(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】原価計算装置、原価計算方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240228BHJP
【FI】
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020082680
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】511253586
【氏名又は名称】株式会社ローゼック
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】早川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】内木場 隆宜
【審査官】塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-161712(JP,A)
【文献】特開2000-048071(JP,A)
【文献】特開2001-195490(JP,A)
【文献】中垣 敕,常識を超える 目的実現のための原価計算技法 第2回,工場管理 第47巻 第11号 FACTORY MANAGEMENT,日刊工業新聞社,2001年09月01日,第47巻,第78-83頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品それぞれにおいて使用される複数の原材料それぞれの量と、所定の期間における前記複数の製品それぞれの製造量と、に基づいて、前記所定の期間において前記複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される前記複数の原材料それぞれの量である理論使用量を算出する理論使用量算出部と、
前記所定の期間中に前記複数の製品を製造するために前記複数の原材料それぞれが投入された量である投入量を特定する投入量特定部と、
前記複数の製品において前記複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、前記複数の原材料それぞれの前記理論使用量の割合に等しくなるように、前記複数の製品の製造に使用される原材料ごとに前記按分投入量を算出する按分投入量算出部と、
前記複数の原材料それぞれの単価と前記按分投入量とに基づいて、前記複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出する個別原価算出部と、
前記複数の使用原材料の前記個別原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれについての
製品原価を算出する製品原価算出部と、
を有する原価計算装置。
【請求項2】
前記按分投入量算出部は、前記複数の原材料それぞれに対して、前記複数の製品に対応する前記理論使用量の合算値で前記投入量を除算した値を前記理論使用量に乗算することにより、前記按分投入量を算出する、
請求項1に記載の原価計算装置。
【請求項3】
前記投入量特定部は、前記複数の原材料のうち、前記複数の製品の製造のために投入された複数のロットそれぞれに対して前記投入量を特定し、
前記按分投入量算出部は、前記複数の製品において前記複数のロットの投入量が按分されたロット別按分投入量を算出し、
前記個別原価算出部は、前記複数のロットそれぞれの単価と前記ロット別按分投入量とに基づいて、前記複数のロットそれぞれの前記個別原価を算出し、
前記製品原価算出部は、前記複数のロットそれぞれの前記個別原価を合算
して算出した前記複数の原材料それぞれの原材料別製品原価を合算することにより前記製品原価を算出する、
請求項1又は2に記載の原価計算装置。
【請求項4】
前記按分投入量算出部は、同一の原材料に対応する前記複数のロットそれぞれに対して、各ロットに対応する前記投入量を前記同一の原材料に対応する前記投入量で除算した値に各ロットに対応する前記原材料の前記按分投入量を乗算することにより、前記ロット別按分投入量を算出する、
請求項3に記載の原価計算装置。
【請求項5】
前記個別原価算出部は、前記複数の原材料それぞれの投入量に単価を乗算した複数の結果を合算することにより、投入された前記複数の原材料それぞれの合計原価を算出し、算出した前記合計原価を前記複数の原材料それぞれの前記投入量で除算することにより、前記複数の原材料それぞれの平均単価を算出し、前記平均単価に前記按分投入量を乗算することにより、前記製品において使用された前記複数の原材料それぞれの個別原価を算出する、
請求項1又は2に記載の原価計算装置。
【請求項6】
前記投入量特定部は、前記所定の期間が開始する時点での前記原材料の残量と、前記所定の期間が終了した時点での前記原材料の残量との差に基づいて、前記投入量を特定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の原価計算装置。
【請求項7】
前記製品原価算出部は、前記複数の製品それぞれについての前記複数の使用原材料に対応する複数の
原材料別製品原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれを製造するために要した原材料の前記
製品原価を算出する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の原価計算装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
複数の製品それぞれにおいて使用される複数の原材料それぞれの量と、所定の期間における前記複数の製品それぞれの製造量と、に基づいて、前記所定の期間において前記複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される前記複数の原材料それぞれの量である理論使用量を算出するステップと、
前記所定の期間中に前記複数の製品を製造するために前記複数の原材料それぞれが投入された量である投入量を特定するステップと、
前記複数の製品において前記複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、前記複数の原材料それぞれの前記理論使用量の割合に等しくなるように、前記複数の製品の製造に使用される原材料ごとに前記按分投入量を算出するステップと、
前記複数の原材料それぞれの単価と前記按分投入量とに基づいて、前記複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出するステップと、
前記複数の使用原材料の前記個別原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれについての
製品原価を算出するステップと、
を有する原価計算方法。
【請求項9】
コンピュータを、
複数の製品それぞれにおいて使用される複数の原材料それぞれの量と、所定の期間における前記複数の製品それぞれの製造量と、に基づいて、前記所定の期間において前記複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される前記複数の原材料それぞれの量である理論使用量を算出する理論使用量算出部、
前記所定の期間中に前記複数の製品を製造するために前記複数の原材料それぞれが投入された量である投入量を特定する投入量特定部、
前記複数の製品において前記複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、前記複数の原材料それぞれの前記理論使用量の割合に等しくなるように、前記複数の製品の製造に使用される原材料ごとに前記按分投入量を算出する按分投入量算出部、
前記複数の原材料それぞれの単価と前記按分投入量とに基づいて、前記複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出する個別原価算出部、及び
前記複数の使用原材料の前記個別原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれについての
製品原価を算出する製品原価算出部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の原価を出力する原価計算装置、原価計算方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品の原価を計算する装置が知られている。特許文献1には、弁当や総菜に使用される原材料の使用量及び単価に基づいて弁当や総菜の原価を計算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、各製品において使用されている原材料の量が確定していることを前提に製品に占める原材料の原価が計算されている。しかしながら、製品ごとに原材料の使用量はばらつくとともに、製品の製造ラインに投入された原材料の一部は、落下したり不良品だったりすることにより廃棄される。このような中、各製品で実際に使用された原材料の量を厳密に管理して原価を計算するには多大な労力を要していた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、製品に占める原材料の原価を把握しやすくするための原価計算装置、原価計算方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の原価計算装置は、複数の製品それぞれにおいて使用される複数の原材料それぞれの量と、所定の期間における前記複数の製品それぞれの製造量と、に基づいて、前記所定の期間において前記複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される前記複数の原材料それぞれの量である理論使用量を算出する理論使用量算出部と、前記所定の期間中に前記複数の製品を製造するために前記複数の原材料それぞれが投入された量である投入量を特定する投入量特定部と、前記複数の製品において前記複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、前記複数の原材料それぞれの前記理論使用量の割合に等しくなるように、前記複数の製品の製造に使用される原材料ごとに前記按分投入量を算出する按分投入量算出部と、前記複数の原材料それぞれの単価と前記按分投入量とに基づいて、前記複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出する個別原価算出部と、前記複数の使用原材料の前記個別原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれについての前記複数の使用原材料に対応する製品原価を算出する製品原価算出部と、を有する。
【0007】
前記按分投入量算出部は、前記複数の原材料それぞれに対して、前記複数の製品に対応する前記理論使用量の合算値で前記投入量を除算した値を前記理論使用量に乗算することにより、前記按分投入量を算出してもよい。
【0008】
前記投入量特定部は、前記複数の原材料のうち、前記複数の製品の製造のために投入された複数のロットそれぞれに対して前記投入量を特定し、前記按分投入量算出部は、前記複数の製品において前記複数のロットの投入量が按分されたロット別按分投入量を算出し、前記個別原価算出部は、前記複数のロットそれぞれの単価と前記ロット別按分投入量とに基づいて、前記複数のロットそれぞれの前記個別原価を算出し、前記製品原価算出部は、前記複数のロットそれぞれの前記個別原価を合算することにより前記製品原価を算出してもよい。
【0009】
前記按分投入量算出部は、同一の原材料に対応する前記複数のロットそれぞれに対して、各ロットに対応する前記投入量を前記同一の原材料に対応する前記投入量で除算した値に各ロットに対応する前記原材料の前記按分投入量を乗算することにより、前記ロット別按分投入量を算出してもよい。
【0010】
前記個別原価算出部は、前記複数の原材料それぞれの投入量に単価を乗算した複数の結果を合算することにより、投入された前記複数の原材料それぞれの合計原価を算出し、算出した前記合計原価を前記複数の原材料それぞれの前記投入量で除算することにより、前記複数の原材料それぞれの平均単価を算出し、前記平均単価に前記按分投入量を乗算することにより、前記製品において使用された前記複数の原材料それぞれの個別原価を算出してもよい。
【0011】
前記投入量特定部は、前記所定の期間が開始する時点での前記原材料の残量と、前記所定の期間が終了した時点での前記原材料の残量との差に基づいて、前記投入量を特定してもよい。
【0012】
前記製品原価算出部は、前記複数の製品それぞれについての前記複数の使用原材料に対応する複数の原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれを製造するために要した原材料の原価を算出してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様の原価計算方法は、コンピュータが実行する、複数の製品それぞれにおいて使用される複数の原材料それぞれの量と、所定の期間における前記複数の製品それぞれの製造量と、に基づいて、前記所定の期間において前記複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される前記複数の原材料それぞれの量である理論使用量を算出するステップと、前記所定の期間中に前記複数の製品を製造するために前記複数の原材料それぞれが投入された量である投入量を特定するステップと、前記複数の製品において前記複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、前記複数の原材料それぞれの前記理論使用量の割合に等しくなるように、前記複数の製品の製造に使用される原材料ごとに前記按分投入量を算出するステップと、前記複数の原材料それぞれの単価と前記按分投入量とに基づいて、前記複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出するステップと、前記複数の使用原材料の前記個別原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれについての前記複数の使用原材料に対応する製品原価を算出するステップと、を有する。
【0014】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータを、複数の製品それぞれにおいて使用される複数の原材料それぞれの量と、所定の期間における前記複数の製品それぞれの製造量と、に基づいて、前記所定の期間において前記複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される前記複数の原材料それぞれの量である理論使用量を算出する理論使用量算出部、前記所定の期間中に前記複数の製品を製造するために前記複数の原材料それぞれが投入された量である投入量を特定する投入量特定部、前記複数の製品において前記複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、前記複数の原材料それぞれの前記理論使用量の割合に等しくなるように、前記複数の製品の製造に使用される原材料ごとに前記按分投入量を算出する按分投入量算出部、前記複数の原材料それぞれの単価と前記按分投入量とに基づいて、前記複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出する個別原価算出部、及び前記複数の使用原材料の前記個別原価を合算することにより、前記複数の製品それぞれについての前記複数の使用原材料に対応する製品原価を算出する製品原価算出部、として機能させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製品に占める原材料の原価を把握しやすくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】原価計算装置の概要を説明するための図である。
【
図6】制御部が各製品の原価を算出する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】データ管理部により投入量が登録された後の原材料データベースを示す図である。
【
図8】理論使用量算出部による各原材料の理論使用量の算出結果を示す図である。
【
図9】投入量特定部が特定した原材料別の投入量を示す図である。
【
図10】按分投入量算出部が按分投入量を算出した結果を示す図である。
【
図11】ロット別按分投入量、個別原価及び製品原価が算出された結果を示す図である。
【
図12】ロット別按分投入量、個別原価及び製品原価が算出された結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[原価計算装置1の概要]
図1は、原価計算装置1の概要を説明するための図である。原価計算装置1は、同じ種類であってもロットによって価格が異なる原材料を用いて製造される製品の原価を計算し、計算した原価を出力する装置であり、例えばコンピュータである。本明細書におけるロットは、原材料が納入される単位であり、原材料を納入した納入業者及び/又は原材料が納入されたタイミングの組み合わせが異なる原材料は、異なるロットに属する原材料である。製品は、例えば複数の食材により構成される弁当又は総菜である。本明細書においては、弁当の製造業者において原価計算装置1が使用される場合を例示するが、原価計算装置1の用途は任意である。
【0018】
図1においては、原価計算装置1を用いて原価が管理される製造業者における製品の製造の流れを示している。複数の種類の原材料A(A1~A4)、原材料B(B1~B4)、原材料C(C1~C3)が納入され、納入された原材料は保管庫において保管される。原材料A1、A2、A3、A4は、それぞれ異なるロットで納入された原材料Aであり、それぞれ納入業者又は納入タイミングが異なる同一の種類の原材料(例えば人参)である。原材料B及びCについても同様である。保管庫に収容されている原材料の量は、原材料データベース(原材料DB)に登録されている。
【0019】
製品が製造される際には、それぞれの製品を構成する原材料が保管庫から出されて、製造ラインに投入される。
図1に示す例において、製品Xには原材料Aと原材料Bが使用され、原材料A1、原材料A2、原材料B1が投入されている。所定の期間における各製品の製造量、各製品において使用される原材料名等の情報は製品データベース(製品DB)に登録されている。
【0020】
原価計算装置1は、原価計算用プログラムを実行することにより、原材料データベース及び製品データベースに登録されている各種の情報に基づいて、各製品の原価を計算する。原価計算装置1は、計算した原価を、製造業者の従業員が使用するコンピュータに表示させたり、プリンタを介して印刷したりする。
【0021】
図2は、原価計算システムSの構成を示す図である。原価計算システムSは、原価計算装置1と、コンピュータ2と、コンピュータ3とを備える。原価計算装置1は、コンピュータ2及びコンピュータ3との間で、ネットワークNを介して各種のデータを送受信する。ネットワークNは、例えばイントラネット又はインターネットである。原価計算装置1は、原材料データベース及び製品データベースにアクセス可能に構成されている。
【0022】
コンピュータ2は、例えば原材料の在庫を管理する従業員が使用するコンピュータである。コンピュータ2は、従業員が入力した情報に基づいて、原材料の納入量を示す納入量情報、及び製造のために原材料が投入された量を示す投入量情報を原価計算装置1に送信する。原価計算装置1は、受信した納入量情報及び投入量情報に基づいて原材料データベースを更新する。
【0023】
コンピュータ3は、例えば製品の製造状況を管理する従業員が使用するコンピュータである。コンピュータ3は、従業員が入力した情報に基づいて、製造する製品の種類及び製造量等を示す製品情報を原価計算装置1に送信する。原価計算装置1は、受信した製品情報に基づいて製品データベースを更新する。原価計算装置1が原材料データベース及び製品データベースに登録されたデータに基づいて製品の原価を計算した結果は、例えばコンピュータ3に送信され、コンピュータ3の画面に製品別の原価が表示される。
【0024】
図3は、原材料データベースの一例を示す図である。原材料データベースにおいては、原材料名、ロット番号、納入量、投入量、残量及び単価が関連付けられている。
【0025】
原材料名は、人参、玉ねぎ、キャベツといった原材料の名称である。ロット番号は、原材料の納入単位ごとに付与される情報であり、例えば数字又はアルファベットを含む文字列により構成される。
図3に示す例におけるロット番号は、一例として、年月日に対応している。納入量は、原材料が納入されて所定の保管庫(例えば冷蔵庫又は倉庫)に入れられた量である。投入量は、保管庫から出されて製品の製造ラインに移された量である。
図3の原材料データベースは、一日の業務の開始時点の状態を示しており、投入量は0Kgとなっている。
【0026】
残量は、保管庫に残っている原材料の量である。単価は、原材料の単位量あたりの金額であり、本実施形態では1Kgあたりの金額を示している。原材料が新たに納入されるたびに、コンピュータ2において原材料に関する情報が入力される。入力された情報が原価計算装置1に送信されることにより、納入された原材料に関する情報が原材料データベースに登録される。
【0027】
図4は、製品データベースの一例を示す図である。製品データベースにおいては、オーダーID、製品名、製造量、原材料名、原材料の単位使用量及び理論使用量が関連付けられている。オーダーIDは、製品の製造単位ごとに付与される情報であり、例えば数字又はアルファベットを含む文字列により構成される。例えば、第1顧客向けの弁当Xに対してB-001というオーダーIDが付与され、第2顧客向けの弁当Xに対してB-002という製品IDが付与されている。
【0028】
製造量は、各オーダーIDに対応する製品の製造量が管理される単位期間(例えば1日)において各製品が製造される予定の製品の量(数量、重量又は容量)である。原材料名は、各製品に使用される各原材料名を示している。弁当Xには原材料A及び原材料Bが使用されることが想定されている。弁当Yには原材料A及び原材料Cが使用されることが想定されている。単位使用量は、各製品の単位製造量あたりの各原材料の使用量(例えば重量又は数量)である。本実施形態では単位製造量を100個としている。
【0029】
理論使用量は、製品の製造において使用される原材料の単位使用量と製品の製造量とに基づいて理論的に算出される原材料の使用量である。
図4に示す例の場合、オーダーB-001の弁当Xの製造量は1000個であり、単位製造量100個の10倍である。したがって、原材料Aの理論使用量は、単位使用量の10倍の10Kgとなっている。
【0030】
製品データベースには、製造される製品の仕様が決定するたびに、製造される製品に関する情報が登録される。そして、製品の製造量が管理される単位期間(例えば1日)が開始する前に製造量が登録される。製品データベースには、製造量が管理される単位期間が開始する前に決定された製造予定数と、製造量を管理する単位期間が終了した後に確定した製造実績数とが登録されていてもよい。
【0031】
[原材料の納品から原価の計算までの流れ]
以下、
図2を参照して、原材料が納品されてから製品の原価が計算されるまでの流れの概要を説明する。
【0032】
原価計算装置1は、納入された原材料に関する情報を受け付ける。原材料の在庫を管理する従業員は、例えば原材料が納入されるたびに、原材料名、ロット番号、納入量及び単価を関連付けてコンピュータ2に入力する。原価計算装置1は、コンピュータ2から受信した原材料名、ロット番号、納入量及び単価を原材料データベースに登録し、残量に納入量を加算することにより、原材料データベースにおける残量を更新する。
【0033】
また、原価計算装置1は、製品の製造中に製造ラインに投入された原材料の量を示す投入量を受け付ける。原材料の在庫を管理する従業員は、例えば原材料の一部が製品の製造のために保管庫から出されて製造ラインに投入された場合に、投入量をコンピュータ2に入力する。原価計算装置1は、コンピュータ2から受信した投入量を原材料データベースに登録し、残量から投入量を減算することにより、原材料データベースにおける残量を更新する。
【0034】
原価計算装置1は、製品の製造が開始される前に、製品に関する情報を受け付ける。例えば製品の製造を管理する従業員は、製造する予定の製品の製品名、製品の製造量、製品の製造に使用される原材料名及び使用される原材料の単位使用量等の製品に関する情報をコンピュータ3に入力し、コンピュータ3は、入力された情報を原価計算装置1に送信する。原価計算装置1は、受信した製品に関する情報を製品データベースに登録する。なお、従業員が、原材料の理論使用量をコンピュータ3に入力してもよい。
【0035】
ところで、複数の製品の製造に特定の原材料A(例えば人参)が使用される場合、それぞれの製品の製造において、価格が異なる複数のロットの原材料Aが使用される場合がある。製品の原価を計算するために、製造業者が各製品で実際に使用された原材料Aのロットを管理し、使用された原材料Aの価格を製造された製品ごとに管理するには多くの作業時間を要する。
【0036】
この課題を解決するために、原価計算装置1は、単位期間内に複数の種類の製品で使用された原材料Aの原価を、各製品で原材料Aが使用される割合で按分することにより、各製品の製造に要した原材料Aの原価を概算的に算出することを特徴としている。原価計算装置1がこのようにして製品の原価を計算することで、製造業者において各製品で使用された原材料の量を厳密に管理することなく、適切に製品の原価が計算されるので、製造業者の業務効率が大幅に向上する。
以下、原価計算装置1の構成及び動作を詳細に説明する。
【0037】
[原価計算装置1の構成及び動作]
図5は、原価計算装置1の構成を示す図である。原価計算装置1は、通信部11と、表示部12と、操作部13と、記憶部14と、制御部15と、を有する。制御部15は、データ管理部151と、製造量特定部152と、理論使用量算出部153と、投入量特定部154と、按分投入量算出部155と、個別原価算出部156と、製品原価算出部157と、を有する。
【0038】
通信部11は、イントラネット又はインターネット等のネットワークNを介してコンピュータ(例えばコンピュータ2及びコンピュータ3)との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部11は、受信したデータをデータ管理部151に通知する。また、通信部11は、データ管理部151から入力されたデータを送信する。
【0039】
通信部11は、例えば、原材料データベースに登録されるデータが入力されるコンピュータ2及び製品データベースに登録されるデータが入力されるコンピュータ3から、原材料に関する情報及び製品に関する情報を受信する。また、通信部11は、コンピュータ2及びコンピュータ3からの要求に応じて、原材料データベース及び製品データベースに登録されたデータをコンピュータ2及びコンピュータ3に送信する。
【0040】
表示部12は、各種のデータを表示するディスプレイである。表示部12は、ユーザの操作に応じて、例えば原材料データベース及び/又は製品データベースに登録されたデータを表示する。また、表示部12は、ユーザが操作部13を用いて各種のデータを原材料データベース及び/又は製品データベースに登録するための画面を表示する。
【0041】
操作部13は、ユーザが原材料データベース及び製品データベースにアクセスするための操作をするためのデバイスであり、例えばキーボード及びマウスである。操作部13は、操作内容を示す情報をデータ管理部151に通知する。
【0042】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等の記憶媒体を有する。記憶部14は、原材料データベース及び製品データベースを始めとする各種のデータを記憶している。また、記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを記憶している。
【0043】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有している。制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、データ管理部151、製造量特定部152、理論使用量算出部153、投入量特定部154、按分投入量算出部155、個別原価算出部156及び製品原価算出部157として機能する。
【0044】
図6は、制御部15が各製品の原価を算出する処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、例えばコンピュータ3において、製品原価を算出する指示が入力された時点から開始する。本明細書における製品原価は、製品を構成する複数の原材料の原価を合算した値である。以下、
図5及び
図6を参照しながら、制御部15の各部の動作を説明する。
【0045】
データ管理部151は、原材料データベース及び製品データベースに登録されるデータ又は登録されているデータを管理する。具体的には、データ管理部151は、通信部11又は操作部13を介して入力されたデータを、記憶部14に記憶された原材料データベース及び製品データベースに書き込んだり、制御部15の各部に通知したりする。また、データ管理部151は、通信部11又は操作部13を介して入力された要求に応じて、記憶部14に記憶された原材料データベース及び製品データベースからデータを読み出して、通信部11を介して外部コンピュータに送信したり、表示部12に表示させたりする。
【0046】
具体的には、データ管理部151は、コンピュータ2から受信した各ロット番号に対応する原材料の納入量、投入量、及び単価を原材料データベースに登録する。また、データ管理部151は、コンピュータ3から受信した各製品の製造量、各製品に使用される原材料名、及び各原材料の使用量を製品データベースに登録する。
【0047】
図7は、データ管理部151により投入量が登録された後の原材料データベースを示す図である。
図3に示した原材料データベースでは各原材料の投入量が0Kgであったが、各製品の原価が算出される対象となる所定の期間(例えば1日)が終了した後の時点で、
図7に示すように投入量が登録されている。
図7における残量を
図3における残量と比較すると、投入量に相当する量だけ残量が減少していることがわかる。
【0048】
データ管理部151が、製品の原価を算出する指示をコンピュータ3から受けると、製造量特定部152は、所定の期間における複数の製品それぞれの製造量を特定する(S11)。製造量特定部152は、例えば製品データベースに登録された製造量を読み出すことにより、製品の原価を算出する対象となる前記期間の各製品の製造量を特定する。製造量特定部152は、特定した製造量を理論使用量算出部153に通知する。
【0049】
続いて、理論使用量算出部153は、複数の製品それぞれの製造において使用される複数の原材料それぞれの単位使用量と製品の製造量とに基づいて、前記期間において複数の製品それぞれの製造に使用されることが想定される複数の原材料それぞれの量である理論使用量(a)を算出する(S12)。理論使用量(a)は、上述したとおり、製品の製造において使用される原材料の単位使用量と製品の製造量とに基づいて理論的に算出される原材料の使用量である。
【0050】
理論使用量算出部153は、例えば
図4に示した製品データベースを参照することにより、複数の製品それぞれの単位数量(例えば100個)の製造において使用される複数の原材料それぞれの使用量である単位使用量を特定する。そして、各製品の製造量を単位数量で除算した値に単位使用量を乗算することにより、各製品の製造に使用される各原材料の理論使用量を算出する。
【0051】
図8は、理論使用量算出部153による各原材料の理論使用量の算出結果を示す図である。例えば
図4によれば、オーダーIDがB-001の製品の製造量が1000個であり、原材料Aの単位使用量が3Kgなので、理論使用量算出部153は、オーダーIDがB-001の製品における原材料Aの理論使用量を、1000個÷100個×3Kg=30Kgと算出する。同様に、理論使用量算出部153は、オーダーIDがB-002、B-003、B-004の製品における原材料Aの理論使用量を、それぞれ60Kg、40Kg、60Kgと算出する。
【0052】
理論使用量算出部153は、原材料Bが使用されるオーダーIDがB-001、B-002、B-005の製品における原材料Bの理論使用量を、それぞれ20Kg、40Kg、10Kgと算出する。同様に、理論使用量算出部153は、原材料Cが使用されるオーダーIDがB-003、B-004、B-005の製品における原材料Cの理論使用量を、それぞれ50Kg、75Kg、20Kgと算出する。
【0053】
続いて、理論使用量算出部153は、複数の原材料それぞれに対して、複数の製品に対応する理論使用量の合算値である合計理論使用量(b)を算出する(S13)。
図8に示す例の場合、理論使用量算出部153は、原材料Aに対応するオーダーIDがB-001、B-002、B-003、B-004の各製品での理論使用量を合算することにより、原材料Aの合計理論使用量を190Kgと算出する。同様に、理論使用量算出部153は、原材料B及び原材料Cに対応する合計理論使用量を、それぞれ70Kg及び145Kgと算出する。理論使用量算出部153は、算出した合計理論使用量を按分投入量算出部155に通知する。
【0054】
投入量特定部154は、所定の期間中に複数の製品を製造するために複数の原材料それぞれが投入された量である投入量(c)を特定する(S14)。投入量特定部154は、例えば原材料データベースに登録された投入量を読み出すことにより、各原材料の投入量を特定する。投入量特定部154は、所定の期間が開始する時点での原材料の残量と、所定の期間が終了した時点での原材料の残量との差に基づいて、投入量を特定してもよい。また、投入量特定部154は、複数の原材料のうち、複数の製品の製造のために投入された複数のロットそれぞれに対してロット別投入量(d)を特定する(S15)。なお、投入量特定部154は、理論使用量算出部153によるS12及びS13の処理よりも前に投入量(c)を特定してもよい。
【0055】
図9は、投入量特定部154が特定した原材料別の投入量を示す図である。
図9に示すように、ロット番号20200130に対応する原材料Aの投入量は40Kg、ロット番号20200131に対応する原材料Aの投入量は80Kg、ロット番号20200201に対応する原材料Aの投入量は65Kg、ロット番号20200202に対応する原材料Aの投入量は0Kgである。
【0056】
投入量特定部154は、これらの投入量を合算することにより、原材料Aの合計投入量が185Kgであると特定する。同様に、投入量特定部154は、原材料B及び原材料Cの合計投入量が、それぞれ80Kg及び140Kgであると特定する。投入量特定部154は、特定した合計投入量を按分投入量算出部155に通知する。
【0057】
ところで、弁当や総菜のような製品を製造する場合、製造した製品ごとに原材料の使用量にばらつきが生じる。また、投入された原材料の一部は、製造中に作業者が落下させたり、原材料に不良部位が見つかったりすることにより使用されない。その結果、各原材料の合計理論使用量(b)と投入量(c)との間に差が生じる場合がある。
【0058】
厳密には、製品ごとに、各原材料の理論使用量と実際の使用量との比率が異なるが、本実施形態に係る原価計算装置1は、各製品の製造における各原材料の理論使用量と実際の使用量との比率が、合計理論使用量(b)と投入量(c)との比率に等しいと仮定して製品の製品原価を算出することを特徴としている。
【0059】
原価計算装置1がこのようにして製品の原価を算出するために、按分投入量算出部155は、上記の仮定のもとで、各オーダーIDに対応する製品ごとに、合計理論使用量(b)と投入量(c)との比率に基づいて按分した投入量である按分投入量(e)を算出する。按分投入量算出部155は、複数の製品において複数の原材料の投入量が按分された按分投入量(e)の割合が、複数の原材料それぞれの理論使用量の割合に等しくなるように、複数の製品の製造に使用される原材料ごとに按分投入量(e)を算出する(S16)。
【0060】
ここで、按分投入量(e)は、複数の製品それぞれの製造において各原材料が投入されたと仮定された量である。複数の製品それぞれに対応する特定の原材料の按分投入量(e)の比率は、複数の製品それぞれの製造における各原材料の理論使用量の製品間の比率に等しい。按分投入量算出部155は、例えば、複数の原材料それぞれに対して、複数の製品に対応する理論使用量の合算値である合計理論使用量(b)で投入量(c)を除算した値を理論使用量(a)に乗算することにより、按分投入量(e)を算出する。
【0061】
図10は、按分投入量算出部155が按分投入量を算出した結果を示す図である。
図10に示す例において、按分投入量算出部155は、オーダーIDがB-001の弁当Xに使用された原材料Aの按分投入量(e)を、理論使用量30Kg×投入量185Kg/合計理論使用量190Kgにより、29.21Kgと算出する。オーダーIDがB-001の弁当Xにおいては、想定されていた原材料Aの使用量30Kgよりも少ない原材料Aが使用されたと算出されたことになる。同様に、按分投入量算出部155は、原材料Bの按分投入量(e)を22.86Kgと算出する。オーダーIDがB-001の弁当Xにおいては、想定されていた原材料Bの使用量20Kgよりも多い原材料Bが使用されたと算出されたことになる。
【0062】
按分投入量算出部155は、オーダーIDごとに、各オーダーIDに対応する製品の製造に使用された各原材料の按分投入量(e)を算出する。さらに、按分投入量算出部155は、複数の製品において複数のロットの投入量が按分されたロット別按分投入量(f)を算出する(S17)。ロット別按分投入量は、複数のロットの原材料が各製品の製造に同じ割合で使用されたと仮定して算出される、各製品の製造における各ロットの原材料の投入量である。
【0063】
按分投入量算出部155は、同一の原材料に対応する複数のロットそれぞれに対して、各ロットに対応する投入量を同一の原材料に対応する投入量(上記合計投入量)で除算した値に各ロットに対応する原材料の按分投入量(e)を乗算することにより、ロット別按分投入量(f)を算出する。按分投入量算出部155は、算出したロット別按分投入量(f)を個別原価算出部156に通知する。
【0064】
個別原価算出部156は、複数の原材料それぞれの単価と按分投入量とに基づいて、複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出する(S18)。個別原価算出部156は、例えば、複数のロットそれぞれの単価とロット別按分投入量とに基づいて、複数のロットそれぞれの使用原材料の個別原価を算出する。
【0065】
製品原価算出部157は、複数の使用原材料の個別原価を合算することにより、複数の製品それぞれについての複数の使用原材料に対応する製品原価を算出する(S19)。製品原価算出部157は、例えば、複数のロットそれぞれの個別原価を合算することにより、複数の使用原材料に対応する製品原価を算出する。製品原価算出部157は、複数の製品それぞれについての複数の使用原材料に対応する複数の原価を合算することにより、複数の製品それぞれを製造するために要した原材料の原価を算出してもよい。
【0066】
図11及び
図12は、ロット別按分投入量、個別原価及び製品原価が算出された結果を示す図である。
図11は、オーダーIDがB-001及びB-002の製品原価における原材料別原価及びロット別原価を示している。
図12は、オーダーIDがB-003及びB-004の製品原価における原材料別原価及びロット別原価を示している。
【0067】
図11を参照すると、按分投入量算出部155は、オーダーIDがB-001の製品の製造において、ロット番号20200130の原材料Aが、原材料Aの按分投入量(e)のうち、原材料Aの投入量(c)に対するロット別投入量(d)の割合に相当する量だけ投入されたと仮定して、ロット別按分投入量(f)を按分投入量(e)×ロット別投入量(d)/投入量(c)=29.21×40/185=6.32と算出する。同様に、按分投入量算出部155は、オーダーIDがB-001の製品の製造において、ロット番号20200131の原材料Aのロット別按分投入量を12.63と算出し、ロット番号20200201の原材料Aのロット別按分投入量を10.26と算出する。
【0068】
個別原価算出部156は、按分投入量算出部155が算出したロット別按分投入量に各ロットの原材料Aの単価を乗算することにより、オーダーIDがB-001の製品における各ロットの原材料Aの原価を算出する。
図11に示す例の場合、個別原価算出部156は、ロット番号20200130の原材料Aのロット別按分投入量である6.32に、ロット番号20200130の原材料Aの単価1000円を乗算することにより、オーダーIDがB-001の製品1000個を製造する際に使用されたロット番号20200130の原材料Aの個別原価が6,320円であると算出する。同様に、個別原価算出部156は、ロット番号20200131及びロット番号20200201の原材料Aの個別原価が、それぞれ11,367円、8,721円であると算出する。
【0069】
製品原価算出部157は、各ロット番号に対応する原材料Aの個別原価を加算することにより、オーダーIDがB-001の製品1000個あたりの原材料Aに対応する製品原価が26,408円であると算出する。同様に、製品原価算出部157は、オーダーIDがB-001の製品1000個あたりの原材料Bに対応する製品原価が10,145円であると算出する。
図11中には示していないが、仮にオーダーIDがB-001の製品が原材料A及び原材料Bのみにより構成されているとすると、原材料Aに対応する製品原価と原材料Bに対応する製品原価とを合算することにより、当該製品1000個を製造するために要した原材料の原価は36,553円と算出される。
【0070】
図12を参照すると、按分投入量算出部155は、
図11を参照して説明した方法と同様の方法で、オーダーIDがB-003及びB-004の製品の製造に使用された原材料A及び原材料Cのロット別按分投入量を算出する。原材料Aについては、オーダーIDがB-004の製品がロット別按分投入量を算出する対象の最後の製品なので、按分投入量算出部155は、各ロット番号に対応する原材料のロット別投入量(d)から、他のオーダーIDの製品の製造に対して算出されたロット別按分投入量の合計値(6.32+12.63+8.42=27.37)を減算することにより、12.63と算出している。
【0071】
[第1変形例]
以上の説明においては、按分投入量算出部155が各原材料のロット別に按分投入量を算出し、個別原価算出部156がロット別に個別単価を算出したが、個別原価算出部156は、
図10に示した、各オーダーIDにおける原材料別の按分投入量に基づいて、各製品における各原材料の個別単価を算出してもよい。
【0072】
この場合、個別原価算出部156は、複数の原材料それぞれの投入量に単価を乗算した複数の結果を合算することにより、投入された複数の原材料それぞれの合計原価を算出する。個別原価算出部156は、算出した合計原価を複数の原材料それぞれの投入量で除算することにより、複数の原材料それぞれの平均単価を算出する。個別原価算出部156は、算出した平均単価に、
図10に示した按分投入量を乗算することにより、各製品において使用された複数の原材料それぞれの個別原価を算出することができる。
【0073】
例えば、
図9に示すように、ロット番号が20200130、20200131、20200201の原材料Aの投入量は、それぞれ40Kg、80Kg、65Kgであり、単価はそれぞれ1,000円、900円、850円である。したがって、原材料Aの合計原価は、40×1,000円+80×900円+65Kg×850円=167,250円である。合計原価167,250円を原材料Aの投入量185Kgで除算すると、平均単価は904円となる。
【0074】
図10に示したオーダーIDがB-001の製品の原材料Aに対応する按分投入量29.21に904円を乗算すると、オーダーIDがB-001の製品における原材料Aの製品原価が26,406円と算出される。演算誤差により、
図11に示した製品原価と2円の差があるが、按分投入量算出部155及び個別原価算出部156がこのような方法を用いても、製品原価算出部157が同等の製品原価を算出できることが確認できた。
【0075】
[第2変形例]
以上の説明においては、原価計算装置1が、製造開始前に製品データベースに登録されている製品の製造量に基づいて製品の原価を計算する場合を例示したが、製品の実際の製造数が製品の製造開始前に想定していた製造量と異なる場合もある。このような場合、理論使用量算出部153は、実際の製造量に基づいて理論使用量を算出し、製品原価算出部157は、実際の製造量に基づいて算出された理論使用量に基づいて、各製品の原価を算出する。
【0076】
製品原価算出部157は、製品の製造を開始する前に製品データベースに登録されていた予定製造量を用いて算出された理論使用量に基づいて各製品の予定原価を算出するとともに、製品の製造が終了した後に製品データベースに登録された実際製造量を用いて算出された理論使用量に基づいて各製品の実際原価を算出してもよい。この場合、製品原価算出部157は、予定原価と実際原価との差を算出して出力してもよい。原価計算装置1がこのような情報を出力することにより、製造業者の管理者が、製造量が予定した製造量と異なることで、原価がどの程度変化したかを把握することが可能になる。
【0077】
[第3変形例]
以上の説明においては、原価計算装置1が原材料データベース及び製品データベースを記憶しているという場合を例示したが、原材料データベース及び製品データベースは、原価計算装置1と異なる装置に記憶されていてもよい。原価計算装置1は、例えばネットワークNを介して、任意の場所の原材料データベース及び製品データベースにアクセスすることにより製品の原価を計算することができる。
【0078】
[原価計算装置1による効果]
以上説明したように、本実施形態に係る原価計算装置1においては、按分投入量算出部155が、複数の製品において複数の原材料の投入量が按分された按分投入量の割合が、複数の原材料それぞれの理論使用量の割合に等しくなるように、複数の製品の製造に使用される原材料ごとに按分投入量を算出する。そして、個別原価算出部156は、複数の原材料それぞれの単価と按分投入量とに基づいて、複数の製品それぞれで使用される複数の使用原材料それぞれの個別原価を算出し、製品原価算出部157は、製品に示す原材料の原価を算出する。
【0079】
按分投入量算出部155、個別原価算出部156及び製品原価算出部157がこのように動作することにより、それぞれの製品に使用された原材料の量を製造業者が厳密に管理することなく、製品原価算出部157が、各製品の製造に要した各原材料の原価の概算値を算出することができる。その結果、製造業者が、製品に占める原材料の原価を把握しやすくすることができる。
【0080】
また、按分投入量算出部155は、複数のロットの原材料の投入量に基づいて按分投入量を算出するので、原材料の単価がロットごとにばらつく場合であっても、製品原価算出部157は、各製品に占める原材料の原価を適切に算出することができる。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0082】
1 原価計算装置
2 コンピュータ
3 コンピュータ
11 通信部
12 表示部
13 操作部
14 記憶部
15 制御部
151 データ管理部
152 製造量特定部
153 理論使用量算出部
154 投入量特定部
155 按分投入量算出部
156 個別原価算出部
157 製品原価算出部