(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及び通信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/04 20220101AFI20240228BHJP
【FI】
H04L41/04
(21)【出願番号】P 2021133077
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】宮田 康範
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272986(JP,A)
【文献】特開昭64-049456(JP,A)
【文献】特開2011-155503(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170850(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-12/66,13/00,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置であって、
前記対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数の前記ストリームのそれぞれと対応付けて取得する取得部と、
前記通信品質情報に基づいて、複数の前記ストリームのうち、少なくとも一部に対して前記通信回線の切替えを行う切替部と、
前記通信装置を監視する監視装置に対して、前記通信品質の劣化に関する情報を報知する報知部と、を備え
、
前記監視装置は、前記通信装置の外部に設けられている
通信装置。
【請求項2】
前記切替部は、複数の前記ストリームのうち、前記通信品質が劣化した前記ストリームが前記通信回線とは異なる他の通信回線で確立されるように、前記切替えを行う
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記通信品質の劣化の内容に応じて設定された閾値に基づいて、前記切替えを行う
請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記通信品質の劣化の発生回数に応じて設定された閾値に基づいて、前記切替えを行う
請求項1~3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記監視装置からの要求に応じて前記切替えを行う
請求項
1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信装置は、SCTP(ストリーム制御転送プロトコル)を用いて前記対向装置と通信する
請求項1~
5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置が、
前記対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数の前記ストリームのそれぞれと対応付けて取得するステップと、
前記通信品質情報に基づいて、複数の前記ストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行うステップと、
前記通信装置を監視する監視装置に対して、前記通信品質の劣化に関する情報を報知する報知ステップと、を実行
し、
前記監視装置は、前記通信装置の外部に設けられている
通信方法。
【請求項8】
複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置のコンピュータに実行させる通信プログラムであって、
前記対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数の前記ストリームのそれぞれと対応付けて取得するステップと、
前記通信品質情報に基づいて、複数の前記ストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行うステップと、
前記通信装置を監視する監視装置に対して、前記通信品質の劣化に関する情報を報知する報知ステップと、を実行させ
、
前記監視装置は、前記通信装置の外部に設けられている
通信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置、通信方法及び通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
装置間の通信において、通信品質の劣化を検出する技術が知られている。関連する技術として、例えば、特許文献1は、セッション制御プロトコルのバッファ長に基づいて、通信品質の劣化を検出する通信品質監視装置を開示する。特許文献1が開示する通信品質監視装置では、セッション制御プロトコルの輻輳検出に関するパラメータに応じて、通信品質の劣化を判断するための閾値を算出し、閾値とバッファ長を比較して通信品質の劣化を判断する。
【0003】
また、別の関連する技術として、特許文献2は、SCTP(Stream Control Transmission Protocol:ストリーム制御転送プロトコル)を用いて信号の送受信制御を行う多重化システム及び通信制御装置を開示する。特許文献2が開示する多重化システムでは、SS7(Signaling System No.7)網の信号を、SCTPを用いて信号の送受信制御を行っている。また、アクティブ系通信制御装置におけるSCTPシステム情報の複製をスタンバイ系通信制御装置で保持することによって、アクティブ系通信制御装置とスタンバイ系通信制御装置間で同期をとっている。アクティブ系通信制御装置に障害が生じたとき、スタンバイ系通信制御装置は、複製されたSCTPシステム情報を用いてアクティブ系通信制御装置として動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/073979号
【文献】特開2007-274256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SCTP通信は、複数のストリームを使用することが可能なプロトコルであるが、ストリーム単位で任意の経路へ振り分けを行う機能は備えていない。複数のストリームで送受信されるデータは同一の経路を通るため、ネットワーク上の中継装置において負荷が集中する課題がある。しかしながら、中継装置の高負荷状態となった場合でも、これを回避する手段はないため、データの再送や通信の遅延などを生じさせつつ通信を行う必要がある。このような通信品質の劣化は、提供するサービスの品質の低下にも繋がるため、これを回避する手段が望まれている。
【0006】
また、SCTP通信が遮断されるような障害が発生した場合、サービスが中断され、その後に障害復旧手順又は冗長回線への切替えなどを行う必要がある。このような場合、回線断となった後に冗長回線への切替え等が行われるため、障害発生から回線切替えまでの間はサービスが中断されてしまう。また、SCTP通信が切断されると、切断前のサービスの情報は通信再開時まで維持されないので、通信の切断がサービスに与える影響も大きい。さらに、SCTP通信は一度開始すると、通信を継続しながら回線の切替えを行うことはできない。そのため、SCTP通信の開始後に冗長回線を設置したとしても、冗長回線への切替えには、サービスの中断を伴うこととなる。
【0007】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、サービスの中断を回避することが可能な通信装置、通信方法及び通信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる通信装置は、
複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置であって、
前記対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数の前記ストリームのそれぞれと対応付けて取得する取得部と、
前記通信品質情報に基づいて、複数の前記ストリームのうち、少なくとも一部に対して前記通信回線の切替えを行う切替部と、を備えるものである。
【0009】
本開示にかかる通信方法は、
複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置が、
前記対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数の前記ストリームのそれぞれと対応付けて取得するステップと、
前記通信品質情報に基づいて、複数の前記ストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行うステップと、を実行するものである。
【0010】
本開示にかかる通信プログラムは、
複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置のコンピュータに実行させる通信プログラムであって、
前記対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数の前記ストリームのそれぞれと対応付けて取得するステップと、
前記通信品質情報に基づいて、複数の前記ストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行うステップと、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかる通信装置、通信方法及び通信プログラムによれば、サービスの中断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1にかかる通信装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態2にかかる通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態2にかかる通信装置における通信品質情報の保存処理を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態2にかかる通信装置における通信回線の切替え処理を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態2における通信回線の切替え後の通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】通信装置等のハードウエア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる通信装置10の構成を示すブロック図である。通信装置10は、複数のストリームが確立された通信回線を用いて対向装置と通信する通信装置である。ここで、ストリームは、通信装置10と対向装置との間で確立された論理的な通信経路であってよい。
【0014】
通信装置10は、取得部11及び切替部12を備えている。取得部11は、対向装置との通信における通信品質の劣化を含む通信品質情報を、複数のストリームのそれぞれと対応付けて取得する。切替部12は、取得部11で取得された通信品質情報に基づいて、複数のストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行う。
【0015】
以上説明したように、本実施形態にかかる通信装置10では、取得部11が、対向装置との通信における通信品質情報を、複数のストリームのそれぞれと対応付けて取得する。通信品質情報は、通信品質の劣化に関する情報を含むので、取得部11は、複数のストリームのそれぞれにおける通信品質の劣化に関する情報を取得することができる。切替部12では、取得部11で取得された通信品質情報に基づいて、複数のストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行う。例えば、切替部12は、確立されている2つのストリームのうち、通信品質の劣化が生じている1つに対して通信回線の切替えを行う。
【0016】
このような構成により、本実施形態にかかる通信装置10は、サービスの中断を回避して、適切に通信することが可能である。
【0017】
<実施形態2>
本実施形態は、上述した実施形態1の具体例である。
図2は、本実施形態にかかる通信装置200を含む通信システム1000の構成を示すブロック図である。通信システム1000は、監視システム100、通信装置200、対向装置300、中継装置400、及び中継装置500を備えている。
【0018】
なお、同図に示される構成は一例に過ぎず、通信システム1000は、複数の構成が集約された装置などを用いて構成されてもよい。例えば、監視システム100及び通信装置200の機能が同一の装置に集約されていてもよい。また、例えば、通信装置200における各機能部は、複数の装置などを用いて分散処理されてもよい。
【0019】
監視システム(監視装置)100は、通信装置200を監視するシステムである。監視システム100は、例えば、通信システム1000の保守を行う保守者により運用される。監視システム100は、監視システム100と通信装置200との間は、UDP(User Datagram Protocol)又はTCP(Transmission Control Protocol)などのプロトコルを用いて通信を行ってよい。これに限らず、SCTP、SNMP(Simple Network Management Protocol)、NETCONF(Network Configuration Protocol)、又はREST(Representational State Transfer) APIなどが用いられてもよい。
【0020】
監視システム100は、通信装置200の装置間通信部210から通信品質の劣化に関する報知情報を受信する。保守者は、監視システム100が備える通信端末などを用いて、報知の内容を確認する。これにより、保守者は、通信装置200における通信の状況を把握することができる。
【0021】
対向装置300は、中継装置400又は500を介して通信装置200との通信を行う通信装置である。
中継装置400及び500は、通信装置200と対向装置300との間の通信を中継するネットワーク中継装置である。中継装置400及び500は、通信装置200との間でSCTP通信を行う。中継装置400及び500は、通信装置200からデータを受信し、受信したデータのヘッダ情報及び中継経路情報に基づき、当該データを対向装置300に中継する。中継装置400及び500は、例えばネットワーク上におけるゲートウェイ装置であってよい。
【0022】
通信装置200は、実施形態1の通信装置10に相当するものである。通信装置200は、SCTPを用いて対向装置300と通信する装置である。SCTPでは、エンドポイント間にアソシエーションと呼ばれるコネクションを確立し、アソシエーション内に複数のユーザメッセージのストリームを独立転送させることができる。ストリームは、通信装置200と対向装置300との間で確立された、論理的な通信経路であってよい。ここでは、単一のアソシエーション(不図示)内に、ストリーム1A及び1Bが確立されているものとする。
【0023】
通信装置200は、ストリーム1A及び1Bを用いて、中継装置400を経由して、対向装置300との間で通信を行う。なお、アソシエーション内のストリームの数は2つに限定されない。アソシエーション内に3つ以上のストリームが確立されてもよい。また、通信装置200と対向装置300との間において、複数のアソシエーションが確立されていてもよい。
【0024】
ストリーム1Aとストリーム1Bとは、互いに独立している。例えばストリーム1Bにおいてパケットの再送が生じ、ストリーム1Bにおける通信品質に劣化が発生した場合でも、ストリーム1Aは、その影響を受けることなく通信することができる。各ストリームは、例えばストリーム識別子などで識別されてよい。
【0025】
通信装置200が備える各機能部について説明する。通信装置200は、装置間通信部210、SCTP通信部220、及びメモリ管理部230を備えている。
【0026】
装置間通信部210は、監視システム100と通信装置200との間の通信機能を有している。装置間通信部210は、例えば、UDP又はTCPなどのプロトコルを用いて監視システム100と通信することができる。これに限らず、当該通信には他のプロトコルが用いられてもよい。例えば、SCTP、SNMP、NETCONF、又はREST APIなどのプロトコルが用いられてもよい。
【0027】
装置間通信部210は、通信品質の劣化に関する情報を監視システム100に報知する報知部の機能を有している。装置間通信部210は、SCTP通信部220からの制御に応じて、当該情報を監視システム100に報知する。例えば、装置間通信部210は、ストリーム1A又は1Bにおいて通信品質の劣化が発生している旨を監視システム100に報知する。
【0028】
監視システム100への報知の形態は、例えば、テキスト、画像、又は音声などであってよい。これらに限らず、どのような形態が用いられてもよい。また、画像と音声などの組み合わせが用いられてもよいし、報知の内容や緊急度などに応じて、異なる報知形態が用いられてもよい。装置間通信部210は、報知に必要な報知情報を生成し、監視システム100への報知を行う。
【0029】
SCTP通信部220は、通信装置200におけるSCTP通信を制御する。また、SCTP通信部220は、実施形態1における取得部11及び切替部12に相当する機能を有している。
【0030】
まず、SCTP通信部220の取得部としての機能について説明する。SCTP通信部220は、対向装置300との通信における通信品質情報を、複数のストリームのそれぞれと対応付けて取得する。ここで、通信品質情報は、各ストリームにおける通信品質の劣化に関する情報を含み得る。通信品質の劣化は、対向装置300との通信における障害の発生に繋がり得る事象であってよい。通信品質の劣化は、例えば、パケットの導通の失敗やパケットの再送などであってよい。これらに限らず、通信品質に関する他の指標を用いて、各ストリームにおいて通信品質の劣化が生じたか否かを判定してもよい。
【0031】
例えば、SCTP通信部220は、中継装置400を介して対向装置300から送信されるACK(Acknowledgement)信号及びNACK(Negative Acknowledgement)信号などに基づいて、各ストリームにおける通信品質の劣化を検出する。SCTP通信部220は、通信品質の劣化が検出されたストリームと、当該劣化の内容と、を対応付けて、通信品質情報としてメモリ管理部230に保存する。複数のストリームのそれぞれは、ストリームを識別するためのストリーム識別情報を用いて識別されてよい。ストリーム識別情報は、例えば、ストリーム1A及び1Bのそれぞれに付されたストリーム識別子などであってよい。
【0032】
また、SCTP通信部220は、メモリ管理部230を参照し、メモリ管理部230に保存された通信品質情報を取得する。SCTP通信部220は、通信品質劣化の内容及びその発生回数を、ストリームと対応付けて取得することができる。
【0033】
続いて、SCTP通信部220の切替部としての機能について説明する。SCTP通信部220は、メモリ管理部230から取得された通信品質情報に基づいて、複数のストリームのうち、少なくとも一部に対して通信回線の切替えを行う。例えば、ストリーム1A及び1Bのうち、ストリーム1Bにおいて通信品質の劣化が発生しているものとする。この場合、SCTP通信部220は、通信品質の劣化が所定の閾値を超えているか否かの判定を行う。またSCTP通信部220は、この判定の結果に基づいて、ストリーム1Bに対して通信回線の切替えを行うか否かを判定する。閾値は、通信品質の劣化の内容に応じて、予め設定されていてよい。閾値は、例えば通信品質の劣化の発生回数に関する数値でであってよい。
【0034】
例えば、ストリーム1A及び1Bにおけるパケットの再送回数に対して、閾値が設定されているとする。SCTP通信部220は、ストリーム1Bにおけるパケットの再送回数が閾値を超えているか否かを判定する。パケットの再送回数が閾値を超えている場合、SCTP通信部220は、ストリーム1Bの通信回線の切替えを行うと判定する。この場合、SCTP通信部220は、ストリーム1Bに対する通信回線の切替えを行うように、ストリーム1Bの通信を制御する。なお、SCTP通信部220は、通信回線の切替えを行う前又は後に、その旨を監視システム100に報知するように装置間通信部210を制御してもよい。
【0035】
SCTP通信部220は、ストリーム1Bがそれまでとは異なる通信回線で確立されるように、通信回線の切替えを行う。例えば
図1の例では、SCTP通信部220は、ストリーム1Bが使用する通信回線を、中継装置400から中継装置500に変更するように、通信回線の切替え処理を行う。具体的には、SCTP通信部220は、ストリーム1Bにおける経路情報を、中継装置400から中継装置500へと変更する。SCTP通信部220は、中継装置400以外に使用できる通信回線があるか否かを予め判定してもよい。また、使用できる通信回線が複数ある場合には、優先順位を設けて切替えを行ってもよい。
【0036】
なお、上述した閾値が低い場合、監視システム100への報知回数が多くなり、監視システム100への負荷となることが懸念される。また、ストリームの経路情報の設定処理及び通信回線の切替え処理が過度に行われることが懸念される。一方、設定された閾値が高い場合、監視システム100で回線断の予兆や輻輳による障害を把握する前に、障害が発生することが懸念される。そのため、閾値は、通信装置200の運用中、又は通信システム1000の再起動時において変更可能であってよい。なお、通信回線の切替えのための閾値と、監視システム100への報知のための閾値とは、個別に設定されてもよい。
【0037】
また、SCTP通信部220は、通信回線の切替えを行うか否かの判定を行うことなく、任意のタイミングで通信回線の切替えを行ってもよい。例えば、SCTP通信部220は、監視システム100からの要求に応じて通信回線の切替えを行ってもよい。このようにすることで、メンテナンス等のタイミングで通信回線の切替えを行うことができる。
【0038】
メモリ管理部230は、通信品質情報を記憶する。メモリ管理部230は、SCTP通信部220において検出された通信品質の劣化の内容を、当該劣化が検出されたストリームと対応付けて記憶する。メモリ管理部230は、各ストリームの通信品質の劣化の内容ごとに、その発生回数を記憶する。
【0039】
続いて、
図3及び
図4を用いて、通信装置200が行う処理について説明する。
図3は、通信装置200における通信品質情報の保存処理を示すフローチャートである。
図2を用いて説明したように、通信装置200は、ストリーム1A及び1Bを確立し、中継装置400を介して対向装置300と通信しているものとする。
【0040】
SCTP通信部220は、ACK信号等の受信状況等に応じて、ストリーム1A及び1Bにおける対向装置300との通信における通信品質の劣化を検出する(S101)。通信品質の劣化は、例えば、パケットの導通の失敗やパケットの再送などであってよい。これらに限らず、SCTP通信部220は、障害や予兆や輻輳を検出し得るような他の指標を用いて通信品質の劣化を検出してもよい。
【0041】
メモリ管理部230は、通信品質の劣化の内容をストリームと対応付けて、通信品質情報として保存する。また、メモリ管理部230は、各ストリームにおける通信品質の劣化の発生回数を保存する(S103)。メモリ管理部230は、通信品質の劣化内容及びその回数をストリーム単位で保存し、蓄積していくことができる。
【0042】
図4は、通信装置200が行う通信回線の切替え処理を示すフローチャートである。SCTP通信部220は、メモリ管理部230に対する読み出し処理を行い、メモリ管理部230に保存された通信品質情報を参照する。これにより、SCTP通信部220は、通信品質の劣化の内容及びその発生回数を取得する(S104)。
【0043】
SCTP通信部220は、通信品質劣化の発生回数が閾値を超えているか否かを判定する(S105)。通信品質劣化の発生回数が閾値を超えている場合(S105のYES)、装置間通信部210は、監視システム100に報知する(S107)。ここでは、ストリーム1Bにおいて、通信品質劣化の発生回数が閾値を超え、ストリーム1Aにおいては、当該発生回数が閾値を超えていないものとする。装置間通信部210は、ストリーム1Bにおいて通信品質劣化の発生回数が閾値を超えたことを監視システム100に報知する。通信システム1000の保守者は、この報知を受け、必要に応じて冗長回線の追加要否を判断することができる。通信品質劣化の発生回数が閾値を超えていない場合(S105のNO)、冗長回線への切替え要否を判断する必要が無いため、処理を終了する。
【0044】
続いて、SCTP通信部220は、冗長回線が設置されているか否かを判定する(S109)。冗長回線が設置されている場合(S109のYES)、SCTP通信部220は、通信品質の劣化が発生しているストリーム1Bを冗長回線へ切り替える(S111)。ここでは、冗長回線として中継装置500が設置されてものとする。SCTP通信部220は、中継装置400へ送信しているストリーム1Bの経路情報を、中継装置500を経由する経路情報に変更し、通信回線の切替えを行う。冗長回線が設置されていない場合(S109のNO)、通信回線の切替え処理を行わずに処理を終了する。
【0045】
図5は、ストリーム1Bが中継装置500に切り替えられた後の通信システム1000を示している。ストリーム1Bは、SCTP通信部220が行った回線の切替え処理で変更された経路情報に従い、通信経路を中継装置500経由に変更し、対向装置300との通信を行う。なお、回線の切替えは、ストリーム1Bに対してのみ行い、ストリーム1Aに対しては行わなくともよい。
【0046】
図4に戻り説明を続ける。SCTP通信部220は、メモリ管理部230におけるストリーム1Bの通信品質劣化の発生回数をクリアし(S113)、処理を終了する。
【0047】
なお、上述の処理において、監視システム100への報知を行わない場合は、ステップS107の処理は行わなくともよい。また、SCTP通信部220は、通信品質の劣化が発生した際以外にも監視システム100への報知を行ってもよい。例えば、ストリーム1Bを中継装置500に切り替えたことの報知を行ってもよいし、これ以外の任意のタイミングで報知を行ってもよい。また、保守者は、任意のタイミングにおいて、監視システム100を用いて通信装置200に要求を行い、通信品質情報を取得してもよい。
【0048】
なお、上述の処理では、通信品質の劣化の発生回数に応じて自動的に回線の切替えを行ったが、これに限られない。任意のタイミングにおいて、監視システム100から通信装置200を制御して、回線の切替えを行ってもよい。このようにすることで、例えば、保守者は、中継装置400、中継装置500、又はその他の関連装置の交換を伴うメンテナンスなどの際に、通信回線の切替えを行うことができる。
【0049】
また、中継装置400が故障し、ストリーム1A及び1Bの双方で通信品質劣化の発生回数が閾値を超えるような場合、SCTP通信部220は、ストリーム1A及び1Bが共に中継装置500を経由するように切替え処理を行ってもよい。このようにすることで、回線断となる前に障害を回避することができる。
【0050】
本開示は、SCTPマルチホーミング機能と組み合わせて実現されてもよい。より冗長な環境を構築することが可能となる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態にかかる通信システム1000によれば、SCTP通信を終端する通信装置200において、SCTP通信部220が、ストリームごとに通信品質情報を取得する。通信品質情報は、例えばパケット導通失敗やパケット再送等のような通信品質の劣化を示す情報を含み得る。メモリ管理部230は、通信品質の劣化が生じているストリームと通信品質劣化の内容とを対応付けて記憶する。また、メモリ管理部230は、通信品質情報を蓄積し、通信品質劣化の発生回数をストリームごとにカウントする。
【0052】
SCTP通信部220は、通信品質劣化の発生回数が所定の閾値を超えた場合、冗長回線が存在するか否かを判定する。冗長回線が存在する場合、SCTP通信部220は、通信品質劣化が生じているストリームのデータの経路情報を変更し、当該ストリームが冗長回線を経由するように、通信回線の切替え処理を行う。
【0053】
このような構成により、通信装置200は、ストリームを単位として、使用する経路の動的な切替えを行うことができる。ネットワーク中継装置の故障等により回線断となり得るような場合にも、回線断の発生前に通信経路の切替えを行うことで、サービスの中断を回避することができる。これにより、SCTP通信を用いたサービスに影響を生じさせることなく、障害の回避及び通信経路の負荷分散を行うことができる。また、冗長回線が設置されていない場合には、予兆となる通信品質劣化が発生した時点で保守者に報知を行うことができるので、保守者が冗長回線の設置要否の判断を行うことができる。
【0054】
<ハードウエアの構成例>
通信装置200、監視システム100、対向装置300、中継装置400、及び中継装置500の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、通信装置200等の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について説明する。
【0055】
図6は、通信装置200等を実現するコンピュータ900のハードウエア構成を例示するブロック図である。コンピュータ900は、通信装置200等を実現するために設計された専用のコンピュータであってもよいし、汎用のコンピュータであってもよい。コンピュータ900は、スマートフォンやタブレット端末などといった可搬型のコンピュータであってもよい。
【0056】
例えば、コンピュータ900に対して所定のアプリケーションをインストールすることにより、コンピュータ900で、通信装置200等の各機能が実現される。上記アプリケーションは、通信装置200等の機能構成部を実現するためのプログラムで構成される。
【0057】
コンピュータ900は、バス902、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912を有する。バス902は、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ904などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0058】
プロセッサ904は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又は FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの種々のプロセッサである。メモリ906は、RAM(Random Access Memory)などを用いて実現される主記憶装置である。ストレージデバイス908は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。メモリ906及びストレージデバイス908の少なくとも一方は、メモリ管理部230として用いられてよい。
【0059】
入出力インタフェース910は、コンピュータ900と入出力デバイスとを接続するためのインタフェースである。例えば入出力インタフェース910には、キーボードなどの入力装置や、ディスプレイ装置などの出力装置が接続される。
【0060】
ネットワークインタフェース912は、コンピュータ900をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、WAN(Wide Area Network)であってもよい。
【0061】
ストレージデバイス908は、通信装置200等の各機能構成部を実現するプログラム(前述したアプリケーションを実現するプログラム)を記憶している。プロセッサ904は、このプログラムをメモリ906に読み出して実行することで、通信装置200等の各機能構成部を実現する。
【0062】
プロセッサの各々は、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又はそれ以上のプログラムを実行する。このプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0063】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1A ストリーム
1B ストリーム
10 通信装置
11 取得部
12 切替部
100 監視システム
200 通信装置
210 装置間通信部
220 SCTP通信部
230 メモリ管理部
300 対向装置
400 中継装置
500 中継装置
1000 通信システム