(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】比色センサー剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 21/78 20060101AFI20240228BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20240228BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20240228BHJP
G01N 21/77 20060101ALI20240228BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240228BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240228BHJP
C09K 11/07 20060101ALI20240228BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240228BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
G01N21/78 C
G01N31/22 121C
G01N31/00 L
G01N21/78 Z
G01N21/77 A
G01N21/64 C
C09K11/06
C09K11/07
B32B27/18 Z
B32B37/14 Z
(21)【出願番号】P 2021512239
(86)(22)【出願日】2019-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2019073290
(87)【国際公開番号】W WO2020048895
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514073617
【氏名又は名称】ザ プロボースト,フェローズ,ファンデーション スカラーズ,アンド ジ アザー メンバーズ オブ ボード,オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイデッド トリニティ オブ クイーン エリザベス ニア ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル エヴァンズ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴ コンビ
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108084366(CN,A)
【文献】特表2001-512236(JP,A)
【文献】国際公開第2005/015181(WO,A1)
【文献】特開2004-254684(JP,A)
【文献】特開2008-069278(JP,A)
【文献】特表2018-510083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01N 31/00 - G01N 31/22
C09K 11/06 - C09K 11/07
B32B 27/18 - B32B 27/26
B32B 37/14 - B32B 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックス中に分散された第1のルモフォアと第2のルモフォアとを含む比色酸素センサー剤であって
、
(i)前記第1のルモフォアは、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)であり、前記第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(
ii)前記第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、前記第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(
iii)前記第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、前記第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(
iv)前記第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、前記第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(
v)前記第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)
3]
2+であり、前記第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(
vi)前記第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)
3]
2+であり、前記第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は
、
(vii)前記第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、前記第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(
viii)前記第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、前記第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(
ix)前記第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、前記第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は
、
(x)前記第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、前記第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(
xi)前記第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、前記第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(
xii)前記第1のルモフォアは、4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Ru(dpp)
3]
2+)であり、前記第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(
xiii)前記第1のルモフォアは、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)であり、前記第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(
xiv)前記第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、前記第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、比色酸素センサー剤。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスは、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリレート、シェラック、ロジン、ロジンエステル、セルロース及びセルロース誘導体、並びにその混合物から選択される、請求項1に記載の比色酸素センサー剤。
【請求項3】
ルモフォア1:ルモフォア2の
モル比が、1:4から2:1である、請求項1又は2に記載の比色酸素センサー剤。
【請求項4】
前記比色酸素センサー剤が、前記ポリマーマトリックス中に分散された第3のルモフォアを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の比色酸素センサー剤。
【請求項5】
前記剤がインクの形態である、請求項1から4のいずれか1項に記載に比色酸素センサー剤。
【請求項6】
雰囲気の酸素含有量の測定方法であって、請求項1から5のいずれか1項に記載の比色酸素センサー剤を前記雰囲気に曝露することと、前記剤にUV又はUV可視励起源を当てることと、前記剤の色を観察することとを含み、
さらに前記酸素含有量を評価するために前記剤の色を参照色と比較することを含む、雰囲気の酸素含有量の測定方法。
【請求項7】
前記剤の色の観察を、裸眼、分光器の使用、又はデジタル画像装置の使用を介して行う、請求項6に記載の雰囲気の酸素含有量の測定方法。
【請求項8】
前記雰囲気が食品包装雰囲気である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
比色酸素センサーを含むラミネートフィルム又はラベルの調製方法であって、請求項5に記載の前記インクの層を、基材に印刷し、任意にポリマー基材フィルム上に印刷することを含む、方法。
【請求項10】
前記印刷されたポリマー基材フィルムが第2のポリマー基材フィルムでラミネートされており、前記インクの層が前記ポリマー基材フィルムの間に挟まっている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ラミネートが熱的手段によって、接着剤の使用によって、又はこれらの組み合わせによって行われる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか1項に記載の比色酸素センサー剤を含むラミネートフィルム、又は、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法によって調製されたラミネートフィルム。
【請求項13】
基材上に印刷された請求項1から5のいずれか1項に記載の比色センサー剤を含む食品包装ラミネートフィルム又はラベルであって、前記センサー剤は、前記センサー剤が曝露された雰囲気又は局所的環境中の酸素濃度の変化に応答して色の変化を示し、前記色の変化は、UV/UV可視光源を当てた際に裸眼で見ることができる、食品包装ラミネートフィルム又はラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光系比色センサー剤、それを含む印刷可能なインク、及びその使用方法に関する。比色センサーは、特に、食品、医療製品及び電子部品の包装などの制御された酸素雰囲気中の酸素濃度を測定するために用いることができる。実施形態において、本発明はまた、印刷された比色センサーを含むラミネートフィルム、及びそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、厳重な食品安全の要求、生鮮食品の需要の増加、外来及び季節外れの食品の輸入の増加、並びに、使い捨ての無菌医薬製品及び電子部品の使用の増加を含む多くの要因により、保護雰囲気包装の使用が大幅に増加している。
【0003】
保護雰囲気包装には、一般的に、ガスフリー(すなわち、真空包装)及び調整雰囲気包装(MAP)が含まれる。ガスフリー環境は、真空下で包装からすべての空気、したがって酸素を排出することによってつくられる。ガスフリー環境は、酸化分解されやすい製品の包装に好ましく、それには電子部品、医薬品及び食品を含まれる。MAPは、包装内の空気の通常のガス組成(窒素78%、酸素21%、微量ガス1%)を変更することによってつくられる。これらのプロセスは、初期における食品の腐敗プロセスを阻害する雰囲気を提供し、それによって製品の貯蔵寿命が延び、食品の品質及び安全性が高まる。
【0004】
酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)は、MAPで最も一般的に使用されるガスである。一般的に、調整雰囲気は包装される製品に適合され、果物及び野菜、並びに調理済の肉は、一般に、低酸素雰囲気(0~20%)下で保存され、生の赤身肉及び鶏肉製品は、高酸素雰囲気(20~80%)下で保存される。包装のヘッドスペース内におけるこれらのガスの分圧(pCO2、pO2)は、経時的に変動する可能性があり、製品の種類、微生物活性、保存状態、並びに、包装材料及び完全性などの要因によって影響される。包装に対する漏れ又は損傷は、調整雰囲気の損失及び周囲の空気の状態への戻りを誘発し、不適切なガス充填は、包装内に不適切な雰囲気を生成する可能性があることから、包装ヘッドスペース内のガスの組成は、包装の完全性及び充填プロセスの信頼性、並びに、包装された食品の鮮度及び安全性に有用な指標を提供することができる。
【0005】
薄膜酸素センサーが、食品包装中の酸素の評価として知られている。これらの既知のセンサーにおいて、センサー応答は、一般に、酸素濃度の関数としての吸光度又は発光などの光学特性の変化に基づく。吸光系センサーは、一般に、センサー応答としてこれらの応用に適しており、通常は、色の変化は、定性的であり、かつ、時には半定量的な酸素測定を、高額な検出機器や専門知識を必要とすることなく可能にする。しかし、吸光度系検出器の感度は低く、完全な定量的測定には外部機器が必要である。吸光度系センサーはまた、不可逆的であり、リアルタイムの応答を提供することができない。それらはまた、包装密封時のO2濃度の直接的な測定を提供することができず、したがって、包装元での品質管理検査のために使用することができない。
【0006】
発光系センサーは、吸光度系センサーの代替を提供し、定量的検出の非破壊的手段を提供する。WO2004/077035A1及びUS2014/179019A1に記載されているような発光系センサーが知られている。しかし、これらのセンサーは、位相シフトされた発光(寿命又は減衰に基づく)及び/又は発光強度を表示するので、結果として生じるセンサー応答を視覚的に認識することはできず、つまり、分光器と、この分光器を作動させるための関連する専門的技術が求められる。これらの要因はコストに重大な影響を及ぼし、そのような既知の方法は、商業的なスケールアップには不適切である。
【0007】
本発明の目的は、先行技術に関連する1つ又は複数の不利な点を回避又は軽減することである。理想的には、関連性のある酸素濃範囲にわたって特定の色の変化をもたらすことができる調整可能な比色センサー剤を提供することが有利である。ラミネート包装用フィルムなどの基材の上に印刷するためのインクとして提供し得る剤は、特に、食品包装産業にとって有利である。最小限の外部機器を使って使用することができ、その場測定、費用対効果、及び/又は酸素濃度の非破壊的測定などの利点を提供できるセンサーは、非常に有益である。最終的に、食品などの包装された品目中の酸素濃度を測定することができ、品質管理も可能な処理能力の高い方法、あるいは、食品包装の一体性又は食品の鮮度若しくは安全性の指標は、明らかに有利である。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、ポリマーマトリックス中に分散された第1のルモフォアと第2のルモフォアとを含む比色酸素センサー剤が提供され、ここで、
(i)第1のルモフォアは、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(ii)第1のルモフォアは、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(iii)第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(iv)第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(v)第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(vi)第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(vii)第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(viii)第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(ix)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(x)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(xi)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(xii)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(xiii)第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(xiv)第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、
【0009】
又は、第1のルモフォアは、
ピレン、エリスロシンB、ルテニウム(II)1,10-フェナントロリン([Ru(phen)3]2+)、オスミウム(II)1,10-フェナントロリン([Os(phen)3]2+)、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Ru(dpp)3]2+)、オスミウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Os(dpp)3]2+)、メソ-テトラフェニルポルフィリン(TPP)、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)、白金5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(PtTCPP)、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)、白金コプロポルフィリン(PtCP)、白金コプロポルフィリンテトラエチルエステル(PtCPTEE)、白金メソ-テトラ(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン(PtTDCPP)、白金メソ-テトラ(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-ポルフィリン(PtTFMPP)、白金メソ-テトラキス(4-N-メチルピリジル)ポルフィリン(PtTMPyP4+)、パラジウムメソ-テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTPTBP)、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(PdTCPP)、パラジウムメソ-テトラフェニルポルフィリン(PdTPP)、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP))から選択され、
又は、第2のルモフォアは、アクリフラビン、プロフラビン、ローダミン110、ローダミン緑色(5(6)-カルボキシローダミン110)、5-カルボキシフルオレセイン、エオシンY、8-(フェニルアミノ-1-ナフタレンスルホン酸(1,8-ANS)、N-(5-アミノペンチル)-5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホンアミド(ダンシルカダベリン)、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルベトキシキノリジノ-[9,9a,1-gh]クマリン(クマリン314として一般に知られている)、10-アセチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-ピラノ[2,3-f]ピリド[3,2,1-ij]キノリン-11-オン(クマリン334として一般に知られている)、11-オキソ-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-ピラノ[2,3-f]ピリド[3,2,1-ij]キノリン-10-カルボン酸(クマリン343として一般に知られている)、硫酸キニーネ、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)、及び、7-フルオロ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾールから選択される。
【0010】
本発明の別の態様では、雰囲気の酸素含有量の測定方法が提供され、この方法は、上記の比色酸素センサー剤を雰囲気に曝露することと、UV/UV可視励起源を剤に当てることと、剤の色を観察することとを含む。
【0011】
雰囲気は、食品包装雰囲気であり得る。あるいは、雰囲気は、医薬製品、使い捨ての医療製品又は電子部品などの真空又は制御された酸素濃度であることが好ましい任意の環境、又は、(例えば、芸術品又は骨董品などの)維持/保護の領域での包装又は保存であり得る。
【0012】
本発明のさらなる態様では、比色酸素センサーを含むラミネートフィルム又はラベルを調製する方法が提供され、この方法は、上述した剤を基材フィルム上に印刷することを含む。本発明はまた、印刷された比色酸素センサーを含むラミネートフィルム又はラベル、及び、包装用途におけるそのようなラミネートフィルム及びラベルの使用に関する。
【0013】
本発明の様々なさらなる特徴及び態様は、特許請求の範囲で定義されている。
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して例示として以下説明し、添付図面では、同様の部分には対応する参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】埋め込まれた比色酸素センサーを含むラミネート蓋フィルムの調製方法を示す。
【
図2】(i)PtTFPP:C6(1:1)、(ii)PtTFPP:BBD(1:3)、(iii)PtOEP:C153(1:1)、(iv)PtOEP:C153(1.25:1)、(v)PtOEP:BBD(1:3)、(vi)[Ru(dpp)
3]
2+:C153(1:1)、(vii)[Ru(dpp)
3]
2+:BBD(1:3)、及び、(viii)PtOEP:C6:[Ru(bpy)
3]
2+(1:3:6)のセンサー剤の色応答を示す。
【
図3】MAP生牛肉の包装研究おけるPtOEP:C153(1:1)センサー剤の色応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ポリマーマトリックス中に分散された第1のルモフォアと第2のルモフォアとを含む比色酸素センサー剤に関し、ここで、
(i)第1のルモフォアは、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(ii)第1のルモフォアは、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(iii)第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(iv)第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(v)第1のルモフォアは、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)であり、第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(vi)第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(vii)第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(viii)第1のルモフォアは、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(ix)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(x)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、又は、
(xi)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である、又は、
(xii)第1のルモフォアは、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)であり、第2のルモフォアは、ローダミン6G(R6G)である、又は、
(xiii)第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、第2のルモフォアは、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン(C6)である、又は、
(xiv)第1のルモフォアは、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)であり、第2のルモフォアは、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153)である、
【0017】
又は、第1のルモフォアは、
ピレン、エリスロシンB、ルテニウム(II)1,10-フェナントロリン([Ru(phen)3]2+)、オスミウム(II)1,10-フェナントロリン([Os(phen)3]2+)、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Ru(dpp)3]2+)、オスミウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Os(dpp)3]2+)、メソ-テトラフェニルポルフィリン(TPP)、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)、白金5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(PtTCPP)、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)、白金コプロポルフィリン(PtCP)、白金コプロポルフィリンテトラエチルエステル)(PtCPTEE)、白金メソ-テトラ(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン(PtTDCPP)、白金メソ-テトラ(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-ポルフィリン(PtTFMPP)、白金メソ-テトラキス(4-N-メチルピリジル)ポルフィリン(PtTMPyP4+)、パラジウムメソ-テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTPTBP)、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン)(PdTCPP)、パラジウムメソ-テトラフェニルポルフィリン(PdTPP)、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PdTFPP)]から選択される、
又は、第2のルモフォアは、アクリフラビン(3,6-ジアミノ-10-メチルアクリジニウムクロリド3,6-アクリジンジアミン(1:1:1)、プロフラビン(3,6-アクリジンジアミン)、ローダミン110(3,6-ジアミノ-9-(2-カルボキシフェニル)キサンチウムクロリド)、ローダミン緑色(5(6)-カルボキシローダミン110)、5-カルボキシフルオレセイン、エオシンY、8-(フェニルアミノ-1-ナフタレンスルホン酸(1,8-ANS)、N-(5-アミノペンチル)-5-(ジメチルアミノ)ナフタレン-1-スルホンアミド(ダンシルカダベリン)、2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルベトキシキノリジノ-[9,9a,1-gh]クマリン(クマリン314として知られている)、10-アセチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-ピラノ[2,3-f]ピリド[3,2,1-ij]キノリン-11-オン(クマリン334として知られている)、11-オキソ-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-ピラノ[2,3-f]ピリド[3,2,1-ij]キノリン-10-カルボン酸(クマリン343として知られている)、硫酸キニーネ、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)及び7-フルオロ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾールから選択される。
【0018】
本明細書をとおして、用語「ルモフォア」は、「発光団」と同義に用いられ、高エネルギー電子励起状態(不安定)から最低エネルギー基底状態(安定)への放射緩和(発光)の際に、自然発光する化学種を意味する。高エネルギー電子状態は、ルモフォアが放射線を吸収するときに形成され、これは、いつもではないが、通常、その後の発光のエネルギーよりも高いエネルギーである。比色センサー剤は、酸素感受性であり、換言すれば、比色センサー剤は、それが曝露された雰囲気又は局所環境の酸素濃度の変化に応答して、観察可能な色の変化を示す。
【0019】
比色センサー剤は、発光系である。色の変化は、剤の中の少なくとも1つのルモフォアによって発せられる光の優先的な消光に起因して生じる。この色の変化は、剤がUV光に曝露されたときにのみ肉眼で見ることができる。これは、所望により、センサーを一般の視界から隠すことができるので、消費者向製品を監視するという点で有利である。
【0020】
比色センサー剤は、酸素センサー剤である。本明細書をとおして、「酸素センサー」は、分析物としての酸素に敏感な単一のパラメーターセンサーを意味することを意図している。
【0021】
第1のルモフォアは、酸素感受性ルモフォアであり、換言すれば、第1のルモフォアの発光は、酸素の存在下で、好ましくは著しく消光する。第1のルモフォアは、pH及び温度に対して非感受性である。本発明において第1のルモフォアとして使用するのに適した酸素感受性ルモフォアには、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Ru(dpp)3]2+)、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)、ピレン、エリスロシンB、ルテニウム(II)1,10-フェナントロリン([Ru(phen)3]2+)、オスミウム(II)1,10-フェナントロリン([Os(phen)3]2+)、ルテニウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン([Ru(dpp)3]2+)、オスミウム(II)4,7-ジフェニル-1,10’-フェナントロリン錯体([Os(dpp)3]2+)、メソ-テトラフェニルポルフィリン(TPP)、白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)、白金5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(PtTCPP)、白金5,10,15,20-テトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(PtTFPP)、白金コプロポルフィリン(PtCP)、白金コプロポルフィリンテトラエチルエステル)(PtCPTEE)、白金メソ-テトラ(2,6-ジクロロフェニル)ポルフィリン(PtTDCPP)、白金メソ-テトラ(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-ポルフィリン(PtTFMPP)、白金メソ-テトラキス(4-N-メチルピリジル)ポルフィリン(PtTMPyP4+)、パラジウムメソ-テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTPTBP)、パラジウム5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン)(PdTCPP)、及びパラジウムメソ-テトラフェニルポルフィリン(PdTPP)が含まれる。
【0022】
一実施形態では、第1のルモフォアは、PtOEP、[Ru(dpp)3]2+、PtTPP、ルテニウム(II)2,2’-ビピリジン([Ru(bpy)3]2+)、PtTFPP及びPdTFPPから選択される。
【0023】
第2のルモフォアは、酸素非感受性ルモフォアであり、すなわち、その発光は、酸素の存在下で著しく消光されることはない。第2のルモフォアは、一般に、第1のルモフォアと実質的に同じスペクトル領域でUV及び/又はUV可視光を吸収する。このことは、単一の励起源を使用できることからで有利である。しかし、第1のルモフォアと第2のルモフォアが実質的に同じスペクトル領域において吸収しない場合には、複数の励起源を使用することができる。第2のルモフォアは、第1のルモフォアとは実質的に異なるスペクトル領域において発光する。「実質的に」であることによって、それぞれのルモフォアの最大発光は、色の変化が観察されることを可能とするために、少なくとも~20nm異なるべきであることを意味する。第2のルモフォアの発光もまた、pH及び温度に対して非感受性である。
【0024】
一実施形態では、第2のルモフォアは、クマリン6、クマリン153、ローダミン6G、7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)、及びキニーネ硫酸塩から選択される。
【0025】
センサー剤は、酸素感受性ルモフォアの発光の優先的かつ定量的な減少(消光)により、センサー剤が曝露される大気又は局所環境中の酸素濃度の変化に応答して色を変化する。有利なことに、色の変化は可逆的であり、局所的な酸素濃度の増加又は減少に沿って、応答範囲の順方向及び逆方向に色の変化を進行させることができる。これにより、センサー剤を商業的な応用に広く適用することができる。
【0026】
本発明の実施形態では、第1のルモフォアは、赤色発光のルモフォアであり、第2のルモフォアは、青色発光、緑色発光、又はオレンジ色発光のルモフォアである。適切な実施例には、第1のルモフォアとしてのPtTFPP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのクマリン6(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPtTFPP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(クマリン153、C153)(青色/緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPtOEP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(クマリン153、C153)(青色/緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPtOEP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPtOEP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのローダミン6G(オレンジ色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての[Ru(dpp)3]2+(オレンジ色から赤色の発光)と第2のルモフォアとしてのクマリン6(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての[Ru(dpp)3]2+(オレンジ色から赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのクマリン153(青色/緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての[Ru(dpp)3]2+(オレンジ色から赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのローダミン6G(オレンジ色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのクマリン6(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのクマリン153(青色/緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのBBD(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての白金メソ-テトラフェニルポルフィリン(PtTPP)(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのローダミン6G(オレンジ色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPdTFPP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしてのクマリン6(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPdTFPP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(クマリン153、C153)(青色/緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしての[Ru(dpp)3]2+(オレンジ色から赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPtTFPP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)(緑色の発光)、又は、第1のルモフォアとしてのPdTFPP(赤色の発光)及び第2のルモフォアとしての7-ベンジルアミノ-4-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(BBD)である。
【0027】
本発明の一実施形態において、第1のルモフォアは[Ru(dpp)3]2+であり、第2のルモフォアはC153である。第1のルモフォアが[Ru(dpp)3]2+であり第2のルモフォアがC153である場合、第1のルモフォア(すなわち、ルモフォア1)と第2のルモフォア(すなわち、ルモフォア2)の比は、ある実施形態において、0.6:1から1:1であり得る。
【0028】
本発明の一実施形態において、第1のルモフォアはPtTFPPであり、第2のルモフォアはC6である。第1のルモフォアがPtTFPPであり第2のルモフォアがC6である場合、第1のルモフォア(すなわち、ルモフォア1)と第2のルモフォア(すなわち、ルモフォア2)の比は、ある実施形態において、1:1から0.5:1であり得る。
【0029】
以下により詳細に説明するように、対象の酸素濃度範囲の色の変化を示すために、ルモフォア対を選択することができる。これにより、比色センサーを対象の適用に合わせて調整することができる。
【0030】
ルモフォアのそれぞれの発光は、一般に、pH及び温度に対して非感受性であり、センサー剤は、幅広い様々な環境に対して直接適用することができ、比色変化は、酸素濃度の変化に直接起因することが保証される。
【0031】
第1のルモフォア及び第2のルモフォアは、規定された化学量論比で、ポリマーマトリックス内に含まれる。一実施形態において、ルモフォア1:ルモフォア2の比は、1:4から2:1である。
【0032】
本発明の一実施形態において、剤は、第3のルモフォアをさらに含む。第3のルモフォアをさらに含むことにより、色の応答をさらに調整することができる。例えば、センサー剤が、同じ領域内で部分的に重複する発光を有する2つのルモフォアを含む場合、発光色は、より広いO2濃度範囲で維持することができ、これは、色の変化が、より狭いO2濃度範囲でのみ現れることを意味する。これにより、センサーを、対象のO2濃度範囲により具体的に標的化させることができる。
【0033】
第3の(又はそれ以上の)ルモフォアを含むことにより、ルモフォアは、集光器として機能すること、すなわち、UV及び/又はUV可視光を強く吸収し、次に、過剰なエネルギーを他のルモフォアの一方又は両方に放射的又は非放射的に伝達することも可能になる。
【0034】
一実施形態では、第3のルモフォアは、センサー剤に含まれており、ルモフォア1:ルモフォア2:ルモフォア3の化学量論比は、1:2~3:6~20の範囲とすることができる。
【0035】
本発明の比色剤において、少なくとも2つのルモフォアが、ポリマーマトリックス中に分散されている。本発明の比色剤において、ルモフォアは、ポリマーマトリックス中に直接分散されており、ポリマーマトリックス中に分散される前に、カプセル化又は別の方法で(例えば、ゲル中に)埋め込まれていない。ルモフォアは、マイクロビーズの表面上に組み込まれていない。ルモフォアは、メソポーラス構造内に組み込まれていない。したがって、例えば、センサーラベル又はラミネートフィルムに組み込まれた場合、ルモフォアは、単一のルモフォアのポリマー層内に分散される。有利なことに、この構成は、発光消光、エネルギー移動、及び以前にキャストされた層の再溶解などの多くから生じる可能性がある、ルモフォアが別々のポリマー層に分散される多層コーティングの調製に関する再現性の問題を排除する。したがって、少なくとも2つのルモフォアが、好ましくはポリマーマトリックス中に均一に分散されている。
【0036】
ポリマーは、ポリスチレン、ポリビニル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリレート、シェラック、ロジン、ロジンエステル、セルロース及びセルロース誘導体、並びにそれらの混合物から選択し得る。
【0037】
ポリマーは、例えば、セルロース系ポリマー又はポリマーであり得る。適切なセルロース系ポリマーには、エチルセルロース(EC)、酢酸セルロース(CA)、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、ニトロセルロース(NC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
一実施形態において、ポリマーは、1つ又は複数のEC、CAP又はCABである。
【0039】
比色剤は、インク、具体的には印刷可能なインクの形態であり得る。
【0040】
本明細書をとおして、用語「インク」、適切な印刷技術を使用して印刷することができる流体又は粘性物質を意味する。適切な印刷技術には、例えば、ピエゾ系インクジェット又はサーマルインクジェットなどのインクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセットリソグラフィー、スクリーン印刷及び凸版印刷が含まれる。一実施形態では、印刷は、インクジェット印刷、フレキソ印刷、又はグラビア印刷によって行われる。
【0041】
インクは、ポリマーマトリックス中に分散された第1のルモフォア及び第2のルモフォアから構成され、任意に、調製プロセスで使用される任意の溶媒と共に構成され得る。あるいは、インクは、さらにルモフォア及び/又は追加の成分を含み得る。したがって、ポリマー及び任意の溶媒は、印刷を容易にするためのルモフォアの媒体として作用する。
【0042】
インクの剤は、1つ又は複数の印刷用添加物をさらに含み得る。そのような添加物には、例えば、当業者に良く知られているようなレオロジー調整剤、分散剤、湿潤剤、可塑剤などが含まれる。
【0043】
使用される印刷プロセスに対する互換性を保証するために、すなわち、印刷の高スループットを可能にして、インクにじみを最小限にし、インクジェット印刷の場合には、ノズル詰まりを最小に抑えるために、インクのレオロジー特性は制御されていてもよい。フレキソ印刷及びグラビア印刷インクの場合、インク粘度は、一般に、20~80mPa・sの範囲内に制御され、一方、インクジェット印刷の場合、インクの粘度は、通常2~10mPa・sの範囲内に制御される。理想的な液滴調合と連続的な噴射を保証し、ノズルの目詰まりを防ぐために適切な範囲内にあるレイノルズ(Re)、ウェーバー(We)及びオーネゾルゲ(Oh=We1/2/Re)数を示す配合(50≦Re≦500;20≦We≦300;0.1≦Oh≦1)を得て、印刷品質の低下及び噴射の中断につながるノズルの目詰まりと「スキニング」効果を防ぐために、インク配合のさらなる特性を制御することができる。
【0044】
本発明はまた、雰囲気中の酸素含有量の測定方法に関する。この方法は、上記の比色センサー剤を雰囲気に曝露することと、UV又はUV可視励起源を剤に当てることと、剤の色を観察することを含む。
【0045】
当業者によって一般的に理解されるように、UV領域は190nmから400nmであり、可視領域は400nmから700nmである。
【0046】
一実施形態において、励起波長は340nmから465nmである。
【0047】
有利なことに、色の変化は、UV/UV可視光源を剤に当てた場合にのみ肉眼で見ることができる。これは、センサー剤は、例えば、食品包装内に隠すことができることを意味し、これは、消費者向製品を供給するときに有益である。
【0048】
別の利点として、色の変化は非常に迅速に生じ、通常はMAPが曝露されてから数秒以内に生じる。これにより、センサー剤は、リアルタイムの監視に使用することができる。
【0049】
酸素含有量を測定するために、剤の色を参照色と比較してもよい。例えば、剤の色を視覚的に観察して、特定のセンサー剤の校正カラーチャートと比較することができ、これにより、雰囲気中の酸素濃度についての迅速で半定量的な結果を提供することができる。
【0050】
あるいは、完全に定量的な分析は、蛍光分光法を使用して達成することができる。
【0051】
本発明はまた、上記のセンサー剤を使用して雰囲気の酸素濃度を評価する自動化方法に関する。例えば、本発明の一実施形態では、センサー剤の色特徴のデジタル画像を得るために、カメラを使用することができる。次に、デジタル画像を処理し、色を数値に変換し、それを予め校正されたカラーチャートと自動的に相関させて酸素含有量を得ることができる。ソフトウェアは、(例えば、製品や食品の包装上に)センサーを配置し、特定のセンサー剤についての経験的校正ファイルに対して画像が処理され、酸素割合が帰属される前に、画像における光学的変動(反射、散乱など)を識別及び除去するように設計することができる。このアプローチにより、複数のサンプル、例えば組立ラインの各包装製品のリアルタイプ、高スループット、及びリモート分析が可能になる。次いで、このアプローチに従って測定される酸素の割合を用いて、所定の仕様の範囲外にある包装を除去することができる。例えば、組立ラインには、そのような排除された包装をラインから除去できる、連動した除去機構を組み込むことができ、それによって、それらの製品がサプライチェーンに下がっていくことを防止することができる。
【0052】
有利なことに、本発明のセンサー剤は、色の変化が視覚的に観察されることを可能にする、すなわち、色の変化は、UV/UV可視光に一旦曝露されると、肉眼で見ることができる。これにより、(分光計などの)高額な外部検出装置が不要になり、一般人が検出を行うことができるようになる(つまり、特定の技術スキルは必要とされない)。さらなる利点は、標準的な視覚システムを使用して検出を実行できることである。多くの場合、これらは、例えば、ラベル検査、損傷検査、製品の色などに使用するために生産ラインに既に存在しており、それによって、これらの場合に高額な検出システムを設定する必要性を回避する。使用されているルモフォア対(又はルモフォアトリオなど)に特有の校正曲線又はカラーチャートのデータベースと色を比較することにより、定量的な測定を行うことができる。
【0053】
しかし、色の変化は、必要に応じて分光分析によって監視し、完全な定量分析を行ってもよい。本発明の実施形態はまた、色の変化を検出する電子的手段に関連していてもよい、すなわち、ソフトウェアの使用を介して、「アプリ」へとコード化することができ、雰囲気の色を検出し、予めプログラムされたデータベースと比較して、包装品の鮮度若しくは安全性、又は包装の完全性についての結果を得ることができる。このような結果は、バイナリ(すなわち、新鮮=はい/いいえ、安全=はい/いいえ)であってもよく、包装製品の鮮度を示す定量的な値(例えば、販売人に、「在庫を平常どおり維持する」、「製品価格を下げる」、「廃棄製品」などを示す))であってもよい。
【0054】
上述したように、センサーは、食品包装雰囲気の環境での使用に特に適しているが、これに特に限定されず、医薬品の保管、使い捨ての滅菌医療製品の包装、美術品及び文化的作品の保護、又は電子部品の包装などの酸素濃度が監視される他の領域において適応性があり得る。これらへの適用に対しては、無酸素、又は制御された酸素環境(すなわち、0%のO2)が好ましい。さらに、本発明の発光系比色センサー剤は、予備混合ガスボンベなどの、制御された酸素濃度(~0~100%)が必要とされる、ガス供給製品の監視に適用することができる。
【0055】
上記のように、比色センサーは、適用する対象に合わせて調整することができる、すなわち、ルモフォアの選択を制御することによって、対象のO2濃度範囲内で比色応答を得ることができる。一実施形態において、比色センサー剤は、O2濃度が0~20%の範囲(果物、野菜、及び調理済の肉、ナッツ、チーズなどの酸素感受性の食品に適用することができる)、又は、O2濃度が20~80%の範囲(高いO2MAPを必要とする肉製品及びその他の食品に適用できる)にわたる色変化を提供するように構成される。適用する対象に基づいて、他の定義された濃度範囲に調整することができる。
【0056】
本発明の一態様によれば、比色センサーを含むラミネートフィルム又はラベルの調製方法が提供され、この方法は、センサー剤を基材フィルム上に印刷することを含む。一実施形態において、基材フィルムはポリマー基材フィルムである。
【0057】
基材フィルムは、それ自体がラミネートフィルムであってもよく、複数の層を含んでいてもよく、又は、センサー印刷されたラミネート又は単層フィルムを形成するためにセンサー剤で印刷された単層フィルムであってもよい。
【0058】
フィルム上のセンサーインクの塗れ性を向上させるために、ポリマー基材は、印刷の前に表面処理されてもよい。このような表面処理の工程には、例えば、コロナ放電、火炎活性、低圧酸素プラズマ、レーザービーム、集束イオンビーム又は電子ビーム処理、並びに有機又は無機コーティングの適用による化学処理が含まれる。
【0059】
包装材料へのセンサーインク剤の一体化は、本発明の重要な構成要素であり、制御又は調整された雰囲気内の酸素濃度のその場での検出及び/又は監視のために、制御された雰囲気の包装内にセンサーを提供することを可能にする。したがって、ポリマー基材は、MAP食品のトレイを密封するために使用される従来の/市販のラミネートポリマーフィルム、又は真空包装された食品トレイ又は電子/医療製品の包装に通常適用されるプラスチックフィルムコーティングと互換性がある必要がある。センサーは、積層ポリマーフィルム又はプラスチックフィルムのいずれかに印刷することができる。
【0060】
ポリマー基材フィルムは、ラミネートフィルムであり得る。一実施形態において、ポリマー基材フィルムは、高いO2透過率を有する。適切な例には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)及びポリカーボネート(PC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
あるいは、センサーインク剤は、低い、又は非常に低いO2透過率を有するポリマーフィルム基材上に逆印刷され得る。低い、又は非常に低いO2透過率を有する適切なポリマーフィルム基材には、ナイロン、キャストナイロン等を含むポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエステル(PET)、及び配向ポリエステル(OPET)が含まれる。低い、又は非常に低いO2透過層は、包装内の調整雰囲気を保持することができる。
【0062】
高いO2透過率を有するポリマー基材フィルムがセンサーインク剤で印刷されると、印刷されたポリマー基材フィルムは、次に、蓋フィルム、好ましくはPA又はPETなどのガス不透過性フィルムの蓋フィルムに接着され、その結果、センサーインクはポリマー基材フィルムと蓋フィルムの間に挟まれる。ポリマー基材フィルムは、表面エネルギーが低いプラスチックを接着可能な2成分のアクリル系接着剤又はポリウレタン接着剤などの適切な接着剤を使用して蓋フィルムに接着することができるが、これは、接着剤が表面を接着する役割を果たし、食品の使用に適合するものであれば、特に限定されない。接着剤は、ラミネートする層の端部の周りに堆積させて、所定の位置に接着することができ、すなわち、接着剤は、印刷されたセンサーや、層1と層2の間の界面の大部分を覆っていない。あるいは、接着剤を、層全体に塗布することができる、すなわち、印刷されたセンサー及びポリマー基材フィルムを覆うことができる。この場合、接着剤は、ガス透過性接着剤でなければならない。
【0063】
任意に、印刷されたポリマー基材フィルムは、さらに追加のポリマー層によって決められた位置で保持又は支持されていてもよい。
【0064】
この技術を使用できる適切な市販の蓋フィルムには、例えば、ポリアミド(PA)/ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエステル(PET)/ポリエチレン(PE)フィルム、ポリエステル(PET)/エチレンビニルアルコール(EVOH)/ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)/エチレンビニルアルコール(EVOH)/ポリエチレン(PE)フィルム、及び、ポリプロピレン(PP)/ポリアミド(PA)/ポリエチレン(PE)フィルムが含まれ得る。
【0065】
このプロセスを
図1に模式的に示し、この図は、印刷されたポリマー基材フィルム(2)が表向きに適用された、すなわち、その結果、印刷されたセンサー(2a)が蓋フィルム(1)とポリマー基材フィルム(2)との間に挟まれるようにした、市販のガス不透過性蓋フィルム(1)を示す。示される実施形態では、印刷されたポリマー基材フィルム(2)は、層の端の周りに堆積された接着剤の層(3)を使用してフィルム(1)に接着される。
【0066】
あるいは、ポリマー基材フィルム(高いO2透過率又は低いO2透過率のいずれかを有する)がセンサーインク剤で印刷されると、印刷されたポリマー基材フィルムは、それから、センサーインクが層の間に挟まれるようにして、第2のポリマー層でラミネートされる。ラミネート構造は、次に、必要に応じて、例えばヒートシーリングによって、調製雰囲気包装に適用することができる。一実施形態において、第2のポリマー層は、印刷されたポリマー基材フィルムに対して相補的なO2透過特性を有する(すなわち、逆印刷が実行された場合には、O2透過層/高O2透過率ポリマーは、O2バリア層/低O2透過率と対をなし、逆もまた同様である)。その場で、高透過率のポリマー層は、調整雰囲気の隣に配置され、ガス不透過層は、包装の内側(すなわち、調整雰囲気)と外側(すなわち、包装の外側の雰囲気条件)との間のO2交換を防止するバリアとして機能する。ラミネート工程は、薄い接着層(一実施形態では、溶媒系又は無溶媒)をラミネート形成層(一実施形態では、センサーが印刷されていない層)の1つに適用することを含んでいてもよい。ラミネートを、それから、室温(~20℃)で8~30日間保持して、接着剤を完全に硬化させる。一般に、完全な硬化を保証し、接着剤成分又は溶剤が食品に移行する可能性を制限するためには、14~21日間の範囲が好ましい。一実施形態において、ラミネートが加熱された環境で保たれる場合、硬化時間を早くすることができる(例えば、ラミネートが~35~50℃の温度で保たれる場合、硬化時間を5~7日の範囲に短縮することができる)。
【0067】
あるいは、ラミネート工程は、接着剤の使用のかわりに、又は、接着剤の使用と並行して、熱処理の適用を介して実行してもよい。
【0068】
本発明の一実施形態では、ラベルを形成するために、センサー剤は、ガス透過性の基材上に印刷される。ラベルは、自己接着性であるか、又は接着剤を使用して(例えば、適切な蓋フィルムの下側に)貼り付けられてもよい。基材は、例えば、透明なPE又はPPラベルであり得る。
【0069】
本発明の一実施形態において、本発明のセンサー剤で印刷されたラベルは、製品包装の内側、例えば、市販の蓋フィルムの下に組み込むことができ、例えば、工業用のラベル塗布器を使用して適用される。
【0070】
本発明はまた、上記の方法に従って調製されたラミネート又はマルチラミネートフィルムに関し、このフィルムは、比色酸素センサーを含む。
【0071】
一実施形態において、本発明は、上記で詳細に説明した比色酸素センサーを含むラミネートフィルムに関する。
【0072】
有利なことに、センサー剤は、ラミネートフィルム又はラベル上に印刷された場合、肉眼で見ることはできない。これは、例えば、組立ラインで包装の完全性を監視する目的で使用される、一体化されたセンサー又は組み込まれたセンサーは、消費者には見えないことを意味する。
【0073】
本発明はまた、制御された雰囲気包装中の酸素含有量を監視するためのシステムに関する。このシステムは、上記で詳細に説明した比色酸素センサー、UV又はUV可視光源、及び画像読取装置リーダーを含む、ラミネート包装フィルム又はラベルを含み得る。
【0074】
ここで、本発明は、例示にすぎない以下の例を参照することによって説明される。
【実施例】
【0075】
実施例1:センサー剤の調合
1.1 白金(II)オクタエチルポルフィリン:2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン
PtOEP:C153(1:1の化学量論比)
10gの乾燥エチルセルロースポリマーを、トルエン:エタノールの80:20(v/v)混合物(トルエン84.7ml、エタノール21.2ml)に添加し、一晩撹拌してポリマーを完全に溶解した。白金(II)オクタエチルポルフィリン(PtOEP、ルモフォア1)36.90mgと、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン(C153、ルモフォア2)14.97mgとを、粉末の形で溶液に連続的に加え、完全な均質化が達成され、ルモフォアの沈降が観察されなくなるまで溶液を撹拌した。それから、以下の実施例2に示すように、センサー剤の色の変化の応答を測定した。
【0076】
上記のプロトコルでは、ルモフォアは乾燥粉末の形態で溶液に添加したが、代わりに、ルモフォアは、マイクロピペットによって、ポリマー溶液に添加する前に、溶媒(PtOEP、[Ru(dpp)3]2+、[Ru(bpy)3]2+、PtTFPP及びPdTFPPに対しては、テトラヒドロフラン、トルエン又はエタノール、C6、C153、R6G及びBBDに対しては、テトラヒドロフラン又はエタノール)に溶解することができる。この実施態様では、溶液中の高いルモフォア濃度(>2mM)は、ポリマー溶液のさらなる又は最小の(≦2%)の希釈が生じないことを確実にする。この調合方法は、総重量≦20g以下の剤に適している。
【0077】
1.2 さらなる剤
実施例1.1に記載のPtTFPP:C6(1:1の化学量論比)、PtTFPP:BBD(1:3の化学量論比)、PtOEP:C153(1.25:1の化学量論比)、PtOEP:BBD(1:3の化学量論比)、[Ru(dpp)3]2+:C153(1:1)、[Ru(dpp)3
2+:BBD(1:3の化学量論比)、PdTFPP:BBD(1:1の化学量論比)、PtTPP:C6(1:1の化学量論比)、及びPtOEP:R6G(1:1)を含むさらなる剤を調合した。さらに、2種類の赤色を発光する酸素感受性ルモフォアとしてのPtOEP及びルテニウム(II)2,2’-ビピリジン錯体[Ru(bpy)3]2+と、単一の緑色を発光する酸素感受性ルモフォアとしてのC6を、上記の手順に従って調合し、ルモフォアを1:3:6(PtOEP:C6:[Ru(bpy)3]2+)の比で混合した。
【0078】
1.3 白金(II)オクタエチルポルフィリン:2,3,6,7-テトラヒドロ-9-トリフルオロメチル-1H,5H-キノリジノ(9,1-gh)クマリン
酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)中及び酢酸酪酸セルロース(CAB)中のPtOEP:C153(1:1の化学量論比)
センサーに応答に対するポリマーマトリックスの影響を評価するために、1gのポリマー用に調整された実施例1.1に概説された手順に従って、CAP中及びCAB中で、PtOEP:C153(1:1)センサー剤を調製した。
【0079】
実施例2:色応答の測定
酸素濃度の変化に対するセンサー剤の色応答を次のように測定した。
【0080】
予め切断されたガラススライドの上に様々な剤をスピンコーティングすることによってセンサーを調製した。コーティングされた層の測定された厚さは1.1から1.6μmであった。次に、制御されたガス雰囲気の下、使い捨てのポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)のキュベット又はセルの中に、センサーがコーティングされたガラスを配置した。テフロン系サンプルホルダーを使用して、センサーがコーティングされたガラスを365nmのLED励起光路内で45°の固定角度で保持して、測定される各センサーについて、サンプル位置が同じになるようにした。キュベット内の雰囲気の調整は、コンピューター制御されたガス混合器を使用して、所望の比(0~100%のO2、これは100~0%のN2に相当する)でO2ガスとN2ガスを混合することによって達成した。サンプルホルダーの頂上にある2つの穴は、ガス混合の流入及び流出用とした。ぼやけを取り除くために、三脚に取り付けた露光時間が1~4秒のコンパクトデジタルカメラを使用して、写真を撮影した。
【0081】
これらの測定結果を
図2に示し、それぞれ、(i)PtTFPP:C6(1:1)、(ii)PtTFPP:BBD(1:3)、(iii)PtOEP:C153(1:1)、(iv)PtOEP:C153(1.25:1)、(v)PtOEP:BBD(1:3)、(vi)[Ru(dpp)
3]
2+:C153(1:1)、(vii)[Ru(dpp)
3]
2+:BBD(1:3)、及び(viii)PtOEP:C6:[Ru(bpy)
3]
2+(1:3:6)である。
【0082】
これらの結果から、第1のルモフォア対PtTFPP:C6(1:1)は、0~21%のO2を含む室温の調製雰囲気中で、赤味を帯びたピンク色から緑色への色の変化を生じさせることが見出された。裸眼で見える藤色から緑色への顕著な変化が2から10%の間で観察され、これは、この特定のセンサーが、通常≦5%のО2の調整雰囲気下で包装される新鮮な果物及び野菜のMAPのための候補物質であることを特定している。
【0083】
PtTFPP:BBD(1:3)のセンサー剤は、0~80%のO2を含む室温の調整雰囲気中で、赤みを帯びたオレンジ色から、黄色、梨色、緑色への4段階の色変化を生じた。低いpO2(例えば、0~5%の間で(赤みを帯びたオレンジ色からサーモン色)、5~21%の間で(サーモン色から梨の緑色))で、裸眼で見える顕著な色変化が観察され、これは、この特定のルモフォアの組み合わせが、真空包装された製品中(すなわち、0%のO2)の包装の一体性の指標としても、生鮮食品用としても適していることを示している。
【0084】
PtOEP:C153(1:1)センサー剤は、0~80%のO2を含む室温の調整雰囲気中で、赤色から紫色、スミレ色、青色への色の変化を生じた。紫色から青色への目立った色の変化が20から80%の間のO2で観察された。この酸素範囲は、生肉(例えば、牛肉)など、消費者の食欲をそそる色を保持するために、O2が豊富な雰囲気(70~80%のO2)の下で包装される製品用のMAPに関連する。
【0085】
PtOEP:C153(1.25:1)のセンサー剤は、20、40及び80%のO2において、赤色から紫色、青色への色変化を示した。この剤は、応答が迅速であるため有利であり、他の剤と比較して、短い期間でMAP中の潜在的な漏れの視覚的検出を可能にする。
【0086】
PtOEP:BBD(1:3)のセンサー剤は、大気レベル(21%のО2)で黄色になる前に、0~10%のO2間で、赤色からオレンジ色への色変化を示し、それから、より高いpO2(>21%)で緑色を示した。この酸素範囲は、生鮮食品及びソーセージなどの酸素感受性MAP食品の完全性の監視に関連する。
【0087】
PtOEP:C6:[Ru(bpy)3]2+(1:3:6)のセンサー剤は、0~80%のO2を含む室温の調整雰囲気中で、赤色からオレンジ色、薄黄色、緑色への色変化を生じた。21%のO2で緑かがった薄黄色に再び色が変化する前に、0から5%のO2の間で、裸眼で見える赤色からオレンジ色への顕著な色の変化が観察された。それから、酸素レベルを80%に上げることで色変化を完了し、その際、センサーは緑色に見える。色変化の範囲は、この特定のセンサー剤を、O2を含まないか又は含まれるO2が低い雰囲気下で包装された食品のMAP、及び、新鮮な生の肉製品などのO2の高いレベルが包装内で要求される食品のMAPの潜在的な候補物質として特定する可能性がある。
【0088】
[Ru(dpp)3]2+:C153(1:1)のセンサー剤は、0~80%のO2を含む室温の調整雰囲気に対して、薄いオレンジ色から青みがかった灰色への色の変化を生じた。[Ru(dpp)3]2+の酸素に対する低い感度は、新鮮な生肉製品などの、包装に高レベルのO2が必要とされる食品のMAPに適した剤を調合するために用いることができる。
【0089】
[Ru(dpp)3]2+:BBD(1:3)のセンサー剤は、0~21%の間のO2で、明るいオレンジ色から黄色への色変化を生じた。より高いpO2では、色は薄い緑色がかった黄色に変化する。この酸素範囲は、真空包装製品(0~20%のO2)又は酸素感受性MAP食品の完全性の監視に関連する。
【0090】
PdTFPP:BBD(1:1)のセンサー剤は、淡い赤色から薄黄色への色変化を示す。色変化の明るさが比較的少ないにもかかわらず、この剤は、酸素に対する感受性が高く、1~2%程度の低い酸素レベルに応答する。この高い感受性は、酸素感受性の真空包装製品及び調理済み肉などのMAP食品の双方に特に適している。
【0091】
PtTPP:C6(1:1)のセンサー剤は、0~20%の間のO2で、明るいオレンジ色から緑色への色の変化を示す。この特定の酸素範囲におけるオレンジ色から黄色、緑色への3色変化は、真空包装製品(0から20%のO2)、酸素感受性MAP食品、及び生鮮食品のMAPの完全性の監視に関連する。
【0092】
PtOEP:R6G(1:1)のセンサー剤は、オレンジ色がより青白くなる前に、0~20%の間のO2で明るい赤色から濃いオレンジ色への色の変化を示す。この酸素濃度範囲は、真空包装製品(0~20%のO2)、又は酸素感受性のMAP食品の完全性の監視に関連する。
【0093】
PtOEP:C153(1:1)のCAPセンサー剤は、0~80%のO2を含む室温での調整雰囲気に対して、赤色からピンク色、紫色、スミレ色への色の変化を示し、PtOEP:C153(1:1)のCABセンサー剤は、同じ条件下で、ピンク色から紫色、スミレ色、ターコイズ色への色変化を示す(図示せず)。両方の剤について、20から80%の間のO2で目立った色変化が観察された。これらの結果を下記の表1にまとめる。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
表1:色の変化が観察されたO2濃度
【0098】
実施例3:再現性、安定性及び時間応答
実施例1で調製したPtOEP:C153(1:1)のセンサーインクの再現性、安定性、及び時間応答を詳細に調べた。溶着技術の再現性、データ測定及び剤の調製は、全て酸素感受性を測定することによって評価した。酸素感度は、可視領域及び近赤外領域の全スペクトルが得られる分光光度計を使用して、pO2濃度の関数として、298Kで365又は385nmのLED励起時のセンサー剤の発光を測定することによって決定した。フィルム感度(1/S50で表される)はpO2の逆数に対応し、センサーフィルム(サンプルサイズ>10)の初期発光強度の50%が消光する。
【0099】
良好な再現性は、期待される感度の範囲内ですべてのセンサーが感度を発揮することで得られた(Douglas及びEaton(P. Douglas及びK. Eaton「薄膜酸素センサーの特性、ポリマーフィルム中のPtオクタエチルポルフィリン及びPdオクタエチルポルフィリン、センサーとアクチュエーターB 2002,82,200‐208」。
【0100】
センサー剤は、剤としても印刷されたフィルムとしても、優れた長期安定性を示した。ガラス上にコーティング(1.1~1.6μm)された4つのPtOEP/C153(1:1)のECセンサーを、5か月にわたり、一定間隔で測定した。5か月の期間(0.096~0.106±0.015Torr-1)で測定した各サンプルの平均感度は、予想される感度の範囲内であった。
【0101】
完全性の指標として適用されるために、開発されたセンサーは、包装内の酸素レベルの変化にほぼ即座に応答することが期待され、したがって、リアルタイムの品質管理及び包装の損傷/漏れ、又は包装の充填に使用されるガス混合物の潜在的な問題の特定が可能になる。異なる酸素透過性を有するプラスチックフィルムに埋め込まれているかどうかにかかわらず、局所的な雰囲気の調整に対するセンサーの色変化の応答時間は、すべて秒から分のタイムスケールであった。これらの実験は、より小さい量(4.5cm3のセルに対して一般のMAP生肉包装は約1365cm3)で実施されたが、本発明のセンサーは、意図された商業的使用のための現実的な時間スケール内で包装内の潜在的な漏れの視覚的検出を可能にする。
【0102】
実施例4:ポリマーフィルム基材上へのセンサーインクの堆積
実施例1に従って調製した比色センサー剤を、インクジェット、フレキソ印刷及びグラビア印刷を使用して、異なるポリマー基材(PE、PET及びPA)に印刷し、実施例2と同じ方法で、それらの酸素濃度の応答を調べた。インクジェット印刷については、ポリマーの重量%を10%から~1~2.5重量%に減少させることによって、センサー剤の粘度を10mPas未満に調整した)。フレキソ印刷及びグラビア印刷に対しては、高い粘度を使用した。剤の粘度は、主に、使用するポリマーマトリックスの重量に影響され、フレキソ印刷に対しては、~10~12重量%ポリマーが有益であり、グラビア印刷に対しては、~9~10重量%のポリマーが有益である。
【0103】
印刷されたセンサー剤はすべて、酸素濃度の関数として予想される色変化を示し、センサー剤が、機能性を失うことなくポリマーフィルム上に好適に印刷されたことを示している。
【0104】
実施例5:埋め込まれた比色センサーを含むラミネートフィルムの調製
200/12アニロックスロールを備えたフレキソ印刷用ハンドプルーファーを使用して、市販のPETフィルム(A4サイズ)上にPtOEP:C153(1:1)の比色センサーインク剤を印刷した。表面処理(例えば、コロナ又はプラズマ放電、化学的コーティング)を行ったPET基材及び未処理のPET基材の両方について試験を行ったが、どちらの場合にも、センサー応答又はインクの付着の違いは観察されなかった。
【0105】
これとは別に、無溶剤プロセスを使用して、イソシアネート系接着剤をPEフィルムにスプレーした。次に、無溶媒プロセスを使用して、PETシートをPEフィルム上にラミネートした。要するに、印刷されたPETを、2成分のイソシアネート/ポリオール(ポリウレタン)接着剤の薄層(~2μm)でコーティングされたPEフィルムと接触させた。次に、ラミネートサンプルを室温で8日間放置して、接着剤の硬化が完了する(又は完了に近い)ようにした。次に、酸素濃度の関数としてのラミネートの応答を以下のように評価した。ラミネートのガス透過性層(すなわち、PE層)を上に向けて、ペトリ皿様の箱をラミネートの上に置いた。次に、箱内、及び箱内のみの酸素濃度を、ガス混合器(O2、N2混合物)を使用して、0から100%に調整した。このような設定において、箱で覆われていないラミネートは、通常の大気条件、すなわち21%のO2に曝露された。前述のように、検査システム又はHDカメラを使用して、UV照明下で画像を記録した。
【0106】
pO2変化の色応答は、非ラミネートサンプルで観察されたものと良好な相関関係を示した。
【0107】
実施例6:
実施例1で調製したPtOEP:C153(1:1)及びPtOEP:BBD(1:1、1:2及び1:3)の比色センサーインク剤を、市販の70μm厚の自己接着性PE基材(EZ‐PieceTMフィルム、EZP‐100、Excel Scientific)の非接着性側にスピンコーティングして、自己接着性のセンサーラベルを形成した。市販のラミネート蓋フィルムの内側(すなわち、食品と接触する側)にラベルを貼り付けた。
【0108】
実施例7:MAP(生の牛肉)への比色センサーの適用
実施例1で説明したようにしてPtOEP:C153(1:1)の比色センサー剤を調製し、前述のようにしてPEフィルム上に印刷した。要するに、印刷されたPEフィルムが、追加のPE層の適用によって、市販のPA/PE蓋フィルムラミネートのガス透過性側にシールされる前に、2成分のアクリル系接着剤をセンサーの周囲に塗布した。この方法によって、センサーは所定の位置に保持され、試験中、いつでも包装された肉と直接接触しないことが保証された。次に、埋め込まれた比色センサーを含むラミネートフィルムを使用して、80%のO2及び20%のCO2下で包装されたMAP生牛肉を密封した。
【0109】
2つの貯蔵寿命試験を4℃で12日にわたって実施し、この試験では、食品輸送中の偶発的な損傷、又は包装プロセス中の不適切な密封によるMAP漏れをシミュレーションするために、様々な方法で包装を意図的に損傷させた。包装に損傷がない対照サンプルを、すべての試験の参照として使用した。いずれの場合にも、定性的方法(写真)及び半定量的方法(RGB/CIE(x、y)色座標)の両方を使用して、センサー応答を時間の関数として監視した。
【0110】
16個のMAP包装を準備した。これらのうち、4個はコントロール又は参照サンプルとして損傷のないままにし(R1~R4)、4個は5×0.8mmの穴を形成して損傷させ(H1-1からH1-4)、4個は10×0.8mmの穴を形成して損傷させ(H2-1からH2-4)、4個は、MAP漏れの主な原因の1つである不十分な密封をシミュレーションするために使用し(L1からL4)、包装工程の前に、1cm幅に折り畳まれたテープをポリスチレントレイと蓋フィルムとの間に挿入した。これにより、トレイの周囲に沿って1cmのスペースが生じ、PEが適切にヒートシールされず、包装のヘッドスペースからの漏れ/ガス交換が遅くなった。挿入したテープは二重にし、後から簡単にとり外せるようにした(粘着側なし、紙よりも強力)。表2に、各サンプルについてシミュレーションした包装の損傷をまとめる。
【0111】
【0112】
表2:肉の保存試験中に調査されたサンプルのシミュレートされた包装の損傷。
【0113】
センサーが適切に機能することを確認するために、すなわち、この期間中に色の変化が観察されなかったことを確認することにより、最初に包装を4℃で4日間無傷に保った。不十分な密封をシミュレーションするために使用されたすべての4Lの包装が、既にこの時間枠で異なる色を示し、即時に応答を示した。残りの損傷していない12個の包装は青紫色を示し、酸素濃度に変化がなかったことを示している。
【0114】
試験4日目に、H1包装及びH2包装は、針を使用して、蓋フィルムにそれぞれ直径5×0.80mm及び10×0.80mmの穴を開けることによって損傷させた。H2包装(10個の穴)は、3時間未満で明確な色の変化を示し、その後、センサーの色応答は時間とともに強まり、残りの試験(7日間)にわたって一定に保たれた。H1包装では、穴の数が少ないほど、MAPが長期間にわたって失われ、センサーの色応答は、損傷後、8時間から24時間の間で明確に識別することができた。色応答は31時間後に最大の変化に達し、この時点でMAPが失われ、通常の雰囲気(~21%のO2、79%のN2)に完全に置き換わったことを示した。同じ期間中、損傷していない参照包装R1~R4のセンサーからは、色変化の応答は観察されなかった。試験で使用したすべてのセンサーが正常に機能していることを確認するために、10日目の終わりに、参照パッケージを含むすべてのパッケージを大きく損傷させた。すべてのセンサーは予想どおり、大気中の酸素レベルと同じである赤紫色の色特性を示した。
【0115】
【0116】
製品の品質を評価するためのセンサーの適合性を評価するために、80%のO2及び20%のN2の下で、MAP生牛肉を上記と同じ方法で包装した、すなわち、MAPガス混合物のCO2をN2で置換した。CO2をN2に置き換えると、細菌の増殖に対するCO2の抑制効果は失われ、細菌が増殖した結果、センサーの色がかなり変化する応答が観察された。好気性細菌の数が増加すると、より多くの酸素が消費され、包装内の酸素が枯渇してセンサーの応答が誘発される。
【0117】
実施例8:無酸素雰囲気及び低酸素雰囲気への比色センサーの適用
(i)PtTFPP:C6(1:1)を含む蓋フィルム、(ii)PtTFPP:BBD(1:3)を含む蓋フィルム、及び、iii)実施例1で調製したPtOEP:C153(1:1)を含むPE蓋フィルムを、上記実施例6で説明したようにして調製した。これらの蓋フィルムを使用して、100%のN2雰囲気下で、3つの空の包装を密封し、真空包装又は酸素感受性食品の雰囲気条件をシミュレーションした。
【0118】
包装を最初の4日間、室温で放置した後、直径0.8mmの針で蓋フィルムに5回、穴を開けた。損傷を受ける前に、これらのセンサーは、両方のPtTFPP系センサー(すなわち、PtTFPP:C6(1:1)及びPtTFPP:BBD(1:3))でオレンジ色/暗い桃色のいずれか、または、Pt:C 1531:1では濃いピンクレッド色を示した。これらの初期の色は、4日後も観察され、MAPに漏れがないことを示している。しかし、一旦穴が開けられると、速やかかつ著しい色の変化が観察され(<3時間)、C6系のセンサー剤及びBBD系のセンサー剤はそれぞれ緑色及び緑がかった黄色になり、一方で、C153系のセンサー剤はピンク色から紫色-マゼンダ色に変わった。センサーの色応答は、ほぼ瞬時に起こり、3時間以内で最初の応答が確認された後、残りの全試験期間中、色の強さは別として、それ以上の色の変化は観察されなかった。
【0119】
これらの結果は、PtTFPP:C6のセンサー、PtTFPP:BBDのセンサー、及びPtOEP:C153のセンサーが、低酸素レベルから極低酸素レベル及び/又は真空包装を必要とする食品のMAPの完全性の指標として使用できることを示している。実際に、室温で20%未満のO2を含む調整雰囲気中で、PtOEP:C153及びPtTFPP系システムでは、赤色から紫色、又は、オレンジ色から緑色又は緑がかった黄色への色の変化が生じ、この剤は、果物及び野菜の包装での使用、並びに、ナッツ、魚、チーズ及び調理済み肉などの真空包装又は酸素感受性食品に適している。
【0120】
実施例9:MAP(ソーセージ)への比色センサーの適用
実施例1で示したようにしてPtOEP:C153(1:1)のセンサー剤を調製し、実施例7に記載したようにしてPEフィルム上に印刷した。PE蓋フィルムを用いて、70%のN2及び30%のCO2の下で、MAPソーセージ(豚肉及びネギ)をポリスチレントレイに密封した。次に、包装を、食品製造又は包装工程の間、又は輸送及び流通の間のいずれかで起こり得る偶発的なMAP損失をシミュレーションするために、包装の蓋フィルムの一部に穴を開けることを含む、貯蔵寿命試験にかけた。
【0121】
16個のMAP包装を準備して、包装が4℃で21日間にわたって保たれる貯蔵寿命試験にかけた(温度の誤操作をシミュレーションするために20℃で保ったT1~T4を除く)。16個の包装のうち、4個はコントロール又は参照サンプルとして完全に無傷のまま放置し(R1~R4)、4個は6日目に5×0.8mmの針穴の形の損傷を受け(H1-1からH1-4)、4個は7日目に2×0.8mmの針穴の形の損傷を受け(H2-1からH2-4)、4個は試験の1日目から20℃に維持することによって、温度乱用に曝した(T-1からT-4)。
【0122】
【0123】
表3:ソーセージの保存試験中に調査されたサンプルのシミュレートされた包装の損傷
【0124】
最初の6日間に16個の包装すべてについて撮影された写真は、酸素がない場合に予想される応答に一般的な明るい赤色の発光のセンサーを示し、センサーが完全に機能し、意図しない損傷や不適切な密封によるMAPの損傷が発生しなかったことを示した。試験6日目に、H1包装は、蓋フィルムに直径5×0.80mmの穴を開けて損傷させた。次いで、H1包装を次の4時間で20分毎に画像化した。この期間中、R包装を参照として使用し、1時間毎に画像化し、この期間中に色の変化が生じなかったことを確認した。これらの画像から、損傷した包装は、損傷から1時間以内にわずかな色の変化を示し始め、1時間から2時間の間に一定の色の変化が観察されたことが明確に観察された。3時間後、色の変化はそれ以上は観察されず、これは、この短い時間にMAPが完全に失われ、この時点の酸素濃度は通常の大気条件で見られる酸素濃度と同じであることを示している。蓋フィルムに5個の針穴ではなく2個の針穴のみをに開けて、同様の試験をH2包装で繰り返した。予想どおり、色の変化はゆっくりであったが、明らかに検出可能な変化が4時間以内に観察され、これは、包装内の酸素濃度が増加していることを示す。損傷後24時間まではさらなる色の変化が観察されたが、その後の色の変化は認められなかった。T-1からT-4の包装では、包装の目視検査でソーセージが痛んでいるにもかかわらず、最初の7日間では、さらなる色変化は観察されなかった。これは、嫌気性条件下では微生物の増殖に酸素が関与しないためである。嫌気性呼吸の結果としてCO2が放出され、T包装内に圧力が蓄積されたため、7日目以降の信頼性の高い画像の記録が妨げられた。
【0125】
実施例10:魚肉(ホワイティング)の真空スキン包装への比色センサーの適用
PtOEP:C153(1:1)のセンサーを、以下のようにしてスキン包装食品のトレイの底に適用した。センサー剤を自己接着性のPE系ラベル(EZ-PierceTMフィルム、EZP-100、Excel Scientific)にスピンコーティングした。次に、ラベルを熱成形されたPET/PE下部トレイに、食品のできるだけ近くに配置してから、市販のトップウェブ/フィルムを使用して、嫌気性条件下で魚の切り身を密封し、トップウェブ/フィルムを加熱して柔らかくしてから包装を真空密封した。
【0126】
この手順を用いて18個の包装を準備した。センサー剤を組み込まずにさらに6個の包装を準備し、試験期間中の微生物学的試験に使用した。
【0127】
18個の包装のうち、10個は、コントロール又は参照サンプルとして、全体を通して損傷を受けていない(黒いトレイを備えたRB1-RB6、及び、透明なトレイを備えたRT1-RT4)。試験5日目に、4個の包装が、5×0.8mmの針穴(H1-1からH1-4)で上部のウェブ/フィルムに穴を開けることによって損傷され、4個の包装が、10×0.8mmの針穴(H2-1からH2-4)で上部のウェブ/フィルムに穴を開けることによって損傷され、少なくとも穴の一つは、センサーのすぐ近くに形成した。それから、試験過程(15日間)にわたって包装を画像化した。
【0128】
【0129】
表4:魚の真空スキン包装のシミュレートされた包装の損傷
【0130】
最初の4日間に18個の包装すべてで撮影された写真は、酸素が存在しない場合に予想される応答に一般的である明るい赤色を発光するセンサーを示し、これは、センサーが完全に機能し、意図しない損傷や不適切な密封によってスキン包装に酸素が入り込まなかったことを示す。試験5日目に、上記のように8個の包装が損傷を受けた。次に、損傷を受けた包装は、残りの期間中に画像化され、一方で、損傷を受けていない包装は、この期間中に色の変化が生じないことを保証するためのコントロール又は対照として使用した。透明な下部トレイは、UV照射下でわずかに蛍光を発するように見えるため、センサーで観察される全体的な色に影響を与えるにも関わらず、損傷した包装の色の変化は依然として明確に検出された。このようなタイプの包装(すなわち、ヘッドスペースが存在しないか、又は最小限の包装)で予想されたように、センサーの応答は、MAPサンプルよりも遅く、測定可能な色の変化は6時間後に初めて現れた。
しかし、その結果は、真空皮膚スキン包装におけるセンサー形成の明確な適用可能性を示した。
【0131】
本発明の発光系比色センサーは、酸素に対する高い感度を組み合わせ、発光消光によって誘発される色の変化を介して特定の酸素濃度に調整することができる。センサーを使用すると、誘発された比色変化のみに基づいて半定量的分析を行うことができると同時に、必要に応じて、レシオメトリック測定を使用して、完全に定量的な測定を行うことができる。センサーは、内部センサーキャリブレーションで事前にプログラムされたソフトウェア又はアプリを介して実行されるデジタル画像解析と一緒に使用して、センサー応答の高スループットの視覚化と評価を提供することができる。センサーの非破壊的な性質により、例えば、組立ライン上のすべての包装製品をその場で分析したり、サプライチェーン全体にわたって分析したりすることで、継続的な品質管理を行うことができる。
【0132】
本明細書に開示された全ての特徴(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)、及び/又はそのように開示された任意の方法又はプロセスの全ての工程は、そのような機能及び/又は工程が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示されている各特徴(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)は、特に明記しない限り、同じ、同等又は同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示される各機能は、同等又は類似の機能の一般的なシリーズの一例にすぎない。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されない。本発明は、本明細書に開示された特徴の任意の新規なもの、又は任意の新規の組み合わせ(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)、又はそのように開示された任意の方法又はプロセスの工程の任意の新規のもの、又は任意の新規の組み合わせに及ぶ。
【0133】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形へ、及び/又は単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、様々な単数形/複数形の順列を本明細書に明示的に記載することができる。
【0134】
一般的に、本明細書で、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「オープン」用語として意図されていることが当技術分野の人々によって理解される(例えば、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」などと解釈されるべきである。特定の数の導入された請求項の記載が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記述を紹介するための導入句「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」の使用を含み得る。ただし、そのような句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」によるクレームの記載の導入が、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。同じクレームには、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という導入句と、「a」又は「an」などの不定冠詞が含まれる(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」)、同じことが、クレームの記載を紹介するために使用され得る定冠詞の使用にも当てはまる。さらに、導入された請求項の特性の数が明示的に記載されている場合でも、当業者は、そのような記載が少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語なしの「2つの記述」は、少なくとも2つ、又は2つ以上の記述を意味する)。
【0135】
本開示の様々な実施形態が例示の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な修正ができることが理解される。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は、限定することを意図するものではなく、真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。