(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電気分解水を用いる毛髪のパーマ形成方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20240228BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20240228BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240228BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20240228BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/04
A61Q5/02
C02F1/461 A
(21)【出願番号】P 2022537797
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2020018438
(87)【国際公開番号】W WO2021125783
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0169040
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0176379
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518056140
【氏名又は名称】コングク ユニバーシティ インダストリアル コーオペレーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カン,サン モ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨン ジェ
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-043403(JP,A)
【文献】特開2000-139546(JP,A)
【文献】特開2017-190319(JP,A)
【文献】特開2010-090038(JP,A)
【文献】特表2018-523714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C02F 1/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
出力27W、9V、3Aの電解水器で原料水から電解水を調製する段階と、
(b)毛髪
を還元剤
で処理
する段階と、
(
c)
段階(b)の毛髪
を段階(a)で調製された前記電解水で処理する段階と、を含
み、
段階(c)の前記電解水は15℃-90℃の温度で0.7又は7のpHをもつ、毛髪のパーマ形成方法。
【請求項2】
段階(
b)の前記毛髪が、自然黒毛、金髪、脱色毛、縮毛及び褐色毛よりなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料水は、水道水又は蒸留水であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記
電解水が製造後30分以内に
段階(c)で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パーマがウェーブパーマ又はストレートパーマであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、毛髪のパーマ形成方法に係り、より具体的には、電気分解水を用いる毛髪のパーマ形成方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
現在のパーマ処理(perm process)過程には、2種類の製剤を使用する。一番目に使用される還元剤(reduction agent)には、チオグリコール酸(thioglycollic acid)やシステイン(cysteine)などの還元力のある成分が含まれている。これらの成分は、毛髪のシスチンを還元させてジスルフィド結合(disulfide bond)を分解する。このとき、システインは、主に非螺旋状中間フィラメント(non helical intermediate filament)のジスルフィド結合を分解し、チオグリコール酸は、中間フィラメント(intermediate filament)とマトリックスタンパク質(matrix protein)、或いはマトリックスタンパク質同士のジスルフィド結合を分解する。このような特性により、チオグリコール酸は、システインと比較してパーマ効率は高いものの、毛髪がもっと損傷する。
【0003】
二番目に使用される酸化剤(oxidation agent)は、毛髪の形状を物理的に固定させた後で処理すると、還元されたシステインを酸化させてジスルフィド結合を作り、毛髪の形状を固定させる。酸化剤には、酸化力のある成分、例えば臭素酸ナトリウム(sodium bromate)や過酸化水素などが含まれている。一般に、臭素酸ナトリウムよりも過酸化水素がさらに良いパーマ効率を示す。
【0004】
酸化剤として使用される過酸化水素は、毛髪に致命的な損傷を引き起こす。過酸化水素の処理時間が長いほど毛髪損傷が増加するが、毛髪損傷の指標として知られているシステイン酸(cysteic acid)の割合が増加することが報告された。このような不可逆的損傷により、損傷した毛髪は再びパーマ処理が困難である。
【0005】
また、過酸化水素は、皮膚では炎症反応を起こして皮膚紅斑などを誘発する。そして、過酸化水素がin vitro実験でDNA損傷を引き起こしたと報告された。特に、過酸化水素の分子は、小さくて無極性であるため、細胞膜を容易に通過することができるので、より大きな損傷を引き起こすおそれがあると知られている。そして、ラットを用いた動物実験で、過酸化水素を用いた脱色剤が皮膚の腫れや化学的火傷を引き起こすと報告された。
【0006】
同様に、酸化剤として使用される臭素酸塩も、人体に対する有害性が明らかになっている。長期的な臭素酸塩曝露はたちくらみ、めまい、聴力損傷を引き起こす。IARC(International Agency for Research on Cancer)で臭素酸カリウム(potassium bromate)をGroup 2B発癌物質として指定した。
【0007】
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
〔特許文献1〕韓国特許公開第10-2018-0045158号(2018年5月4日)
〔特許文献2〕韓国特許公開第10-2012-0095321号(2012年8月28日)
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
パーマネントウェーブに使用される過酸化水素及び臭素酸塩が、人体に有害であり、毛髪を損傷させるので、反復施術の際に完全な形状のパーマを形成することができない。したがって、本発明者らは、パーマ処理の際に有害な過酸化水素と臭素酸塩を代替するための方法の研究中に、反復施術の際に完全な形状のパーマを形成することができない現象が、毛髪の構造維持に主な役割を果たすシスチンの過酸化及び酸化的損傷によることであり、このような損傷を減らすために、酸化力が制限的な電気分解水素水と電解水を用いることに着目し、本発明を完成した。また、金髪のように化学的に弱い毛髪に対するパーマネントウェーブを達成することができるパーマネントウェーブ形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、電気分解水を含む毛髪洗浄用組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、電気分解水を毛髪に処理する段階を含む毛髪洗浄方法を提供することを目的とする。
【0010】
〔課題を解決するための手段〕
本発明の一態様によれば、(a)毛髪に還元剤を処理した後、毛髪を固定させる段階と、(b)前記固定された毛髪に電気分解水を2回以上処理する段階と、を含む、毛髪のパーマ形成方法を提供する。
【0011】
一実施形態において、段階(a)の前記毛髪は、自然黒毛、金髪、脱色毛、縮毛及び褐色毛よりなる群から選択された1つ以上であり得る。
【0012】
一実施形態において、段階(b)の前記電気分解水は、電気分解水素水又は電解水であり、前記電気分解水素水は、陽イオン交換膜が備えられた水素水生成器で製造された電気分解水素水であり得る。前記電解水は、陰極と陽極を分離せずに水を電気分解する工程で製造された電解水であり得る。
【0013】
一実施形態において、段階(b)の前記電気分解水は、出力11W以上の電解水器で製造された電気分解水であり、製造後30分以内に使用されるものであり得る。
【0014】
一実施形態において、段階(b)の前記電気分解水は、温度10~90℃であり、pH0.7~11.5であり得る。
【0015】
一実施形態において、前記パーマは、ウェーブパーマ又はストレートパーマであり得る。
【0016】
本発明の他の態様によれば、毛髪のパーマ形成用電気分解水を提供する。
【0017】
一実施形態において、前記電気分解水は、電気分解水素水又は電解水であり、前記電気分解水素水は、陽イオン交換膜が備えられた水素水生成器で製造された電気分解水素水であり、前記電解水は、陰極と陽極を分離せずに水を電気分解する工程で製造された電解水であり得る。
【0018】
一実施形態において、前記電気分解水は、出力11W以上の電解水器で製造された電気分解水であり得る。
【0019】
一実施形態において、前記電気分解水は、温度10~90℃、pH0.7~11.5であり得る。
【0020】
また、本発明は、電気分解水を含む毛髪洗浄用組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、電気分解水を毛髪に処理する段階を含む、毛髪洗浄方法を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記電気分解水は、電解水又は水素水であり得る。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記毛髪は、染色及びパーマ処理された毛髪、又は染色処理された毛髪であり得る。
【0024】
〔発明の効果〕
本発明の、電気分解水を多数回数で或いは特定の時間以上で使用する毛髪のパーマ形成方法によれば、毛髪の損傷が非常に少なくて反復施術が可能であり、既存の方法に比べて損傷毛及び金髪のパーマが可能であり、過酸化水素以上の酸化力を示し、毛髪損傷はより少なく、フケ菌を抑制し、パーマ後の染料溶出が著しく減少するという効果があることが明らかになった。したがって、本発明の電気分解水を多数回数で又は特定の時間以上で使用する毛髪のパーマ形成方法は、毛髪パーマ形成分野で人体に対する有害性なしに効果的にパーマを形成することができる方法として有用に使用できる。また、染色及びパーマ処理された毛髪、染色毛及び脱色毛を電気分解水で洗浄する場合は、蒸留水で洗浄した場合に比べて毛髪の引張強度が維持され、染色された毛髪の染料遺失が少ないという利点がある。
【0025】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕互いに異なる出力の製造機で製造された水素水(24W)と電解水(27W)を、互いに異なる時間放置した後、システインに反応させて生成されるシスチン生成量を示すグラフである。
【0026】
〔
図2〕パーマ処理時の第2剤水素水処理回数による自然黒毛のウェーブ効率を示す写真である。
【0027】
〔
図3a〕第2剤水素水処理回数によるパーマ毛の洗浄時の毛髪(金髪)長さの変化を示す写真である。
【0028】
〔
図3b〕軟化パーマ処理時の第2剤電解水処理回数によるウェーブ効率(脱色毛)である。
【0029】
〔
図3c〕パーマ処理時の第2剤過酸化水素及び水素水10回処理による褐色毛のウェーブ効率を示す写真である。
【0030】
〔
図3d〕パーマ第2剤として25℃の電気分解電解水を用いるときの毛髪長さの変化を示す写真である。
【0031】
〔
図3e〕パーマ第2剤として90℃の電気分解電解水を用いるときの毛髪長さの変化を示す写真である。
【0032】
〔
図4〕出力の異なる水素水生成器で作られた水素水を用いるコールドパーマ処理時の金髪毛髪におけるウェーブ効率を示す写真である。
【0033】
〔
図5〕出力の異なる水素水生成器で作られた水素水を用いるコールドパーマ処理時のウェーブ効率(自然黒毛)を示す写真である。
【0034】
〔
図6〕電解水と水素水を用いるコールドパーマ処理時の金髪におけるウェーブ効率を比較したものである。
【0035】
〔
図7〕電解水と水素水を用いるコールドパーマ処理時の自然黒毛髪におけるウェーブ効率を比較したものである。
【0036】
〔
図8〕pH4~10の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0037】
〔
図9〕pH1~4、pH0.7の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0038】
〔
図10〕pH10~12の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0039】
〔
図11〕pH11.25~12.25の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0040】
〔
図12〕pH0.7、pH1、pH7の電解水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0041】
〔
図13〕pH10~12の電解水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0042】
〔
図14〕それぞれ異なる温度の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである[Lane1:20℃、Lane2:40℃、Lane3:60℃、Lane4:80℃、Lane5:90℃]。
【0043】
〔
図15〕それぞれ異なる温度の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0044】
〔
図16〕それぞれ異なる温度の電解水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【0045】
〔
図17〕縮毛のストレートパーマ処理結果である[1-1:過酸化水素水処理、1-2:水素水処理]。
【0046】
〔
図18〕縮毛のストレートパーマ処理結果である[3-1:過酸化水素水処理、4-1:電解水処理]。
【0047】
〔
図19〕水素水と電解水を用いたパーマ毛のATR-FTIRスペクトル(1,300~1,000cm
-1)である[Color lines;緑、control;赤、ヒドロゲンペルオキシドベースのパーマ毛;紫、電解水素水ベースのパーマ毛;青、電解水ベースのパーマ毛]。
【0048】
【0049】
〔
図21〕人毛ウィッグ(パーマ後1回洗浄)の写真である。
【0050】
〔
図22〕人毛ウィッグ(パーマ後15回洗浄)の写真である。
【0051】
〔
図23〕人毛ウィッグ(パーマ後30回洗浄)の写真である。
【0052】
〔
図24〕電気分解水によるマラセチア・フルフル(Malassezia furfur)の殺菌効果を示すものである。
【0053】
〔
図25〕パーマ処理の際に第2剤として過酸化水素、電解水又は水素水を用いる場合の毛髪の外観を示すものである。
【0054】
〔
図26〕過酸化水素、電気分解水素水、電解水を用いたパーマ効率を測定するために、洗浄後に長さ測定及び写真撮影したものである(Lane1:蒸留水で洗浄、Lane2:1回は水素水、その他は蒸留水で洗浄、Lane3:水素水で洗浄、Lane4:1回は電解水、その他は蒸留水で洗浄、Lane5:電解水で洗浄)。
【0055】
〔
図27〕黒褐色染色毛に対する蒸留水、水素水及び電解水を用いて洗浄した結果を示すものである。
【0056】
〔
図28〕赤色染色毛に対する蒸留水、水素水及び電解水を用いて洗浄した結果を示すものである。
【0057】
〔
図29〕青色染色毛に対する蒸留水、水素水及び電解水を用いて洗浄した結果を示すものである。
【0058】
〔
図30〕水素水製造機又は電解水器を用いるときのシステインをシスチンに作る速度を比較実験した結果である。
【0059】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、(a)毛髪に還元剤を処理した後、毛髪を固定させる段階と、(b)前記固定された毛髪に電気分解水を2回以上処理する段階と、を含む、毛髪のパーマ形成方法を提供する。
【0060】
本発明では、毛髪のパーマ処理の際に酸化剤として使用される過酸化水素又は臭素酸塩の毒性又は副作用を克服するために、電解水を用いる。一般に、電気分解過程ではH2とO2が生成されることが知られているが、・OH、O3、H2O2、・O2
-、・Hも水の電気分解過程で生成される。これと同時に、電解質に塩素(chlorine)が含まれている場合、HOCl、OCl-などの酸化性物質が生成される。このような方式で製造された電解水の場合、陽極で生成された酸性電解水と、陰極で生成された塩基性電解水が生成され、両方とも有害な残留物が生じないため、食品の殺菌に用いられる。これらの2種の電解水を混ぜる場合、一般的には中和されて一般水の成分と同じでなければならないが、塩基性電解水と酸性電解水に比べて弱い還元力を持っているが、これと同時に、HOClなどの酸化性物質を含んでおり、これは、電解水の酸化力において大きい比重を占める。
【0061】
最近、水素ガス及びラジカルが抗酸化能を示すという研究結果が出た後、電気分解による水素水生成器が販売されている。水を電気分解する場合、陽極では水素イオンと酸素分子、陰極では水酸化イオンと水素分子が生成され、これを分離させる場合、陰極のpHは上昇する。このとき、陽イオン交換膜であるナフィオン(Nafion)で分離すると、陽極で生成された水素イオンが陰極へ移動して水酸化イオンを中和させ、陰極では、水素分子が多く溶けており且つpHも中性に近い水を得ることができる。このような水を本明細書で「水素水」又は「電気分解水素水」と呼ぶ。本発明では、陽イオン交換膜であるナフィオン(Nafion)付きの水素水生成器を用いて水素水を製造して実験した。
【0062】
「電解水(電気分解水)」は、陰極と陽極を分離しないため、生成された水素イオンと水酸化イオンが中和され、結果として中性であり、酸素分子と水素分子の両方とも高濃度の水を指し示す。
【0063】
電気分解過程で一緒に生成される活性酸素である・OH、O3、H2O2、・O2
-の場合に作られる量が少なく、生成後30日以上持続するHOClとは異なり、化学的に不安定であって他のラジカルを生成するか或いは他の分子と反応して消える。しかし、予備実験を介して電解水のシスチン生成力が1時間以内に消え(大部分が25分或いは30分以内に消える)、NaH2PO4などの塩素が含まれていない電解質を用いても、NaClを入れた場合と同じパーマ形成力とシスチン生成力を示すことから、ラジカル(radical)によってパーマが形成されると推定される。
【0064】
電気分解によっても高濃度の過酸化水素を生成することができるが、本発明のように触媒を使用しない場合には、非常に低い生成速度を示す。その例として0.8A、水素ガス流量1.2×10-7m3・s-1の条件で3時間電気分解した結果、5.88×10-4molを生成し、本発明の実験に該当数値を適用すると、2.45×10-4molであって、従来のパーマ剤で使用されていた過酸化水素2%溶液に比べてあまり低い濃度である。そして、過酸化水素の場合、洗浄した後にも残って追加の遅延酸化(delayed oxidation)を起こすが、電気分解電解水の場合は、有害な残留物質が残らず、最終的に全ての物質が再び水に戻るので、遅延酸化がない。
【0065】
本発明のパーマ形成方法は、毛髪に還元剤を処理した後、毛髪を固定させる段階(すなわち、段階(a))を含む。段階(a)は、毛髪のシスチン(cystine)を還元させてジスルフィド結合(disulfide bond)を分解する段階である。段階(a)において、毛髪に還元剤を処理した後、還元剤を除去するか、或いは除去していない状態で毛髪を固定させることができる。また、前記毛髪は、パーマ形成が可能な毛髪(人毛及びウィッグ毛)であれば制限なく適用可能であり、例えば、自然黒毛、金髪、脱色毛、縮毛及び褐色毛よりなる群から選択された1つ以上であり得るが、これに限定されない。
【0066】
本発明のパーマ形成方法は、前記固定された毛髪に電気分解水を2回以上処理する段階(すなわち、段階(b))を含む。段階(b)は、毛髪の形状を物理的に固定させた後、酸化剤を処理すると、還元されたシステインを酸化させてジスルフィド結合を作って毛髪の形状を固定させる段階である。段階(b)で、前記電気分解水は、電気分解水素水又は電解水であり、前記電気分解水素水は、陽イオン交換膜が備えられた水素水生成器で製造された電気分解水素水であり、前記電解水は、陰極と陽極を分離せずに水を電気分解する工程で製造された電解水であり得る。
【0067】
一実施形態において、段階(b)の前記電気分解水は、出力11W以上、好ましくは15W以上、より好ましくは20W以上の電解水器で作られた電気分解水であり得る。
【0068】
一実施形態では、段階(b)の前記電気分解水は、製造後30分以内に使用されるものであり得る。
【0069】
一実施形態において、段階(b)の前記電気分解水は、温度が10~90℃、好ましくは10~40℃であり得る。25℃程度の電気分解水を用いる場合には、処理時間が約55秒以上、好ましくは1分以上であり、90℃程度の電気分解水を用いる場合には、処理時間が約40秒以上、好ましくは45秒以上であり得る。
【0070】
一実施形態において、段階(b)の前記電気分解水は、pH0.7~11.5であり得る。
【0071】
一実施形態において、パーマは、ウェーブパーム又はストレートパーマであり得る。
【0072】
また、本発明は、毛髪のパーマ形成用電気分解水を提供する。
【0073】
一実施形態において、前記電気分解水は、電気分解水素水又は電解水であり得る。このとき、前記電気分解水素水は、陽イオン交換膜が備えられた水素水生成器で製造された電気分解水素水であり、前記電解水は、陰極と陽極を分離せずに水を電気分解する工程で製造された電解水であり得る。
【0074】
一実施形態において、前記電気分解水は、出力11W以上、好ましくは15W以上、より好ましくは20W以上の電解水器で製造された電気分解水であり得る。
【0075】
一実施形態において、前記電気分解水は、温度が10~90℃、好ましくは10~40℃であり得る。
【0076】
一実施形態において、前記電気分解水は、pH0.7~11.5であり得る。
【0077】
他の態様として、本発明は、電気分解水を含む毛髪洗浄用組成物を提供する。
【0078】
他の態様として、本発明は、電気分解水を毛髪に処理する段階を含む毛髪洗浄方法を提供する。
【0079】
本発明の一実施形態において、前記電気分解水は、電解水又は水素水であり得る。
【0080】
本発明の一実施形態において、前記毛髪は、染色及びパーマ処理された毛髪、又は染色処理された毛髪であり得る。
【0081】
パーマ毛を電気分解水で洗浄してウェーブ効率をより良好に維持することができる。
【0082】
本発明の一実施形態として、前記組成物は、毛髪の染料遺失防止用途であり得る。
【0083】
本発明の一実施形態として、前記洗浄方法は、毛髪に染色、又は染色及びパーマを処理した後、電気分解水を毛髪に塗布して毛髪を洗浄する方法であり得る。
【0084】
本発明の一実施形態では、電気分解水を用いて脱色毛を洗浄する場合、蒸留水で洗浄する場合に比べて毛髪の引張強度がさらに強く維持されることを確認したとともに、電解水が水素水よりもさらに効果的であることを確認した。
【0085】
本発明の一実施形態では、電気分解水を用いて染色及びパーマ処理された毛髪、又は染色処理された毛髪を洗浄する場合は、蒸留水で洗浄した場合に比べて、毛髪に処理された染料の遺失が少ないことを確認したとともに、電解水が水素水よりもさらに効果的であることを確認した。パーマ毛は、電気分解水で洗浄してウェーブ効率をより良好に維持することができる。
【0086】
相互矛盾しない限り、前記毛髪洗浄用組成物及び毛髪洗浄方法には、上述した毛髪のパーマ形成方法に関連する水素水、電解水、これらの製造方法などに関する説明が適用できる。
【0087】
〔発明の実施のための形態〕
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。ところが、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲はこの実施例に限定されるものではない。
【0088】
〔実施例〕
1.水素水及び電解水のシスチン生成能の測定
システインは、空気中で不安定であってシステイン同士が結合してシスチンを作る性質がある(Hirs,C.W.(1967).Performic acid oxidation.In Methods in enzymology(Vol.11,pp.197-199).Academic Press.)。そして、シスチンは、水に溶けない不溶性であり、沈殿する。このような性質により、システインに放置時間の異なる電気分解水素水及び電解水を添加して、シスチンが作られる量を測定した。使用された電気分解水素水及び電解水の生成には、蒸留水にNaClを添加して作った0.05%NaCl溶液を使用した。水素水は、原料水400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。電解水は、出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル社製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経た。これを電解水として用いた。
【0089】
システイン0.75gずつを7個の15ml試験管にそれぞれ入れた後、電気分解水素水及び電解水の生成直後からそれぞれ5分、10分、15分、20分、25分、30分間放置した電気分解水素水及び電解水を15mlずつ6個のシステイン含有試験管に注入した後、それぞれ30分間反応させた。システイン溶液に溶けているシステインは、空気中の酸素濃度でも酸化するため、反応時間の経過後に、反応しなかったシステインを含んでいる上清液を遠心分離(2000×G、5分)で除去して、時間による追加反応を防いだ。
【0090】
沈殿したシスチンは、蒸留水3mlを加えて浮遊させた後、660nmで濁度(turbidity)を測定し、そして、標準物質(stander)を用いてシスチン生成量で計算した。実験対照群(Experimental control)は、蒸留水にNaClを添加して作った0.05%NaCl溶液を沸騰させた後、冷却させ、残りの1つのシステイン含有試験管に注入した後、30分間反応させた。実験を3回繰り返し行い、IBM SPSS statistics for Windows、バージョン20.0(IBM製、USA)を介して平均及び標準誤差を計算した。
【0091】
実験前に電気分解で製造した電気分解水素水、電解水のpHは6.8であって、電気分解製造前後の差異がなかった。
【0092】
システインに電気分解水素水及び電解水を加えて生成された沈殿物の濁度(turbidity)は、
図1のとおりである。電気分解水素水及び電解水の生成直後、そして生成直後から5分間隔でそれぞれ異なるように放置した後、システインに添加して生成された沈殿物を測定した。生成物の濃度を濁度から測定した結果、水素水(24W機器)は、0.563、0.399、0.323、0.206、0.148、0.030、0.029と測定された。電解水(27W機器)は、0.751、0.602、0.402、0.328、0.199、0.069、0.028と測定された。実験対照群は、30分間反応させた場合、0.031、0.039であって、水素水24W機器で生成された電気分解水素水を25分間放置し、注入して30分間反応させた値とほぼ同じ値を示した。また、電解水27W機器の場合、30分間放置し、注入して30分間反応させた値とほぼ同じ値を示した。このようにシステイン0.75gずつに電気分解水素水を添加して生成された沈殿物は、重量に換算した結果、それぞれ0.0103g、0.0073g、0.0059g、0.0038g、0.0027g、0.0005g、0.0005gであり、電解水を添加して生成された沈殿物は、重量に換算した結果、それぞれ0.0137g、0.0110g、0.0073g、0.0060g、0.0036g、0.0013g、0.0005gであった。実験対照群は0.0006gと0.0007gであった。このように電気分解水素水のシステインからシスチンへの変換を促進する能力は、25分後には消えることが分かった。電解水のシステインからシスチンへの変換を促進する能力は、30分後には消えることが分かった。したがって、パーマ処理の際に、電気分解水素水、電解水は、生成直後にすぐに処理することがウェーブ効率に好ましい。
【0093】
2.第2剤として電気分解水素水を用いた繰り返しパーマ処理及び温度による効果の比較
1)自然黒毛
電気分解水素水のウェーブ形成力の比較に使用された原料水は、水道水であった。参考までに、パーマ実験において、原料水は、蒸留水にNaClを添加して作った0.05%NaCl溶液と水道水の場合、差異が微々たるものであった。水素水は、出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に25℃の水道水400mlを入れ、20分間水素水生成過程を経たものを実験に使用した。パーマ過程は、一般的な常温(コールドパーマ)で行った。パーマ処理の際に、第1剤は市販中のHair119(Eson Chemical製、韓国)を使用し、主原料はシステインHCL、システアミンHCLである。第2剤としては電気分解水素水を使用した。
【0094】
毛髪は、自然黒毛を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。自然黒毛に対して上記の基準に従って固定及び洗浄過程を行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、ウェーブ効率の再現性を高めるために、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪を直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた。ロッドに固定された毛髪に電気分解水素水を2分間隔で1回、2回、4回、7回、10回塗布して再酸化した。反復塗布の際に、ピペットによって1回当たり5mlで処理した。パーマ過程を終えた後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、洗浄後の長さ測定及び写真撮影を行った(
図2)。下記表1は、パーマ処理時の第2剤水素水処理回数によるパーマ毛の洗浄時の毛髪(自然黒毛)長さの変化結果である。
【0095】
【0096】
上述のように実験した結果、水素水は1回処理から30回洗浄時までもウェーブが維持されたが、処理回数に比例して良好なウェーブが得られた(
図2)。したがって、第2剤として使用された水素水は、処理回数の増加に伴ってウェーブも良くなることが分かる。
【0097】
2)金髪
実験に用いられた金髪の毛髪は、前処理過程を経ていない髪(Moresoo製、英国)であった。パーマ処理に使用された毛髪は、27cmの長さ、0.2gずつに分けて固定させて使用した。ロッドを用いて一般美容室で使用する方法に従い、還元剤としてアセチルシステイン(ケロンシステイン、イルジンコスメティック製、韓国)処理、中間洗浄、セッティング、酸化剤処理、洗浄後測定の順に行った。金髪の毛髪を還元剤としてのアセチルシステインで処理した後、37℃で5分間放置した。ウェーブ効率の再現性を高めるために、蒸留水で洗浄して毛髪から還元剤を除去した後、直径8mmのロッドに螺旋状(spiral)方式で巻き付けた。水素水は2分間隔で5回、10回、15回処理した。反復塗布の際、ピペットによって1回当たり5mlで処理した。その後、毛髪を分離した。これらを1回洗浄した後、パーマ毛の長さを測定した。その後、1日1回ずつ、30回繰り返し洗浄したときのパーマ効率を確認した(
図3a)。洗浄剤は、Natural shampoo(Repit製、韓国)を使用した。
【0098】
水素水の製造方法は、次のとおりである。蒸留水にNaClを添加して0.05%NaCl溶液を作った後、加塩蒸留水を5分程度沸かして溶存酸素(dissolved oxygen)を最大限除去し、しかる後に、25℃に急冷(water cooling)させた。こうして作った400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。
【0099】
上述のように実験した結果、水素水5回処理試料は、1回洗浄ではウェーブが良かったが、30回洗浄ではウェーブが消えた。しかし、水素水10回、15回処理試料は、30回洗浄でもウェーブ持続力が良く、15回処理の場合が最も良かった。したがって、ウェーブ持続力は、水素水処理回数に比例して良かった。
【0100】
パーマ処理後1回洗浄試料において、水素水5回処理(Lane1)の場合は、水素水10回処理(Lane2)、水素水15回処理(Lane3)の場合よりもウェーブが少し増加した。30回洗浄では、水素水5回処理(Lane1)の場合はウェーブが消えた。水素水10回処理(Lane2)、水素水15回処理(Lane3)の場合は、ウェーブがよく維持され、水素水15回処理が最も良かった。したがって、パーマ処理が難しい金髪の場合も、10回処理で2日に1回ずつ洗浄すると仮定すれば、少なくとも2ヶ月間ウェーブが維持できることが分かる。
【0101】
3)脱色毛
パーマ剤として用いた第1剤は、市販のHair119(Eson Chemical製、韓国)を使用し、主原料がシステインHCL、システアミンHCLである。第2剤としては、電気分解水素水を使用した。毛髪は、50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。第2剤として使用した電気分解水素水は、次のとおりに作った。蒸留水400mlに電解質のNaCl濃度が0.05%(w/v)となるように電解質を溶解させた。原料水400mlを水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。実験に使用した脱色毛髪(Bleached hair)は、自然黒毛(virgin black hair)を脱色薬(bleach developer、Koleston perfect creme developer 6%、 Wella製、ドイツ)と脱色粉末(bleach powder、Blondor multi blonde、Wella製、ドイツ)を2:1の比率で混合した後、37℃で20分間処理した。その後、洗浄して脱色剤を除去した。この過程を合計3回繰り返し行うことにより、脱色毛を作って使用した。
【0102】
全てのパーマ実験過程は、27℃で行った。まず、毛髪の損傷度を考慮して、第1剤処理時間を脱色毛の場合には15分にし、髪が溶けないレベルに処理した。ウェーブ効率の再現性を高めるために、中間洗浄によって毛髪の第1剤を除去した後、60℃に加熱された直径10mmのロッドに巻き付けて固定させた。固定された毛髪に水素水を2分に1回ずつ1回、2回、4回、7回、10回塗布した。反復塗布の際に、ピペットによって1回当たり5mlで処理した。塗布完了後、ロッドを取り除いてそれぞれの毛髪のパーマ効率測定及び写真撮影を行った(
図3b)。全体的に
図2の自然黒毛よりもウェーブがさらに良い結果を示した。
【0103】
4)褐色毛
実験に使用された褐色毛髪は、前処理過程を経ていない毛髪(Moresoo製、英国)を使用した。パーマ処理に使用した毛髪は、27cmの長さ、0.2gずつに分けて固定させて使用した。ロッドを用いて、一般美容室で使用する方法に従って還元剤としてのシステイン処理、中間洗浄、セッティング、酸化剤処理、洗浄後測定の順に行った。褐色毛髪に還元剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を処理した後、37℃で10分間放置した。ウェーブ効率の再現性を高めるために、蒸留水で洗浄して毛髪から還元剤を除去した後、直径8mmのロッドに螺旋状(spiral)方式で巻き付けた。水素水は2分間隔で10回塗布し、対照群としては、臭素酸ナトリウムよりもパーマ効率が良い過酸化水素(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を塗布した後、10分放置した。そして、毛髪を分離した。これらを1回洗浄した後、パーマ毛髪の長さを測定した。その後、1日1回ずつ、30回繰り返し洗浄したときのパーマ毛の長さを測定した(
図3c)。洗浄剤は、Natural shampoo(Repit製、韓国)を使用した。
【0104】
水素水製造方法は、次のとおりである。蒸留水にNaClを添加して0.05%NaCl溶液を作った後、加塩蒸留水を5分程度沸かして溶存酸素(dissolved oxygen)を最大限除去した後、25℃に急冷(water cooling)させた。こうして作った400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。
【0105】
上述のように実験した結果を
図3cに示す。
図3cに示すように、過酸化水素を処理し、1回洗浄(Lane1)、30回洗浄(Lane1-1)した場合よりも、水素水10回処理し、1回洗浄(Lane2)、30回洗浄(Lane2-1)した場合が著しく良好なウェーブ効率を示すことが分かる。すなわち、過酸化水素処理の場合は、30回洗浄で垂れが見られたが、水素水処理の場合は、垂れが殆ど見られなかった。したがって、2日に1回ずつ洗髪するとするとき、褐色毛のパーマ処理は2ヶ月以上維持されるので、商業性が十分であることが分かる。
【0106】
5)パーマ第2剤として25℃の電気分解電解水を使用
電気分解電解水のウェーブ形成力の比較に用いられた原料水は、水道水であった。電解水は、出力27W(9V、3A)の電解水製造機(エコウェル製、韓国)に25℃の水道水400mlを入れ、20分間電解水生成過程を経たものを実験に使用した。パーマ過程は、一般的な常温(コールドパーマ、27℃)で行った。パーマ処理の際に、第1剤は、市販のHair119(Eson Chemical製、韓国)を使用し、主原料がシステインHCL、システアミンHCLである。第2剤としては電解水を使用した。
【0107】
毛髪は、自然黒毛を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。自然黒毛に対して上記の基準に従って固定及び洗浄過程を行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、ウェーブ効率の再現性を高めるために、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた。ロッドに固定された毛髪に対して、電解水を噴霧器に入れて連続噴射によって10ml/分の噴霧速度で噴射しながら、塗布して再酸化させた。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、洗浄後の長さ測定及び写真撮影を行った(
図3d)。
【0108】
図3dに示された数字は、パーマ処理時の第2剤電解水処理時間によるパーマ毛の洗浄時の毛髪(自然黒毛)長さの変化を示す結果である[Lane1;30秒処理、Lane2;1分処理、Lane3;2分処理、Lane4;3分処理、Lane5;4分処理、Lane6;5分処理、Lane1-1;45秒処理、Lane1-2;50秒処理、Lane1-3;55秒処理]。噴霧式塗布処理時間は55秒以上、商業的に好ましくは1分以上である。この時、商業的適合性は、第2剤として過酸化水素を使用し、1回洗浄後のパーマ毛の長は約22cm程度であるが、これを基準に判断した。
【0109】
6)パーマ第2剤として90℃の電気分解電解水を使用
90℃で電気分解によって生成された電解水のウェーブ形成力の比較に用いられた原料水は、水道水であった。電解水は、出力27W(9V、3A)の電解水製造機(エコウェル製、韓国)に90℃の水道水400mlを入れ、20分間電解水生成過程を経たものを実験に使用した。パーマ過程は、一般的な常温(コールドパーマ、27℃)で行った。パーマ処理の際に、第1剤は、市販のHair119(Eson Chemical製、韓国)を使用し、主原料がシステインHCL、システアミンHCLである。第2剤としては電解水を使用した。
【0110】
毛髪は、自然黒毛を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。自然黒毛に対して、上記の基準に従って固定及び洗浄過程を行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程の後、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定した。ロッドに固定された毛髪に対して、電解水を噴霧器に入れて連続噴射によって10ml/minの噴霧速度で噴射しながら、塗布して再酸化させた(反復塗布実験は、ピペットによって1回当たり5mlで処理した)。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、洗浄後の長さ測定及び写真撮影を行った(
図3e)。
【0111】
図3eに示された数字は、パーマ処理時の第2剤電解水処理時間によるパーマ毛の洗浄時の毛髪(自然黒毛)長さの変化を示す結果である[Lane1;20秒処理、Lane2;25秒処理、Lane3;30秒処理、Lane4;35秒処理、Lane5;40秒処理、Lane6;45秒処理]。90℃で電気分解によって生成された電解水の噴霧式連続塗布処理時間は40秒以上、商業的に好ましくは45秒以上が必要である。
【0112】
3.製造機器によるパーマ効率
1)機器性能による電気分解水素水のパーマ効率の比較
機器出力の差異がパーマ形成に影響するかを調べるために、原料水を20℃に調節してパーマ実験を行った。水素水の生成に使用された原料水は、次のとおりに製造した。NaCl0.05%(w/v)溶液400mlの温度が20℃となるように維持した。A水素水は、原料水400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。B水素水は、原料水を出力10w(5V、2A)の水素水製造機(Solco製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。これを水素水として使用した。
【0113】
毛髪は、自然黒毛と金髪毛(Moresoo製、英国)を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた後、各水素水を1分間隔で10回塗布して再酸化させた。反復塗布の際に、ピペットによって1回当たり5mlで処理した。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、長さ測定及び写真撮影を行った。持続力を調べるために、シャンプー(Natural shampoo、Repit製、韓国)洗浄を15回、30回行った後、長さ測定及び写真撮影を行った(
図4及び
図5)。
【0114】
図4に示すように、金髪の場合、出力24w(12V、2A)のA水素水製造機で作った水素水の場合(
図4のLane2)が、出力10w(5V、2A)のB水素水製造機で作った水素水(
図4のLane1)の使用時よりも1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄でウェーブ効率がさらに良く、30回洗浄時にもウェーブ効率が良かった。パーマ処理後2日に1回洗浄すると仮定すると、少なくとも2ヶ月はウェーブがよく維持されるので、商業性が十分である。一方、B水素水製造機の場合、15回の洗浄でもウェーブがよく維持できないため、商業性がないと判断される。
【0115】
図5に示すように、自然黒毛の場合も、出力24w(12V、2A)のA水素水製造機で作った水素水の場合(
図5のLane2)が、出力10w(5V、2A)のB水素水製造機で作った水素水(
図5のLane1)の使用時よりも1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄でウェーブ効率がさらに良く、30回洗浄時にもウェーブ効率が良い。パーマ処理後2日に1回洗浄すると仮定すると、2ヶ月はウェーブがよく維持されるので、商業性が十分である。逆に、B水素水製造機の水素水の場合、15回の洗浄でも相対的にパーマウェーブが良くないため、商業性に劣ることが分かる(
図5)。
【0116】
2)出力が類似な電気分解水素水と電解水のパーマ効率の比較
出力が類似な機器で生成した電解水と水素水がパーマ形成に影響するかを調べるために、原料水を20℃に調節してパーマ実験を行った。水素水の生成に使用された原料水は、次のとおりに製造した。NaCl0.05%(w/v)溶液400mlの温度が20℃となるように維持させた。A水素水は、原料水400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。C電解水は、原料水を出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経た。これを電解水として使用した。
【0117】
毛髪は、自然黒毛と金髪毛(Moresoo製、英国)を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪を直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた後、各水素水及び電解水を1分間隔で10回塗布して再酸化させた。反復塗布の際に、ピペットによって1回当たり5mlで処理した。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、長さ測定及び写真撮影を行った。持続力を調べるために、シャンプー(Natural shampoo、Repit製、韓国)洗浄を15回、30回行った後、長さ測定及び写真撮影を行った(
図6及び
図7)。
【0118】
図6に示すように、金髪の場合、出力24w(12V、2A)のA水素水製造機で作った水素水と、出力27w(9V、3A)のC電解水製造機で作った電解水は、1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄でウェーブ効率が同様に良かった。2日に1回洗浄すると仮定すると、少なくとも2カ月はウェーブがよく維持されるので、商業性が十分であることが分かる(
図6)。
【0119】
図7に示すように、自然黒毛の場合も、金髪の場合と同様に、水素水と電解水の両方とも30回洗浄時にもウェーブ効率が良いため、パーマ処理後2日に1回洗浄すると仮定すると、2カ月はウェーブがよく維持されるので、商業性が十分である(
図7)。このように出力が類似な機器で生成させた水素水と電解水は、類似なパーマウェーブ効率を示した。
【0120】
4.パーマ第2剤のpHによるパーマ効率
1)pHによる電気分解水素水と電解水のパーマ効率
pHの変化がパーマ形成に影響するかを調べるために、原料水をpH4~10、pH1~4、pH0.7、pH10~12の範囲にそれぞれ分けてパーマ実験を行った。
【0121】
水素水と電解水の生成に用いられた水は、次のとおりに製造した。蒸留水400mlに電解質の濃度が0.05%(w/v)となるようにNaClを溶解させた。これらに対してそれぞれ、水素水400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。これを水素水として使用した。電解水は、出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経た。その後、pH4~10の範囲は、それぞれのpHに調整された0.05%(w/v)NaCl溶液を水素水製造機と電解水製造機で水素水と電解水に作って実験した。そして、pH0.7、1、2、3、4、10、11、12、及びpH11.25、11.50、11.75、12.25は、水素水と電解水を製造した後、それぞれのpHとなるように10M NaOHと10M HClを添加した。
【0122】
毛髪は、自然黒毛を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた後、各水素水を1分間隔で10回塗布して再酸化させた。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、長さ測定及び写真撮影を行った。持続力を調べるために、シャンプー(Natural shampoo、Repit製、韓国)洗浄を15回、30回行った後、長さ測定及び写真撮影を行った(
図8~
図13)。
【0123】
図8に示すように、水素水のpH4~10によるパーマ毛の1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄では、ウェーブ効率はほぼ差異がなかった。また、
図9に示すように、水素水のpH1~4までは、1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄におけるウェーブ効率はほぼ差異がなかった。pH0.7の場合は、洗浄回数15回、30回によって若干ずつ長くなり、pH1~4の値と同様であった。
【0124】
図10に示すように、水素水のpH10~12では、1回洗浄、15回洗浄まではpH10とpH11がほぼ同じウェーブ効率を示し、30回洗浄でウェーブ効率が若干減少する傾向を示した。しかし、pH12では、pH11とは多くの差異を示した。ここで、pHをpH11.25、11.50、11.75、12.25に細分化して再び実験した結果(
図11)、パーマ毛の1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄におけるウェーブ効率はpH11.50まではある程度現れ、好ましくは、pH11.25までウェーブがよく現れることが分かる。したがって、pH1~11.50までの水素水は、ウェーブ効率が良く、好ましくはpH1~11.25までである。
【0125】
図12に示すように、電解水のpH0.7、pH1、pH7で1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄におけるウェーブ効率は殆ど差異がなくて良好であった。
図13に示すように、電解水のpH10~12では、パーマの1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄におけるウェーブ効率はpH11.50まではある程度現れ、好ましくはpH11.25までウェーブがよく現れることが分かる。したがって、pH0.7~11.50までの電解水は、ウェーブ効率が良く、好ましくはpH0.7~11.25までである。
【0126】
5.パーマ第2剤の温度によるパーマ効率
1)温度による電気分解水素水と電解水のパーマ効率
原料水の温度がパーマ形成に影響するかを調べるために、原料水をそれぞれ20~90℃、5~20℃に調節してパーマ実験を行った。水素水と電解水の生成に用いられた水は、次のとおりに製造した。NaCl0.05%(w/v)溶液400mlの温度が20、40、60、80、90℃となるようにウォーターバス(ChangSin製、韓国)で加熱した。また、NaCl0.05%(w/v)溶液400mlの温度が5、10、15、20℃となるように冷却させた。水素水は、NaCl0.05%溶液400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。そして、電解水は、NaCl0.05%溶液400mlを出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経た。これを電解水として使用した。生成過程中の温度変化を防ぐために、機器の内部に氷入りのプラスチック容器を入れて温度を調節した。
【0127】
毛髪は、自然黒毛を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた後、各水素水を1分間隔で10回塗布して再酸化させた。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、長さ測定及び写真撮影を行った。持続力を調べるために、シャンプー(Natural shampoo、Repit製、韓国)洗浄を15回、30回行った後、長さ測定及び写真撮影を行った(
図14~
図16)。
【0128】
図14に示すように、20~90℃まで水素水を使用した場合、1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄でウェーブ効率は温度に比例して良くなった(Lane1;20℃、Lane2;40℃、Lane3;60℃、Lane4;80℃、Lane5:90℃)。
図15に示すように、温度を5、10、15、20℃に細分化して水素水を使用するとき、15℃では1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄でウェーブ効率は良かったが、10℃ではウェーブ効率がやや劣る傾向を示した。したがって、水素水は、10~90℃までの温度で使用できるが、好ましくは15~90℃までが良いウェーブ効率を示すことが分かる(
図15)。
【0129】
図16に示すように、温度を5、10、15、20、60、90℃に細分化して電解水を使用するとき、15℃では1回洗浄、15回洗浄、30回洗浄でウェーブ効率は良かったが、10℃ではやや劣る傾向を示した。したがって、電解水は10~90℃までの温度で使用できるが、好ましくは15~90℃までが良いウェーブ効率を示すことが分かる(
図16)。要約すると、温度が高いほどウェーブ効率は良いが、40℃以上では、頭皮に触れたことは注意すべきである。
【0130】
6.電気分解水素水と電解水の縮毛のストレートパーム処理効果
ストレートパーマに使用された第1剤は、ヘアの定石であるサラサラでツヤツヤの2ウェイストレート(UCL製、韓国仁川)を使用した。パーマに使用された第2剤は、ヘアの定石であるサラサラでツヤツヤの2ウェイストレート(UCL製、韓国仁川)とそれぞれの水素水と電解水にキサンタンガム混合製剤を使用した。
【0131】
使用された電気分解水素水及び電解水の生成には水道水を使用した。水素水は、水道水400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。これを水素水として使用した。電解水は、出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経た。これを電解水として使用した。これらのそれぞれにキサンタンガムを0.5%となるように添加し、混合してゲル状に製造したものを使用した。
【0132】
パーマ過程は、次のとおりに行った。第1剤を毛髪に塗布して37℃で30分間軟化過程を経た。軟化が完了した毛髪は、洗浄して第1剤を除去した後、第2剤又は水素水或いは電解水キサンタンガム混合製剤をそれぞれ塗布して10分間酸化過程を経た。酸化過程が完了した毛髪は、洗浄して写真撮影及び測定を行った。
【0133】
1)電気分解水素水を用いたストレートパーマ処理
毛髪は縮毛を50本程度固定して作り、作られた毛束のうち、最も類似した屈曲を有する毛束2個をそれぞれ選定して実験に使用した。
図17のLane1、2はストレートパーマ処理前の毛束であり、Lane1-1、2-1は処理後の毛束である。
図17に示すように、縮毛がストレートパーマ処理後に直毛となり(Lane2-1)、第2剤として過酸化水素水を使用した場合(Lane1-1)とはその効果において差異がないことが分かる(
図17)。
【0134】
2)電気分解電解水のストレートパーマ処理効果
縮毛を対象に電解水を用いたストレートパーマにおいて、Lane3、4は実験前の毛束であり、Lane3-1、4-1はパーマ処理後の毛束である。第2剤として過酸化水素水を処理したLane3-1と、キサンタンガム含有電解水を処理したLane4-1の両方とも、縮毛のウェーブがよく伸びた(
図18)。
【0135】
7.パーマ毛のFTIR分析によるシステイン酸生成程度の比較
パーマ処理の際に毛髪のシスチン結合(ジスルフィド結合)が酸化してシステイン酸になると、これは、損傷毛髪でシスチン結合を再形成することができない。パーマ毛の損傷程度を調べるには、ATR-FTIRを介してシステイン酸の比率を測定することができる。
【0136】
パーマ第2剤として水素水と電解水を処理する場合、過酸化水素を処理する場合に比べてシステイン酸生成程度がどれくらいであるかをATR-FTIRで測定した。毛髪は、天然毛を50本程度固定し、27cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた後、各第2剤として水素水と電解水をそれぞれ1分間隔で10回塗布してそれぞれ再酸化させた。過酸化水素水(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)は、一般的なパーマ処理方法で5分間1回処理した。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。1回シャンプー(Natural shampoo、Repit製、韓国)で洗浄し、毛髪試料として使用した。
【0137】
ここで、パーマ処理の際に使用された電気分解水素水及び電解水の生成には、蒸留水にNaClを添加して作った0.05%NaCl溶液を使用した。水素水は、この溶液400mlを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。電解水は、この溶液を出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経て電解水として使用した。
【0138】
毛髪試料をATR-FTIRスペクトロフォトメーター(FT/IR-4100、Jasco製、日本)を用いて測定した。波数(wavenumber)は4,000~600cm
-1に調節し、1cm
-1間隔で測定した。実験サンプルを2つずつ測定して平均スペクトルを求めた。FTIRスペクトル照射及びデータ変換には、Spectragraph 1.2(Dr.Friedrich Menges Softwareentwicklung製、Germany)を使用した。毛髪のシステイン酸の比率測定は、平均スペクトルの1242cm
-1のアミドIIIピーク高さを基準に標準化(normalize)した後、1040cm
-1のピーク高さを比較して得た。システイン酸のS-Oが曲げ振動(bending vibration)を介して吸収する1040cm
-1の赤外線(infrared)を介してシステイン酸の量を比較した。ATR-FTIRスペクトルは、下記表2及び
図19のとおりである。表2は測定された1040cm
-1のピーク高さを数値化した結果である。
【0139】
【0140】
パーマ処理によるシステイン酸生成量は、測定の結果、水素水が0.0035、電解水が0.0047増加するのに対し、過酸化水素は0.0641増加した。すなわち、過酸化水素の増加量に比べて、水素水パーマは94.5%の損傷を防止し、電解水は92.7%の損傷を防止したことが分かる。対照群は、パーマ処理前の毛髪である。
【0141】
8.人毛フルウィッグのパーマ処理による商業的パーマ毛の可能性評価-電解水を用いた人毛フルウィッグのパーマ処理
電解水を用いたパーマ処理の実効性を検証するために、美容室で実際のヒトに行うことを想定して、人毛100%ウィッグに電解水パーマ処理を行った。
【0142】
実験に使用されたパーマ剤は、普遍的にヘアサロンで多く使用し、安定性と優秀性を考慮して選定し、還元成分がチオグリコレート(thioglycolate)であるC社((株)コスモコス製、韓国)製を使用した。第2剤として使用した電解水は、出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に27℃の水道水を入れ、20分間電解水生成過程を経て製造した。人毛100%ウィッグに第1剤を塗布し、ホリゾンタル・セクション(Horizontal section)で直径約10mmの円形ロッドにクロキノール式で巻き付けた(winding)後、ビニールキャップで密封して37℃のインキュベーターで15分、そして室温放置15分経過後、中間洗浄をせずに酸化剤(電解水)200mlを噴霧器に入れて噴射して塗布した後(約5分所要)、10分間酸化させた。その後、再び200mlを噴霧器に入れて噴射して塗布し、10分間酸化させて合計2回400mlを噴霧して塗布した。その後、ロッドを除去し、流れる水で水洗した後、重力方向に自然乾燥させた。
【0143】
パーマの持続力を確認するために、パーマ前、1回洗浄後、15回洗浄後、30回洗浄後にウィッグを撮影した(
図20~
図23)。洗浄にはシャンプー(ヘドン化粧品製、韓国)を使用した。水道水にシャンプーを希釈してウィッグに塗布し、流れる水道水で水洗した後、重力方向に自然乾燥させた。実際の生活で2日に1回ずつ洗浄する場合、3ヶ月間はウェーブがよく維持されるものと予想される。したがって、上述した様々な実験と人毛フルウィッグパーマ実験で水素水と電解水をパーマ第2剤として使用する方法は、現場に直ちに適用できる商業性が十分な方法であることが分かる。
【0144】
9.フケ菌マルセチ・フルフル(Malassezia furfur)に対する電気分解水の抗真菌効果
頭皮において、マルセチ・フルフル(Malassezia furfur)は頭皮の悪臭とフケを誘発する。M.furfurは、脂質好性酵母(lipophilic yeast)であって、皮脂腺の多い皮膚からリパーゼ(lipase)を生成し、皮脂を分解して遊離脂肪酸(free fatty acid)を生成する。このような作用は、頭皮の皮膚障壁を損傷させ、様々な皮膚疾患を誘発する。M.furfurによって発生する頭皮疾患としては、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、脂漏性皮膚炎(seborheic dermatitis)、白斑(pitiriasis versicolor)、毛嚢炎(folilicitis)、フケ(dandruff)、真菌血症(fungemia)などがある。M.furfurによる疾患の治療法として二硫化セレン(selenium sulfide)を用いた治療法があるが、嘔吐、腹部の痛み、無気力、皮膚刺激、毛髪の脱色及び脱毛などの副作用がある。
【0145】
美容室や理容室で毛髪をパーマ又はカットするときにM.furfurに汚染される場合があるため、電解水及び水素水のフケ緩和効果を確認するために、フケの原因であるM.furfurに対する抗真菌能を実験した。実験のために、KCTCからM.furfur KCTC 7545の分譲を受けて使用し、M.furfurの培養のために改変サブロー寒天培地(modified Sabouraud’s dextrose agar)を使用した。改変サブロー寒天培地(Modified Sabouraud’s dextrose agar)(オリーブ油:1%、Tween80:1%,デキストロース:4%、ペプトン:1%、寒天:2%)を蒸留水に1Lとなるように混合して121℃、15分間オートクレーブ(autoclave)した後、50℃まで冷却させ、しかる後に、層が分離されないように混合して分注した。
【0146】
当該培地に菌株を接種するための菌体液としては、M.furfurが十分に培養された培地0.25cm
2をそれぞれ蒸留水、電解水、水素水10mLに入れて希釈して使用した。この時、蒸留水、電解水、水素水が十分な殺菌作用を行え得るように5分間振盪し、これを菌体塗抹液として使用した。製造された菌体液は、培地に0.2mLずつ注入して塗抹した後、27℃で3日間培養して観察した。その結果、蒸留水ペトリー皿(Petri dish)には、粟米のように小さなM.furfurコロニーがいっぱい現れた。しかし、水素水又は電解水ペトリー皿には、M.furfurコロニーは現れなかった(
図24参照)。よって、電解水、水素水がM.furfurに対する抗菌能を有することが分かる。
【0147】
10.染色毛のパーマ処理過程でパーマ第2剤を電気分解水で代替処理することによる染料溶出抑制効果
毛髪のパーマ処理過程では、パーマ第1剤である還元剤で処理した後、パーマ第2剤である酸化剤(過酸化水素)を用いて所望の形態に固定させる。しかし、一般的に染色された毛髪をパーマ処理すると、この過程で毛髪の染料が溶出して染色毛のカラーがパーマ処理前よりも退色する場合がほとんどである。このため、染色毛のパーマ処理過程でパーマ第2剤である過酸化水素の代わりに電気分解水で代替処理することにより、既存の染色毛のパーマ処理方法よりも毛髪の染料溶出を防止してパーマ処理染色毛の退色を改善することができる。
【0148】
黒褐色染色に使用された毛髪は1回洗浄して異物及び汚染物質を除去し、乾燥させた後、脱色剤(multi blonde lightening powder(Wella製、米国)及びwelloxon perfect cream developer(Wella製、米国)を1:2の比率で混合したものを使用)を15分間処理し、洗浄した後で使用した。洗浄済みの毛髪全体に黒褐色染色剤を塗布し、37℃で15分間放置した後、蒸留水で洗浄した。その後、黒褐色に染色された毛髪はパーマ処理した。パーマ剤としては、エステティカマルチファンクション(所望化粧品製、韓国)を使用し、第1剤の主成分はシステインであり、第2剤の主成分は過酸化水素である。まず、染色された毛髪に第1剤を塗布し、15分間処理して軟化過程を行った。その後、毛髪を直径8mmのロッドに固定させ、3つの試料にそれぞれパーマ第2剤(過酸化水素)、水素水及び電解水をそれぞれ10mLずつ塗布した後、7分間放置した。パーマ過程を経た毛髪はいずれも、水道水で1回洗浄し、乾燥させた後、測色過程を経た(表3、
図25)。
【0149】
前記3つの試料はいずれも、パーマ処理におけるパーマ第1剤塗布の際に毛髪染色染料が少しずつ溶出した。そして、第2剤として電解水、水素水を塗布した場合には染料が溶出しなかったが、過酸化水素を塗布した場合には染料も溶出し、脱色になるような現象が現れるが、肉眼でも電解水又は水素水処理群よりも色が薄くなった。水道水による1回洗浄の際には、過酸化水素群は色素が溶出し、電解水と水素水は色素溶出が殆どなかった。
【0150】
染色毛の色は、色測計スペクトロフォトメーターCM-2500d(Konica Minolta Sensing、Inc.製、日本)を用いて測定した。
図25はパーマ処理前の染色毛髪の色とパーマ処理して1回洗浄した後の毛髪の色を示す。パーマ処理前の毛髪は差異が殆どなく、パーマ処理後の毛髪は濃さ(L)では差異があった。パーマ処理して1回洗浄した場合、電解水群は、パーマ処理前に比べて2.01%染料が溶出し、水素水群は4.71%溶出した。しかし、過酸化水素群は11.43%溶出した。したがって、染色毛のパーマ処理時に電解水又は水素水でパーマ処理すると、過酸化水素とは異なり染料溶出が非常に抑制されることが分かる。
【0151】
そして、3つの脱色毛のうち、肉眼評価では、過酸化水素群は、毛先が割れており、全般的に毛髪の表面が荒れていた。これに対し、電解水群と水素水群は、毛先が割れておらず、相対的に毛髪のボリュームが落ち着いて見えたうえ、滑らかに見えたが、電解水群が相対的に良い効果を示した。
【0152】
【0153】
11.染色毛パーマ処理への第2剤の使用効果及び洗浄への電気分解水の使用効果の比較
1)染色毛のウェーブ効率
電気分解水素水のウェーブ形成力の比較に使用された原料水は、水道水であった。水素水は、出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に25℃の水道水400mlを入れ、20分間水素水生成過程を経たものを実験に使用した。染色過程は、一般的に常温で行った。染色剤は、市販のシャイニングエッセンス7C(ミジャンセン製、韓国)を使用した。
【0154】
毛髪は、自然黒毛を50本程度固定し、17cmの長さに切って実験に使用した。パーマ過程は、次のとおりに行った。染色毛を17cmの長さに固定し、洗浄過程を行った。洗浄後に乾燥させた毛束に第1剤(Hair119 Clinic SuBoon Perm、Eson Chemical製、韓国)を37℃で25分間処理して還元させた。還元過程後、ウェーブ効率の再現性を高めるために、蒸留水で洗浄して第1剤を除去した。洗浄した毛髪は、直径8mmのロッドに巻き付けて固定させた。ロッドに固定された毛髪に過酸化水素、電気分解水素水、電解水を20mLずつ塗布して再酸化させた。パーマ過程を終了した後、ロッドを除去した。パーマ効率を測定するために、洗浄後の長さ測定及び写真撮影を行った(
図26)。下記表1は、染色毛のパーマ処理時の洗浄回数による毛髪長さの変化を示す結果である。
【0155】
表4に示すように、パーマ処理後の1回洗浄では、水素水1回洗浄(column2、column3)よりも電解水1回洗浄(column4、column5)がさらに良好なウェーブ効率を示した。そして、30回洗浄でも、電解水で洗浄したcolumn5が最も良く、その次は、水素水で洗浄したcolumn3が、1回は電解水、その他は蒸留水で洗浄したcolumn4とほぼ同様に良好なウェーブ効率を示した。したがって、商業的には、電解水がパーマ処理においてはより有利であると見られる。
【0156】
【0157】
表5は染色毛のパーマ処理時の洗浄回数による毛髪の変色である。染色毛の色は、色測計スペクトロフォトメーターCM-2500d(Konica Minolta Sensing、Inc.製、日本)を用いて測定した。L valueは濃さを表し、a valueは赤色、b valueは黄色の度合いを表す。表5において、L valueは洗浄回数によって明るくなり、明るさ程度は1回洗浄>15回洗浄>30回洗浄であり、30回洗浄における明るさ程度は、蒸留水で洗浄(column1)>1回は水素水、その他は蒸留水で洗浄(column2)>1回は電解水、その他は蒸留水で洗浄(column4)>水素水で洗浄(column3)>電解水で洗浄(column5)の順であり、電解水洗浄の場合、洗浄による染料の遺失が最も少なかった。赤色a値と黄色b値は、15回洗浄と30回洗浄で相互間の差異が大きくなかった。
【0158】
【0159】
12.脱色毛製造時の脱色毛髪の引張強度低下防止のために電気分解水を用いた洗浄
消費者は、美的欲求に応じて毛髪を脱色させて金髪色又は金髪に近い色の毛髪を望んでいる場合がある。この時、毛髪は、脱色剤の作用により毛髪組織が破壊されて毛髪の引張強度が低下し、毛髪の損傷とともに毛髪が切れやすいこともある。通常、金髪色を示すためには、3回程度の脱色を施行するが、3回の脱色毛は、よく切れやすい場合がある。これを補う方法として、電解水と水素水で脱色後に洗浄する毛髪管理方法で脱色による毛髪の引張強度低下を改善する方法を調べた。
【0160】
〔引張強度の測定〕
脱色過程で電解水と水素水が毛髪の引張強度に及ぼす影響を調べるために、引張強度を測定した。実験に使用された脱色剤は、multi blonde lightening powder(Wella製、米国)とwelloxon perfect cream developer(Wella製、米国)を1:2の比率で混合したものを使用した。実験に使用された毛髪は、1回洗浄して異物及び汚染物質を除去し、乾燥させた後で使用した。電解水群は、洗浄を終えた毛髪全体に脱色剤を塗布し、37℃で20分間放置した後、電解水で洗浄した。これを1回脱色とした。蒸留水群は、洗浄を終えた毛髪全体に脱色剤を塗布し、37℃で20分間放置した後、蒸留水で洗浄した。これを1回脱色とした。水素水群は、電解水群と同様の方法で脱色した。このような方法で脱色を2回目、3回目繰り返し行うことにより、合計3回脱色した毛髪を作り、引張強度を測定した。
【0161】
引張強度の測定は、脱色毛20本をランダムに選別した後、万能材料強度試験機(INSTRON 4465、INSTRON製、米国)で繊維単糸を測定する韓国産業規格繊維の引張強度試験方法(KS K ISO 5079:2007)に準じて測定した。
【0162】
引張強度測定結果は、次の通りである(表6)。天然毛の場合、164gf/本の引張強度を示した。蒸留水で脱色後に洗浄した場合、1回、2回、3回脱色でそれぞれ148gf/本、126gf/本、98gf/本の引張強度を示し、電解水で脱色後に洗浄した場合、1回、2回、3回脱色でそれぞれ154gf/本、138gf/本、122gf/本の引張強度を示した。水素水で脱色後に洗浄した場合、1回、2回、3回脱色でそれぞれ152gf/本、133gf/本、112gf/本の引張強度を示した。
【0163】
3回脱色を基準に、蒸留水脱色毛は40.24%損傷し、電解水脱色毛は25.60%損傷し、水素水脱色毛は32.70%損傷した。よって、蒸留水よりも電解水が14.64%損傷を防止し、水素水が7.54%損傷を防止した。
【0164】
そして、3つの脱色毛のうち、肉眼評価では、蒸留水群は、毛先が割れており、全体的に毛髪の表面が荒れている。電解水群と水素水群は、毛先が割れておらず、相対的に毛髪が落ち着いて見えたうえ、滑らかに見えたが、電解水群がより良い効果を示した。
【0165】
【0166】
13.染色毛の洗浄時に染料流出低減化方法で電気分解水を処理する洗浄方法
毛髪染色は、白毛に色素を付与する若白髪カバー染色と、バージン毛髪に色を示すために行う場合が非常に多い。このとき、染色後の毛髪の洗浄経過に応じて染色毛髪から染料が溶出して染色毛髪が色あせる場合がほとんどである。ほとんどの場合、染色毛の希望する固有の色が薄くなって美観上の問題が発生する。したがって、毛髪染色後の洗浄時に、染色毛の染料溶出低減化方法で電気分解水を処理する方法を考案した。
【0167】
〔染色毛の色測定〕
実験に使用された染色剤は、染毛剤として10/45(赤色)、10/88(青色)(Wella製、米国)及び8G(黒褐色)(アモレパシフィック製、韓国)、酸化剤としてwelloxon perfect cream developer(Wella製、米国)をそれぞれ使用しており、染毛剤と酸化剤を1:1の比率で混合したものを使用した。
【0168】
赤色、青色染色実験に使用された毛髪は、1回洗浄して異物及び汚染物質を除去し、乾燥させた後、上記の「引張強度の測定」に記述された脱色剤を15分処理して洗浄する過程を2回繰り返し行った後で使用した。黒褐色染色実験に使用された毛髪は、1回洗浄して異物及び汚染物質を除去し、乾燥させた後、「引張強度の測定」に記述された脱色剤を15分処理して洗浄した後で使用した。蒸留水群は、洗浄済みの毛髪全体に赤色、青色、黒褐色染色剤を塗布し、37℃で15分間放置した後、蒸留水で洗浄した。電解水群は電解水で洗浄し、水素水群は水素水で洗浄した。洗浄による色抜け現象を観察するために、14回洗浄を行った。1回洗浄と14回洗浄の際には、色測計スペクトロフォトメーターCM-2500d(Konica Minolta Sensing,Inc.製、日本)を用いた観測及び写真撮影を行った。
【0169】
表7~表9、
図27~
図29のcolumn1は、全ての洗浄を蒸留水で行った毛髪である。column2は、初期1回だけ電解水で洗浄し、残りの13回は蒸留水で洗浄した毛髪であり、column3は、すべての洗浄を電解水で行った毛髪である。column4は、初期1回だけ水素水で洗浄し、残りの13回は蒸留水で洗浄した毛髪であり、column5は、全ての洗浄を水素水で行った毛髪である。色測定は、毛髪の中間である点線部位内の色を測定した。色は、色測計スペクトロフォトメーターCM-2500d(Konica Minolta Sensing,Inc.製、日本)を用いて測定した。
【0170】
黒褐色染色における色の彩度(a、b)は大きな変化がなかったが、色の濃さ(L)では差異を示した。表5の5群のうち、1回洗浄において、蒸留水洗浄(column1)に比べて電解水洗浄(column3)と電解水1回洗浄(column2)の場合は、それぞれ58.78%、57.77%、水素水1回洗浄(column4)と水素水洗浄(column5)の場合は、それぞれ50.71%、50.62%だけ黒褐色の色素が少なく抜け出た(表7、
図27)。
【0171】
また、14回洗浄において、5つの群のうち、電解水洗浄(column3)が最も高い結果を示した。これは、電解水洗浄の場合が、蒸留水洗浄(column1)の場合に比べて黒褐色の染毛剤が34.39%少なく抜け出るようにすることを意味する。次に、蒸留水洗浄に比べて水素水洗浄(column5)の場合は29.94%、電解水1回洗浄(column2)の場合は27.60%、水素水1回洗浄(column4)の場合は23.50%だけ黒褐色の色素が少なく抜け出た(表7、
図27)。
【0172】
赤色染色における赤色彩度(a)と色の濃さ(L)で差異を示した。5群のうち、1回洗浄で赤色染毛剤を基準とすると、蒸留水洗浄(column1)に比べて電解水洗浄(column3)と電解水1回洗浄(column2)の場合はそれぞれ43.07%、39.53%、水素水洗浄(column5)と水素水1回洗浄(column4)の場合はそれぞれ39.40%、36.86%だけ色相が少なく抜け出た。そして、赤色彩度(a)が強いほど濃さ(L)も濃くなることが分かる(表8、
図28)。
【0173】
また、14回洗浄における電解水洗浄が最も高い結果を示した。これは、電解水洗浄(column3)の場合が、蒸留水洗浄(column1)の場合に比べて赤色の染毛剤が52.86%少なく抜け出るようにすることを意味する。次に、蒸留水洗浄に比べて水素水洗浄(column5)の場合は44.23%、電解水1回洗浄(column2)の場合は41.69%、水素水1回洗浄(column4)の場合は37.02%だけ赤色色相が少なく抜け出た。そして、赤色彩度(a)が強いほど濃さ(L)も濃くなることが分かる(表8、
図28)。
【0174】
青色染色における青色彩度(b)と色の濃さ(L)で差異を示した。5群のうち、1回洗浄で青色染毛剤を基準とすると、蒸留水洗浄(column1)に比べて電解水洗浄(column3)と電解水1回洗浄(column2)の場合はそれぞれ35.81%、33.95%、水素水洗浄(column5)と水素水1回洗浄(column4)の場合はそれぞれ11.16%、7.006%ほど色相が少なく抜け出た。そして、青色彩度(a)が強いほど濃さ(L)も濃くなることが分かる(表9、
図29)。
【0175】
また、14回洗浄における電解水洗浄(column3)が最も高い結果を示した。これは、電解水洗浄の場合が、蒸留水洗浄(column1)の場合に比べて青色の染毛剤が65.71%少なく抜け出るようにすることを意味する。次に、蒸留水洗浄に比べて、水素水洗浄(column5)の場合は51.36%、水素水1回洗浄(column4)の場合は22.58%、電解水1回洗浄(column2)の場合は19.16%だけ青色が少なく抜け出た。そして、青色彩度(b)と同様に、色の濃さ(L)も濃くなることが分かる(表9、
図29)。
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
14.使用規模による水素水及び電解水の差異
実験室規模では、電解水又は水素水を製造して実験に使用するには電解水がもっと有利な程度である。しかし、現場では、パーマ処理、脱色、染色後の洗浄などに多量の電気分解水が必要である。ところが、機械特性上、水素水よりも強力な効果を示す電解水は、多量に得ることが容易である。つまり、美容室の現場では、大量に速く製造することができるため、電解水が水素水よりも著しく有利である。また、水素水器は、電解水器より維持管理も難しい。すなわち、水素水は、大量に得ることが難しく、電解水と同じ程度にパーマや染色、脱色で効果を示すことも難しいという欠点がある。これは、下記の実験から明確に分かる。
【0180】
〔水素水及び電解水のシスチン生成能の測定〕
システインは、空気中で不安定であってシステイン同士が結合してシスチンを作る性質がある(Hirs,C.W.(1967).Performic acid oxidation. In Methods in enzymology(Vol.11,pp.197-199).Academic Press.)。そして、シスチンは、水に溶けない不溶性であり、沈殿する。このような性質を利用して、システインに放置時間の異なる電気分解水素水及び電解水を添加してシスチンが作られる量を測定した。使用された電気分解水素水及び電解水の生成には、実験誤差を減らすために、蒸留水にNaClを添加して作った0.05%NaCl溶液を使用した。
【0181】
水素水は、原料水400mLを出力24w(12V、2A)の水素水製造機(Grentech製、韓国)に入れ、20分間水素水生成過程を経た。電解水は、出力27w(9V、3A)の電解水器(エコウェル製、韓国)に入れ、20分間電解水生成過程を経た。これを電解水として使用した。
【0182】
システイン0.75gずつを10個の15mL試験管にそれぞれ入れた後、電気分解水素水及び電解水生成を開始した。生成開始からそれぞれ2分ごとに水素水及び電解水を15mLずつ10個のシステイン含有試験管に注入した後、それぞれ30分間反応させた。システイン溶液に溶けているシステインは、空気中の酸素濃度でも酸化するため、反応時間の経過後に、反応しなかったシステインを含んでいる上清液を遠心分離(2000×G、5分)で除去することにより、時間による追加反応を防いだ。
【0183】
沈殿したシスチンは、蒸留水3mLを添加して浮遊させた後、660nmで濁度(turbidity)を測定し、標準物質(stander)を用いてシスチン生成量で計算した。前記実験を3回繰り返し行うことにより、IBM SPSS statistics for Windows、version 20.0(IBM製、米国)を介して平均及び標準誤差を計算した。
【0184】
実験前に電気分解で製造した電気分解水素水、電解水のpHは、6.8であって、電気分解製造前後の差異がなかった。
【0185】
システインに電気分解水素水及び電解水を加えて生成された沈殿物の濁度(turbidity)は、
図30のとおりである。電気分解水素水及び電解水の生成直後、そして生成直後から2分間隔でシステインに添加して生成された沈殿物を測定した。生成物の濃度を濁度で測定した結果、水素水(24W機器)は、0.031、0.158、0.247、0.322、0.396、0.431、0.481、0.53、0.568、0.579、0.583と測定された。電解水(27W機器)は、0.031、0.205、0.363、0.526、0.63、0.726、0.746、0.762、0.754、0.748、0.751と測定された。このようにシステイン0.75gずつに電気分解水素水を添加して生成された沈殿物は、重量に換算した結果、それぞれ0.0006g、0.0029g、0.0045g、0.0059g、0.0072g、0.0079g、0.0088、0.0097g、0.0104g、0.0106g、0.0107gであり、電解水を添加して生成された沈殿物は、重量に換算した結果、それぞれ0.0006g、0.0038g、0.0066g、0.0096g、0.0115g、0.0133g、0.0136g、0.0139g、0.0138g、0.0137g、0.0137gであった。
【0186】
このように電気分解水素水のシステインからシスチンへの変換を促進する能力は、生成時間16分から殆ど増加しないことが分かった。電解水のシステインからシスチンへの変換を促進する能力は、10分から殆ど増加しないことが分かった。シスチン生成開始10分で、シスチン生成は、水素水の場合には0.0079g、電解水の場合には0.0133gであって、水素水が電解水の59%シスチン生成程度を示した。そして、16分では、水素水が0.0104g、電解水が0.0138gのシスチン生成を示して水素水が電解水の78%シスチン生成程度を示した。出力24w(12V、2A)の水素水製造機と出力27w(9V、3A)の電解水製造機は、出力が11%差異を示す。したがって、水素水製造機は、電解水製造機よりも10分では30%、16分では11%シスチン生成能が低下することが分かる。
【0187】
したがって、電解水製造機は、水素水製造機よりもシスチン生成速度がさらに速く、収率もさらに高い。また、水素水製造機は、弁の設置により拡張が厄介で難しいが、電解水製造機は、弁の設置が不要であり、多用途(フケ菌除去、ウェーブ持続、染色維持、引張強度維持)で洗髪するためにスケールアップ(scale up)が必要なので、商業的使用目的に遥かに有利である。
【0188】
〔産業上利用可能性〕
本発明の、電気分解水を多数回数で或いは特定の時間以上で使用する毛髪のパーマ形成方法によれば、毛髪の損傷が非常に少なくて反復施術が可能であり、既存の方法に比べて損傷毛及び金髪のパーマが可能であり、過酸化水素以上の酸化力を示し、毛髪損傷はより少なく、フケ菌を抑制し、パーマ後の染料溶出が著しく減少するという効果があることが明らかになった。したがって、本発明の電気分解水を多数回数で又は特定の時間以上で使用する毛髪のパーマ形成方法は、毛髪パーマ形成分野で人体に対する有害性なしに効果的にパーマを形成することができる方法として有用に使用できる。また、染色及びパーマ処理された毛髪、染色毛及び脱色毛を電気分解水で洗浄する場合、蒸留水で洗浄した場合に比べて毛髪の引張強度が維持され、染色された毛髪の染料遺失が少ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【
図1】互いに異なる出力の製造機で製造された水素水(24W)と電解水(27W)を、互いに異なる時間放置した後、システインに反応させて生成されるシスチン生成量を示すグラフである。
【
図2】パーマ処理時の第2剤水素水処理回数による自然黒毛のウェーブ効率を示す写真である。
【
図3a】第2剤水素水処理回数によるパーマ毛の洗浄時の毛髪(金髪)長さの変化を示す写真である。
【
図3b】軟化パーマ処理時の第2剤電解水処理回数によるウェーブ効率(脱色毛)である。
【
図3c】パーマ処理時の第2剤過酸化水素及び水素水10回処理による褐色毛のウェーブ効率を示す写真である。
【
図3d】パーマ第2剤として25℃の電気分解電解水を用いるときの毛髪長さの変化を示す写真である。
【
図3e】パーマ第2剤として90℃の電気分解電解水を用いるときの毛髪長さの変化を示す写真である。
【
図4】出力の異なる水素水生成器で作られた水素水を用いるコールドパーマ処理時の金髪毛髪におけるウェーブ効率を示す写真である。
【
図5】出力の異なる水素水生成器で作られた水素水を用いるコールドパーマ処理時のウェーブ効率(自然黒毛)を示す写真である。
【
図6】電解水と水素水を用いるコールドパーマ処理時の金髪におけるウェーブ効率を比較したものである。
【
図7】電解水と水素水を用いるコールドパーマ処理時の自然黒毛髪におけるウェーブ効率を比較したものである。
【
図8】pH4~10の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図9】pH1~4、pH0.7の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図10】pH10~12の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図11】pH11.25~12.25の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図12】pH0.7、pH1、pH7の電解水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図13】pH10~12の電解水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図14】それぞれ異なる温度の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである[Lane1:20℃、Lane2:40℃、Lane3:60℃、Lane4:80℃、Lane5:90℃]。
【
図15】それぞれ異なる温度の水素水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図16】それぞれ異なる温度の電解水を用いるコールドパーマ処理時のパーマ毛の洗浄による毛髪長さの変化(自然黒毛)を示すものである。
【
図17】縮毛のストレートパーマ処理結果である[1-1:過酸化水素水処理、1-2:水素水処理]。
【
図18】縮毛のストレートパーマ処理結果である[3-1:過酸化水素水処理、4-1:電解水処理]。
【
図19】水素水と電解水を用いたパーマ毛のATR-FTIRスペクトル(1,300~1,000cm
-1)である[Color lines;緑、control;赤、ヒドロゲンペルオキシドベースのパーマ毛;紫、電解水素水ベースのパーマ毛;青、電解水ベースのパーマ毛]。
【
図21】人毛ウィッグ(パーマ後1回洗浄)の写真である。
【
図22】人毛ウィッグ(パーマ後15回洗浄)の写真である。
【
図23】人毛ウィッグ(パーマ後30回洗浄)の写真である。
【
図24】電気分解水によるマラセチア・フルフル(Malassezia furfur)の殺菌効果を示すものである。
【
図25】パーマ処理の際に第2剤として過酸化水素、電解水又は水素水を用いる場合の毛髪の外観を示すものである。
【
図26】過酸化水素、電気分解水素水、電解水を用いたパーマ効率を測定するために、洗浄後に長さ測定及び写真撮影したものである(Lane1:蒸留水で洗浄、Lane2:1回は水素水、その他は蒸留水で洗浄、Lane3:水素水で洗浄、Lane4:1回は電解水、その他は蒸留水で洗浄、Lane5:電解水で洗浄)。
【
図27】黒褐色染色毛に対する蒸留水、水素水及び電解水を用いて洗浄した結果を示すものである。
【
図28】赤色染色毛に対する蒸留水、水素水及び電解水を用いて洗浄した結果を示すものである。
【
図29】青色染色毛に対する蒸留水、水素水及び電解水を用いて洗浄した結果を示すものである。
【
図30】水素水製造機又は電解水器を用いるときのシステインをシスチンに作る速度を比較実験した結果である。