(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B23Q3/06 302B
(21)【出願番号】P 2019209917
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-08-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)2019年7月31日~8月3日 第6回プレス・板金・フォーミング展MF-TOKYO2019において公開 (2)2019年7月31日~8月3日 ニイガタ機械株式会社の自社カタログを配布
(73)【特許権者】
【識別番号】591271173
【氏名又は名称】株式会社W&N
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】山口 昇
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-268186(JP,A)
【文献】特開2013-094865(JP,A)
【文献】米国特許第05695178(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107175524(CN,A)
【文献】特開平09-029570(JP,A)
【文献】特開平08-177814(JP,A)
【文献】特開平04-093141(JP,A)
【文献】特表平03-501766(JP,A)
【文献】実開平06-017835(JP,U)
【文献】実開平06-003536(JP,U)
【文献】実開昭59-017135(JP,U)
【文献】実開昭54-152379(JP,U)
【文献】実公昭58-017715(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054584(US,A1)
【文献】特開2002-195235(JP,A)
【文献】特開平01-107928(JP,A)
【文献】実開昭59-006617(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00-3/154
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置の基盤にセットされた被固定部材を固定するクランプ装置であって、前記被固定部材をクランプするクランプ部を設けた
一つのクランプ本体部と、このクランプ本体部に
螺着により着脱交換可能に連設される複数のT溝取付け部と、この夫々のT溝取付け部の下端に
螺着により着脱交換可能に連設され前記基盤に設けられたT溝に嵌合する複数のT溝嵌合部とを備え、前記複数のT溝取付け部は、夫々長さが異なり、また、前記複数のT溝嵌合部は、夫々形状が異なるT溝に嵌合するものであり、前記複数のT溝取付け部の中から選択される適宜な長さのT溝取付け部が前記クランプ本体部に連設され、
また、前記複数のT溝嵌合部の中から選択される前記T溝の形状に嵌合する適宜な形状のT溝嵌合部が前記T溝取付け部に連設される構成であ
り、さらに、前記クランプ本体部は、シリンダ部と、このシリンダ部内に往復移動自在に設けられるピストンと、このピストンを動作させ前記シリンダ部内の圧媒を加圧するための加圧操作部とが内設され、この加圧操作部は、前記クランプ本体部に螺刻される雌ネジ部と、この雌ネジ部に螺合される雄ネジ部とからなり、この雄ネジ部が螺入操作されることで前記ピストンが前進移動し前記シリンダ部内の圧媒が加圧されることで、前記クランプ部がクランプ動作して被固定部材をクランプするように構成されていることを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置の基盤に設けられるT溝を介して取り付けられ前記基盤にセットされた加工部材や金型などの被固定部材を固定するクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクランプ装置は、油圧などの圧媒を加圧装置で加圧し、この加圧された圧媒の押圧作用によりクランプ部がクランプ動作する構成であり、また、装置下端部にT溝係合部が設けられ、このT溝係合部を加工装置の基盤のT溝に嵌入させて基盤に取り付ける構成となっている。
【0003】
ところで、このクランプ装置を取り付けるためのT溝は、加工装置のメーカーごとで形状が異なり、夫々、独自の形状になっていて互換性がない。そのため、異なるメーカーの加工装置を複数台所有する場合、加工装置ごとに複数のクランプ装置を揃えなければならず、これにより多数のクランプ装置を保有することなり、コストが掛かるうえ、管理や作業も煩雑になる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであり、多数のクランプ装置を保有することなく形状の異なるT溝にも容易に適用することができるクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】
加工装置の基盤30にセットされた被固定部材40を固定するクランプ装置であって、前記被固定部材40をクランプするクランプ部4を設けた一つのクランプ本体部1と、このクランプ本体部1に螺着により着脱交換可能に連設される複数のT溝取付け部2と、この夫々のT溝取付け部2の下端に螺着により着脱交換可能に連設され前記基盤30に設けられたT溝31に嵌合する複数のT溝嵌合部3とを備え、前記複数のT溝取付け部2は、夫々長さが異なり、また、前記複数のT溝嵌合部3は、夫々形状が異なるT溝31に嵌合するものであり、前記複数のT溝取付け部2の中から選択される適宜な長さのT溝取付け部2が前記クランプ本体部1に連設され、また、前記複数のT溝嵌合部3の中から選択される前記T溝31の形状に嵌合する適宜な形状のT溝嵌合部3が前記T溝取付け部2に連設される構成であり、さらに、前記クランプ本体部1は、シリンダ部15と、このシリンダ部15内に往復移動自在に設けられるピストン6と、このピストン6を動作させ前記シリンダ部15内の圧媒を加圧するための加圧操作部16とが内設され、この加圧操作部16は、前記クランプ本体部1に螺刻される雌ネジ部と、この雌ネジ部に螺合される雄ネジ部とからなり、この雄ネジ部が螺入操作されることで前記ピストン6が前進移動し前記シリンダ部15内の圧媒が加圧されることで、前記クランプ部4がクランプ動作して被固定部材40をクランプするように構成されていることを特徴とするクランプ装置に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のように構成したから、多数のクランプ装置を保有することなく形状の異なるT溝にも容易に適用することができるクランプ装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施例の使用状態を示す説明側面図である。
【
図3】本実施例の使用状態を示す説明正面図である。
【
図4】本実施例のクランプ本体部(クランプ部非作動状態)を示す説明側断面図である。
【
図5】本実施例のクランプ本体部(クランプ部非作動状態)を示す説明平断面図である。
【
図6】本実施例のクランプ本体部(クランプ部作動状態)を示す説明側断面図である。
【
図7】本実施例のクランプ本体部(クランプ部作動状態)を示す説明平断面図である。
【
図9】本実施例の使用状態を示す説明正断面図である。
【
図10】本実施例のT溝取付け部とT溝係合部の組み合わせ例を示す説明概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0010】
本発明は、現状のクランプ装置のT溝係合部3が使用する加工装置の基盤30に設けられているT溝31の形状と合わずクランプ装置を取り付けられない場合、クランプ本体部1からT溝取付け部2を取り外し、複数のT溝取付け部2の中から使用する加工装置の基盤30に設けられているT溝31に嵌合する(適した)形状のT溝係合部3が設けられたT溝取付け部2を選択し、これをクランプ本体部1に連設(取り付け)ることで、使用する加工装置への取付けが可能となる。
【0011】
すなわち、本発明は、一つのクランプ本体部1に対してT溝係合部3の形状が異なる複数のT溝取付け部2を備える構成であり、T溝取付け部2の付け替えによりT溝係合部3を形状の異なる別のT溝係合部3に変更することができ、これによりT溝31の形状が異なる別の加工装置への取付けが可能となる。
【0012】
したがって、従来のように多数のクランプ装置を保有する必要がなくなり、クランプ装置に掛かるコストを低減することができると共に、クランプ装置の管理が容易になり、作業性も向上する。
【実施例】
【0013】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施例は、
図2,3に示すような、加工装置(例えばプレス装置)の基盤30にセットされた加工部材や金型などの被固定部材40を固定するクランプ装置である。
【0015】
具体的には、本実施例は、被固定部材40をクランプするクランプ部4が、加圧装置5により加圧された圧媒の押圧作用によってクランプ動作するロッドタイプに構成されているクランプ装置であり、
図1に示すように、クランプ部4を有するクランプ本体部1と、このクランプ本体部1に連設されるT溝取付け部2と、このT溝取付け部2に設けられるT溝係合部3とで構成されているものである。
【0016】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0017】
クランプ本体部1は、
図4に示すように、被固定部材40をクランプするクランプ部4と、このクランプ部4をクランプ動作させる圧媒を加圧する加圧装置5と、T溝取付け部2が連設される基体部9とからなる構成とされている。
【0018】
基体部9は、
図4に示すように、底部にT溝取付け部2が螺着連設される螺着連設部10が設けられ、上部にクランプ部4をこの基体部9に対して上方に付勢する付勢部材11(本実施例ではコイルばねを採用)が設けられている。
【0019】
また、基体部9は、この基体部9と共にクランプ部4の移動をガイドするクランプガイド部12が周面に設けられており、本実施例は、
図4,5に示すように、このクランプガイド部12、基体部9及び後述するクランプ部4とにより圧媒が貯留される圧媒貯留部13を形成するように構成されている。
【0020】
具体的には、圧媒貯留部13は、
図5に示すように、クランプ本体部1内に形成され後述する加圧装置5と連通する圧媒流路14に連通するように形成され、加圧装置5の作動による加圧作用によりこの圧媒貯留部13内の圧媒が加圧され、この加圧された圧媒がクランプ部4を押圧し、クランプ部4をクランプ移動させる構成とされている。
【0021】
また、クランプ部4は、円筒形に形成され、付勢部材11を介して基体部9に上下方向に相対移動自在に設けられ、圧媒貯留部13に貯留される圧媒の押圧作用によりクランプ動作(下方に移動)して被固定部材40をクランプし、前記圧媒の押圧作用が解除されると前記付勢部材11の付勢力により上方に移動して被固定部材40に対するクランプ状態が解除されるように構成されている。なお、クランプ部4の形状は本実施例に記載される形状に限定されるものではなく適宜変更可能なものである。
【0022】
また、加圧装置5は、手動ねじ込み操作式に構成され、この加圧装置5を作業者がねじ込み操作することでクランプ本体部1内に形成される圧媒流路14及び圧媒貯留部13内の圧媒を加圧するように構成されている。
【0023】
具体的には、加圧装置5は、
図4,5に示すように、圧媒流路14と連通するシリンダ部15と、このシリンダ部15内に前後方向(水平方向)に往復移動自在に設けられる加圧部材6としてのピストン6と、このピストン6を動作させシリンダ部15内の圧媒を加圧するための加圧操作部16とからなり、この加圧操作部16が操作されることでピストン6が前進してシリンダ部15内の圧媒を押圧(加圧)し、この押圧により圧媒が圧媒流路14を介して圧媒貯留部13内に流動し、クランプ部4を押圧しクランプ動作させるように構成されている。
【0024】
より具体的には、加圧操作部16は、クランプ本体部1に螺刻される雌ネジからなるねじ込み操作部移動部17と、このねじ込み操作部移動部17に螺合される雄ネジに構成されているねじ込み操作部8とからなり、このねじ込み操作部8は、加圧部材6であるピストン6の端部(基端部)に設けられていて、クランプ本体部1の正面側、言い換えると本実施例を基盤30のT溝31に挿入する挿入方向手前側方向)に形成された開口部7を介してレンチ等の工具をクランプ本体部1に対して水平な状態でねじ込み操作するように設けられている。
【0025】
すなわち、本実施例のクランプ本体部1は、
図6,7に示すように、加圧装置5の加圧操作部16、具体的には、ねじ込み操作部8を、開口部7を介して水平方向から差し入れ係合したレンチ等の工具を用いて螺入操作し、このねじ込み操作部8に連設されるピストン6を前進移動させシリンダ部15内の圧媒を加圧することで、この加圧された圧媒が圧媒流路14を介して圧媒貯留部13内に流入し、圧媒貯留部13内の圧媒が加圧されクランプ部4を押圧し、この圧媒の押圧作用によりクランプ部4がクランプ動作して被固定部材40をクランプするように構成されている。
【0026】
また、上述したクランプ本体部1に連設されるT溝取付け部2は、下端部に加工装置の基盤30に設けられたT溝31に嵌合するT溝係合部3が設けられ、クランプ本体部1の下端部に着脱自在に連設される構成とされている。
【0027】
具体的には、T溝取付け部2は、
図8,9に示すように、上端部にクランプ本体部1の基体部9に設けられた螺着連設部10に螺合する雄ネジ部18が設けられ、クランプ本体部1(基体部9)に螺着連設される構成とされている。なお、クランプ本体部1とT溝取付け部2との連設方法は本実施例に示す螺着に限定されるものではなく、クランプ本体部1とT溝取付け部2とを着脱自在に連結し得る方法であれば適宜採用可能なものとする。
【0028】
また、本実施例のT溝取付け部2は、T溝係合部3が着脱自在に設けられた構成とされている。
【0029】
具体的には、T溝取付け部2の下端部に雄ネジ部19が形成され、T溝係合部3にこの雄ネジ部19に螺合する雌ネジに形成る螺着連設部20が設けられていて、この雄ネジ部19と螺着連設部20との螺着によりT溝取付け部2にT溝係合部3が着脱自在に設けられた構成とされている。
【0030】
また、本実施例は、上述のように構成されるT溝取付け部2及びT溝係合部3に関し、長さの異なる複数のT溝取付け部2と、形状が異なるT溝31に嵌合する複数のT溝係合部3とを備え、複数のT溝取付け部2の中から選択された基盤30にセットされた被固定部材40の固定に適した長さのT溝取付け部2がクランプ本体部1に連設され、複数のT溝係合部3の中から選択されたT溝31の形状に嵌合する形状のT溝係合部3がT溝取付け部2に連設されてなる構成とされている(
図10参照)。
【0031】
すなわち、本実施例は、長さの異なる別のT溝取付け部2に付け替えることにより高さ(長さ)を変更することができ、これにより、加工装置の基盤30に取り付けた際のクランプ部4の高さ位置、言い換えると、基盤30の上面とクランプ部4との間隔を変更することができるように構成されると共に、形状の異なる別のT溝係合部3に付け替えることによりT溝係合部3の形状を変更することができ、これにより、T溝31が異なる基盤30への取り付けが可能となるように構成されている。
【0032】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0033】
本実施例は、加圧装置5を作動させる際のねじ込み操作部8のねじ込み操作を、クランプ本体部1に対して水平方向(クランプ本体部1の正面側)から工具をセットしてねじ込み操作するように構成されているから、例えば、本実施例を基盤30にセットした際に上下方向に作業スペースがなくてもねじ込み操作を行うことができる操作性に優れたクランプ装置となる。
【0034】
また、本実施例は、長さの異なる複数のT溝取付け部2の中から被固定部材40の高さ(厚さ)に適した長さのT溝取付け部2を選択しクランプ本体部1に連設することで、その被固定部材40に適した長さのクランプ装置となる。したがって、本実施例一つで様々な高さ(厚さ)の被固定部材40を固定することができ、従来のように多数のクランプ装置を保有する必要がなくなり、クランプ装置に掛かるコストを低減することができると共に、クランプ装置の管理が容易になり、作業性も向上する。
【0035】
また、本実施例は、形状の異なる複数のT溝係合部3の中から使用する加工装置の基盤30に設けられているT溝31に適した形状のT溝係合部3を選択しT溝取付け部2に連設することで、その基盤30に取付け可能なクランプ装置となる。
【0036】
したがって、本実施例一つでT溝31の形状が異なる基盤30を有する他の加工装置にも用いることができ、従来のように加工装置ごとに多数のクランプ装置を保有する必要がなくなり、クランプ装置に掛かるコストを低減することができると共に、クランプ装置の管理が容易になり、作業性も向上する。
【0037】
また、本実施例は、クランプ本体部1とT溝取付け部2、及びT溝取付け部2とT溝係合部3とが夫々、螺着により連設される構成とされているから、着脱操作が容易で実用的なクランプ装置となる。
【0038】
このように、本実施例は、従来にない作用効果を発揮し極めて実用性に優れた画期的なクランプ装置となる。
【0039】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0040】
1 クランプ本体部
2 T溝取付け部
3 T溝嵌合部
4 クランプ部
6 ピストン
15 シリンダ部
16 加圧操作部
30 基盤
31 T溝
40 被固定部材