(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】プロテクタ素板,プロテクタ,及びプロテクタの取付構造
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20240228BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
A61C19/00 H
A61C13/00 M
(21)【出願番号】P 2020178196
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-07-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.ウェブサイトへの掲載による公開:発明の動画A~Fを、動画投稿サイトYouTubeに掲載して公開(令和2年5月14日~7月19日)。 2.配布により公開:発明の試作品を6ヶ所に配布(令和2年7月1日~7月31日)。 3.配布により公開:発明を使用したフリーアーム用アタッチメント〔フリーアームシールド〕のカタログを、664ヶ所に配布(令和2年10月16日)。
(73)【特許権者】
【識別番号】000151427
【氏名又は名称】株式会社東京技研
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大倉 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石戸谷 重晴
(72)【発明者】
【氏名】田邉 友樹
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-212347(JP,A)
【文献】特開平11-169388(JP,A)
【文献】特開平08-033659(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220055(JP,U)
【文献】特開2014-221123(JP,A)
【文献】米国特許第04701129(US,A)
【文献】米国特許第04967320(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 13/00
A61G 15/00
A61B 1/00
A61B 46/00
A61B 50/30
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な略矩形の薄板であって、
一の方向に延びる中心線の上に形成され管状部材と係合可能な孔である第1係合部と、
前記中心線の上に形成され鍔状部材の縁部に係合可能なフラップである第2係合部と、
前記中心線を挟んで対向する一対の辺それぞれから前記第1係合部に向かって途中まで切り込まれた一対のスリットと、
を備えたプロテクタ素板。
【請求項2】
前記一の方向において、前記一対のスリットに対する一方側を基部とし他方側をエプロン部としたときに、
前記第1係合部は前記エプロン部に位置し、前記第2係合部は前記基部に位置していることを特徴とする請求項1記載のプロテクタ素板。
【請求項3】
前記基部における前記一対の辺の縁部それぞれを手で折り曲げ可能とするように形成された一対の罫線部を有し、
前記一対の辺の縁部及び前記エプロン部を同じ面側に折り曲げたときに、前記一対の辺の縁部それぞれと、前記エプロン部の前記一対の辺側の部位との係止によって前記一対の辺の縁部及び前記エプロン部を折り曲げた状態で維持する一対の係止部が形成されることを特徴とする請求項2記載のプロテクタ素板。
【請求項4】
透明な薄板で形成され、
平板状又は湾曲状に延在する基部と、
前記基部の一縁部から折り曲げられたエプロン部と、
前記エプロン部において管状部材と係合する孔として形成された第1係合部と、
前記基部において前記管状部材の鍔部に係合するよう切り起こし可能な第2係合部と、
を備えたプロテクタ。
【請求項5】
プロテクタを吸引装置の先端の吸引部に取り付けるプロテクタの取付構造であって、
前記吸引部は、
空気を吸引する開口部を有するダクト先端部と、
前記開口部に挿入される管状の挿入部及び前記開口部を囲み先端に向かうに従って拡径する基部を有して前記ダクト先端部に取り付けられるフードと、
を備え、
前記プロテクタは、
透明な薄板で形成され、
平板状又は湾曲状に延在する基部と、
前記基部の一縁部から折り曲げられたエプロン部と、
前記エプロン部において前記フードと係合可能な第1係合部と、
前記基部において前記フードの縁部と係合可能な第2係合部と、
を備え、
前記第1係合部に前記吸引部における前記挿入部又は前記基部を挿入係合させ、
前記第2係合部を前記フードの縁部に係合させて、
前記プロテクタを前記吸引部に取り付けることを特徴とするプロテクタの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患部の治療又は処置をする従事者と患部との間に配置するプロテクタ素板,プロテクタ,及びプロテクタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、歯科治療などにおいて、患者と治療者との間に配置するプロテクタ(特許文献1において防塵壁)が記載されている。
特許文献1に記載されたプロテクタは、透明プラスチックにより湾曲した薄板状に形成され、アームの末端部に取り付けられた吸引装置(吸引部)の上面部に、固定装置を介して取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、歯科及び口腔外科の治療及び処置において、患部から飛散した物質(飛散物)が患部の口腔と対面する従事者に付着する虞がある。飛散物は、歯科の治療及び処置においては、例えば、削り粉及び研磨粉などの粉体、並びに、血液及び唾液などの体液である。
プロテクタは、口腔からのこのような飛散物が空気流により運ばれて従事者に付着するのを防ぐため、口腔と従事者との間に配置される。特に、プロテクタを吸引装置の吸引部に取り付け、吸引装置によってプロテクタに対する口腔側の空間の空気と共に飛散物を吸引することで、飛散物を従事者に付着しにくくしている。
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたプロテクタは、湾曲薄板状であり吸引口を有する吸引部の上面部に取り付けられるものである。
一般に吸引部は略筒状に形成されている。そのため、特許文献1に記載されたプロテクタの取付構造は、プロテクタを吸引部に取り付ける部分の強度が得にくく大きなプロテクタは取り付けが難しい、吸引部に取り付けたプロテクタの姿勢を安定させることが難しい、という点で改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、吸引部にしっかりと安定して取り付けることができるプロテクタ素板,プロテクタ,及びプロテクタの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成、手順を有する。
1) 透明な略矩形の薄板であって、
一の方向に延びる中心線の上に形成され管状部材と係合可能な孔である第1係合部と、
前記中心線の上に形成され鍔状部材の縁部に係合可能なフラップである第2係合部と、
前記中心線を挟んで対向する一対の辺それぞれから前記第1係合部に向かって途中まで切り込まれた一対のスリットと、
を備えたプロテクタ素板である。
2) 前記一の方向において、前記一対のスリットに対する一方側を基部とし他方側をエプロン部としたときに、
前記第1係合部は前記エプロン部に位置し、前記第2係合部は前記基部に位置していることを特徴とする1)に記載のプロテクタ素板である。
3) 前記基部における前記一対の辺の縁部それぞれを手で折り曲げ可能とするように形成された一対の罫線部を有し、
前記一対の辺の縁部及び前記エプロン部を同じ面側に折り曲げたときに、前記一対の辺の縁部それぞれと、前記エプロン部の前記一対の辺側の部位との係止によって前記一対の辺の縁部及び前記エプロン部を折り曲げた状態で維持する一対の係止部が形成されることを特徴とする2)に記載のプロテクタ素板である。
4) 透明な薄板で形成され、
平板状又は湾曲状に延在する基部と、
前記基部の一縁部から折り曲げられたエプロン部と、
前記エプロン部において管状部材と係合する孔として形成された第1係合部と、
前記基部において管状部材の鍔部に係合するよう切り起こし可能な第2係合部と、
を備えたプロテクタである。
5) プロテクタを吸引装置の先端の吸引部に取り付けるプロテクタの取付構造であって、
前記吸引部は、
空気を吸引する開口部を有するダクト先端部と、
前記開口部に挿入される管状の挿入部及び前記開口部を囲み先端に向かうに従って拡径する基部を有して前記ダクト先端部に取り付けられるフードと、
を備え、
前記プロテクタは、
透明な薄板で形成され、
平板状又は湾曲状に延在する基部と、
前記基部の一縁部から折り曲げられたエプロン部と、
前記エプロン部において前記フードと係合可能な第1係合部と、
前記基部において前記フードの縁部に係合可能な第2係合部と、
を備え、
前記第1係合部に前記吸引部における前記挿入部又は前記基部を挿入係合させ、
前記第2係合部を前記フードの縁部に係合させて、
前記プロテクタを前記吸引部に取り付けることを特徴とするプロテクタの取付構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸引部にしっかりと安定して取り付けることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るプロテクタの実施例であるプロテクタ1を吸引装置8に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るプロテクタ素板の実施例であるプロテクタ素板1Sを示す平面図である。
【
図3】
図3は、プロテクタ素板1Sからプロテクタ1を形成する手順を説明する第1の図である。
【
図4】
図4は、プロテクタ素板1Sからプロテクタ1を形成する手順を説明する第2の図である。
【
図5】
図5は、プロテクタ1を吸引部8Kに取り付ける手順を説明する組立図である。
【
図6】
図6は、プロテクタ1を吸引部8Kに取り付けた状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、プロテクタ素板1Sの取り付け部33Aを示す部分平面図である。
【
図8】
図8は、取り付け部33Aを有するプロテクタ1Aを、フード94に取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、プロテクタ1の第1の使用態様を左側方から見た一部断面図である。
【
図10】
図10は、プロテクタ1の第1の使用態様を患者H2の頭部H14側から見た図である。
【
図11】
図11は、プロテクタ1の第2の使用態様を左側方から見た一部断面図である。
【
図12】
図12は、プロテクタ1の第2の使用態様を患者H2の頭部H14側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係るプロテクタを、実施例のプロテクタ1により説明する。
【0011】
(実施例)
図1は、プロテクタ1を吸引装置8に取り付けた状態を示す斜視図である。
吸引装置8は、歯科の治療及び処置で用いられる口腔外サクションである。吸引装置8は、患者用の椅子H2に着座した患者H1の患部となる口腔H12の近傍の空気と共に、患部から飛散した細かい飛散物を吸引する。飛散物は、例えば、削り粉若しくは研磨粉などの粉体、又は、血液若しくは唾液などの体液である。また、飛散物には、患者H1がウイルス又は細菌に感染して呼気と共に排出されたウイルス又は細菌も含まれる。
【0012】
吸引装置8は、本体部81と、一端側が本体部81に接続され内部に通気ダクトが通されたアーム部82と、アーム部82の他端側に接続され通気ダクトと連通する吸引部8Kとを有する。
吸引部8Kは、通気ダクトの開口部となるダクト開口部83aを有するダクト先端部83と、ダクト開口部83aを囲む鍔を有してダクト先端部83に取り付けられたフード84とを含んで構成されている。
【0013】
アーム部82は、複数のヒンジ82a,82bなどを有して、吸引部8Kの姿勢を6自由度で設定できる。
本体部81は、負圧を発生するバキュームポンプ81aを備えており、アーム部82の通気ダクトは、一端側がバキュームポンプに接続され、他端側がダクト開口部83aにおいて外気に開口している。
これにより、吸引装置8は、本体部81のバキュームポンプ81aの動作によってダクト開口部83aから空気を吸引する。
【0014】
図1に示されるように、プロテクタ1は、プロテクタ取付構造TK(詳細は後述)により、吸引部8Kに取り付けられる。
歯科の治療及び処置において、従事者(不図示)は、吸引部8Kの姿勢をアーム部82によって調整し、プロテクタ1を、患者用の椅子H2に着座して上を向く患者H1の顔部H11の上方において顔部H11を覆うように配置する。
図1では、歯科治療におけるプロテクタ1の向きを、吸引部8Kを患者H1の胸部の上方に位置させてプロテクタ1の先端側が頭部側となる例が示されている。プロテクタ1の向きは、
図1に示された向きに限定されるものではない。
【0015】
プロテクタ1は、
図2に示されるプロテクタ素板1Sを折り曲げるなどして形成される。
図2は、プロテクタ素板1Sの平面図である。以下の
図2~
図8を参照した説明における上下左右の各方向を、
図2の矢印で示される方向で規定する。この上下左右の方向は、説明の便宜上規定するものであり、プロテクタ素板1Sの姿勢や使用態様を限定するものではない。上下方向は、プロテクタ素板1Sの幅方向とも称する。
また、
図2の紙面手前側を表側、紙面奥側を裏側とする。この表側及び裏側は、立体化したプロテクタ1の外側及び内側と対応する。
【0016】
プロテクタ素板1Sは、透明な硬質樹脂の薄板で略矩形に形成されている。材料例は、透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)の厚さ0.3mmの薄板である。
プロテクタ素板1Sは、
図2において左右方向を長手とする概ね長方形に形成されており、4つの角部はR付けされた弧状部Ra~Rdとなっている。プロテクタ素板1Sは、左右に延びる中心線CL1に対し上下対称に形成されている。
【0017】
プロテクタ素板1Sは、左右の中央位置に対し右側に寄った位置に、取り付け部33を有する。
取り付け部33は、第1係合孔15,第2フラップ161,第2係合孔ミシン目17M,及び第1フラップ18を含んで構成されている。
第1係合孔15は円弧状であり、中心Ctは、中心線CL1上にある。
第1係合孔15における、中心線CL1上の左側の内縁部は左方に切り込まれ、その切り込まれた奥部から右方に矩形に張り出したフラップである第2フラップ161がその上下にスリット162を形成するよう設けられている。
第1係合孔15の左方における中心線CL1の上には、左方側を根元として右方側が切り起こし可能なフラップとして第1フラップ18が形成されている。
【0018】
第2係合孔ミシン目17Mは、第1係合孔15の径方向の外側において、ミシン目として形成されている。詳しくは、第2係合孔ミシン目17Mは、上下一対の弧状部17Ma,17Mbと、その右側の小径の弧状部17Mcとが連結した略だるま形状とされている。
【0019】
第2係合孔ミシン目17Mの左端部は、第1係合孔15に戻って向かうよう中心線CL1に対し約60°となる角度で折れ曲がり、第1係合孔15に接続している。
第2係合孔ミシン目17Mの両端が第1係合孔15に接続している部位には、それぞれ第1切り欠き部16a及び第2切り欠き部切込み16bが形成されている。
第2係合孔ミシン目17Mは、手で切断できるように断続的な切断部位として形成されており、第1切り欠き部16a及び第2切り欠き部16bは、手による切断開始を容易にする。
【0020】
プロテクタ素板1Sは、二つの対向する長手辺の一方の第1辺1Saから第2係合孔ミシン目17Mに向けて途中まで切り込まれた第1スリット111と、第1スリット111の先端から第2係合孔ミシン目17Mに接続点P1で接続する第1罫線部112とを有する。
また、プロテクタ素板1Sは、他方の長手辺である第2辺1Sbから第2係合孔ミシン目17Mに向けて途中まで切り込まれた第2スリットと、第2スリット121の先端から第2係合孔ミシン目17Mに接続点P2で接続する第2罫線部122とを有する。
接続点P1,P2は、第1係合孔15の中心Ctを通る中心線CL1に直交する中心線CL2よりも左側にある。
【0021】
第1スリット111及び第2スリット121を境として、
図2の左側の部分を基部31とし、右側の部分をエプロン部32とする。
【0022】
第1スリット111及び第2スリット121は、完全に切断された切り込み部である。第1罫線部112及び第2罫線部122は、表面側から連続的にハーフカットされた部分であり、
図2において一点鎖線で示されている。
第1スリット111及び第1罫線部112は、同一直線上に形成され、中心線CL1に対し、所定の角度θaで第2係合孔ミシン目17Mから遠いほど右方となる向きに傾斜して形成されている。角度θaは、例えば約75°である。
【0023】
基部31において、第1スリット111と第1罫線部112との接続点P3と、弧状部Raと第1辺1Saとの接続点P4との間は、直線状に表面側から連続的にハーフカットされた第1側方罫線部13とされている。
第1側方罫線部13に対し外側(
図2の上方側)の部分を、第1折り曲げ部312とする。
第2スリット121と第2罫線部122との接続点P5と、弧状部Rbと第2辺1Sbとの接続点P6との間は、直線状に表面側からハーフカットされた第2側方罫線部14とされている。罫線部は、手によって折り曲げが可能な部位である。
【0024】
第2側方罫線部14に対し外側(
図2の下方側)の部分を、第2折り曲げ部313とする。第1側方罫線部13及び第2側方罫線部14との間の部分を、中央基部311とする。中央基部311における紙面手前側の面は表面311aであり、反対側の面は裏面311bである。第1フラップ18は、中央基部311に形成され、少なくとも裏面311b側に起こすことが可能である。
【0025】
エプロン部32において、左右方向の概ね中央位置には、第1辺1Saと第2辺1Sbとを繋いで上下方向に延びるエプロン分離ミシン目23が形成されている。エプロン分離ミシン目23の上端の第1辺1Saに接続した部位及び下端の第2辺1Sbに接続した部位には、手による分離を容易にする第3切り欠き部23a及び第4切り欠き部23bが形成されている。
エプロン部32のエプロン分離ミシン目23に対する左側を根元エプロン321とし、右側を先端エプロン322とする。
【0026】
第1折り曲げ部312の右方部位には、第1側方罫線部13と平行に短い線分状の第1切込み部21が形成されている。
第2折り曲げ部313の右方部位には、第2側方罫線部14と平行に短い線分状の第2切込み部22が形成されている。
【0027】
根元エプロン321の上方部位には、エプロン部32を、第1スリット111と第1側方罫線部13とが重なるように折り曲げたときに、第1切込み部21に挿入可能な第1差し込み片19が形成されている。
根元エプロン321の下方部位には、エプロン部32を、第2スリット121と第2側方罫線部14とが重なるように折り曲げたときに、第2切込み部22に挿入可能な第2差し込み片20が形成されている。
【0028】
第1切込み部21と、第1切込み部21に挿入可能な第1差し込み片19との組を、第1係止部34とする。
第2切込み部22と、第2切込み部22に挿入可能な第2差し込み片20との組を、第2係止部35とする。
【0029】
上述のプロテクタ素板1Sは、第1側方罫線部13,第2側方罫線部14,第1罫線部112,及び第2罫線部122で裏側に折り曲げ、第1差し込み片19及び第2差し込み片20を、それぞれ第1切込み部21及び第2切込み部22に差し込むことで立体化したプロテクタ1となる。
【0030】
次に、プロテクタ素板1Sを立体化してプロテクタ1を形成し、吸引部8Kに取り付ける具体的手順を、
図3~
図6を参照して説明する。
【0031】
まず、
図3に示されるように、プロテクタ素板1Sの第1折り曲げ部312及び第2折り曲げ部313を、それぞれ第1側方罫線部13及び第2側方罫線部14を折り曲げ部位として中央基部311の裏面311b側へ折り曲げる(矢印DR1参照)。詳しくは、折り曲げる力をなくした状態で、第1折り曲げ部312及び第2折り曲げ部313が、中央基部311に対し概ね90°程度の角度で自立するようにする。
【0032】
次に、
図4に示されるように、プロテクタ素板1Sの第1罫線部112及び第2罫線部122を折り曲げ部位として、エプロン部32を中央基部311の裏面311b側へ概ね90°程度折り曲げる(矢印DR2参照)。すなわち、エプロン部32は、中央基部311の一縁部から折り曲げられる。
【0033】
さらに、エプロン部32の両端部を内側に丸め込むようにして(矢印DR3参照)、
図5に示されるように、第2差し込み片を第2切込み部22に差し込み、第2係止部35を形成する。同様に、
図5の反対側において不図示であるが、第1差し込み片19を第1切込み部21に差し込み、第1係止部34を形成する。
【0034】
これにより、プロテクタ素板1Sは、中央基部311の幅方向(
図2の上下方向)の一方縁において、第1折り曲げ部312とエプロン部32の一方の端部とが、第1係止部34で係合して裏面311b側に概ね90°折れ曲がって維持される。また、中央基部311の幅方向の他方縁に置いて、第2折り曲げ部313とエプロン部32の他方の端部とが第2係止部35で係合して、裏面311b側に概ね90°折れ曲がって維持される。
【0035】
この状態において、
図2に示されるように、第1罫線部112及び第2罫線部122が、中心線CL1に対して90°ではない角度θaで傾斜して形成されていることから、中央基部311に対しては、幅方向の中央部を外側に突出させようとする力が付与される。そのため、その力及びプロテクタ素板1Sの材料の曲げ剛性に応じ、中央基部311は、平板状に延在するよう維持される、又は
図5に矢印DR4で示されるように、外側に凸となるようにゆるやかに湾曲した湾曲状に延在するよう維持される。
中央基部311は、湾曲して維持されていると曲げ剛性が高くなるので好ましい。
【0036】
また、第1罫線部112及び第2罫線部122は、中心線CL1に対して90°ではない角度θaで傾斜して形成されている。そのため、第1係止部34及び第2係止部35に対し、第1差し込み片19及び第2差し込み片20にそれぞれ第1切込み部21及び第2切込み部22に食い込むような差し込み方向であって外方に開かせようとする力が付与される。
これにより、第1係止部34及び第2係止部35における係止は、より外れにくくなっており、プロテクタ1は、立体形状が安定して維持される。
【0037】
図2に示されるように、接続点P1,P2は、第1係合孔15の中心Ctを通り中心線CL1に直交する中心線CL2よりも左側にある。
そのため、プロテクタ素板1Sを立体化したプロテクタ1において、取り付け部33は、第2フラップ161が中央基部311側に位置し、第1係合孔15の大部分がエプロン部32側に位置する。
【0038】
図5に示されるように、プロテクタ1が取り付けられる吸引部8Kにおいて、ダクト先端部83は管状に形成され、フード84は、ダクト先端部83のダクト開口部83aに一部が挿入され、ダクト先端部83に対し例えばバヨネット構造によって装着される。
【0039】
フード84は、基部84a,鍔部84b,フランジ部84c,及び挿入部84dを有する管状部材である。
基部84aは、一端側(
図5の左方側)に向かうに従って徐々に内径及び外径が大きくなる円錐の周面状に形成されている。
鍔部84bは、基部84aの一端部に形成された外形が急峻に拡大する部位である。
基部84aの最小内径は、ダクト先端部83のダクト開口部83aの内径と概ね同じである。
【0040】
フランジ部84cは、基部84aの他端側(
図5の右方側)に周リブとして径方向の外側に突出して形成された部位である。
挿入部84dは、フランジ部84cに対し基部84aの反対側に基部84aと同芯で形成されている。挿入部84dの外径は、ダクト先端部83のダクト開口部83aの内径よりもわずかに小さい。
【0041】
プロテクタ1における第1係合孔15の内径は、フード84の挿入部84dの外径よりもわずかに大きく、ダクト先端部83の外径よりも小さい。
また、プロテクタ1における、第1係合孔15から第1フラップ18の根本までの概ねの距離L18は、フード84における挿入部84dの根本から鍔部84bの端部までの軸線方向の距離L84aと、ほぼ同じ又はわずかに長く形成されている。
【0042】
この構造で、フード84の挿入部84dを、プロテクタ1の第1係合孔15に対し内側から外側に向け挿入係合させ、プロテクタ1の第1フラップ18を撓ませてフード84の鍔部84bの内側に引っ掛ける。そして、フード84の挿入部84dを、ダクト先端部83のダクト開口部83aに挿入し取付ける。
【0043】
これにより、
図6に示されるプロテクタ取付構造TKで、プロテクタ1を、フード84及びダクト先端部83を有する吸引部8Kに取り付けることができる。
詳しくは、プロテクタ1は、エプロン部32の第1係合孔15の縁部がフード84のフランジ部84cとダクト先端部83の端面との間に挟まれている。そのため、プロテクタ1は、ダクト先端部83に対し、ダクト開口部83aの軸線CL83の両方向への移動が規制される。
【0044】
また、プロテクタ1は、第1フラップ18が内側に弾性的に撓んで、フード84の鍔部84bの内側に入り込んで係合している。そのため、第1フラップ18は、元に戻ろうとする力F1で鍔部84bを外方に向け付勢する。
これにより、プロテクタ1は、
図6の左方への移動が規制されると共に、力F1により生じる第1フラップ18と鍔部84bの内面との間の摩擦力によって、軸線CL83まわりの回動が規制される。
【0045】
プロテクタ1は、フード84とは異なる別のフード94に、次のようにして取り付けることができる。
図7は、プロテクタ素板1Sの第2係合孔ミシン目17Mを手などによって切断し、その内側の部分を切り取った状態の取り付け部33Aを示す図である。理解容易のため、第1係合孔15の位置を一点鎖線LN15で示している。
【0046】
第2係合孔ミシン目17Mに沿って切り取ることで、その形状で開口した第2係合孔17が第2係合部KB2として形成される。
第2係合孔17は、第2係合孔ミシン目17Mにおける、大径の弧状部17Ma,18Mbに対応した弧状部17a,17bと小径の弧状部17Mbに対応した弧状部17cとが連結した略だるま形状を呈する。
弧状部17a,17bの左端部は、第1係合孔15の一部である弧状部15a,15bに接続している。
【0047】
図8は、プロテクタ素板1Sの取り付け部33を、第2係合孔ミシン目17Mを切断して取り付け部33Aとし、プロテクタ1を形成するのと同様の手順で立体化して形成したプロテクタ1Aを、フード94に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0048】
図8に示されるように、フード94は、基部94a,突出部94b,及び挿入部94dを有する。
挿入部94dは、ダクト先端部83のダクト開口部83a(
図5参照)に挿入され、ダクト先端部83に対し例えばバヨネット構造で取り付けられる部位である。
基部94aは、挿入部94dにおける
図8の左方端から、さらに左方に向かうに従って内径及び外径が大きくなるよう延出する椀状の部位である。
突出部94bは、基部94aの周面における周方向に90°間隔で離隔した位置に、径方向外方に半円柱状に突出した部位である。
【0049】
フード94は、取り付け部33Aの内側から挿入部94dを先頭に挿入して係合させる。その際、
図8に示されるように、取り付け部33Aの弧状部17a及び弧状部17bを、
図8の紙面上方の二つの突出部94bにそれぞれ対応するようわずかな強嵌合で係合させ、弧状部17cを
図8の紙面下方の二つの突出部94bに対応するようわずかな強嵌合で係合させる。また、第2フラップ161を撓ませて、基部94aの上縁部の内側に入れ込むように係合させる。
【0050】
図8に示される状態で、フード94は、弧状部17a~17cと第2フラップ161とに挟まれて、挿入部94dの軸線CL94方向の移動が規制される。
また、第2フラップ161と、突出部94bと弧状部17a,17bとの係合で軸線CL94まわりに回動が規制される。
これにより、プロテクタ1Aは、フード94に対し良好に取り付けられる。
この状態で、フード94の挿入部94dをダクト先端部83のダクト開口部83aに挿入係合して装着することで、プロテクタ1Aは、吸引部8Kに良好に取り付けられる。
【0051】
プロテクタ1,1Aは、エプロン部32の長さである
図2の左右方向の長さを、エプロン分離ミシン目23を切断することで、短くできる。
図9~
図12を参照して、プロテクタ1,1Aの使用例を、エプロン部32の長さの違いと併せて説明する。
図9~
図12を参照した説明における前後左右上下方向は、各図に矢印で示された方向とする。
【0052】
図9及び
図10は、プロテクタ1の第1の使用態様としてエプロン部32が長い場合を示した図である。
図11及び
図12は、プロテクタ1の第2の使用態様としてエプロン部32が短い場合を示した図である。
【0053】
詳しくは、
図9は、吸引装置8のダクト先端部83及びフード84を有する吸引部8Kにプロテクタ1を取り付けて、歯の治療を行う例を示した一部断面の側面図である。
図10は、
図9の前方側からの矢視Ya図である。
図11は、
図9に対しエプロン部32が短い場合を示す図であり、
図12は、
図11の矢視Yb図である。
【0054】
図9において、患者H1は、患者用の椅子H2に着座し、リクライニングにより顔部H11が上方を向く姿勢とされ、患部である口腔H12を開いた状態が示されている。
治療従事者(不図示)により、アーム部82の姿勢が調整されて、吸引部8Kは患者H1の胸部H13の上方に位置され、ダクト開口部83aは患者H1の頭部H14側に向かって開口している。プロテクタ1は、患者H1の顔部H11に対しその上方に離隔し、中央基部311がほぼ水平となる姿勢で維持されている。ここで治療従事者は、歯科医師、歯科助手、歯科技工士、歯科衛生士などである。
【0055】
吸引装置8を動作させると、フード84の近傍の空気は、吸引部8Kのダクト開口部83aに吸い込まれる。
患者H1の顔部H11及び胸部H13の上方はプロテクタ1の中央基部311に覆われて遮蔽され、フード84に近い側の左側方及び右側方(
図9の紙面直交方向)は、それぞれ第2折り曲げ部313及び第1折り曲げ部312に遮蔽され、後方のフード84と椅子H2との間は、エプロン部32により概ね遮蔽されている。そのため、ダクト開口部83aには、主に、顔部H11及び胸部H13とプロテクタ1とによって囲まれた内側の空間Vaの空気が、気流FLaとなって吸引装置8に吸引される。
【0056】
これにより、この場合の患部である口腔H12から飛散した粉体及び体液などの飛散物は、気流FLaに含まれ吸引装置8によって良好に吸引され、プロテクタ1の外側に移動して従事者に付着或いは吸い込まれる可能性は少ない。
歯科において、粉体は、削り粉及び研磨粉などであり、体液は、血液及び唾液などである。また、患者H1がウイルス又は細菌に感染しているときは、飛散物に呼気と共に排出されたウイルス及び細菌も含まれる。
【0057】
プロテクタ1のエプロン部32は、エプロン分離ミシン目23を切断することで、先端エプロン322のない根元エプロン321のみにできる。
図11及び
図12に示されるように、エプロン部32が根元エプロン321のみを有する場合、先端エプロン322を有する場合と比べてエプロン部32と椅子H2との間の隙間の上下方向の距離Laが大きい。
そのため、治療具或いは従事者の手などを、プロテクタ1の先端側からだけでなく、エプロン部32の側から患部である口腔H12及び口腔H12の近傍に向けて入れることができ、治療の作業性が向上する。
【0058】
エプロン部32は、根元エプロン321が残っているので、胸部H13とプロテクタ1とによって囲まれた内側の空間Vbの空気が、気流FLbとなって吸引装置8に吸引される。
そのため、この場合も、口腔H12から飛散した粉体及び体液などの飛散物は、気流FLbに含まれ吸引装置8によって良好に吸引され、プロテクタ1の外側に移動して従事者に付着或いは吸い込まれる可能性は少ない。
【0059】
図9~
図12に示された例は、患部の口腔H12に対し、プロテクタ1を、エプロン部32が患者H1の胸部H13側に位置する向きにして顔部H11を覆う態様である。これに対し、プロテクタ1を、前後反対の、エプロン部32が患者H1の頭部H14の先端側に位置する向きにして顔部H11を覆う態様であってもよい。
【0060】
また、
図9~
図12には、プロテクタ1が覆う患部が口腔H12である例を説明したが、患部は、口腔H12に限定されるものではない。
すなわち、患部は、患者H1の口腔H12以外の部位の、例えば、脚部,腹部,胸部,腕部であってもよい。
【0061】
プロテクタ1,1Aは、治療又は処置の従事者が、プロテクタ素板1Sから手で容易に立体化して形成できる。
プロテクタ1,1Aは、第1スリット111及び第2スリット121に対する一方側の基部31に対して他方側のエプロン部32を折り曲げるなどして形成され、第1係止部34及び第2係止部35における係止でエプロン部32の折り曲げた状態が安定して維持される。
【0062】
上述のように、プロテクタ1は、吸引装置8の吸引部8Kに対し、吸引部8Kに係合可能な第1係合部KB1としての第1係合孔15が概ねエプロン部32に含まれるように位置し、吸引部8Kの鍔状部材であるフード84の先端縁部に係合可能な第2係合部KB2としての第1フラップ18が基部31に含まれて位置している。
すなわち、プロテクタ1は、概ね90°に屈曲して維持されたエプロン部32及び基部31に、それぞれ吸引部8Kと係合する第1係合部KB1及び第2係合部KB2が配置されている。
このように、プロテクタ1は、吸引部8Kに対し2箇所の係合部で係合し、しっかりと安定して取り付けることができる。
【0063】
また、プロテクタ1Aは、吸引装置8の吸引部8Kに対し、吸引部8Kに係合する第1係合部KB1としての第2係合孔17が概ねエプロン部32に含まれるように位置し、吸引部8Kのフード94の先端に係合する第2係合部KB2としての第2フラップ161が基部31に含まれて位置している。
すなわち、プロテクタ1Aは、概ね90°に屈曲して維持されたエプロン部32及び基部31に、それぞれ吸引部8Kと係合する第1係合部KB1及び第2係合部KB2が配置されている。
これにより、プロテクタ1Aは吸引部8Kに対し、2箇所の係合部で係合し、しっかりと安定して取り付けることができる。
【0064】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0065】
プロテクタ1,1Aは、
図9~
図12に示されるように患部が口腔H12などの顔部H11にある場合に、顔部H11を覆うフェイスシールドとして機能する。
【0066】
第1スリット111及び第2スリット121は、プロテクタ素板1Sにおいて、中心線CL1に対する角度θaは、限定されるものではない。角度θaは、90°であってもよい。また、角度θaは、90°ではなく中心線CL1に斜交するものであるとよりよい。
【0067】
プロテクタ1,1Aの材質は、PETに限定されない。また、透明の程度は、プロテクタ1,1Aを通して患部が良好に視認でき、治療及び処置ができる程度であればよい。
【0068】
プロテクタ素板1Sは、上述の二種類に限らず三種類以上の吸引部8Kに取り付けることができるように立体化できるものであってもよい。また、プロテクタ素板1Sは、特定の一つの吸引部8Kのみに取り付けることができるものであってもよい。
【0069】
プロテクタ1,1Aは吸引部8Kに対し、3箇所以上の係合部で係合するようにしてもよい。具体的には、プロテクタ1は、第1フラップ18を複数備えたものであってもよく、プロテクタ1Aは、第2フラップ161を複数備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1A プロテクタ
1S プロテクタ素板
1Sa 第1辺
1Sb 第2辺
111 第1スリット
112 第1罫線部
121 第2スリット
122 第2罫線部
13 第1側方罫線部
14 第2側方罫線部
15 第1係合孔
15a,15b 弧状部
161 第2フラップ
162 スリット
16a 第1切り欠き部
16b 第2切り欠き部
17M 第2係合孔ミシン目
17Ma,17Mb,17Mc 弧状部
17a,17b,17c 弧状部
18 第1フラップ
19 第1差し込み片
20 第2差し込み片
21 第1切込み部
22 第2切込み部
23 エプロン分離ミシン目
23a 第3切り欠き部
23b 第4切り欠き部
31 基部
311 中央基部
311a 表面
311b 裏面
312 第1折り曲げ部
313 第2折り曲げ部
32 エプロン部
321 根元エプロン
322 先端エプロン
33,33A 取り付け部
34 第1係止部
35 第2係止部
8 吸引装置
8K 吸引部
81 本体部
81a バキュームポンプ
82 アーム部
83 ダクト先端部
83a ダクト開口部
84 フード
84a 基部
84b 鍔部
84c フランジ部
84d 挿入部
94 フード
94a 基部
94b 突出部
94d 挿入部
CL1,CL2 中心線
CL94 軸線
Ct 中心
FLa,FLb 気流
F1 力
H1 患者
H11 顔部
H12 口腔
H13 胸部
H14 頭部
H2 椅子
KB1 第1係合部
KB2 第2係合部
La 距離
L18,L84a 距離
P1~P6 接続点
Ra~Rd 弧状部
TK プロテクタ取付構造
Va,Vb 空間
θa 角度