(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 21/02 20060101AFI20240228BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20240228BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B65D21/02 410
B65D1/26
B65D85/50 100
(21)【出願番号】P 2020008310
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】506204047
【氏名又は名称】プラスワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】弁理士法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 尊利
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-92824(JP,U)
【文献】特開2008-120442(JP,A)
【文献】実開昭62-65923(JP,U)
【文献】実公昭42-13626(JP,Y1)
【文献】特開2000-313460(JP,A)
【文献】実開昭57-64426(JP,U)
【文献】実開昭59-43331(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/00 - 21/08
B65D 1/26
B65D 85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁外面にテーパーが形成されてスタッキング可能であり、開口部の平面視輪郭形状が90度回転させたときに上下の容器が嵌まり合う形状である包装用容器において、
容器周壁の内外
面に、二対の係止段部が設けてあり、
一対の係止段部は、平面形状の中心点を通る第1の仮想直線と容器の周壁との交点部分に形成され、
他の一対の係止段部は、平面形状の中心点を通り前記直線と90度をなす第2の仮想直線と容器の周壁との交点部分に形成され、
前記各一対の係止段部は同じ深さ位置に形成され、
一対の係止段部は浅い位置に、他の一対の係止段部は深い位置に形成され、
上下の容器を同じ向きにして重ねると同じ深さ位置に形成した段部同士が係止して、上下の容器はほぼ密接した状態でスタッキングされ、他方、重ね合わせる容器を90度回転させて重ねると、浅い位置に形成した段部と深い位置に形成した段部とが係止して上の容器は下の容器から浮き上がった状態となり、上下の容器の側壁の間に大きな間隙が生じるようにした、
包装用容器。
【請求項2】
第1の仮想直線は、平面形状の中心点を通る最も長い直線とした、請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
包装用容器は平面視正方形とし、係止段部は容器周壁の四隅に設けられた、請求項1に記載の包装用容器。
【請求項4】
隣接する係止段部は、連続する段部で繋げられた、請求項1ないし3の何れかに記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタッキング可能な包装用容器に関するものであり、具体的には、水切り、乾燥の便に配慮した食品保存用の包装用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタッキング可能な包装用容器は、スタッキングした状態では重ねられた容器の外壁と内壁が密着してしまい、重ねた状態では水切り、乾燥が困難である。そのために、
図11に示すように、個別にひっくり返して水切り、乾燥を行わなければならず、広いスペースが必要とされている。
【0003】
このような問題を解決するために、容器本体の外周面に突出させて複数の凸状リブを設け、リブを容器本体の口縁から底部へ向かって傾斜が高まる縦長に形成し、重ね合わせた際にリブによって間隙を生じさせて容器周壁の密着を防止するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術においては、リブによって周壁間に間隙が得られるが、間隙を広く得るためにはリブの高さを高くする必要がある。リブの高さを高くすると、スタッキングしたときの高さが高くなり、大きな収納スペースが必要になる。
【0006】
この発明は、重ねられた容器の内外壁の間隙を可及的に広くしつつ、スタッキングしたときの高さを可及的に低くすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、スタッキング可能であり、開口部の平面視輪郭形状が90度回転させたときに上下の容器が嵌まり合う形状である包装用容器において、容器周壁の内外面に二対の係止段部を設け、そのうち一対の係止段部は、平面形状の中心点を通る第1の仮想直線と容器の周壁との交点部分に形成し、他の一対の係止段部は、平面形状の中心点を通り前記直線と90度をなす第2の仮想直線と容器の周壁との交点部分に形成し、前記各一対の係止段部は同じ深さ位置に形成する。そして、一対の係止段部は浅い位置(容器の開口部に近い位置)に、他の一対の係止段部は深い位置(容器の底面部に近い位置)に形成することにより、前記課題を解決するものである。
【0008】
この発明の包装用容器の平面形状は90度回転させたときに上下の容器が嵌まり合う形状であればよく、円形、方形、多角形を問わない。
上記における「一対の係止段部は、平面形状の中心点を通る第1の仮想直線と容器の周壁との交点部分に形成し、他の一対の係止段部は、平面形状の中心点を通り前記直線と90度をなす第2の仮想直線と容器の周壁との交点部分に形成し」とは、具体的には
図1ないし
図3に例示する態様を意味する。
【0009】
図1は平面形状を円形とした例であり、平面形状の中心点Mを通る第1の仮想直線L1と容器の周壁との交点部分に一対の段部A1、A2を形成し、中心点Mを通り仮想直線L1と直交する第2の仮想直線L2と容器の周壁の交点部分に一対の段部B1、B2を形成する。
そして、段部A1、A2の深さ位置は同じであり、段部B1、B2の深さ位置は同じである。
【0010】
図2は平面形状を八角形とした例であり、平面形状の中心点Mを通る仮想直線L1と容器の周壁との交点部分に一対の段部A1、A2を形成し、中心点Mを通り直線L1と直交する仮想直線L2と容器の周壁の交点部分に一対の段部B1、B2を形成する。
【0011】
図3は平面形状を花弁状とした例であり、平面形状の中心点Mを通る最も長い仮想直線L1と容器の周壁との交点部分に一対の段部A1、A2を形成し、中心点Mを通り直線L1と直交する仮想直線L2と容器の周壁との交点部分に一対の段部B1、B2を形成する。
【0012】
請求項2の発明は、第1の仮想直線を、平面形状の中心点を通る最も長い直線としたものである。
図3に破線で示すように仮想直線を描いて、それと容器周壁との交点に段部を設けてもよいが、最も長い直線を仮想直線にすることにより、重ねた状態が安定する。
【0013】
請求項3の発明は、包装用容器は平面視正方形とし、係止段部は容器周壁の四隅に設けたものであり、請求項4の発明は、隣接する係止段部を連続する段部で繋げたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明において、二対の係止段部を備え、各一対の係止段部は同じ深さ位置に形成してあり、一対の係止段部は浅い位置に、他の一対の係止段部は深い位置に形成してある。そして、容器の平面形状は90度回転させたときに上下の容器が嵌まり合う形状としてある。そのために、容器の重ね合わせる向きにより、重ね合わせたときに係止する段部が異なる。
【0015】
すなわち、上下の容器を同じ向きにして重ねると深い位置に形成した段部同士が係止して、上下の容器はほぼ密接した状態でスタッキングされる。
他方、重ねる容器を90度回転させて重ねると、浅い位置に形成した段部と深い位置に形成した段部とが係止するので、上の容器は下の容器から浮き上がった状態となり、上下の容器の側壁の間に大きな間隙が生じる。そこで、開口側を下向きにして放置すると、水が切れ、空気も流通するので乾燥も促進される。
【0016】
特に、請求項4の構成においては、隣接する係止段部を連続する段部によって上下の容器の内外壁の接触が回避されるので、水切り、乾燥の効果は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】平面視円形の容器における段部の位置の説明図
【
図2】平面視八角形の容器における段部の位置の説明図
【
図3】平面視花弁状の容器における段部の位置の説明図
【
図8】実施例の90度回転させて重ねた状態の正面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0019】
平面視隅丸正方形で周壁外面にテーパーが形成されてスタッキング可能とした包装用容器1において、平面視における中心点Mを通過する対角線である第1の仮想直線L1と容器1の周壁2との交点である周壁2の隅部に一対の段部A1、A2(以下まとめて「段部A」という場合がある。)が設けてある。また、前記仮想直線L1と直交し中心点Mを通過する対角線である第2の仮想直線L2と容器1の周壁2との交点である周壁2の隅部に、他の一対の段部B1、B2(以下まとめて「段部B」という場合がある。)が設けてある。
【0020】
前記各段部A1、A2、B1、B2は、周壁2の内面においては上向きの段部であり、外面においては下向きの段部としてある。そして、一対の段部A1、A2は浅い位置に、同じ深さ位置で設けてあり、他の一対の段部B1、B2は深い位置に、同じ深さ位置で設けてある。そして、隣接する段部である段部A1とB1、B1とA2、A2とB2、B2とA1の間には連続する段部3が設けてあり、周壁2の周囲は段部で囲われている。
【0021】
以下、段部の機能を説明する。
【0022】
スタッキングして容器を保管する場合は、段部A同士、段部B同士が係止する向き(以下「基本状態」という。)で複数の容器を重ね合わせる。このとき、重ねられた容器は段部Bが形成された深い位置まで嵌め合わせることができる。しかし、この状態では周壁2の内外面に隙間がなく、水切り、乾燥には適さない。
【0023】
水切り、乾燥を行う場合は、重ね合わせる容器を90度回転させた向き(以下「回転状態」という。)で複数の容器を重ね合わせる。容器を90度回転させることによって下の容器の段部Aと上の容器の段部Bとが係止する。そして、上の容器の段部Aは係止することはなく、上の容器の上部は下の容器から大きく露出する。そのために、段部Aの下方には広い間隙4が生じる。
加えて、隣接する段部の間には連続する段部3が設けてあるので、段部3の下方にも間隙5が生じる。
【0024】
したがって、容器内に残る水滴は間隙4、5から流出し、また間隙4、5から空気が循環するので乾燥が促進される。
なお、連続する段部3は、間隙を大きくする機能の他、容器の向きを把握しやすくする機能も持つ。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、重ねた状態での水切り、乾燥が困難であった包装用容器において、重ねた状態での水切り、乾燥を容易にするものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0026】
1 容器
2 周壁
3 連続する段部
4 間隙
5 間隙
A1、A2 一対の段部
B1、B2 一対の段部
L1、L2 仮想直線