(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-27
(45)【発行日】2024-03-06
(54)【発明の名称】豆腐類の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 11/45 20210101AFI20240228BHJP
【FI】
A23L11/45 Z
A23L11/45 A
(21)【出願番号】P 2022546270
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031255
(87)【国際公開番号】W WO2022050155
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020149764
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591162631
【氏名又は名称】株式会社高井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 東一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 裕介
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102755(JP,A)
【文献】特開平05-115256(JP,A)
【文献】特開平11-169126(JP,A)
【文献】特開2003-289821(JP,A)
【文献】特開平10-295313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/40-11/45
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固バケットの内部に散水装置を備える凝固装置を使用し、豆乳と凝固剤が混合した凝固物を排出する工程で、
水タンクから散水装置に定量の水を送るポンプ、又は、水タンクからポンプ及び自動バルブを介して送られた水を計量する、レベルセンサを持った計量タンクを用いて、前記散水装置から
前記水を
1バッチ毎に定量的に散水することで前記凝固バケットの内部に付着した豆乳と凝固剤が混合した付着凝固物を洗い流し、該付着凝固物の分散液を前記凝固物に混合して利用する、豆腐類の製造方法。
【請求項2】
前記散水装置は、前記豆乳と前記凝固剤が混合した凝固物を次工程へ搬送中に、前記水を散水する、請求項
1に記載の豆腐類の製造方法。
【請求項3】
前記散水装置より散水される水は、食品製造用水であって、洗浄水供給装置によって加温された40~100℃のお湯である、請求項1
又は2に記載の豆腐類の製造方法。
【請求項4】
前記凝固バケットは、保温手段を備える、請求項1~
3のいずれか1項に記載の豆腐類の製造方法。
【請求項5】
前記凝固バケットの内部は、表面研磨または表面処理加工が施された部材によって構成される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の豆腐類の製造方法。
【請求項6】
前記付着凝固物の分散液は、貯留タンクで前記凝固物に混合されて利用される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の豆腐類の製造方法。
【請求項7】
凝固バケットの内部に散水装置を備える凝固装置を備え、
前記散水装置は、水タンクから散水装置に定量の水を送るポンプ、又は、水タンクからポンプ及び自動バルブを介して送られた水を計量する、レベルセンサを持った計量タンクを備え、
前記散水装置は、
前記定量の水を送るポンプ又は前記計量タンクを用いて、前記水を
1バッチ毎に定量的に散水することで前記凝固バケットの内部に付着した豆乳と凝固剤が混合した付着凝固物を洗い流し、該付着凝固物の分散液を凝固物に混合して利用する、豆腐類の製造装置。
【請求項8】
前記散水装置は、前記豆乳と前記凝固剤が混合した凝固物を次工程へ搬送中に、前記水を散水する、請求項
7に記載の豆腐類の製造装置。
【請求項9】
前記散水装置より散水される水は、食品製造用水であって、洗浄水供給装置によって加温された40~100℃のお湯である、請求項
7又は8に記載の豆腐類の製造装置。
【請求項10】
前記凝固バケットは、保温手段を備える、請求項
7~9のいずれか1項に記載の豆腐類の製造装置。
【請求項11】
前記凝固バケットの内部は、表面研磨または表面処理加工が施された部材によって構成される、請求項
7~10のいずれか1項に記載の豆腐類の製造装置。
【請求項12】
前記凝固バケットに接続された凝固物排出管には、前記付着凝固物の分散液を、前記凝固物に混合させる貯留タンクが設けられる、請求項
7~11のいずれか1項に記載の豆腐類の製造装置。
【請求項13】
凝固バケットの内部に散水装置を備える凝固装置を使用し、豆乳と凝固剤が混合した凝固物を排出する工程で、水タンクから散水装置に定量の水を送るポンプを用いて、前記散水装置から前記水を1バッチ毎に定量的に1~10MPaの高圧で散水することで前記凝固バケットの内部に付着した豆乳と凝固剤が混合した付着凝固物を洗い流し、該付着凝固物の分散液を前記凝固物に混合して利用する、豆腐類の製造方法。
【請求項14】
凝固バケットの内部に散水装置を備える凝固装置を備え、
前記散水装置は、水タンクから散水装置に定量の水を送るポンプを備え、
前記散水装置は、前記定量の水を送るポンプを用いて、前記水を1バッチ毎に定量的に1~10MPaの高圧で散水することで前記凝固バケットの内部に付着した豆乳と凝固剤が混合した付着凝固物を洗い流し、該付着凝固物の分散液を凝固物に混合して利用する、豆腐類の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固装置を使用した豆腐類の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豆乳を凝固して豆腐類を製造する豆腐製造方法の一例としては、
図11に示すように、凝固装置10と成型装置3を別々に設け、豆乳プラント1から供給された豆乳と、
凝固剤タンク2から供給された凝固剤とを凝固装置10の凝固バケット11内で凝固させて豆乳凝固物とし、その後、成型装置3に送り、プレス・成型されて豆腐類を得る。また、成型後は、所定の大きさにカットして、パックに収納されるか、フライヤー4でフライされるか、フリーザー5で凍結される等の後工程へ引き継がれる。
【0003】
また、特許文献1では、絹ごし豆腐等を大量に製造する豆腐製造方法として、コンベアに並んで設けられた複数の凝固バケットの収容部に向けて流体スプレーノズルから水を噴霧し、収容部からの豆腐の剥離性を向上させることが知られている。また、特許文献2では、凝固容器の蓋や側壁の上方側から、凝固容器内にお湯を散水して、凝固容器内を洗浄することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2018-174836号公報
【文献】日本国特開2014-132902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、凝固装置10の凝固バケット11内では、凝固工程が繰り返されることで、器壁や撹拌羽根などに、鍾乳石やバームクーヘンのようにして付着凝固物が積層して成長する。このような付着凝固物が凝固バケット11内に残った状態で凝固工程が行われると、豆乳の撹拌状態が変化したり、豆乳の凝固状態(凝固粒子のサイズ等)が微妙に変化したりして、製品(油揚や堅豆腐など)の品質に影響する虞があり、場合によっては、付着凝固物の塊が異物混入として間違われてしまう事案にもなる。このため、従来では、定期的に人が凝固バケット11内の付着凝固物を削り落とす操作が必要であった。
【0006】
特許文献1に記載の豆腐製造方法では、主として絹ごし豆腐について排液口のない凝固バケットの収容部の洗浄についても記載されているが、本発明のように油揚や硬い木綿豆腐について排液口のある凝固バケットの洗浄に関するものではない。
【0007】
特許文献2に記載の豆腐製造方法では、水洗を行うことにより、器内に付着した凝固物を洗い流すことは記載されているが、凝固物分散液を次工程へ送り利用する方法は記載されていない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、凝固バケット内の付着凝固物を効果的に洗浄・除去することができる豆腐類の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 凝固バケットの内部に散水装置を備える凝固装置を使用し、豆乳と凝固剤が混合した凝固物を排出する工程で(例えば、本実施形態における凝固物を排出した後、或いは、凝固物を排出する途中を含む)、前記散水装置から水を散水することで前記凝固バケットの内部に付着(残留)した付着凝固物を洗い流し、該付着凝固物の分散液を前記凝固物に混合して利用する、豆腐類の製造方法。
(2) 前記散水装置は、定量的に散水する、(1)に記載の豆腐類の製造方法。
(3) 前記散水装置は、前記豆乳と前記凝固剤が混合した凝固物を次工程へ搬送中に、
前記水を散水する、(1)又は(2)に記載の豆腐類の製造方法。
(4) 前記散水装置より散水される水は、食品製造用水であって、洗浄水供給装置によって加温された40~100℃のお湯である、(1)~(3)のいずれかに記載の豆腐類の製造方法。
(5) 前記凝固バケットは、保温手段を備える、(1)~(4)のいずれかに記載の豆腐類の製造方法。
(6) 前記凝固バケットの内部は、表面研磨または表面処理加工が施された部材によって構成される、(1)~(5)のいずれかに記載の豆腐類の製造方法。
(7) 前記付着凝固物の分散液は、貯留タンクで前記凝固物に混合されて利用される、(1)~(6)のいずれかに記載の豆腐類の製造方法。
(8) 凝固バケットの内部に散水装置を備える凝固装置を備え、
前記散水装置は、水を散水することで前記凝固バケットの内部に付着した豆乳と凝固剤が混合した付着凝固物を洗い流し、該付着凝固物の分散液を凝固物に混合して利用する、豆腐類の製造装置。
(9) 前記散水装置は、前記付着凝固物に定量的に散水するための設備を備える、(8)に記載の豆腐類の製造装置。
(10) 前記散水装置は、前記豆乳と前記凝固剤が混合した凝固物を次工程へ搬送中に、前記水を散水する、(8)又は(9)に記載の豆腐類の製造装置。
(11) 前記散水装置より散水される水は、食品製造用水であって、洗浄水供給装置によって加温された40~100℃のお湯である、(8)~(10)のいずれかに記載の豆腐類の製造装置。
(12) 前記凝固バケットは、保温手段を備える、(8)~(11)のいずれかに記載の豆腐類の製造装置。
(13) 前記凝固バケットの内部は、表面研磨または表面処理加工が施された部材によって構成される、(8)~(12)のいずれかに記載の豆腐類の製造装置。
(14) 前記凝固バケットに接続された凝固物排出管には、前記付着凝固物の分散液を、前記凝固物に混合させる貯留タンクが設けられる、(8)~(13)のいずれか1項に記載の豆腐類の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、散水装置から水を散水することで、凝固バケット内の付着凝固物を効果的に洗浄・除去することができ、凝固バケット内での付着凝固物の成長を抑制することができる。また、付着凝固物の分散液を凝固物に混合して利用するので、豆腐類製品の歩留まり、収率、また、品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の豆腐類の製造方法が適用される、凝固装置を模式的に示す側面図である。
【
図2】(a)は、凝固バケットを模式的に示す側面図であり、(b)は、(a)の凝固バケットの蓋を外して模式的に示す上面図である。
【
図4】(a)は、小さな凝固物が生成される場合の洗浄過程を説明する図であり、(b)は、大きな凝固物が生成される場合の洗浄過程を説明する図である。
【
図5】第1変形例に係る、凝固物が排出される途中で、洗浄する例を示す図である。
【
図6】第2変形例に係る、凝固物が排出される途中で、洗浄する他の例を示す図である。
【
図7】第3変形例に係る、凝固物が排出される途中で、洗浄するさらに他の例を示す図である。
【
図8】第4変形例に係る、付着凝固物の分散液が凝固物と混合される例を示す図である。
【
図9】(a)は、第5変形例に係る、凝固バケットを模式的に示す側面図であり、(b)は、(a)の凝固バケットの蓋を外して模式的に示す上面図である。
【
図10】(a)は、第6変形例に係る、凝固バケットを模式的に示す側面図であり、(b)は、(a)の凝固バケットの蓋を外して模式的に示す上面図である。
【
図11】一般的な豆腐製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の豆腐類の製造方法の一例について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、
図11に示す豆腐製造装置において、凝固装置の構成及び工程を改良したものであるため、凝固装置を中心に説明する。
【0013】
図1に示すように、凝固装置10aでは、複数の凝固バケット11に対して、豆乳プラントからの豆乳が供給される豆乳供給管12、凝固剤タンクから凝固剤が供給される凝固剤供給管13、凝固物が排出される凝固物排出管14、図示しない洗浄水供給装置から散水装置15に向けて洗浄水を供給する洗浄水供給管16がそれぞれ備えられている。
【0014】
凝固装置10aは、複数の凝固バケット11が垂直姿勢で図示しない基台に固定され、豆乳供給管12から供給された豆乳と、凝固剤供給管13から供給された凝固剤が凝固バケット11内で混合され、凝固物Sが生成される。凝固物Sは、凝固バケット11の下方に接続された凝固物排出管14を介して、後工程の成型工程へ排出される。
【0015】
図2にも示すように、凝固バケット11は、上部の円筒部11aと下部の半球状底部11bとが連続した形状であり、上方開口に開閉可能な蓋17が取り付けられ、実質的に密封構造に構成することができる。
【0016】
また、凝固バケット11内には、豆乳や凝固剤を撹拌するとともに、凝固物Sを壊す撹拌装置18が設けられている。撹拌装置18は、撹拌羽根18aが取り付けられた撹拌軸18bを備え、撹拌軸18bは、蓋17を貫通して、上方で接続された図示しない駆動モータによって駆動される。なお、撹拌装置18は、上下方向にも駆動可能に構成されてもよい。
【0017】
さらに、凝固バケット11内の上部には、洗浄水供給管16に接続された散水装置15が設けられている。散水装置15は、凝固バケット11の円筒部11aの上部の内周面に沿って配置されたリング状の散水パイプからなり、豆乳、凝固剤、凝固物Sが接触する凝固バケット11内の接液部と、それ以外の非接液部に付着した飛沫のいずれをも洗浄することができる。特に、蓋17が設置されることで、散水パイプの下部だけでなく、散水パイプの上部も水洗可能になり、必要に応じてスプレーボールノズル等(後述参照)を備えれば更に水洗効果を向上できる。
【0018】
なお、非接液部とは、凝固バケット11の上部内壁や蓋17の内面を意図しており、また、接液部とは、豆乳、凝固剤、凝固物Sが接触する凝固バケット11の内壁、撹拌羽根18a、撹拌軸18b、豆乳供給管12の豆乳投入口12a、後述する邪魔板30(
図7参照)、凝固物排出管14の一部などを含む。
【0019】
散水装置15より散水される水は、食品製造用水であって、水道水や、井戸水などの清水でもよく、蒸留水や膜ろ過した無菌水など、特に限定されない。また、散水される水は、0~100℃であればよいが、好ましくは、洗浄水供給装置によって加温された40~100℃、静菌効果と実用性を狙ってより好ましくは60~95℃のお湯を使用することができる。お湯を使用することで、雑菌の殺菌・繁殖抑制と、バケットを保温する効果も得られる。
また、散水する水としては、凝固バケット11内で充満した水蒸気を回収した蒸気凝縮水を利用してもよい。
なお、清水は洗浄用、共洗い用であっても、品質改良剤(pH調整剤、膨化促進剤などの食品用の添加物や食品材料)を含むように使用することもできる。また豆乳凝固物から分離した離水(「ゆ」、「しみず」ともいう)をそのまま、ないしは濾過や除菌・殺菌するなど衛生的に取り扱って、散水に使用することで、節水効果と、豆乳凝固物や配管やバケット等の部材を冷やさない効果が期待できる。
【0020】
凝固物排出管14の先には、凝固物Sをできるだけ崩さずに搬送できる定量ポンプや自吸式ポンプなどのポンプ19が設けられているが、自然排出でもよい。また、ポンプ19としては、ロータリーポンプ、モーノポンプ、ベーンポンプ、バイデルポンプ、チュービングポンプ、ギヤポンプなど自給力があるポンプであれば、特に限定されない。また、凝固物排出管14には、図示しない排出バルブ(ボールバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブなど自動開閉弁)が開閉可能に設けられている。凝固物排出管14は水平よりも、下り勾配1%以上であればよく、5%以上が好ましい。排出用配管サイズは、2.0インチ以上であり、2.5~3インチが好ましい。
【0021】
また、凝固バケット11内で、凝固物Sが付着しやすい部分には、表面研磨ないしは表面処理加工された部材を備える。具体的に、凝固物が付着しやすい部分(残留しやすい部分)としては、凝固バケット11の内壁、撹拌羽根18a及び撹拌軸18bを含む撹拌装置18、後述の邪魔板30、豆乳投入口12aなどの接液部、散水装置15などが挙げられる。なお、撹拌羽根18aの形状は、一般的なプロペラ式の2~4枚羽根に限らず、凝固物の崩し効果も備えた形態であってもよく、正転逆転、多段速回転など撹拌プログラムを適宜備えてもよく、特に限定しない。
【0022】
表面研磨としては、バフ鏡面研磨、電解研磨が用いられ、表面処理加工としては、テフロン(登録商標)加工、セラミックコーティング、DLCコーティング、サンドブラスト加工、ロータス効果のある微細な凹凸構造を備えた撥水加工(水の接触角90°以上)が必要に応じて用いられてもよい。
【0023】
また、凝固バケット11は、器壁を保温するための保温手段を備えてもよい。保温手段としては、空気層や真空層を備えるジャケットタンク、40~100℃のお湯をジャケットに流すジャケットタンク、或いは、保温材を施工した保温タンクを適用できる。これにより、器壁が冷えず、凝固物Sの付着が抑制でき、保水性のよい均質な凝固物Sをつくることができる。
【0024】
このように構成された凝固装置10aでは、
図3に示すように、まず、豆乳プラントから豆乳供給管12を介して豆乳を凝固バケット11に供給し(ステップS1)、豆乳を供給した直後から撹拌装置18により豆乳を撹拌する(ステップS2)。また、凝固剤タンクから凝固剤供給管13を介して凝固剤を凝固バケット11に供給し(ステップS3)、さらに、撹拌装置18により撹拌しながら(ステップS4)、豆乳と凝固剤を混合して凝固物Sを生成する(ステップS5)。豆乳を供給する前や凝固物排出後には、必要に応じて内部空間を湿らせるように水蒸気を積極的に供給する。
【0025】
そして、凝固バケット11内で凝固物Sが所定時間熟成されたら、排出バルブを開放し、ポンプ19を作動して(ステップS6)、凝固物Sを後工程の成型装置に送る。
【0026】
なお、後工程の成型工程では、凝固物Sは、連続成型機の貯留タンクに供給されたり、貯留タンクを介さずに凝固物をゆ(ホエー)を分離する水取機に直接供給されたり、全量盛り込み方式では、下布上に凝固物Sを均等に分配する分配機のホッパーに直接供給されたり、連続成型機の下布上へ直接供給される。
【0027】
また、凝固物Sを成型装置に送った後は、凝固バケット11内に付着した付着凝固物Sa(
図4参照)を散水装置15によって洗浄する(ステップS7)。
【0028】
ここで、凝固装置において使用する豆乳が1~10%wt、好ましくは2~7%wtである、例えば、油揚、堅豆腐、凍り豆腐生地等の豆乳濃度が薄い製品を対象とする場合、
図4(a)に示すように、上記豆腐類は凝固剤(塩化マグネシウム、苦汁、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の単独または複数混合した水溶液または水分散液)を添加し撹拌し熟成した際に「ゆ(遊離水、シミズともいう)」が多めに出る、いわゆる「おぼろ状」の凝固をする。この場合、バケット内で1~10mmほどの凝固粒子が無数にできて、下層に沈殿し、上層は「ゆ」のような分離状態(いわゆる「沈み呉」)であったり、逆に、凝固粒子が無数に上層に浮き、下層は「ゆ」「しみず」と呼ばれる鶯色の液体である分離状態(いわゆる「浮き呉」)であってもよく、いずれにしても排出前に撹拌装置18で十分に均等にすればよい。このような小さな凝固物Sの状態であれば、洗浄水を散水した際に付着凝固物Saは次工程へ流れ、凝固バケット11内および凝固物排出管14内を洗いこむことができる。
【0029】
一方、豆乳の濃度が10%wtを越える製品の場合、
図4(b)に示すように、凝固剤を添加して豆乳を凝固させた際に「ゆ」があまり発生せず、凝固バケット11内全面に凝固物S(プリン状やヨーグルト状)ができる。この状態になるとバケット側面に大きな付着凝固物Saが強く付着してしまい洗浄水で凝固物が流せなくなってしまう。ただし、撹拌装置18等により、その凝固物を細かく砕くことで、流動性がよくなることで、付着凝固物Saを流すことができる。
【0030】
凝固バケット11の上部に散水装置15を設置することによって豆乳と凝固剤の凝固物Sを搬送した際に凝固バケット11の側面に付着した付着凝固物Saを散水ノズルからの水で流すことで、付着凝固物Saを搬送でき歩留りの向上につながる。また、散水ノズルからの水で流すことで凝固バケット11の器壁に付着した付着凝固物Saを減少させることができ、雑菌の繁殖を抑え(毎回凝固する際、衛生的)、さらに、付着凝固物の成長を防止することができる。
【0031】
なお、洗い流した付着凝固物Saと散水用水を含む凝固物分散液は凝固物Sと合わせて混合してもよいし、別途廃棄してもよい。
また、散水用水や凝固物分散液が凝固バケット11内に残留すると、次の豆乳計量で豆乳の濃度を薄めてしまい、豆腐の味を損ねて品質の低下につながるため、次の豆乳が投入される前までには、散水用水や凝固物分散液(洗い込み液)は、凝固バケット11から完全に排出されるのが好ましい。
【0032】
また、凝固バケット11が上述した保温手段を備えたり、表面研磨や表面コーティング処理が施されることで、付着物を減らすことになり、水洗時の水量を減らす方向に調節することができる。
【0033】
定期的に水洗を行わないと、凝固物Sが凝固バケット11の内壁、撹拌羽根18a、後述する邪魔板30などに徐々に付着、さらには蓄積することで撹拌効果は生産時間が長くなるにつれて変化し、凝固物Sの粒子の大きさ、粒度分布が変化し製品の品質に影響する可能性がある。一方、定期的に、好ましくは1バッチ毎に水洗して、撹拌機付きの貯留タンクで洗液と凝固物Sを混ぜ合わせることで、水切り、生地水分量が変化して油揚げ製品の品質が変化するのを防ぐことができる。
【0034】
また、凝固物Sは付着したまま時間が経つと徐々に硬化して時には変色した塊となる。この塊が落下し次工程へ流れると、塊の混入した生地が変形してロスになるだけでなく、異物混入によりクレームとなる可能性もある。水洗を行うことで凝固物Sの付着が防止でき、塊になることも防げるため、このような不具合を防止できる。
【0035】
生産終了後、洗浄工程では、散水ノズル類からは水だけでなく薬液(苛性ソーダなど)も散水できるため、CIP(Cleaning in place:装置を分解することなく洗浄剤を流すことにより洗浄する方法)の洗浄効果のアップも期待できる。従来方法ではバケット内に薬液を通過させるのみで、せいぜい薬液を豆乳量より多く入れ撹拌羽根18aを回しながら浸漬洗浄するだけであったが、散水ノズルを備える場合、水量や流量を調整することで凝固バケット11の上部まで洗浄することが可能になる。特に、薬液によるCIP洗浄を行う場合は蓋付きであることがより好ましい。洗浄後の薬液は外部に廃棄される(ステップS8)。
【0036】
なお、上記実施形態では、凝固物Sを次工程へ搬送した後に、凝固バケット11内の洗浄を開始したが、
図5~
図7に示す第1~第3変形例のように、凝固物Sを次工程へ搬送中に散水装置15から水を定量的に最小限で散水してもよい。
【0037】
図5に示す変形例は、水タンク20から定量ポンプ21を用いて定量の水を洗浄水供給管16に送り、該定量の水を散水装置15から凝固バケット11内に散水する。
図6に示す変形例は、途中にポンプ22が配置され、循環している水配管23に自動バルブ24を設け、バルブ24の開時間によって計量された定量の水を洗浄水供給管16に送り、該定量の水を散水装置15から凝固バケット11内に散水する。
図7に示す変形例は、途中にポンプ22が配置され、循環している水配管23に自動バルブ24を設け、自動バルブ24を開閉しつつ、電極センサやフロートセンサなどレベルセンサのついた計量タンク25によって定量の水を計量し、その後、バルブ26を開くことで、計量タンク25内の定量の水を散水装置15から凝固バケット11内に散水する。その他、流量計や積算流量計で所定量の水を計量する方法などで、凝固物Sを次工程へ搬送中に散水装置15から水を定量的に散水してもよい。
なお、散水する水の量は凝固バケット11内の豆乳に対し0.1%~1%であることが好ましい。これにより、散水装置15より散水された水によって洗い流された、付着凝固物Saを含む凝固物分散液が凝固物排出管14を介して次工程へ搬送される(ステップS9)。
【0038】
凝固物排出管14を通る凝固物分散液は先行して排出した凝固物Sと合わせて排出され、ポンプ19の下流側に設けられた貯留タンクで均等に混合される。この場合も、次の豆乳計量までにはすべて排出しきるようにすることができ、豆乳濃度を必要以上に薄めることがなく、品質を下げることなく凝固バケット11内の凝固物Sを次工程へ搬送することができる。
なお、
図8に示すように、ポンプ19によって排出された複数の凝固バケット11からの凝固物S及び凝固物分散液Saは、撹拌装置41を有する凝固物集合タンク(貯留タンク)40に一度集められ、その後、ポンプ42によって、水取機43に移送され、さらに、分配機44を介して成形装置3に送られてもよい。凝固物集合タンク40に集めることで、凝固バケット11から直接水取機43へ搬送するよりも一定量の凝固物Sおよび凝固物分散液Saを水取機43に移送でき、分配機44を介して成型装置3に送られたときに成型装置3で厚さが均一な製品を生産しやすくなる。
【0039】
洗浄水を途中から散水することで油揚げの場合は煮沸工程の最後に加える戻し水(「びっくり水」ともいう)の一部(いわゆる「陸戻し」)となり、新鮮なエアが少し混合すること、また凝固物の温度を少し下げることタンパク質熱変性抑制して、油揚げの皮が少し柔らかくなり、伸びやすく(膨化しやすく)なり、品質向上や、歩留まり向上、さらに、排水負担の減少効果が得られる。なお、水洗した洗い水を凝固物に混合することで、わずかながら付着物を回収する分、収率も向上する。
【0040】
ただし、水洗に使用する水の量が多すぎたり、水温が低かったりすると凝固物Sの温度が下がる、生地の水切りが悪くなり製品が伸びなくなるという悪影響もある。洗浄水がお湯の場合、エア供給効果は少ないが、保温効果により豆乳温度が安定する。
【0041】
また、散水装置15としては、上述した散水パイプ式に限らず、
図9に示すシャワーボール式や、
図10に示すシャワーノズル式であってもよい。また、散水装置15は、これらの他に、スプレーボール式、二次元・三次元回転ノズル式、豚のしっぽ式(らせん状に散水するノズル)などタンク洗浄に適した散水ノズルであれば、特に限定されない。
【0042】
また、散水装置15は、1~10MPaの高圧水で洗浄可能な高圧用ノズルを備える形態でもよい。
例えば、散水装置15は、ボール式や回転式スプレーノズルを備えて、CIP洗浄時、バケット11内部をアルカリ性や酸性の洗浄薬液をそのノズルから散布して、薬液循環洗浄や濯ぎ洗いに兼用してもよい。仕上げに水蒸気や次亜塩素酸ソーダ水や次亜塩素酸水等もそのノズルから噴霧して殺菌も行うようにしてもよい。
【0043】
さらに、
図10に示す変形例のように、凝固バケット11内には、豆乳の流れに変化を与える四角形状等の邪魔板30が配置され、固定であっても、角度や上下位置を適宜変更できる構成であってもよく、本実施形態では、散水装置15からの洗浄水によって、邪魔板30に付着した付着凝固物Saを洗浄することができる。
【0044】
また、
図10に示す変形例では、撹拌羽根18aを凝固バケット11の円筒部11aの中心から偏心した位置に配置し、散水装置15のシャワーノズルを円筒部11aの中心に配置しているので、
図9に示す変形例と比べて、凝固バケット11内を洗浄液で満液にして満遍なく洗浄しやすく、洗浄効果を向上できる。
なお、この場合、シャワーノズルの一部のノズル孔は、撹拌軸18b、撹拌羽根18a、邪魔板30に向けて散水できる、指向性を有するものであってもよい。
【0045】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば、凝固バケット11は、蓋17を有することが好ましいが、洗浄液が上部から飛散しないノズルであれば、蓋を有しない構成であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、対象製品として、油揚、堅豆腐、凍り豆腐生地を例示したが、本発明の対象の豆腐類としては、
図4(a)(b)に示したように、おぼろ状の凝固物ないしは軟らかいプリン状凝固物を壊して成型する製品であってもよく、例えば、木綿豆腐や油揚げ生地、厚揚げ生地、生揚げ生地、凍り豆腐生地、がんもどき(飛龍頭)生地や、これらの冷凍製品などの二次加工食品のための豆腐生地類、絹ごし豆腐やプリン状の凝固物を細かく砕いた豆腐生地類も含まれる。特に、寿司揚げ、薄揚げ、厚揚げ等の油揚げ生地を対象製品にするのがより好ましい。
【0048】
さらに、上記実施形態では、複数の凝固バケットが基台に固定された固定バケット凝固機について説明したが、複数の凝固バケットが基台を周回するラウンド式バケット凝固機であってもよい。ラウンド式バケット凝固機の場合、凝固物排出管を備えていてもよいが、バケットを反転して排出する形態が好ましい。
【0049】
なお、本出願は、2020年9月7日出願の日本特許出願(特願2020-149764)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0050】
10a 凝固装置
11 凝固バケット
12 豆乳供給管
13 凝固剤供給管
14 凝固物排出管
15 散水装置
16 洗浄水供給管
17 蓋
18 撹拌装置
19 ポンプ
30 邪魔板