(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/00 20060101AFI20240228BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20240228BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A41D13/00 107
A41D13/00 105
A41D13/06
A41D13/08
(21)【出願番号】P 2020134792
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505382249
【氏名又は名称】シゲモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】重森 伸
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020144(JP,A)
【文献】実開平07-009924(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258161(US,A1)
【文献】特開2002-212807(JP,A)
【文献】特開2008-202180(JP,A)
【文献】特開2007-169808(JP,A)
【文献】特表2005-533188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00
A41D 13/06
A41D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袖口及び/又は裾口を有する衣服であって、
前記袖口及び/又は前記裾口は、伸縮性の筒状体からなり、自身を折り返してなる環状の先端部と、該先端部から後方に延びて一端となる第1後端部と、該先端部から前記第1後端部の内側にて前記第1後端部よりも後方に延びて他端となる第2後端部とを備え、
前記第1後端部は、前記衣服を構成する袖部本体及び/又は裾部本体の先端部に第1縫着部にて周方向に縫着され、
前記第2後端部は、前記袖部本体及び/又は前記裾部本体に第2縫着部にて周状に縫着され、
前記先端部は、前記袖部本体及び/又は前記裾部本体よりも先端に突出し、
前記先端部から前記第2後端部に至る部位が、前記袖部本体及び/又は前記裾部本体の内側に配置されて着用者の腕及び/又は膝下に密着し、前記袖口及び/又は前記裾口から外部への異物の落下を防止するインナーパーツを兼ねてなる衣服。
【請求項2】
前記袖口及び/又は前記裾口のうち、少なくとも前記第1縫着部から前記第2縫着部に亘る部分が前記第1縫着部に向かって窄まる円錐状をなす請求項1に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば作業服、ジャージ等の部屋着等に好適な衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム内や食品工場等での作業時には所定の作業服を着用するが、袖口や裾口から体毛等の異物が落下するのを防止するため、袖口や裾口の内側にインナーパーツ(内袖)を縫い付けて異物を捕捉している(特許文献1)。
又、寝衣や部屋着等の衣服においても、裾口や袖口の内側に内袖を設けて保温性を高める技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)ところが、袖口に伸縮性筒状のニット等からなるリブを縫合して固定し、インナーパーツを設けると、太い腕の着用者には窮屈で痛く、細い腕の着用者にはユルユルで異物の落下防止機能に欠けるという問題がある。そこで、さらに腕カバーを別途着用する場合もあるが、煩雑でコストアップに繋がる。
(2)また、例えば机に手を着けて作業したときに、固定されたリブの先端が手首、作業の材料などに片当たりして擦れ、
図10に示すように、リブ先端が破断するおそれがある。そして、破断した部位からリブの繊維が脱落し、作業中に異物として落下や拡散の可能性がある。
【0005】
(3)一方、手足の長さには個人差があり、服が大きい場合は袖や裾を引き上げ(たくし上げ)、着用者の希望位置で止めるようにしている。しかしながら、腕や足が細い場合にはたくし上げた袖や裾がずり下がり、不便であった。又、袖や裾を引き上げてから戻したときに、インナーパーツ先端が反転して腕や足に食い込んで不快であると共に、食い込み部から袖口までインナーパーツの覆いが無くなり、体毛落下防止機能が失われる。そして、インナーパーツを正常に戻すためには、腕を袖から抜いてから着用する手間がかかる。
【0006】
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、腕や足の太さが着用者によって異なっていても腕や足に密着して異物の落下を確実に防止すると共に、袖や裾を引き上げたときのずり下がりを抑制し、袖や裾の微妙な長さ調整が出来て、袖口や裾口の傷みを抑制した衣服の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衣服は、袖口及び/又は裾口を有する衣服であって、前記袖口及び/又は前記裾口は、伸縮性の筒状体からなり、自身を折り返してなる環状の先端部と、該先端部から後方に延びて一端となる第1後端部と、該先端部から前記第1後端部の内側にて前記第1後端部よりも後方に延びて他端となる第2後端部とを備え、前記第1後端部は、前記衣服を構成する袖部本体及び/又は裾部本体の先端部に第1縫着部にて周方向に縫着され、前記第2後端部は、前記袖部本体及び/又は前記裾部本体に第2縫着部にて周状に縫着され、前記先端部は、前記袖部本体及び/又は前記裾部本体よりも先端に突出し、前記先端部から前記第2後端部に至る部位が、前記袖部本体及び/又は前記裾部本体の内側に配置されて着用者の腕及び/又は膝下に密着し、前記袖口及び/又は前記裾口から外部への異物の落下を防止するインナーパーツを兼ねてなる。
【0008】
この衣服によれば、袖口の先端部が自身を折り返した形状となっていて、かつ袖口の長手方向の両端が周状に縫着されている。このため、腕の太さが細くても、袖口の折り返し部が適度に径方向に狭まって袖口の内面が腕に密着し、異物の落下を確実に防止することができる。
又、袖口の先端部が折り返した形状となっているため、たくり上げたとき、袖口の内面を腕に確実に密着させながら折り返し部の位置が腕の長手方向に自由に移動できるので、腕との密着度が高くなる。そして、袖口を下げる(戻す)ときに、袖口の折り返し部生地を掴んで引き下げる事で、袖口の表側が裏側に反転しながら、腕との密着距離を維持するので、着用者の希望位置で袖口を止める事ができる。その結果、袖や裾の微妙な長さ調整が出来て袖口を引き上げたときのずり下がりを抑制できる。
裾口についても同様である。
【0009】
本発明の衣服において、前記袖口及び/又は前記裾口のうち、少なくとも前記第1縫着部から前記第2縫着部に亘る部分が前記第1縫着部に向かって窄まる円錐状をなしてもよい。
腕や足(ひざ下)は、先端に向かって細くなるので、袖口(裾口)を円錐状とすることで、腕や足により均等に密着し、毛髪等落下を防ぐとともに肌への密着性が均等になって着用感がより快適になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、腕や足の太さが着用者によって異なっていても腕や足に密着して異物の落下を確実に防止すると共に、袖や裾を引き上げたときのずり下がりを抑制し、袖口や裾口の傷みを抑制した衣服が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る衣服の正面図である。
【
図4】衣服を着用した着用者が裾や袖を上げ下げする態様を示す図である。
【
図5】
図4において、袖口をたくり上げたときの袖口の移動と、そのときの袖口の折り返し部が腕の長手方向に自由に移動する状態の位置関係(図の上側)を示す図である。
【
図6】腕の太さに応じ、袖口の折り返し部が適度に径方向に狭まる状態を示す図である。
【
図7】袖口に折り返し部が無い場合の、たくり上げにくさを示す図である。
【
図8】袖口に折り返し部が無い場合の、たくり上げ後のずり下がりを示す図である。
【
図10】従来の衣服の袖口に固定されたリブの先端が実際に破断した写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る衣服について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る衣服100,110の正面図、
図2は衣服100の袖口20周辺の部分分解斜視図、
図3は衣服110の裾口40周辺の部分分解斜視図、
図4は衣服100,110を着用した着用者が手や足を上げ下げする態様を示す図、
図5は
図4において、袖口20の移動を示す図、
図10は
図4において、裾口40の移動を示す図である。
【0013】
図1、
図4に示すように、衣服100は着用者の上半身及び両手を覆う上着であり、衣服110は着用者の下半身を覆うズボンである。
衣服100は、胴部11と、胴部11を前側で閉じるファスナー12と、胴部11の上端の襟部14と、胴部11の上側両側に縫着され、両手をそれぞれ挿入する一対の袖部本体16と、を有する。
又、袖部本体16の先端には伸縮性の筒状体からなる袖口20がそれぞれ取り付けられている。
【0014】
同様に、衣服110は、腰部31と、腰部31の下側から二股分岐し、両足をそれぞれ挿入する一対の裾部本体32と、を有する。
又、裾部本体32の先端には伸縮性の筒状体からなる裾口40がそれぞれ取り付けられている。
袖口20及び裾口40は、編物または織物で伸縮性を付与することが好ましい。
【0015】
図2に示すように、袖口20は、自身を折り返してなる環状の先端部21と、先端部21から後方に延びて一端となる第1後端部23と、先端部21から第1後端部23の内側にて第1後端部23よりも後方に延びて他端となる第2後端部25とを備えている。
第1後端部23は、衣服を構成する袖部本体16の先端部16aに第1縫着部S1にて周方向に縫着され、第2後端部25は、袖部本体16の部位16bに第2縫着部S2にて周状に縫着されている。
そして、先端部21は、袖部本体16の先端部16aよりも先端に突出し、先端部21から第2後端部25に至る部位(内面)20rが、袖部本体16の内側に配置されて着用者の腕部200に密着し、袖口20から外部への異物の落下を防止するインナーパーツを兼ねている。
なお、本例では、袖部本体16は、先端パーツ16xと、後端パーツ16yとを周方向に縫着して形成されており、両パーツのつなぎ目が部位16bとなっているが、袖部本体16が長手方向に一体であってもよい。
【0016】
同様に、
図3に示すように、裾口40は、自身を折り返してなる環状の先端部41と、先端部41から後方に延びて一端となる第1後端部43と、先端部41から第1後端部43の内側にて第1後端部43よりも後方に延びて他端となる第2後端部45とを備えている。
第1後端部43は、衣服を構成する裾部本体32の先端部32aに第1縫着部S1にて周方向に縫着され、第2後端部45は、裾部本体32の部位32bに第2縫着部S2にて周状に縫着されている。
そして、先端部41は、裾部本体32の先端部32aよりも先端に突出し、先端部41から第2後端部45に至る部位(内面)40rが、裾部本体32の内側に配置されて着用者の膝下300に密着し、裾口40から外部への異物の落下を防止するインナーパーツを兼ねている。
なお、本例では、裾部本体32は、先端パーツ32xと、後端パーツ32yとを周方向に縫着して形成されており、両パーツのつなぎ目が部位32bとなっているが、裾部本体32が長手方向に一体であってもよい。
【0017】
次に、
図4~
図9を参照し、本発明の実施形態に係る衣服100,110の袖口20及び裾口40による効果について説明する。
まず、
図4にて、着用者が衣服(上着)100を着用して腕を挙げたり袖をたくり上げたりすると、袖口20は
図4のA11→A12→A13の順に下から上へ移動する。そして、腕をA11の位置に戻し袖口20をA14にたくり下げるとり、最初のA11の状態よりも袖口20がたくれて短くなる(たくり上げ)。
このとき、
図5に示すように、袖口20がA11→A12→A13の順に上へたくれるとともに、袖口20の内面20r(
図2参照)も上に上がりながら腕と密着する位置が変化する。そして、着用者が希望する位置のA14に戻ると、袖口20がたくれて短くなる。
なお、
図5では、
図4に対応するA11~A14の各位置での袖口20付近の移動を示す部分断面図を表すと共に、各位置における袖口20の折り返し部が腕の長手方向に自由に移動する状態の位置関係を、上記部分断面図の上側にそれぞれ模式的に表す。
【0018】
ここで、本実施形態では袖口20の先端部21が自身を折り返した形状となっていて、かつ袖口20の長手方向の両端23,25が周状に縫着されている。このため、
図6に示すように、腕200の太さが細くても(
図6の破線)、太くても(
図6の実線)、袖口20の折り返し部が適度に径方向に伸縮して(太い人には縮み、細い人には伸びて)袖口20の内面が腕200に密着し、異物の落下を確実に防止することができる。
(1)つまり、腕や足の太さが着用者によって異なっていても腕や足に密着して異物の落下を確実に防止することができる。
【0019】
又、袖口20の先端部21が折り返した形状となっているため、
図5に示すように、
図4のA11→A13へたくり上げたとき、袖口20の内面を腕200に確実に密着させながら折り返し部の位置が腕200の長手方向に自由に移動できるので、腕との密着度が高くなる。具体的には、A11では袖口20の内面の位置P1からP4が腕200に密着しているが、A13にたくり上げられても位置P3~P6での腕200への密着部位が維持されて、位置P1~P3の部位がたくり上げられて上へ移動する。
そして、袖口20がA14に戻したとき、A13でたくり上げられた位置から折り返し部の位置が長手方向の下方に移動して止まる。このとき、袖口20がA13からA14に落ちると、位置P2~P5で腕200へ密着し、密着部位は一定して変わらないので、着用者の希望位置で袖口20を止める事ができる。その結果、袖口20を引き上げたときのずり下がりを抑制できる。
【0020】
これに対し、袖口20の先端部21が折り返し部では無い場合、
図7に示すように、腕200が太い場合には、A13へたくり上げた袖口20が腕200に位置P3,P4で密着し過ぎ、たくり上げ難く、窮屈になる。
一方、
図8に示すように、腕200が細い場合には、そもそも袖口が腕と密着しないので、A13で位置P3、P4までたくり上げた袖口20が、A14でストンと落下してしまい、袖口20を引き上げたときのずり下がりを抑制することが困難となる。
【0021】
(2)又、本実施形態では袖口20の長手方向の両端23,25が周状に縫着され、袖口20が体毛落下を防止するインナーパーツを兼用しているため、袖を引き上げると袖口20の裏側が表側に反転し、袖を引き下げると袖口20の表側が裏側に反転する。これにより、例えば机に手を付けて作業し、机や作業の材料などが袖口20の外側に当たっても、袖の引き上げ、引き下げで袖の表裏が動いて袖先も移動するので、袖先の一点に片当たりして袖口の生地が傷むことを抑制できる。
(3)また、袖を引き上げてから戻したときに、個人の希望する位置で止まり、腕に食い込まないから着用感が向上し、袖口の内面が常に腕に密着しているので体毛落下防止機能が向上する。
【0022】
図9に示すように、着用者が衣服(ズボン)110を着用して足を挙げて作業する場合も、同様の効果が生じる。着用者が足を挙げたり、裾をたくり上げたりすると、裾口40は
図4のL11→L12→L13の順に下から上へ移動する。そして、足をL11の位置に戻し、裾口40をL14にたくり下げると、最初のL11の状態よりも裾口40がたくれて短くなる(たくり上げ)。
このとき、
図9に示すように、裾口40がL11→L12→L13の順に上へたくれるとともに、裾口40の内面40r(
図3参照)も上に上がりながら足と密着する位置が変化する。そして、L14に戻ると、着用者が希望する位置に裾口40がたくれて短くなる。
【0023】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
袖口20及び/又は裾口40のうち、少なくとも第1縫着部S1から第2縫着部S2に亘る部分が第1縫着部S1に向かって窄まる円錐状をなすと好ましい。腕や足(ひざ下)は、先端に向かって細くなるので、袖口20及び/又は裾口40を上述のような円錐状とすることで、腕や足により均等に密着し、毛髪等落下を防ぐとともに肌への密着性が均等になって着用感がより快適になる。
円錐状に形成する方法としては、台形に切り抜いた一対の編物を長手方向に縫合して円錐形にする方法や、ホールガーメント編機で円錐形に編む方法がある。
【符号の説明】
【0024】
16 袖部本体
16a 袖部本体の先端部
20 袖口
32 裾部本体
32a 裾部本体の先端部
40 裾口
21、41 先端部
23、43 第1後端部
25、45 第2後端部
100,110 衣服
200 腕
300 膝下
S1 第1縫着部
S2 第2縫着部