データの売上金額が高い確率で出力されるよう調整されるものである。
【0045】
具体的には、「80~教師データ」に対応する学習対象データを数多く入力して、出力1の確率の値が、その他の出力(出力2~5)の確率の値より明らかに高くする。また、「60~80教師データ」に対応する学習対象データを数多く入力して、出力2の確率の値が、その他の出力(出力1,3~5)の確率の値より明らかに高くする。また、「40~60教師データ」に対応する学習対象データを数多く入力して、出力3の確率の値が、その他の出力(出力1,2,4,5)の確率の値より明らかに高くする。また、「20~40教師データ」に対応する学習対象データを数多く入力して、出力4の確率の値が、その他の出力(出力1~3,5)の確率の値より明らかに高くする。また、「0~20教師データ」に対応する学習対象データを数多く入力して、出力5の確率の値が、その他の出力(出力1~4)の確率の値より明らかに高くする。
【0046】
例えば、売上モデルに60~80教師データに対応する学習対象データが入力されれば、出力2(売上60~80万円)には85%の値が出力され、売上モデルに20~40教師データに対応する学習対象データが入力されれば、出力2には25%の値が出力される。
また、売上モデルに20~40教師データに対応する学習対象データが入力されれば、出力4(売上20~40万円)には80%の値が出力され、売上モデルに60~80教師データに対応する学習対象データが入力されれば、出力4には20%の値が出力される。
【0047】
[一般ユーザの売上予測演算処理手段]
一般ユーザの売上予測演算処理手段は、
図4の一般ユーザの行動パターン情報を、生成された行動パターンのモデルに入力し、各一般ユーザの行動パターンデータについて、売上予測値を出力(推論)する。売上予測値とは、当該ユーザが100万円の売上となる確率は80%、80万円の売上となる確率は40%といった値となる。
【0048】
[一般ユーザの売上予測の概略:
図8]
次に、一般ユーザの売上予測の概略について
図8を参照しながら説明する。
図8は、一般ユーザの売上予測の概略を示す図である。
図8では、
図7で生成されたAIモデルを用いて、
図4に示した一般ユーザの行動パターンデータを売上モデルに入力し、売上モデルからの出力の値(パーセンテージ)により、売上の確率(パーセンテージ)を得て、当該一般ユーザの売上予測を得るものである。
【0049】
図8に示すように、任意の一般ユーザの行動パターンデータをAIモデルに入力すると、売上モデルに入力され、売上モデルからの出力(売上金額)1~5にそれぞれのパーセンテージの値が出力される。
【0050】
例えば、AIモデルからの出力が、出力1が10%、出力2が60%、出力3が20%、出力4が7%、出力5が3%という数値が得られた場合には、当該一般ユーザの売上予測は、60万円以上80万円未満の売上の可能性が60%で、40万円以上60万円未満の売上の可能性が20%で、80万円以上の売上の可能性が10%で、20万円以上40万円未満の売上の可能性が7%で、20万円未満の売上の可能性が3%ということになる。
【0051】
このように、本来、売上情報に関連付けられていない一般ユーザについて売上予測(売上の可能性)を得ることができるので、その予測に応じてマーケット戦略を立案して販促を行うことが可能となるものである。
また、売上予測は、一般ユーザにおける顧客についても得られるので、実際の売上に対して予測される売上との差分について販促を効果的に行うことが可能となる。
【0052】
以下、本システムの応用例1~4について説明する。
[応用例1]
以上のようにして得られた売上予測について、本システムでは、店舗売上に貢献する行動パターンの特徴を抽出することができ、それに応じた広告や販促を行うことができ、ユーザに対してレコメンドすることもできる。更に、店舗売上に貢献するユーザの行動予測も行うことが可能である。
【0053】
本システムでは、意味のある位置コードを用いて一般ユーザの売上予測を行っているので、その位置コードの特徴点(特異点)を利用した行動分析を行うことができる。
例えば、80万円以上の売上の可能性が80%以上あるユーザの特徴点が、位置コードによりスポーツジム/スポーツクラブであれば、ジム等に通っているという共通点があることになる。その共通点を踏まえて上記ユーザにジム等に関連する商品の販促を行えば、売上を更に向上させることが期待できる。
【0054】
[応用例2:
図9,10]
本システムでは、店舗でのPOSデータに基づく顧客売上データ及び行動履歴データを用いて教師データに応じた学習対象データを学習させ、一般ユーザの売上予測を行うものであるが、スマートフォン(スマホ)の商品・サービスの購入アプリケーション(アプリ)又は決済アプリを用いて一般ユーザの売上予測を行うことができる。
以下、スマホ決済データを用いた一般ユーザの売上予測について
図9,10を参照しながら説明する。
図9は、スマホ決済データを示す図であり、
図10は、スマホ決済データの集計データを示す図である。
【0055】
スマホを利用して店舗で決済アプリを利用して商品を購入し、また、サービスを利用した場合に、決済アプリで決済処理が為される。尚、実店舗で決済アプリにより決済を行う場合に限らず、オンラインの仮想の店舗で決済アプリにより決済を行う場合も含まれる。また、商品・サービス購入用のアプリで商品を選択して購入した場合も、同様の決済処理が為される。
決済処理が為されたスマホ決済データは、
図9に示すように、決済アプリのユーザIDに対応して、決済日時データ、決済場所の位置データ、店舗ID、購入金額、商品・サービスのコード(商品等コード)等が本システムの記憶装置12の顧客売上データ記憶部121に記憶される。記憶されるのは、決済日時の順番となる。
【0056】
そして、
図9の決済データを基に、例えば、1ヵ月、半年等の特定期間でユーザID毎に購入金額を集計して売上金額を算出する。また、位置データ及び日時データに基づいて一般ユーザの行動履歴を照合し、決済アプリのユーザIDと一般ユーザIDの結び付けを行い、
図10に示す集計データを生成する。
【0057】
集計データは、
図10に示すように、支払いをするための決済アプリのユーザIDと、結び付けられた一般ユーザIDと、売上金額、そして、
図6と同様に行動パターン情報が関連付けられる。
この集計データが、売上金額に応じて分類されて、教師データに応じた学習対象データとして利用されることになる。
【0058】
[応用例3]
次に、応用例3について説明する。
応用例2では、商品・サービス購入用のアプリで商品等を購入し、購入(決済)場所の位置データと一般ユーザの行動履歴データの位置データとを照合して一般ユーザを抽出するものであるが、応用例3では、商品・サービス購入アプリ自体が、定期的に位置データを取得して本システムの行動履歴データ記憶部123に記憶しており、その位置データの履歴を行動履歴データとして利用するものである。また、行動履歴データを意味のある行動パターンデータに変換して利用してもよい。
従って、応用例3では、商品・サービス購入アプリのユーザのIDとその行動履歴データとが直接結び付いているため、顧客の行動履歴データ抽出処理手段が不要となる。
【0059】
商品・サービス購入アプリでのユーザの購入実績データと行動履歴データ(行動パターンデータ)を用いて教師データと対応する学習対象データを生成し、これら教師データと学習対象データを用いてAIに学習させ、行動パターンモデル(AIモデル/売上モデル)を生成する。
そして、この行動パターンモデル(学習済モデル)に当該アプリで取得された位置データの行動履歴データ(行動パターンデータ)を本システムの行動履歴データ記憶部123から読み込み、
図8に示すAIモデルに入力することで、入力データのユーザの売上予測を行うことができる。
【0060】
また、
図8のAIモデルに入力する行動履歴データ又は行動パターンデータは、商品・サービス購入アプリで取得したものを使用したが、
図3の一般ユーザの行動履歴座標情報、
図4の一般ユーザの行動パターン情報を使用してもよい。
尚、商品・サービス購入アプリで取得した行動履歴データ又は行動パターンデータを利用する場合、当該アプリのユーザは、商品等の購入により実際の売上実績はあるものの、AIモデルによる売上予測を行うことで、そのユーザの売上のポテンシャル(売上の可能性)を出力するものとなる。
【0061】
[応用例4]
また、本システムでは、顧客と一般ユーザが位置情報による行動パターンによって売上予測を行うものであったが、ネット通販の顧客とネットを閲覧する一般ユーザのアクセス履歴情報(アクセス履歴データ/ネット履歴データ)による行動パターンによって売上予測を行うシステムに応用することができる。
ここで、行動パターンでは、URL(Uniform Resource Locator)の内容又はアプリの閲覧ページの内容から意味付けを行い、その意味内容をコード化したコードデータを用いるものである。
【0062】
[オンライン(ネット)購入履歴による売上予測:
図11,12]
ネット通販を利用したオンライン(ネット)購入履歴からWeb等を閲覧する一般ユーザの売上予測を行う方法について
図11,12を参照しながら具体的に説明する。
図11は、ネット購入データを示す図であり、
図12は、ネット購入データの集計データを示す図である。
ネット購入のユーザは、クレジット決済又はアプリでの購入等の支払いを行い、配達先の住所と氏名を入力するため、購入段階で個人が特定されることになる。
【0063】
ネット購入データは、
図11に示すように、ネット購入したユーザIDと、購入日時データ、購入サイトの情報、購入金額、商品等コード等が、本システムの記憶装置12の顧客売上データ記憶部121に記憶される。
そして、
図11のネット購入データを基に、例えば、1ヵ月、半年等の特定期間でユーザID毎に購入金額を集計して売上金額を算出する。
【0064】
集計データは、
図12に示すように、ネット購入のユーザIDに対応付けて集計された売上金額、ネット閲覧の履歴に基づく行動パターン情報が関連付けられる。
図6又は
図10の行動パターン情報が位置情報に基づく行動履歴によって意味付けされたものであったのに対して、
図12の行動パターン情報は、閲覧したネットのURL等の情報によって意味付けされた内容である点で、異なっている。
【0065】
また、近年、ネット閲覧ユーザは、一つのパーソナルコンピュータ(PC)だけでなく、スマートフォン、タブレット等の複数の機器を利用している。そのため、これら機器での一人のユーザのネット閲覧履歴データを関連付ける必要がある。
複数の機器での関連性は、既に実施されているクロスデバイスの技術を用いて行う。
【0066】
クロスデバイスとは、サービスやコンテンツを閲覧した情報が、複数のデバイスを超えて引き継がれることである。具体的には、デバイスのクッキー(Cookie)やブラウザのユーザ情報を紐づけて、異なるデバイスでも同一ユーザと認識するものである。最近は、AIが同一ユーザを類推するようになっている。
【0067】
クロスデバイスを用いれば、一人のユーザが、PC、スマホ、タブレット等の別々の機器を利用しても、ネット閲覧履歴情報を関連付けることができるので、幅広い閲覧情報に基づいて教師データに応じた学習対象データを準備でき、ネット閲覧の一般ユーザの売上予測を行うことができる。
【0068】
応用例4により、ネット購入者の購入金額及び閲覧履歴データに基づいて教師データに対応する学習対象データを学習させ、購入履歴のない閲覧履歴だけの一般ユーザの売上予測を行うことができるものである。予測方法としては、
図7,8で示したAIモデルを生成して売上予測データを得るものである。
【0069】
[応用例5]
更に、本システムを売上予測に用いるのではなく、例えば、ジムに通う回数等に応用することができる。
具体的には、ジムに通う顧客の回数を売上金額の代わりに実績データとし、その顧客の行動履歴と一般ユーザの行動履歴から一般ユーザのジムに通う回数を予測するものであってもよい。
【0070】
また、本システムで学習させたモデルを必要に応じて配布することができる。この場合、個人情報が抽象化された状態で、売上予測機能を有するモデルを提供できるものである。
【0071】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、店舗等における顧客の売上とその顧客の行動履歴データに基づいて、教師データ・学習対象データ生成処理手段で教師データと学習対象データを生成し、その教師データと学習対象データを行動パターンモデル生成処理手段(学習手段)で学習させて、期待される売上に対する行動パターンの分析モデルを生成し、一般ユーザの売上予測演算処理手段で一般ユーザの行動履歴データを分析モデルに入力して分析し、一般ユーザの売上を予測するものであり、店舗の顧客のデータから一般ユーザに対する売上を予測でき、一般ユーザの行動履歴のデータを有効に活用できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、店舗の顧客の売上を基に一般ユーザの位置情報の行動履歴データから一般ユーザの売上を予測できる位置情報を用いた行動分析システム及びそのプログラムに好適である。
【符号の説明】
【0073】
11…制御部、 12…記憶装置、 13…インタフェース部、 121…顧客売上データ記憶部、 122…顧客個人データ記憶部、 123…行動履歴データ記憶部