(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/318 20150101AFI20240228BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20240228BHJP
H04W 16/20 20090101ALI20240228BHJP
【FI】
H04B17/318
H04W88/08
H04W16/20
(21)【出願番号】P 2021000447
(22)【出願日】2021-01-05
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-100184(JP,A)
【文献】特開2017-147715(JP,A)
【文献】特開2018-064181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置から受信する電波の強度を測定する測定部と、
複数の前記端末装置においてそれぞれ測定された電波強度の値の平均に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する選択部と、
を備えた無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置は、自機に帰属する前記端末装置に応答要求信号を送信し、前記応答要求信号に対する応答信号を受信するとともに、前記端末装置から受信する電波の強度を測定する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記無線通信装置は複数のランプを備え、
選択した、自機を設置する方向を、前記複数のランプの点灯制御によって報知する、
請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記無線通信装置は、操作ボタンを備え、
前記操作ボタンを所定時間以上押下することによって、前記端末装置から受信する電波の強度の測定を開始する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線通信装置は、測定した前記端末装置から受信する電波の強度を記憶する手段を備えた、
請求項1~4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記無線通信装置は、地磁気センサを備え、
前記地磁気センサを用いて、自機を設置した方向を測定する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
無線通信装置と、前記無線通信装置に帰属する端末装置とを備え、
前記無線通信装置は、
自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の前記端末装置から受信する電波の強度を測定する測定部と、
複数の前記端末装置においてそれぞれ測定された電波強度の値の平均に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する選択部と、
を備えた、無線通信システム。
【請求項8】
前記端末装置は、前記無線通信装置から応答要求信号を受信すると、前記応答要求信号に対する応答信号を前記無線通信装置に送信するための処理を行うアプリケーションを備えた、
請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置から受信する電波の強度を測定するステップと、
複数の前記端末装置においてそれぞれ測定された電波強度の値の平均に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択するステップと、
を備えた無線通信方法。
【請求項10】
自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置から受信する電波の強度を測定する処理と、
複数の前記端末装置においてそれぞれ測定された電波強度の値の平均に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する処理と、
を無線通信装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線ルータと子機である端末装置からなる無線LANシステムにおいては、無線ルータと端末装置の間の通信が安定に行われるようにするため、無線ルータ及び端末装置の互いの受信レベルができるだけ大きくなるように無線ルータの設置方向を調整しておくことが重要である。
【0003】
実際には、無線ルータや、無線ルータに帰属して通信をする端末装置の設置場所は様々であり、また設置する住宅の間取りや建材によって電波の反射の仕方も一様ではない。また、無線ルータの金属部品の影響などで電波放射が妨げられ、特定方向の電波強度が低くなる等、無指向性アンテナを搭載し利用しても、全方位に満遍なく電波を放射することは困難である。こうして発生する無線ルータの電波の指向性の影響によって、端末装置を使用する位置によって通信が途絶えることがある。このような場合、端末装置を使用する位置を変更することや、ユーザが無線ルータの向きを変えて通信状態が良い設置方向を探る必要があったが、端末装置が複数の部屋において使用される場合には、最適な場所を決定するのが困難である。
【0004】
特許文献1には、アンテナを所定の角度ごとに回転させ、受信した電波のレベルを検知することによって電波の到来方向を判断する無線LAN装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において開示された無線LAN装置に関する技術は、上述のとおり所定の角度ごとにアンテナを回転させることによって電波のレベルを測定し、電波の到来方向を判断する。そのため、無線ルータに帰属する端末装置の使用頻度の高い場所にとって、必ずしも適した無線ルータの設置方向を判断することができるとは限らないという問題がある。
【0007】
本開示は、このような問題点を解決する無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる無線通信装置は、自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置から受信する電波の強度を測定する測定部と、前記測定した電波強度に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する選択部とを備えたものである。
【0009】
本開示にかかる無線通信システムは、無線通信装置と、前記無線通信装置に帰属する端末装置とを備え、前記無線通信装置は、自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の前記端末装置から受信する電波の強度を測定する測定部と、前記測定した電波強度に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する選択部とを備えたものである。
【0010】
本開示にかかる無線通信方法は、自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置から受信する電波の強度を測定するステップと、前記測定した電波強度に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択するステップを備えたものである。
【0011】
本開示にかかるプログラムは、自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置から受信する電波の強度を測定する処理と、前記測定した電波強度に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する処理とを、無線通信装置に実行させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、無線ルータに帰属する端末装置の使用頻度の高い場所に応じて適した無線ルータの設置方向を判断することができる無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示における実施形態1にかかる無線通信システムの概略構成図である。
【
図2】本開示における実施形態2にかかる無線通信システムの概略構成図である。
【
図3】本開示における実施形態2にかかる無線通信システムの機器配置の例を示す図である。
【
図4】本開示における実施形態2にかかる無線ルータの設置方向を示す図である。
【
図5】本開示における実施形態2にかかる無線ルータが測定した電波強度の結果の例を示す図である。
【
図6】関連する無線ルータが備えるアンテナの指向性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む。)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0016】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む。)についても同様である。
【0017】
<実施形態にかかる無線ルータに想到するまでの検討経緯>
まず、関連する技術にかかる無線ルータについて、
図6を用いて説明する。
図6は、関連する無線ルータが備えるアンテナの指向性の例を示す図である。
【0018】
無線ルータや、無線ルータに帰属して通信をする無線子機の設置場所は様々である。また、無線ルータを設置する建物の間取りや建材によって無線ルータや無線子機が放射する電波の反射方向も一様ではない。無線ルータの設置場所や設置の向きによる電波環境の変動を抑制し、安定した無線通信を実現することが必要である。そのために、無線ルータは放射する電波は指向性を持たないことが理想である。そのため、無線ルータは、全方位に満遍なく電波を放射するような無指向のアンテナを備える。
【0019】
図6に無線ルータが備えるアンテナの指向性の例を示す。実際に、電波は3次元に放射されるが、ここでは説明の簡略化のために2次元における指向性を表す記載とする。太線が放射する電波の強度を示し、円の中心から離れて太線が描かれた方向においては電波強度が大きいことを示す。
図6(a)は、電波の放射が無指向である理想的な状態を示しており、360度すべての方向に対して電波強度が同一な円状である。しかし、現実には無線ルータが備える金属部品の影響などにより電波の放射が方向によっては妨げられる。その結果、
図6(b)に示すように、特定方向の電波強度が低くなることとなり、無線ルータとして理想的な指向性を得ることは困難である。
【0020】
こうして発生する無線ルータが放射する電波の指向性の影響により、無線子機の位置によって通信が途絶えることがある。この場合、無線子機の位置を変更する必要が生じる。また、無線ルータを設置する向きを変えて、通信状態が良い設置方向を探る必要があるが、無線子機が建物内の複数の部屋において使用される場合には、最適な場所を決定するのが困難である。
【0021】
そこで、そのような問題を解決することが可能な、以下の実施の形態にかかる無線通信システム1が見いだされた。
【0022】
<実施形態1>
実施形態1について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態にかかる無線通信システム1の概略構成図である。
【0023】
本実施形態にかかる無線通信システム1は、無線通信装置2と、無線通信装置2に帰属する端末装置100とを備える。
【0024】
端末装置100は、例えばスマートフォン、タブレット端末及びノート型パソコンなどの端末装置が用いられてもよい。端末装置100は、無線通信装置2と相互に通信可能である。端末装置100は無線通信装置2に帰属している無線子機である。
【0025】
無線通信装置2は、測定部3及び選択部4を備える。測定部3は、無線通信装置2を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置100から受信するとともに、受信した電波の強度を測定する。選択部4は、測定部3が測定した端末装置100の電波強度に基づいて、複数の候補方向から、無線通信装置2を設置する方向を選択する。
【0026】
なお、無線通信装置2は、それぞれの候補方向にアンテナを向ける駆動部を設けてもよい。また、無線通信装置2は、選択部4が選択した設置する方向をランプなどにより報知してもよい。
【0027】
本実施形態によれば、無線通信装置2に帰属する端末装置100の使用頻度の高い場所に応じて、適した無線通信装置2の設置方向を判断することができる。
【0028】
<実施形態2>
実施形態2について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態にかかる無線通信システム1の概略構成図である。
【0029】
本実施形態における無線通信システム1は、無線ルータ10と、3台の端末装置101、102、103を備える。無線ルータ10は3台の端末装置101、102、103と相互に通信可能である。なお、本実施形態においては無線ルータ10と相互に通信可能である端末装置は3台としているが、これに限定されず、1台でもよいし、複数台でもよい。
【0030】
また、本実施形態における無線ルータ10は、実施形態1の無線通信装置2と対応する。さらに、本実施形態における端末装置101、102、103は、実施形態1の端末装置100と対応する。
【0031】
端末装置101、102、103は、例えばスマートフォン、タブレット端末及びノート型パソコンなどの端末装置が用いられてもよい。端末装置101、102、103は、無線ルータ10と相互に通信可能である。端末装置101、102、103は無線ルータ10に帰属している無線子機である。端末装置101、102、103は、専用のアプリケーションソフトウェアを動作させてあり、無線ルータ10からの応答要求信号を受信すると、応答信号を無線ルータ10に送信する。なお、応答要求信号は、例えばデータ送信要求フレームを用いる。
【0032】
無線ルータ10は、制御部20、ベースバンド制御部30、フロントエンドモジュール40及びアンテナを備える。また、無線ルータ10は、イーサネット通信を可能とするために、イーサネットPHY(Physical layer)61及びイーサネットコネクタ62を備える。
【0033】
なお、本実施形態における無線ルータ10は、説明の簡略化のため無線系統は1系統であり、イーサネットPHY61及びイーサネットコネクタ62をそれぞれ1つ備えているが、これに限らず複数の無線周波数帯に対応してもよいし、複数のイーサネットPHY61及びイーサネットコネクタ62を備えてもよい。
【0034】
制御部20は、ベースバンド制御部30と接続する。また、制御部20はイーサネットPHY61を介してイーサネット端末63と接続する。制御部20はベースバンド制御部30が検知した端末装置101、102、103のMACアドレス及びRSSIをPCIe21とPCIe22によって読み出す。
【0035】
また、制御部20は無線ルータ10が備える各部の設定や、無線通信系統とイーサネット系統間のデータ転送など、無線ルータ10の制御を行う。制御部20は、記憶手段に格納された各種プログラムに基づいて、各種制御を実行する機能を有し、中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート(I/O)等により実現される。
【0036】
ベースバンド制御部30は、送信部31及び受信部32を備える。ベースバンド制御部30は、制御部20及びフロントエンドモジュール40と接続する。送信部31はPCIe(Peripheral Component Interconnect Express)21を介して制御部20と接続する。受信部32は、PCIe22を介して制御部20と接続する。
【0037】
なお、本実施形態において、ベースバンド制御部30はPCIe21、22を用いて制御部20と接続するが、PCIeに限らず、様々なシリアルインタフェースや伝送ケーブルを用いることができる。
【0038】
送信部31は、送信データの暗号化や信号変調を行う。送信部31は、制御部20からPCIe21を経由して送信データを受信する。また、受信部32は、受信した無線信号の復調や、暗号の復号を行う。受信部32は、受信データを、PCIe22を経由して制御部20に送信する。
【0039】
フロントエンドモジュール40は、パワーアンプ41、フィルタ42及びアンテナスイッチ43を備える。フロントエンドモジュール40は、ベースバンド制御部30及びアンテナ50と接続する。フロントエンドモジュール40は、アンテナ50から信号を受信しベースバンド制御部30に送信する。また、フロントエンドモジュール40は、ベースバンド制御部30から信号を受信しアンテナ50に送信する。
【0040】
パワーアンプ41は、アンテナ50から送信する信号を増幅する。フィルタ42は、アンテナが受信した信号から必要な信号を取り出す。アンテナスイッチ43は、送信時と受信時にアンテナの接続を切り替える。アンテナ50は無線ルータ10がサポートする無線周波数帯域用のアンテナである。
【0041】
上述のとおり、制御部20に、通信制御や信号変換を行うイーサネットPHY61が接続されており、外部機器との接続用にイーサネットコネクタ62を備えている。イーサネット端末63はイーサネットケーブル64を使って無線ルータ10に接続し通信を行うことができる。
【0042】
無線ルータ10は、無線ルータ10動作状況をユーザに示すためのランプ71、72、73、74、75を備え、制御部20によって点灯制御される。ランプ71、72、73は、以下に詳述する電波測定において、最も良い無線ルータ10の設置方向がどの方向かを示す。ランプ74は無線ルータ10の設置方向における電波の測定モードの動作状態を示し、ランプ75は当該設置方向における電波の測定が完了したことを示す。
【0043】
本実施形態の無線ルータ10において、操作をしていない状態ではランプ71、72、73、74、75は消灯しているものとするがこれに限らない。ボタン81、82はユーザによって操作されるもので、制御部20はボタンが押下されたことを検知することが可能とする。ボタン81、82の操作に関する詳細は、以下に述べる。
【0044】
(実施形態2における無線通信システム1の動作)
以下、本実施形態における無線通信システム1の動作を、
図3、
図4及び
図5を用いて説明する。
図3は、本実施形態にかかる無線通信システム1の機器配置の例を示す図である。
図4は、本実施形態にかかる無線ルータ10の設置方向を示す図である。
図5は、本実施形態にかかる無線ルータ10が測定した電波強度の結果の例を示す図である。
【0045】
図3に示すとおり、無線ルータ10が廊下に設置されている。また、無線ルータ10と相互に通信可能である端末装置101、102、103が、それぞれ部屋111、112、113において使用されるものとする。
【0046】
また、
図4は無線ルータ10が設置されている方向を、無線ルータ10の上方から見た時の設置方向を示した図である。
図4(a)に示す、無線ルータ10の設置方向を0度の方向として、以下説明を行う。無線ルータ10は
図4(a)の向きである0度の方向に設置してあるものとする。
【0047】
本実施形態において、無線ルータ10は、ボタン81を所定の時間以上、押下し続けた場合に、無線ルータ10の設置方向を決定するための、端末装置101、102、103の電波強度を測定する動作モード(以下、設置方向測定モードという。)に遷移する。なお、所定の時間は任意に設定できるが、本実施形態においては3秒とする。すなわち、ボタン81を3秒以上押下した場合に、無線ルータ10は設置方向測定モードに遷移するものとする。
【0048】
制御部20は、ボタン81が3秒押下されたことを検知すると、設置方向測定モードに遷移するよう制御する。制御部20は、設置方向測定モードに遷移したことを報知するために、ランプ74を点灯する。
【0049】
次に、無線ルータ10のユーザがボタン82を押下すると、無線ルータ10は端末装置101、102、103のRSSI(Received Signal Strength Indicator)値の取得を開始する。
【0050】
ボタン82が押下されたことを制御部20が検知する。このとき制御部20は、ボタン82が押下されてから端末装置101、102、103のRSSI値を取得するまでの間、RSSI値の取得中であることをユーザに通知するためにランプ74を点滅させる。
【0051】
制御部20は、あらかじめ定めた応答要求信号を生成する。生成された応答要求信号は、PCIe21、ベースバンド制御部30、フロントエンドモジュール40、アンテナ50を経由して、無線ルータ10に帰属している端末装置101、102、103に送信する。
【0052】
端末装置101、102、103は、専用のアプリケーションソフトウェアを動作させてあり、無線ルータ10からの応答要求信号を受信すると、応答信号を無線ルータ10に送信する。端末装置101、102、103から送られた応答信号は、アンテナ50及びフロントエンドモジュール40を経由してベースバンド制御部30の受信部32において受信される。
【0053】
ベースバンド制御部30は例えばIEEE802.11などの通信規格によって規定された無線LANの制御部である。ベースバンド制御部30の受信部32は、無線ルータ10の動作モードや通信レートの決定のために、データを送信した端末装置101、102、103のMAC(Media Access Control)アドレス及びRSSI値を検知する機能を備える。また、ベースバンド制御部30は、検知した端末装置101、102、103のMAC(Media Access Control)アドレス及びRSSI値を保持する。
【0054】
制御部20はベースバンド制御部30が検知した端末装置101、102、103のMACアドレス及びRSSIをPCIe21とPCIe22によって読み出す。制御部20は、RSSI値の取得を完了したときに、ユーザに読み出しを完了した旨を通知するために、ランプ74を点灯状態にする。すなわち、ランプ74が点滅から点灯状態に変化したことによって、RSSI値の取得が完了したことを認識することができる。
【0055】
続けてユーザは無線ルータの設置方向を45度回転して
図4(b)の方向に設置し、さらにRSSI値の測定をおこなうためにボタン82を押下する。
【0056】
制御部20はボタン82が押下されたことを検知すると、前回ボタン82が押下された時と同様にランプ74を点滅させた後、応答要求信号を生成し帰属している端末装置101、102、103に送信する。応答要求信号を受信した端末装置101、102、103が応答信号を無線ルータ10に送信する。無線ルータ10は、受信した応答信号について、ベースバンド制御部30においてMACアドレス及びRSSI値を取得する。制御部20は、端末装置101、102、103のMACアドレス及びRSSI値をPCIe21とPCIe22によって読み出す。RSSI値の取得を完了すると、制御部20はランプ74を点灯状態に戻す。
【0057】
上述のように無線ルータ10を、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図4(d)、
図4(e)、
図4(f)、
図4(g)、
図4(h)の順にユーザが設置方向を変更し、無線ルータ10のボタン82を押下する。無線ルータ10は、各設置方向における端末装置101、102、103のMACアドレス及びRSSI値を取得することができる。合計8回の測定が完了すると、制御部20はランプ75を点灯することによりRSSI値の測定を完了したことを報知する。
【0058】
なお、無線ルータ10を用いて端末装置101、102、103のRSSI値を測定する方向は、本実施形態においては
図4に示すとおり8方向としたが、これに限らない。
【0059】
合計8回の測定によって検知したRSSI値は
図5に示すような表を用いて表すことができる。本実施形態においては、RSSI値は0~100の範囲で、数字が大きいほど電波の強度が強いことを示すものとする。また、RSSI値の平均値が最も大きい設定が最適と判断することとしてもよい。更に、あらかじめRSSI値としての最低値及び優先する端末装置を指定し、全ての端末装置101、102、103のRSSI値が最低値を超えた中で、優先する端末装置のRSSI値が最大になるものを選択してもよい。これに限らず、無線ルータ10を設置する方向として様々な判断を行うことができる。
【0060】
図5に示す表によれば、5回目の測定である、無線ルータ10の設置方向が180度の時に、端末装置101、102、103のRSSI値の平均値が最も大きい。制御部20は5回目の測定の時が最も良い結果であったことを通知するために、測定回数の「5」を2進数「101」として、ランプ73、72、71を2進数のビットに対応させ、ランプ73、71を点灯することとしてもよい。
【0061】
なお、本実施形態においては3つのランプ71、72、73を用いて3ビットの2進数による方法で無線ルータ10の設置方向として選択し、その結果を報知することとしたが、2進数に限らず、5進数など様々な表現をすることができる。また、用いるランプの数も3つに限らない。
【0062】
上述した方法によれば、ユーザは無線ルータ10のランプ71、72、73の表示に基づいて、3台の端末装置101、102、103を
図3に示す各部屋111、112、113において使用する場合に最も良い設置方向を知ることができる。また、無線ルータ10のランプ71、72、73を用いて2進数のビット表示がされた方向に無縁ルータ10を設置することによって、無線ルータ10を良好な電波環境となるように設置をすることができる。
【0063】
本実施形態によれば、無線ルータ10に帰属する端末装置101、102、103の使用頻度の高い場所に応じて、無線ルータ10を設置する方向を判断することができる。
【0064】
<実施形態3>
実施形態2では、
図3のとおり部屋111、112,113において、それぞれ端末装置101、102、103を使用する場合に、無線ルータ10は端末装置101、102、103から受信する電波強度を測定し、設置方向を選択してその結果を報知した。本実施形態においては、1台の端末装置101を複数の箇所において用いる場合に、無線ルータ10は端末装置101から受信する電波強度を測定し、設置方向を選択してその結果を報知する。
【0065】
以下、本実施形態における無線通信システム1の動作を、実施形態2における説明と重複しない範囲において説明する。
【0066】
まず、端末装置101は、部屋111に存在するものとする。このときユーザは無線ルータ10のボタン81を所定の時間(本実施形態においても3秒とする。)以上押下する。このとき、無線ルータ10は設置方向測定モードに遷移し、例えば
図4に示す順に無線ルータ10の向きを変更し、更にボタン82を押下してRSSI値の測定を8方向について行い、ランプ75が点灯して測定を完了する。
【0067】
次に端末装置101を部屋112に移動させ、無線ルータ10が端末装置101のRSSI値を測定する。
【0068】
このとき、無線ルータ10のボタン81を、所定の時間未満である3秒未満、押下する。ボタン81は、操作ボタンとしての機能を備えてもよい。所定時間未満のボタン81の押下によって、制御部20は、設置方向測定モードへの遷移ではなく、別の部屋にスマートフォンを移動したことによる追加測定であると認識することとしてもよい。すなわち、部屋111に存在する端末装置101のRSSI値の測定結果をベースバンド制御部30が保持したまま、部屋112に存在する端末装置101に対しても、無線ルータ10の設置方向を変更させてボタン82を押下して8方向のRSSIの測定を行う。無線ルータ10は、部屋112に存在する端末装置101に対するRSSI値の測定が完了した時点で、制御部20は部屋111と部屋112の測定結果から最適な装置の向きを選択する。無線ルータ10は、選択した結果をランプ71、72、73を点灯させることによって、無線ルータ10を設置する方向として選択した結果を報知する。
【0069】
さらに端末装置101を部屋113に移動し、部屋111、112に端末装置101が存在する場合のRSSI値の測定結果を保持したまま同様のRSSI値の測定を実施する。制御部20は、部屋113における端末装置101に対するRSSI値の測定が完了した時点で、部屋111、112、113の測定結果から無線ルータ10を設置する方向を選択し、その結果を報知する。制御部20は、選択した設置方向に対応したランプ73、72、71を、2進数のビットに対応させて点灯させてもよい。
【0070】
上述した方法により、3つの部屋111、112、113における1台の端末装置101の使用を前提とした場合の、無線ルータ10を設置する方向として選択した結果を報知することができる。
【0071】
本実施形態によれば、無線ルータ10に帰属する端末装置101の使用頻度の高い場所に応じて、無線ルータ10を設置する方向を判断することができる。
【0072】
<実施形態4>
上述した実施形態2及び3における無線ルータ10に、更に地磁気センサ(不図示)を内蔵してもよい。無線ルータ10設置方向を決定し設置したときに、当該設置方向の方位を、地磁気センサを用いて記憶させることができる。無線ルータ10の設置後に、何らかの原因により無線ルータ10の設置方向が変更された場合であっても、記憶した方位と異なれば、ランプを用いて方位がずれたことを報知することができる。
【0073】
このとき、無線ルータ10に設置方向を記憶する記憶部(不図示)を備えてもよい。記憶部は、処理に必要な各種のプログラムや各種のデータが固定的に記憶されている不揮発性のメモリ(例えば、ROM(Read Only Memory))を含むことができる。
【0074】
本実施形態によれば、無線ルータ10を設置する方向を選択するとともに、無線ルータ10を設置した方向が何らかの原因によりずれたとしても、所期の設置方向に戻すことができる。
【0075】
<その他の実施形態>
上述の実施形態では、本開示についてハードウェアを用いるものとして説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。本開示における無線通信装置2は、例えば、無線通信方法としての実施形態を備える。すなわち無線通信方法としては、自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置100から受信する電波の強度を測定するステップと、前記測定した電波強度に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択するステップを採りうる。
【0076】
上記の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、CD-ROM,CD-R、CD-R/W、半導体メモリを含む。半導体メモリは、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)などである。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0077】
上記プログラムは、無線通信装置2に、自機を設置する複数の候補方向があって、それぞれの候補方向における複数の端末装置100から受信する電波の強度を測定する処理と、前記測定した電波強度に基づいて、複数の前記候補方向から、自機を設置する方向を選択する処理を実行させる実行させる。
【0078】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 無線通信システム
2 無線通信装置
3 測定部
4 選択部
10 無線ルータ
20 制御部
30 ベースバンド制御部
40 フロントエンドモジュール
50 アンテナ
71、72、73、74、75 ランプ
81、82 ボタン
100、101、102、103 端末装置